説明

医療機器

【課題】低コストで、小型化の促進を妨げることなく、容易に外観を変化させ得る医療機器を提供する。
【解決手段】生体の状態を計測するための医療機器1において、その筐体2の外面(面6及び7)に凹部8を設ける。凹部8の内側に、貼付部材3を貼付する。筐体2に、計測結果を表示する表示画面4が設けられる場合は、面6及び7は、表示画面4が設けられた面5に隣接しているのが好ましい。貼付部材3は、粘着材層と、印刷層と、樹脂材料又はゴム材料によって形成された滑り止め層とを備え、粘着材層、印刷層、及び滑り止め層は、順に積層されているのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機器、特には携帯型の医療機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療機器の小型化が促進され、例えば、血糖値計、血圧計、心拍計等にあっては、携帯が可能な程度にまで小型化が図られている。このような医療機器は、患者や医療関係者等によって持ち歩かれることも多く、その使用頻度は高いものとなっている。特に、血糖値計は、糖尿病患者にとって必須の医療機器であり、血糖値計における携帯頻度及び使用頻度はともに非常に高く、そのパーソナル性は、非常に高いと考えられる。
【0003】
また、このようなパーソナル性が高い機器を使用するユーザーにおいては、機器の外観を自己の好みの外観にカスタマイズすることによって、自己の個性を主張したいという要望が存在する。近年においては、ユーザーが医療機器の外観を好みの外観にカスタマイズできるようにする保護カバーが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
具体的には、特許文献1では、模様や図案が印刷された保護カバーが提案されている。ユーザーは、好みのデザインが施された保護カバーを利用することで、機器の外観をカスタマイズすることができる。また、この結果、ユーザーがその機種に飽きてしまうのを抑制できるので、ユーザーが同じ機種を長く使用する手助けとなる。更に、これにより、機器のライフサイクルの長期化が促され、環境負荷の縮小化も図られることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−313269号公報(第6頁、第6図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、保護カバーを取り替えて機器の外観を変更する場合は、その度に、新たな保護カバーを購入する必要があり、ユーザーにおける経済的負担が大きくなってしまう。また、医療機器に保護カバーを取り付けると、保護カバーの分だけ、医療機器は大型化するため、医療機器の小型化の促進を妨げてしまう。
【0007】
一方、機器の筐体に、シールを貼り付けるなどすれば、小型化の促進を妨げることなく、低コストで外観の変更を実現できるが、シールは、外部からの接触等によって簡単に剥がれることがある。この場合は、美観を損ねるとともに、ユーザーにとっては、貼り直しといった面倒な作業が必要になる。
【0008】
本発明の目的は、上記問題を解消し、低コストで、小型化の促進を妨げることなく、容易に外観を変化させ得る医療機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明における医療機器は、生体の状態を計測するための医療機器であって、筐体と、貼付部材とを備え、前記貼付部材は、前記筐体の外面に貼付されていることを特徴とする。上記特徴によれば、従来のような保護カバーを用いず、低コストで医療機器の外観を変化させることができる。この場合、医療機器の小型化の促進が妨げられることもない。また、貼付部材のデザインを目立つものとした場合は、医療機器が小型化し、紛失し易くなっても、これを抑制することができる。
【0010】
また、上記本発明における医療機器は、前記筐体の外面に凹部が設けられ、前記貼付部材が、前記凹部の内側に貼付されているのが好ましい。この場合、凹部に貼付部材を貼り付けるだけで良く、簡単に外観を変化させることができる。更に、貼付部材は凹部の内部に貼り付けられ、その縁は外部の物体と接触し難くなっている。よって、貼付部材は、単にシールを貼り付けた場合と異なり、剥がれ難くなっている。
【0011】
上記本発明における医療機器においては、前記筐体に、計測結果を表示する表示画面が設けられ、前記凹部が、前記表示画面が設けられた面に隣接する面に設けられているのが好ましい。この場合は、ユーザーの手が触れやすい位置に、滑り止め効果を有する部材が配置されるため、ユーザーによる上記落下事故の発生が更に抑制されることとなる。
【0012】
上記本発明における医療機器は、前記凹部が、その開口縁と前記貼付部材との間に隙間が形成されるように設けられている態様とするのが好ましい。この態様とした場合は、貼付部材の貼り替えが必要なときに、ユーザーが指等を隙間に差し込むことによって、簡単に古い貼付部材を剥離できる。
【0013】
また、上記態様とする場合は、当該医療機器が前記隙間を塞ぐカバーを更に備え、前記カバーは、弾性体を介して前記凹部に固定され、前記弾性体は、前記カバーが外力によって前記凹部の内側に向けて押圧されると弾性変形するのが好ましい。こうすることにより、貼付部材の剥離が行われない場合は、隙間は塞がれるため、外部の物体との接触によって貼付部材が剥離されてしまう事態の発生が抑制される。
【0014】
上記本発明における医療機器は、前記筐体に、前記凹部の外周に沿って、溝が設けられている態様とすることもできる。上記態様とした場合は、溝を介して貼付部材を押圧でき、これによって、貼付部材を変形させることができる。この結果、貼付部材と凹部との接触面積が小さくなり、貼付部材の剥離作業が容易なものとなる。
【0015】
また、上記本発明における医療機器は、前記凹部の断面の底側がV形状に形成されている態様とすることもできる。上記態様とした場合は、貼付部材は弾性変形した状態で、貼付される。このため、後に貼付部材を剥離する必要性が発生した場合に、貼付部材を簡単に剥離できる。
【0016】
上記本発明における医療機器は、前記貼付部材が、粘着材層と、印刷層と、樹脂材料又はゴム材料によって形成された滑り止め層とを備え、前記粘着材層、前記印刷層、及び前記滑り止め層は、順に積層されている態様とするのが好ましい。
【0017】
上記態様によれば、貼付部材に、種々の模様、図形及び文字を印刷することができる。このため、医療機器の外観をいっそうユーザーの好みに応じた外観とすることができ、ユーザーの機器に対する愛着も更に深まることとなる。また、上記態様では、貼付部材が滑り止め効果を有するため、ユーザーが誤って医療機器を落下させてしまう事態の発生が抑制される。
【0018】
上記本発明における医療機器は、前記貼付部材が、粘着材層と、光透過性を有し、且つ、樹脂材料又はゴム材料によって形成された滑り止め層とを備え、前記滑り止め層は、その内部で分散している粒状の識別部材を有し、前記識別部材は、発光性材料、熱変色性材料、及び光反射性材料のいずれかによって形成されている態様とするのが好ましい。この場合は、貼付部材が目立つものとなり、医療機器においては、識別機能の向上が図れられる。
【0019】
また、上記本発明における医療機器は、前記貼付部材が、粘着材層と、識別層と、光透過性を有し、且つ、樹脂材料又はゴム材料によって形成された滑り止め層とを備え、前記粘着材層、前記識別層、及び前記滑り止め層は、順に積層され、前記識別層は、発光性材料または光反射性材料によって形成されている、態様とするのも好ましい。この場合も、医療機器においては、貼付部材により、識別機能の向上が図れられる。
【0020】
更に、上記本発明における医療機器は、前記貼付部材が、粘着材層と、樹脂材料又はゴム材料によって形成された滑り止め層と、識別層とを備え、前記粘着材層、前記滑り止め層、及び前記識別層は、順に積層され、前記識別層は、発光性材料、熱変色性材料、及び光反射性材料のいずれかによって形成されている、態様とするのも好ましい。この場合も、医療機器においては、貼付部材により、識別機能の向上が図れられる。
【0021】
また、上記本発明における医療機器は、前記貼付部材が、粘着材層と、芳香成分を含む芳香成分含浸層と、多孔性を有し、且つ、樹脂材料又はゴム材料によって形成された滑り止め層とを備え、前記芳香成分含浸層は、前記粘着材層の一方側に配置され、前記滑り止め層は、前記粘着材層の一方側に、前記芳香成分含浸層を覆うように形成されている、態様とすることもできる。この場合、医療機器は、ユーザーを、芳香成分によってリラックスさせることができる。
【0022】
更に、上記本発明における医療機器は、前記貼付部材が、粘着材層と、圧力センサ及びスピーカを実装する回路基板と、樹脂材料又はゴム材料によって形成された滑り止め層とを備え、前記回路基板は、前記粘着材層の一方側に配置され、且つ、前記圧力センサからの信号に応じて前記スピーカを駆動する駆動回路を備え、前記滑り止め層は、前記粘着材層の一方側に、前記回路基板、前記圧力センサ、及び前記スピーカを覆うように形成されている、態様とすることもできる。この場合は、ユーザーは、音によって、医療機器の保持が十分かどうかを確認することができる。
【0023】
また、上記本発明における医療機器は、前記貼付部材が、粘着材層と、樹脂材料又はゴム材料によって形成された滑り止め層とを少なくとも備え、前記滑り止め層に、凹部が形成されている、態様とすることができる。この場合は、ユーザーによる医療機器の把持が容易なものとなる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように本発明における医療機器によれば、低コストで、小型化の促進を妨げることなく、容易に外観を変化させことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1における医療機器の構成を示す斜視図であり、医療機器の筐体に貼付部材が貼付されていない状態を示している。
【図2】図2は、本発明の実施の形態1における医療機器の構成を示す斜視図であり、医療機器の筐体に貼付部材が貼付されている状態を示している。
【図3】図3は、図2中に示した切断線A−A´に沿って切断して得られる断面図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態2における医療機器を示す側面図である。
【図5】図5は、図4に示した医療機器を切断線B−B´に沿って切断して得られる断面図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態3における医療機器を示す側面図である。
【図7】図7は、図6に示した医療機器を切断線C−C´に沿って切断して得られる断面図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態4における医療機器を示す側面図である。
【図9】図9は、図8に示した医療機器を切断線D−D´に沿って切断して得られる断面図である。
【図10】図10は、本発明の実施の形態5における医療機器を示す分解斜視図である。
【図11】図11(a)は、図10に示した医療機器を切断線E−E´に沿って切断して得られる断面図、図11(b)は、図10に示した医療機器を切断線F−F´に沿って切断して得られる断面図である。
【図12】図12(a)及び(b)は、本発明における医療機器で用いることができる貼付部材の第2例を示す図であり、図12(a)は粘着材層側からみた平面図、図12(b)は図12(a)中の切断線G−G´に沿って得られた断面図である。
【図13】図13は、本発明における医療機器で用いることができる貼付部材の第3例を示す斜視図である。
【図14】図14は、本発明における医療機器で用いることができる貼付部材の第4例を示す断面図である。
【図15】図15は、本発明における医療機器で用いることができる貼付部材の第5例を示す断面図である。
【図16】図16は、本発明における医療機器で用いることができる貼付部材の第6例を示す断面図である。
【図17】図17は、本発明における医療機器で用いることができる貼付部材の第7例を示す断面図である。
【図18】図18は、本発明における医療機器で用いることができる貼付部材の第8例を示す断面図である。
【図19】図19は、本発明における医療機器で用いることができる貼付部材の第9例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1における医療機器について、図1〜図3を参照しながら説明する。図1及び図2は、本発明の実施の形態1における医療機器の構成を示す斜視図である。図1は、医療機器の筐体に貼付部材が貼付されていない状態を示し、図2は、医療機器の筐体に貼付部材が貼付されている状態を示している。図3は、図2に示した医療機器を切断線A−A´に沿って切断して得られる断面図である。
【0027】
図1及び図2に示すように、本実施の形態1における医療機器1は、生体の状態を計測するための医療機器、例えば、血糖値計、血圧計、乳酸値計、ケトン体測定装置、体温計、尿試験紙計、脂質測定装置などである。また、医療機器1は、手の平サイズで構成されており、患者等のユーザーが携帯することを前提としている。
【0028】
医療機器1は、筐体2を備えている。この筐体2には、図1に示すように、その外面に凹部8が設けられている。本実施の形態1では、筐体2の外面のうち、一方の主面5には、計測結果、例えば、血糖値や血圧値を表示する表示画面4が設けられている。そして、主面5に隣接する面(側面)6及び7に、それぞれ凹部8が設けられている。また、図2及び図3に示すように、凹部8の内側には、貼付部材3が貼付される。なお、図1において外面7に設けられた凹部については図示を省略している。
【0029】
また、図3に示すように、本実施の形態1では、貼付部材3は、粘着材層11、印刷層10、及び滑り止め層9を順に積層することによって形成できる。但し、本実施の形態1において、貼付部材3の構成は特に限定されるものではない。
【0030】
滑り止め層9は、樹脂材料やゴム材料によって形成できる。樹脂材料及びゴム材料は、摩擦係数の高い材料であるのが好ましい。また、本実施の形態1では、印刷層10が設けられるため、これらの樹脂材料及びゴム材料は、光透過性を有しているのが好ましい。印刷層10が設けられない場合は、これらの樹脂材料及びゴム材料は、光透過性を有していなくても良い。また、滑り止め層9は、表面に凹凸を設けることによって摩擦係数を高めた部材によって形成されていても良く、この場合は、樹脂材料やゴム材料以外の材料であっても良い。
【0031】
具体的には、滑り止め層9を形成するための樹脂材料としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、AS樹脂、エポキシ樹脂、紫外線硬化樹脂といった樹脂材料が挙げられる。また、滑り止め層9を形成するためのゴム材料としては、シリコンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、スチレン−ブタジエンゴムといったゴム材料が挙げられる。
【0032】
印刷層10には、種々の模様や、図形、文字等が印刷されている。印刷された模様、図形、文字等は、本実施の形態1では、滑り止め層9を介して、外部から視認される。印刷層10としては、ポリエチレンフィルム、ポリカーボネイトフィルム、又は紙等を用いることができる。
【0033】
粘着材層11の形成材料、その厚み等は、特に限定されるものではない。粘着材層11の形成材料としては、筐体の形成材料に応じて、既存の材料から適宜選択したものを用いることができる。また、粘着材層11の厚みは、求められる粘着力が得られるように適宜設定すれば良い。例えば、滑り止め層9が劣化や破損した場合や、ユーザーが印刷層10のデザインの変更を希望した場合は、貼付部材3を剥離する必要がある。よって、粘着材層11の形成は、その粘着力が強くなりすぎないように行うのが好ましい。
【0034】
この医療機器1において、現在貼付されている貼付部材3を、印刷層10に印刷されている模様や滑り止め層9の色彩が異なる別の貼付部材3に貼り替えれば、医療機器1の外観は変化する。医療機器1によれば、従来のように保護カバーを用いなくても外観を変化できるため、低コストでの外観の変化が可能となり、更に、医療機器1の小型化が妨げられることもない。
【0035】
また、本実施の形態1では、貼付部材3の筐体2への貼付は、粘着材層11によって行われている。よって、ユーザーは、簡単に貼付部材3を貼り替えることができるので、医療機器の外観を自己の好みに合わせたり、外観の変化を楽しんだりすることができる。そして、この結果、ユーザーは、医療機器1に対する愛着を深めたり、気持ちをリフレッシュしたりすることができる。また、貼付部材3のデザインを目立つものとすれば、医療機器1が小型化し、紛失し易くなっても、これを抑制することができる。
【0036】
また、本実施の形態では、貼付部材3に滑り止め効果を付与することができるため、ユーザーが誤って機器を落下させてしまう事態の発生が抑制される。更に、本実施の形態1では、ユーザーが医療機器1を操作するときに、その手が最も触れやすい側面、即ち、面6及び7に貼付部材3が設けられている。これにより、貼付部材3による滑り止め効果は効率良く発揮される。また、貼付部材3は、凹部8の内側に貼付されているので、筐体2の外面に、単に貼り付けた場合と異なり、使用中に貼付部材3が外部の他の物体に接触して剥離されてしまうのが抑制される。
【0037】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2における医療機器について、図4及び図5を参照しながら説明する。図4は、本発明の実施の形態2における医療機器を示す側面図である。図5は、図4に示した医療機器を切断線B−B´に沿って切断して得られる断面図である。
【0038】
図4及び図5に示すように、本実施の形態2における医療機器20では、凹部8は、その開口縁8aと貼付部材3との間に隙間12が形成されるように設けられている。言い換えると、凹部8は、その開口面積が、貼付部材3の貼付面積よりも大きくなるように形成されている。
【0039】
図4及び図5の例では、開口縁全体にわたって隙間12が形成されている。このため、医療機器20を側方から見ると、貼付部材3の周りに側溝が設けられた状態となっている(図4参照)。医療機器20は、上述した部分以外の部分については、実施の形態1における医療機器1と同様に構成されている。
【0040】
このような構成により、医療機器20を用いた場合は、ユーザーは、指や爪等を隙間12に差し込むことができ、貼付部材3を簡単に剥がすことができる。本実施の形態2によれば、貼付部材3の貼り替えが必要なときに簡単に古い貼付部材3を剥離できるので、ユーザーは、いっそう外観の変化を楽しむことができる。
【0041】
なお、隙間12が大きくなりすぎると、貼付部材3が外部の物体と接触し易くなり、ユーザーの意図しない剥離が生じやすくなる。よって、隙間12は大きくなり過ぎないように形成する必要がある。
【0042】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3における医療機器について、図6及び図7を参照しながら説明する。図6は、本発明の実施の形態3における医療機器を示す側面図である。図7は、図6に示した医療機器を切断線C−C´に沿って切断して得られる断面図である。
【0043】
図6及び図7に示すように、本実施の形態3における医療機器21も、実施の形態2における医療機器20と同様に、凹部8は、その開口縁8aと貼付部材3との間に隙間12が形成されるように設けられている。
【0044】
但し、本実施の形態3では、実施の形態2と異なり、凹部8は、一部の開口縁8aと貼付部材3との間にのみ、隙間12が形成されるように設けられている。また、本実施の形態3における医療機器21は、実施の形態2における医療機器20と異なり、更に、隙間12を塞ぐカバー13を備えている。カバー13は、板状を呈し、弾性体14を介して凹部8に固定されている。図6においては、カバー13にはハッチングが施されている。
【0045】
図7の例では、この弾性体14としては、コイルバネが用いられている。このコイルバネ(弾性体14)の一端はカバー13に固定され、他端は凹部8の底面に固定されている。よって、弾性体14は、カバー13が外力によって凹部8の内側に向けて押圧されると(例えば、ユーザーが指等でカバー13を押すと)弾性変形する。そして、弾性体14に与えられている外力が除去されると、弾性体14は、カバー13を元の位置に復帰させる。
【0046】
このように、本実施の形態3では、実施の形態2と異なり、隙間12は通常の状態ではカバー13によって塞がれている。つまり、ユーザーが貼付部材3の剥離を決定し、カバー13が押されるまでは、隙間12の存在は隠された状態となっている。このため、本実施の形態3によれば、実施の形態2に比べて、貼付部材3の端が外部の物体に接触することによる貼付部材3の剥離の発生は抑制される。なお、医療機器21は、上述した部分以外の部分については、実施の形態1における医療機器1や、実施の形態2における医療機器20と同様に構成されている。
【0047】
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4における医療機器について、図8及び図9を参照しながら説明する。図8は、本発明の実施の形態4における医療機器を示す側面図である。図9は、図8に示した医療機器を切断線D−D´に沿って切断して得られる断面図である。
【0048】
図8及び図9に示すように、本実施の形態4における医療機器22では、筐体2に、凹部8の外周に沿って溝15が設けられている。また、筐体2における、溝15と凹部8との間の部分は、貼付部材3に面する壁部16となっている。
【0049】
この構成により、本実施の形態4では、ユーザーは、溝15の内部から貼付部材3に向けて(図9中の矢印の方向に向けて)、壁部16を押圧できる。そして、この押圧により、貼付部材3は変形し、粘着材層11の凹部8に対する接着面積が小さくなり、貼付部材3は剥がれ易い状態となる。
【0050】
また、図8及び図9の例では、溝15は、貼付部材3の各長辺に沿って2つずつ設けられている。よって、一方の長辺に隣接する溝15と他方の長辺に隣接する溝15とは対向し、貼付部材3は、壁部16によって囲まれた状態となっている。このため、ユーザーは、例えば親指と人差し指とで、壁部16を介して貼付部材3をつまむことができ、貼付部材3を簡単に変形させることができる。
【0051】
このように、本実施の形態4によれば、実施の形態1に比べて、貼付部材3の剥離作業は容易なものとなる。また、貼付部材3の端は、外部に露出しにくいため、貼付部材3の端が外部の物体に接触することによる貼付部材3の剥離の発生も抑制される。なお、医療機器22は、上述した部分以外の部分については、実施の形態1における医療機器1と同様に構成されている。
【0052】
また、本実施の形態4では、壁部16を介した貼付部材3の押圧を容易なものとするため、筐体2の形成材料としては、次の樹脂やゴムを用いるのが好ましい。樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、塩化ビニル樹脂、フェノール樹脂、ナイロンアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリサルホン樹脂等が挙げられる。ゴムとしては、シリコンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、スチレン・ブタジエンゴム等が挙げられる。
【0053】
また、溝15の深さiは、例えば、凹部8の深さIの2倍〜3倍であるのが好ましい。更に、溝15と凹部8との距離(壁部16の厚み)hは、例えば、溝15の幅Hの0.3倍〜0.5倍であるのが好ましい。
【0054】
(実施の形態5)
本発明の実施の形態5における医療機器について、図10及び図11を参照しながら説明する。図10は、本発明の実施の形態5における医療機器を示す分解斜視図である。図11(a)は、図10に示した医療機器を切断線E−E´に沿って切断して得られる断面図、図11(b)は、図10に示した医療機器を切断線F−F´に沿って切断して得られる断面図である。
【0055】
図10、図11(a)及び(b)に示すように、本実施の形態5における医療機器23では、凹部8の断面の底側がV形状に形成されている。このため、貼付部材3は、弾性変形した状態で凹部8の内側に貼付され、貼付部材3の粘着材層11の粘着面の一部は、凹部8の内側に接触していない状態となる。よって、後に貼付部材3を剥離する必要性が発生した場合に、ユーザーは、貼付部材3を簡単に剥離できる。また、剥離し易さの程度は、次に述べるように、V形部分17の角度によって設定することができる。
【0056】
本実施の形態5では、図10、図11(a)及び(b)に示すように、凹部8は、そのV形部分17の角度が変化するように形成されている。具体的には、切断線E−E´の断面から切断線F−F´の断面に向かうにつれて、V形部分17の角度は小さくなっている。このため、貼付部材3の凹部8に対する接着面積も一定ではなく、切断線E−E´の断面から切断線F−F´の断面に向かうにつれて変化することとなる。
【0057】
つまり、本実施の形態5では、貼付部材3の粘着力は、切断線F−F´の断面に向かうにつれて小さくなっている。本実施の形態5は、貼付部材3の粘着力を部分毎に制御したい場合に有効である。また、このように、貼付部材3は、底面が平らでない部分に貼付することもできる。
【0058】
その他、本発明における医療機器は、上述の実施の形態1〜5に示した態様以外の態様とすることもできる。例えば、貼付部材3の代わりに、図12〜図19に示す貼付部材を用いることもできる。ここで、実施の形態1〜5において、図3、図5、図7、図9、図11(a)及び図11(b)に示した貼付部材3を第1例とし、図12〜図19それぞれに示された貼付部材を第2例〜第9例として、以下に第2例〜第9例の貼付部材について説明する。
【0059】
図12(a)及び図12(b)は、本発明における医療機器で用いることができる貼付部材の第2例を示す図であり、図12(a)は粘着材層側からみた平面図、図12(b)は図12(a)中の切断線G−G´に沿って得られた断面図である。
【0060】
図12(a)及び図12(b)に示す貼付部材18においては、粘着材層11は、図3に示した例と異なり、印刷層10の全面に渡って形成されていない。貼付部材18における粘着材層11の粘着力は、図3に示した貼付部材3の粘着材層11の粘着力よりも弱くなっている。つまり、第2例では、粘着面積を小さくすることによって、粘着力が弱められている。第2例は、貼付部材の剥離が頻繁に行われる場合に有効である。
【0061】
図13は、本発明における医療機器で用いることができる貼付部材の第3例を示す斜視図である。図13に示す貼付部材19においては、それを貫くように、貫通孔19a及び19bが形成されている。このため、例えば、貫通孔19a及び19bそれぞれに棒部材24を挿通し、二つの棒部材24を把持手として利用すれば、簡単に貼付部材19を剥離することができる。図13に示す第3例の貼付部材19を用いれば、ユーザーにおいて、貼付部材19の貼り替えの手軽さが促進される。
【0062】
図14は、本発明における医療機器で用いることができる貼付部材の第4例を示す断面図である。図14に示すように、第4例の貼付部材30は、粘着材層11と、滑り止め層32とを備えている。また、粒状の識別部材31が、滑り止め層32の内部で分散した状態にある。そして、識別部材31は、発光性材料や、熱変色性材料、光反射性材料等によって形成されている。なお、図14において、滑り止め層32のハッチングは省略されている。
【0063】
ここで、発光性材料としては、例えば、蓄光材料や、蛍光材料が挙げられる。蓄光材料の具体例としては、アルミン酸ストロンチウム(SrAl)で形成された結晶母体に、ユウロピウム(Eu)やジスプロシウム(Dy)等の希土類元素を添加して得られたもの、硫化亜鉛(ZnS)に銅(Cu)を添加したもの等が挙げられる。蛍光材料としては、フルオレセインイソチオシアネートや、テトラメチルローダミンイソチオシアネート等が挙げられる。
【0064】
また、熱変色性材料としては、ロイコ染料等の発色剤と、顕色剤と、変色温度調整剤とを含有し、ある温度になると発色剤と顕色剤とが結合して発色する材料が挙げられる。具体的には、パイロット社製のメタモカラー(登録商標)が挙げられる。反射性材料としては、金属材料、ガラス材料等が挙げられる。
【0065】
滑り止め層32は、図3に示した滑り止め層9の形成材料と同様の形成材料を用いて形成できる。但し、滑り止め層32は、第4例においては、識別部材31に外部から光が入射するように、光透過性を有することが求められる。また、粘着材層11は、図3に示された粘着材層11と同様のものである。
【0066】
このような構成により、貼付部材30は外部から良く目立つため、医療機器に貼付部材30を適用すれば、特に、視力の弱い患者にとって、自己の医療機器の識別が容易なものとなる。また、識別部材31の形成材料として、上述の熱変色性材料を用いた場合は、識別部材31は、ユーザーの体温や周囲の温度を感知して変色する。そして、熱変色性材料が変色を開始する温度を、医療機器の使用可能な温度の上限(例えば40℃)と下限(例えば10℃)とに設定すれば、ユーザーは、識別部材31の色によって、医療機器が使用可能な温度にあるかどうかを判定できる。
【0067】
図15は、本発明における医療機器で用いることができる貼付部材の第5例を示す断面図である。図15に示すように、第5例の貼付部材40は、粘着材層11と、滑り止め層42との間に、識別層41を備えている。識別層41は、発光性材料や光反射性材料等によって形成されている。なお、図15において、滑り止め層42のハッチングは省略されている。
【0068】
ここで、発光性材料としては、第4例において述べたものが挙げられる。但し、第5例においては、発光性材料は層状に成形される。また、光反射性材料としては、金属材料や再帰性反射材料が挙げられる。金属材料の具体例としては、アルミニウムや銀等が挙げられ、これらの材料は箔状又は薄膜状に成形される。また、再帰性反射材料の具体例としては、直径が50μm〜500μm程度の多数のガラスビーズを面上に配列して形成されたシート材料が挙げられる。
【0069】
また、第5例においても、第4例と同様に、滑り止め層42には、識別層41に外部から光を入射させるための光透過性を有することが求められるが、それ以外の点では、滑り止め層42は、図3に示された滑り止め層9と同様に形成できる。また、粘着材層11は、図3に示された粘着材層11と同様のものである。このような構成により、貼付部材40も外部から良く目立つため、医療機器に貼付部材40を適用した場合も、特に、視力の弱い患者にとって、自己の医療機器の識別が容易なものとなる。
【0070】
図16は、本発明における医療機器で用いることができる貼付部材の第6例を示す断面図である。図16に示すように、貼付部材50は、粘着材層11と、滑り止め層52と、識別層51とを順に積層して形成されている。識別層51は、図14に示された第4例の識別層41と同様に形成することができる。なお、図16において、滑り止め層52のハッチングは省略されている。
【0071】
更に、第6例では、識別層51は、図14に示された第4例の説明で述べた熱変色性材料を用いて形成しても良い。この場合は、第4例と同様に、識別層51は、ユーザーの体温や周囲の温度を感知して変色する。そして、熱変色性材料が変色を開始する温度を、医療機器の使用可能な温度の上限と下限とに設定すれば、ユーザーは、識別層51の色によって、医療機器が使用可能な温度範囲内にあるかどうかを判定できる。
【0072】
第6例においては、滑り止め層52における光透過性の程度は特に限定されず、滑り止め層52としては、図3に示された滑り止め層9と同様のものを用いることができる。粘着材層11は、図3に示された粘着材層11と同様のものである。第6例では、識別層51が最上層に位置するため、医療機器に貼付部材50を適用した場合は、ユーザー(特に、視力の弱い患者)における識別容易性は更に向上することとなる。
【0073】
また、第6例は、識別層51の代わりに、シート状の温度計が貼付された態様であっても良い。具体的には、シート状の温度計としては、温度に応じて色が変化するコレステリック液晶を備えた液晶温度計が挙げられる。液晶温度計は、例えば、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃のように、大体の温度をユーザーに知らせることができる。よって、この場合も、識別層51が熱変色性材料を用いて形成されている場合と同様に、ユーザーは、医療機器が使用可能な温度範囲内にあるかどうかを判定できる。
【0074】
図17は、本発明における医療機器で用いることができる貼付部材の第7例を示す断面図である。図17に示す第7例の貼付部材60は、第1例〜第6例の貼付部材と異なり、ユーザーをリラックスさせる機能を備えている。図17に示すように、貼付部材60は、粘着材層11と、分離層61と、芳香成分含浸層62と、滑り止め層63とを備えている。分離層61及び芳香成分含浸層62は、順に、粘着材層11の一方側に積層され、更に、滑り止め層63は、粘着材層11の一方側に、分離層61及び芳香成分含浸層62を覆うように形成されている。なお、図17において、滑り止め層63のハッチングは省略されている。
【0075】
芳香成分含浸層62は、多孔質材料に、芳香成分を含む材料を含浸させることによって形成することができる。多孔質材料としては、第1例の滑り止め層9の形成材料として挙げた樹脂材料やゴム材料を出発材料とし、これを発泡させて得られる多孔質材料が挙げられる。
【0076】
芳香成分を含む材料としては、オレンジ油、レモン油、ライム油、ブチグレン油、ユズ油、ネロリ油、ベルガモット油、ラベンダー油、ラバジン油、アビエス油、ベイ油、イランイラン油、ラブダナム油、シトロネラ油、ゼラニウム油、ペパーミント油、スペアミント油、ユーカリ油、レモングラス油、パチュリ油、ジャスミン油、ローズ油、シダー油、ベチバー油、ガルバナム油、オークモス油、パイン油、樟脳油、白檀油、リナロール、ゲラニオール、シトロネロール、l−メントール、ボルネオール、β−フェニルエチルアルコール、n−ノニルアルデヒド、シトラール、シンナミックアルデヒド、リリアール、バニリン、カンファー、ヨノン、エチレンブラシレート、ガラクソリド、酢酸リナリル等が挙げられる。
【0077】
滑り止め層63は、芳香成分含浸層62に含まれる芳香成分が通過可能なものであれば良く、具体的には、滑り止め層63としても、上述の多孔質材料を用いることができる。但し、滑り止め層63は、ユーザーの手が触れる部分であり、ある程度の柔軟性を有しているのが好ましい。具体的には、滑り止め層63を形成する多孔質材料としては、孔径が300μm〜3000μm程度のものを用いるのが好ましい。
【0078】
分離層61は、芳香成分含浸層62に含まれる芳香成分と、粘着材層11に含まれる粘着材との反応を阻止するために配置されている。分離層61としては、アルミニウム箔等の金属箔を用いることができる。粘着材層11は、図3に示された粘着材層11と同様のものである。
【0079】
このような構成により、ユーザーが、貼付部材60が貼付された医療機器を握ると、貼付部材60から芳香成分が発散されることとなる。そして、ユーザーは、芳香成分により、リラックスすることができる。また、特に、ユーザーが疾患を患った患者である場合は、芳香成分により、苦痛の緩和が図られると考えられる。更に、ユーザーが香りを選択できるようにした場合は、ユーザーは、貼付部材60からの香りによって、自己の医療機器を特定することができる。
【0080】
図18は、本発明における医療機器で用いることができる貼付部材の第8例を示す断面図である。図18に示す第8例の貼付部材70は、第1例〜第7例の貼付部材と異なり、圧を受けると音を発する機能を備えている。図18に示すように、貼付部材70は、粘着材層11と、回路基板71と、滑り止め層73とを備えている。回路基板71は、圧力センサ72及び薄型のスピーカ74を実装している。なお、図18において、滑り止め層73のハッチングは省略されている。
【0081】
回路基板71は、粘着材層11の一方側に配置され、スピーカ74を駆動する駆動回路と、スピーカ74に電力を供給する電源回路とを備えている(これらの回路については図示せず)。また、電源回路には、電池(図示せず)も備えられている。滑り止め層73は、回路基板71、圧力センサ72及びスピーカ74を覆うように形成されている。
【0082】
圧力センサ72は、滑り止め層73に対する押圧を検知可能なものであれば良い。図18の例では、圧力センサ72は、ピエゾ抵抗素子が形成されたダイヤフラム(図示せず)を備えている。よって、滑り止め層73が押圧され、それによってダイヤフラムが変形すると、ピエゾ抵抗素子の電気抵抗が変化し、同時に、圧力センサ72からの電気信号のレベルも変化する。
【0083】
回路基板71に備えられた駆動回路(図示せず)は、圧力センサ72からの電気信号のレベルを検知する機能を有し、滑り止め層73が押圧されたことを検知する。そして、駆動回路は、滑り止め層73の押圧を検知すると、電源回路に、スピーカ74への電力供給を行わせ、スピーカ74から予め設定された音を出力させる。
【0084】
滑り止め層73としては、図3に示された滑り止め層9と同様のものを用いることができる。また、図17に示された滑り止め層63と同様に、滑り止め層73としても、多孔質材料を用いることができる。粘着材層11は、図3に示された粘着材層11と同様のものである。
【0085】
このような構成により、ユーザーが、貼付部材70が貼付された医療機器を握ると、貼付部材70から音が出力される。第8例の貼付部材70は、特に、指先の触覚が鈍くなってしまった患者に対して有効である。また、貼付部材70においては、滑り止め層73にかかる圧力に閾値を設定し、設定された閾値に到達しない場合は、音が出力されないようにすることもできる。この場合、患者は、貼付部材70からの音によって、医療機器をしっかり保持できていることを認識できる。更に、このことは、患者の把持機能の強化訓練にもつながる。
【0086】
また、出力される音をユーザーによって選択できるようにすることで、ユーザーは、貼付部材70からの音によって、自己の医療機器を特定することができる。更に、貼付部材70から音楽が出力されるようにすれば、ユーザーは、それによってリラックスすることができる。また、特に、ユーザーが疾患を患った患者である場合は、音楽により、苦痛の緩和が図られると考えられる。更に、貼付部材70が貼付された医療機器は、ユーザーが誤って落下させた場合も音を出力する。よって、特に、ユーザーが難聴や盲目である場合に、有効である。
【0087】
図19は、本発明における医療機器で用いることができる貼付部材の第9例を示す断面図である。図19に示された断面は、貼付部材80を長軸方向に沿って切断して得られる断面である。図19に示す第9例の貼付部材80は、第1例〜第8例の貼付部材と異なり、ユーザーによる把持を容易にするための凹部82を備えている。具体的には、図19に示すように、貼付部材80は、粘着材層11と、その一方の側に配置された滑り止め層81とを備えている。滑り止め層81には、4つの凹部82が形成されている。なお、図19において、滑り止め層81のハッチングは省略されている。
【0088】
各凹部82は、貼付部材80が取り付けられた医療機器をユーザーが把持する際に、その指が収まるように、貼付部材80の短軸方向に沿って間隔を置いて形成されている。凹部82の数、幅、深さ等は適宜設定すれば良く、特に限定されるものではない。凹部82が設けられた滑り止め層81は、図3に示した滑り止め層9の形成材料と同様の形成材料を型に流し込み、これを硬化させることによって形成できる。
【0089】
更に、各凹部82の配置及び形状をユーザーの手の形に合わせる場合は、次の手順で滑り止め層81を形成すれば良い。先ず、ユーザーの手の形をシリコンゴム等で型取りし、この型から雄型を作成する。次いで、この雄型から雌型を作成し、この雌型に形成材料を流し込めば、各凹部82の配置及び形状がユーザーの手の形に整合した、滑り止め層81が形成される。また、図17に示された滑り止め層63と同様に、滑り止め層81としても、多孔質材料を用いることができる。粘着材層11は、図3に示された粘着材層11と同様のものである。
【0090】
このような構成により、貼付部材80が貼付された医療機器は、ユーザーにとって保持しやすいものとなる。第9例の貼付部材80も、第8例の貼付部材70と同様に、特に、ユーザーが、指先の触覚が鈍くなってしまった患者である場合に有効である。また、ユーザーは、手探りによって確実に医療機器を保持できるため、ユーザーが視力の弱い患者である場合にも有効である。
【0091】
ところで、上述した実施の形態1〜実施の形態5に示した医療機器は、それぞれ、独自の機能も備えており、様々なユーザーの好みに対応することができる。よって、実施の形態1〜実施の形態5に示した医療機器は、ユーザーの希望に応じたカスタマイズが施された状態で、販売されることが求められている。
【0092】
具体的には、ユーザーが、自己のコンピュータ装置の画面上に、カスタマイズされた状態の仮想の医療機器を表示でき、そして、表示された医療機器を購入できる販売システムが求められている。このような販売システムは、販売用のWebサイトを提供するサーバ装置によって提供できる。ユーザーは、インターネットを介して、自己の端末装置でサーバ装置にアクセスすれば良い。この販売システムでは、ユーザーは、貼付部材の種類(図3、図12〜図19参照)、筐体の凹部の形状、筐体の色等を、カスタマイズでき、自分だけの医療機器を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
以上のように、本発明は、医療機器、特に携帯型の小型の医療機器の外観の変更に有効である。本発明の医療機器は、産業上の利用可能性を有している。
【符号の説明】
【0094】
1 医療機器(実施の形態1)
2 筐体
3 貼付部材
4 表示画面
5 筐体の主面
6、7 主面に隣接する面(側面)
8 凹部
8a 開口縁
9 滑り止め層
10 印刷層
11 粘着材層
12 隙間
13 カバー
14 弾性体
15 溝
16 壁部
17 V形部分
18 貼付部材
19 貼付部材
19a、19b 貫通孔
20 医療機器(実施の形態2)
21 医療機器(実施の形態3)
22 医療機器(実施の形態4)
23 医療機器(実施の形態5)
24 棒部材
h 溝と凹部との距離(壁部の厚み)
H 溝の幅
i 溝の深さ
I 凹部の深さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の状態を計測するための医療機器であって、
筐体と、貼付部材とを備え、
前記筐体は、外面に設けられた凹部と、計測結果を表示する表示画面とを備え、
前記凹部は、前記表示画面が設けられた面に隣接している面のうち、少なくとも1つの面内に設けられ、
前記貼付部材は、前記筐体の前記凹部の内側に貼付され、且つ、少なくとも粘着材層と滑り止め層とを備えている、
ことを特徴とする医療機器。
【請求項2】
前記凹部が、その長手方向が、前記前記表示画面が設けられた面に隣接している面の長手方法に沿うようにして、設けられている、請求項1に記載の医療機器。
【請求項3】
前記凹部は、その開口縁と前記貼付部材との間に隙間が形成されるように設けられている請求項1または2に記載の医療機器。
【請求項4】
当該医療機器が前記隙間を塞ぐカバーを更に備え、
前記カバーは、弾性体を介して前記凹部に固定され、
前記弾性体は、前記カバーが外力によって前記凹部の内側に向けて押圧されると弾性変形する請求項3に記載の医療機器。
【請求項5】
前記筐体に、前記凹部の外周に沿って、溝が設けられている請求項1に記載の医療機器。
【請求項6】
前記凹部の断面の底側がV形状に形成されている請求項1に記載の医療機器。
【請求項7】
前記滑り止め層が、樹脂材料又はゴム材料によって形成され、且つ、その内部で分散している粒状の識別部材を有し、
前記識別部材は、発光性材料、熱変色性材料、及び光反射性材料のいずれかによって形成されている、請求項1〜6のいずれかに記載の医療機器。
【請求項8】
前記貼付部材が、粘着材層と、識別層と、光透過性を有し、且つ、樹脂材料又はゴム材料によって形成された滑り止め層とを備え、
前記粘着材層、前記識別層、及び前記滑り止め層は、順に積層され、
前記識別層は、発光性材料または光反射性材料によって形成されている、請求項1〜6のいずれかに記載の医療機器。
【請求項9】
前記貼付部材が、粘着材層と、樹脂材料又はゴム材料によって形成された滑り止め層と、識別層とを備え、
前記粘着材層、前記滑り止め層、及び前記識別層は、順に積層され、
前記識別層は、発光性材料、熱変色性材料、及び光反射性材料のいずれかによって形成されている、請求項1〜6のいずれかに記載の医療機器。
【請求項10】
前記貼付部材が、粘着材層と、芳香成分を含む芳香成分含浸層と、多孔性を有し、且つ、樹脂材料又はゴム材料によって形成された滑り止め層とを備え、
前記芳香成分含浸層は、前記粘着剤層の一方側に配置され、
前記滑り止め層は、前記粘着剤層の一方側に、前記芳香成分含浸層を覆うように形成されている、請求項1〜6のいずれかに記載の医療機器。
【請求項11】
前記貼付部材が、粘着材層と、圧力センサ及びスピーカを実装する回路基板と、樹脂材料又はゴム材料によって形成された滑り止め層とを備え、
前記回路基板は、前記粘着剤層の一方側に配置され、且つ、前記圧力センサからの信号に応じて前記スピーカを駆動する駆動回路を備え、
前記滑り止め層は、前記粘着材層の一方側に、前記回路基板、前記圧力センサ、及び前記スピーカを覆うように形成されている、請求項1〜6のいずれかに記載の医療機器。
【請求項12】
前記貼付部材が、粘着材層と、樹脂材料又はゴム材料によって形成された滑り止め層とを少なくとも備え、
前記滑り止め層に、凹部が形成されている、請求項1〜6のいずれかに記載の医療機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−235192(P2011−235192A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188287(P2011−188287)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【分割の表示】特願2009−545330(P2009−545330)の分割
【原出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000141897)アークレイ株式会社 (288)
【Fターム(参考)】