説明

医療機器

【課題】被検体内への好適な挿入性を確保しつつ、被写体に照射する励起光強度を向上することができる医療機器を提供する。
【解決手段】光源装置3からの照明光を挿入部9の先端まで伝送するライトガイド28を、先端側に位置する第1の導光部28aと、この第1の導光部と光源装置3との間に介装された第2の導光部28bとに分割して構成し、第1の導光部28aとして多成分ガラスファイバを採用すると共に、第2の導光部28bとして液体ライトガイドを採用する。加えて、第1,第2の導光部28a,28b間に励起フィルタを挿脱可能に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体に励起光を照射した際に発せられる蛍光の像を観察可能な医療機器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、内視鏡等の医療機器においては、白色光を生体内の被写体に照射し、被写体の像としての白色光画像(通常画像)を取得する白色光観察(通常観察)の他に、特定の波長帯域を有する励起光を生体内の被写体に照射し、被写体から発せられる蛍光の像(蛍光画像)を取得する蛍光観察を行うことが可能なものが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、光源プロセッサ装置(光源装置)に接続する内視鏡のコネクタ部内に、ライトガイドの基端に対して励起光透過部材を挿脱可能に移動させるステージ機構を設けることにより、白色光のみを発生させる光源装置を用いて通常観察と蛍光観察とを実現する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−80819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種の医療機器においては、被検体内への挿入性を確保するため、ライトガイドとして、可撓性に優れ且つ細径化が容易な多成分ガラスファイバを採用することが一般的である。
【0006】
しかしながら、多成分ガラスファイバからなるライトガイドは、一般に、短波長域の光の減衰率が高く(すなわち、短波長域の光の透過率が低く)、この減衰率は距離に対して指数関数的に作用する。従って、光源装置から先端部までの長さ(光路長)が長尺となる内視鏡において多成分ガラスファイバからなるライトガイドを用いた場合、特に、励起光として用いられる光が大きく減衰してしまい、観察に適した光量を確保することが困難な場合がある。
【0007】
これに対処し、短波長の光の透過率が高い石英製の光ファイバや液体ライトガイド等を医療機器のライトガイドとして採用することも考えられる。しかしながら、石英製のファイバは、折れやすく、特に、激しく屈曲される軟性鏡の湾曲部等に利用することは困難である。また、液体ライトガイドは、チューブ内に液体を封入する構成であるため、細径化が困難であり、しかも、被検体内に挿入される部位への適用は回避することが好ましい。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、被検体内への好適な挿入性を確保しつつ、被写体に照射する励起光強度を向上することができる医療機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様による医療機器は、被検体内に挿入される挿入部と、被写体に照射する励起光の波長帯域を含む光を発生させる光源からの光を、前記挿入部の先端まで導光する第1の導光部と、少なくとも前記励起光に対応する波長帯域の透過率が前記第1の導光部よりも高く、前記第1の導光部と前記光源との間に介装された第2の導光部と、前記第1の導光部と前記第2の導光部との間に挿脱可能に設置された励起フィルタと、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の医療機器によれば、被検体内への好適な挿入性を確保しつつ、被写体に照射する励起光強度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態に係わり、電子内視鏡システムの概略構成図
【図2】同上、主として電子内視鏡システムの照明光学系について説明する概略構成図
【図3】同上、挿入部の要部断面図
【図4】同上、操作部内に配置したフィルタ挿脱機構の要部断面図
【図5】同上、フィルタ挿脱機構の分解斜視図
【図6】同上、励起フィルタを光路内に挿入した状態のフィルタ挿脱機構を示す平面図
【図7】同上、励起フィルタを光路から退避させた状態のフィルタ挿脱機構を示す平面図
【図8】同上、ライトガイドの光透過特性図
【図9】同上、フィルタ挿脱機構の変形例を示す分解斜視図
【図10】同上、励起フィルタを光路内に挿入した状態のフィルタ挿脱機構を示す平面図
【図11】同上、励起フィルタを光路から退避させた状態のフィルタ挿脱機構を示す平面図
【図12】本発明の第2の実施形態に係わり、操作部内に配置したフィルタ挿脱機構を示す要部断面図
【図13】同上、フィルタ挿脱機構の分解斜視図
【図14】同上、励起フィルタを光路から退避させた状態を示す要部断面図
【図15】同上、励起フィルタを光路内に挿入した状態を示す要部断面図
【図16】本発明の第3の実施形態に係わり、先端部の要部断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の形態を説明する。図1乃至図11は本発明の第1の実施形態に係わり、図1は電子内視鏡システムの全体構成図、図2は主として電子内視鏡システムの照明光学系について説明する概略構成図、図3は挿入部内に配置したフィルタ挿脱機構の要部断面図、図4は操作部の要部断面図、図5はフィルタ挿脱機構の分解斜視図、図6は励起フィルタを光路内に挿入した状態のフィルタ挿脱機構を示す平面図、図7は励起フィルタを光路から退避させた状態のフィルタ挿脱機構を示す平面図、図8はライトガイドの光透過特性図、図9はフィルタ挿脱機構の変形例を示す分解斜視図、図10は励起フィルタを光路内に挿入した状態のフィルタ挿脱機構を示す平面図、図11は励起フィルタを光路から退避させた状態のフィルタ挿脱機構を示す平面図である。
【0013】
図1,2に示すように、電子内視鏡システム(以下、単に内視鏡システムという)1は、医療機器としての電子内視鏡(以下、単に内視鏡という)2と、光源装置3と、ビデオプロセッサ4と、モニタ5と、を備えて構成されている。
【0014】
内視鏡2は、観察対象部位(被検体内)に挿入される細長の挿入部9と、この挿入部9の基端部に連設された操作部10と、この操作部10の側部より延設されたユニバーサルコード17と、を有して構成されている。
【0015】
挿入部9は、後述する撮像ユニット27等を内蔵した先端部6と、所望の角度に湾曲可能な湾曲部7と、可撓性を有する可撓管部8と、が先端側から順に連設されて構成されている。
【0016】
図3に示すように、先端部6は、金属部材からなる硬性の先端部本体25を有し、この先端部本体25の先端側外周には樹脂等の部材からなる先端カバー26が装着されている。また、先端部本体25には、撮像ユニット27が固定されていると共に、ライトガイド28の先端部が照明レンズ29と一体的に固定されている。
【0017】
ここで、本実施形態の撮像ユニット27は、先端側にレンズ枠27aを有し、このレンズ枠27aの内周には、複数の対物レンズ27bからなる対物光学系と、所定波長以下の光(例えば、励起光成分を含む440nm以下の光)を遮断する励起光カットフィルタ27cと、が保持されている。また、レンズ枠27aの基端側には撮像部を構成する素子枠27dが嵌合され、この素子枠27dの内周には、一対のカバーガラス27eが固定されている。さらに、これらカバーガラス27eのうち基端側に位置するカバーガラス27eには、カラーCCD等からなる固体撮像素子27fの撮像面が接着剤等を介して貼着されている。
【0018】
湾曲部7は、一列に配列された複数の湾曲駒31がリベット32を介して回動自在に連結されて要部が構成されている。これら湾曲駒31のうち、先端に位置する湾曲駒31は、先端部6内まで延設されて先端部本体25の基部に連結されている。また、各湾曲駒31の外周には湾曲ゴム33が被覆され、この湾曲ゴム33の先端部は、糸巻き部34により、先端カバー26の基端部と液密に連結されている。
【0019】
一方、湾曲部7の基端に位置する湾曲駒31には、例えば、筒状の連結部材35が固定され、この連結部材35の外周には、可撓管部8を構成するブレード36の先端側が固定されている。さらに、ブレード36の外周には外皮チューブ37が被覆され、この外皮チューブ37の先端部は、糸巻き部38により、湾曲ゴム33の基端部と液密に連結されている。
【0020】
図1に示すように、操作部10は、挿入部9の可撓管部8の一端(基端)側に接続する折れ止め部11と、挿入部9に各種処置具を挿通する処置具チャンネルの開口部である処置具チャンネル挿通部12と、操作部本体13と、を有して構成されている。
【0021】
操作部本体13には、挿入部9の湾曲部7を湾曲操作するための湾曲操作ノブ14が回動自在に配設されると共に、各種内視鏡機能のスイッチ類等が設けられている。なお、湾曲操作ノブ14は、湾曲部7を上下方向に湾曲操作するためのUD湾曲操作ノブ14aと、湾曲部7を左右方向に湾曲操作するためのRL湾曲操作ノブ14bと、が重畳するように配設されている。また、例えば、操作部本体13の基端部には、スイッチ類を構成するスイッチの1つとして、被写体像の観察形態を白色光観察或いは蛍光観察の何れかに選択的に切り換える切換スイッチ15が配設されている。
【0022】
ユニバーサルコード17は、内視鏡コネクタ18を延出端部(基端部)に有する。この内視鏡コネクタ18は、光源装置3に着脱自在に装着され、ユニバーサルコード17、操作部10、及び、挿入部9内に挿通配置されたライトガイド28の基端部を光源装置3と光学的に接続する。これにより、ライトガイド28は、光源装置3で発生した照明光を先端部6まで伝送することが可能となっている。
【0023】
また、内視鏡コネクタ18には電気コネクタ20aが着脱自在に接続され、この電気コネクタ20aから延出するコイルケーブル19の延出端には、ビデオプロセッサ4と着脱自在な電気コネクタ20bが設けられている。この電気コネクタ20bがビデオプロセッサ4に装着されると、撮像ユニット27から延出する信号ケーブル27g等がビデオプロセッサ4と電気的に接続される。これにより、ビデオプロセッサ4は、撮像ユニット27によって光電変換された内視鏡画像信号を信号処理し、画像信号をモニタ5に出力して、モニタ5に内視鏡画像を表示させる。
【0024】
ここで、図2に示すように、光源装置3は、被写体に照射する励起光の波長帯域(例えば、415nm付近の波長帯域)を含む略白色光の照明光を発生させるキセノンランプ等のランプ41を光源として備え、このランプ41で発生された照明光は、その光路上に設けられた集光レンズ42を経てライトガイド28の端面に入射される。なお、本実施形態において、ランプ41と集光レンズ42との間には赤外カットフィルタ43が介装されており、ライトガイド28への入射光は、例えば、650nmよりも短い波長の光に制限されている。
【0025】
また、光源装置3からの照明光を伝送するライトガイド28は、例えば、主として挿入部9内に挿通された第1の導光部28aと、主としてユニバーサルコード17内に挿通されることにより第1の導光部28aと光源装置3との間に介装された第2の導光部28bと、を備えて構成されている。本実施形態において、第1の導光部28aには、例えば、可撓性に優れ且つ細径化が容易な多成分ガラスファイバが採用されている。一方、第2の導光部28bには、例えば、多成分ガラスファイバに比して特に紫外線領域から可視光線領域の透過率が高い液体ライトガイド(図8参照)が採用されている。すなわち、第1,第2の導光部28a,28bは互いに異なる導光部材で構成され、第2の導光部28bは、少なくとも励起光に対する波長帯域の透過率が第1の導光部28aよりも高い特性となっている。なお、図4に示すように、本実施形態における第2の導光部28bは、第1の導光部28aよりも相対的に太径のものが用いられている。
【0026】
図4に示すように、これら第1の導光部28aの基端部と第2の導光部28bの先端部とは、例えば、操作部10内(より具体的には、操作部本体13内)において光学的に連結されている。その際、第1,第2の導光部28a,28b間には、これらの間での光の散乱、反射、或いは、外径の相違等に起因する光のエネルギーロスを低減するため、例えば、第2の導光部28bからの出射光を所定に集光させて第1の導光部28aに入射させるための連結光学系45が介装されている。さらに、第1,第2の導光部28a,28b間には、必要に応じてライトガイド28の光路内に励起フィルタ50を挿脱することにより白色光から励起光成分を抽出するためのフィルタ挿脱機構46が、連結光学系45に隣接して介装されている。
【0027】
具体的に説明すると、図4に示すように、連結光学系45は、例えば、互いに対向する曲面を有する片凸レンズからなる第1,第2のレンズ45a,45bと、これらを第2の導光部28bの先端部と一体的に保持するレンズ枠45cとを備えて構成されている。
【0028】
本実施形態において、第2のレンズ45bは、例えば、第2の導光部28bからの出射光を略平行光に制御するよう設計されている。そして、レンズ枠45c内において、第2のレンズ45には、透明接着剤等を介して、第2の導光部28bの端面が接着固定されている。
【0029】
また、第1のレンズ45aは、第2のレンズ45bを介して略平行光に制御された第2の導光部28bからの出射光を所定の集光光に制御するよう設計されている。そして、レンズ枠45c内において、第1のレンズ45aは、その突端が第2のレンズ45bの突端に当接するよう保持され、第1の導光部28aの基端面に対向配置される。
【0030】
図4乃至図7に示すように、フィルタ挿脱機構46は、操作部本体13内で互いに対向配置された第1,第2の基板47,48と、第1,第2の基板47,48間に揺動可能に支持されたフィルタ保持具49と、を有する。
【0031】
第1の基板47には、第1の開口部47aと、第1の開口部47aからオフセットした位置に開口する第1の軸受孔47bと、が設けられ、第1の開口部47aには第1の導光部28aの基端部が嵌合されている。また、第1の基板47には、フィルタ保持具49の揺動範囲を規定するための一対のピン53a,53bが立設されている。
【0032】
第2の基板48には、第1の開口部47aと第1の軸受孔47bとにそれぞれ対応する位置に、第2の開口部48aと、第2の軸受孔48bとが設けられ、第2の開口部48aには連結光学系45のレンズ枠45cが嵌合されている。また、第2の基板48上において、第2の軸受孔48bを挟む対称位置には、互いに巻回方向の異なる一対のコイル52a,52bが固設されている。
【0033】
フィルタ保持具49には、第1,第2の開口部47a,48aと第1,第2の軸受孔47b,48bとにそれぞれ対応する位置に、開口部49aと、軸孔49bとが設けられ、開口部49aには励起フィルタ50が保持されている。ここで、励起フィルタ50は、例えば、415nm以下の波長の光のみを透過するフィルタで構成されている。
【0034】
また、軸孔49bには、円柱形状をなす永久磁石51が固設されている。この永久磁石51の各端部は第1,第2の軸受孔47b,48bにそれぞれ遊嵌され、これにより、フィルタ保持具49は、第1,第2の基板47,48に揺動自在に支持されている。
【0035】
また、例えば、図4に示すように、永久磁石51の一端部は、第2の軸受孔47bから突出され、コイル52a,52b間に臨まされている。ここで、これらコイル52a,52bを流れる励磁電流の方向は、切換スイッチ15の操作によって順次反転されるようになっており、この励磁電流によって、コイル52a,52bは、円柱状の永久磁石51を時計回り或いは反時計回りに回転させるための磁場を発生する。そして、このように順次反転される永久磁石51の回転力が伝達されることにより、フィルタ保持具49は、励起フィルタ50を第1,第2の導光部28a,28b間に浸入させる第1の位置(図6参照)と、励起フィルタ50を第1,第2の導光部28a,28b間から退避させる第2の位置(図7参照)との間で揺動される。
【0036】
このような構成において、ライトガイド28内(第1,第2の導光部28a,28b間)から励起フィルタ50が退避された状態にあるとき、光源装置3からの照明光(白色光)が第2の導光部28bに入射されると、入射された照明光は、連結光学系45を介してそのまま第1の導光部28aに伝達される。そして、第1の導光部28aを介して内視鏡2の先端部6まで導かれた照明光(白色光)は、照明レンズ29を介して被写体に照射される。これにより、撮像ユニット27では白色光に基づく被写体像が撮像され、モニタ5上には、ビデオプロセッサ4で信号処理された白色光画像が表示される。なお、撮像ユニット27内には励起光カットフィルタ27cが介装されているため、固体撮像素子27fでは、青色成分中の短い波長帯域(例えば、440nm以下の波長帯域)がカットされた光の像が撮像されるが、ビデオプロセッサ4での信号処理において所定の補正が行われることにより、色再現上特に問題となることはない。
【0037】
一方、ライトガイド28内(第1,第2の導光部28a,28b間)に励起フィルタ50が挿入された状態にあるとき、光源装置3からの照明光(白色光)が第2の導光部28bに入射されると、入射された照明光は、連結光学系45及び励起フィルタ50を介して第1の導光部28aに伝達される。すなわち、励起フィルタ50の作用により、第1の導光部28aには、照明光として、例えば、415nm以下の波長帯域の光(励起光)が伝達される。そして、第1の導光部28aを介して内視鏡2の先端部6まで導かれた照明光(励起光)は、照明レンズ29を介して被写体に照射される。これにより、撮像ユニット27では、励起光によって被写体から発せられる蛍光(自家蛍光)の像が撮像される。その際、撮像ユニット27内に介装された励起光カットフィルタ27cによって被写体で反射された励起光成分がカットされることにより、固体撮像素子27fには、被写体から発せられる蛍光が好適に結像される。これにより、モニタ5上には、ビデオプロセッサ4で信号処理された蛍光画像が表示される。
【0038】
このような実施形態によれば、被写体に照射する励起光の波長帯域を含む光を発生させる光源装置3からの照明光を挿入部9の先端まで伝送するすライトガイド28を、先端側に位置する第1の導光部28aと、この第1の導光部と光源装置3との間に介装された第2の導光部28bとに分割して構成し、第1の導光部28aとして多成分ガラスファイバを採用すると共に、第2の導光部28bとして液体ライトガイドを採用することにより、被検体内への好適な挿入製を確保しつつ、被検体に照射する励起光強度を向上することができる。すなわち、内視鏡2の挿入部9側においては、可撓性に優れ且つ細径化が容易な多成分ガラスファイバからなる第1の導光部28aを採用することにより被検体内への挿入性を確保しつつ、第1の導光部28aと光源装置3との間に少なくとも励起光成分の伝達効率が高い液体ライトガイドからなる第2の導光部28bを採用することにより第1の導光部28aの光路長を大幅に短縮して特に励起光成分の減衰を低減することができる。加えて、第1,第2の導光部28a,28b間を有効に利用して励起フィルタ50を挿脱可能に配置することにより、内視鏡2内で白色光観察と励起光観察とを切換可能とする構成においても、励起フィルタ50の挿脱のためにライトガイド28を新たに分断等する必要がなく、この点においても光のエネルギーロスを有効に低減することができる。
【0039】
この場合において、第2の導光部28bと励起フィルタ50との間に連結光学系45を介在させ、連結光学系45によって所定に制御された光を励起フィルタ50に入射させることにより、励起フィルタ50に対し第2の導光部28bからの出射光を好適な入射角で入射させることが可能となり、励起フィルタ45における反射等による光のエネルギーロスを有効に低減することができる。
【0040】
また、第1,第2の導光部28a,28bの連結部を操作部10内に配置することにより、第1の導光部28aによる光路長を十分に短縮しつつ、フィルタ挿脱機構46の配置スペースを十分に確保することができる。
【0041】
ところで、上述のフィルタ挿脱機構46においては、励起フィルタ50をライトガイド28の光路(第1,第2の導光部28a,28b間)から退避させた際に、第1の導光部28aと第1のレンズ45aとの間に空隙(空気層)が形成されるが、第1,第2の導光部28a,28b間の光の伝達をより効率的に行うためには、これらの間に空隙をなるべく介在させないことが望ましい。そこで、本実施形態の変形例として、例えば、励起フィルタ50の退避時に、第1のレンズ45aと同程度の屈折率を有する光学部材としてのガラス板55をライトガイド28の光路中に介在させる構成について、図9乃至図11に示す。
【0042】
本変形例において、フィルタ挿脱機構46のフィルタ保持具49は、略扇状に形成されている。このフィルタ保持具49には、軸孔49bを中心とする同心円上に開口部49aと開口部49cとが設けられ、開口部49aに励起フィルタ50が保持され、開口部49cにガラス板55が保持されている。
【0043】
そして、このフィルタ保持具49は、例えば、ピン53a,53bによって規定された範囲内において、励起フィルタ50を第1,第2の導光部28a,28b間に浸入させる第1の位置(図6参照)と、励起フィルタ50に代えてガラス板55を第1,第2の導光部28a,28b間に浸入させる第2の位置(図7参照)と、の間で揺動される。
【0044】
このような構成によれば、励起フィルタ50の退避時にガラス板55を介在させることにより、第1の導光部28aや連結光学系45の第1のレンズ45a等と空気層との屈折率が大きく相違する場合にも光の散乱等を抑制でき、励起フィルタ50の退避時においても、光のエネルギーロスを好適に低減することができる。
【0045】
次に、図12乃至図15は本発明の第2の実施形態に係わり、図12は操作部内に配置したフィルタ挿脱機構を示す要部断面図、図13はフィルタ挿脱機構の分解斜視図、図14は励起フィルタを光路から退避させた状態を示す要部断面図、図15は励起フィルタを光路内に挿入した状態を示す要部断面図である。ここで、本実施形態は、励起フィルタ50の退避時に第1の導光部28aと第2の導光部28bとを相対移動させることにより、これらの間に形成される空隙を減少させるようにした構成の一例について説明するものである。なお、本実施形態において、上述の第1の実施形態と同様の構成については、同符号を付して説明を省略する。
【0046】
図12に示すように、本実施形態の連結光学系145は、第1の基板47に開口する第1の開口部47aに嵌合された第1のレンズ枠45dと、第2の基板48に開口する第2の開口部48aに嵌合された第2のレンズ枠45eとを有する。
【0047】
第1のレンズ枠45d内には、第1のレンズ45aが保持されている。さらに、第1のレンズ枠45d内において、第1のレンズ45aには、第1の導光部28aの基端面が透明接着剤等を介して接着固定されている。
【0048】
また、第2のレンズ枠45e内には、第2のレンズ45bが、光軸方向に対して進退移動可能に支持されている。さらに、第2のレンズ枠45e内において、第2のレンズ45bには、第2の導光部28bの先端面が透明接着剤等を介して接着固定されている。
【0049】
これらにより、本実施形態のフィルタ挿脱機構46は、連結光学系145の中途に介装されている。
【0050】
ここで、図12に示すように、第2の導光部28bの先端側は、所定の撓みを有した状態で操作部本体13内に配置されている。さらに、フィルタ挿脱機構46よりも基部側には、第2の導光部28bを第2のレンズ45bと共に先端側に付勢するための付勢機構60が設けられている。本実施形態において、付勢機構60は、例えば、操作部本体13内に立設されたバネ受け部60aと、第2の導光部28bの先端部に固設されると共にバネ受け部60a内を進退移動可能に貫通する筒部60bと、これらバネ受け部60aと筒部60bとの間に介装されたコイルバネ60cとを有して構成されている。
【0051】
一方、例えば、図13に示すように、フィルタ挿脱機構46を構成するフィルタ保持具49の側部には、テーパ^部61が設けられている。
【0052】
このような構成において、例えば、図14に示すように、励起フィルタ50が第1,第2の導光部28a,28b間から退避された第2の位置にあるとき、第2の導光部28bは付勢機構60のコイルバネ60cの付勢力によって先端側に付勢されて、第2のレンズ45bの突端は第1のレンズ45aの突端に当接される。これにより、励起フィルタ50が退避された通常観察時においても第1,第2の導光部28a,28b間(第1,第2のレンズ45a,45b間)の空隙を減少させることができる。
【0053】
一方、切換スイッチ15が操作されて、観察モードが白色光観察から励起光観察へと切り換えられると、フィルタ保持具49は、テーパ部61の作用により、コイルバネ60cの付勢力に抗して第1,第2のレンズ45a,45b間を拡開させながら、フィルタ50を第1の位置へと移動させる(図15参照)。これにより、励起フィルタ50は第1,第2の導光部28a,28b間に介装され、白色光から励起光の抽出が可能となる。なお、励起フィルタ50に入射される光は、例えば、第2のレンズ45bによって略平行光に制御されることにより、励起フィルタ50への入射時の光の反射等が好適に抑制される。
【0054】
このような実施形態によれば、上述の第1の実施形態で得られる作用効果に加え、付勢機構60及びテーパ部61等によって構成される移動機構によって第1,第2の導光部28a,28bを相対移動させ、励起フィルタ50の退避時に第1,第2の導光部28a,28b間に形成される空隙を減少させることにより、励起フィルタ50の退避時においても、光のエネルギーロスを好適に低減することができる。
【0055】
次に、図16は本発明の第3の実施形態に係わり、図16は先端部の要部断面図である。ここで、本実施形態は、フィルタ挿脱機構を挿入部内に配置した構成の一例について説明するものである。なお、本実施形態において、上述の第1の実施形態と同様の構成については、同符号を付して説明を省略する。
【0056】
図16に示すように、第1の導光部128aは、挿入部9内の先端部6から湾曲部7までの極めて短い距離に配設された第1の導光部128aと、この第1の導光部128aと光源装置3との間に介装された第2の導光部128bとを備えて構成されている。
【0057】
本実施形態において、第1の導光部128aは多成分ガラスファイバで構成され、第2の導光部128bは、第1の導光部128aと略同径をなし且つ少なくとも第1の導光部28aよりも励起光に対応する波長領域の透過率が高い石英ファイバで構成されている。
【0058】
また、挿入部9内において、第1,第2の導光部128a,128b間には、連結光学系45と、フィルタ挿脱機構46とが介装され、フィルタ挿脱機構46を構成する第1,第2の基板47,48が、例えば、連結部材35内に固設されている。
【0059】
このような構成によれば、上述の第1の実施形態と同様の作用効果に加え、多成分ガラスファイバで構成される第1の導光部128aの光路長を格段に短縮することができ、効果的に光のエネルギーロスを低減することができる。すなわち、少なくとも、挿入部9の先端部6と湾曲部7内に多成分ガラスファイバで構成した第1の導光部128aを配設することにより、湾曲部7の湾曲性を確保することができ、一方、第2の導光部128bに石英ファイバを採用することにより、挿入部9全体の細径化を実現することができる。
【0060】
なお、本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、種々の変形や変更が可能であり、例えば、上述の各実施形態の構成を適宜組み合わせてもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0061】
2 … 内視鏡(医療機器)
3 … 光源装置
4 … ビデオプロセッサ
5 … モニタ
6 … 先端部
7 … 湾曲部
8 … 可撓管部
9 … 挿入部
10 … 操作部
13 … 操作部本体
15 … 切換スイッチ
17 … ユニバーサルコード
27 … 撮像ユニット
27a … レンズ枠
27b … 対物レンズ
27c … 励起光カットフィルタ
27d … 素子枠(撮像部)
27e … カバーガラス(撮像部)
27f … 固体撮像素子(撮像部)
27g … 信号ケーブル
28 … ライトガイド
28a … 第1の導光部
28b … 第2の導光部
29 … 照明レンズ
35 … 連結部材
41 … ランプ(光源)
42 … 集光レンズ
43 … 赤外カットフィルタ
45 … 連結光学系
45a … 第1のレンズ
45b … 第2のレンズ
45c … レンズ枠
45d … 第1のレンズ枠
45e … 第2のレンズ枠
46 … フィルタ挿脱機構
47 … 第1の基板
47a … 第1の開口部
47b …第1の軸受孔
48 … 第2の基板
48a … 第2の開口部
48b … 第2の軸受孔
49 … フィルタ保持具
49a … 開口部
49b … 軸孔
49c … 開口部
50 … 励起フィルタ
51 … 永久磁石
52a,52b … コイル
55 … ガラス板(光学部材)
60 … 付勢機構
60a … バネ受け部
60b … 筒部
60c … コイルバネ
61 … テーパ部
128a … 第1の導光部
128b … 第2の導光部
145 … 連結光学系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体内に挿入される挿入部と、
被写体に照射する励起光の波長帯域を含む光を発生させる光源からの光を、前記挿入部の先端まで導光する第1の導光部と、
少なくとも前記励起光に対応する波長帯域の透過率が前記第1の導光部よりも高く、前記第1の導光部と前記光源との間に介装された第2の導光部と、
前記第1の導光部と前記第2の導光部との間に挿脱可能に設置された励起フィルタと、
を備えることを特徴とする医療機器。
【請求項2】
前記第1の導光部と前記第2の導光部との間に、前記励起フィルタの挿入時に退避され且つ前記励起フィルタの退避時に挿入される光学部材を挿脱可能に配置したことを特徴とする請求項1記載の医療機器。
【請求項3】
前記励起フィルタの退避時に前記第1の導光部と前記第2の導光部とを相対移動させて前記第1の導光部と前記第2の導光部との空隙を減少させる導光部移動機構を備えたことを特徴とする請求項1記載の医療機器。
【請求項4】
前記挿入部に接続されるとともに前記光源に対して前記第2の導光部を介して接続され、前記励起フィルタが内蔵された操作部を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の医療機器。
【請求項5】
前記第1の導光部を多成分ガラスファイバで構成し、前記第2の導光部を液体ライトガイドで構成したことを特徴とする請求項4記載の医療機器。
【請求項6】
前記挿入部は湾曲可能な湾曲部を備え、
前記前記第1の導光部と前記第2の導光部との連結部は、前記挿入部内において前記湾曲部よりも基部側に配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の医療機器。
【請求項7】
前記第1の導光部を多成分ガラスファイバで構成し、前記第2の導光部を石英ファイバで構成したことを特徴とする請求項6記載の医療機器。
【請求項8】
前記挿入部は、前記第1の導光部からの照射光に対する反射光に対して所定の波長帯域のみを透過する励起光カットフィルタと、
前記励起光カットフィルタを透過した光が結像する撮像部と、を備えることを特徴とする請求項1記載の医療機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2012−152455(P2012−152455A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15374(P2011−15374)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)
【Fターム(参考)】