説明

医療用アレイ式超音波プローブおよび医療用超音波診断装置

【課題】圧電素子および2層以上の音響整合層を切断して複数のチャンネルを形成するときのピッチ変動を低減し、かつ第1制御信号基板と圧電素子良好に接合できると共にそれら部材間の導電性を良好に確保することを可能にする。
【解決手段】バッキング材と、このバッキング材上に形成された第1制御信号基板と、第1制御信号基板上に圧電素子および2層以上の音響整合層を積層し、最上層の音響整合層から第1制御信号基板表面までをダイシングして形成された複数のチャンネルと、これらのチャンネル上に形成された第2制御信号基板とを具備し、88重量%以上のスズを含む鉛フリーハンダ合金層は前記第1制御信号基板から前記第2制御信号基板までの部材の隣接する間のうち、少なくとも前記第1制御信号基板と圧電素子の間に介在されてそれら部材同士を接合することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用アレイ式超音波プローブおよび医療用超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用の超音波診断装置や超音波画像検査装置は、対象物に対し超音波信号を送信し、その対象物内からの反射信号(エコー信号)を受信して対象物内を画像化するものである。この医療用の超音波診断装置や超音波画像検査装置は、超音波信号送受信機能を有する電子操作式のアレイ式超音波プローブが主に用いられている。
【0003】
一般的な超音波プローブは、バッキング材と、バッキング材上に接合され、圧電体の両面に電極を形成した圧電素子と、圧電素子上に接合された音響整合層とを有する。圧電素子および音響整合層は、アレイ加工により複数のチャンネルが形成される。音響整合層上には音響レンズが形成される。各チャンネルの圧電素子の電極は、制御信号基板(フレキシブル印刷配線板(FPC))を通して、またはケーブルを介して診断装置に接続される。
【0004】
このような超音波プローブにおいて、バッキング材は圧電素子の背面から放射される不要な超音波を吸収する。圧電素子は超音波の送受信素子として用いられる。音響整合層は圧電素子と人体との音響的なインピーダンスを整合し、超音波の送受信効率を上げる。したがって、音響整合層の音響インピーダンスは、圧電素子の圧電体(20〜38MRayls)と人体(1.5MRayls)の中間の値に設定される。複数層の音響整合層が用いられる場合には、各層の音響インピーダンスは人体に向かって徐々に小さくなるように設定される。アレイ加工によるチャンネルの配列ピッチは、50μm〜300μm程度である。音響レンズは超音波の送受信時に超音波の焦点を絞る役割をなす。
【0005】
従来、音響整合層は1層構造、2層構造または3層以上の多層傾斜構造のものが知られている。特に、最近では広帯域化のために3層以上の音響整合層が好適に用いられている(非特許文献1参照)。
【0006】
一方、特許文献1には超音波プローブの一般的な製造方法が開示されている。すなわち、バッキング材上の第1制御信号基板(例えばフレキシブル印刷配線板;FPC)を接合する。チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)のような圧電材料からなる圧電体の両面に電極を形成した圧電素子をFPCに貼り付ける。圧電素子上に音響整合層を接着して積層体とする。この接着工程において、加熱処理を施して接着を行う場合がある。つづいて、積層体を音響整合層側から圧電素子までをダイサーで50〜300μm程度の幅にアレイ状に切断して複数のチャンネルを形成する。この切断時に、音響整合層および接着層は高い切断加工性が要求される。アレイ切断後、各チャンネル間の切断溝に例えば低音響インピーダンス、高減衰性のシリコーンゴムのような比較的柔らかい樹脂を充填して機械的な強度を保持することもある。ひきつづき、複数のチャンネルの音響整合層上に第2制御信号基板(例えばアース板)および音響レンズをこの順序で接着することにより超音波プローブを製造する。
【0007】
このような超音波プローブの製造において、接着時の加熱、切断加工時に発生する熱などの負荷によって、圧電素子の圧電体のキュリー点を越え、圧電素子の分極が消失する、脱分極現象が起こる。この場合、第2制御信号基板の接続後に再分極処理が施される。
【0008】
圧電素子上の音響整合層は、人体への超音波の入・出射を効率よく行うために、有機樹脂中に酸化亜鉛粒子を分散した音響整合層(特許文献2参照)、固体無機物で形成された音響整合層、有機樹脂に酸化物粉末を分散させた混合物で形成された音響整合層(特許文献3参照)が用いられている。
【0009】
従来、制御信号基板、圧電素子および音響整合層を互いに接合するには、エポキシ樹脂のような熱硬化性樹脂が用いられている。この接着工程は、室温から150℃の加熱処理を施して熱硬化性樹脂の接着剤層を硬化する。加熱処理は、適度に加圧しながら行なわれる。これは、接着後の切断加工において接着強度を保ち、かつ制御信号基板(FPC)と圧電素子の接合のような導電性を保つ必要のある部分で、薄く一様な接着層を実現するためである。
【0010】
一方、特許文献4には導電性を必要とする部材間を板状の低融点のインジウム系または鉛系ハンダで接合することが記載されている。
【0011】
また、特許文献5には制御信号基板の信号線部分と予め短冊状に加工した圧電素子とを低融点のSn系鉛フリーハンダボールで接続し、圧電素子をアレイ状に配列することが記載されている。
【特許文献1】特開2005−198261号公報
【特許文献2】特開2004−104629号公報
【特許文献3】特開2006−95167号公報
【特許文献4】特開昭52−132789号公報
【特許文献5】特開2008−47971号公報
【非特許文献1】T. Inoue et al., IEEE, UFFC, vol.34 No.1, 1987, pp.8-15
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、制御信号基板(例えばFPC)、圧電素子および音響整合層を互いに接合するにあたり、エポキシ樹脂のような熱硬化性樹脂が用いると、制御信号基板と圧電素子の間の導通を良好に確保することが困難になる。特に、チャンネルの微細化が進み、分割された各圧電素子の面積が小さくなると、熱硬化性樹脂の接合では制御信号基板との導電性の確保が困難になる。
【0013】
一方、板状のハンダで制御信号基板(例えばFPC)、圧電素子および音響整合層を互いに接合する場合、インジウム系または鉛系のハンダ材料では次のような問題がある。すなわち、圧電素子および音響整合層の積層体はダイサーでアレイ状に切断される。アレイ切断は、狭いピッチ(幅)で数十回繰返される。インジウム系や鉛系のハンダは、比較的柔らかい、機械強度特性では硬度が低く、伸びが大きい、ため、切断時のピッチが変動して、均一な切断加工を行なうことが困難になる。その結果、圧電素子が均等に分割されず、チャンネル毎の容量ばらつきが生じる。容量ばらつきは、超音波プローブの感度ばらつきに影響し、超音波画像の品質を低下させる。また、切断性の低下は、インジウム系や鉛系のハンダがダイシングブレードを介して積層体の切断面、特に圧電素子の下部電極を含む切断面、にスミア(塑性流動による汚れ)となって付着する恐れがある。スミアは、圧電素子に高電圧を印加して再分極を行う際、放電を発生して圧電素子を破壊して超音波プローブの製造歩留まりの低下を招く。
【0014】
ハンダボールによる接合は前記問題を生じない。しかしながら、高分解能を目的としたチャンネルの狭ピッチ化が進むと、位置合せ、接着強度の確保に困難が生じ、加工作業が煩雑化する。
【0015】
本発明は、圧電素子および2層以上の音響整合層を切断して複数のチャンネルを形成するときのピッチ変動を低減し、かつ第1制御信号基板と圧電素子を良好に接合できると共にそれら部材間の導電性を良好に確保することが可能な医療用アレイ式超音波プローブおよびこの超音波プローブを備える医療用超音波診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1態様によると、バッキング材と、このバッキング材上に形成された第1制御信号基板と、第1制御信号基板上に圧電素子および2層以上の音響整合層を積層し、最上層の音響整合層から第1制御信号基板表面までをダイシングして形成された複数のチャンネルと、これらのチャンネル上に形成された第2制御信号基板とを具備する医療用アレイ式超音波プローブであって、
88重量%以上のスズを含む鉛フリーハンダ合金層は、前記第1制御信号基板から前記第2制御信号基板までの部材の隣接する間のうち、少なくとも前記第1制御信号基板と圧電素子の間に介在されてそれら部材同士を接合することを特徴とする医療用アレイ式超音波プローブが提供される。
【0017】
本発明の第2態様によると、医療用アレイ式超音波プローブと、前記超音波プローブにケーブルを通して接続された超音波プローブ制御器とを具備したことを特徴とする医療用超音波診断装置が提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、高性能、高信頼性の医療用アレイ式超音波プローブを提供することができる。
【0019】
本発明によれば、前記高性能、高信頼性の医療用アレイ式超音波プローブを備え、画像の画質向上および感度向上が達成された超音波診断装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係る医療用アレイ式超音波プローブおよび医療用超音波診断装置を詳細に説明する。
【0021】
実施形態に係る医療用アレイ式超音波プローブは、上面に第1制御信号基板(例えばフレキシブル印刷配線板;FPC)が形成されたバッキングを備える。複数のチャンネルは、第1制御信号基板上に圧電素子および2層以上の音響整合層を積層し、最上層の音響整合層から第1制御信号基板表面までをダイシングすることにより形成されている。これらのチャンネルは、第1制御信号基板上に配置される圧電素子と、この圧電素子上に形成される2層以上の音響整合層とを有する。第2制御信号基板は、各チャンネルの最上層の音響整合層上に形成されている。音響レンズは、第2制御信号基板に直接または別の音響整合層を介して形成されている。
【0022】
88重量%以上のスズを含む鉛フリーハンダ合金層は、第1制御信号基板から前記第2制御信号基板までの部材のうち、少なくとも第1制御信号基板と圧電素子間に介在されてそれら部材同士を接合している。
【0023】
圧電素子は、例えばジルコンチタン酸鉛(PZT)系圧電セラミック材料、リラクサ系およびチタン酸バリウム系のセラミック、単結晶材料からなる圧電体とこの圧電体の第1制御信号基板側および音響整合層側にそれぞれ形成された電極とから構成される。特に、ジルコンチタン酸鉛(PZT)系圧電セラミックのようなキュリー点が300℃以下の圧電体を用いることが超音波を高効率で発生できるために好ましい。
【0024】
2層以上の音響整合層は、音響レンズに向けて音響インピーダンスが段階的に小さくなっている。音響整合層が例えば2層の場合は、圧電素子上の1番目の音響整合層(第1音響整合層)が25℃にて6〜10MRaylsの音響インピーダンスを有し、圧電素子上の2番目の音響整合層(第2音響整合層)が25℃にて2〜6MRaylsの音響インピーダンスを有することが好ましい。音響整合層が例えば3層の場合は、圧電素子上の1番目の音響整合層(第1音響整合層)が25℃にて7〜20MRaylsの音響インピーダンスを有し、圧電素子上の2番目の音響整合層(第2音響整合層)が25℃にて7〜14MRaylsの音響インピーダンスを有し、圧電素子上の3番目の音響整合層(第2音響整合層)が25℃にて2〜4MRaylsの音響インピーダンスを有することが好ましい。
【0025】
音響整合層が2層の場合、第1音響整合層は例えば石英、マコールガラスの材料から作られ、第2音響整合層は例えば酸化物含有樹脂、カーボンの材料から作られることが好ましい。
【0026】
音響整合層が3層の場合、第1音響整合層は例えばフリントガラス、シリコンの材料から作られ、第2音響整合層は例えばカーボン、酸化物含有樹脂の材料から作られ、第3音響整合層は例えばポリエチレン、シリコーン、ウレタン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)から作られることが好ましい。
【0027】
なお、別の音響整合層は前記チャンネルを構成する最上層の音響整合層に比べて小さい音響インピーダンスを示す材料から作られる。
【0028】
また、第2制御信号基板は複数のチャンネルのスペースに対応する箇所で分離された形態であってもよい。
【0029】
88重量%以上のスズを含む鉛フリーハンダ合金は、一般式SnxM1yM2z、ただしM1はAgおよびBiから選ばれる少なくとも1つの金属、M2はZn,Cu,AlおよびInからなる群から選ばれる少なくとも1つの金属を示し、xは88重量%以上で、x+y+zが100重量%である、にて表されることが好ましい。具体的な鉛フリーハンダ合金は、Sn−3.5%Ag、Sn−3.5%Ag−0.7%Cu、Sn−3.5%Ag−0.5%Bi−8.0%In、Sn−3.0%Bi−8.0%Bi,Sn−3.0%Bi−8.0%Cu,Sn−3.0%Ag−0.5%Cuを用いることができる。ここで%は重量%である。
【0030】
鉛フリーハンダ合金層は、第1制御信号基板と圧電素子の間のみならず、圧電素子とその上の音響整合層の間に介在してそれら部材同士を接合することが好ましい。また、鉛フリーハンダ合金層は第1制御信号基板から前記第2制御信号基板までの部材の隣接する間の全てに介在してそれら部材間を接合することが最も好ましい。このように複数の部材を鉛フリーハンダ合金層で接合する場合、鉛フリーハンダ合金層は同一の組成を有することが好ましい。すなわち、鉛フリーハンダ合金層による各部材の接合は合金層を加熱溶融するため、各合金層を同一組成にすることにより加熱温度を統一化できる。その結果、例えば各部材間に合金層を介在した後に同じ温度で全ての合金層を加熱溶融、冷却により各部材間の接合が可能になり、接合操作を簡便化できる。
【0031】
鉛フリーハンダ合金層は、0.1〜10μm、より好ましくは0.5〜5μmの厚さを有することが望ましい。このような厚さの鉛フリーハンダ合金層は、第1制御信号基板から前記第2制御信号基板までの部材同士を高強度で接合することを可能にし、かつ複数のチャンネルを形成する際の切断時において、切断の直線性をより向上させることが可能になる。鉛フリーハンダ合金層の音響インピーダンスは、音響整合層よりも高いが、前記厚さに調節することにより、送受信効率の影響を低減することが可能になる。
【0032】
次に、実施形態に係るアレイ式超音波プローブを図1および図2を参照して詳細に説明する。図1は、実施形態に係るアレイ式超音波プローブを示す斜視図、図2は図1のアレイ式超音波プローブの断面図である。
【0033】
アレイ式超音波プローブ1は、バッキング2を備えている。第1制御信号基板(例えば信号制御側フレキシブル印刷配線板:信号制御側FPC)3は、バッキング2上に例えばエポキシ樹脂系接着剤層(図示せず)で固定されている。信号制御側FPC3は、例えばポリイミド、シリコーンエポキシ樹脂のフィルムに配線を形成した構造を有する。圧電素子4は信号制御側FPC3上に88重量%以上のスズを含む鉛フリーハンダ合金層5で接合、固定されている。圧電素子4は、例えばジルコンチタン酸鉛(PZT)系圧電セラミック材料からなる圧電体6と、この圧電体6の両面に形成された第1、第2の電極71,72とから構成されている。圧電体6は、前記圧電材料と有機樹脂からなる複合体を用いることもできる。第1音響整合層8は、圧電素子4の第2電極72上に88重量%以上のスズを含む鉛フリーハンダ合金層9で接合、固定されている。第1音響整合層8に比べて音響インピーダンスの小さい第2音響整合層10は、第1音響整合層8上に88重量%以上のスズを含む鉛フリーハンダ合金層11で接合、固定されている。
【0034】
鉛フリーハンダ合金層5、圧電素子4、鉛フリーハンダ合金層9、第1音響整合層8,鉛フリーハンダ合金層11および第2音響整合層10の積層体は、例えばダイシングブレードを用いる切断によって複数に分割され、スペース12をあけて1次元的に配列される複数のチャンネル13が形成される。これらのスペース12には、例えば低音響インピーダンス、高減衰性のシリコーンゴムのような比較的に柔らかい樹脂を充填することを許容する。
【0035】
第2制御信号基板(例えばアース側フレキシブル印刷配線板:アース側FPC)14は、複数のチャンネル13の第2音響整合層10上に88重量%以上のスズを含む鉛フリーハンダ合金層15で接合、固定されている。
【0036】
最上層の音響整合層である第2音響整合層10に比べて音響インピーダンスの小さい3番目の音響整合層16は、アース側FPC14上に例えばエポキシ樹脂系接着剤層(図示せず)で固定されている。音響レンズ17は、3番目の音響整合層16上に例えばゴム系接着剤層(図示せず)により固定されている。
【0037】
バッキング2は、支持台(図示せず)に載置され、かつバッキング2、複数のチャンネル13、3番目の音響整合層16および音響レンズ17は、上端に開口部を有するケース(図示せず)内に収納されている。ケース13内には、各チャンネル13の圧電素子4の駆動タイミングを制御する制御回路および圧電素子4に受信された受信信号を増幅するためのアンプ回路を含む信号処理回路(図示せず)が内蔵されている。制御信号側FPC3の他端は制御回路に接続されている。アース側FPC14は、一端が圧電素子4の第1電極71に接続され、他端が信号処理回路に接続されている。ケーブル(図示せず)は、音響レンズ16と反対側のケース部分から挿入され、その先端が信号処理回路および制御回路(いずれも図示せず)と接続されている。
【0038】
このような構成のアレイ式超音波プローブ1において、各チャンネル13における圧電素子4の第1、第2の電極71,72間に電圧を印加して、圧電体6を共振させることにより超音波を各チャンネル13の第1、第2の音響整合層8,10、3番目の音響整合層16および音響レンズ17を通して人体に放射(送信)する。受信時には、人体から音響レンズ17、3番目の音響整合層16および各チャンネル13の第1、2の音響整合層8,10を通して受信された超音波によって各チャンネル13の圧電素子4の圧電体6を振動させ、この振動を電気的に変換して信号とし、画像を得る。また、第1、第2の音響整合層8,10、3番目の音響整合層16の音響インピーダンスを圧電体(音響インピーダンス:20〜38MRayls)と人体(音響インピーダンス:1.5MRayls)の間で徐々に人体のそれに近付くように設定することよって、超音波の送受信効率を向上することが可能になる。
【0039】
なお、チャンネルを構成する音響整合層は2層に限らず、3層以上(例えば3層または4層)にしてもよい。この場合、アース側FPC上に音響整合層を形成しても、省略してもよい。
【0040】
次に、実施形態に係る超音波プローブの製造方法の一例を説明する。
【0041】
まず、バッキング材上に信号制御側FPC、圧電素子、第1音響整合層、第2音響整合層をこの順で、かつこれらの部材間に88重量%以上のスズを含む鉛フリーハンダ合金層を介在させて積層する。つづいて、例えばボンディング装置のような熱圧着装置を用いて前記各部材同士を鉛フリーハンダ合金層で融着固定する。なお、密着強度をより高めるために、各部材の接合面にフラックスのような表面処理剤を塗布してもよい。鉛フリーハンダ合金層は、例えば圧延加工した箔を用いることができる。また、各部材の接合面に蒸着、スパッタもしくはメッキにより鉛フリーハンダ合金層を形成してもよい。各部材間に介在する鉛フリーハンダ合金層は、同一組成で、接合時に0.1〜10μm、より好ましくは0.5〜5μmの厚さになるよう形成することが望ましい。
【0042】
次いで、前記積層体の信号制御側FPCをバッキング材に例えばエポキシ樹脂系接着剤により90℃で50分程度圧着加熱し、接着剤を硬化させることによりバッキング材、信号制御側FPC、圧電素子、第1音響整合層および第2音響整合層で構成される積層構造体を作製する。つづいて、第2音響整合層側からバッキングに向かって、ダイシングブレードにて例えば50〜200μmの幅(ピッチ)で切断処理してアレイ状に複数分割し、スペースをあけて1次元的に配列する圧電素子および第1、第2音響整合層を有する複数のチャンネルを形成する。ひきつづき、必要に応じて各チャンネル間のスペースに例えば低音響インピーダンス、高減衰性のシリコーンゴムのような比較的柔らかい樹脂を充填して各チャンネルの機械的な強度を保持することもある。各チャンネルの第2音響整合層上にアース側FPCを88重量%以上のスズを含む鉛フリーハンダ合金層で接合する。その後、アース側FPC上に音響整合層、音響レンズをそれぞれエポキシ樹脂系接着剤層、シリコーンゴム系接着層で接着固定し、ケース内に収納してアレイ式超音波プローブを製造する。
【0043】
このような超音波プローブの製造において、圧電素子の圧電体が300℃を超えるキュリー点を有する場合は、ダイシングブレードによる切断加工および鉛フリーハンダ合金層で接合するための加熱処理で脱分極される恐れが小さい。しかしながら、超音波を高効率に発生するPZT系圧電体を用いた場合、キュリー点が130〜300℃であるため、切断加工および接合時で熱処影響を受けると脱分極が生じる。そのため、信号制御側FPCとアース側FPCの間に高電圧を印加して再分極を行う。この処理によって、超音波プローブとして最良の特性を保証できる。
【0044】
なお、アレイ状の複数分割によりチャンネルを形成する際、第2音響整合層の上に鉛フリーハンダ合金層を圧着した後に行なってもよい。
【0045】
実施形態に係る超音波プローブを備えた医療用超音波診断装置を、図3を参照して説明する。
【0046】
対象物に対し超音波信号を送信し、その対象物からの反射信号(エコー信号)を受信して対象物を画像化する医療用超音波診断装置(または医療用超音波画像検査装置)は、超音波信号送受信機能を有するアレイ式超音波プローブを備えている。この超音波プローブは、例えば前述した図1、図2に示す1次元アレイ構造を有する。この超音波プローブ1は、ケーブル21を通して超音波診断装置本体22に接続されている。超音波診断装置本体22内には超音波プローブの超音波信号の送信、受信処理等を行う図示しない超音波プローブ制御器、およびディスプレイ23等が設けられている。
【0047】
以上説明した実施形態に係わるアレイ式超音波プローブは、バッキング材と、このバッキング材上に形成された第1制御信号基板と、第1制御信号基板上に圧電素子および2層以上の音響整合層を積層し、最上層の音響整合層から第1制御信号基板表面までをダイシングして形成された圧電素子および2層以上の音響整合層を有する複数のチャンネルと、これらのチャンネル上に形成された第2制御信号基板とを具備する。88重量%以上のスズを含む鉛フリーハンダ合金層は、第1制御信号基板から前記第2制御信号基板までの部材の隣接する間のうち、少なくとも前記第1制御信号基板と圧電素子の間に介在されてそれら部材同士を接合している。このような構成の超音波プローブは以下のような効果を奏する。
【0048】
(1)前記鉛フリーハンダ合金は、耐熱性に優れ、高い接着性を有するため、超音波エネルギーの吸収、減衰に伴って音響整合層に熱および機械的な圧力が加わっても、少なくとも前記第1制御信号基板と圧電素子の間の鉛フリーハンダ合金層からなる接合層での剥離を防止できる。その結果、高い長期信頼性を有するアレイ式超音波プローブを提供できる。
【0049】
(2)鉛フリーハンダ合金層で第1制御信号基板と圧電素子とを接合することによって、それらの間の導電性を良好に確保することができる。その結果、超音波のエネルギーを効率的に送受信できる高性能のアレイ式超音波プローブを提供できる。
【0050】
(3)前記鉛フリーハンダ合金は、一般の鉛ハンダに比べて高硬度、低伸張性を有する。このため、少なくとも前記第1制御信号基板と圧電素子同士を鉛フリーハンダ合金層で接合した後のダイシングブレードによるアレイ切断を行う際、切断の直線性が向上して目的とする幅を持つ均一なピッチでチャンネルを形成することが可能になる。特に、前記第1制御信号基板から前記第2制御信号基板までの部材の隣接する間の全てに鉛フリーハンダ合金層を介在して接合した後、ダイシングブレードによるアレイ切断を行うことによって、より一層均一なピッチでチャンネルを形成することが可能になる。その結果、チャンネル間のクロストークを低減できるため、高解像度のアレイ式超音波プローブを実現できる。
【0051】
(4)前記鉛フリーハンダ合金は、高硬度、低伸張性を有するため、少なくとも前記第1制御信号基板と圧電素子同士を鉛フリーハンダ合金層で接合した後のダイシングブレードによるアレイ切断を行う際、圧電素子の切断面(特に下部電極を含む切断面)にスミア(塑性流動による汚れ)となって付着する現象を鉛ハンダで接合する場合に比較して低減できる。その結果、チャンネルの圧電素子に第1、第2の制御信号基板から高電圧を印加して再分極を行う際、スミアに起因する圧電素子の下部電極付近からの放電発生、放電による圧電素子の破壊を防止でき、超音波プローブの歩留まりを向上できる。
【0052】
実施形態に係る超音波診断装置は、クロストークが小さく、高性能、高信頼性のアレイ式超音波プローブを備えるため、断層像の画質向上および感度向上を達成できる。
【0053】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。
【0054】
(実施例1)
素子制御側FPC上に長さ25mm、幅10mm、厚さ5μmで、Sn−3.5%Ag−0.7%Cuの組成の鉛フリーハンダ箔を載置し、この鉛フリーハンダ箔上に圧電素子を積層した。圧電素子は、長さ25mm、幅10mm、厚さ0.4mmのPZT系圧電セラミックスからなる圧電体の両面にそれぞれチタン30nm/金100nmをスパッタして電極を形成することにより作製した。FPC、鉛フリーハンダ箔および圧電素子の積層物をボンディング装置(FCボンダ)により250℃、荷重10Nで5秒間、加熱圧着することにより、FPCと圧電素子とを鉛フリーハンダ箔で接合した。つづいて、圧電素子上に同寸法、同組成の鉛フリーハンダ箔を載置し、この鉛フリーハンダ箔上に長さ25mm、幅10mm、厚さ0.4mmのマコールガラス製の第1音響整合層を重ねた後、ボンディング装置により同様な条件で加熱圧着することにより、圧電素子と第1音響整合層とを鉛フリーハンダ箔で接合した。ひきつづき、第1音響整合層上に同寸法、同組成の鉛フリーハンダ箔を載置し、この鉛フリーハンダ箔上に長さ25mm、幅10mm、厚さ0.2mmのカーボンからなる第2音響整合層を重ねた後、ボンディング装置により同様な条件で加熱圧着することにより、圧電素子と第1音響整合層とを鉛フリーハンダ箔で接合した。さらに、第2音響整合層上に同寸法、同組成の鉛フリーハンダ箔を載置した後、第2音響整合層上に鉛フリーハンダ箔を圧着した。この圧着時には、鉛フリーハンダ箔上にフッ素樹脂シートを載せ、ボンダ押圧面への鉛フリーハンダ箔の付着を防いだ。
【0055】
次いで、圧電素子が接着されていない信号制御側FPCの面に長さ25mm、幅10mm、厚さ10mmのシリコーン樹脂製バッキング材を有機系接着剤により接着した。有機系接着材は、2液混合タイプのエポキシ樹脂(エコボンド27;エマーソン&カミング社製)を使用し、90℃、50分で熱硬化させた。つづいて、第1音響整合層と第2音響整合層の長手方向に沿う側面にスパッタで20nmのクロム層、100nmの金層を成膜して電極層を形成した。この電極層は、第1音響整合層との接合側の圧電素子の電極(上部側電極)と後述するアース側FPCとの導通を取るためである。
【0056】
このような工程によりバッキング材/エポキシ樹脂/信号制御側FPC/鉛フリーハンダ箔/圧電体/鉛フリーハンダ箔/第1音響整合層/鉛フリーハンダ箔/第2音響整合層/鉛フリーハンダ箔が一体化した積層構造体を作製した後、ダイシングブレードにより第2音響整合層側上の鉛フリーハンダ箔から圧電素子下の鉛フリーハンダ箔までを第1整合層と第2整合層の長手方向に沿う側面の電極層に対して直角になるように切断してアレイ分割することにより複数(96個)のチャンネルを形成した。この工程において、信号制御側FPCの上面までわずかに切断することにより、圧電素子が確実に分割される。アレイ分割幅は長手方向に200μmピッチで行った。ダイシングブレードの厚さは、50μmで、切断スピードは1mm/sとした。切断時において、ピッチのぶれの問題は起こらず、すべての分割幅は同じサイズであった。また、切断後の断面観察において、スミアが現われない良好な切断面が形成されていることがわかった。
【0057】
次いで、切断後の第2音響整合層上の鉛フリーハンダ箔にアース側FPCをボンディング装置で加熱圧着して第2音響整合層とアース側FPCとを接合した。つづいて、アース側FPC上に厚さ0.15mmの3番目のポリエチレン製音響整合層をエポキシ系樹脂:エコボンドにより接着し、さらに音響整合層上にシリコーン樹脂製の音響レンズをエコボンドにより接着して超音波プローブ素体を製造した。さらに、得られた超音波プローブ素体を40℃の恒温オーブン内で前記2つのFPC間に圧電素子の圧電体の厚さ1μmあたり1Vの電界、すなわち400Vの直流電圧を1分間印加し、圧電体を再分極した。分極工程において、放電、ショートなどは発生しなかった。その後、超音波プローブ素体をケーシングして超音波プローブサンプルを製造した。
【0058】
得られた超音波プローブサンプルの各チャンネルのインピーダンス特性をインピーダンスアナライザにより測定した。その結果、96チャンネル全てが動作し、目標とした共振周波数3.5MHzが達成されていた。また、インピーダンスカーブのばらつきは2%であった。
【0059】
(実施例2)
鉛フリーハンダ箔として厚さ5μmのSn−3.5%Ag箔を用いた以外、実施例1と同様な方法により超音波プローブサンプルを製造した。
【0060】
得られた超音波プローブサンプルの各チャンネルのインピーダンス特性をインピーダンスアナライザにより同様に測定した。その結果、96チャンネル全てが動作し、目標とした共振周波数3.5MHzが達成されていた。また、インピーダンスカーブのばらつきは2%であった。
【0061】
(実施例3)
鉛フリーハンダ箔として厚さ5μmのSn−3.5%Ag−0.5%Bi−8.0%In箔を用いた以外、実施例1と同様な方法により超音波プローブサンプルを製造した。
【0062】
得られた超音波プローブサンプルは、実施例1と同様、96チャンネル全てが動作し、目標とした共振周波数3.5MHzが達成された。
【0063】
また、インピーダンスカーブのばらつきは1.5%で、実施例1,2に比べてばらつきがより低減された。
【0064】
なお、切断面の観察結果は実施例1,2に比べて切断面が整っていることが確認された。これはSn−3.5%Ag−0.5%Bi−8.0%Inの鉛フリーハンダがより高硬度および低伸張性を示すためである。
【0065】
(実施例4)
以下の変更を行なった以外、実施例1と同様な方法により超音波プローブサンプルを製造した。
【0066】
PZT系圧電体の厚さを0.25mm、第1音響整合層の厚さを0.2mm、第2音響整合層の厚さを0.1mm、アース側FPC上の音響整合層の厚さを0.07mmに変更した。厚さ30μmのダイシングブレードを用いて70μmピッチで切断加工して192個のチャンネを形成した。40℃の恒温オーブン内で2つのFPC間に圧電素子の圧電体の厚さ1μmあたり1Vの電界、すなわち200Vの直流電圧を1分間印加し、圧電体を再分極した。
【0067】
ダイシング後、切断状態を観察し、ピッチのぶれがないこと、良好な切断面であることを確認した。再分極時には放電やショートなどは発生しなかった。
【0068】
得られた超音波プローブサンプルの各チャンネルのインピーダンス特性を実施例1と同様な方法で測定した。その結果、192チャンネル全てが動作し、目標とした共振周波数7MHzは達成されていた。またインピーダンスカーブのばらつきは、2%以内であった。
【0069】
なお、鉛フリーハンダ箔として厚さ5μmのSn−3.5%Ag箔、厚さ5μmのSn−3.5%Ag−0.5%Bi−8.0%In箔を用いた場合も、実施例4と同様な結果を得た。
【0070】
(比較例1)
鉛フリーハンダ箔の代わりに厚さ5μmのSn−37%Pbの鉛ハンダ箔を用いた以外、実施例1と同様な方法により超音波プローブサンプルを製造した。
【0071】
超音波プローブサンプルの製造工程でのダイシングブレードを用いる切断において、切断回数が増えるに伴ってピッチにぶれが生じ始めた。そのため、一定回数切断後、切断を中止してダイシングブレードを洗浄(ドレッシング)するか、もしくはダイシングブレードを交換し改めて切断を行うことを繰り返した。切断面を観察したところ、鉛ハンダ箔の延伸に起因する細かな破片が付着していることが確認された。ダイシング後に再分極するために電圧を印加したところ、複数のチャンネルで放電が起こり、そのチャンネルはショートにより使用不能となった。
【0072】
得られた超音波プローブサンプルの各チャンネルのインピーダンス特性をインピーダンスアナライザにより測定した。その結果、共振周波数3.5MHzでは96チャンネル中、8チャンネルがショートした。
【0073】
また、実施例4と同様な条件(Sn−37Pbの鉛ハンダ箔使用)で製造した超音波プローブサンプルは共振周波数7MHzで192チャンネル中20チャンネルがショートしていた。
【0074】
また、96チャンネおよび192チャンネルを有する超音波プローブサンプルは、いずれもインピーダンスのばらつきが5〜6%であった。
【0075】
(比較例2)
まず、圧電素子、第1音響整合層および第2音響整合層をエポキシ系樹脂:エコボンド27でそれぞれ接着した。つづいて、圧電素子側に素子制御側FPC、その下にバッキング材をエポキシ系樹脂:エコボンド27でそれぞれ接着した。接着は、90℃、50分の条件で行なった。ひきつづき、第1音響整合層と第2音響整合層の長手方向に沿う側面にスパッタで20nmのクロム層、100nmの金層を成膜して電極層を形成した。さらに、第2整合層上にアース側FPC、3番目の音響整合層をエポキシ系樹脂:エコボンド27でそれぞれ接着した。なお、圧電素子、第1音響整合層および第2音響整合層、3番目の音響整合層は実施例1と同様な材料のものを用いた。
【0076】
バッキング材/エポキシ樹脂/信号制御側FPC/エポキシ系樹脂/圧電体/エポキシ系樹脂/第1音響整合層/エポキシ系樹脂/第2音響整合層が一体化した積層構造体をダイシングブレードにより第2音響整合層側から圧電素子までを第1整合層と第2整合層の長手方向に沿う側面の電極層に対して直角になるように切断してアレイ分割した。アレイ分割幅を長手方向に200μmピッチで行って96個のチャンネルを形成した。また、アレイ分割幅を長手方向に70μmピッチで行って192個のチャンネルを形成した。
【0077】
200μmピッチの3.5MHzの超音波プローブサンプルは切断時、問題はなかったが、70μmピッチの7MHzのサンプルにおいて、接合部分の一部が欠けた。いずれの周波数のサンプルも、再分極で放電は発生しなかった。
【0078】
各チャンネルのインピーダンス特性をインピーダンスアナライザにより測定した。その結果、アース側FPCとの導通がとれていないチャンネルがあった。具体的には3.5MHzの超音波プローブサンプルにおいては96チャンネル中6チャンネルがオープンであった。7MHzの超音波プローブサンプルにおいては、切断時の欠けを除いた192チャンネル中13チャンネルがオープンであった。またインピーダンスのばらつきは、いずれも4〜5%であった。
【0079】
これら実施例および比較例の超音波プローブサンプルの評価結果を下記表1にまとめて示す。
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の実施形態に係るアレイ式超音波プローブの斜視図。
【図2】図1の超音波プローブの断面図。
【図3】本発明の実施形態に係わる超音波診断装置を示す概略図。
【符号の説明】
【0081】
1…超音波プローブ、2…バッキング材、3…第1制御信号基板(信号制御側FPC)、4…圧電素子、5,9,11,15…鉛フリーハンダ合金層、8…第1音響整合層、10…第2音響整合層、13…チャンネル、14…第2制御信号基板(アース側FPC)、17…音響レンズ、21…ケーブル、22…超音波プローブ制御部、23…ディスプレイ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッキング材と、このバッキング材上に形成された第1制御信号基板と、第1制御信号基板上に圧電素子および2層以上の音響整合層を積層し、最上層の音響整合層から第1制御信号基板表面までをダイシングして形成された複数のチャンネルと、これらのチャンネル上に形成された第2制御信号基板とを具備する医療用アレイ式超音波プローブであって、
88重量%以上のスズを含む鉛フリーハンダ合金層は、前記第1制御信号基板から前記第2制御信号基板までの部材の隣接する間のうち、少なくとも前記第1制御信号基板と圧電素子の間に介在されてそれら部材同士を接合することを特徴とする医療用アレイ式超音波プローブ。
【請求項2】
鉛フリーハンダ合金は、一般式SnxM1yM2z、ただしM1はAgおよびBiから選ばれる少なくとも1つの金属、M2はZn,Cu,AlおよびInからなる群から選ばれる少なくとも1つの金属を示し、xは88重量%以上で、x+y+zが100重量%である、にて表されることを特徴とする請求項1記載の医療用アレイ式超音波プローブ。
【請求項3】
前記鉛フリーハンダ合金層は、前記第1制御信号基板と圧電素子の間、さらに前記圧電素子とこの圧電素子上の前記音響整合層の間に介在されてそれら部材同士を接合し、かつ前記鉛フリーハンダ合金層は同一の組成を有することを特徴とする請求項1または2記載の医療用アレイ式超音波プローブ。
【請求項4】
前記鉛フリーハンダ合金層は、0.5〜10μmの厚さを有することを特徴とする請求項1ないし3いずれか記載の医療用アレイ式超音波プローブ。
【請求項5】
前記圧電素子は、2枚の電極と、これら電極間に配置され、キュリー点が130〜300℃の圧電体とを備えることを特徴とする請求項1ないし4いずれか記載の医療用アレイ式超音波プローブ。
【請求項6】
前記チャンネルを構成する音響整合層が2層のときに、圧電素子上の1番目の音響整合層が25℃にて6〜10MRaylsの音響インピーダンスを有し、圧電素子上の2番目の音響整合層が25℃にて2〜6MRaylsの音響インピーダンスを有することを特徴とする請求項1ないし5いずれか記載の医療用アレイ式超音波プローブ。
【請求項7】
前記チャンネルを構成する音響整合層が3層のときに、圧電素子上の1番目の音響整合層が25℃にて7〜20MRaylsの音響インピーダンスを有し、圧電素子上の2番目の音響整合層が25℃にて7〜14MRaylsの音響インピーダンスを有し、圧電素子上の3番目の音響整合層が25℃にて2〜4MRaylsの音響インピーダンスを有することを特徴とする請求項1ないし5いずれか記載の医療用アレイ式超音波プローブ。
【請求項8】
前記第1制御信号基板から前記第2制御信号基板までの部材同士を前記鉛フリーハンダ合金層で接合した状態で、前記第1、第2の制御信号基板から前記圧電素子に電圧を印加して前記圧電素子を再分極することを特徴とする請求項1ないし7いずれか記載の医療用アレイ式超音波プローブ。
【請求項9】
請求項1〜8いずれか記載の医療用アレイ式超音波プローブと、前記超音波プローブにケーブルを通して接続された超音波プローブ制御器とを具備したことを特徴とする医療用超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−75367(P2010−75367A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245971(P2008−245971)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】