説明

医療用オスコネクタ及び医療用接続具

【課題】ニードルレスポートに対する分離作業が簡単であり、分離作業によって破損に至る可能性が低い小型の医療用オスコネクタを提供する。
【解決手段】医療用オスコネクタ40は、ニードルレスポート100の弾性隔壁部材110のスリット111に挿入される挿入部45と、挿入部に対向する係合アーム50と、係合アームの挿入部に対向する側の面に設けられた、ニードルレスポートの外周面の係合孔124に嵌入する係合爪51とを備える。係合爪の頂部52に対して挿入部の中心軸を中心とする周方向の少なくとも一方の側に、挿入部から遠ざかるにしたがって係合爪の幅寸法が拡大するように傾斜した案内面53が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用オスコネクタに関する。また、本発明は、医療用オスコネクタとニードルレスポートとからなる医療用接続具に関する。
【背景技術】
【0002】
患者に輸液や輸血を行ったり、手術において体外血液循環を行ったりする場合に、薬液や血液などの液状物を輸送するための経路(輸送ライン)を形成する必要がある。輸送ラインは、一般に、容器や各種器具、送液チューブなどを接続することによって形成される。異なる部材を着脱可能に接続するためにコネクタ(または接続具)が使用される。
【0003】
このようなコネクタの一例が特許文献1に記載されている。以下に、このコネクタを説明する。
【0004】
図16Aは、このコネクタを構成するオスコネクタ900の側面図、図16Bはその断面図である。オスコネクタ900は、液状物が通る管体901を備える。管体901の一端は、後述するニードルレスポートに挿入される挿入部902であり、その他端は柔軟なチューブが接続される基端部903である。管体901と同軸の略円筒形状を有するフード905が、挿入部902を取り囲むように、管体901に一体に設けられている。管体901を挟むように、管体901と略平行な一対のロックレバー910が設けられている。ロックレバー910は、その長手方向の略中央位置に設けられた支持片907にて管体901に接続されている。ロックレバー910は、支持片907に対して一方の側にロック片911を備え、他方の側に操作片915を備える。ロック片911が挿入部902と直接対向するように、フード905が切り欠かれている。ロック片911の挿入部902に対向する側の面の先端には、係合爪912が形成されている。係合爪912の頂部913に対して支持片907とは反対側には、頂部913から離れるにしたがって挿入部902から遠ざかるように傾斜した摺動面914が形成されている。
【0005】
ロック片911及び操作片915を含むロックレバー910は実質的に剛体とみなすことができる。一方、ロックレバー910を支持する支持片907は弾性的に湾曲可能である。従って、支持片907が湾曲することにより、一対のロックレバー910は弾性的に揺動する。即ち、ロック片911が互いに接近するように変位すると、操作片915が互いに離れるように変位し、逆に、ロック片907が互いに離れるように変位すると、操作片915が互いに接近するように変位する。
【0006】
図16A及び図16Bに示したオスコネクタ900は、図17に示すニードルレスポート950と接続される。このニードルレスポート950は、中央部に直線状のスリット(切り込み)952が形成されたゴム等の弾性材料からなる円板状の隔壁部材(以下、「セプタム」という)951を備える。セプタム951は、略円筒形状の基体部961とキャップ965とに挟持され固定されている。キャップ965は、基体部961と嵌合する円筒部966と、円筒部966の一端に設けられた天板967とを備える。天板967の中央には円形の開口968が形成されている。セプタム951のスリット952は開口968内に露出している。
【0007】
オスコネクタ900とニードルレスポート950との接続は以下のようにして行う。
【0008】
図17に示すように、ニードルレスポート950にオスコネクタ900を対向させ、キャップ965がフード905内に挿入されるように、オスコネクタ900をニードルレスポート950に押し付ける。
【0009】
ロックレバー910の係合爪912の傾斜面914がキャップ965の円筒部966の一方の外周端縁966aに当接すると、ロック片911が互いに離れるように支持片907が弾性変形する。その後、係合爪912は、円筒部966の外周面上を摺動する。そして、係合爪912の頂部913が円筒部966の他方の外周端縁966bを過ぎると、支持片907が弾性回復し、ロック片911が互いに接近するように変位し、係合爪912と円筒部966の外周端縁966bとが係合する。一方、オスコネクタ900の挿入部902がセプタム951のスリット952に挿入される。
【0010】
その結果、図18に示すように、オスコネクタ900とニードルレスポート950とを接続することができる。係合爪912と外周端縁966bとが係合しているので、オスコネクタ900にニードルレスポート950から分離するような引っ張り力が加わっても、オスコネクタ900とニードルレスポート950とが分離することはない。
【0011】
オスコネクタ900とニードルレスポート950との分離は、以下のようにして行う。
【0012】
オスコネクタ900の一対の操作片915を互いに接近するように変位させ、一対のロック片911の係合爪912とキャップ965の外周端縁966bとの係合を解除する。この状態で、オスコネクタ900をニードルレスポート950から引き抜く。セプタム951のスリット952は、挿入部902が抜き去られると直ちに閉じる。セプタム951はリシール性を有するので、オスコネクタ900とニードルレスポート950とを繰り返し接続/分離することができる。
【0013】
上記のオスコネクタ900は、弾性的に揺動可能なロックレバー910がニードルレスポート950と係合することにより、ニードルレスポート950にオスコネクタ900を接続した状態でロックすることができるので、「レバーロック式」オスコネクタと呼ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2004−483号公報
【特許文献2】特許第3389983号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上述したオスコネクタ900は以下の問題を有している。
【0016】
第1に、オスコネクタ900をニードルレスポート950から分離するためには、2本の指で一対の操作片915を互いに接近するように変位させて係合爪912とキャップ965との係合を解除しなければならない。
【0017】
一対の操作片915の変位量が小さすぎると、係合爪912とキャップ965との係合を解除することができない。また、一対の操作片915の変位量が不均一であると、キャップ965との係合が、一方の係合爪912については解除できても、他方の係合爪912については解除できないこともある。これらに気付かずにオスコネクタ900をニードルレスポート950から強く引っ張ると、オスコネクタ900を破損してしまう可能性がある。
【0018】
逆に、係合爪912とキャップ965との係合を確実に解除しようとするあまり一対の操作片915を必要以上に大きく変位させると、支持片907の変形量が大きくなる。したがって、支持片907が永久変形してしまったり、破損したりしてしまう。
【0019】
オスコネクタ900をニードルレスポート950から分離する際に、以上のことに気をつけて一対の操作片915を適切に変位させることは、作業者にとって負担である。
【0020】
第2に、フード905から一対の操作片915が大きく突出している。その結果、オスコネクタ900の全体寸法が大きい。また、操作片915にチューブ等が引っ掛かり、作業性が低下する。
【0021】
本発明は、上記の従来のレバーロック式オスコネクタが有する問題を解決するものである。即ち、本発明は、ニードルレスポートに対して繰り返し接続/分離することができる医療用オスコネクタであって、ニードルレスポートに対する分離作業が簡単であり、分離作業によって破損に至る可能性が低く、小型化することが可能な医療用オスコネクタを提供することを目的とする。また、本発明は、このような医療用オスコネクタとニードルレスポートとを備えた医療用接続具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の医療用オスコネクタは、スリットが形成された弾性隔壁部材を備え、外周面に係合孔が形成されたニードルレスポートに接続可能な医療用オスコネクタであって、前記弾性隔壁部材の前記スリットに挿入される挿入部と、前記挿入部に対向する係合アームと、前記係合アームの前記挿入部に対向する側の面に設けられた、前記係合孔に嵌入する係合爪とを備える。前記係合爪の頂部に対して前記挿入部の中心軸を中心とする周方向の少なくとも一方の側に、前記挿入部から遠ざかるにしたがって前記係合爪の幅寸法が拡大するように傾斜した案内面が形成されていることを特徴とする。
【0023】
本発明の医療用接続具は、スリットが形成された弾性隔壁部材を備え、外周面に係合孔が形成されたニードルレスポートと、前記弾性隔壁部材の前記スリットに挿入される挿入部、前記挿入部に対向する係合アーム、及び、前記係合アームの前記挿入部に対向する側の面に設けられ且つ前記係合孔に嵌入する係合爪を備えた医療用オスコネクタとを備える。前記ニードルレスポートの前記係合孔の周方向における少なくとも一方の側に、前記ニードルレスポートの中心軸から離れるにしたがって前記係合孔の開口幅が拡大するように傾斜した案内面が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明の医療用オスコネクタによれば、係合爪の頂部に対して周方向の少なくとも一方の側に、傾斜した案内面が形成されている。また、本発明の医療用接続具によれば、ニードルレスポートの係合孔の周方向における少なくとも一方の側に、傾斜した案内面が形成されている。従って、オスコネクタとニードルレスポートとが接続された状態においてニードルレスポートに対してオスコネクタを回転させれば、係合爪を係合孔から脱出させることができるので、オスコネクタとニードルレスポートとを分離することができる。よって、オスコネクタとニードルレスポートとを簡単な操作で分離することができる。また、係合爪が係合孔から脱出する際の係合爪の変位量は僅かであるから、分離作業によってオスコネクタが破損に至る可能性は低い。また、従来のオスコネクタが有していた操作片は不要であるので、オスコネクタを小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1Aは本発明の実施形態1にかかる医療用オスコネクタの上方から見た斜視図、図1Bはその下方から見た斜視図、図1Cはその側面図、図1Dはその下面図である。
【図2】図2は、図1Cの2−2線を含む面に沿った本発明の実施形態1にかかる医療用オスコネクタの矢視断面図である。
【図3】図3Aは本発明の実施形態1にかかる医療用オスコネクタの接続部に接続されるネジロック型コネクタの斜視図、図3Bはその断面図である。
【図4】図4は、ネジロック型コネクタを構成するオスルアーの概略構成を示した斜視図である。
【図5】図5Aはネジロック型コネクタを構成するロックナットの上方から見た斜視図、図5Bはその下方から見た斜視図、図5Cはその平面図、図5Dはその断面図である。
【図6】図6は、ネジロック型コネクタの、ロックナットをオスルアーに重ならないように後退させた状態を示した斜視図である。
【図7】図7Aは本発明の実施形態1にかかる医療用オスコネクタとネジロック型コネクタとを接続した状態を示した斜視図、図7Bはその断面図である。
【図8】図8Aは本発明の実施形態1にかかる医療用オスコネクタと接続されるニードルレスポートの斜視図、図8Bは図8Aの8B−8B線を含む面に沿ったニードルレスポートの矢視断面図である。
【図9】図9は、本発明の実施形態1にかかる医療用オスコネクタ及びニードルレスポートの、接続前の状態を示した断面図である。
【図10】図10Aは本発明の実施形態1にかかる医療用オスコネクタ及びニードルレスポートの接続時の状態を示した斜視図、図10Bはその断面図である。
【図11】図11は、図10Bの11−11線を含む面に沿った、接続された本発明の実施形態1にかかる医療用オスコネクタ及びニードルレスポートの矢視断面図である。
【図12】図12Aは本発明の実施形態2にかかる医療用オスコネクタの下方から見た斜視図、図12Bはその側面図、図12Cはその下面図、図12Dは図12Bの12D−12D線を含む面に沿った矢視断面図である。
【図13】図13は、本発明の実施形態2にかかるニードルレスポートの斜視図である。
【図14】図14は、本発明の実施形態2において、オスコネクタの係合爪とニードルレスポートの係合孔との係合状態を示した断面図である。
【図15】図15は、本発明かかる別の医療用オスコネクタの断面図である。
【図16】図16Aは、従来のレバーロック式オスコネクタの側面図、図16Bはその断面図である。
【図17】図17は、図16に示したレバーロック式オスコネクタ及びニードルレスポートの、接続する前の状態を示した側面図である。
【図18】図18は、図16に示したレバーロック式オスコネクタ及びニードルレスポートの、接続した状態を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
上記の本発明のオスコネクタにおいて、前記係合爪が前記係合孔に嵌入したとき、前記係合孔の周方向の端縁が前記案内面に当接又は対向することが好ましい。かかる好ましい構成によれば、オスコネクタをニードルレスポートに対して回転させれば、案内面は係合孔の周方向の端縁上を直ちに摺動するので、係合爪を係合孔から確実に脱出させることができる。
【0027】
上記の本発明のオスコネクタにおいて、前記医療用オスコネクタが前記ニードルレスポートに接続された状態において前記医療用オスコネクタを前記ニードルレスポートに対して回転させたとき、前記係合爪の前記案内面が前記係合孔の周方向の端縁上を摺動し、前記係合爪が前記係合孔から脱出することが好ましい。かかる好ましい構成によれば、係合爪を係合孔から確実に脱出させることができる。
【0028】
この場合において、前記係合爪が前記係合孔から脱出すると、前記弾性隔壁部材が弾性回復し、前記挿入部を前記スリットから排出することが好ましい。かかる好ましい構成によれば、オスコネクタとニードルレスポートとの分離作業を更に簡単化することができる。
【0029】
上記の本発明のオスコネクタにおいて、前記案内面が、前記係合爪の前記頂部に対して前記挿入部の前記中心軸を中心とする周方向の両側に設けられていることが好ましい。かかる好ましい構成によれば、ニードルレスポートに対してオスコネクタをいずれの方向に回転させても、オスコネクタとニードルレスポートとを分離させることができる。
【0030】
上記の本発明のオスコネクタにおいて、前記係合爪に、前記頂部から前記係合アームの先端に近づくにしたがって前記挿入部から遠ざかるように傾斜した摺動面が形成されていることが好ましい。かかる好ましい構成によれば、オスコネクタをニードルレスポートに対して接近させ押し込むだけでオスコネクタとニードルレスポートとを接続することができる。
【0031】
上記の本発明のオスコネクタにおいて、前記係合爪を備えた前記係合アームが前記挿入部の前記中心軸に対して等角度間隔に複数個設けられていることが好ましい。かかる好ましい構成によれば、オスコネクタとニードルレスポートとを等角度間隔に配置された複数箇所で係止することができるので、オスコネクタとニードルレスポートとを安定して接続することができる。
【0032】
上記の本発明のオスコネクタと上記のニードルレスポートとを組み合わせて医療用接続具を構成してもよい。
【0033】
次に、上記の本発明の医療用接続具において、前記係合爪が前記係合孔に嵌入したとき、前記係合爪が前記係合孔の前記案内面に当接又は対向することが好ましい。かかる好ましい構成によれば、オスコネクタをニードルレスポートに対して回転させれば、係合爪は案内面上を直ちに摺動するので、係合爪を係合孔から確実に脱出させることができる。
【0034】
上記の本発明の医療用接続具において、前記医療用オスコネクタと前記ニードルレスポートとが接続された状態において前記医療用オスコネクタを前記ニードルレスポートに対して回転させたとき、前記係合爪が前記案内面上を摺動し、前記係合爪が前記係合孔から脱出することが好ましい。かかる好ましい構成によれば、係合爪を係合孔から確実に脱出させることができる。
【0035】
この場合において、前記係合爪が前記係合孔から脱出すると、前記弾性隔壁部材が弾性回復し、前記挿入部を前記スリットから排出することが好ましい。かかる好ましい構成によれば、オスコネクタとニードルレスポートとの分離作業を更に簡単化することができる。
【0036】
上記の本発明の医療用接続具において、前記案内面が、前記係合孔の周方向における両側に設けられていることが好ましい。かかる好ましい構成によれば、ニードルレスポートに対してオスコネクタをいずれの方向に回転させても、オスコネクタとニードルレスポートとを分離させることができる。
【0037】
上記の本発明の医療用接続具において、前記ニードルレスポートの外周面の、前記医療用オスコネクタ側の端縁と前記係合孔との間の領域に、前記係合孔に近づくにしたがって前記ニードルレスポートの前記中心軸から離れるように傾斜した摺動面が形成されていることが好ましい。かかる好ましい構成によれば、オスコネクタをニードルレスポートに対して接近させ押し込むだけでオスコネクタとニードルレスポートとを接続することができる。
【0038】
上記の本発明の医療用接続具において、前記係合爪の頂部に対して前記挿入部の中心軸を中心とする周方向の少なくとも一方の側に、前記挿入部から遠ざかるにしたがって前記係合爪の幅寸法が拡大するように傾斜した第2案内面が形成されていることが好ましい。かかる好ましい構成によれば、オスコネクタをニードルレスポートに対して回転させれば、オスコネクタの第2案内面はニードルレスポートの案内面上を摺動するので、係合爪を係合孔からよりスムーズに脱出させることができる。
【0039】
上記の本発明の医療用接続具において、前記係合爪に、前記頂部から前記係合アームの先端に近づくにしたがって前記挿入部から遠ざかるように傾斜した第2摺動面が形成されていることが好ましい。かかる好ましい構成によれば、オスコネクタをニードルレスポートに対して接近させ押し込むと、オスコネクタの第2摺動面はニードルレスポートの摺動面上を摺動するので、係合爪を係合孔にスムーズに導いて嵌入させることができる。
【0040】
上記の本発明の医療用接続具において、前記係合孔が前記ニードルレスポートの前記中心軸に対して等角度間隔に複数個設けられており、前記係合爪を備えた前記係合アームが前記挿入部の前記中心軸に対して等角度間隔に複数個設けられていることが好ましい。かかる好ましい構成によれば、オスコネクタとニードルレスポートとを等角度間隔に配置された複数箇所で係止することができるので、オスコネクタとニードルレスポートとを安定して接続することができる。
【0041】
以下に、本発明を好適な実施形態を示しながら詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。以下の説明において参照する各図は、説明の便宜上、本発明の実施形態の構成部材のうち、本発明を説明するために必要な主要部材のみを簡略化して示したものである。従って、本発明は以下の各図に示されていない任意の部材を備え得る。また、以下の各図中の寸法は、実際の寸法および寸法比率等を忠実に表したものではない。
【0042】
(実施形態1)
図1Aは本発明の実施形態1にかかる医療用オスコネクタ(以下、単に「オスコネクタ」という)40の上方から見た斜視図、図1Bはその下方から見た斜視図、図1Cはその側面図、図1Dはその下面図である。以下の説明の便宜のため、図1Cの紙面の上側をメオスネクタ40の「上側」と呼び、図1Cの紙面の下側をオスコネクタ40の「下側」と呼ぶ。なお、オスコネクタ40のこの上下方向は、オスコネクタ40が実際に使用される状況での姿勢を意味するものではない。
【0043】
図1A、図1B、図1Cに示されているように、オスコネクタ40は、いずれもが略円筒形状を有する接続部41及び挿入部45を有する。接続部41の内周面にはISO594−1に準拠した6%のテーパ面42が形成されており、接続部41の外周面にはISO594−2に準拠した雄ネジ43が形成されている。接続部41及び挿入部45は共通する中心軸40aを有し、互いに連通している。
【0044】
接続部41と挿入部45との境界に、略矩形の板状の支持部材46が接続部41及び挿入部45と一体的に設けられている。支持部材46の長軸方向の対向する端縁に、一対の係合アーム50が設けられている。係合アーム50は、支持部材46から下側に向かって、中心軸40aと略平行に且つ挿入部45に対向するように延びている。一対の係合アーム50は、その下端の間隔が拡がるように弾性変形可能である。
【0045】
各係合アーム50の挿入部45に対向する面には、挿入部45に向かって突出した係合爪51が設けられている。係合爪51の挿入部45に最も接近した部分である頂部52を通る図1Cの2−2線を含む面に沿った矢視断面図を図2に示す。図2に示すように、係合爪51の頂部52に対して中心軸40aを中心とする周方向の両側に、挿入部45から遠ざかるにしたがって係合爪51の幅寸法が拡大するように傾斜した案内面53が形成されている。ここで、係合爪51の「幅寸法」とは、挿入部45から見た係合爪51の上下方向(中心軸40aの方向)と直交する方向(水平方向)の寸法を意味し、図2の紙面の上下方向に沿った係合爪51の寸法を意味する。図2の例では、案内面53は外側に凸状に湾曲した曲面であるが、本発明はこれに限定されず、外側に凹状に湾曲した曲面であってもよく、あるいは、平坦な面であってもよい。
【0046】
また、図1Cに示されているように、係合爪51の頂部52の下側には、頂部52から下方に離れるにしたがって挿入部45から遠ざかるように傾斜した摺動面54が形成されている。本例では摺動面54は平坦な面であるが、本発明はこれに限定されず、外側に凸状又は凹状に湾曲した曲面であってもよい。
【0047】
オスコネクタ40の接続部41には、図3A及び図3Bに示すネジロック型コネクタ10が接続される。図3Aはネジロック型コネクタ10の斜視図、図3Bはその断面図である。ネジロック型コネクタ10は、オスルアー20と、オスルアー20の回りに回転可能に設けられたロックナット30とを備える。
【0048】
図4は、ネジロック型コネクタ10を構成するオスルアー20の概略構成を示した斜視図である。オスルアー20は、その長手方向に沿った貫通孔21が形成された、全体として略円筒形状を有する。オスルアー20の一端(即ち、先端)の外周面には、ISO594−1に準拠した6%のテーパ面22が形成され、その他端(即ち、基端23)には柔軟なチューブ29が接続される(図3A、図3B参照)。テーパ面22の最大径箇所には周方向に連続する環状突起24が形成されている。環状突起24よりも基端23側の部分の外周面は外径が一定の円筒面25であり、この円筒面25に、長手方向方向に平行に延びた一対の案内突起26が対称位置に形成されている。
【0049】
図5Aはネジロック型コネクタ10を構成するロックナット30の上方から見た斜視図、図5Bはその下方から見た斜視図、図5Cはその平面図、図5Dはその断面図である。ロックナット30は、全体として略円筒形状を有する。ロックナット30の内周面には、その下端から略中央部にわたってISO594−2に準拠した雌ネジ32が形成されている。雌ネジ32よりも上側には、周方向に延びた位置規制突起33が形成されている。位置規制突起33には一対の案内路34が略対称位置に形成されており、この一対の案内路34にて位置規制突起33は周方向に分断されている。
【0050】
図6に示したように、オスルアー20の基端23に柔軟性を有するチューブ29が接続される。ロックナット30の雌ネジ32が形成された側をオスルアー20側にして、ロックナット30にチューブ29が挿入される。この状態において、オスルアー20の基端23をロックナット30内に挿入することができる。オスルアー20の回りにロックナット30を回転させて、オスルアー20の外周面に形成された一対の案内突起26とロックナット30の内周面の一対の案内路34とを一致させると、一対の案内突起26は一対の案内路34を通過することができる。従って、図3Bに示されているように、オスルアー20の外周面に形成された環状突起24と一対の案内突起26との間にロックナット30の位置規制突起33が位置するように、オスルアー20をロックナット30に内挿することができる。かくして、図3A及び図3Bに示されているように、オスルアー20にロックナット30が装着されたネジロック型コネクタ10を組み立てることができる。このとき、ロックナット30は、オスルアー20の回りを自由に回転可能である。一方、図3Bに示されているように、環状突起24と位置規制突起33とが衝突するので、ロックナット30はオスルアー20に対してその先端(テーパ面22)側へ移動するのが制限される。
【0051】
オスコネクタ40とネジロック型コネクタ10との接続は、以下のようにして行われる。
【0052】
図3A及び図3Bに示すように、ロックナット30の位置規制突起33がオスルアー20の環状突起24と一対の案内突起26との間に位置するように、ロックナット30をオスルアー20に配置する。この状態で、オスルアー20のテーパ面22をオスコネクタ40の接続部41のテーパ面42に挿入し、ロックナット30の雌ネジ32とオスコネクタ40の雄ネジ43とを螺合させる。図7Aは、オスコネクタ40とネジロック型コネクタ10とを接続した状態を示した斜視図、図7Bはその断面図である。ロックナット30の位置規制突起33とオスルアー20の環状突起24とが係合しているので、オスコネクタ40の雄ネジ43とロックナット30の雌ネジ32とを螺合させると、オスコネクタ40のテーパ面42内にオスルアー20のテーパ面22が進入する。両テーパ面42,22はISO594−1に準拠しているのでテーパ面42,22間に液密なシールが形成される。オスコネクタ40とネジロック型コネクタ10とを分離する場合は、オスコネクタ40に対してロックナット30を上記とは逆に回転させればよい。
【0053】
図8Aはオスコネクタ40と接続されるニードルレスポート100の斜視図、図8Bは図8Aの8B−8B線を含む面に沿ったニードルレスポート100の矢視断面図である。
【0054】
ニードルレスポート100は、ポート本体101と、略円板形状の弾性隔壁部材(以下、「セプタム」という)110と、ポート本体101に装着されたキャップ120とを備える。図8A及び図8Bにおいて、参照符号100aは、ニードルレスポート100の中心軸を示す。以下の説明の便宜のため、図8Bの紙面の上側をニードルレスポート100の「上側」と呼び、図8Bの紙面の下側をニードルレスポート100の「下側」と呼ぶ。なお、ニードルレスポート100のこの上下方向は、ニードルレスポート100が実際に使用される状況での姿勢を意味するものではない。
【0055】
セプタム110は、ゴム等の弾性材料からなり、その中央部には直線状のスリット(切り込み)111が形成されている。セプタム110は、ポート本体101とキャップ120とに挟持され固定されている。キャップ120の天板121の中央には円形の開口122が形成されている。開口122内にセプタム110のスリット111が露出している。
【0056】
キャップ120は、天板121から下側に向かって延びた一対の係合片123を備える。各係合片123には、中心軸100aから放射方向に貫通した係合孔124が形成されている。係合孔124にポート本体101の係止突起102が嵌入し、両者が係合することにより、キャップ120はポート本体101に固定されている。
【0057】
係合片123の外面上の、係合片123の上側端縁(または天板121の外周端縁)と係合孔124との間の領域に、摺動面104が形成されている。摺動面104は、下側(係合孔124の側)に行くにしたがって中心軸100aから離れるように傾斜している。本例では摺動面104は平坦な面であるが、本発明はこれに限定されず、外側に凸状に湾曲した曲面、または外側に凹状に湾曲した曲面であってもよい。
【0058】
ニードルレスポート100の外周面は略円筒面であり、係合片123の外面はその一部を構成する。
【0059】
ポート本体101には、中心軸100aに沿った流路105が形成されている。ポート本体101の下端の円筒状の基端107に柔軟なチューブ109が接続されている。
【0060】
図7A及び図7Bに示した本実施形態1のオスコネクタ40と図8A及び図8Bに示したニードルレスポート100との接続は以下のようにして行う。
【0061】
図9に示すように、オスコネクタ40とニードルレスポート100とを対向させ、両者を接近させる。オスコネクタ40の挿入部45をキャップ120の開口122に挿入する。ニードルレスポート100に向かってオスコネクタ40を更に押し込むと、セプタム110が弾性変形して、セプタム110のスリット111内に挿入部45を挿入することができる。
【0062】
これと並行して、オスコネクタ40の係合爪51の摺動面54が、キャップ120の摺動面104に接触する。摺動面54及び摺動面104は、いずれも下側ほど中心軸40a,100aから遠ざかるように傾斜した傾斜面である。したがって、ニードルレスポート100に向かってオスコネクタ40を押し込むにしたがって、摺動面54が摺動面104上を下方に向かって摺動し、互いに対向する係合爪51間の間隔が拡大するように一対の係合アーム50が弾性変形する。そして、係合爪51の頂部52が係合孔124に到達すると、一対の係合アーム50が弾性回復し、係合爪51が係合孔124内に嵌入し、係合爪51と係合孔124(より正確には、係合孔124の上側端縁)とが係合する。
【0063】
図10Aはオスコネクタ40及びニードルレスポート100の接続時の状態を示した斜視図、図10Bはその断面図である。オスルアー20、オスコネクタ40及びニードルレスポート100を介して、チューブ29とチューブ109とが連通している。ニードルレスポート100に対してオスコネクタ40を中心軸40a,100aに沿って引っ張っても、係合爪51が係合孔124から抜け出ることはなく、従って、オスコネクタ40とニードルレスポート100とを分離することはできない。
【0064】
図11は、頂部52を通る図10Bの11−11線を含む面に沿った矢視断面図である。係合爪51の周方向の両側に形成された案内面53が、係合孔124の周方向の両側の端縁125にそれぞれ当接又は対向している。
【0065】
図10A及び図10Bのように接続されたオスコネクタ40とニードルレスポート100との分離は以下のようにして行う。
【0066】
図10A及び図11に示すように、オスコネクタ40を、ニードルレスポート100に対して、中心軸40a,100aの回りに矢印49の向きに回転させる。これにより、図11において、係合爪51の、回転方向49の前側に位置する案内面53が、係合孔124の端縁125に当接する。案内面53は、上述したように傾斜している。したがって、オスコネクタ40が回転方向49に回転するにしたがって、案内面53が端縁125上を摺動し、互いに対向する係合爪51間の間隔が拡大するように一対の係合アーム50が弾性変形する。遂には、係合爪51が係合孔124から完全に脱出し、係合爪51と係合孔124との係合が解除される。これにより、オスコネクタ40及びニードルレスポート100間の中心軸40a,100a方向の拘束が解除される。従って、挿入部45が挿入されていたセプタム110(図10B参照)が直ちに弾性回復し、挿入部45を排出する。必要に応じて、オスコネクタ40をニードルレスポート100から引き抜いてもよい。かくして、オスコネクタ40とニードルレスポート100とが分離される。挿入部45が抜き去られたセプタム110のスリット111は直ちに閉じる。
【0067】
本実施形態では、係合爪51に対して中心軸40aを中心とする周方向の両側に案内面53が形成されているので、オスコネクタ40をニードルレスポート100に対して矢印49とは逆向きに回転させても、上記と同様にオスコネクタ40とニードルレスポート100とを分離することができる。
【0068】
セプタム110はリシール性を有するので、オスコネクタ40とニードルレスポート100とを繰り返し接続/分離することができる。
【0069】
以上のように、本実施形態1では、オスコネクタ40とニードルレスポート100とを接続する際には、係合爪51と係合孔124とが係合する前に、オスコネクタ40の摺動面54及びニードルレスポート100の摺動面104が一対の係合アーム50を弾性変形させる。従って、ニードルレスポート100に対してオスコネクタ40を単に押し込むだけで、オスコネクタ40とニードルレスポート100とを接続することができる。
【0070】
また、オスコネクタ40とニードルレスポート100とが接続された状態において、ニードルレスポート100に対して単にオスコネクタ40を回転させるという極めて簡単な操作を行うだけで、オスコネクタ40とニードルレスポート100とを分離することができる。上述した従来のレバーロック式オスコネクタ900では、ニードルレスポート950から分離するために、一対の操作片915を所定量だけ変位させる操作が必要であった。本実施形態1では、このような操作は不要である。また、本実施形態1では、オスコネクタ40とニードルレスポート100とを分離するための一対の係合アーム50の弾性変形量は、係合爪51が係合孔124から脱出することができれば十分であるので僅かである。また、当該弾性変形量は、係合孔124に対する係合爪51の嵌入深さに依存するので、作業者によらず常に略一定である。従って、オスコネクタ40とニードルレスポート100との分離作業によって、オスコネクタ40を破損する可能性は極めて低い。更に、従来のレバーロック式オスコネクタ900では必須であった一対の操作片915が本実施形態のオスコネクタ40では不要である。従って、オスコネクタ40には大きな突出物は存在せず、オスコネクタ40を小型化することができる。また、オスコネクタ40にチューブ等が引っ掛かる可能性が低減され、作業性が向上する。
【0071】
上記の実施形態では、案内面53は、係合爪51に対して中心軸40aを中心とする周方向の両側に形成されていた。この構成では、オスコネクタ40をニードルレスポート100に対していずれの向きに回転させても、オスコネクタ40とニードルレスポート100とを分離することができる。しかしながら、係合爪51に対して中心軸40aを中心とする周方向のいずれか一方の側にのみ案内面53を形成してもよい。この場合は、案内面53が係合孔124の端縁125に当接する向きにオスコネクタ40をニードルレスポート100に対して回転させた場合にのみ、オスコネクタ40とニードルレスポート100とを分離することが可能となる。
【0072】
オスコネクタ40、ニードルレスポート100を構成するポート本体101及びキャップ120、ネジロック型コネクタ10を構成するオスルアー20及びロックナット30は、特に制限はないが、例えば樹脂材料を用いてそれぞれ一体に作成することができる。使用可能な樹脂材料は、特に制限はないが、例えばポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレンを例示することができる。
【0073】
(実施形態2)
以下に、本実施形態2を、実施形態1との相違点を中心に説明する。本実施形態2を示す図において、実施形態1で説明した図に示された部材と同じ部材には同じ符号が付されており、それらについての重複する説明を省略する。
【0074】
図12Aは本実施形態2にかかるオスコネクタ40の下方から見た斜視図、図12Bはその側面図、図12Cはその下面図、図12Dは図12Bの12D−12D線を含む面に沿った矢視断面図である。本実施形態2のオスコネクタ40には、実施形態1では設けられていた、係合爪51の頂部52に対して周方向の両側に傾斜した案内面53(図1B、図1D、図2参照)は設けられていない。本実施形態2では、係合爪51の頂部52に対して周方向の両側の側面55は、一対の係合アーム50が対向する方向と平行である。即ち、係合爪51の幅寸法は、挿入部45からの距離にかかわらず一定である。
【0075】
図13は本発明の実施形態2にかかるニードルレスポート100の斜視図である。本実施形態2では、係合孔124の周方向の両側には、中心軸100a(図8B参照)から離れるにしたがって係合孔124の開口幅が拡大するように傾斜した案内面127が形成されている。ここで、係合孔124の「開口幅」とは、中心軸100aと直交する方向に沿って見た係合孔124の上下方向と直交する方向(水平方向)の寸法を意味する。一対の案内面127によって、係合孔124の開口幅は、中心軸100aから離れるにしたがって楔状に拡大する。本実施形態では、案内面127は平坦な面であるが、本発明はこれに限定されず、外側に凸状又は凹状に湾曲した曲面であってもよい。
【0076】
本実施形態2のオスコネクタ40及びニードルレスポート100は、上記を除いて実施形態1のそれらと同じである。
【0077】
本実施形態2のオスコネクタ40とニードルレスポート100との接続方法は、実施形態1と同じである。即ち、ニードルレスポート100に向かってオスコネクタ40を押し込むだけで、セプタム110のスリット111内に挿入部45を挿入することができ、また、係合爪51が係合孔124内に嵌入し係合爪51と係合孔124とを係合させることができる。
【0078】
図14は、オスコネクタ40とニードルレスポート100とが接続された状態において、係合爪51と係合孔124との係合状態を、図11と同様に示した断面図である。係合爪51の頂部52の周方向の両端が、係合孔124の周方向の両側に形成された案内面127に当接又は対向している。
【0079】
本実施形態において、接続されたオスコネクタ40とニードルレスポート100とを分離するためには、実施形態1と同様に、オスコネクタ40を、ニードルレスポート100に対して、中心軸40a,100aの回りに矢印49の向きに回転させる。これにより、係合爪51の頂部52の、回転方向49の前側に位置する端部が、係合孔124の案内面127に当接する。案内面127は、上述したように傾斜している。したがって、オスコネクタ40が回転方向49に回転するにしたがって、係合爪51の頂部52が案内面127上を摺動し、互いに対向する係合爪51間の間隔が拡大するように一対の係合アーム50が弾性変形する。遂には、係合爪51が係合孔124から完全に脱出し、係合爪51と係合孔124との係合が解除される。その後は、実施形態1と同様に、挿入部45が挿入されていたセプタム110(図10B参照)が直ちに弾性回復し、挿入部45を排出する。必要に応じて、オスコネクタ40をニードルレスポート100から引き抜いてもよい。かくして、オスコネクタ40とニードルレスポート100とが分離される。挿入部45が抜き去られたセプタム110のスリット111は直ちに閉じる。
【0080】
本実施形態では、係合孔124に対して中心軸40aを中心とする周方向の両側に案内面127が形成されているので、オスコネクタ40をニードルレスポート100に対して矢印49とは逆向きに回転させても、上記と同様にオスコネクタ40とニードルレスポート100とを分離することができる。
【0081】
以上のように、本実施形態2では、オスコネクタ40をニードルレスポート100に対して回転させたとき、係合孔124の周方向の両側に形成された案内面127が、実施形態1の案内面53と同様に、一対の係合アーム50を弾性変形させ、係合爪51と係合孔124との係合を解除させる。従って、実施形態1と同様に、ニードルレスポート100に対して単にオスコネクタ40を回転させるという極めて簡単な操作を行うだけで、オスコネクタ40とニードルレスポート100とを分離することができる。
【0082】
上記の実施形態2では、案内面127は、係合孔124に対して中心軸40aを中心とする周方向の両側に形成されていた。この構成では、オスコネクタ40をニードルレスポート100に対していずれの向きに回転させても、オスコネクタ40とニードルレスポート100とを分離することができる。しかしながら、係合孔124に対して中心軸40aを中心とする周方向のいずれか一方の側にのみ案内面127を形成してもよい。この場合は、係合爪51が案内面127に当接する向きにオスコネクタ40をニードルレスポート100に対して回転させた場合にのみ、オスコネクタ40とニードルレスポート100とを分離することが可能となる。
【0083】
上記の実施形態2において、係合爪51の頂部52に対して周方向の両側の側面55の少なくとも一方を、実施形態1で説明した傾斜した案内面53(図1B、図1D、図2参照)に置き換えてもよい。この場合、オスコネクタ40とニードルレスポート100とが接続された状態において、オスコネクタ40をニードルレスポート100に対して回転させると、案内面127に対して案内面53が当接し摺動して、上記と同様に一対の係合アーム50を弾性変形させる。従って、オスコネクタ40とニードルレスポート100とを分離することができる。
【0084】
本実施形態2は、上記を除いて実施形態1と同じであり、実施形態1と同様の効果を奏する。
【0085】
上記の実施形態1,2は例示に過ぎず、本発明はこれに限定されず、適宜変更することができる。
【0086】
例えば、上記のオスコネクタ40の接続部41は、ネジロック型コネクタ10を介してチューブ29と接続されていたが、図15に示すように、接続部41にチューブ29が直接接続されていてもよい。この場合、接続部41の外周面に雄ネジ43を形成する必要はない。また、接続部41の内周面にテーパ面42を形成する必要もない。また、オスコネクタ40の接続部41は、上記以外の方法でチューブ29と接続されていてもよい。更には、オスコネクタ40の接続部41が、チューブ29以外の部材、例えばシリンジ等に分離可能に又は一体的に接続されていてもよい。
【0087】
従来のレバーロック式コネクタ900のフード905と同様のフードを、オスコネクタ40に設けてもよい。このフードは、挿入部45と同軸の略円筒形状を有し、挿入部45を取り囲む。このようなフードを設けることにより、オスコネクタ40とニードルレスポート100との接続作業が容易になる。
【0088】
上記の実施形態1,2において、オスコネクタ40の摺動面54及びニードルレスポート100の摺動面104のうちのいずれか一方を省略することができる。摺動面54及び摺動面104のうちいずれか一方のみが存在すれば、ニードルレスポート100に向かってオスコネクタ40を押し込んだときに一対の係合アーム50が弾性変形するので、上記の実施形態1,2と同様にオスコネクタ40とニードルレスポート100とを接続することができる。
【0089】
上記の実施形態1,2では、係合し合う係合爪51及び係合孔124は、中心軸40a,100aに対して対称位置に各2つ設けられていたが、係合爪51及び係合孔124の数は各2つに限定されず、各3つ以上であってもよい。係合爪51及び係合孔124は、その数にかかわらず、中心軸40a,100aに対して等角度間隔で設けられることが、オスコネクタ40とニードルレスポート100との安定した接続のために好ましい。
【0090】
上記の実施形態1,2では、係合爪51が嵌入する係合孔124はキャップ120に形成されていたが、本発明はこれに限定されない。係合孔124は、ニードルレスポート100の略円筒面である外周面上に形成されいればよい。例えば、係合孔124をポート本体101の外周面に形成することもできる。
【0091】
上記の実施形態1,2では、ニードルレスポート100は、チューブ109の一端に設けられていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、ニードルレスポート100が、液状物が流れるチューブの途中に設けられる混注ポート(例えば特許文献2参照)であってもよい。あるいは、ニードルレスポート100が、柔軟な材料からなる袋状物(いわゆるパウチ)や硬質材料からなる容器などに設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の利用分野は特に制限はなく、例えば薬液や血液などの液状物を輸送する輸送ラインにおいて異なる部材を接続するためのオスコネクタ及び接続具として広範囲に利用することができる。
【符号の説明】
【0093】
40 医療用オスコネクタ
40a 中心軸
41 接続部
45 挿入部
46 支持部材
49 回転方向
50 係合アーム
51 係合爪
52 係合爪の頂部
53 係合爪の案内面
54 係合爪の摺動面
55 係合爪の側面
100 ニードルレスポート
100a 中心軸
101ポート本体
104 ニードルレスポートの摺動面
110 弾性隔壁部材(セプタム)
111 スリット
120 キャップ
124 係合孔
125 係合孔の周方向の端縁
127 係合孔の案内面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スリットが形成された弾性隔壁部材を備え、外周面に係合孔が形成されたニードルレスポートに接続可能な医療用オスコネクタであって、
前記弾性隔壁部材の前記スリットに挿入される挿入部と、
前記挿入部に対向する係合アームと、
前記係合アームの前記挿入部に対向する側の面に設けられた、前記係合孔に嵌入する係合爪とを備え、
前記係合爪の頂部に対して前記挿入部の中心軸を中心とする周方向の少なくとも一方の側に、前記挿入部から遠ざかるにしたがって前記係合爪の幅寸法が拡大するように傾斜した案内面が形成されていることを特徴とする医療用オスコネクタ。
【請求項2】
前記係合爪が前記係合孔に嵌入したとき、前記係合孔の周方向の端縁が前記案内面に当接又は対向する請求項1に記載の医療用オスコネクタ。
【請求項3】
前記医療用オスコネクタが前記ニードルレスポートに接続された状態において前記医療用オスコネクタを前記ニードルレスポートに対して回転させたとき、前記係合爪の前記案内面が前記係合孔の周方向の端縁上を摺動し、前記係合爪が前記係合孔から脱出する請求項1又は2に記載の医療用オスコネクタ。
【請求項4】
前記係合爪が前記係合孔から脱出すると、前記弾性隔壁部材が弾性回復し、前記挿入部を前記スリットから排出する請求項3に記載の医療用オスコネクタ。
【請求項5】
前記案内面が、前記係合爪の前記頂部に対して前記挿入部の前記中心軸を中心とする周方向の両側に設けられている請求項1〜4のいずれかに記載の医療用オスコネクタ。
【請求項6】
前記係合爪に、前記頂部から前記係合アームの先端に近づくにしたがって前記挿入部から遠ざかるように傾斜した摺動面が形成されている請求項1〜5のいずれかに記載の医療用オスコネクタ。
【請求項7】
前記係合爪を備えた前記係合アームが前記挿入部の前記中心軸に対して等角度間隔に複数個設けられている請求項1〜6のいずれかに記載の医療用オスコネクタ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の医療用オスコネクタと、前記ニードルレスポートとを備える医療用接続具。
【請求項9】
スリットが形成された弾性隔壁部材を備え、外周面に係合孔が形成されたニードルレスポートと、
前記弾性隔壁部材の前記スリットに挿入される挿入部、前記挿入部に対向する係合アーム、及び、前記係合アームの前記挿入部に対向する側の面に設けられ且つ前記係合孔に嵌入する係合爪を備えた医療用オスコネクタと
を備える医療用接続具であって、
前記ニードルレスポートの前記係合孔の周方向における少なくとも一方の側に、前記ニードルレスポートの中心軸から離れるにしたがって前記係合孔の開口幅が拡大するように傾斜した案内面が形成されていることを特徴とする医療用接続具。
【請求項10】
前記係合爪が前記係合孔に嵌入したとき、前記係合爪が前記係合孔の前記案内面に当接又は対向する請求項9に記載の医療用接続具。
【請求項11】
前記医療用オスコネクタと前記ニードルレスポートとが接続された状態において前記医療用オスコネクタを前記ニードルレスポートに対して回転させたとき、前記係合爪が前記案内面上を摺動し、前記係合爪が前記係合孔から脱出する請求項9又は10に記載の医療用接続具。
【請求項12】
前記係合爪が前記係合孔から脱出すると、前記弾性隔壁部材が弾性回復し、前記挿入部を前記スリットから排出する請求項11に記載の医療用接続具。
【請求項13】
前記案内面が、前記係合孔の周方向における両側に設けられている請求項9〜12のいずれかに記載の医療用接続具。
【請求項14】
前記ニードルレスポートの外周面の、前記医療用オスコネクタ側の端縁と前記係合孔との間の領域に、前記係合孔に近づくにしたがって前記ニードルレスポートの前記中心軸から離れるように傾斜した摺動面が形成されている請求項9〜13のいずれかに記載の医療用接続具。
【請求項15】
前記係合爪の頂部に対して前記挿入部の中心軸を中心とする周方向の少なくとも一方の側に、前記挿入部から遠ざかるにしたがって前記係合爪の幅寸法が拡大するように傾斜した第2案内面が形成されている請求項9〜14のいずれかに記載の医療用接続具。
【請求項16】
前記係合爪に、前記頂部から前記係合アームの先端に近づくにしたがって前記挿入部から遠ざかるように傾斜した第2摺動面が形成されている請求項9〜15のいずれかに記載の医療用接続具。
【請求項17】
前記係合孔が前記ニードルレスポートの前記中心軸に対して等角度間隔に複数個設けられており、前記係合爪を備えた前記係合アームが前記挿入部の前記中心軸に対して等角度間隔に複数個設けられている請求項9〜16のいずれかに記載の医療用接続具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2012−81082(P2012−81082A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229870(P2010−229870)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(000153030)株式会社ジェイ・エム・エス (452)
【Fターム(参考)】