説明

医療用ガイドワイヤ

【課題】先端部の柔軟性に優れ、かつ、最先端部とコアシャフト、及び最先端部とコイル体との接合強度を向上させた医療用ガイドワイヤを提供する。
【解決手段】コアシャフト2の軸線に沿うように該コアシャフト2に固定されている線材5Aとコイル体3の先端部30と前記線材5Aの先端部50とを固着して形成された最先端部4と、を有し、前記コアシャフト2の先端20は、前記最先端部4から基端側に離間して配置されていると共に、前記線材5Aは、2本の線状基材15A,15Aが並んで連接されて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用分野で好適に用いられる医療用ガイドワイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療現場において血管、尿管、又は器官等へのカテーテルの挿入や、血管の動脈瘤形成部への体内留置具の挿入の際にガイドとして用いられる医療用ガイドワイヤは、既によく知られている。通常、前記医療用ガイドワイヤは、コアシャフトと、前記コアシャフトの先端部外周に巻回されたコイル体とを備え、さらに、前記コイル体の先端部とコアシャフトの先端部とを固着して形成された最先端部を有している。
【0003】
また、医療用ガイドワイヤとしては、最先端部とコアシャフトの先端部とを直接固着せずに離間させることにより、医療用ガイドワイヤの最先端部の柔軟性を確保したものが知られている(特許文献1〜3参照)。これらの医療用ガイドワイヤにあっては、最先端部とコアシャフトとコイル体とをフープ線でつないでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2006/002199号
【特許文献2】欧州特許出願公開第1464358号明細書
【特許文献3】米国特許第6673025号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜3に記載の医療用ガイドワイヤにおいては、いずれも前記フープ線が一本の線材で構成されており、該線材の断面積が小さい場合に、最先端部とコアシャフト及び最先端部とコイル体との接合強度が十分に得られない問題があった。ここで、前記フープ線の外径を径大なものとすれば、該フープ線自身の強度が増し、これに伴い最先端部とコアシャフト及び最先端部とコイル体との接合強度が向上しうるが、該フープ線の外径が過剰に増大すると該医療用ガイドワイヤ先端部の柔軟性が低下してしまう問題が生じる。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、医療用ガイドワイヤの先端部の柔軟性を十分に確保しつつ、最先端部とコアシャフトとの接合強度を向上させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明は、コアシャフトと、前記コアシャフトの少なくとも先端部外周に巻回されたコイル体と、前記コイル体の先端部に形成された最先端部と、前記コイル体内において前記コアシャフトの軸線に沿うように配置されており、その先端部が前記最先端部に接合されており、その後端部が前記コアシャフト及び/又は前記コイル体に接合されている線材と、を有し、前記コアシャフトの先端は、前記最先端部から基端側に離間して配置されていると共に、前記線材は、複数の線状基材が該線状基材の径方向に並んで連接されて構成されていることを特徴とする医療用ガイドワイヤを提供するものである。
【0008】
上記のように、複数の線状基材によって線材が構成されていると、線材の断面積が十分に確保されるため、線材の曲げ強度が増し、これに伴い最先端部とコアシャフト及び最先端部とコイル体との接合強度が向上する。また、該最先端部とコアシャフトの先端部とは離間させて配置されているため、当該医療用ガイドワイヤの先端部における柔軟性も十分に確保される。
【0009】
前記線材を構成する線状基材のうち少なくともいずれかは、該線状基材の軸線に対して垂直な切断面が扁平形状であることが望ましい。
【0010】
このような構成であると、前記線状基材は、扁平面に対して垂直方向へより一層変形しやすい特性を有することとなる。このため、当該医療用ガイドワイヤの先端部は、特定の方向へ方向付けされて屈曲することとなり、該医療用ガイドワイヤは、シェイピング容易性が向上し、血管選択性に優れたものとなる。
【0011】
さらに、上記構成にあっては、前記最先端部に固着されている前記線材の先端部の中心軸線と、前記コイル体の中心軸線とが一致していることが望ましい。
【0012】
上記構成にあっては、コイル体の先端部及び線材の先端部が同方向へ屈曲した際に、その屈曲度合いに偏りが生じることが抑制される。このため、当該医療用ガイドワイヤの先端部において捻れが抑止され、トルク伝達性が向上する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の医療用ガイドワイヤは、コアシャフトの先端が最先端部から基端側に離間して配置され、また線材が複数の線状基材によって構成されているため、先端部の柔軟性に優れ、かつ、最先端部とコアシャフト、及び最先端部とコイル体との接合強度が向上する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1にかかる医療用ガイドワイヤを示す説明図
【図2】線材の横断面図
【図3】他の形状の線材を示す説明図
【図4】実施例2にかかる医療用ガイドワイヤを示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明にかかる医療用ガイドワイヤの実施形態を添付図面に従って説明する。
【0016】
(実施例1)
図1に示すように、医療用ガイドワイヤ1Aは、先端側が細径で基端側が太径とされている先細り丸棒形状のコアシャフト2を備えている。
【0017】
また、前記コアシャフト2の先端部20の外周には、コイル体3が巻回されて固定されている。該コイル体3は、巻回方向に対して垂直な切断面が円形状のコイル素線からなり、該コイル素線が密巻きされて構成されている。また、該コイル体3の中間部が、中間固定部6を介して該コアシャフト2の先端部近傍に固着され、該コイル体3の後端部が、後端固定部7を介して該コアシャフトの中間部に固着されている。なお、前記中間固定部6及び前記後端固定部7は、公知材料を用いた公知技術(例えば、接着剤、ロウ接、又は溶接)により構成される。
【0018】
また、前記コアシャフト2の先端部20には、該コアシャフト2の軸線に沿うように線材5Aが固定されている。具体的には、該線材5Aは、ステンレス等の屈曲可能な材料からなり、該線材5Aの後端部は、前記中間固定部6を介してコアシャフト2及びコイル体3の中間部に固定されている。また、該線材5Aは、図1,2に示すように、2本の線状基材15A,15Aが該線状基材15Aの径方向に沿って並べられて連接されてなる。該線状基材15Aは、その軸線に対して垂直な切断面が扁平な長方形状とされており、各線状基材15Aが互いに扁平面を重ね合わせるようにして接合されて、全体として扁平形状とされた線材5Aが構成されている。
【0019】
また、前記コイル体3の先端部30と、前記線材5Aの先端部50とがほぼ半球体形の最先端部4を介して固着されている。なお、該最先端部4は、公知材料を用いた公知技術(例えば、接着剤、ロウ接、又は溶接)により構成されている。
【0020】
さらに、前記最先端部4にあっては、前記線材5Aの先端部50の中心軸線と、該コイル体3の中心軸線Lとが一致するように該線材5Aが固着されていると共に、前記コアシャフト2の先端は、該最先端部4から基端側に離間して配置されている。
【0021】
上記のように、複数の線状基材15A,15Aによって線材5Aが構成されていると、線材5Aの断面積が十分に確保されるため、線材5Aの曲げ強度が増し、これに伴い最先端部4とコアシャフト2及び最先端部4とコイル体3との接合強度が向上する。また、線材5Aの後端部、コアシャフト2、及びコイル体3が固定されているため、これにより、最先端部4とコアシャフト2及び最先端部4とコイル体3との接合強度が向上する。また、断面扁平形状の線状基材15Aによって線材5Aが構成されると、医療用ガイドワイヤ1Aの先端部は、特定の方向へ方向付けされて屈曲することとなり、全体としてシェイピング容易性が向上し、血管選択性に優れたものとなる。また、該最先端部4と該コアシャフト2の先端部20とは離間しているため、医療用ガイドワイヤ1Aの先端部における柔軟性も十分に確保される。また、コイル体3の中心軸線Lと線材5Aの中心軸線とが一致しているため、コイル体3の先端部30及び線材5Aの先端部50が同方向へ屈曲した際に、その屈曲度合いに偏りが生じることが抑制され、医療用ガイドワイヤ1Aの先端部において捻れが抑えられてトルク伝達性が向上する。
【0022】
なお、以下のような変形例も提案される。
図3aに示すように、線材5Bの線状基材15Bは、その軸線に対して垂直な切断面における形状が扁平な六角形とされており、このように該線状基材15Bは扁平な多角形であってもよい。また、図3bに示すように、線材5Cの線状基材15Cは、前記形状が楕円であってもよい。さらに、図3cに示すように、線材5Dの線状基材15Dは、前記形状が真円とされており、このような線状基材15Dも本発明に含まれる。
【0023】
(実施例2)
以下、実施例2を、図4に従って説明する。なお、上記実施例1と共通する部分については説明を省略し、図中では同じ符号を付すこととする。
医療用ガイドワイヤ1Bにあっては、前記最先端部4に固着されている前記線材5Aの先端部の中心軸線と、前記コイル体3の中心軸線Lとが不一致となっており、すなわち該線材5Aが該最先端部4の中心軸線からずれた位置に固着されている。このように、線材5Aの中心軸線を適宜位置調整して使用者が使用しやすい先端部の屈曲具合を実現してもよい。
【0024】
本発明は、上述した実施例に限定されることはなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で設計変更を行ったり、適宜組み合わせたりすることは勿論可能である。例えば、上記線材5A〜5Dにあって、接合のしやすさに鑑みればすべての線状基材15A〜15Dが同じ寸法形状であることが望ましいが、線材5A〜5Dを構成する線状基材15A〜15Dのうち少なくともいずれかが扁平形状とされていてもよい。また、線材5A〜5Dを構成する線状基材15A〜15Dは、2本に限定されず、3本以上が接合されてなる構成であっても勿論よい。また、前記線材5A〜5Dの後端部は、上記のようにコアシャフト2及びコイル体3に固定されていてもよいし、コアシャフト2のみに固定されていてもよいし、コイル体3の中間部のみに固定されていてもよい。
【符号の説明】
【0025】
1A〜1B 医療用ガイドワイヤ
2 コアシャフト
3 コイル体
4 最先端部
5A〜5D 線材
15A〜15D 線状基材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアシャフトと、
前記コアシャフトの少なくとも先端部外周に巻回されたコイル体と、
前記コイル体の先端部に形成された最先端部と、
前記コイル体内において前記コアシャフトの軸線に沿うように配置されており、その先端部が前記最先端部に接合されており、その後端部が前記コアシャフト及び/又は前記コイル体に接合されている線材と、
を有し、
前記コアシャフトの先端は、前記最先端部から基端側に離間して配置されていると共に、
前記線材は、複数の線状基材が該線状基材の径方向に並んで連接されて構成されている
ことを特徴とする医療用ガイドワイヤ。
【請求項2】
前記線材を構成する線状基材のうち少なくともいずれかは、該線状基材の軸線に対して垂直な切断面が扁平形状である
請求項1に記載の医療用ガイドワイヤ。
【請求項3】
前記最先端部に固着されている前記線材の先端部の中心軸線と、前記コイル体の中心軸線とが一致している
請求項1又は請求項2に記載の医療用ガイドワイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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