説明

医療用ドレーンチューブならびにその製造方法

【課題】シリコーンゴムよりは硬くコシがあり、ポリウレタンよりは柔らかく、硬さが調整され、留置位置から容易には移動せず、かつ感染症を防止するために抗生物質をその内外表面に定着させた医療用ドレーンチューブを提供する。
【解決手段】イソブチレンを主成分とする重合体ブロック(a)と、イソブチレンとは異種の単量体成分を主成分とする重合体ブロック(b)とから構成されるイソブチレン系ブロック共重合体(A)、及び、熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)の混合物からなり、抗生物質を内外表面に定着させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に手術後に、その創部から滲出する血液や体液の排出を行なうドレーンチューブに関するものであり、特にその材質と形状に関して特徴を有し、さらに抗生物質を含むことにより感染症を予防するとともに、効率的に創部から滲出する血液や体液の排出を行い、患者に対しての苦痛が少ない医療用ドレーンチューブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の医療用ドレーンチューブは、例えばシリコーンゴムやポリウレタンなどを材料とし、主に手術後に先端を体内に挿入あるいは留置して、その創部から滲出する血液や体液の排出を行なうものである。
【0003】
しかしながら、このようなシリコーンゴムやポリウレタンなどを材料とする医療用ドレーンチューブは、その材料物性によりそれぞれ以下のような問題を有する。
【0004】
すなわち、シリコーンゴム製のものは、材料の有する軟性により、キンクが生じやすく、また留置位置から移動しやすく、特に負圧源を以て能動的に吸引する際には、単なる直管形状をしたものでは、チューブ内孔断面積が縮小するため効率的な血液や体液の排出が行えないという問題があった。さらにポリウレタン製のものは、その剛直性のため、体内留置時にドレーンチューブの先端部が臓器、血管、周辺組織等を圧迫する可能性がある。
【0005】
また、従来の医療用ドレーンチューブには、断面形状に工夫がなされているものがある。
【0006】
特許文献1ではチューブの内腔どうしを隔てる少なくとも一つの内壁内にチューブの長手方向にX線不透過部が埋入されているものが開示されている。さらに特許文献2では円形または類円形の断面形状を有しており、患者の体腔内の創部付近に留置されて術後の滲出液、体液を集液し体外の方向へ導くための集液部と、この集液部に続いて体腔内に配置される移行部と、この移行部に続いて体腔内に配置される流出移行部と、この流出移行部に続いて体外に配置されて体外へ体液を導くための流出部とから構成されているものが開示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1および2に開示のチューブはいずれもシリコーンゴムあるいはポリウレタンを材質とするものであり、それらの材質を原因とする上記問題点に対しては配慮がない。
【0008】
ところで、医療用ドレーンチューブの使用中には、感染を防止することがきわめて重要である。病院内の院内での感染には外因性の感染(交差感染)と内因性の感染(自己感染)とがある。外因性の感染には空中浮遊微生物や被覆材料を通過した微生物による空気感染と、汚染された機械、器具や医療者の不潔部位等との接触による接触感染とがある。一方、内因性の感染は患者自身の皮膚、呼吸器、口腔、咽頭、泌尿器、組織等に存在する微生物による感染である。感染発生の起因菌は、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、腸内細菌、肺炎カン菌、エンテロコッカス属、コリネバクテリウム属、カンジダ属、セラチア属等が挙げられる。
【0009】
このような感染に対して、特許文献3に開示のように、ポリウレタンに、たとえばトリクロサンといった消毒液を含浸させた医療装置で、この装置の表面上およびその表面を取り囲む組織または体液中で微生物転移増殖を防止するものが提案されている。これは微生物増殖を防ぐ効果は期待できるものの、基材として使用されるポリウレタンの剛直性のため、上述の問題が解消されない。
【0010】
特許文献4には、医療用チューブに微弱電流を流すための電極を取り付け、電気的刺激により殺菌作用効果および抗血栓作用効果を付与するものが開示されている。しかし、電極をシリコーンゴムやポリウレタンのチューブに接着や印刷などの方法で取り付け、さらに電源を配置することが煩瑣で、しかもチューブ基材としてはやはりシリコーンゴムやポリウレタンを使用しているものであり、上述の問題が解消されない。
【特許文献1】特開平11−128357号公報
【特許文献2】特開2002−224222号公報
【特許文献3】特表平11−500330号公報
【特許文献4】特開2002−200172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、シリコーンゴムよりは硬くコシがあり、ポリウレタンよりは柔らかく、硬さが調整され、留置位置から容易には移動せず、かつ感染症を防止するために抗生物質をその内外表面に定着させた医療用ドレーンチューブを提供するものである。
【0012】
本発明の好適な実施形態では、使用素材の機械的特性、そして感染症を回避する特性、それらに相まって、その断面形状と体内に挿入される先端部分に工夫があり、キンクしにくく、また、キンクしても効率的な血液、体液の排出が行える医療用ドレーンチューブを提供するものである。加えて、排液バッグ等に接続して閉鎖式,能動式等のドレーンとして使用することのできる医療用ドレーンチューブを提供するものである。さらには患者に苦痛を与えない医療用ドレーンチューブを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、以下の1または複数の特徴を有する。
(1)本発明の一つの特徴は、イソブチレンを主成分とする重合体ブロック(a)と、イソブチレンとは異種の単量体成分を主成分とする重合体ブロック(b)とから構成されるイソブチレン系ブロック共重合体(A)、及び、
熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)の混合物からなり、
抗生物質を内外表面に定着させたことを特徴とする医療用ドレーンチューブである。
(2)本発明の好適な実施形態は、前記重合体ブロック(b)は、芳香族ビニル系単量体あり、イソブチレン系ブロック共重合体(A)に対する重量比が10〜40重量%である。
(3)本発明の好適な実施形態は、前記イソブチレン系ブロック共重合体(A)と熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)の割合が、重量比で(A)/(B)=1/99〜50/50である。
(4)本発明の好適な実施形態は、前記イソブチレン系ブロック共重合体(A)の分子量が、50000〜200000であり、重合体ブロック(b)は、スチレンであり、イソブチレン系ブロック共重合体(A)の重量の10〜40重量%である。
(5)本発明の好適な実施形態は、前記熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)にエーテル結合がある。
(6)本発明の好適な実施形態は、前記イソブチレン系ブロック共重合体(A)と熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)の配合比を(A)/(B)=1/99〜50/50とし、かつ室温での圧縮応力が0.15〜0.4MPaである医療用ドレーンチューブである。
(7)本発明の好適な実施形態は、前記抗生物質が、ペニシリン系、セファム系、マクロライド系、テトラサイクリン系、ホスホマイシン系、アミノグリコシド系、ニューキノロン系、クロラムフェニコール系、リンコマイシン系、アミノ配糖体系、またはポリペプチド系抗生物質から選ばれる。
(8)本発明の別の特徴は、
(i)イソブチレンを主成分とする重合体ブロック(a)と、イソブチレンとは異種の単量体成分を主成分とする重合体ブロック(b)とから構成されるイソブチレン系ブロック共重合体(A)、及び、熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)の混合物を押出成形によりチューブ状に押出し、
(ii)抗生物質を溶媒により溶解させた溶液にチューブを浸漬ならびに膨潤させ、しかる後に溶媒を気散させ、前記抗生物質を内外表面に定着させる、
医療用ドレーンチューブの製造方法である。
(9)本発明の別の特徴は、イソブチレンを主成分とする重合体ブロック(a)と、イソブチレンとは異種の単量体成分を主成分とする重合体ブロック(b)とから構成されるイソブチレン系ブロック共重合体(A)、及び、
熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)の混合物からなり、抗生物質が内外表面に定着され、直管状であることを特徴とする医療用ドレーンチューブである。
(10)本発明の別の特徴は、イソブチレンを主成分とする重合体ブロック(a)と、イソブチレンとは異種の単量体成分を主成分とする重合体ブロック(b)とから構成されるイソブチレン系ブロック共重合体(A)、及び、
熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)の混合物からなるチューブであって、抗生物質が当該チューブ内外表面に定着され、当該チューブ内壁から内方向に向かう突起が少なくとも1つ以上形成されており、当該突起はチューブの長手方向に対し螺旋状に形成されていることを特徴とする医療用ドレーンチューブである。
(11)本発明の別の特徴は、イソブチレンを主成分とする重合体ブロック(a)と、イソブチレンとは異種の単量体成分を主成分とする重合体ブロック(b)とから構成されるイソブチレン系ブロック共重合体(A)、及び、
熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)の混合物からなるチューブであって、抗生物質が当該チューブ内外表面に定着され、体内に挿入されるチューブ先端部分に側孔を有することを特徴とする医療用ドレーンチューブである。
(12)本発明の別の特徴は、イソブチレンを主成分とする重合体ブロック(a)と、イソブチレンとは異種の単量体成分を主成分とする重合体ブロック(b)とから構成されるイソブチレン系ブロック共重合体(A)、及び、
熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)の混合物からなる直管状のチューブであって、抗生物質が当該チューブ内外表面に定着され、体内に挿入される当該チューブ先端部分に側孔を有することを特徴とする医療用ドレーンチューブである。
(13)本発明の別の特徴は、イソブチレンを主成分とする重合体ブロック(a)と、イソブチレンとは異種の単量体成分を主成分とする重合体ブロック(b)とから構成されるイソブチレン系ブロック共重合体(A)、及び、
熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)の混合物からなるチューブであって、抗生物質が当該チューブ内外表面に定着され、当該チューブ内壁から内方向に向かう突起が少なくとも1つ以上形成されており、当該突起は、チューブの長手方向に対し螺旋状に形成されており、体内に挿入される前記チューブ先端部分に側孔を有することを特徴とする医療用ドレーンチューブである。
【0014】
本発明のその他の特徴およびそれらの効果は、以下の実施形態および図面によって明らかにされる。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、所望の硬さに調整され、かつ感染症を防止するために抗生物質をその内外表面に定着させた医療用ドレーンチューブを得ることができる。すなわち、シリコーンゴムよりは硬くコシがあり、ポリウレタンよりは柔らかく、硬さが調整され、しかも抗生物質をその内外表面に定着させることにより血管および体内への微生物の侵入を防止する医療用ドレーンチューブが得られる。
【0016】
さらに本発明の好適な実施形態では、前記使用素材の特性と感染症を防止するという機能性と相まって、その断面形状と体内に挿入される先端部分に工夫があり、効率的な血液、体液の排出、あるいは患者に苦痛を与えない医療用ドレーンチューブが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
1.イソブチレン系ブロック共重合体(A)
イソブチレン系ブロック共重合体(A)は、イソブチレンを主成分とする重合体ブロック(a)と、イソブチレンとは異種の単量体成分を主成分とする重合体ブロック(b)とを有している限りにおいては特に制限はなく、例えば、直鎖状、分岐状、星状等の構造を有するブロック共重合体、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体、マルチブロック共重合体等のいずれも選択可能である。好ましいブロック共重合体としては、物性及び重合特性等のバランスから、芳香族ビニル系単量体を主成分とする重合体ブロック−イソブチレンを主成分とする重合体ブロック−芳香族ビニル系単量体を主成分とする重合体ブロックからなるトリブロック共重合体、芳香族ビニル系単量体を主成分とする重合体ブロック−イソブチレンを主成分とする重合体ブロックからなるジブロック共重合体、芳香族ビニル系単量体を主成分とする重合体ブロックとイソブチレンを主成分とする重合体ブロックからなるアームを3本以上有する星型ブロック共重合体等が挙げられる。これらは所望の物性・成形加工性を得る為に1種又は2種以上を組み合わせて使用可能である。
【0018】
1−1.イソブチレンとは異種の単量体成分
本発明の上記「イソブチレンとは異種の単量体成分」は、カチオン重合可能な単量体成分であれば特に限定されないが、脂肪族オレフィン類、芳香族ビニル類、ジエン類、ビニルエーテル類、シラン類、ビニルカルバゾール、β−ピネン、アセナフチレン等の単量体が例示できる。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0019】
脂肪族オレフィン系単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、ペンテン、ヘキセン、シクロヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン、オクテン、ノルボルネン等が挙げられる。
【0020】
芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、o−、m−又はp−メチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、2,6−ジメチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、α−メチル−o−メチルスチレン、α−メチル−m−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、β−メチル−o−メチルスチレン、β−メチル−m−メチルスチレン、β−メチル−p−メチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、α−メチル−2,6−ジメチルスチレン、α−メチル−2,4−ジメチルスチレン、β−メチル−2,6−ジメチルスチレン、β−メチル−2,4−ジメチルスチレン、o−、m−又はp−クロロスチレン、2,6−ジクロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、α−クロロ−o−クロロスチレン、α−クロロ−m−クロロスチレン、α−クロロ−p−クロロスチレン、β−クロロ−o−クロロスチレン、β−クロロ−m−クロロスチレン、β−クロロ−p−クロロスチレン、2,4,6−トリクロロスチレン、α−クロロ−2,6−ジクロロスチレン、α−クロロ−2,4−ジクロロスチレン、β−クロロ−2,6−ジクロロスチレン、β−クロロ−2,4−ジクロロスチレン、o−、m−又はp−t−ブチルスチレン、o−、m−又はp−メトキシスチレン、o−、m−又はp−クロロメチルスチレン、o−、m−又はp−ブロモメチルスチレン、シリル基で置換されたスチレン誘導体、インデン、ビニルナフタレン等が挙げられる。
【0021】
ジエン系単量体としては、ブタジエン、イソプレン、ヘキサジエン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、ジビニルベンゼン、エチリデンノルボルネン等が挙げられる。
【0022】
ビニルエーテル系単量体としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、(n−、イソ)プロピルビニルエーテル、(n−、sec−、tert−、イソ)ブチルビニルエーテル、メチルプロペニルエーテル、エチルプロペニルエーテル等が挙げられる。
【0023】
シラン化合物としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルジメチルクロロシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリメチルシラン、ジビニルジクロロシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジメチルシラン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、トリビニルメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0024】
1−2.重合体ブロック(b)
上述した「イソブチレンとは異種の単量体成分」を主成分とする「重合体ブロック(b)」は、物性及び重合特性等のバランスから、芳香族ビニル系単量体を主成分とすることが好ましい。芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、インデンからなる群から選ばれる1種以上の単量体を使用することが好ましく、コストの面からスチレン、α−メチルスチレン、あるいはこれらの混合物を用いることが特に好ましい。芳香族ビニル系単量体は、機械強度上の観点から、芳香族ビニル系単量体を60重量%以上含有しているのが好ましく、80重量%以上含有しているのが更に好ましい。
【0025】
1−3.重合体ブロック(a)
「重合体ブロック(a)」は、イソブチレン以外の単量体を含んでいても含んでいなくても良いが、通常、イソブチレンを60重量%以上、好ましくは80重量%以上含有する。イソブチレン以外の単量体としては、カチオン重合可能な単量体であれば特に制限はないが、例えば上記の単量体等が挙げられる。
【0026】
重合体ブロック(a)と重合体ブロック(b)の割合に関しては、特に制限はないが、物性バランスから、重合体ブロック(a)が5から60重量%であることが好ましく、重合体ブロック(b)が10〜40重量%であることが特に好ましい。重合体ブロック(b)の割合が上記範囲よりも低い場合は、機械的な物性が十分に発現されず、一方、上記範囲を超える場合にはイソブチレン由来の耐気体透過性(ガスバリア性)が低下することとなり、好ましくない。
【0027】
1−4.イソブチレン系ブロック共重合体(A)のその他の特徴および製造方法
また、イソブチレン系ブロック共重合体(A)の分子量にも特に制限はないが、流動性、加工性、物性等の面から、数平均分子量が30000〜500000であることが好ましく、50000〜200000であることが特に好ましい。イソブチレン系ブロック共重合体の数平均分子量が上記範囲よりも小さい場合には、粘着性(タック感)及び軟化剤のブリードアウトが起こる傾向にあり、機械的な物性が十分に発現されず、一方、上記範囲を超える場合には、流動性、加工性の面で不利である。
【0028】
イソブチレン系ブロック共重合体の製造方法については特に制限はないが、例えば、下記一般式(1)で表される化合物の存在下に、イソブチレンを主成分とする単量体成分及びイソブチレンとは異種の単量体を主成分とする単量体成分を重合させることにより得られる。
(CR12X)nR3 (1)
[式中Xはハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基またはアシロキシ基から選ばれる置換基、R1、R2はそれぞれ水素原子または炭素数1〜6の1価炭化水素基でR1、R2は同一であっても異なっていても良く、R3は多価芳香族炭化水素基または多価脂肪族炭化水素基であり、nは1〜6の自然数を示す。]
上記一般式(1)で表わされる化合物は、開始剤となるもので、ルイス酸等の存在下、炭素陽イオンを生成し、カチオン重合の開始点になると考えられる。
【0029】
本発明の実施形態で用いられる一般式(1)の化合物の例としては、(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン〔C65C(CH32Cl〕、1,4−ビス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン〔1,4−Cl(CH32CC64C(CH32Cl〕、1,3−ビス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン〔1,3−Cl(CH32CC64C(CH32Cl〕、1,3,5−トリス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン〔1,3,5−(ClC(CH32363〕、1,3−ビス(1−クロル−1−メチルエチル)−5−(tert−ブチル)ベンゼン〔1,3−(C(CH32Cl)2-5−(C(CH33)C63〕のような化合物等が挙げられる。
【0030】
これらの中でも特に好ましいのは、ビス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン[C64(C(CH32Cl)2]、トリス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン[(ClC(CH32363]である。[なおビス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼンは、ビス(α−クロロイソプロピル)ベンゼン、ビス(2−クロロ−2−プロピル)ベンゼンあるいはジクミルクロライドとも呼ばれ、トリス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼンは、トリス(α−クロロイソプロピル)ベンゼン、トリス(2−クロロ−2−プロピル)ベンゼンあるいはトリクミルクロライドとも呼ばれる]。
【0031】
イソブチレン系ブロック共重合体(A)を重合させる際に、さらにルイス酸触媒を共存させることもできる。このようなルイス酸としては、カチオン重合に使用できるものであれば良く、TiCl4、TiBr4、BCl3、BF3、BF3・OEt2、SnCl4、SbCl5、SbF5、WCl6、TaCl5、VCl5、FeCl3、ZnBr2、AlCl3、AlBr3等の金属ハロゲン化物;Et2AlCl、EtAlCl2等の有機金属ハロゲン化物を好適に使用することができる。中でも触媒としての能力、工業的な入手の容易さを考えた場合、TiCl4、BCl3、SnCl4が好ましい。ルイス酸の使用量は、特に限定されないが、使用する単量体の重合特性あるいは重合濃度等を鑑みて設定することができる。通常は一般式(1)で表される化合物に対して0.1〜100モル当量使用することができ、好ましくは1〜50モル当量の範囲である。
【0032】
イソブチレン系ブロック共重合体(A)の重合に際しては、さらに必要に応じて、電子供与体成分を共存させることもできる。この電子供与体成分は、カチオン重合に際して、成長炭素カチオンを安定化させる効果があるものと考えられており、電子供与体の添加によって分子量分布の狭い構造が制御された重合体が生成する。使用可能な電子供与体成分としては特に限定されないが、例えば、ピリジン類、アミン類、アミド類、スルホキシド類、エステル類、または金属原子に結合した酸素原子を有する金属化合物等を挙げることができる。
【0033】
イソブチレン系ブロック共重合体(A)の重合は、一般的に有機溶媒中で行うことができ、有機溶媒としてはカチオン重合を本質的に阻害しなければ特に制約なく使用することができる。具体的には、塩化メチル、ジクロロメタン、クロロホルム、塩化エチル、ジクロロエタン、n−プロピルクロライド、n−ブチルクロライド、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン等のアルキルベンゼン類;エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の直鎖式脂肪族炭化水素類;2−メチルプロパン、2−メチルブタン、2,3,3−トリメチルペンタン、2,2,5−トリメチルヘキサン等の分岐式脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の環式脂肪族炭化水素類;石油留分を水添精製したパラフィン油等を挙げることができる。
【0034】
これらの溶媒は、ブロック共重合体を構成する単量体の重合特性及び生成する重合体の溶解性等のバランスを考慮して単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0035】
上記溶媒の使用量は、得られる重合体溶液の粘度や除熱の容易さを考慮して、重合体の濃度が1〜50wt%、好ましくは5〜35wt%となるように決定される。
【0036】
実際の重合を行うに当たっては、各成分を冷却下例えば−100℃以上0℃未満の温度で混合する。エネルギーコストと重合の安定性を考慮すると、−30℃〜−80℃の温度範囲で重合を行うのが特に好ましい。
【0037】
2.熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)
熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)としては、エステル系、エーテル系、カーボネート系等、各種の熱可塑性ウレタン系樹脂を使用することができる。熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)としては、例えば、(イ)有機ジイソシアネート、(ロ)鎖伸張剤、(ハ)高分子ポリオールからなる熱可塑性ポリウレタン系樹脂が挙げられる。熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)は、いかなる方法で製造しても良く、例えば上記(イ)成分と予め均一に混合した(ロ)成分および(ハ)成分とを高速攪拌混合して、これを離型処理したバット上に流延して、必要に応じて200℃以下の温度で反応させることにより製造するか、或いは、(イ)成分と(ロ)成分を加えて末端イソシアネート基のプレポリマーとした後、(ハ)成分を加えて高速攪拌混合し、これを離型処理したバット上に流延して、必要に応じて200℃以下の温度で反応させることにより製造するなど、従来より公知の技術を利用できる。
【0038】
有機ジイソシアネート(イ)としては、従来より公知のものを適宜使用することができるが、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、トルイジンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネートなどを単独であるいはこれらを二以上組み合わせて使用できる。
【0039】
鎖伸張剤(ロ)としては、分子量が500より小さいジヒドロキシ化合物を使用するのが好ましい。このようなものとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、2,2’−ジメチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールなどを単独であるいはこれらを二以上組み合わせて使用できる。
【0040】
高分子ポリオール(ハ)としては、平均分子量が500〜4000のジヒドロキシ化合物を使用するのが好ましい。このようなものとしては、例えば、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオール等が挙げられる。ポリエステルジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、或いはその他の低分子ジオール成分の1種叉は2種以上とグルタル酸、スベリン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の低分子ジカルボン酸の1種または2種以上との縮合重合物や、ラクトンの開環重合で得たポリラクトンジオール、例えばポリプロピオラクトンジオール、ポリカプロラクトンジオール、ポリバレロラクトンジオール等が挙げられる。ポリエーテルジオールとしては、ポリプロピレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール、その他の共重合ポリエーテルグリコール等が挙げられる。ポリカーボネートジオールとしては、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオールにラクトンを開環付加重合して得られるジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオールと他のポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリエーテル・エステルジオールとの共縮合物等が挙げられる。
【0041】
3.イソブチレン系ブロック共重合体(A)と熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)との割合
イソブチレン系ブロック共重合体(A)と、熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)の割合は、重量比で(A)/(B)=1/99〜70/30であるのが好ましく、1/99〜50/50であるのが更に好ましい。(A)成分の割合が1重量%未満の場合は、柔軟性、耐気体透過性の改善効果が不十分となる傾向があり、50重量%を超えると、熱可塑性ポリウレタン樹脂の持つ耐摩耗性が損なわれる傾向がある。
【0042】
4−1.重合体(C)含有例
本発明のチューブ用樹脂組成物(医療用ドレーンチューブ)は、イソブチレン系ブロック共重合体(A)と熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)の総量100重量部に対して、重合体(C)を、0.1〜50重量部含有しているのが好ましく、1〜20重量部含有しているのが更に好ましい。重合体(C)が1重量部未満であると、相溶性が十分に発現されず、20重量部を超えると組成物中の(A)成分の割合が減少して、柔軟性、耐気体透過性、低反発性が損なわれる傾向にある。
【0043】
重合体(C)は、エポキシ基、アミノ基、水酸基、酸無水物基、カルボキシル基及びその塩、並びにカルボン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を含有するオレフィン系重合体又はスチレン系重合体からなる。ここでいう重合体とは、共重合体も含み、共重合体の共重合様式には特に制限はなく、ランダム共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体などいずれの共重合体様式であっても良い。
【0044】
オレフィン系重合体及びスチレン系重合体の例としては、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体などのエチレン・α−オレフィン系共重合体;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、ポリブタジエン、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリイソプレン、ブテン−イソプレン共重合体、スチレン−エチレンブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレンプロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)などが例示できる。
【0045】
官能基を有する重合体(C)の具体例としては、エチレン・α−オレフィン系共重合体などのポリオレフィン系重合体に、マレイン酸無水物、琥珀酸無水物、フマル酸無水物などの酸無水物を共重合したもの、アクリル酸、メタクリル酸、酢酸ビニルなどのカルボン酸及びそのNa、Zn、K、Ca、Mgなどの塩、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチルなどのカルボン酸エステルが共重合されたオレフィン系重合体などが挙げられる。
【0046】
より具体的にはエチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸n−プロピル共重合体、エチレン−アクリル酸イソプロピル共重合体、エチレン−アクリル酸n−ブチル共重合体、エチレン−アクリル酸t−ブチル共重合体、エチレン−アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸n−プロピル共重合体、エチレン−メタクリル酸イソプロピル共重合体、エチレン−メタクリル酸n−ブチル共重合体、エチレン−メタクリル酸t−ブチル共重合体、エチレン−メタクリル酸イソブチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体およびそのNa、Zn、K、Ca、Mgなどの金属塩、エチレン−マレイン酸無水物共重合体、エチレン−ブテン−マレイン酸無水物共重合体、エチレン−プロピレンーマレイン酸無水物共重合体、エチレン−ヘキセン−マレイン酸無水物共重合体、エチレン−オクテン−マレイン酸無水物共重合体、プロピレン−マレイン酸無水物共重合体、無水マレイン酸変性のSBS、無水マレイン酸変性のSIS、無水マレイン酸変性のSEBS、無水マレイン酸変性のSEPS、無水マレイン酸変性のエチレン−アクリル酸エチル共重合体などが例示できる。これらは、1種又は2種以上を組み合わせて使用可能である。
このうち、透明性の観点から、酸無水物基を有するスチレン−エチレンブチレン−スチレン共重合体(無水マレイン酸変性−SEBS)が好ましい。
【0047】
重合体(C)は、イソブチレン系ブロック共重合体(A)と熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)の溶融混練時に添加してもよいし、あらかじめイソブチレン系ブロック共重合体(A)と熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)に添加しておいてもよい。あらかじめイソブチレン系ブロック共重合体(A)と熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)に添加しておく方が、相溶性の改良効果が発現しやすく、好ましい。
【0048】
4−2.滑剤(D)含有例
本発明の組成物(医療用ドレーンチューブを形成する組成物)には、必要に応じて、(D)成分として滑剤を使用することができる。滑剤としては、脂肪酸金属塩系滑剤、脂肪酸アミド系滑剤、脂肪酸エステル系滑剤、脂肪酸系滑剤、脂肪族アルコール系滑剤、脂肪酸と多価アルコールの部分エステル、パラフィン系滑剤などが好ましく用いられ、これらの中から2種以上を選択して用いてもよい。
【0049】
脂肪酸金属塩系滑剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、モンタン酸金属塩などが挙げられる。
【0050】
脂肪酸アミド系滑剤としては、エチレンビスステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、p−フェニレンビスステアリン酸アミドなどが挙げられる。
脂肪酸エステル系滑剤としては、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル、オレイン酸メチル、エルカ酸メチル、ベヘニン酸メチル、ラウリン酸ブチル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、ヤシ脂肪酸オクチル、ステアリン酸オクチル、特殊牛脂脂肪酸オクチル、ラウリン酸ラウリル、ステアリン酸ステアリル、ベヘニン酸ベヘニル、ミリスチン酸セチル、牛脂硬化油、ヒマシ硬化油、モンタン酸エステルなどが挙げられる。
【0051】
脂肪酸系滑剤としては、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、モンタン酸などが挙げられる。
脂肪族アルコール系滑剤としては、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ミリスチルアルコール、ラウリルアルコールなどが挙げられる。
脂肪酸と多価アルコールの部分エステルとしては、ステアリン酸モノグリセライド、ステアリン酸ジグリセライド、オレイン酸モノグリセライド、モンタン酸部分ケン化エステルなどが挙げられる。
【0052】
パラフィン系滑剤としては、パラフィンワックス、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどが挙げられる。
滑剤としては、これらの中でも、成形性の改良効果とコストのバランスから、脂肪酸アミド系滑剤や脂肪酸エステル系滑剤、パラフィン系滑剤が好ましい。
【0053】
滑剤(D)は、イソブチレン系ブロック共重合体(A)と熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)の総量100重量部に対し、0.1〜10重量部添加することが好ましい。0.1重量部より少ないと、金属面との滑性が不足し、粘着により加工性や表面性が低下する傾向があり、10重量部より多く添加すると、十分に混合できずに(D)成分が分離してくる傾向がある。
【0054】
4−3.加工助剤(E)含有例
更に、本発明のチューブ用樹脂組成物には、加工助剤(E)を添加しても良い。加工助剤(E)は、組成物の溶融粘度を向上させる目的で作用し、成形加工時の成形性を向上させる。具体的には、無機系の加工性改良剤や、アクリル高分子系加工性改良剤、ポリテトラフルオロエチレン系加工性改良剤等があげられ、例えば、ポリテトラフルオロエチレン系改良剤としては、三菱レイヨン(株)製のメタブレン(登録商標)A3000や、旭硝子(株)製のルミフロン(登録商標)などが具体的にあげられる。加工助剤(E)の配合量は、特に限定されるものではないが、イソブチレン系ブロック共重合体(A)と熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)の総量100重量部に対し、0.1〜10重量部添加することが好ましい。0.1重量部より少ないと、加工性改良効果が不十分となりやすく、10重量部より多く添加すると、溶融張力が大きくなりすぎて、成形加工性が不良となりやすい。
【0055】
4−4.ポリオレフィン系樹脂適用例
本発明のチューブ用樹脂組成物には、成形流動性を付与する目的で、ポリオレフィン系樹脂も必要に応じ使用することができる。ポリオレフィン系樹脂としては、α−オレフィンの単独重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物、またはα−オレフィンと他の不飽和単量体とのランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体及びこれら重合体の酸化、ハロゲン化又はスルホン化したもの等を1種又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0056】
具体的には、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体、塩素化ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、塩素化ポリプロピレン等のポリプロピレン系樹脂、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリメチルペンテン、環状オレフィンの(共)重合体等が例示できる。これらの中でコスト、熱可塑性樹脂の物性バランスの点からポリエチレン、ポリプロピレン、又はこれらの混合物が好ましく使用できる。ポリオレフィン系樹脂の配合量は、イソブチレン系ブロック共重合体(A)と熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)の総量100重量部に対して、0〜100重量部、好ましくは0〜50重量部、さらに好ましくは0〜30重量部とする。100重量部を超えると硬度が高くなる傾向があり、好ましくない。
【0057】
4−5.軟化剤適用例
本発明のチューブ用樹脂組成物には、軟化剤も必要に応じ使用することができる。軟化剤の種類は特に限定されないが、通常、室温で液体又は液状の材料が好適に用いられる。また親水性及び疎水性のいずれの軟化剤も使用できる。このような軟化剤としては鉱物油系、植物油系、合成系等の各種ゴム用又は樹脂用軟化剤が挙げられる。鉱物油系としては、ナフテン系、パラフィン系等のプロセスオイル等が、植物油系としては、ひまし油、綿実油、あまみ油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、木ろう、パインオイル、オリーブ油等が、合成系としてはポリブテン、低分子量ポリブタジエン等が例示できる。これらの中でもイソブチレン系ブロック共重合体(A)との相溶性あるいは熱可塑性樹脂組成物の物性バランスの点から、パラフィン系プロセスオイル又はポリブテンが好ましく用いられる。これら軟化剤は、所望の粘度及び物性を得るために、単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することも可能である。
【0058】
軟化剤の配合量は、イソブチレン系ブロック共重合体(A)と熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)の総量100重量部に対して、0〜100重量部、好ましくは0〜50重量部、さらに好ましくは0〜30重量部とする。100重量部を超えると軟化剤のブリードアウトが発生する傾向があり、好ましくない。
【0059】
4−6.充填材適用例
さらに、本発明のチューブ用樹脂組成物には、物性改良あるいは経済上のメリットから、各種充填材を配合することができる。好適な充填材としては、クレー、珪藻土、シリカ、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、金属酸化物、マイカ、グラファイト、水酸化アルミニウム等の麟片状無機充填材、各種の金属粉、木片、ガラス粉、セラミックス粉、カーボンブラック、粒状ないし粉末ポリマー等の粒状ないし粉末状固体充填材、その他の各種の天然又は人工の短繊維、長繊維等が例示できる。また中空フィラー、例えば、ガラスバルーン、シリカバルーン等の無機中空フィラー、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン共重合体からなる有機中空フィラーを配合することにより、軽量化を図ることができる。更に軽量化、衝撃吸収性等の各種物性の改善のために、各種発泡剤を混入させることも可能であり、また、混合時等に機械的に気体を混ぜ込むことも可能である。
【0060】
充填材の配合量は、イソブチレン系ブロック共重合体(A)と熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)の総量100重量部に対して0〜100重量部、好ましくは0〜50重量部、さらに好ましくは0〜30重量部とする。100重量部を超えると、得られる熱可塑性樹脂組成物の機械強度が低下する傾向があり、柔軟性も損なわれる傾向であり、好ましくない。
【0061】
4−7.酸化防止剤及び/又は紫外線吸収剤適用例
さらに本発明のチューブ用樹脂組成物には、必要に応じて、酸化防止剤及び/又は紫外線吸収剤を配合することができる。配合量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.01〜10重量部、好ましくは0.01〜5重量部とする。さらに他の添加剤として難燃剤、光安定剤、着色剤、流動性改良剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、架橋剤、架橋助剤等を添加することができ、これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用可能である。さらに本発明の熱可塑性樹脂組成物の性能を損なわない範囲であれば、各種熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、他の熱可塑性エラストマー等を配合しても良い。
【0062】
4−8.造影性適用例
なお、本発明のドレーンチューブは、体内での造影性を確保するためにチューブに造影性が付与されていてもよい。造影性の付与は、チューブを多層成形により作製し造影層を設ける方法や、または上記抗菌性材料に造影剤を均一に分散させ、該樹脂組成物を使用してドレーンチューブを形成する方法などがある。造影剤としては、硫酸バリウム、炭酸バリウム、酸化ビスマス、次炭酸ビスマス、タングステン等の無機化合物が用いられる。これらの配合量は、従来ドレーンチューブに使用される造影剤の配合量でよい。
【0063】
4−9.抗生物質の例
本発明のイソブチレン系ブロック共重合体(A)と熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)からなる混合物のチューブは医療用ドレーンチューブの基材となるものである。抗生物質を溶媒で溶かした溶液に浸漬することによる膨潤および脱気による溶媒の除去によってチューブ内外表面に固定化される。
【0064】
従来からドレーンチューブとして用いられてきたシリコーンゴムやポリウレタンなどは、このような浸漬、膨潤および脱気による抗生物質の固定化が困難であったが、イソブチレン系ブロック共重合体(A)と熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)からなる混合物のチューブはこれが容易なものとなる。それは主にイソブチレン系ブロック共重合体(A)の構造からくるものであり、特に、イソブチレンとは異種の単量体成分を主成分とする重合体ブロック(b)が芳香族ビニル系単量体として、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンを使用する場合にこの特性が好適に発揮しうる。
【0065】
感染症を防止する抗生物質は各種の溶媒と混合され、溶解されて抗生物質溶液として用いられる。この溶媒は抗生物質の作用を減じないものであり、たとえば精製水、アルコール、芳香族系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤やその他の有機溶媒ならびにこれらの混合物が挙げられる。
【0066】
アルコールとしては例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、2−メチル−ペンタノールなどの低級アルコールや、例えば、オクチルアルコール、カプリルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、シンナミルアルコール等の高級アルコールが挙げられる。芳香族系溶剤はたとえばベンゼン、トルエン、キシレン、フェノール、安息香酸などが挙げられる。
【0067】
さらにケトン系溶剤としてはたとえばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられ、エステル系溶剤としては酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等が挙げられる。
【0068】
加えてその他の有機溶媒としてはテトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、シクロヘキサンなどが挙げられる。
【0069】
また本発明に用いられる抗生物質としてはペニシリン系、セファム系、マクロライド系、テトラサイクリン系、ホスホマイシン系、アミノグリコシド系、ニューキノロン系、クロラムフェニコール系、リンコマイシン系、アミノ配糖体系、ポリペプチド系などのものが挙げられる。
【0070】
ペニシリン系抗生物質としては、商品名としてサワシリン、パセトシン、ヤマシリン、バカシル、ビクシリン、ペントレックス、タカシリン、バラシリン、ユナシン、バイシリン、オーグメンチン、バストシリン、ペントレックス、クルペンなどが挙げられる。
【0071】
セファム系抗生物質としては、商品名としてケフレックス、ケフラール、セフゾン、トミロン、セフスパン、パンスポリン、バナン、セドラール、オラスポア、オラセフ、メイアクト、セフィル、セプチコール、ラリキシンなどが挙げられる。
【0072】
マクロライド系抗生物質としては、商品名としてエリスロシン、クラリス、クラリシッド、ルリッド、ジョサマイシン、ミオカマイシン、リカマイシンなどが挙げられる。テトラサイクリン系抗生物質としては、商品名としてミノマイシン、ビブラマイシン、ヒドラマイシン、レダマイシンなどが挙げられる。
【0073】
ホスホマイシン系抗生物質としては、商品名としてホスミシン、ユーコシンなどが挙げられる。
【0074】
アミノグリコシド系抗生物質としては、商品名としてカナマイシンなどが挙げられる。
【0075】
ニューキノロン系抗生物質としては、商品名としてクラビット、タリビッド、バクシダール、トスキサシン、オゼックス、シプロキサン、スパラ、バレオン、メガロシン、フルマーク、ロメバクトなどが挙げられる。
【0076】
さらにポリペプチド系抗生物質としては商品名としてバンコマイシンなどが挙げられる。
【0077】
イソブチレン系ブロック共重合体(A)と熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)の混合物からなるチューブに抗生物質溶液を膨潤させる際には、使用する抗生物質溶液中の抗生物質の有効な濃度は、(10mg〜5g)/100ccであり、(500〜1000mg)/100ccが好ましい濃度である。
【0078】
イソブチレン系ブロック共重合体(A)と熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)の混合物からなるチューブに抗生物質溶液に浸漬、膨潤させる際には、室温でも良いが、抗生物質の作用を減じない温度に抗生物質溶液を加熱して用いることができる。
【0079】
イソブチレン系ブロック共重合体(A)と熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)の混合物からなるチューブに抗生物質溶液に浸漬、膨潤させたのち、このチューブから抗生物質溶液の溶媒を除去するのは大気圧、室温中で行っても良いが、好適には減圧下において、抗生物質の作用を減じない温度に加熱して行っても良い。
【0080】
5.樹脂組成物の製造方法の例
本発明のチューブ用樹脂組成物の製造方法には、特に制限はなく、公知の方法を適用することができる。例えば、前記の各成分及び所望により添加剤成分を加熱混練機、例えば、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ブラベンダー、ニーダー、高剪断型ミキサー等を用いて溶融混練することで製造することができる。また各成分の混練順序は特に限定されず、使用する装置、作業性あるいは得られる熱可塑性樹脂組成物の物性に応じて決定することができる。
【0081】
6.実施形態としてのチューブの特徴
6−1.直管状のドレーンチューブの例
図1は、実施形態としての直管状のドレーンチューブの長手方向の断面図である。本発明の実施形態としてのドレーンチューブは、図1のように長手方向の断面において肉厚が均一で直管状のものであっても、上述した使用素材の配合比を変えることで、シリコーンゴムよりは硬くコシがあり、ポリウレタンよりは柔らかいので、患部からの血液、体液の排出に際して、留置位置から容易には移動せず、患者に苦痛を与えない医療用ドレーンチューブを得ることができる。
【0082】
6−2.螺旋状の突起を有するドレーンチューブの例
図2は、その他の実施形態としての、長手方向に螺旋状の突起を有するドレーンチューブの長手方向の断面図である。実施形態としてのドレーンチューブの形状は、図2のように長手方向の断面において内壁から内方向に向かう突起が少なくとも1つ以上形成されており、チューブの長手方向に対し螺旋状に形成されていることを特徴としている。別の表現では、ドレーンチューブは、当該ドレーンチューブの内壁に、当該ドレーンチューブの軸方向に向けて螺旋状の少なくとも1本以上の溝部を備えている。螺旋状とは、対象とする突起または溝部が、ドレーンチューブの軸方向に対してねじ状、またはスパイラル状、または軸方向に向けて30度〜70度の範囲で傾斜している状態等を含む概念である。
【0083】
このようなチューブによれば、内腔に設けられている突起によりキンク時の流路が確保でき、加えて突起を長手方向に平行に設けているチューブに比べ、キンクしにくく、更に柔軟性が高く、留置後に生体組織を損傷する危険性を著しく減少させることができる。更に、上記実施形態のチューブは、縫合などによって体壁に固定する際に、当該部分の内腔が潰れにくい。
【0084】
このようなドレーンチューブにあっては、突起は複数あることが好ましく、特に耐キンク性の点から4本以上が好ましく、更に柔軟性の点から16本以下であることが好ましい。
【0085】
実施形態のドレーンチューブにあっては、螺旋状の突起の螺旋の角度は、長手方向に対し、10°〜80°の範囲であることが好ましく、特に好ましくは30°〜70°である。これは、螺旋状の突起の角度が小さいと耐キンク性が損なわれるという問題を生じ、大きすぎると柔軟性が損なわれるという問題を生じることによるものである。
【0086】
6−3.先端部分に側孔を有するチューブの例
図3は、先端に側孔を有する直管状のドレーンチューブの長手方向の断面図である。図4は、先端に側孔を有し、長手方向に螺旋状の突起を有するドレーンチューブの長手方向の断面図である。実施形態のドレーンチューブは図3あるいは図4のように、体内に挿入される先端部分に側孔1、2を設けることができる。この側孔の形状に関しては丸、楕円、方形、多角形などどのような形状であっても良い。また、その大きさに関してはドレーンチューブの直径にもよるが、0.5〜3mm、より好ましくは0.5〜1.5mm程度である。
【0087】
この側孔を設けることにより、ドレーンチューブとして使用するとき、広範囲の創部から効率的に血液、体液などを排出することができる。
【0088】
7.チューブの肉厚の例
本発明のドレーンチューブにあっては、外周を形成するチューブの肉厚は、チューブの外径にもよるが、0.2mm〜3.0mm、特に好ましくは0.5mm〜2.0mmであり、チューブ外径の10〜20%が好適である。これは、薄肉の場合には耐キンク性が損なわれるという問題があり、一方厚肉の場合には柔軟性が損なわれるという問題を生じるからである。
【0089】
8.ドレーンチューブの製造方法の例
本発明のドレーンチューブは、押出成形によって製造することができる。図5は、直管状のドレーンチューブを作製するためのサーキュラーダイスを示す。直管状のドレーンチューブは、押出機の先端に接続されたサーキュラーダイスの外ダイ3と内ダイ4によって構成される円形のギャップ5より樹脂が押し出されることにより作製できる。チューブの直径と肉厚は内外ダイとギャップにより選択することができる。
【0090】
図6は、長手方向に螺旋状の突起を有するドレーンチューブを作製するためのサーキュラーダイスの模式図を示す。長手方向の断面において内壁から内方向に向かう突起が少なくとも1つ以上形成されており、チューブの長手方向に対し螺旋状に形成されているドレーンチューブは、押出機の先端に接続されたサーキュラーダイスの外ダイ6と、チューブ内腔の突起に相当する切れ込みを形成するように溝をつけた内ダイ7を押出成形中に回転させることにより外ダイと内ダイにより構成されるギャップ8から樹脂が押し出されることによって作製することができる。
【0091】
体内に挿入される先端部分に設けられる側孔は得られたチューブを適切な長さに切断した後、穴あけポンチなど適切な方法によって設けることができる。穴を設ける領域は体内に挿入される部分であり、チューブ先端から20cm以内であることが好ましい。より好ましくは5cm以内であり、その際にはポンプなどで血液や体液を吸引する能動式ドレーンチューブとして使用する際に効率的な吸引ができるようになる。
【0092】
なお、イソブチレン系ブロック共重合体と熱可塑性ポリウレタン系樹脂を主成分として、更に上述した官能基含有スチレン系重合体、滑剤、加工助剤等の第3成分の組成を調整することにより、透明性の良いチューブを得ることができる。
【実施例】
【0093】
以下、本発明の実施の形態について、実施例を用いて具体的に説明する。なお、本発明はその要旨を越えない限り、以下に説明する実施の形態に限定されるものではない。
【0094】
実施例1〜8として、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(SIBSTAR 102Tカネカ社製 以下「102T」と略す)(「イソブチレン系ブロック共重合体(A)」に対応)と、芳香環式ポリウレタン(ミラクトランE385PNAT、日本ミラクトラン社製 以下「E385」と略す)または脂環式ポリウレタン(テコフレックスEG100AまたはEG85A、ノヴェオン社製 以下それぞれ「EG100A」、「EG85A」と略す)(「熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)」に対応)とから構成されるペレットを重量比を変えてドライブレンドした。
【0095】
さらにこれらをホッパー付近温度130℃、中間部190℃、先端部180℃に温度調節した同方向二軸押出し機(L/D=25.5)を使用して押出し、ペレット化した。
【0096】
その後、得られたペレットを押出金型先端部を200℃に温度調節した押出チューブ成形機においてチューブ状に押出した。内外径はそれぞれ14mm、10mmとした。
【0097】
また、比較例1としては、内外径がそれぞれ14mm、10mmのチューブを生シリコーンの押出機より押し出してから、350℃で1分間加熱して架橋硬化させてシリコーンチューブを得た(以下「シリコーン」と略す)。
【0098】
さらに比較例2〜4として芳香環式ポリウレタン(E385)単体、または、脂環式イオシアネートポリウレタン(EG100AまたはEG85A)単体のそれぞれをチューブ状に押出、内外径はそれぞれ14mm、10mmのチューブとした。
【0099】
チューブの種類を表1、2、3に示す。
(表1:実施例1〜4、比較例1、2)
【0100】
【表1】


(表2:実施例5、6、比較例1、3)
【0101】
【表2】


(表3:実施例7、8、比較例1、4)
【0102】
【表3】


(抗生物質の効果)
上記実施例2,6,8で作製したチューブに、抗生物質を定着したものと、定着しないものを作製して抗生物質の効果を調べた。
【0103】
トルエン/メタノール=1/5(重量比)の溶液にペニシリン製剤としてベンジルペニシリンベンザチン(商品名バイリシン、万有製薬)を溶解し、濃度を1000mg/100ccに調整した。これに室温下で実施例2、6、8で作製したチューブを24時間浸漬し、しかる後、減圧下室温にて24時間乾燥させた。
【0104】
これらの各チューブを約2mmの長さ5本に切断し、試験管に投入し、菌液(大腸菌液、黄色ブドウ球菌液)0.5mlを加え、35℃で24時間保存した後、生残菌を洗い流して、混釈平板培養法により生菌数を測定し、チューブ10mmあたりの生菌数に換算した。その結果を表4、5に示す。

(実施例2、6、8のチューブ)
【0105】
【表4】


(実施例2、6、8のチューブ)
【0106】
【表5】


表4,5より、抗生物質を定着したチューブに大腸菌、黄色ブドウ球菌の増殖を抑制する効果があることが確認できた。

(圧縮応力)
作製した上記各チューブを2〜3cmに切断し、引張試験機(島津製作所製EZTest)の上側のチャックから先端を3mm出した状態にし、下側のチャックにはシリコーン製厚み1mmのシートをおいておき、チューブを5mm/minの速度で押付けた際の最大荷重を測定し圧縮応力の指標とした。また、この試験は室温で実施した。
【0107】
チューブの種類と試験結果をそれぞれ表6,7,8に示す。
【0108】
【表6】

【0109】
【表7】

【0110】
【表8】


表6、7、8の結果より、102T/EG100A、102T/E385、102T/EG85Aのそれぞれについて配合比を変えることで、室温で0.10〜0.33MPa間の圧縮応力を有するドレーンチューブを得ることが可能であることがわかった。

(ドレーンチューブ性能−実施例)
102T/EG100A=50/50の配合比でペレットでドライブレンドし、ホッパー付近温度130℃、中間部190℃、先端部180℃に温度調節した同方向二軸押出し機を使用してペレットを得た。
そのペレットを押出チューブ成形機に投入し、200℃に温度調節された外ダイ、チューブ内腔の突起に相当する切れ込みを形成するように溝をつけた内ダイの組み合わせにて、内ダイを回転させながら(図6参照)、内壁から内方向に向かう螺旋状の突起が8本あるドレーンチューブ(11)を得た。チューブ外径は14mm、突起が無い部分の肉厚は約2mm、突起がある部分の肉厚は約4mmであった。突起の角度は約30°であった。さらにこの得られたチューブを400mmにカットした。
しかる後、トルエン/メタノール=1/5(重量比)の溶液にペニシリン製剤としてベンジルペニシリンベンザチン(商品名バイリシン、万有製薬)を溶解し、濃度を1000mg/100ccに調整した。これに室温下で作製したチューブ(10)を24時間浸漬し、減圧下室温にて24時間乾燥させた。
(耐キンク性試験)
図7は、耐キンク性試験の様子を示す概要図である。図7に示すように、耐キンク性を調べるために、このチューブ(11)の両端を持って輪を作り、両端を引っ張っていってキンクが生じる時点での直径を調べた。その結果、キンクが生じるのは輪の直径が60mmになったときであった。
(90°折り曲げ時流量試験)
図8は、90°折り曲げ時流量試験の様子を示す概要図である。図8に示すように、上述の方法で得られたドレーンチューブ(11)を2箇所で90°曲げて上方より漏斗にて水を流したとき、その流量は520ml/minであった。
(ドレーンチューブ性能−比較例)
押出機によりシリコーン生ゴムで直管状チューブを押し出し、350℃で1分間加熱炉中で加熱加硫させ直管状のシリコーンゴムチューブ(51)を得た。チューブ外径は14mm、肉厚は約2mmであった。さらにこの得られたチューブを400mmでカットした。
(耐キンク性試験)
耐キンク性を調べるために、このチューブ(51)の両端を持って輪を作り、両端を引っ張っていってキンクが生じる時点での直径を調べた。その結果、キンクが生じるのは輪の直径が100mmになったときであった。
(90°折り曲げ時流量試験)
上述の方法で得られたドレーンチューブ(51)を2箇所で90°曲げて上方より漏斗にて水を流したとき、その流量は310ml/minであった。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】図1は、実施形態としての直管状のドレーンチューブの長手方向の断面図である。
【図2】図2は、その他の実施形態としての、長手方向に螺旋状の突起を有するドレーンチューブの長手方向の断面図である。
【図3】図3は、先端に側孔を有する直管状のドレーンチューブの長手方向の断面図である。
【図4】図4は、先端に側孔を有し、長手方向に螺旋状の突起を有するドレーンチューブの長手方向の断面図である。
【図5】図5は、直管状のドレーンチューブを作製するためのサーキュラーダイスの模式図を示す。
【図6】図6は、長手方向に螺旋状の突起を有するドレーンチューブを作製するためのサーキュラーダイスの模式図を示す。
【図7】図7は、耐キンク性試験の様子を示す概要図である。
【図8】図8は、90°折り曲げ時流量試験の様子を示す概要図である。
【符号の説明】
【0112】
1 側孔
2 側孔
3 外ダイ
4 内ダイ
5 ギャップ
6 外ダイ
7 内ダイ
8 ギャップ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソブチレンを主成分とする重合体ブロック(a)と、イソブチレンとは異種の単量体成分を主成分とする重合体ブロック(b)とから構成されるイソブチレン系ブロック共重合体(A)、及び、
熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)の混合物からなり、
抗生物質を内外表面に定着させたことを特徴とする医療用ドレーンチューブ。
【請求項2】
重合体ブロック(b)は、芳香族ビニル系単量体あり、イソブチレン系ブロック共重合体(A)に対する重量比が10〜40重量%であることを特徴とする請求項1記載の医療用ドレーンチューブ。
【請求項3】
イソブチレン系ブロック共重合体(A)と熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)の割合が、重量比で(A)/(B)=1/99〜50/50であることを特徴とする請求項1〜2記載の医療用ドレーンチューブ。
【請求項4】
イソブチレン系ブロック共重合体(A)の分子量が、50000〜200000であり、重合体ブロック(b)は、スチレンであり、イソブチレン系ブロック共重合体(A)の重量の10〜40重量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の医療用ドレーンチューブ。
【請求項5】
熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)にエーテル結合があることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の医療用ドレーンチューブ。
【請求項6】
イソブチレン系ブロック共重合体(A)と熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)の配合比を(A)/(B)=1/99〜50/50とし、かつ室温での圧縮応力が0.15〜0.4MPaであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の医療用ドレーンチューブ。
【請求項7】
前記抗生物質が、ペニシリン系、セファム系、マクロライド系、テトラサイクリン系、ホスホマイシン系、アミノグリコシド系、ニューキノロン系、クロラムフェニコール系、リンコマイシン系、アミノ配糖体系、またはポリペプチド系抗生物質から選ばれる請求項1〜6の医療用ドレーンチューブ
【請求項8】
(i)イソブチレンを主成分とする重合体ブロック(a)と、イソブチレンとは異種の単量体成分を主成分とする重合体ブロック(b)とから構成されるイソブチレン系ブロック共重合体(A)、及び、熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)の混合物を押出成形によりチューブ状に押出し、
(ii)抗生物質を溶媒により溶解させた溶液にチューブを浸漬ならびに膨潤させ、しかる後に溶媒を気散させ、前記抗生物質を内外表面に定着させる、
医療用ドレーンチューブの製造方法。
【請求項9】
イソブチレンを主成分とする重合体ブロック(a)と、イソブチレンとは異種の単量体成分を主成分とする重合体ブロック(b)とから構成されるイソブチレン系ブロック共重合体(A)、及び、
熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)の混合物からなり、抗生物質が内外表面に定着され、直管状であることを特徴とする医療用ドレーンチューブ。
【請求項10】
イソブチレンを主成分とする重合体ブロック(a)と、イソブチレンとは異種の単量体成分を主成分とする重合体ブロック(b)とから構成されるイソブチレン系ブロック共重合体(A)、及び、
熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)の混合物からなるチューブであって、抗生物質が当該チューブ内外表面に定着され、当該チューブ内壁から内方向に向かう突起が少なくとも1つ以上形成されており、当該突起はチューブの長手方向に対し螺旋状に形成されていることを特徴とする医療用ドレーンチューブ。
【請求項11】
イソブチレンを主成分とする重合体ブロック(a)と、イソブチレンとは異種の単量体成分を主成分とする重合体ブロック(b)とから構成されるイソブチレン系ブロック共重合体(A)、及び、
熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)の混合物からなるチューブであって、抗生物質が当該チューブ内外表面に定着され、体内に挿入されるチューブ先端部分に側孔を有することを特徴とする医療用ドレーンチューブ。
【請求項12】
イソブチレンを主成分とする重合体ブロック(a)と、イソブチレンとは異種の単量体成分を主成分とする重合体ブロック(b)とから構成されるイソブチレン系ブロック共重合体(A)、及び、
熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)の混合物からなる直管状のチューブであって、抗生物質が当該チューブ内外表面に定着され、体内に挿入される当該チューブ先端部分に側孔を有することを特徴とする医療用ドレーンチューブ。
【請求項13】
イソブチレンを主成分とする重合体ブロック(a)と、イソブチレンとは異種の単量体成分を主成分とする重合体ブロック(b)とから構成されるイソブチレン系ブロック共重合体(A)、及び、
熱可塑性ポリウレタン系樹脂(B)の混合物からなるチューブであって、抗生物質が当該チューブ内外表面に定着され、当該チューブ内壁から内方向に向かう突起が少なくとも1つ以上形成されており、当該突起は、チューブの長手方向に対し螺旋状に形成されており、体内に挿入される前記チューブ先端部分に側孔を有することを特徴とする医療用ドレーンチューブ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−23070(P2008−23070A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−198925(P2006−198925)
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】