説明

医療用ドレーンチューブ

【課題】破断強度の大きい医療用ドレーンチューブを提供する。
【解決手段】集液部となる体内留置部を備えた第1チューブ4と、第1チューブ4の先端から所定の距離に設けられた少なくとも一つの膨出部8と、膨出部8の第1チューブ4とは反対側より延出する第2チューブ6と、を備えた医療用ドレーンチューブ1であって、第1チューブ4の断面積に比べて、第2チューブ6の断面積の方が大きい、また、第1チューブ4は、ストレートチューブであり、さらに、第2チューブ6は、膨出部8から基端側へ拡径するテーパー形状を含むことを特徴とする医療用ドレーンチューブである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用ドレーンチューブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療用ドレーンチューブは、体内に留置され、外科手術後の滲出液や、各種臓器から分泌される分泌液を体外へ排出するために用いられる。医療用ドレーンチューブの大きさは、留置される対象部位の大きさや、排出する液の量等によって、様々な内外径、全長、仕様のものがあるが、対象となる留置部位が狭い管の場合は、必然的に外径の細い医療用ドレーンチューブが求められることとなる。例えば、対象となる留置部位が膵管である場合、症例によっては内径が2mm程度となることがあり、その際には1.3mm程度の外径の医療用ドレーンチューブが求められる。また、ドレナージ効率を高めるために、その内径はできるだけ大きく取られることが多い。
【0003】
医療用ドレーンチューブは、留置部位にチューブの一端を留置した後、他端を体外へ引き出すことになるが、この際、前述のような膵管カテーテルでは断面積が小さいため、体組織との摩擦によって、チューブが破断したりする恐れがあった。また、チューブ留置期間が終了した後、チューブを抜去する際にも同様にチューブが破断する恐れがあった。
上記の問題を改善するために、複数の樹脂を用いて多層化したチューブとし、少なくとも一つの層については、高強度な材質を選択し、さらに層間に補強剤を埋設して、破断強度やチューブの操作性を向上させているものもある(例えば特許文献1)。
しかし、上記によって、破断強度は向上し、チューブを体外へ誘導する際のチューブ破断は防止されるものの、医療用ドレーンチューブの成形工程が煩雑になり、生産性が損なわれるという問題があった。
【特許文献1】特開平2002−045428
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、多層化することなく、破断強度の大きい医療用ドレーンチューブを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による医療用ドレーンチューブは、体内留置部となる第1チューブと、該第1チューブの先端から所定の距離に設けられた少なくとも一つの膨出部と、前記膨出部の前記第1チューブとは反対側より延出する第2チューブと、を備えた医療用ドレーンチューブであって、前記第1チューブの外径に比べて、前記第2チューブの外径の方が大きいことを特徴とする。
【0006】
本発明に係る医療用ドレーンチューブは、体内留置部となる第1チューブの外径に比較して体外留置部となる第2チューブの外径が大きい。このため、体内留置部となる第1チューブの機能を良好に維持しつつ、第2チューブの破断強度を高めることができる。第2チューブは、チューブ全体を引っ張ったときに力が掛りやすい部分であるところ、本発明によれば、この部分の破断強度を向上できるので、高強度の医療用ドレーンチューブを実現できる。また、本発明の医療用ドレーンチューブは、多層化されたチューブを使う必要もないので、生産性の点でもすぐれる。
【0007】
本発明において、第2チューブの肉厚が、第1チューブの肉厚に比して、同一または厚くすることができる。こうすることにより、チューブ全体を引っ張ったときに力が掛りやすい第2チューブをより高強度にすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、膨出部よりも先端側にある第1チューブの外径よりも、膨出部よりも基端側にある第2チューブの外径を大きくしているため、破断しにくい高強度の医療用ドレーンチューブが実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の医療用ドレーンチューブの一実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、共通する構成要素には同一符号を付し、以下の説明において詳細な説明を適宜省略する。
【0010】
本実施形態に係る医療用ドレーンチューブ(1)は、図1ないし図3に示すように、体内留置部を備えた第1チューブ(体内留置部)(4)と、第1チューブ(4)の先端から所定の距離に設けられた少なくとも一つの膨出部(8)と、膨出部(8)の第1チューブ(4)とは反対側より延出する第2チューブ(6)と、を備える。
チューブを引っ張ったとき、膨出部(8)と第2チューブ(6)との接合部が破断しやすいのであるが、本実施形態では、以下のようにこの接合部の強度を向上させている。すなわち、第1チューブの外径(L)に比べて、第2チューブ外径(M)の方が大きい構成となっている(外径とはチューブの直径をいう)。また、第2チューブの肉厚(U)が第1チューブの肉厚(T)に比して同一または厚い構成となっている。以上の構成により、第1チューブの壁部分の総断面積よりも、第2チューブの壁部分の総断面積が大きくなっており、この結果、チューブを引っ張ったとき、上記接合部にかかる単位面積あたりの負荷を小さくすることができ、チューブの破断が効果的に抑制される。
【0011】
医療用ドレーンチューブ(1)はチューブ(2)と誘導針(3)からなる。
チューブ(2)は第1チューブ(4)、テーパー部(5)、第2チューブ(6)からなり、熱可塑性樹脂、好ましくはウレタン、ポリ塩化ビニルの同一材料から形成された管である。第1チューブ(4)は全長5〜50mm、外径0.5〜2.0mm、内径0.3〜1.5mmであり、留置する対象部位の大きさから好適な寸法が選択される。
【0012】
第1チューブ(4)には複数の側孔(7)が設けられている。その外径は0.3〜1.5mmである。また、肉厚は0.1〜0.4mmである。第1チューブ(4)とテーパー部(5)の間には熱変形等の方法によって膨出部(8)が設置され、その外径は1.0〜3.0mmである。
体内留置部である第1チューブは、ストレートチューブとなっている。本部分がストレート形状であることにより、ドレナージに必要な内腔を確保しつつ、膨出部(8)近傍までを容易に体内留置部位に誘導することができる。
【0013】
第2チューブ(6)は全長200〜800mm、外径1.0〜6.0mm、肉厚は0.3〜0.7である。テーパー部(5)は全長30〜200mmであり、第1チューブ(4)から第2チューブ(6)に向かって拡径するテーパー状に形成されている。誘導針(3)は外径1.0〜6.0mm、全長50〜300mmであり、金属製、好ましくはアルミ製である。
【0014】
膨出部(8)は、第1チューブと第2チューブとの境界に位置する。膨出部(8)は、膨出部(8)周辺の第1チューブ(4)、第2チューブ(6)の外径よりも拡径していることによって、滑り止め、あるいは、抜け止めの機能を有する。すなわち、第1チューブ(4)と膨出部(8)を体内に留置し、膨出部(8)の第2チューブ(6)接合部付近で縫合したさい、外力が掛ってチューブに引き抜く力が働いたとき、滑ったり、抜けていくのを防止することができる。
その形状としては種々のものを採用することができるが、チューブよりも拡径した形状であればよく、図示した球状もののほか、そろばんの数珠のような円錐状であってもよい。膨出部(8)の最大外径は、第1チューブの外径よりも大きい形状となっている。
【0015】
本実施形態の医療用ドレーンチューブは、種々の方法により形成することができる。例えば、押出成型法を用い、第1チューブ(4)の部分の引張速度よりも第2チューブの(6)の引張速度を遅くすることにより、外径の大きい、または、肉厚の厚いチューブとすることが出来る。
また、膨出部(8)は、以下のようにして形成することができる。すなわち、チューブを回転させながら節部作製個所に200℃前後の熱風を当てて熱を加え、チューブをある程度膨張させた後、熱風から離し、チューブが冷える前に、加熱部両端から加熱部に向かって押し込み、形状を球状に整えることにより得ることが出来る。
【0016】
本品を体内へ留置する時、留置部位の切開部位から、第1チューブ(4)と膨出部(8)を留置部位へ挿入した後、膨出部(8)と第2チューブ(6)の境界面付近を留置部位に吸収性縫合糸等で固定する。その後、誘導針(3)にて第2チューブ(6)を体外へ誘導する。このとき、第2チューブ(6)には体組織との摩擦がかかり、適度な強度が要求されることとなるが、テーパー部(5)、第2チューブ(6)は、第1チューブ(4)と比較して、壁部の総断面積が大きく高強度である。このため、チューブの破損が効果的に抑制される。
【0017】
医療用ドレーンチューブ(1)は、膵頭十二指腸切除術後に膵臓と空腸を縫合する際に、縫合部に留置する膵管カテーテルとして用いることが好ましい。こうすることによって、留置する部位が細い管となっている膵管カテーテルに用いることにより、留置後のドレーンチューブ抜去する際にも、引っ張る部分のチューブ壁総断面積が大きいので、チューブの破断が効果的に抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施例となる医療用ドレーンチューブである。
【図2】膨出部周りの断面を示す図である。
【図3】図3(a)は第1チューブのA−A'断面図であり、図3(b)は第2チューブB−B'断面図である。
【符号の説明】
【0019】
1.医療用ドレーンチューブ
2.チューブ
3.誘導針
4.第1チューブ(体内留置部)
5.テーパー部
6.第2チューブ
7.側孔
8.膨出部
L.第1チューブの外径
M.第2チューブの外径
T.第1チューブの肉厚
U.第2チューブの肉厚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内留置部となる第1チューブと、
該第1チューブの先端から所定の距離に設けられた少なくとも一つの膨出部と、
前記膨出部の前記第1チューブとは反対側より延出する第2チューブと、を備えた医療用ドレーンチューブであって、
前記第2チューブの外径が、前記第1チューブの外径よりも大きいことを特徴とする医療用ドレーンチューブ。
【請求項2】
前記第2チューブの肉厚が、前記第1チューブの肉厚に比して、同一または厚く形成されている請求項1に記載の医療用ドレーンチューブ。
【請求項3】
前記第1チューブは、ストレートチューブである請求項1または2に記載の医療用ドレーンチューブ。
【請求項4】
前記第2チューブは、前記膨出部から基端側へ拡径するテーパー部を含む請求項1ないし3のいずれかに記載の医療用ドレーンチューブ。
【請求項5】
前記第1チューブに、集液部となる側孔が設けられている請求項1ないし4のいずれかに記載の医療用ドレーンチューブ。
【請求項6】
前記医療用ドレーンチューブは、膵頭十二指腸切除術後に膵臓と空腸を縫合する際に、縫合部に留置する膵管カテーテルである請求項1ないし5のいずれかに記載の医療用ドレーンチューブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−167540(P2007−167540A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−372307(P2005−372307)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】