説明

医療用器具の生体挿入用補助具

【課題】 咽頭部に留置した筒状部材を用いて医療用器具を消化器官へ案内する場合に、筒状部材が潰れるのを抑制して医療用器具の挿入空間を広く確保し、しかも、筒状部材を咽頭部に挿入する際の作業性を良好にするとともに、生体へ与える侵襲を低減する。
【解決手段】 樹脂材料により内孔2bを有する筒状部材2を成形する。薄板材を筒状部材2の周方向に沿うように螺旋状に成形して補強部材3を構成する。補強部材3を筒状部材2の周壁2aに埋め込む。筒状部材2及び補強部材3を咽頭部の形状に対応する湾曲形状とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば内視鏡等の医療用器具を口腔から咽頭部を介して消化器官に挿入する際に用いる医療用器具の生体挿入用補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、胃や食道等の消化器官を診断する際や治療する際に、内視鏡等の医療用器具を患者の口腔から消化器官に挿入する手技が行われている。この医療用器具を消化器官に挿入する操作は、口腔から食道まで延びる咽頭部が湾曲しているため難しい。しかも、医療用器具を何度も出し入れする手技の場合には医療用器具が咽頭部を通過する回数が多くなって患者への負担も大きいものとなる。これらのことに対し、例えば特許文献1に開示されているように、筒状をなす補助具を口腔から咽頭部を介して食道の入口まで挿入し留置しておき、この補助具の内孔を利用して医療用器具を消化器官に出し入れすることにより、医療用器具の挿入操作を容易にするとともに、患者への負担を軽減することが行われている。
【0003】
上記特許文献1の補助具は、樹脂材からなる筒状部材に、細い弾性線材を螺旋状に成形してなる補強部材を埋め込むことで構成されており、これら補強部材及び筒状部材の中心線は直線状に延びている。この補助具を咽頭部に挿入することにより、咽頭部の内壁を補強部材の線材で支持して該咽頭部が狭くならないようにすることが可能になる。さらに、上記補助具を咽頭部に挿入すると、該咽頭部が湾曲していることから筒状部材が咽頭部の形状に対応するように弾性変形して全体的に湾曲する。この湾曲部分においては筒状部材が潰れ変形しようとするが、この変形は補強部材により抑制される。つまり、特許文献1のように補強部材を筒状部材に設けることで、医療用器具の挿入空間を筒状部材内に確保することが可能になる。
【特許文献1】特開平7−51221号公報(第3頁、図1、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、消化器管を診断する際や治療する際に、医療用器具を口腔から消化器官に挿入することにより、開腹箇所や開胸箇所をできるだけ少なくかつ小さくし、または無くして患者に与える侵襲を低くしたいという要求が高まっている。この場合には、例えば患部の切除具と術者が術野を見るための内視鏡との複数の医療用器具を口腔から同時に挿入することや、患部の切除機能及び内視鏡機能の両方を持った比較的大径の医療用器具を挿入することがあり、医療用器具の挿入空間を広く確保する必要がある。
【0005】
しかしながら、特許文献1の補助具では、筒状部材に補強部材を埋め込んでいる分、筒状部材の周壁が厚くなっているので、挿入する医療用器具の数や種類によっては挿入空間が十分ではなく該医療用器具の挿入が困難になる場合がある。
【0006】
そこで、補強部材を構成する線材の線径を細くして筒状部材の周壁を薄くすることが考えられる。ところが、筒状部材を咽頭部に挿入する際には、患者は筒状部材を異物として捉え、反射的に咽頭部の筋肉を動かして内径を狭め、筒状部材を咽頭部から排除しようとする。このときの力はかなり大きいものであるため、補強部材の線材の線径はあまり細くすることができない。
【0007】
また、特許文献1では、筒状部材が直線状に形成されているので、咽頭部に挿入する操作によって筒状部材を咽頭部の内壁に接触させて該咽頭部の形状に沿うように湾曲させていかなければならない。この筒状部材を湾曲させる際には湾曲部分が潰れ変形しようとするが、上述のような補強部材で潰れ変形を抑制しているので、筒状部材を湾曲させるのに要する力が大きくなる。その結果、筒状部材を咽頭部へ挿入する際に大きな力が必要になって、術者による挿入作業性が悪くなるとともに、患者へ与える侵襲が大きくなってしまう虞れがある。
【0008】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、口腔から咽頭部に挿入して留置された筒状部材を用いて医療用器具を消化器官へ案内する場合に、筒状部材が潰れるように変形するのを抑制して医療用器具の挿入空間を広く確保できるようにし、しかも、筒状部材を咽頭部に挿入する際の作業性を良好にするとともに生体へ与える侵襲を低くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明では、補強部材を薄板材で構成し、この補強部材及び筒状部材を咽頭部の湾曲形状に対応するように湾曲させた。
【0010】
具体的には、請求項1の発明では、医療用器具を挿通可能な内孔が両端に亘って形成された筒状部材と、薄板材を上記内孔の周方向に沿って延びるように成形してなる補強部材とを備え、上記筒状部材及び補強部材は、生体の咽頭部の形状に対応して湾曲形成され、口腔から咽頭部に挿入されて留置された状態で医療用器具を上記内孔により消化器官へ案内するように構成されている構成とする。
【0011】
この構成によれば、補強部材及び筒状部材が咽頭部の湾曲形状に対応して予め湾曲しているので、補強部材及び筒状部材を咽頭部に挿入する際には殆ど変形させることなくスムーズに挿入することが可能になる。このため、筒状部材を咽頭部に挿入するのに要する力が小さくて済む。
【0012】
また、補強部材が内孔の周方向に沿って延びる薄板材で構成されているので、補強部材における周壁厚さ方向の寸法、即ち薄板材の板厚寸法を、従来の補強部材を線材で構成した場合の線径よりも短くして筒状部材の周壁の薄肉化を図る場合に、その薄板材の幅方向の寸法を従来の線材の線径よりも長く確保して補強部材の強度を十分に得ることが可能になる。これにより、筒状部材の周壁の厚みを薄くしながら、該筒状部材の潰れ変形を抑制することが可能になる。
【0013】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、筒状部材の内孔に挿入される内筒部材を備えている構成とする。
【0014】
この構成によれば、内筒部材を筒状部材の内孔から抜いた状態にして該内筒部材を口腔から咽頭部へ挿入して留置した後、筒状部材の内孔に内筒部材の口腔側を挿入し、補強部材及び筒状部材を内筒部材に沿わせて咽頭部へ挿入していくことが可能になる。
【0015】
すなわち、筒状部材よりも小径な内筒部材を咽頭部に最初に挿入することで、まず、該咽頭部の内径を内筒部材で拡大させ、その後、大径の筒状部材で咽頭部の内径をさらに拡大させることが可能になる。このように咽頭部の内径を徐々に拡大させていくことで、大径の筒状部材を咽頭部へ挿入して医療用器具の挿入空間を広く確保する場合に、生体に与える侵襲が低減される。さらに、内筒部材は筒状部材よりも小径であることから咽頭部に挿入し易く、この内筒部材により補強部材及び筒状部材を咽頭部へ容易に挿入することが可能になる。
【0016】
請求項3の発明では、請求項1または2の発明において、補強部材は内孔の中心線方向に連続して延びる螺旋状をなしている構成とする。
【0017】
この構成によれば、筒状部材が中心線方向に連続して補強される。
【0018】
請求項4の発明では、請求項1から3のいずれか1つの発明において、筒状部材の消化器官側の端部は、補強部材の消化器官側の端部よりも消化器官側へ延びている構成とする。
【0019】
この構成によれば、筒状部材の端部が補強部材の端部よりも消化器官側に位置することになる。これにより、補強部材及び筒状部材を咽頭部へ挿入する際、補強部材が生体組織に接触するのを回避することが可能になる。
【0020】
請求項5の発明では、請求項4の発明において、筒状部材の消化器官側の端部は、内孔の中心線に対し傾斜している構成とする。
【0021】
この構成によれば、筒状部材の消化器官側の端部が先細形状になる。このため、筒状部材を咽頭部へ挿入する作業がより一層容易になる。
【0022】
請求項6の発明では、請求項1から5のいずれか1つの発明において、筒状部材は、補強部材が埋め込まれた状態で成形されている構成とする。
【0023】
この発明によれば、筒状部材の成形時に該筒状部材と補強部材とを一体化することが可能になる。
【発明の効果】
【0024】
請求項1の発明によれば、内孔の周方向に沿って延びる薄板材で補強部材を構成したので、筒状部材の潰れ変形を抑制しながら該筒状部材の周壁の厚みを薄くできて、医療用器具の挿入空間を広く確保できる。また、補強部材及び筒状部材を咽頭部の形状に対応して予め湾曲させているので、筒状部材を咽頭部に挿入する際の作業性を良好にすることができるとともに、生体に低侵襲な診断や治療を行うことができる。
【0025】
請求項2の発明によれば、補助具が内孔に挿入可能な内筒部材を備えているので、生体への侵襲を抑えながら医療用器具の挿入空間を広く確保することができるとともに、筒状部材を咽頭部に挿入する際の作業性をより一層良好にすることができる。
【0026】
請求項3の発明によれば、補強部材を螺旋状に形成にしたので、筒状部材を中心線方向に連続して補強することができる。
【0027】
請求項4の発明によれば、筒状部材の消化器官側の端部が、補強部材よりも消化器官側に位置しているので、補強部材及び筒状部材を咽頭部に差し入れる際に生体に与える侵襲を低くすることができる。
【0028】
請求項5の発明によれば、筒状部材の消化器官側の端部を先細形状にすることができて、筒状部材を咽頭部に挿入する際の作業性をより一層良好にすることができる。
【0029】
請求項6の発明によれば、筒状部材の成形時に該筒状部材と補強部材とを一体化することができて、製造工程を簡素化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0031】
図1は、本発明の実施形態に係る医療用器具の生体挿入用補助具1の断面図である。この補助具1は、人間の胃や食道、小腸等の消化器官を検査したり診断する際や治療する際に、医療用器具を口腔から消化器官に挿入するときに咽頭部に挿入した状態で留置して使用されるものである。
【0032】
上記補助具1は、樹脂製の筒状部材2と、該筒状部材2の周壁2aに埋め込まれた金属製の補強部材3と、上記筒状部材2に挿入される第1内筒部材4及び第2内筒部材5とを備えている。筒状部材2は、例えば溶融状態のポリ塩化ビニル等を成形型(図示せず)内に流入させてから円筒状に固化させることにより得られたものであり、図2、図3及び図4に示すように、人間が仰向けに寝た状態の咽頭部100の形状に対応して湾曲形成されている。筒状部材2の口腔側端部から消化器官側端部までの長さは、例えば、口腔側が前歯101から口腔102の外側へ突出し、消化器官側が咽頭部100を超えて食道103の入口近傍に達する長さとされている。具体的には、筒状部材2の中心線に沿った長さが、100mm以上300mm以下に設定されている。
【0033】
筒状部材2の内孔2bは、図3に示すように、該筒状部材2の両端部に亘って連続しており、両端部でそれぞれ開口している。この内孔2bに上記医療用器具が挿入されるようになっている。また、筒状部材2の口腔側端部は、該筒状部材2の中心線に略直交するように形成される一方、消化器官側端部は、筒状部材2の中心線が延びる方向に対し40゜以上70゜以下の傾斜角度を持つように形成されている。従って、筒状部材2の消化器官側端部は尖った形状とされている。
【0034】
上記筒状部材2の周壁2aの厚みは、例えば2mm以上4mm以下に設定されている。この周壁2aの厚みは、補強部材3を構成する薄板材(後述する)の厚みや、該薄板材を覆う部分の樹脂材料の肉厚等により変更される。また、筒状部材2の内径は、20mm以上30mm以下に設定されている。この筒状部材2の内径及び中心線方向の長さは、本補助具1を用いて消化器官に挿入する医療用器具の種類及び大きさや、患者の体格、年齢、性別等により変更することが可能である。
【0035】
また、筒状部材2の外面及び内面は、滑らかな面で構成されている。これら外面及び内面には、摩擦抵抗を減少させるコーティングが施されている。これにより、補助具1を咽頭部100に挿入する際に筒状部材2の外面が生体組織に引っ掛かるようになるのが防止されるとともに、内孔2bに医療用器具を挿入する際にも該医療用器具が筒状部材2の内面に引っ掛かるようになるのが防止される。尚、上記筒状部材2の外面及び内面には、キシロカインゼリー等の摩擦力低減剤を塗ることでコーティングを施すことができる。
【0036】
図1に示すように、上記筒状部材2の口腔側の内面には凹部2cが設けられ、一方、第1案内部材4の口腔側の外面には上記凹部2cに嵌入して係合する凸部4bが設けられている。上記凸部4bは、上記凹部2cに係合させたときに、第1案内部材4の消化器官側端部と筒状部材2の消化器官側端部とが略一致するように位置付けられている。
【0037】
上記補強部材3は、図5に示すように、長尺状の薄板材で構成されている。補強部材3は、上記筒状部材2の内孔2bに沿って延びる円形状部3aを筒状部材2の中心線方向に螺旋状に連続させてなるものである。補強部材3の中心線に沿った長さは、上記筒状部材2の中心線に沿った長さよりも短く設定されている。この補強部材3は筒状部材2の中心線方向中間部に配置されている。従って、図2及び図3に示すように、筒状部材2の口腔側端部は補強部材3の口腔側端部よりも口腔側へ延びており、筒状部材2の消化器官側端部は補強部材3の消化器官側端部よりも消化器官側へ延びている。また、このように補強部材3が螺旋状に形成されているので、筒状部材2の中心線方向中間部が連続して補強されている。
【0038】
上記薄板材は、弾性を有しかつ筒状部材2が潰れ変形するのを抑制可能な強度を有するものであれば特に限定されず、例えばステンレス鋼等の金属材料や、ポリアミドやフッ素系樹脂等の硬質樹脂材料等で構成することができる。図5に示すように、薄板材の幅寸法Wは、1.50mm以上5.50mm以下に設定され、厚さ寸法Tは0.03mm以上1.00mm以下に設定されている。この実施形態では、薄板材をSUS304で構成し、幅寸法Wは約4.00mmとし、厚さ寸法Tは約0.20mmとしている。薄板材を薄くすることで、筒状部材2の周壁2aの厚みを薄くすることが可能になるが、潰れ方向への力に対して弱くなるので、上記の範囲のうち、0.05mm以上0.50mm以下に設定するのが好ましい。また、薄板材の幅Wを広くすると、潰れ方向への力に対して強くすることができるものの、筒状部材2を湾曲させたときには薄板材が存在している部分は曲がらずに直線形状を維持して筒状部材2の湾曲形状が滑らかにならず、咽頭部100への挿入が難しくなる虞れがある。従って、薄板材の幅Wは、潰れ難さと咽頭部100への挿入作業性とを考慮して、上記範囲のうち、2.00mm以上5.00mm以下に設定するのが好ましい。
【0039】
また、補強部材3の隣接する円形状部3aの離間寸法Sは、約1.00mmとなるように設定されている。この円形状部3aの離間寸法Sは、補強部材3の製造時に生じる誤差や、成形型のキャビティ内で流れる溶融樹脂材料によって円形状部3aが位置ずれすること等によりばらつくため、実際の製品では0.50mm以上1.50mm以下の範囲となっている。円形状部3aの離間寸法Sが短いと、該円形状部3aが密に配置されることになって潰れ方向の力に対して強くなる反面、円形状部3a間の樹脂材料が少なくなって湾曲変形し難くなる。一方、円形状部3aの離間寸法Sが長いと、該円形状部3aが疎に配置されることになって潰れ方向の力に対して弱くなる。これらのことを考慮して、円形状部3aの離間寸法Sを上記範囲内に収めている。
【0040】
上記のように構成された補強部材3を筒状部材2と一体化する場合について説明する。まず、上記補強部材3を予め成形しておく。そして、筒状部材2を成形する成形型のキャビティに補強部材3を保持する。このとき、補強部材3を上記のように咽頭部100の形状に対応する湾曲形状にしておく。その後、キャビティに溶融状態の樹脂材料を流入させる。この溶融樹脂材料は、補強部材3の外面及び内面を覆うように流れるとともに、隣接する円形状部3aの間にも流れ込んで固化し、補強部材3がインサート成形される。これにより、補強部材3が筒状部材2の周壁に埋め込まれた状態となる。
【0041】
上記第1内筒部材4は、図1に示すように、上記内孔2bに挿入可能な円筒状に形成されている。また、上記第2内筒部材5は、図6にも示すように、第1内筒部材4に挿入可能な円筒状に形成されている。これら第1内筒部材4及び第2内筒部材5は、上記筒状部材2を構成する樹脂材料よりも硬い樹脂材料で成形されている。図6に示すように、第1内筒部材4及び第2内筒部材5は直線状に延びている。第1内筒部材4及び第2内筒部材5は、図1に示すように、内孔2bに挿入した状態で筒状部材2の湾曲形状に沿って湾曲する柔軟性を有している。第1内筒部材4の外径は、内孔2bよりも若干小さく設定されていて、第1内筒部材4が内孔2bに容易に挿入できるようになっている。また、第2内筒部材5の外径は、第1内筒部材4の内径よりも若干小さく設定されていて、第2内筒部材5が第1内筒部材4内に容易に挿入できるようになっている。第2内筒部材5の外径は、本補助具1の使用対象となる人間の咽頭部100の内径よりも若干大きめに設定しておく。
【0042】
上記第1内筒部材4及び第2内筒部材5の周壁4a、5aの肉厚は、上記筒状部材2の周壁2aの肉厚と略同じに設定されている。第1内筒部材4の中心線方向の長さは、上記筒状部材2の中心線方向の長さよりも長く設定されている。第2内筒部材5の中心線方向の長さは、上記第1内筒部材4の中心線方向の長さよりも長く設定されている。また、第1内筒部材4及び第2内筒部材5の口腔側端部と消化器官側端部とは、上記筒状部材2の口腔側端部と消化器官側端部とそれぞれ同じように形成されている。上記第1内筒部材4及び第2内筒部材5の外面と内面とには、上記筒状部材2と同様にコーティングを施してもよい。また、第1内筒部材4及び第2内筒部材5は、筒状部材2と同様に湾曲した形状で成形してもよい。
【0043】
図1に示すように、上記第1案内部材4の口腔側の内面には凹部4cが設けられ、一方、第2案内部材5の口腔側の外面には上記凹部4cに嵌入して係合する凸部5bが設けられている。上記凸部5bは、上記凹部4cに係合させたときに、第1案内部材4の消化器官側端部と第2案内部材5の消化器官側端部とが略一致するように位置付けられている。
【0044】
上記筒状部材2の凹部2cと第1案内部材4の凸部4bとを係合させるとともに、第1案内部材4の凹部4cと第2案内部材5の凸部5bとを係合させることで、これら筒状部材2、第1案内部材4及び第2案内部材5を一体化させておくことが可能になる。これにより、補助具1を移動する際に、筒状部材2から第1案内部材4及び第2案内部材5が抜け出て落ちるのを防止することが可能になる。
【0045】
尚、図示しないが、上記筒状部材2の内面に凸部を設け、第1案内部材4の外面に上記筒状部材2の凸部に係合する凹部を設けてもよい。また、第1案内部材4の内面に凸部を設け、第2案内部材5の外面に上記第1案内部材4の凸部に係合する凹部を設けてもよい。また、これら凸部や凹部の形状は図示した形状に限られるものではない。
【0046】
次に、上記補助具1を用いて、癌に冒された胃(図示せず)を全部摘出する胃の全摘手術を行う場合について説明する。この手術では、医療用器具として例えば特開平8−66406号公報等に開示されているような吻合装置20が用いられる。まず、図7〜図10に基づいて吻合装置20の構造を説明する。吻合装置20は、装置本体21と該装置本体21に着脱可能なヘッド22とを備えている。装置本体21は大略円筒状に形成され、その外径寸法は約25mmである。図8(a)に示すように、装置本体21の一端面外周には、金属製のステープラ23(図10にのみ示す)が打ち出される多数のスリット24が全周に亘って設けられている。装置本体21の一端面におけるスリット24よりも内周側には環状のカッター25(図8にのみ示す)が配設されている。このカッター25の刃先は、装置本体21の一端面と略同一面上に位置している。
【0047】
装置本体21の一端面におけるカッター25よりも内周側には、カッター25により切り取られた生体組織(後述する)を収容するための凹部26が形成されている。この凹部26の底面は、図7にも示すように、装置本体21の中心線に対し略直交して延びている。該底面の中心部には装置本体21の中心線方向に延びる孔部27が設けられ、該孔部27に係合棒28が挿入保持されている。この係合棒28は、例えばステンレス鋼等の金属材料を用いて装置本体21の中心線方向に真っ直ぐに延びるように形成されている。係合棒28の長手方向中間部は、該係合棒28の基端部及び先端部よりも細く形成されている。この係合棒28の先端部は鋭く尖っている。
【0048】
上記装置本体21の内部には、上記係合棒28を中心線方向に進退させるアクチュエータ(図示せず)が設けられている。このアクチュエータは、電力の供給により作動する周知の構造のものである。装置本体21の他端部にはコネクタ29が設けられている。このコネクタ29には、上記アクチュエータに電力を供給するためのコード30の一端部が接続されるようになっている。また、この吻合装置21は、アクチュエータに電力を供給するためのコントローラ(図示せず)を備えていて、該コントローラに上記コード30の他端部が接続されている。このコントローラによりアクチュエータに電力が供給されて該アクチュエータが係合棒28を後退させると、該係合棒28は装置本体21に引き込まれて収容された状態となる。この状態からアクチュエータを作動させて係合棒28を進出させると、該係合棒28は凹部26から突出した状態となる。
【0049】
装置本体21の内部には、スリット24に対応して多数のステープラ23が収容されるようになっている。各ステープラ23は略コ字状に形成されていて、その開放側がスリット24から外方へ向かうように配置されている。さらに、装置本体21の内部には、上記アクチュエータの作動によりステープラ23を打ち出す打ち出し機構(図示せず)が収容されている。この打ち出し機構も周知のものである。
【0050】
上記ヘッド22は、大略傘状に形成されている。このヘッド22は、装置本体21の一端面の形状に対応する円板部材32と、該円板部材32の中心部から中心線方向に突出する突出部33と、上記円板部材32の突出部33と反対側に膨出するように形成された膨出部材34とを備えている。
【0051】
円板部材32は例えばステンレス鋼等の金属材料を成形してなるものである。円板部材32には、図8(b)に示すように、装置本体21に向く面の外周に、上記スリット24に対応して窪み35が多数形成されている。この窪み35は、スリット24から打ち出されたステープラ23の開放側端部を圧迫して折り曲げるためのものである。また、上記装置本体21のカッター25の刃先は、円板部材32の窪み35よりも内側に当接するようになっている。
【0052】
上記突出部33は、円板部材32と同様な金属材料を円筒状に成形してなるものである。突出部33の円板部材32と反対側には係合孔36が形成されている。この係合孔36に上記係合棒28が挿入されて係合するようになっている。すなわち、突出部33には、挿入された係合棒28の長手方向中間部に係合して該係合棒28が係合孔36から抜け出るのを防止する係合機構(図示せず)が設けられている。また、上記膨出部材34は樹脂材料を成形してなるものであり、上記円板部材32に固定されている。
【0053】
次に、補助具1の筒状部材2を咽頭部100に挿入する要領について説明する。この筒状部材2は、患者を仰向けにして、第2内筒部材5及び第1内筒部材4を咽頭部100に挿入した後に挿入する。詳しくは、まず、患者の口を開けて、図示しないが、第2内筒部材5を該第2内筒部材5の消化器官側から口腔102内に差し入れ、そのまま咽頭部100へ押し込んで行く。このとき、第2内筒部材5の尖っている部分を患者の背面側に向けておく。この第2内筒部材5は、消化器官側の端部が食道103の入口近傍に位置するまで挿入する。第2内筒部材5を完全に挿入した状態では、該第2内筒部材5により咽頭部100が押し拡げられて内径が大きくなる。また、第2内筒部材5は第1内筒部材4や筒状部材2よりも長いが、これら部材4、5よりも小径であるため比較的容易に咽頭部100へ挿入可能である。
【0054】
第2内筒部材5を咽頭部100に挿入する際には、該第2内筒部材5の消化器官側が尖った形状とされているので、咽頭部100を塞ぐように位置している各組織を分けるようにしてスムーズに差し入れて行くことが可能になる。
【0055】
その後、第1内筒部材4を該第1内筒部材4の消化器官側から咽頭部100に挿入する。この場合、まず、第1内筒部材4内に第2内筒部材5の口腔側端部を挿入し、第1内筒部材4を第2内筒部材5に沿わせて消化器官側へ移動させていく。このとき、第1内筒部材4は第2内筒部材5で案内される。この第1内筒部材4は、消化器官側の端部が第2内筒部材5の消化器官側の端部近傍に位置するまで挿入する。
【0056】
この第1案内部材4を咽頭部100に挿入していくと、第1案内部材4に凹部4cを設け、第2案内部材5に凸部5bを設けているので、凹部4cと凸部5bとが係合して、第1案内部材4が第2案内部材5に対し移動しなくなる。このとき、第1案内部材4の消化器官側端部が第2案内部材5の消化器官側端部と略同じ位置になる。これにより、術者は、凹部4cと凸部5bとを係合させるだけで、第2案内部材5を基準にして第2案内部材4の挿入位置が正確であるか否かを把握することができる。
【0057】
また、上記のようにして第1内筒部材4を完全に挿入した状態で、第2内筒部材5が第1内筒部材4により覆われるとともに、第1内筒部材4により咽頭部100が押し拡げられて内径がさらに大きくなる。
【0058】
このとき、上記第2内筒部材5が第1内筒部材4よりも長いので、第2内筒部材5の口腔側端部を第1内筒部材4の口腔側端部から突出させておくことが可能である。このことにより、第2内筒部材5を指で容易に掴んで第1案内部材4の口腔側端部から容易に引き抜くことができる。また、第1内筒部材4の内面や第2内筒部材5の外面に上記コーティングを施しておくことで、第2内筒部材5を容易に引き抜くことが可能である。
【0059】
上記第1内筒部材4及び第2内筒部材5は筒状部材2よりも小径とされているので、第1内筒部材4及び第2内筒部材5を咽頭部100に挿入する作業は、筒状部材2を咽頭部100に挿入する場合に比べて簡単である。また、第1内筒部材4及び第2内筒部材5は、樹脂材料のみからなるものなので、口腔102や咽頭部100の組織に侵襲を与えることはない。
【0060】
上記第2案内部材5を第1案内部材4から抜いた後、図示しないが、筒状部材2を該筒状部材2の消化器官側から咽頭部100に挿入する。この場合、まず、筒状部材2の内孔2bに第1内筒部材4の口腔側端部を挿入し、筒状部材2を第1内筒部材4に沿わせて消化器官側へ移動させていく。このとき、筒状部材2は第1内筒部材4で案内される。筒状部材2は、図4に示すように、消化器官側の端部が食道103の入口近傍に位置するまで挿入する。
【0061】
この筒状部材2を咽頭部100に挿入する際には、筒状部材2に凹部2cを設け、第1案内部材4に凸部4bを設けているので、凹部2cと凸部4bとを係合させることで、筒状部材2が第1案内部材4に対し移動しなくなる。このとき、筒状部材2の消化器官側端部が第1案内部材4の消化器官側端部と略同じ位置になる。これにより、術者は、凹部2cと凸部4bとを係合させるだけで、第1案内部材4を基準にして筒状部材2の挿入位置が正確であるか否かを把握することができる。
【0062】
上記のようにして筒状部材2を咽頭部100に完全に挿入した状態で、第1内筒部材4が筒状部材2により覆われるとともに、筒状部材2により咽頭部100が押し拡げられて内径がさらに大きくなる。その後、第1内筒部材4を筒状部材2の口腔側端部から引き抜く。このとき、第1内筒部材4が筒状部材2よりも長いので、第1内筒部材4の口腔側端部を筒状部材2の口腔側端部から突出させておくことが可能であり、このことで、第1内筒部材4を引く抜く際に指で容易に掴むことができる。
【0063】
上記筒状部材2を咽頭部100に挿入するとき、筒状部材2が咽頭部100の形状に対応して湾曲しているので、筒状部材2及び補強部材3を殆ど変形させなくてもよい。このため、筒状部材2及び補強部材3を咽頭部100に挿入するのに要する力が小さくて済む。また、そのように筒状部材2を変形させなくてもよいので、変形による筒状部材2の潰れもなく、内孔2bの形状が維持される。
【0064】
また、筒状部材2で咽頭部100を拡げていることにより、筒状部材2には潰れ方向の力が作用するが、該筒状部材2は補強部材3で補強されているので、潰れ変形が抑制される。
【0065】
上記補強部材3が内孔2bの周方向に沿って延びる薄板材で構成されているので、補強部材3における周壁2a厚さ方向の寸法、即ち薄板材の厚さ寸法Tを、従来の補強部材を線材で構成した場合の線径より短くして周壁2aの薄肉化を図りながら、その薄板材の幅Wを従来の線材の線径よりも長くして補強部材3の強度を十分に得ることが可能になる。これにより、筒状部材2の周壁2aを薄くしながら、該筒状部材2の潰れ変形を抑制することが可能になる。よって、筒状部材2の内孔2bで構成された医療用器具の挿入空間Rの大きさを、一般的な内視鏡よりも大径の装置本体21が挿通可能な大きさで維持することが可能になる。
【0066】
また、上記筒状部材2よりも小径な第2内筒部材5及び第1内筒部材4で咽頭部100の内径を徐々に拡大させてから筒状部材2を該咽頭部100に挿入するようにしたので、筒状部材2の挿入力を小さくすることができる。また、そのように咽頭部100を徐々に拡大させてから筒状部材2を該咽頭部100に挿入するようにしたことで、筒状部材2をいきなり咽頭部100へ挿入する場合に比べて患者への侵襲も低くなる。
【0067】
一方、患者の腹部を開腹して食道102と胃との境界部分近傍を切断するとともに、小腸106と胃との境界部分近傍を切断して胃を摘出する。
【0068】
そして、図11に示すように、上記吻合装置20の装置本体21を筒状部材2の口腔側端部から内孔2bに挿入して行く。この際、コード30を内孔2bに押し込むことで、装置本体21が内孔2bにより食道103に案内され、図9に示すように、該食道103の開放端近傍まで挿入される。そして、装置本体21の係合棒28を食道103の開放端から突出させ、該係合棒28の基端部に食道103の開放端を糸40で縛って保持する。
【0069】
小腸106には、該小腸106の開放端から上記ヘッド22を挿入しておく。該ヘッド22の突出部33を小腸106の周壁から外方へ突出させ、この突出部33の係合孔36に係合棒28を挿入して係合させる。その後、コントローラにより装置本体21に電力を供給することで、図10に示すように、係合棒28が装置本体21内に引き込まれてヘッド22が装置本体21に近接した状態となり、食道103の周壁と小腸106の周壁とが接する。
【0070】
上記ヘッド22が装置本体21に近接した状態で該装置本体21のスリット24からステープラ23が打ち出される。該ステープラ23は、食道103の周壁と小腸106の周壁とを貫通してヘッド22の窪み35に達して折り曲げられ、食道103と小腸106とが吻合される。この吻合時には、装置本体21のカッター25がヘッド22の円板部材32に当接し、食道103の周壁と小腸106の周壁との吻合部分よりも内側が切除されて、装置本体21の凹部26に収容される。尚、図示しないが、小腸106の開放端部は別に縫合糸等を用いて塞いでおく。
【0071】
食道103と小腸106との吻合が完了した後、筒状部材2の口腔側端部から出ているコード30を引っ張る。これにより、装置本体21及びヘッド22を一体化した状態で筒状部材2の内孔2bを介して食道103内から抜くことが可能になる。この装置本体21及びヘッド22を食道103から抜いた後、筒状部材2を咽頭部100から抜く。
【0072】
したがって、この実施形態によれば、筒状部材2を咽頭部100に留置し、該筒状部材2により装置本体21を食道103の出口近傍まで案内するようにしたので、首や胸部を切開することなく、装置本体21を食道103に挿入することができる。これにより、胃の全摘手術で吻合装置20を用いる場合に、患者の切開箇所を少なくすることができる。
【0073】
また、筒状部材2の内孔2bの周方向に沿って延びる薄板材で補強部材3を構成したので、筒状部材2の潰れ変形を抑制しながら該筒状部材2の周壁2aの厚みを薄くできて、装置本体21の挿入空間Rを広く確保できる。また、筒状部材2及び補強部材3を咽頭部100の形状に対応するように湾曲させているので、筒状部材2及び補強部材3を咽頭部100に挿入する際に必要な力が小さくて済み、筒状部材2を咽頭部100に挿入する際の作業性を良好にすることができるとともに、患者に与える侵襲を低くすることができる。
【0074】
また、第1内筒部材4及び第2内筒部材5により咽頭部100を徐々に拡大させた後、筒状部材2を咽頭部100に挿入するようにしたので、患者への侵襲を抑えながら装置本体21の挿入空間Rを広く確保することができるとともに、筒状部材2を咽頭部100に挿入する際の作業性をより一層良好にすることができる。
【0075】
また、上記第1案内部材4及び第2案内部材5を構成する樹脂材料が筒状部材2を構成する樹脂材料よりも硬いので、これら案内部材4、5を咽頭部100に挿入した状態で、該案内部材4、5が潰れ変形する量を少なくして咽頭部100を効果的に拡大させることができる。そして、第1案内部材4よりも大径の筒状部材2を該案内部材4の樹脂材料よりも柔らかい樹脂材料で構成しているので、患者へ与える侵襲をより一層低減することができる。
【0076】
また、補強部材3を螺旋状に形成したので、筒状部材2の中心線方向中間部を連続して補強することができ、内孔2bの形状を長さ方向両側に亘って所期の形状で維持できる。
【0077】
また、図12に示すように、上記吻合装置20は、例えば食道103の出口近傍に形成された狭窄部110を治療する場合にも使用することが可能である。この狭窄部110は、食道103の内壁から該食道103の中心部へ向けて膨らむ腫瘍等からなるものである。この狭窄部103の治療を行う場合も上記胃の全摘手術の場合と同様に筒状部材2を咽頭部100に挿入し、この筒状部材2により装置本体21を食道103の出口近傍まで挿入する。このとき、装置本体21のコード30よりも細いチューブ111を装置本体21と同様に筒状部材2により食道103の出口近傍まで挿入する。該チューブ111内には、ヘッド22の突出部33に結びつけられる糸112がチューブ111の口腔側から挿入されている。
【0078】
一方、ヘッド22は、患者を開腹した後、胃105の壁部を切開して該胃105の内部へ差し入れる。このヘッド22を胃105へ差し入れる際には、ヘッド22の突出部33に上記糸112の端部を結び付けておく。ヘッド22を胃105に差し入れてから糸112を口腔側から引っ張ることにより、ヘッド22の突出部33が装置本体21側に向く。この状態で、該突出部33の係合孔36に係合棒28を挿入して係合させる。その後、コントローラにより装置本体21に電力を供給することで、係合棒28が装置本体21内に引き込まれてヘッド22が装置本体21に近接した状態となる。これにより、食道103の狭窄部110がヘッド22の円板部材32とカッター25とで挟まれて該カッター25により切除される。切除された部分は装置本体21の凹部26に収容される。その後、装置本体21及びヘッド22を一体化した状態で筒状部材2の内孔2bを介して食道103内から抜く。
【0079】
この狭窄部110の治療のように、食道103に装置本体21及びチューブ111の2つの医療用器具を挿入する必要がある場合に、補助具1を用いることで手技が容易になるとともに、患者への負担を軽減できる。
【0080】
また、図13に示すように、本発明の補助具1は、消化器官に挿入可能な切除具115を用いて胃105の内壁に形成された腫瘍116を除去する場合にも使用することが可能である。該切除具115は、従来から医療現場で用いられているものであり、消化器官への挿入方向の先端部にハサミ型の刃117が取り付けられ、基端部には該刃117を操作するための操作部(図示せず)が設けられている。この切除具115を用いて腫瘍116を切除する場合には、まず、上記胃の摘出手術で装置本体21を挿入した場合と同様に、切除具115を上記筒状部材2により食道103を経て胃105まで挿入する。切除具115の先端部の位置は、該切除具115の基端部を口腔102外から操作することで調整することが可能である。この切除具115の位置を調整する際には、切除具115自体を動かすことになるが、該切除具115は筒状部材2内で移動して咽頭部100の内壁を擦ることはないので、患者への負担を軽減することができる。そして、切除具115の先端部を腫瘍116の近傍に位置付けた後、操作部で刃117を操作して腫瘍116を切除する。この切除された腫瘍116は切除具115の先端部に保持される。この状態で切除具115を胃105から抜く。
【0081】
また、上記胃105の腫瘍116を切除する場合には、胃105に切除具115の他に内視鏡(図示せず)を挿入してもよい。このように胃105に2つの医療用器具を挿入する場合に、補助具1を用いることで手技が容易になるとともに、患者への負担を軽減できる。
【0082】
また、図14に示すように、内視鏡119に小型の刃117を一体化した医療用器具で胃105の腫瘍116(図13に示す)を切除するようにしてもよい。この内視鏡119は、従来から医療現場で用いられているものであり、挿入方向の先端部は拡径している。このように先端部が従来のものよりも大径の内視鏡119を胃105まで挿入する場合にも、補助具1を用いることで手技が容易になるとともに、患者への負担を軽減できる。
【0083】
また、図15に示すように、本発明の補助具1は、消化器官に挿入可能な切除具115を用いて胃105の粘膜にできた早期胃癌120の切除を行う場合にも使用することが可能である。この早期胃癌120を切除する際には、まず、患者の腹部を開腹することなく小さく切開し、この切開部から挿入具(図示せず)を用いて2つのピン121を腹腔内に挿入する。これらピン121は、胃105の壁部を貫通させて該胃105の内部に挿入し、癌120近傍の粘膜122に刺す。ピン121には糸123が結びつけられており、該糸123のピン121と反対側の端部は、腹部の切開部から腹腔外に出しておく。また、切除具115は、上記胃105の腫瘍116を切除する場合に用いる切除具115と同様のものであり、該切除具115と同様に胃105に挿入する。そして、糸123を腹腔外に引いて癌120近傍の粘膜122を胃105の内側へ引っ張ると、該粘膜122が盛り上がった形状となる。この粘膜122の盛り上がった部分を上記切除具115の刃117で切除することで、早期胃癌120の切除が可能になる。
【0084】
このように、一般に、早期の胃癌では胃105の粘膜122に癌120ができているだけであって胃105の壁部を切除する必要はない。上記のように切除具115を胃105に挿入することで、胃105の壁部にピン121を貫通させる小さな孔を形成するだけで、低侵襲に早期胃癌120の切除を行うことが可能である。
【0085】
また、図16に示すように、本発明の補助具1は、食道103にステント125を留置させる場合にも使用することが可能である。このステント125の留置術は、まず、ステント125を食道103内の留置する箇所まで挿入する。その後、ステント125を食道103の内壁に固定するためのピン126と、該ピン126を食道103に刺すための医療用器具としての棒状部材127とを筒状部材2により食道103まで挿入する。そして、ピン126の穿刺部をステント125の内側から食道103の内壁へ向けた後、棒状部材127によりピン126の頭部を食道103の外側へ向けて押さえつけ、該ピン126の穿刺部をステント125を貫通させて食道103に刺す。これにより、ステント125を食道103の所定位置に留置することが可能になる。
【0086】
また、上記補助具1は、例えばカテーテル等の医療用器具を消化器官に挿入する場合にも用いることができる。
【0087】
また、上記実施形態では、補強部材3を筒状部材2にインサート成形しているが、予め成形した筒状部材2に補強部材3を組み付けるようにしてもよい。
【0088】
また、上記実施形態では、第1内筒部材4と第2内筒部材5とで咽頭部100を徐々に拡径してから筒状部材2を挿入するようにしたが、例えば1本の内筒部材で咽頭部100を拡径した後、筒状部材2を挿入するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0089】
以上説明したように、本発明に係る医療用器具の生体挿入用補助具1は、例えば消化器官同士を吻合する吻合装置を口腔から消化器官へ挿入するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の実施形態に係る補助具の断面図である。
【図2】筒状部材の側面図である。
【図3】筒状部材の断面図である。
【図4】仰向けに寝た患者の喉頭部に筒状部材を留置した状態を示す図である。
【図5】補強部材の斜視図である。
【図6】第1内筒部材及び第2内筒部材の断面図である。
【図7】吻合装置の側面図である。
【図8】(a)は装置本体をヘッド側から見た図であり、(b)はヘッドを装置本体側から見た図である。
【図9】装置本体を食道に挿入し、ヘッドを小腸に挿入した状態を示す図である。
【図10】食道の端部と小腸の端部とを吻合した状態を示す図である。
【図11】筒状部材により装置本体を食道へ挿入した状態を示す図である。
【図12】吻合装置を用いて食道の狭窄部を切除する場合を説明する図である。
【図13】切除具を用いて胃の腫瘍を切除する場合を説明する図である。
【図14】切除用の刃と一体の内視鏡を胃に挿入した状態を示す図である。
【図15】切除具を用いて早期胃癌を切除する場合を説明する図である。
【図16】食道にステントを留置する場合を説明する図である。
【符号の説明】
【0091】
1 補助具
2 筒状部材
2b 内孔
3 補強部材
4 第1内筒部材
5 第2内筒部材
21 装置本体(医療用器具)
100 咽頭部
102 口腔
103 食道(消化器官)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用器具を挿通可能な内孔が両端に亘って形成された筒状部材と、
薄板材を上記内孔の周方向に沿って延びるように成形してなる補強部材とを備え、
上記筒状部材及び補強部材は、生体の咽頭部の形状に対応して湾曲形成され、口腔から咽頭部に挿入されて留置された状態で医療用器具を上記内孔により消化器官へ案内するように構成されていることを特徴とする医療用器具の生体挿入用補助具。
【請求項2】
請求項1に記載の医療用器具の生体挿入用補助具において、
筒状部材の内孔に挿入される内筒部材を備えていることを特徴とする医療用器具の生体挿入用補助具。
【請求項3】
請求項1または2に記載の医療用器具の生体挿入用補助具において、
補強部材は内孔の中心線方向に連続して延びる螺旋状をなしていることを特徴とする医療用器具の生体挿入用補助具。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の医療用器具の生体挿入用補助具において、
筒状部材の消化器官側の端部は、補強部材の消化器官側の端部よりも消化器官側へ延びていることを特徴とする医療用器具の生体挿入用補助具。
【請求項5】
請求項4に記載の医療用器具の生体挿入用補助具において、
筒状部材の消化器官側の端部は、内孔の中心線に対し傾斜していることを特徴とする医療用器具の生体挿入用補助具。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の医療用器具の生体挿入用補助具において、
筒状部材は、補強部材が埋め込まれた状態で成形されていることを特徴とする医療用器具の生体挿入用補助具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−271517(P2006−271517A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−92013(P2005−92013)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000153030)株式会社ジェイ・エム・エス (452)
【Fターム(参考)】