説明

医療用実習装置

【課題】本発明は、医療用実習シナリオに基づいた実習履歴を記録し、それに対応した実習の評価も記憶可能な医療用実習装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る医療用実習装置は、実習履歴情報記憶手段101aと、評価入力手段110と、演算手段100と、実習評価情報記憶手段101bとを備える。実習履歴情報記憶手段101aは、予め設定された医療用実習シナリオに基づいて行われる実習行為の履歴情報を記憶する。評価入力手段110は、実習行為又は実習履歴情報記憶手段101aに記憶された履歴情報に対して、所定の事項毎に所定の評価項目の評価結果を入力する。演算手段100は、評価入力手段110で入力された評価結果に対して演算処理する。実習評価情報記憶手段は、演算手段100の結果及び評価結果を、履歴情報に関連付けて記憶する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用実習装置に係る発明であって、特に、医療用実習シナリオに基づいて実習が行われる医療用実習装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療従事者の医療行為を向上させることを目的に、医療用の実習装置が様々開発されている。例えば、特許文献1に示す医療用実習装置では、診療台や診療器具に関する検出信号を取り込み、これらの検出信号から診療行為の内容を把握し擬似患者体の動作/表情の反応として出力する。これにより、特許文献1に示す医療用実習装置では、擬似患者体の表情や動作などの診療時の動きを実習者に知覚させることができる。また、特許文献1に示す医療用実習装置では、診療器具の状態や受診状態の検出信号を記憶することができる記憶手段と、予め記憶させた評価基準に基づき評価結果を出力する実習結果評価手段とを備え、適切な診療の是正と解析を行っている。
【0003】
また、特許文献2に示す医療用実習装置では、医療行為を模擬的に行う対象部位と、対象部位の周囲に作用する力により弾性変形可能な軟素材と、変形に応じた状態量を測定する反射型フォトインタラプタ式のセンサと、センサの測定値からこの医療行為に対する手技の評価値を、評価関数パラメータを用いて算出する手技評価装置を備えている。そのため、特許文献2に示す医療用実習装置では、医療行為の手技に対して客観性のある定量的な評価を単独でも行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2008/023464号パンフレット
【特許文献2】特開2007−185400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1,2では、医療実習において、実習行為の動作や発声を時系列的に示した医療用実習シナリオに基づいて実習が行われた場合に、当該実習を行った実習者の行為やその時の実習装置の記録等を互いに関連付けられた実習履歴として記憶しておらず、実習行為とその時の評価との関係を後から検証することが困難であった。
【0006】
また、実習者も、行った実習の記録の各場面に対応した評価を見ることができないため、実習の記録を見直しても、どの実習行為を改善すれば良いのかを容易に把握することができず、有用な情報ではなかった。
【0007】
そこで、本発明は、医療用実習シナリオに基づいた実習履歴を記録し、それと対応する実習の評価も記憶可能な医療用実習装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係る解決手段は、予め設定された医療用実習シナリオに基づいて行われる実習行為の履歴情報を記憶する実習履歴情報記憶手段と、実習行為又は実習履歴情報記憶手段に記憶された履歴情報に対して、所定の事項毎に所定の評価項目の評価結果を入力する評価入力手段と、評価入力手段で入力された評価結果に対して演算処理する演算手段と、演算手段の結果及び評価結果を、履歴情報に関連付けて記憶する実習評価情報記憶手段とを備える。
【0009】
本発明の請求項2に係る解決手段は、請求項1に記載の医療用実習装置であって、履歴情報、演算手段の結果乃至評価結果の少なくともいずれか1つを表示できる表示手段をさらに備える。
【0010】
本発明の請求項3に係る解決手段は、請求項1又は請求項2に記載の医療用実習装置であって、実習行為を撮影する撮像手段をさらに備え、履歴情報は、撮像手段で撮像された実習行為の映像を含む。
【0011】
本発明の請求項4に係る解決手段は、請求項3に記載の医療用実習装置であって、撮像手段は、実習行為を複数のアングルから撮影する。
【0012】
本発明の請求項5に係る解決手段は、請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の医療用実習装置であって、少なくとも口、目の動きを行う駆動手段を有すると共に口腔内の歯牙及び/または顎に検出手段を内蔵した擬似患者体をさらに備え、履歴情報は、駆動手段の駆動履歴及び検出手段の検出履歴を含む。
【0013】
本発明の請求項6に係る解決手段は、請求項5に記載の医療用実習装置であって、擬似患者体は、評価結果に応じた表情、動作を行う。
【0014】
本発明の請求項7に係る解決手段は、請求項5に記載の医療用実習装置であって、擬似患者体は、入力手段を介して駆動手段を駆動して表情、動作を変化させる。
【0015】
本発明の請求項8に係る解決手段は、請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の医療用実習装置であって、所定の評価項目は、予め設定された複数の選択肢から選択する。
【0016】
本発明の請求項9に係る解決手段は、請求項1乃至請求項8のいずれか1つに記載の医療用実習装置であって、所定の評価項目は、項目毎にコメントを入力可能である。
【0017】
本発明の請求項10に係る解決手段は、請求項1乃至請求項9のいずれか1つに記載の医療用実習装置であって、評価入力手段は複数設けられ、各々の評価入力手段から入力された評価結果に対して、演算手段は所定の統計処理を行う。
【0018】
本発明の請求項11に係る解決手段は、請求項10に記載の医療用実習装置であって、所定の統計処理は、複数の評価結果に一定以上のばらつきが生じているか否かを判定とする。
【0019】
本発明の請求項12に係る解決手段は、請求項1乃至請求項11のいずれか1つに記載の医療用実習装置であって、実習行為に基づく測定結果を出力する測定機器評価入力手段をさらに備え、評価結果は、測定機器評価入力手段の測定結果を含む。
【0020】
本発明の請求項13に係る解決手段は、請求項1乃至請求項12のいずれか1つに記載の医療用実習装置であって、実習行為に基づく音声を処理し、当該処理した音声の情報を実習履歴情報記憶手段又は演算手段に供給する音声処理手段をさらに備える。
【0021】
本発明の請求項14に係る解決手段は、請求項1乃至請求項13のいずれか1つに記載の医療用実習装置であって、評価結果、演算手段の結果、評価結果または演算手段の結果と関連付けられた履歴情報のうち少なくとも1つ以上を呼び出して、実習者の自習に用いることができる構成を備える。
【0022】
本発明の請求項15に係る解決手段は、請求項1乃至請求項13のいずれか1つに記載の医療用実習装置であって、評価結果、演算手段の結果、評価結果または演算手段の結果と関連付けられた履歴情報のうち少なくとも1つ以上を呼び出して、評価入力手段で新たに評価結果を入力することで評価者の訓練を行う構成を備える。
【発明の効果】
【0023】
本発明の請求項1に記載の医療用実習装置は、実習評価情報記憶手段が演算手段の結果及び評価結果を、履歴情報に関連付けて記憶するので、実習行為のどの部分にどの様な評価結果が付されているのかが明確になり、実習後に評価結果を検討することや、実習者はどの実習行為を改善すれば良いのかを容易に把握することができる。また、本発明の請求項1に記載の医療用実習装置は、評価入力手段が、所定の事項毎に所定の評価項目の評価結果を入力する構成であるので、実習毎、評価者毎に評価結果がばらつくことを抑え、客観的な評価が可能になる。
【0024】
本発明の請求項2に記載の医療用実習装置は、表示手段が履歴情報、演算手段の結果乃至評価結果の少なくともいずれか1つを表示するので、容易に履歴情報、演算手段の結果乃至評価結果を確認することができる。
【0025】
本発明の請求項3に記載の医療用実習装置は、実習行為を撮影する撮像手段をさらに備え、履歴情報に、撮像手段で撮像された実習行為の映像を含むので、履歴情報から実習行為を、視覚的情報を以って、より把握し易くなる。
【0026】
本発明の請求項4に記載の医療用実習装置は、撮像手段が、実習行為を複数のアングルから撮影するので、履歴情報から実習行為を、多角的な映像情報を以って、さらに把握し易くなる。
【0027】
本発明の請求項5に記載の医療用実習装置は、少なくとも口、目の動きを行う駆動手段を有すると共に口腔内の歯牙及び/または顎に検出手段を内蔵した擬似患者体をさらに備え、履歴情報は、駆動手段の駆動履歴及び検出手段の検出履歴を含むので、患者側の状況を擬似患者体から得られるに加えて、履歴情報として記憶することができる。
【0028】
本発明の請求項6に記載の医療用実習装置は、擬似患者体が、評価結果に応じた表情、動作を行うので、実習者はより現実の診断に近い状況で実習を行うことができる。
【0029】
本発明の請求項7に記載の医療用実習装置は、擬似患者体が、入力手段を介して駆動手段を駆動して表情、動作を変化させるので、実習者や評価者に対して予期せぬ状況が起きた際の判断能力や応対の訓練をすることができる。
【0030】
本発明の請求項8に記載の医療用実習装置は、所定の評価項目は、予め設定された複数の選択肢から選択する構成であるので、実習行為をより客観的に評価でき、また評価結果に対してより定量的、統計的な処理ができる。
【0031】
本発明の請求項9に記載の医療用実習装置は、所定の評価項目は、項目毎にコメントを入力可能であるので、実習行為に対して評価者が気づいた点を各評価項目に関連させて記憶させることができる。
【0032】
本発明の請求項10に記載の医療用実習装置は、評価入力手段は複数設けられ、各々の評価入力手段から入力された評価結果に対して、演算手段は所定の統計処理を行うので、同時に複数の評価者による実習評価が可能になり、また、統計処理される複数の評価結果からは様々な情報を得ることができる。
【0033】
本発明の請求項11に記載の医療用実習装置は、所定の統計処理が、複数の評価結果に一定以上のばらつきが生じているか否かを判定するので、評価結果として不要な異常値を検出して、より精度の高い評価を得ることができる。
【0034】
本発明の請求項12に記載の医療用実習装置は、実習行為に基づく測定結果を入力する測定機器評価入力手段をさらに備え、評価結果は、測定機器評価入力手段の測定結果を含むので、実習行為に有用な情報及び評価結果をより多く得ることができる。
【0035】
本発明の請求項13に記載の医療用実習装置は、実習行為に基づく音声を処理し、当該処理した音声の情報を実習履歴情報記憶手段又は演算手段に供給する音声処理手段をさらに備えるので、評価結果や項目毎のコメントを音声入力したり、実習行為の声かけを評価できたりする。
【0036】
本発明の請求項14に記載の医療用実習装置は、評価結果、演算手段の結果、評価結果または演算手段の結果と関連付けられた履歴情報のうち少なくとも1つ以上を呼び出して、実習者の自習に用いることができる構成を備えるので、当該装置を利用して実習者のみで実習行為の訓練を行うことができる。
【0037】
本発明の請求項15に記載の医療用実習装置は、評価結果、演算手段の結果、評価結果または演算手段の結果と関連付けられた履歴情報のうち少なくとも1つ以上を呼び出して、評価入力手段で新たに評価結果を入力することで評価者の訓練を行う構成を備えるので、当該装置を利用して評価者の評価訓練を行うことができる。
【0038】
なお、評価者とは、当該発明を用いて評価付け行為を行う者一般を指すものとする。よって、評価訓練を行う評価者とは、指導者や教官等の立場に固定的なものでなく、実習生や学生等の指導を受ける立場の者も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の形態1に係る医療用実習装置の概略図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る医療用実習装置の機能ブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る医療用実習装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態1に係る医療用実習装置に用いる医療用実習シナリオを示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る医療用実習装置に用いるモード選択を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る医療用実習装置の自習モードによる表示を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係る医療用実習装置に用いる評価項目データを示す図である。
【図8】本発明の実施の形態1に係る医療用実習装置に用いる評価入力手段を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態1に係る医療用実習装置に用いる評価入力手段を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態1に係る医療用実習装置を用いて評価した場合の評価結果を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態1に係る医療用実習装置で評価結果を集計した結果を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態1に係る医療用実習装置において評価コメントの入力を説明するための図である。
【図13】本発明の実施の形態2に係る医療用実習装置で表示される複数のアングルからの映像を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
(実施の形態1)
図1に、本実施の形態に係る医療用実習装置の概略図を示す。図1に示す医療用実習装置Mは、診療器具11a〜11eを備えた器具台1と、患者を模した擬似患者体2と、その擬似患者体2を載せて治療を行うための診療台3と、GUIとして各種情報を表示し、擬似患者体2に対する各種指令を受け付ける情報処理装置4とを備えている。
【0041】
器具台1は、診療台3にアーム(図示せず)を介して回動可能に取り付けたテーブル1aの手前側に器具ホルダ1bを備え、そこにエアータービンハンドピース、マイクロモータハンドピースなどの切削工具やスケーラ、スリーウエイシリンジ、バキュームシリンジなどからなる診療器具11a〜11eを着脱可能に取り付けている。さらに、器具台1には、テーブル1aの上方に表示部5を設けて、患者のカルテを呼び出して表示したり、実習中の診療器具類の操作内容などの実習に関連する情報をモニタリングしたりできるようになっている。診療器具類には、図1に示した診療器具11a〜11e以外に、口腔カメラや光重合照射器(いずれも図示せず)が設けられる。そして、これら診療器具類を制御するためにフートコントローラ12aが設けられている。さらに、これら診療器具類の作動状態を検出するために診療器具回路が設けられている(図2の機能ブロック図参照)。
【0042】
診療器具は、各診療器具11a〜11eを器具ホルダ1bから取り上げたことを検出して駆動したり、フートコントローラ12aの操作を検出して駆動したり、診療器具類自体に設けた操作手段の操作を検出して駆動しても良い。器具ホルダ1bとしては、図1のように器具台1に設けられるものの他、診療台3に設けられるもの等、その他の診療器具11a〜11eを着脱可能に取り付け得るものも対象とされる。また、診療器具回路は、診療器具11a〜11eの回転数又は回転数に相当する電圧値、電流値、又は診療器具類が作動するエア圧、エア流量、周波数、振動数、又は診療器具11a〜11eが擬似患者体2に接触する際の抑圧力や診療台3に接続されたフートコントローラ12aの操作信号を検出する。診療器具11a〜11eは、水供給源、エア供給源やエア吸引手段に接続されているが、これらは、公知であるので、詳細の説明は省略する。
【0043】
擬似患者体2は、頭部模型2aと、胴体模型2bと、左右の腕模型2cと、左右の脚部模型2dとで構成され、その内部には、擬似患者体2の姿勢、表情を変化させたり、擬似患者体2に対する診療状態を検出したり、また検出した情報を演算手段へ送ったりする擬似患者体駆動回路が設けられている(図2の機能ブロック図参照)。また、擬似患者体2は、人体に酷似した外観にするため、頭髪となるカツラが被せられるかもしくは植毛が施され、人工皮膚を被せている。このような擬似患者体2は、機械系の部品で骨格を形成した従来型のものではなく、人工皮膚や人工頭髪を被せて、人体に極めて酷似させた、いわゆるアンドロイド型のロボットとして構成されており、実習中は、人と同様に診療台3に載せられて、種々の処置を行うことができ、姿勢、顔の表情を変化させるため機械的、電気的、流体的なエネルギー(作動媒体)を供給する駆動源に接続されている。擬似患者体2は、治療台3と一体型或いは連動するようにしても良く、また独立して動作する構成にしても良い。なお、擬似患者体2の構成や駆動等については、特許文献1に詳しく記載されている。
【0044】
診療台3は、基台30に昇降可能に載置された座部シート3aと、その座部シート3aの後方に連接された傾動可能な背板シート3bと、その背板シート3bの上端に連接された傾動可能なヘッドレスト3cとを備えている。そして、診療台3は、診療状況に応じた最適位置に制御するため座部シート昇降手段、背板シート傾倒手段、ヘッドレスト傾倒手段(いずれも図示せず)が設けられ、フートコントローラ12aによって操作制御される。このような座部シート昇降手段や背板シート傾倒手段には、従来技術の油圧シリンダや電動モータ等が使用でき、ヘッドレスト傾倒手段には、電動モータ等が使用できる。
【0045】
また、診療台3には、治療用スタンドポール6が付設され、当該スタンドポールの途中を分岐させて、回動可能に突出させたアーム61,62を設けている。アーム61には、無影灯63を設け、アーム62には、実習者の診療器具11a〜11eの扱いや動き、擬似患者体2の姿勢、動き、表情の変化等を撮像する撮像カメラ64(撮像手段)と、治療時の音声などを集音するためマイク65が設置されている。マイクの設置位置に関しては、実際の診療状況に近い再現性を追求する上で擬似患者体の耳や肩近傍に設けることもできるし、その他にも診療台等に設けることもできる。なお、診療台3の近傍には、口腔内を濯ぐ際などに給水する給水栓と、排唾鉢とを備えるスピットン3dが設けられている。
【0046】
情報処理装置4は、例えばワークステーション等で構成され、PC本体41と、液晶モニタ等の表示手段42と、キーボード、マウス等の操作手段43と、実習を評価する評価者が評価結果を入力する評価入力手段44とで構成されている。評価入力手段44は複数設けても良い。複数設けることにより同時に複数の評価者が評価を行うことができる。また、図1の実施例では、評価入力手段44がPC本体41にケーブルによって直接接続されているが、接続方法はこの限りではなく、無線等の通信手段を用いて接続することもできる。
【0047】
表示手段42には、GUIとして、各種の情報を表示し、キーボード、マウス等の操作手段43で各種の指令を受け付ける。表示手段42は、実習時の擬似患者体2の受診状況、評価状況等を表示し、必要な情報を随時呼び出して表示できる。PC本体41に特定のプログラムを内蔵し、それを稼動させることで、擬似患者体2を作動させることができる。そのため、実習教官が、実習者の状況を把握しながら、擬似患者体2の表情や動きを操作することができる。また、擬似患者体2の各部に内蔵した各種のセンサを呼び出して、検知信号をモニタ表示させることもできる。
【0048】
背板シート3bの肩部には、システム停止操作スイッチ7が設けられている。このシステム停止操作スイッチ7は、擬似患者体2又は診療台3の少なくとも一方が誤動作した時に、システム全体(擬似患者体2、診療台3及び診療器具11a〜11e等)を停止させる緊急停止スイッチである。このシステム停止操作スイッチ7の設置位置は、実習者自らが操作し易い点で、背板シート3bの肩部が望ましいが、器具台1やヘッドレスト3cの近傍等、実習者によるアクセス性を勘案して適宜選択設定される。また、停止対象は、システム全体が望ましいが、少なくとも擬似患者体2及び診療台3の作動が停止すれば、安全性を保つことができる。
【0049】
また、擬似患者体2の首部には、擬似患者体脱力手段を駆動する擬似患者体脱力操作スイッチ8が設けられている。この擬似患者体脱力操作スイッチ8は、擬似患者体駆動手段を駆動させるために、作動媒体(エア、水、油等)となる作動圧(エア圧、液圧等)の全部又は一部を抜くスイッチである。これら作動媒体の駆動系(管路系)の途中に開放弁(不図示)が設けられ、擬似患者体脱力操作スイッチ8を操作することにより、開放弁が開放し、作動媒体が系外に排出される。この擬似患者体脱力操作スイッチ8は、実習者のアクセス性の点で擬似患者体2の首部に設けることが望ましいが、擬似患者体2の側頭部、器具台1或いはヘッドレスト3cの近傍等、上記同様実習者によるアクセス性を勘案して適宜選択設定される。また、上記システム停止操作スイッチ7と兼用して、システムの停止後、擬似患者体2の脱力を行うようにしても良い。
【0050】
図1に示した医療用実習装置を構成する各装置の概略図により、本発明の医療用実習装置を実施することができるが、当該概略図は一例であり、本発明に係る医療用実習装置は当該概略図の構成様式に制限されない。
【0051】
図2に、本実施の形態に係る医療用実習装置の機能ブロック図を示す。図2に示す機能ブロックでは、図1に示す情報処理装置4において実現する演算手段100と、演算手段100に接続される記憶手段101、入力手段102、音声処理手段103、撮像手段104、表示手段105、音声出力手段106、擬似患者体駆動回路107、診療器具回路108、診療台回路109、評価入力手段110、測定機器評価入力手段111とが図示されている。
【0052】
記憶手段101は、PC本体41に内蔵された記憶装置やPC本体41に接続される外部の記憶装置で実現される。そして、記憶手段101は、実習履歴情報記憶手段101aと、実習評価情報記憶手段101bとを備えており、それぞれの手段を同一の記憶装置で実現しても、別々の記憶装置で実現しても良い。ここで、実習履歴情報記憶手段101aは、予め設定された医療用実習シナリオに基づいて行われる実習行為の履歴情報(実習履歴)を記憶する。なお、医療用実習シナリオとは、医療実習で基本的に実習者、又は実習者及び患者が行う行為及び発声を時系列に整理した情報である。実習行為の履歴情報(実習履歴)には、この医療用実習シナリオに基づいて行われた実際の実習行為が含まれるため、医療用実習シナリオを構成する情報以外の、実習者、又は実習者及び患者が行う行為及び発声も含まれることになる。また、実習評価情報記憶手段101bは、評価入力手段110等から入力した評価結果や演算手段100で演算した結果を、履歴情報に関連付けて記憶する。
【0053】
入力手段102は、図1に示す操作手段43等で実現でき、演算手段100で実行する処理や擬似患者体2を制御するための情報を入力する手段である。例えば、擬似患者体2は誤反応を起こさないセンサや機構を備えているが、実習者の診療行為によっては誤動作を生じる場合があり、当該誤動作の修正を第三者が入力手段102を用いて行うことができる。また、第三者が入力手段102を使用して擬似患者体2を制御することで、実習者や評価者に対して予期せぬ状況が起きた際の判断能力や応対の訓練をすることもできる。予期せぬ状況の一例として、例えば、擬似患者体2が、不意に腕2cを動かしたり、くしゃみや咳などの生理現象を起こしたり、実習者に対して話しかけてきたり、などの制御が可能である。なお、実習者に対する発話行為を擬似患者体2に実行させる場合、音声データを入力する入力手段102として、PC用マイク(図示せず)を用いてもよい。例えば、第三者がPC用マイクを通じて入力した音声データを、擬似患者体2等から出力させ、患者の発話行為に対する実習者の応対訓練に利用することができる。
【0054】
音声処理手段103は、マイク65から入力された実習者の発声を音声認識処理等する手段である。さらに、予め設定された医療用実習シナリオには含まれないが、第三者用の前記PC用マイク(図示せず)から入力され擬似患者体2の発話行為として該患者体等から出力された音声データなども音声認識処理等して実習履歴情報記憶手段101aに実習履歴情報として保存することができる。撮像手段104は、図1に示す撮像カメラ64で実現でき、実習行為を撮像する手段である。なお、図1では、擬似患者体2の上部に設けられた1つの撮像カメラ64のみ図示しているが、本発明に係る撮像手段104はこれに限られず、擬似患者体2を側面部から撮影するカメラや、口腔内を撮影するカメラ等様々なアングルから撮影する手段を設けることができる。また撮影に用いるカメラには、広角からズームまでの機能を搭載したものを用いることがより望ましい。表示手段105は、図1に示す表示部5や表示手段42で実現でき、診療器具の操作内容などをモニタリングや医療用実習シナリオ、評価結果等を表示する。
【0055】
音声出力手段106は、図1に示すPC本体41や擬似患者体2に設けられたスピーカ等(図示せず)で実現でき、擬似患者体2の発声や履歴情報の音声等を出力する手段である。擬似患者体駆動回路107は、擬似患者体2を制御するための駆動回路であり、演算手段100や入力手段102から得られる情報や医療用実習シナリオから情報に基づき擬似患者体2に設けられた各駆動部を駆動する。また、擬似患者体駆動回路107は、擬似患者体2に設けたセンサからの信号を演算手段100に送信する。診療器具回路108は、図1に示す診療器具11a等から得られた情報を信号として演算手段100に送信する。診療台回路109は、図1に示す診療台3から得られた情報を信号として演算手段100に送信する。評価入力手段110は、実習者の実習行為を評価する評価者が、当該実習行為の評価結果を入力する手段である。なお、評価者が同時に複数存在する場合は、評価者それぞれに対して評価入力手段110が用意される。また、評価入力手段110と演算手段100との接続は、図1で示したように直接有線で接続しても、無線やインターネット回線を利用したオンラインで接続しても良い。
【0056】
測定機器評価入力手段111は、評価者が入力する評価結果以外に、外部の測定装置で測定した結果等を入力する手段で、実習において作成した評価対象物(例えば、実習により削った歯)を所定の測定器で評価した結果を演算手段100に入力する。演算手段100では、測定機器評価入力手段111で入力された測定結果及び/または評価結果も実習評価情報記憶手段101bにより他の評価結果と合わせて記憶する。以上のように、図2に示した機能ブロックにより、本実施の形態に係る医療用実習装置が構成されるが、当該機能ブロックは一例であり、本発明に係る医療用実習装置は当該機能ブロックに制限されない。
【0057】
例えば、実習行為の履歴情報を生成する処理、及び、演算手段の結果及び評価結果を、履歴情報に関連付けた実習評価情報を生成する処理等が演算手段100で行われ当該処理の結果である情報(データ)のみが記憶手段101に記憶される構成であっても、これらの諸処理が記憶手段101に含まれる実習履歴情報記憶手段101aと実習評価情報記憶手段101bとにより行われる構成であってもよい。また、図2では、診療器具回路108を直接、演算手段100に接続していたが、本発明はこれに限られず、擬似患者体駆動回路107を介して診療器具回路108を演算手段100に接続しても良い。さらに、図2では、診療台回路109も直接、演算手段100に接続していたが、本発明はこれに限られず、擬似患者体駆動回路107を介して診療台回路109を演算手段100に接続しても良い。また、図2では、擬似患者体2を設ける前提で擬似患者体駆動回路107を備えているが、本発明に係る医療用実習装置では擬似患者体2を用いずに実際の患者を利用しても良いため、擬似患者体駆動回路107を設けない構成でも良い。同様に、本発明に係る医療用実習装置では音声出力手段106を設けない構成であっても良い。
【0058】
次に、本実施の形態に係る医療用実習装置の動作を図3に示すフローチャートに基づき説明する。まず、図3に示すステップS10では、本実施の形態に係る医療用実習装置で用いる医療用実習シナリオを作成し、登録する。医療用実習シナリオは、実習を行う項目毎に作成する。具体的に、図4(a)に示すように、印象採得、形成、口腔検査、麻酔、ラバーダム防湿などの項目を設定し、それぞれの項目に対して医療用実習シナリオを作成する。作成する医療用実習シナリオとしては、例えば図4(b)にラバーダム防湿の医療用実習シナリオの一部を具体的に示している。図4(b)に示すように、医療用実習シナリオは、実習(例えばラバーダム防湿)を行うために必要となる基本的な実習者及び患者の発声及び動作を時系列に記載して作成する。なお、医療用実習シナリオは、記憶手段101により情報処理装置4に設けられる記憶装置に記憶される。
【0059】
次に、ステップS11では、記憶装置に記憶されている医療用実習シナリオを図2に示す演算手段100に読み込み、図4(a)のように一覧として、表示手段105に表示する。ステップS12では、図4(a)のように表示された項目の中から医療用実習シナリオを選択する。さらに、ステップS13では、医療用実習装置の実行モードを選択する。本実施の形態に係る医療用実習装置では、実行モードとして図5に示すように自習モードと評価モードとを備えている。ここで、自習モードとは、実習者が当該医療用実習装置を用いて医療用実習シナリオに基づく医療行為を自ら実習訓練(自習訓練)するための動作モードである。この自習モードを図5に示すようなラジオボタンを用いたモードの選択ができる設定ツール等で選択した場合、自習訓練が実行されることになる。この自習訓練には、基本的に評価者は存在しないが、装置自体が自動で評価する項目については評価結果を出力することができる。そのため、自習モードにおいて、装置の評価結果が必要な場合は、図5に示すラジオボタンで「装置評価有り」を選択する。
【0060】
一方、評価モードとは、当該医療用実習装置を用いて行われた実習行為に対して、評価者が評価した結果を入力するための実行モードである。なお、本実施の形態に係る医療用実習装置では、リアルタイムに行われている実習行為を評価する場合と、実習行為の履歴情報(実習履歴)を再現して実習行為を評価する場合とがあり、いずれかの場合を図5に示すラジオボタンで選択する。また、本実施の形態に係る医療用実習装置では、評価の入力を評価者が行うマニュアル入力と、装置が自動的に評価し、その評価結果を入力するオート入力と、マニュアル入力及びオート入力の両方を行う両方入力とがあり、いずれかの入力を図5に示すラジオボタンで選択する。評価モードでは、通常の実習行為を評価する利用方法以外に、図5に示す再現の場合を利用して、既に記憶手段101に記憶されている実習履歴や評価結果を再現し、新たに評価することで評価者の評価訓練としても利用できる。なお、図5に示したモードの選択は、一例であり選択肢や配置や選択方法の仕様についてはこの限りではなく、本発明に係る医療用実習装置を使用する際に、使用用途にあった設定ができれば良い。
【0061】
次に、ステップS14では、ステップS13で自習モードを選択した場合にはステップS15に進み、ステップS13で評価モードを選択した場合にはステップS21に進む。ステップS15では、ステップS12で選択した医療用実習シナリオに基づく実習を実習者が行う。なお、自習モードなので、マニュアル評価を行う評価者は存在しない。そして、ステップS16では、図1に示す撮像カメラ64やマイク65を使って、医療用実習シナリオに基づく実習行為を実習履歴として取得する。この際、擬似患者体2や診療器具11a等や診療台3に設けられたセンサからの信号も実習履歴として取得する。
【0062】
次に、ステップS17では、ステップS16で取得した実習履歴に、図5のモード選択で「装置評価有り」を選択している場合に得られる装置による評価結果等を関連付けて記憶手段101に記憶させる(実習評価情報記憶手段101b)。ステップS18では、後述するように実習履歴や評価結果に評価コメントを入力することや、入力中のコメントや既に入力されている評価コメントを表示することができる。さらに、ステップS19では、ステップS16で取得した実習履歴を再生して、実習者自身により評価を入力することもできる。なお、ステップS19で実習履歴を再生する場合、例えば図6に示すように、他人が行った同じ医療用実習シナリオに基づく実習履歴をリファレンス(Ref)として映像Bを表示手段105(42,5)の右側に表示し、自身の実習履歴の映像Aを表示手段105(42,5)の左側に表示することで比較しながら自身の実習行為を客観的に評価できる。なお、画面構成はこの限りではない。また、実習履歴情報の比較方法もこの限りではない。同じ医療用シナリオに基づく異なる実習履歴であれば比較することが可能なため、前記の他にも、自分の初期の実習映像と訓練後の実習映像とを比較したり、自分と他人の評価結果を比較したりして、学習に役立ててもよい。
【0063】
評価モードにおいて実習行為を評価する場合、まずステップS20で評価項目データの作成及び登録を行う必要がある。ここで、実習行為の評価は、所定の事項(例えば、印象採得や口腔検査等の医療用実習シナリオ、医療用実習シナリオ内の発声や動作)毎に評価項目が異なるため、事項毎に図7に示す評価項目入力画面を利用して評価項目を設定する。つまり、ここでいう所定の事項とは、評価の単位となる事項であり、実習中の各行為又は一連の行為に対する個別評価及び評価単位シナリオに対する総合的な評価のうち少なくとも1つを含む。具体的に図7に示す評価項目入力画面では、評価入力手段110である図8の評価入力装置の各評価入力部に評価項目が設定される。例えば、評価入力部1には、図7に示す評価項目入力画面のプルダウンで「声かけ」を選択し、同様に、評価入力部2には「動作」、評価入力部3には「手技」、評価入力部4には「シナリオ対応」、評価入力部5には「タイミング」をそれぞれ選択して評価項目データを作成する。なお、プルダウンで選択する項目は、登録テーブル内の項目であり、当該登録テーブルは項目登録簿欄により編集できる。設定される評価項目は、全ての評価者が同じ設定に基づいて入力を行うのであっても、評価者毎に項目を変えて異なる設定の下で評価入力を行っても良い。
【0064】
また、評価者が図8に示す評価入力装置の各評価入力部を押した場合に記録される得点の方式は、図7に示す得点テーブルによって評価入力部毎に設定される。得点テーブルでは、得点の値やラベル、範囲を定めている。この図7の実施例では正値が評価項目に対する良い評価の場合の得点で、負値が評価項目に対する悪い評価の場合の得点である。またこの実施例では、実習行為における評価内容の重大性の度合いに応じてそれぞれ得点の大きさを定めている。図8に示す評価入力装置で押した各評価入力部の信号は、演算手段100であるPCを含む情報処理装置4に送信される。図8に示す評価入力装置の評価入力部はボタン式となっており、「良い」,「どちらでもない」,「悪い」、の3段階評価に対応する構成にすることもできる。本発明において評価の入力方法はこの方式に限らずスイッチ式やダイヤル式等の他の方式を採用しても良い。例えば正値、負値それぞれ2点まで0.5刻みの9段階評価としてより細かい採点方式に対応するように設定することもできる。少なくとも、本発明に係る評価入力手段110は、必要な評価項目の選択肢を全て網羅することが可能で、且つ評価結果を演算・集計可能なデータとして入力可能な構成であればどんな方式でも良い。
【0065】
次に、ステップS21では、リアルタイムで行われている実習行為又は事前に行われた実習行為を再現する実習履歴に基づいて、評価者が所定の評価項目に対する評価を行う。なお、評価は加算法を用いても、減算法を用いても良い。また、評価方法は、多様な臨床ニーズに対応可能であれば特に制限されない。評価者が評価を行う際、実習行為を直接見ながら評価するのであれば、図8に示した評価を入力できる機構を最低限備えたような単純な評価入力装置で足りるが、直接実習行為を確認できない場合は例えば図9に示すような評価入力手段110が必要となる。直接実習行為を確認できない場合としては、実習履歴を見ながら評価する場合以外に、遠隔地でリアルタイムに行われている実習行為を評価する場合も含まれている。図9に示す実施例の評価入力手段110(44)では、撮像カメラ64で撮影した映像を表示する画面441と、評価入力部に対応する画面442と、医療用実習シナリオ、評価項目やカメラのアングル変更等の制御ボタンを表示する画面443と、コメント入力用の画面444とを備えている。
【0066】
そして、図9に示す評価入力手段110(44)ではタッチパネルとなっており、表示される制御ボタンや評価入力部を触れることで選択できる。更に、この実施例では評価入力部に対応する画面442の左端にシステム停止用の項目を設けてある。システム停止後の本実習装置の反応は既述の通りである。これにより、擬似患者体2等を扱う実習者やGUI等情報処理装置4を扱う操作者だけでなく、評価入力手段44を扱う評価者も、実習中に起こる不測の事態に対して実習の強制終了操作等の対応が可能となる。また、コメント入力用の画面444には、図示していないがソフトウェアキーボードを表示させ、当該キーボードの画面を触れることで入力する。もちろん、コメント入力用の画面444にスタイラス・ペン(図示せず)等を用いて直接入力する方式であっても良い。なお、図9に示す評価入力手段110(44)では、図示していないが音声出力手段であるスピーカやイヤホンジャック等が設けられており、マイク65で集音された実習行為の音や医療用実習装置からの音を出力できる。図9に示す評価入力手段110(44)では、有線を利用して演算手段100であるPCを含む情報処理装置4と信号を送受信しているが、本発明はこれに限られず、無線やインターネット回線のオンライン接続や、メモリカード等の記憶媒体によるオフラインでの利用であっても良い。
【0067】
さらに、評価入力手段110は、図8や図9に示した構成に限られず、例えば、評価者の発声を集音するマイク(図示せず)を評価入力手段110として設け、当該マイクから評価結果や評価コメントを音声として入力し、当該音声を音声処理手段103でデータとして評価結果や評価コメントに変換する構成であっても良い。なお、マイクと音声処理手段とをセットにして、新たな評価入力手段110として構成しても良い。
【0068】
次に、ステップS22では、図10に示すように実習履歴と評価者毎の評価結果を表示する。図10に示す表示画面では、医療用実習シナリオを表示する画面h1と、撮像カメラ64で撮影した映像を表示する画面h2と、擬似患者体2に設けた各センサからの出力を表示する画面h3と、評価者の評価結果を示す画面h4とが表示される。医療用実習シナリオを表示する画面h1には、ステップS12で選択された図4(b)に示す医療用実習シナリオが表示される。各センサからの出力を表示する画面h3は、擬似患者体2に設けた衝撃センサ、振動センサ、熱センサ、導通(静電容量)センサ、触覚センサからの出力が表示される。なお、図10では、各センサからの出力を表示する画面h3のタブを押すことで、各センサの出力表示を切り換える。図10に示す画面では、現在衝撃センサから出力された信号の時系列変化が図示されている。また、各センサからの出力を表示する画面は、擬似患者体2に設けたセンサからの出力に限られず、器具台1、診療台3、診療器具11a等に設けたセンサ等からの出力を表示しても良い。
【0069】
評価者の評価結果を示す画面h4は、実習の経過時間、医療用実習シナリオに基づいて行われた実習履歴、各評価者の評価結果が図示されている。ここで、評価者の評価結果を示す画面に表示される実習履歴は、音声や映像をテキスト化した一部の情報が表示されているだけであり、本実施の形態に係る実習履歴情報記憶手段101aで記憶される実習履歴は、撮像カメラ64で撮影した映像、擬似患者体2の駆動履歴や各センサからの出力等の実習行為から得られた全ての情報も含まれる。但し、本発明に係る実習履歴は、必ずしも撮像カメラ64で撮影した映像や各センサからの出力等の全てを含む必要はなく、少なくとも予め設定された医療用実習シナリオに基づいて行われる実習行為を再現できる程度の履歴情報であれば良い。
【0070】
図10に示す表示画面では、撮像カメラ64で撮影した映像を表示する画面h2に表示されている実習の経過時間(図10では00:01:00)に対応して、医療用実習シナリオを表示する画面h1、各センサからの出力を表示する画面h3、評価者の評価結果を示す画面h4のそれぞれに経過時間バーBは表示されている。この経過時間バーBにより、撮像カメラ64で撮影した映像と、どの医療用実習シナリオと、どの評価結果とが対応しているのかが一目で分かるようになっている。
【0071】
次に、ステップS23では、実習評価情報記憶手段101bが実習履歴と関連付けて評価結果を記憶する。実習履歴と評価結果との関連付けは、図10に示したように実習の経過時間を鍵にして関連付けすることが考えられるが、本発明ではこれに限られず、例えば、実習履歴に設けたフラグ(例えば、実習者の発声や動作毎に設けた目印)を鍵にして関連付けても良い。なお、ステップS23で関連付ける評価結果は、評価者が入力した評価結果に限られず、医療用実習装置において自動的に評価した評価結果や外部の測定機器を使用して測定した結果を、測定機器評価入力手段111を介して入力した評価結果も含まれる。
【0072】
ここで、医療用実習装置において自動的に評価した評価結果として、以下のように採点例が考えられる。
【0073】
選択された医療用実習シナリオが印象採得で、評価対象動作が印象採得手技の場合、評価基準は擬似患者体2に設けた軟口蓋へのあふれ検知センサの反応の有無とする。具体的には、微量のあふれ検知センサが反応した場合は減点1とし、大量のあふれ検知センサが反応した場合は減点3とし、あふれ検知センサの反応がない場合は加点1とする。
【0074】
また、選択された医療用実習シナリオが形成で、評価対象動作が窩洞形成の場合、評価基準は擬似患者体2に設けた歯髄到達検知センサの反応の有無とする。具体的には、浅い歯髄到達検知センサが反応した場合は減点1とし、深い歯髄到達検知センサが反応した場合は減点3とする。
【0075】
また、選択された医療用実習シナリオが形成で、評価対象動作がインスツルメント取扱いの場合、評価基準は擬似患者体2に設けた前歯衝撃検知センサの反応の有無とする。具体的には、前歯衝撃検知センサが反応した場合は減点1とし、前歯衝撃検知センサが反応しない場合は加点1とする。
【0076】
また、選択された医療用実習シナリオが形成で、評価対象動作が声かけの場合、評価基準は擬似患者体2に対して「大丈夫ですか」の声かけと各検知センサの反応の有無とする。具体的には、音声処理手段103の音声認識を利用して実習者の声かけを認識し、且つ各検知センサに反応がない場合に擬似患者体2からの返事を「はい」として加点1とし、実習者の声かけを認識し、且つ各検知センサに反応がある場合に擬似患者体2からの返事を「痛い」「痛み」を含む言葉として減点3とし、声量が小さい等の問題で実習者の声かけを認識できない場合は減点1とする。
【0077】
また、選択された医療用実習シナリオが形成で、評価対象動作が姿勢の場合、評価基準は擬似患者体2に設けた頬・胸接触検知センサの反応の有無とする。具体的には、頬・胸接触検知センサが反応した場合は減点1とし、頬・胸接触検知センサが所定の時間以上反応した場合は減点3とし、頬・胸接触検知センサが反応しない場合は加減点なしとする。
【0078】
また、選択された医療用実習シナリオが形成で、評価対象動作が唾液等の吸引の場合、評価基準は擬似患者体2に設けた口腔内の液体等測量センサの数値とする。具体的には、液体等測量センサが0cc〜Xccの場合は減点1とし、液体等測量センサがXcc〜Yccの場合は加点1とし、液体等測量センサがYcc〜Zccの場合は加減点なしとし、液体等測量センサがZcc〜の場合は減点2とする(X<Y<Z)。
【0079】
また、選択された医療用実習シナリオが形成で、評価対象動作が形成対象の適正の場合、評価基準は擬似患者体2に設けた形成対象以外の部位の衝撃検知センサの反応の有無とする。具体的には、形成対象以外の部位(例えば、歯牙や口腔内部位)の衝撃検知センサが反応した場合は減点3とし、形成対象以外の部位の衝撃検知センサが反応しない場合は加減点なしとする。
【0080】
また、選択された医療用実習シナリオが形成で、評価対象動作が連続開口時間の場合、評価基準は擬似患者体2に設けた開口検知センサの連続開口時間とする。具体的には、開口検知センサの連続開口時間がX秒〜Y秒の場合は減点1とし、開口検知センサの連続開口時間がY秒より多い場合は減点2とする(X<Y)。
【0081】
また、選択された医療用実習シナリオが麻酔で、評価対象動作が注射の場合、評価基準は擬似患者体2に設けた上・下顎骨到達検知センサの反応の有無とする。具体的には、上・下顎骨到達検知センサが反応した場合は減点1とし、上・下顎骨到達検知センサが反応しない場合は加点1とする。
【0082】
また、選択された医療用実習シナリオが麻酔で、評価対象動作が声かけの場合、評価基準は擬似患者体2に対して「麻酔が効いてきましたか」の声かけと検知センサの反応の有無とする。具体的には、音声処理手段103の音声認識を利用して実習者の声かけを認識し、且つ麻酔の処置を検知センサで検知してから所定の時間経過した場合に擬似患者体2からの返事を「はい」として加点1とし、実習者の声かけを認識し、且つ麻酔の処置を検知センサで検知してから所定の時間経過していない場合に擬似患者体2からの返事が「いいえ」として減点3とし、声量が小さい等の問題で実習者の声かけを認識できない場合は減点1とする。
【0083】
以上の評価基準においては、擬似患者体2に設けた各検知センサの反応の有無としていたが、本発明はこれに限られず、時間軸に基づき、あるアクションに対する実習者の反応の遅速で評価したり、予め作成した装置等の値(時間/数量)に関する判定スケールに基づいて、ある診療行為の模範的基準値と実際値との比較で評価したりしても良い。
【0084】
なお、上記の評価は一例であり、予め決められた評価基準に基づいて客観的に評価される評価項目を医療用実習シナリオ毎に設定すれば良い。
【0085】
また、外部の測定機器を使用して測定した結果としては、例えば切削した歯の形状を三次元測定器で測定し、所望の形状になっているか否かを判定した結果が考えられる。なお、外部の測定機器で測定したデータを演算手段100に送信し、当該演算手段100で当該データの評価を行う構成でも良い。
【0086】
次に、ステップS24では、評価結果を演算手段100において所定の統計処理を行い集計する。そして、ステップS25では、ステップS24で集計した集計結果を表示手段105に表示する。評価結果を集計した集計結果h5の一例を図11に示す。図11では、複数の評価者から得た評価結果を、各評価項目別に集計し、且つ各評価項目の合計得点を算出している。さらに、図11の集計結果h5では、合計得点と満点とから評価点を算出している。具体的に、評価点の定義を合計得点/満点*100とし、図11での合計得点が151で満点191とすると、評価点は79となる。なお、図11の集計結果h5では、複数の評価者から得た評価結果を、合算してから1つの評価点を設けているが、本発明はこれに限られず、評価者毎に評価点を集計する構成でも良い。このほかにも、特定の医療用実習シナリオの実習者全体から得た評価結果から各評価項目毎の平均値を出すことなども可能である。つまり、演算手段100は、評価入力手段110で入力された評価結果に対する演算処理として統計処理を行う。本実施形態では、各評価結果に対する当該統計処理として、合計得点及び評価点等を算出する。
【0087】
図11で行った統計処理は、単純な集計のみであったが、本発明に係る統計処理はこれに限られず、例えば複数の評価結果に一定以上のばらつきが生じているか否かを判定することも可能である。医療用実習装置では、実習に対する信頼性の高い評価を得るために、妥当性のない評価や、標準偏差から大きく外れる評価を排除する必要がある。そのため、本発明に係る医療用実習装置では、評価結果に一定以上のばらつきが生じているか否かを判定し、当該判定を行った評価者に通知することも可能である。このように、複数の評価結果に一定以上のばらつきが生じているか否かを具体的に判定することが必要なケースとしては、次のようなケースが想定される。同一の実習内容に対して複数の評価者が判定するケース。同一の実習内容に対して、1人の評価者が複数回評価する場合で、且つ全体的に統一性が少なくばらついた評価が集められるケース。同一の実習内容に対して、1人の評価者が複数回評価する場合で、且つ一部に極端な評価が付与されるケース。
【0088】
次に、ステップS17では、ステップS23で記憶した実評価結果に関連付けられた実習履歴と、ステップS24で得た評価結果を集計した結果とを関連付けて記憶手段101に記憶させる(実習評価情報記憶手段101b)。ステップS18では、実習履歴や評価結果に評価コメントを入力することや、入力中のコメントや既に入力されている評価コメントを表示することができる。具体的に、図12を用いて評価コメントの入力について説明する。まず、評価コメントを入力したい評価結果を特定し、表示手段105や図9に示す評価入力手段110に、図12の上側のようなコメント入力欄h6を表示させる。表示させた当該コメント入力欄h6に、所定の入力手段(キーボードやスタイラス・ペンやマイク等)を用いて評価コメントを入力する。図12では、実習経過時間が“00:12:78”の評価結果に対して評価者1が、「患者に対する位置が遠い」との評価コメントを入力している。当該評価コメントの入力により、評価者の評価結果を示す画面h4のコメント欄に入力評価者を特定する名や文字列と共に表示される。なお、評価コメントには、全評価内容を装置に解析させ、予め用意された評価コメントの中から結果に応じて付与される客観的・統計的なコメントや、指導官等の評価者によって、任意に付加される主観的・恣意的コメントが含まれる。図12のようなコメント入力欄h6を利用して入力される評価コメントは、評価者によるコメントである。
【0089】
さらに、ステップS19では、ステップS17で記憶させた実習履歴等を再生して、評価結果の検討や評価結果等の出力を行う。このように、実習履歴の少なくとも一部を再生することで、実習者の自習に用いることが可能な構成が実現される。更には、この構成を、評価内容の再検討に利用する等、その他の実習関連の用途で使用することも可能である。なお、評価結果等を出力する場合、表示手段105から出力することになるが、当該表示手段105には図1に示す液晶モニタ等の表示手段42や表示部5以外に、図示していないプリンタ等の紙に出力する手段も含まれる。また、評価結果の検討により、入力された評価結果(評価コメント含む)を、事後的に追加・修正・変更等の編集作業を行うことが可能である。評価結果の編集には、演算手段100や入力手段102等を利用して行うことが可能であり、評価結果の入力エラーや人為的ミス、再判定に対応することができるようになる。あるいは編集用の作業媒体や機構を搭載した評価入力手段110であればこの作業に利用することも可能である。
【0090】
上述したように、本実施の形態に係る医療用実習装置では、既に記憶されている実習履歴等を再現する評価モードを利用して評価者の評価訓練を行うことができる。この評価者の評価訓練を行う場合、まずステップS30において、図5に示すモード選択で「評価モード」,「再現」,「マニュアル」を選択して評価者の評価訓練を行う準備をする。次に、ステップS31では、評価訓練を行う実習履歴を再生して、評価者は当該実習履歴を見ながら新たな評価結果を入力する。そして、ステップS19では、ステップS31で新たに入力した評価結果と、再生した実習履歴に関連付けられ記憶されている過去の評価結果とを比較検討して、評価訓練を行う。
【0091】
(実施の形態2)
実施の形態1に係る医療用実習装置では、図1に示すアーム62に設けられた撮像カメラ64から撮影した擬似患者体2の上側からの映像(図10参照)を表示手段105に表示している。そして、実施の形態1に係る医療用実習装置では、当該映像を実習履歴として記憶させている。
【0092】
しかし、評価者が擬似患者体2の上側からの映像のみを記憶した実習履歴に基づいて実習行為を評価しようとした場合には限界がある。つまり、擬似患者体2の上側からの映像のみでは確認できない評価部分も存在する場合がある。
【0093】
そこで、本実施の形態に係る医療用実習装置では、擬似患者体2を上側から撮影するカメラ以外に、異なるアングルから撮影できるカメラを少なくとも1つ設けている。そして、本実施の形態に係る医療用実習装置では、擬似患者体2の上側からの映像と異なるアングルから撮影した映像とを実習履歴として記憶させる。また撮影に用いる各カメラには、広角からズームまでの機能を搭載したものを用いることがより望ましい。
【0094】
具体的に、本実施の形態に係る医療用実習装置では、例えば図13のような表示画面が得られる。図13に示す表示画面では、撮像カメラ64で撮影した映像(擬似患者体2の上側からの映像)を表示する画面h2と、擬似患者体2の側面からの映像を表示する画面h7と、医療用実習シナリオを表示する画面h1と、擬似患者体2に設けた各センサからの出力を表示する画面h3とが表示される。医療用実習シナリオを表示する画面h1には、図4(b)に示す医療用実習シナリオが表示される。各センサからの出力を表示する画面h3は、擬似患者体2に設けた衝撃センサ、振動センサ、熱センサ、導通(静電容量)センサ、触覚センサからの出力が表示される。なお、本実施の形態に係る医療用実習装置は、図13に示すように異なるアングルからの映像を表示し、記憶させる以外は、実施の形態1と同じであるため、詳細な説明は省略する。
【0095】
以上のように、本実施の形態に係る医療用実習装置では、擬似患者体2の上側からの映像のみでは確認できない評価部分も、異なるアングルからの映像を見ることで実習行為を適切に評価できる。つまり、実習行為が評価者の目の前で行われているのに近い状況を提供でき、評価者は、複数のアングルから撮影された映像を見ることでより良い評価をすることができる。そのため、評価者による実習行為の評価を、実習行為と時間的にも空間的にも切り離すことができる可能性があり、評価者による実習評価を行う際の環境的な自由度が増す。
【0096】
図13では、異なる2つのアングルが同時に表示されているが、必ずしも同時に表示する必要はなく、図9に示した評価入力手段110のように、カメラアングル変更ボタンを押すことで表示する映像のアングルを変更する構成でも良い。
【0097】
なお、上述した実施の形態1,2では、患者役として擬似患者体2を利用して実習する場合について説明したが、本発明はこれに限られず、例えば実際の受診患者や他の実習者など、実際の人を患者役として使用することもできる、但し、患者役を実際の人とした場合は、擬似患者体2に設けた各種センサからの信号を実習履歴として記憶させることはできない。さらに、患者役を実際の人とした場合に本発明に係る医療用実習装置を適用するのであれば、実際の診療行為に対する評価装置としても利用することができる。
【0098】
つまり、実際の患者に対して実際の診療行為を行う場合に、医療用実習シナリオに対応する診療手順に従って診療が行われているかを評価者が判定することも本発明に係る医療用実習装置では可能となる。ここで、診療手順の内容は、基本的に医療用実習シナリオと同じであり、実習のように細かく手順が定められていない程度の差異しかない。また、評価項目も基本的には、実習と実際の診療とで差はない。さらに、記憶される履歴情報も、実習の内容が、実際の診療行為に基づく内容に変わるだけである。従って、例えば評価者が目視によって判定できる内容や、音声処理手段を利用して判定を行う声かけや、診療台や診療器具等に搭載したセンサを利用した判定を行う類の項目によっては、実際の診療行為から得られる情報を判定し評価することも本発明に係る医療用実習装置では可能となる。なお、本発明に係る医療用実習装置に、実際の診療で使用可能な一般の診療台を利用すれば、より診療行為の評価に利用しやすくなる。
【0099】
また、本発明の医療用実習装置Mでは、評価対象動作に「声かけ」が含まれており、上記においては、実習者から患者(擬似患者体2)に対してなされる声かけを評価できる実施例を開示しているが、「声かけ」に係る評価は、このような実習者が主導の発話行為に限られない。他にも、患者(擬似患者体2)が主導の発話行為に対する実習者の応対を評価するのであってもよい。医療用実習装置Mを用いて「声かけ」の評価を行う場合、実習者が自発的に患者(擬似患者体2)に対して発話行為を行う対応と、患者(擬似患者体2)が自発的に実習者に話しかける行為に対する実習者の応対とを、評価の対象とすることができる。例えば、実習中において、擬似患者体2から、「削るんですか?」,「痛いのですか?」,「あとどのくらいですか?」,「口をゆすいでもいいですか?」,「先生、気分が悪くなってきました!」などの質問や要望や報告の発生に伴い、この状況に対して実習者がどのような返事をしたか、どのような作業を行ったか、などの反応に基づいて評価を行うことができる。このような術者に対する不意の事態は、実際の診療で当然起こりうることなので、有益な訓練となる構成である。なお、患者(擬似患者体2)からの自発的な発話行為という事項は、予め医療用実習シナリオに含まれていてもよいし、該シナリオには含まれずに第三者が入力手段102(図1に示す操作手段43や不図示のPC用マイクなど)の操作によって追加してもよい。また、擬似患者体を設けていない形態の医療用実習装置の場合でも、例えば、表示手段の画面上に文字データとして出力したり、音声出力手段から音声データとして出力したりして、患者の自発的な発話行為の状況を医療用実習シナリオの中に設定することが可能である。
【0100】
なお、本発明の医療用実習装置Mは、上述したとおり、様々な機能を備えた仕様であるため、ユーザ(実習者、評価者、及び操作を行う第三者等)に対して、各構成部の仕様説明や擬似患者体2の動作説明などを含む製品の構成説明を行うデモンストレーション機能を搭載することが好ましい。前記デモンストレーション機能では、例えば、PCの表示手段42に表示されるGUIの機能、器具台1などからなる診療ユニットの使用方法、擬似患者体2の各部の仕様及び取扱い方法、緊急停止スイッチ等を用いた緊急時の対応、評価入力手段44の操作方法、等の装置各部の仕様情報や使い方について、表示画面上の画像情報や、ナレーションなどの音声情報や、実際に擬似患者体2の動作再現を行いガイダンスすることができる。この他にも、実習中には表示手段42の画面上のGUIや擬似患者体2等が実際にどのような動作状況になるのか、記憶手段101などに収録された模擬実習を実行して、ユーザに対し実習装置Mの動きを再現してみせることも可能である。医療用実習装置Mに、以上のようなデモンストレーション機能を設けることで、実習者、評価者、及び操作を行う第三者であるユーザは、搭載された機能を理解した上で本装置を使用できるようになる。従って、該ユーザは、高い機能性を充分に活用しながら本装置を用いた訓練を行うことにより、実習(訓練)を効果的に行えるようになるため望ましい。
【符号の説明】
【0101】
1 器具台、1a テーブル、1b 器具ホルダ、2 擬似患者体、2a 頭部模型、2b 胴体模型、2c 左右の腕模型、2d 左右の脚部模型、3 診療台、3a 座部シート、3b 背板シート、3c ヘッドレスト、4 情報処理装置、5 表示部、6 治療用スタンドポール、7 システム停止操作スイッチ、8 擬似患者体脱力操作スイッチ、11a〜11e 診療器具、12a フートコントローラ、30 基台、41 PC本体、42 表示手段、43 操作手段、44 評価入力手段、61,62 アーム、63 無影灯、64 撮像カメラ、65 マイク、100 演算手段、101 記憶手段、101a 実習履歴情報記憶手段、101b 実習評価情報記憶手段、102 入力手段、103 音声処理手段、104 撮像手段、105 表示手段、106 音声出力手段、107 擬似患者体駆動回路、108 診療器具回路、109 診療台回路、110 評価入力手段、111 測定機器評価入力手段、M 医療用実習装置、B 経過時間バー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された医療用実習シナリオに基づいて行われる実習行為の履歴情報を記憶する実習履歴情報記憶手段と、
前記実習行為又は前記実習履歴情報記憶手段に記憶された前記履歴情報に対して、所定の事項毎に所定の評価項目の評価結果を入力する評価入力手段と、
前記評価入力手段で入力された前記評価結果に対して演算処理する演算手段と、
前記演算手段の結果及び前記評価結果を、前記履歴情報に関連付けて記憶する実習評価情報記憶手段とを備える医療用実習装置。
【請求項2】
請求項1に記載の医療用実習装置であって、
前記履歴情報、前記演算手段の結果乃至前記評価結果の少なくともいずれか1つを表示できる表示手段をさらに備えることを特徴とする医療用実習装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の医療用実習装置であって、
前記実習行為を撮影する撮像手段をさらに備え、
前記履歴情報は、前記撮像手段で撮像された前記実習行為の映像を含むことを特徴とする医療用実習装置。
【請求項4】
請求項3に記載の医療用実習装置であって、
前記撮像手段は、前記実習行為を複数のアングルから撮影することを特徴とする医療用実習装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の医療用実習装置であって、
少なくとも口、目の動きを行う駆動手段を有すると共に口腔内の歯牙及び/または顎に検出手段を内蔵した擬似患者体をさらに備え、
前記履歴情報は、前記駆動手段の駆動履歴及び前記検出手段の検出履歴を含むことを特徴とする医療用実習装置。
【請求項6】
請求項5に記載の医療用実習装置であって、
前記擬似患者体は、前記評価結果に応じた表情、動作を行うことを特徴とする医療用実習装置。
【請求項7】
請求項5に記載の医療用実習装置であって、
前記擬似患者体は、入力手段を介して前記駆動手段を駆動して表情、動作を変化させることを特徴とする医療用実習装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の医療用実習装置であって、
前記所定の評価項目は、予め設定された複数の選択肢から選択することを特徴とする医療用実習装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1つに記載の医療用実習装置であって、
前記所定の評価項目は、項目毎にコメントを入力可能であることを特徴とする医療用実習装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか1つに記載の医療用実習装置であって、
前記評価入力手段は複数設けられ、各々の前記評価入力手段から入力された前記評価結果に対して、前記演算手段は所定の統計処理を行うことを特徴とする医療用実習装置。
【請求項11】
請求項10に記載の医療用実習装置であって、
前記所定の統計処理は、複数の前記評価結果に一定以上のばらつきが生じているか否かを判定することを特徴とする医療用実習装置。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれか1つに記載の医療用実習装置であって、
前記実習行為に基づく測定結果を入力する測定機器評価入力手段をさらに備え、
前記評価結果は、前記測定機器評価入力手段の前記測定結果を含むことを特徴とする医療用実習装置。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12のいずれか1つに記載の医療用実習装置であって、
前記実習行為に基づく音声を処理し、当該処理した前記音声の情報を前記実習履歴情報記憶手段又は前記演算手段に供給する音声処理手段をさらに備えることを特徴とする医療用実習装置。
【請求項14】
請求項1乃至請求項13のいずれか1つに記載の医療用実習装置であって、
前記評価結果、前記演算手段の結果、前記評価結果または前記演算手段の結果と関連付けられた前記履歴情報のうち少なくとも1つ以上を呼び出して、実習者の自習に用いることができる構成を備えたことを特徴とする医療用実習装置。
【請求項15】
請求項1乃至請求項13のいずれか1つに記載の医療用実習装置であって、
前記評価結果、前記演算手段の結果、前記評価結果または前記演算手段の結果と関連付けられた前記履歴情報のうち少なくとも1つ以上を呼び出して、前記評価入力手段で新たに評価結果を入力することで評価者の訓練を行う構成を備えたことを特徴とする医療用実習装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−55068(P2010−55068A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158567(P2009−158567)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(000138185)株式会社モリタ製作所 (173)
【出願人】(502397369)学校法人 日本歯科大学 (20)
【Fターム(参考)】