説明

医療用携帯型装置および血糖測定システムのためのテープカセット

本発明は、医療用携帯型装置1のためのテープカセットに関し、該テープカセット5は、機能要素として、ヒトまたは動物の体液の試料を分析するための試験領域8および/またはランセット7を持つ担体テープ6を備え、該担体テープ6は、使用中にテープカセット5の摩擦点12,14と通って摺動する。本発明によると、少なくとも1つの摩擦点14,12は、摩擦を減少するためにフッ素重合体製の表面からなる。さらに、本発明は、機能要素として、体液試料を分析するための試験領域8および/またはランセット7を持つ担体テープ6と、機能要素7,8を連続的に使用位置に移動可能な輸送機構とを備えた携帯型装置1を有する血糖測定システムであって、担体テープ6がフッ素重合体製の表面を有する、少なくとも1つの摩擦点14,12を通って摺動する血糖測定システムに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の序文に特定された特徴を有するテープカセットに関する。
【背景技術】
【0002】
この型式のテープカセットは、欧州特許出願公開第1424040号明細書から既知である。既知のテープカセットの担体テープは、機能要素として体液試料を分析するための試験領域を持ち、使用時には、検体の有無または濃度、特にグルコース濃度を測定するために使用される測定装置に挿入される。この型式のテープカセットは、特に、ランセットの穿刺によって得た体液試料、通常は血液または間質液のグルコース濃度の測定を毎日複数回実施しなければならない糖尿病患者にとって必要である。
【0003】
また、試験領域とランセットとの両方を機能要素として持つ担体テープを有するテープカセットも既知である。この型式のテープカセットは、体液試料の測定と試料を得るためのランセットでの穿刺との両方を実施するために使用可能である統合型の携帯型装置を意図している。しかしながら、より簡素な血糖測定システムは、しばしば2つの別個の携帯型装置、すなわち穿刺装置および測定装置を備える。この型式の穿刺装置において、テープカセットの担体テープが機能要素としてランセットを持つものが知られている。
【0004】
より高いユーザの利便性のため、特に糖尿病患者によって使用される医療用携帯型装置においてテープの輸送が可能な限り容易であることが重要である。より簡素な携帯型装置において、テープの輸送はユーザによって手動で実施されるが、より複雑な携帯型装置は、担体テープの機能要素を使用位置に連続して配置するために電気モータを有する。
【0005】
したがって、本発明の目的は、医療用携帯型装置の担体テープの輸送を簡素化可能な方法を考案することである。
【発明の概要】
【0006】
この目的は、請求項1に特定された特徴を有するテープカセットにより達成される。さらなる有利な発展形は、従属請求項の主題である。また、この目的は、請求項10に特定された特徴を有する血糖測定システムによって達成される。
【0007】
本発明によると、使用時に担体テープがここを通って滑走する、少なくとも1つの摩擦点は、摩擦を減少させるためにフッ素重合体製の表面を有する。驚くべきことに、この単純な手段は、テープの摩擦を著しく減少できる。
【0008】
テープの誘導を減少した巻き角度に変更すること、または摩擦点に対する担体テープの圧力を減少すること、あるいは摩擦特性に関して担体テープの材料を最適化することによって摩擦の減少を追求する代わりに、本発明はまったく異なる手法を採用する。テープカセットまたはその目的にしたがってテープカセットが挿入される医療用携帯型装置の摩擦点の表面において、有利な様式に摩擦を減少するためにフッ素重合体を供することができる。フッ素重合体は、たとえば被覆の形態、特にニスまたはフィルムとして適用可能である。しかしながら、またそれぞれの要素を全体的にフッ素重合体で製造すること、または2要素の射出成形法で別のプラスチック材料と組み合わせてフッ素重合体を加工することも可能である。
【0009】
本発明は、テープの誘導または機械的輸送機構を変更することなく、比較的単純な手段によってテープの摩擦の著しい減少が達成可能であるため有利である。手動操作される携帯型装置において、ユーザはテープを輸送するために著しく小さい力を用いることを要し、これはユーザの利便性を向上させる。電気モータを有する装置において、低電力モータ、つまりより小さく安価なモータが使用可能である。さらに、モータのエネルギー消費が減少するため、より小さく軽量で安価な電池で足りる。
【0010】
本発明によると、フッ素重合体はすべての有機および有機シリコンポリマーを含むことが理解され、そのモノマーは共有結合フッ素を含有し、これは純粋で、または混合物として、または合金、あるいはフッ素を含有しない別のポリマーを含む共重合体で供される。本発明で使用されるフッ素重合体は、好ましくは少なくとも10重量%、たとえば10〜40重量%の、たとえばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)を含むことができる。フッ素重合体として、ポリプロピレンとPFTEとの混合物が特に好ましい。
【0011】
ヒトまたは動物の体液試料を分析するための試験領域は、通常、たとえば検体濃度の光度定量のための高感度検出試薬を含む。したがって、体液試料を分析するための機能要素として試験領域を持つ担体テープを有するテープカセットは、通常、未使用の試験領域が湿気により悪影響を受けないように密閉型ハウジングを有する必要がある。密閉部が供されたこの型式のカセットのテープの出口開口部は、実質的な摩擦源である。したがって、本発明は、カセットハウジングのテープの出口開口部に配置された摩擦点において特に有利な様式で使用可能である。テープの出口開口部は、フッ素重合体製の表面からなる、たとえば、特にゴム状シールリップであるシールリップにより密閉可能である。フッ素重合体製の表面は、ニスとして適用可能である。また、フッ素重合体含有エラストマーをシールリップの材料として使用することも可能である。
【0012】
本発明のさらなる詳細および利点を添付の図面を参照して実施の形態により説明する。本工程において説明した特徴は、単独または組み合わせにより請求項の主題となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】グルコース濃度を測定するための携帯型装置の例示的実施の形態を示す。
【図2】図1に示した携帯型装置のためのテープカセットを示す。
【図3】テープカセットのテープ出口開口部の例示的実施の形態の詳細図を示す。
【図4】テープ出口開口部の別の例示的実施の形態を示す。
【図5】テープカセットのテープ出口開口部でのテープの摩擦を減少する機構の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、ヒトの体液試料の検体濃度を測定するための医療用携帯型装置1の例示的実施の形態を示す。この型式の携帯型装置1は、血液または間質液試料のグルコース濃度を測定するために、特に糖尿病患者によって使用される。
【0015】
携帯型装置1は装置開口部2を有し、これに対して、体液試料を引き込むために体部が押圧される。測定結果は、たとえば液晶表示部である表示設備3に表示される。測定装置1の操作のために、操作要素4がボタンの形状で設けられる。
【0016】
図1に示された測定装置1はその裏側に区画を有し、この中に図2に示されたテープカセット5が挿入可能である。測定装置1およびテープカセット5は、共に血糖測定システムを形成する。テープカセット5は、機能要素として、穿刺により体液試料を得るためのランセット7と、体液試料を分析するための試験領域8とを持つ担体テープ6を含む。測定装置1は、装置開口部2に対して接触する体部を穿刺するためにランセット7を使用可能にし、生成された穿刺傷から生じた体液試料を引き込み、光度手段により分析するために試験領域8を使用可能にするように、機能要素7,8を使用位置に連続的に位置決めする、図示しないテープ運搬設備を含む。試験領域8は、試料との接触により試験領域8の濃度依存性の変色をもたらす検出試薬を含む。この変色は、測定装置1に含まれる測定ユニットにより測定および分析可能である。
【0017】
テープ輸送中に、たとえばポリエステル製の担体テープ6は、テープカセット5および/また通常は測定装置1の種々の摩擦点を通って滑走する。図2に示された例示的実施の形態において、摩擦点は、たとえばカセットハウジング10のテープ出口およびテープ入口開口部9、ならびに担体テープ6が沿って滑走するテープ案内要素11上にもたらされる。摩擦を減少するために、図示された例示的実施の形態の摩擦点は、フッ素重合体製の表面を有する。フッ素重合体は、たとえば被覆でよく、特にニスまたはフィルム/箔でよい。また、フッ素重合体をカセットハウジングの製造中に2要素の射出成形法において適用することも可能である。
【0018】
図示された実施の形態において、担体テープ6は、カセットハウジング10からの出口と入口との間で180°ねじられる。これにより、ランセット7の方向は、穿刺のために装置開口部2に対して配列可能となる。しかしながら、担体テープ6をねじらずに案内することも可能である。
【0019】
テープの摩擦のかなりの部分は、担体テープ6が通って案内されるカセットハウジング10の開口部9の領域において生じる。試験領域8は感湿性があるため、担体テープ6または少なくとも未使用の機能要素8を有するテープ部分は、密閉型ハウジングまたはカセットハンジング10の密閉部分に配置され、このために、テープ出口開口部9には図3に示されるような密閉要素12が設けられ、これは好ましくはエラストマー材料製のシールリップとして設計される。この型式の密閉要素は、特に機能要素7,8がこれを通過して案内される際にきわめて高い摩擦をもたらし得る。したがって摩擦を減少するために、密閉要素12は、図示された実施の形態においてフッ素重合体製の表面を有する。フッ素重合体は、被覆、特にニスとして適用可能である。また、密閉要素12をフッ素重合体エラストマー製にすることも可能である。
【0020】
図3は、テープカセット1のテープ出口開口部9の詳細図を示す。摩擦を減少するために、試験領域8は密閉要素12から外方を向くように担体テープ6側に配置されている。これにより、比較的粗い試験領域8は、カセットハウジング10により形成された摩擦点14に沿って滑走可能であり、フッ素重合体製の表面を有する一方で、テープの比較的滑らかな裏側は密閉要素12から形成された摩擦点に沿って滑走する。密閉要素12は、テープ出口開口部9を被覆する、たとえば箔である被覆要素15に取り付けられる。たとえばアルミニウム、プラスチックまたは混合物製の被覆要素15は、図示しないばね要素19の力にさらされ、その端部に配置された密閉要素12をばね様式で担体テープ6に対して押圧する。
【0021】
カセットハウジング10の摩擦点14には、たとえば2要素の射出成形法により、フッ素重合体の表面を設けることができる。2要素の射出成形法は、摩擦点を形成するために、たとえば空洞を形成する取り外し可能な芯部をカセットハウジング10用の射出成形型に挿入することにより実施可能である。空洞は射出成形中に満たされ、たとえばドイツ、ノイスのダイニオン社から製造可能なポリプロピレンと20重量%のPTFE微粒子との混合物を使用できる。第2の射出のために、取り外し可能な芯部は交換され、ハウジングの射出成形はPTFEの分留を含まないポリプロピレンにより完了する。
【0022】
また摩擦点14は、PTFE箔の後部での射出により生成することもできる。
【0023】
フッ素重合体の表面がニスとして適用される場合、ニスのより良好な接着を得るために、プラズマ処理、特に大気プラズマまたはその他の好適な活性化方法により、たとえばポリプロピレンのハウジングであるカセットハウジング10を前処理することが有利である。PTFE含有ニスは、ハウジングまたは密閉要素12の摩擦点に対して好ましい。好適なニスは、たとえばドイツ、ウィラーバッチのフックス・ルブリテック社からグライトモSFL9062KおよびグライトモSFL9460K1の商品名で市販されている。
【0024】
テープカセット5のテープ入口またはテープ出口開口部9の別の例示的実施の形態が図4に示されており、本例示的実施の形態は、密閉要素が被覆要素15ではなく、カセットハウジング10に取り付けられている点で図3の例示的実施の形態と相異する。このため、機能要素7,8は被覆要素15に面するように担体テープ6の他方側に配置される。本例示的実施の形態において、被覆要素15は担体テープ6に対して接触して摩擦点を形成するため、被覆要素15もまたフッ素重合体製の表面を有する。被覆要素15は、フッ素重合体がたとえばPTFE含有ニスであるニスとして適用される、たとえばアルミニウム箔でよい。ニスの接着を向上するために、被覆要素15は、ニスの適用前に、たとえばプラズマ処理などで活性化することができる。
【0025】
図5は、テープカセット5のテープ出口開口部9において、テープ摩擦のさらなる減少を達成するために使用可能な機構の概略図を示す。図5に示された機構は、担体テープ6が被覆要素15によってテープ出口開口部9の密閉部12に対して押圧される押圧力をテープ輸送機構に連結された作動要素16によってテープ輸送中に間欠的に減少させ、被覆要素15に作用するばね要素19を上昇することによってテープ出口開口部9を被覆する被覆要素15への負荷を間欠的に減少する。作動要素16は、必要に応じて作動される作動装置により移動される。たとえばスライダまたはプランジャでよい。好ましくは、作動要素16は、たとえばリンク動作によって装置のテープ輸送要素により駆動される。図5は、図5に示された矢印の方向に沿って可動であり、案内要素18により工程中に案内される測定装置1の駆動要素17を概略的に示す。この種の動作において、作動要素16は駆動要素17の表面上の制御曲線に追随するため、ばね要素19は間欠的に上昇し、よってテープの摩擦が減少する。
【0026】
動作要素16は、試料の取り込みまたは穿刺傷の生成のために、担体テープ6をその長手方向に巻き取ることによって移動するテープ輸送設備に連結するか、または担体テープ6を図1に示された装置ハウジング2に対してテープの長手方向に横断するように移動するために使用される輸送機構に連結することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 携帯型装置/測定装置
2 装置開口部
3 表示設備
4 ボタン
5 テープカセット
6 担体テープ
7 ランセット
8 試験領域
9 テープ出口開口部
10 カセットハウジング
11 テープ案内要素
12 密閉要素
14 摩擦点
15 被覆要素
16 作動要素
17 駆動要素
18 案内要素
19 ばね要素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用携帯型装置(1)のためのテープカセットであって、該テープカセット(5)が、機能要素としてヒトまたは動物の体液の試料を分析するための試験領域(8)および/またはランセット(7)をもつ担体テープ(6)を含み、該担体テープ(6)が使用中にテープカセット5の摩擦点(12,14)を通って滑走するテープカセットにおいて、少なくとも1つの摩擦点(14,12)が、摩擦を減少するために、フッ素重合体製の表面を備えることを特徴とするテープカセット。
【請求項2】
前記フッ素重合体が、PTFEまたはPVDFを含有することを特徴とする請求項1記載のテープカセット。
【請求項3】
前記フッ素重合体が、被覆であることを特徴とする請求項1または2記載のテープカセット。
【請求項4】
前記フッ素重合体が、ニスとして適用されることを特徴とする請求項3記載のテープカセット。
【請求項5】
前記フッ素重合体が、箔として適用されることを特徴とする請求項3記載のテープカセット。
【請求項6】
前記フッ素重合体が、2要素の射出成形法で適用されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のテープカセット。
【請求項7】
フッ素重合体製の表面からなる前記摩擦点(14,12)が、カセットハウジング(10)のテープ出口開口部(9)に配置されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のテープカセット。
【請求項8】
フッ素重合体製の表面からなる前記摩擦点(14,12)が、密閉要素(12)、特にシールリップにより形成されることを特徴とする請求項7記載のテープカセット。
【請求項9】
前記摩擦点が、テープ出口開口部(9)を被覆する被覆要素(15)により形成されることを特徴とする請求項7または8記載の装置。
【請求項10】
体液の試料を分析するための試験領域(8)および/またはランセット7を機能要素としてもつ担体テープ(6)と、該機能要素(7,8)を連続的に使用位置に移動するために使用可能な輸送機構とを含む携帯型装置1を有し、前記担体テープ(6)が摩擦点(14,12)を通って滑走する血糖測定システムであって、少なくとも1つの摩擦点(14,12)が、摩擦を減少するために、フッ素重合体製の表面を備えることを特徴とする血糖測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−509130(P2011−509130A)
【公表日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−541712(P2010−541712)
【出願日】平成20年12月20日(2008.12.20)
【国際出願番号】PCT/EP2008/010982
【国際公開番号】WO2009/086907
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(501205108)エフ ホフマン−ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト (285)
【Fターム(参考)】