説明

医療用注入具および医療用注入具を用いた投与システム

【課題】プレフィルドシリンジから患者に必要な投与量を計量する際に、計算をする手間や計算ミスの発生を防止することができる医療用注入具およびそれを用いた投与システムを提供すること。
【解決手段】第1のシリンジ2aは、薬液Lが予め収納された例えば第2のシリンジ2bに接続される。第1のシリンジ2aは、口部211が形成された外筒21と、第2のシリンジ2bに接続される第2のポート6を有するコネクタ3とを備える。第2のポート6は、針管61と、針管61の周囲を覆う弾性部材で構成された被覆部材62と、筒状をなして被覆部材62の周囲を覆う保護部材63とを備え、第2のポート6が第2のシリンジ2bに装着されていない初期状態において、被覆部材62は、針管61をシールしており、第2のポート6が第2のシリンジ2bに装着された装着状態においては、針管61が被覆部材62を貫通して、第2のシリンジ2bと外筒21とが連通する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用注入具および医療用注入具を用いた投与システムに関する。
【背景技術】
【0002】
予め薬液が収納されたプレフィルドシリンジが知られている(例えば、特許文献1参照)。このプレフィルドシリンジは、液量を示す目盛りを有する外筒と、外筒内に挿入されたガスケットと、このガスケットに連結されたプランジャロッドとを有するシリンジと、外筒とガスケットとで囲まれる空間に密封状態で収納された薬液とを備えている。プレフィルドシリンジでは、それが使用される患者に応じて投与量が異なるので、その投与量に相当した充填量の薬液が充填されている。
【0003】
例えば患者への薬液の投与量が11.6mLであった場合には、5mLの薬液が収納されているプレフィルドシリンジ(以下「5mLシリンジ」と言う)2本と、3mLの薬液が収納されているプレフィルドシリンジ(以下「3mLシリンジ」と言う)1本とを用意する。その際に、各5mLシリンジから合計10mLの薬液を用意し、残りの不足分、すなわち、1.6mLを3mLシリンジから用意しなければならない。ここで、3mLシリンジから1.4mLの薬液を廃棄するという計算をする必要がある。そして、この計算を行なう際に、計算ミスが生じるおそれがあった。また、計算の手間もかかってしまうという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−097640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、プレフィルドシリンジから、患者に必要な投与量を計量する際に、計算をする手間や計算ミスの発生を防止することができる医療用注入具および医療用注入具を用いた投与システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記(1)〜(9)の本発明により達成される。
(1) 薬液が収納され、該薬液が排出される排出部と、該排出部を封止する封止部材とを有する薬液収納容器に接続され、
先端部に口部が形成され、前記薬液を収納可能な液室を有する外筒と、
前記口部に接続される口部接続部と、前記薬液収納容器の前記排出部に接続される接続ポートとを有するコネクタとを備える医療用注入具であって、
前記接続ポートは、針先を有する針管と、該針管の周囲を覆う弾性部材で構成された被覆部材と、筒状をなして前記被覆部材の周囲を覆う保護部材とを備え、
前記コネクタが前記薬液収納容器に装着されていない初期状態において、前記接続ポートの前記針先を覆う前記被覆部材は、前記針先を外気と遮断しており、
前記コネクタが前記薬液収納容器に装着された装着状態においては、前記接続ポートの前記保護部材の内部に前記排出部が配置され、前記被覆部材を貫通した前記針先が前記封止部材を穿刺し、前記薬液収納容器と前記外筒とが連通することを特徴とする医療用注入具。
【0007】
(2) 前記排出部は、その形状が管状をなす部分であり、
前記保護部材は、前記装着状態で前記排出部に嵌合する上記(1)に記載の医療用注入具。
【0008】
(3) 前記保護部材と前記排出部とが嵌合することにより、前記装着状態で前記被覆部材が収縮した際に該被覆部材が元の形状に戻ろうとする復元力によって、前記コネクタと前記薬液収納容器とが分解してしまうのが防止される上記(2)に記載の医療用注入具。
【0009】
(4) 前記コネクタは、前記接続ポートと異なる位置に配置され、前記外筒内に充填された前記薬液が排出される排出ポートと、
前記薬液の前記接続ポートから前記外筒への流れと、前記薬液の前記外筒から前記排出ポートへの流れを切り換える切換部材とを有する上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の医療用注入具。
【0010】
(5) 前記切換部材は、回転可能に支持されたレバーを有し、該レバーを回転操作することにより前記薬液の流れを切り換えるよう構成されている上記(4)に記載の医療用注入具。
【0011】
(6) 前記切換部材は、押圧可能に支持されたボタンを有し、該ボタンを押圧操作することにより前記薬液の流れを切り換えるよう構成されている上記(4)に記載の医療用注入具。
【0012】
(7) 薬液が収納され、該薬液が排出される排出部と、該排出部を封止する封止部材とを有する薬液収納容器と、
前記薬液収納容器に接続される、上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の医療用注入具とを備えることを特徴とする医療用注入具を用いた投与システム。
【0013】
(8) 薬液が収納され、該薬液が排出される排出部と、該排出部を封止する封止部材とを有する薬液収納容器と、
先端部に口部が形成され、前記薬液を収納可能な液室を有する外筒と、前記口部に接続される口部接続部と、前記薬液収納容器に接続される接続ポートとを有するコネクタとを備える医療用注入具とを備える医療用注入具を用いた投与システムであって、
前記接続ポートは、針先を有する針管と、筒状をなして前記針管の周囲を覆う保護部材とを備え、
前記コネクタが前記薬液収納容器に装着された装着状態においては、前記接続ポートの前記保護部材の内部に前記排出部が配置され、前記針先が前記封止部材を穿刺し、前記薬液収納容器と前記外筒とが連通することを特徴とする医療用注入具を用いた投与システム。
【0014】
(9) 前記薬液収納容器は、プレフィルド医療用注入具である上記(7)または(8)に記載の医療用注入具を用いた投与システム。
【0015】
また、本発明の医療用注入具では、前記薬液収納容器は、前記薬液の収納量が同じまたは異なるものが複数用意されており、
前記複数の薬液収納容器を前記コネクタに順に接続して用いられるのが好ましい。
【0016】
また、本発明の医療用注入具では、前記針先は、前記保護部材の長手方向の中央部よりも前記薬液収納容器に接続される側に位置するのが好ましい。
【0017】
また、本発明の医療用注入具では、前記排出ポートは、前記外筒と平行に配置され、前記接続ポートは、前記外筒に対し直交する方向に配置されているのが好ましい。
【0018】
また、本発明の医療用注入具では、前記接続ポートは、前記外筒と平行に配置されているのが好ましい。
【0019】
また、本発明の医療用注入具では、前記外筒内で摺動し得るガスケットと、
前記ガスケットを移動操作するプランジャとをさらに備えるのが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、薬液収納容器から廃棄すべき量を予め計算しておくのを省略することができ、よって、当該計算を行なう際の計算ミスを確実に防止することができる。また、計算を行なう手間も省くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の医療用注入具を用いた投与システムの第1実施形態を示す部分縦断面図である。
【図2】図1に示す医療用注入具を用いた投与システムの使用過程を順に示す部分縦断面図である。
【図3】本発明の医療用注入具を用いた投与システム(第2実施形態)の使用過程を順に示す部分縦断面図である。
【図4】本発明の医療用注入具を用いた投与システム(第2実施形態)の使用過程を順に示す部分縦断面図である。
【図5】本発明の医療用注入具を用いた投与システム(第3実施形態)の使用過程を順に示す部分縦断面図である。
【図6】本発明の医療用注入具を用いた投与システム(第3実施形態)の使用過程を順に示す部分縦断面図である。
【図7】図5中のコネクタの斜視図である。
【図8】図6中のコネクタの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の医療用注入具および医療用注入具を用いた投与システムを添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0023】
<第1実施形態>
図1は、本発明の医療用注入具を用いた投与システムの第1実施形態を示す部分縦断面図、図2は、図1に示す医療用注入具を用いた投与システムの使用過程を順に示す部分縦断面図である。なお、以下では、説明の都合上、図1、図2中の左側を「左」または「基端」、右側を「右」または「先端」と言う。
【0024】
図1に示す投与システム(医療用注入具を用いた投与システム)1は、薬液Lが充填されていない医療用注入具である第1の薬液収納容器(以下「第1のシリンジ」と言う)2aと、薬液Lが予め収納されたプレフィルドシリンジである第2の薬液収納容器(以下「第2のシリンジ」と言う)2b、2c、2dとを備えている。図2に示すように、この投与システムは、第1のシリンジ2aに第2のシリンジ2b〜2dを順に接続して用いられる。そして、各接続状態で、第2のシリンジ2b〜2dから第1のシリンジ2aに薬液Lが充填される。以下、各部の構成について説明する。
【0025】
第1のシリンジ2aは、第1のコネクタ3を備えている。一方、第2のシリンジ2b〜2dは、それぞれ、第1のコネクタ3に接続される第2のコネクタ4を備えている。第1のシリンジ2aと第2のシリンジ2b〜2dとは、第1のコネクタ3、第2のコネクタ4の構成が異なること以外は、ほぼ同じ構成であるため、以下、第1のシリンジ2aについて代表的に説明する。
【0026】
図1、図2に示すように、第1のシリンジ2aは、シリンジ外筒(以下「外筒」と言う)21と、外筒21内で摺動し得るガスケット22と、ガスケット22を移動操作するプランジャ23とを有している。
【0027】
外筒21は、筒状または管状の部材で構成され、その内部が薬液Lが収納される液室となる。また、外筒21の先端部には、内径および外径が縮径した口部211が設けられている。この口部211は、薬液流入出口となる。なお、口部211は、その外径が先端方向に向かって漸減したテーパ状をなす。
【0028】
外筒21の基端外周には、板状のフランジ212が一体的に形成されている。プランジャ23を外筒21に対し相対的に移動操作する際などには、このフランジ212に指を掛けて操作を行うことができる。
【0029】
また、外筒21の外周面には、薬液Lの液量を示す目盛り213が、ラベル印刷のものに限定されず、例えば、予め目盛り213が印刷されたラベルを貼付することにより設けられている。これにより、第1のシリンジ2a内の薬液Lの液量を把握することができる。
【0030】
外筒21の構成材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボネート、アクリル樹脂、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリアミド(例えば、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン12)のような各種樹脂が挙げられるが、その中でも、成形が容易であるという点で、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリエステル、ポリ−(4−メチルペンテン−1)のような樹脂が好ましい。なお、外筒21の構成材料は、内部の視認性を確保するために、実質的に透明である。
【0031】
このような外筒21内には、ガスケット22が収納されている。ガスケット22は、円柱状の弾性体で構成され、その外周面221が外筒21の内周面214に対し密着しつつ摺動することで、気密性や液密性をより確実に保持することができる。
【0032】
ガスケット22の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴムのような各種ゴム材料や、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、オレフィン系、スチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの混合物等の弾性材料が挙げられる。
【0033】
ガスケット22の基端部には、当該ガスケット22を外筒21内で長手方向に移動操作するプランジャ23が、例えば螺合により連結されている。プランジャ23は、棒状の本体部231と、本体部231の基端に形成されたフランジ状の指当て部232とを有している。この指当て部232を指等で押圧することによりガスケット22を先端方向へ移動操作することができ、指当て部232を引張ることによりガスケット22を基端方向へ移動操作することができる。
【0034】
プランジャ23の構成材料としては、特に限定されず、例えば、外筒21の構成材料と同じ構成材料を用いることができる。
【0035】
このような構成の第1のシリンジ2a、第2のシリンジ2b〜2dの薬液Lの収納量の一例について説明する。
【0036】
本実施形態では、第2のシリンジ2bおよび2cは、それぞれ、外筒21とガスケット22とで囲まれた空間に5mLの薬液Lが予め充填されたものとなっている。
【0037】
また、第2のシリンジ2dは、外筒21とガスケット22とで囲まれた空間に3mLの薬液Lが予め充填されたものとなっている。
【0038】
そして、第2のシリンジ2b〜2dでは、いずれも、薬液Lは、口部211から排出される。
【0039】
そして、第1のシリンジ2aは、初期状態、すなわち、第2のシリンジ2b〜2dに未だ接続されてない未接続状態では空の状態であるが、外筒21とガスケット22とで囲まれた空間には、第2のシリンジ2b〜2dの口部211から排出された薬液Lを十分に充填することができるものとなっている。
【0040】
薬液Lとしては、通常注射剤として使用される薬剤であれば何でもよく、例えば、抗体等の蛋白質性医薬品、ホルモン等のペプチド性医薬品、核酸医薬品、細胞医薬品、血液製剤、各種感染症を予防するワクチン、抗がん剤、麻酔薬、麻薬、抗生物質、ステロイド剤、蛋白質分解酵素阻害剤、ヘパリン、ブドウ糖等の糖質注射液、塩化ナトリウムや乳酸カリウム等の電解質補正用注射液、ビタミン剤、脂肪乳剤、造影剤等が挙げられる。
【0041】
図1に示すように、第1のシリンジ2aには、第1のコネクタ3が装着される。第1のコネクタ3は、第1のシリンジ2aの口部211に接続される第1のポート(口部接続部)5と、第2のシリンジ2b〜2dの各第2のコネクタ4が順に接続される第2のポート(接続ポート)6とを有している。
【0042】
第1のポート5は、筒状をなし、その内径が先端方向に向かって漸減したテーパをなす部分である。第1のポート5のテーパ角度は、外筒21のテーパ状をなす口部211のテーパ角度と同じである。これにより、第1のポート5を外筒21の口部211に接続した際、第1のポート5と口部211とが容易に嵌合することができ、よって、その接続が確実に行なわれるとともに、液密性も維持される。
【0043】
第1のポート5の先端側には、第2のポート6が配置されている。第2のポート6は、針管61と、針管61の周囲を覆う被覆部材62と、被覆部材62の周囲を覆う保護部材63とで構成されている。
【0044】
針管61は、管体で構成され、その先端に鋭利な針先611を有している。また、針管61は、その基端部612が保護部材63に支持、固定されており、第1のポート5と連通している。そして、第2のポート6と第2のコネクタ4とを接続すると、後述する第2のコネクタ4の封止部材42を針先611で刺通することができる(例えば図2参照)。これにより、第1のシリンジ2aの外筒21内と、第2のシリンジ2bの外筒21内とが連通する。
【0045】
針管61の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、ステンレス鋼、アルミニウムまたはアルミニウム合金、チタンまたはチタン合金のような金属材料等が挙げられる。
【0046】
針管61の外周側には、被覆部材62が配置されている。また、被覆部材62の基端部621は、保護部材63に支持、固定されている。この被覆部材62は、袋状をなし、図1に示す未接続状態(初期状態)で針管61を針先611まで被包する鞘として機能し、針管61の針先611を外気から遮断することができる弾性体である。そして、第2のポート6と第2のコネクタ4とを接続すると、被覆部材62は、第2のコネクタ4の封止部材42とともに針先611で刺通される(例えば図2参照)。
【0047】
被覆部材62の構成材料としては、特に限定されず、例えば、ガスケット22の構成材料と同じ構成材料を用いることができる。
【0048】
さらに、被覆部材62の外周側には、保護部材63が配置されている。保護部材63は、筒体で構成され、その内側で針管61を被覆部材62ごと保護することができる。
【0049】
この保護部材63は、その先端側の内周部に嵌合部としてのテーパ部631が形成されている。テーパ部631は、保護部材63の内径が先端方向に向かって漸増したテーパ状をなす部分である。そして、テーパ部631のテーパ角度は、第2のシリンジ2b〜2dのテーパ状をなす、嵌合部としての機能を有する口部211(排出口側テーパ部)、すなわち、後述する第2のコネクタ4の本体部41のテーパ角度と同じである。これにより、第2のポート6と第2のコネクタ4とを接続した際、保護部材63の内部に第2のコネクタ4の本体部41が配置され、これらが容易かつ確実に嵌合することができ、よって、その接続が確実に行なわれるとともに、液密性も確実に維持される。
【0050】
また、針管61の針先611は、保護部材63の長手方向の中央部よりも第2のシリンジ2b〜2dに接続される先端側、具体的にはテーパ部631の途中に位置している。これにより、針先611が先端側に位置することとなり、第2のポート6と第2のコネクタ4とを接続した際、針先611で第2のコネクタ4の封止部材42を素早く刺通することができる。
【0051】
なお、保護部材63は、本実施形態では第1のポート5と一体的に形成されたものであるが、これに限定されず、例えば、第1のポート5と別体で構成し、当該別体を第1のポート5に連結したものであってもよい。
【0052】
保護部材63および第1のポート5の構成材料としては、特に限定されず、例えば、外筒21の構成材料と同じ構成材料を用いることができる。
【0053】
このような構成の第2のポート6は、第1のポート5の延長線上で外筒21と平行に配置されている。このような配置により、第2のポート6と第2のコネクタ4とを接続する際、互いに反対方向から接近させてその接続操作を行なうことができ、よって、操作性に優れる。
【0054】
図1に示すように、第2のシリンジ2b〜2dには、それぞれ、第2のコネクタ4が装着される。これらの第2のコネクタ4は、同じ構成であるため、以下、1つの第2のコネクタ4について代表的に説明する。
【0055】
第2のコネクタ4は、外筒21の口部211に嵌合する筒状の本体部41と、本体部41の内側に設けられた膜状または薄板状の封止部材42とで構成されている。
【0056】
本体部41は、その内径および外径がそれぞれ図1中左方向に向かって漸減したテーパをなす部分である。本体部41のテーパ角度は、外筒21のテーパ状をなす口部211のテーパ角度と同じである。これにより、本体部41と口部211とが容易に嵌合する。
【0057】
本体部41の構成材料としては、特に限定されず、例えば、外筒21の構成材料と同じ構成材料を用いることができる。
【0058】
封止部材42は、その縁部が本体部41の内周部に固定されている。この封止部材42は、口部211の端面に密着して当該口部211を液密に封止するものである。封止部材42により、口部211から薬液Lが不本意に漏出するのが防止される。
【0059】
また、封止部材42は、接続状態で第1のコネクタ3の第2のポート6の針管61により刺通される。この刺通した針管61は、針先611が封止部材42を越え、薬液Lを第1のシリンジ2a側に導入することができる。
【0060】
封止部材42の構成材料としては、特に限定されず、例えば、ガスケット22の構成材料と同じ構成材料を用いることができる。
【0061】
次に、投与システムの使用方法について、図1、図2を参照しつつ説明する。ここでは、第1のシリンジ2aに11.6mLの薬液Lを充填する操作を一例に挙げる。
【0062】
[1] 図1に示すように、第1のシリンジ2aと第2のシリンジ2b〜2dとが揃った投与システムを用意する。第1のシリンジ2aには、外筒21の口部211に第1のコネクタ3が予め装着されている。同様に、第2のシリンジ2b〜2dには、それぞれ、外筒21の口部211に第2のコネクタ4が予め装着されている。
【0063】
[2] 次に、図2(a)に示すように、第1のシリンジ2aの第1のコネクタ3の第2のポート6に、その右側から第2のシリンジ2bの第2のコネクタ4を接続する操作を行なう。この操作により、第2のポート6の被覆部材62は、第2のコネクタ4の封止部材42により左側へ押圧されて蛇腹状に収縮し、遂には、針管61により封止部材42とともに刺通される。これにより、針管61が第2のシリンジ2bの外筒21の口部211内に突出し、よって、第1のシリンジ2aと第2のシリンジ2bとが連通する。
【0064】
また、このとき、第1のコネクタ3の第2のポート6の保護部材63と、第2のコネクタ4の本体部41とが嵌合する。この嵌合により、前記収縮した被覆部材62が元の形状に戻ろうとする復元力によって、第1のコネクタ3と第2のコネクタ4とが不本意に分解してしまうのが確実に防止される。
【0065】
[3] 次に、第1のシリンジ2aのプランジャ23を左側へ引張るか、または、第2のシリンジ2bのプランジャ23を左側へ押圧する。これにより、第2のシリンジ2bから排出された薬液Lが、第1のシリンジ2aへ注入される。なお、この操作は、第2のシリンジ2bのガスケット22が停止する、すなわち、それ以上の左側への移動が不可能となる位置まで行なわれる。これにより、第1のシリンジ2a内に5mLの薬液Lを確実に充填することができる。
【0066】
[4] 次に、第1のシリンジ2aから第2のシリンジ2bを離脱させ、この第1のシリンジ2aの第1のコネクタ3の第2のポート6に、その右側から第2のシリンジ2cの第2のコネクタ4を接続する操作を行なう。この操作により、前記と同様に、第1のシリンジ2aと第2のシリンジ2cとが連通する。
【0067】
[5] 次に、第1のシリンジ2aのプランジャ23を左側へ引張るか、または、第2のシリンジ2cのプランジャ23を左側へ押圧する。これにより、第2のシリンジ2cから排出された薬液Lが、第1のシリンジ2aへ注入される。なお、この操作は、第2のシリンジ2cのガスケット22が停止する位置まで行なわれる。これにより、第1のシリンジ2a内にさらに5mLの薬液Lを確実に充填することができ、結果、第1のシリンジ2aは、10mLの薬液Lが充填された状態となる。
【0068】
[6] 次に、第1のシリンジ2aから第2のシリンジ2cを離脱させ、この第1のシリンジ2aの第1のコネクタ3の第2のポート6に、その右側から第2のシリンジ2dの第2のコネクタ4を接続する操作を行なう。この操作により、前記と同様に、第1のシリンジ2aと第2のシリンジ2dとが連通する。
【0069】
[7] 次に、図2(b)に示すように、第1のシリンジ2aのプランジャ23を左側へ引張るか、または、第2のシリンジ2dのプランジャ23を左側へ押圧する。これにより、第2のシリンジ2dから排出された薬液Lが、第1のシリンジ2aへ注入される。なお、この操作は、第1のシリンジ2aの目盛り213を確認しつつ、当該第1のシリンジ2aでの薬液Lが目盛り213の「11.6mL」を示す位置Pにくるまで行なわれる。これにより、第1のシリンジ2a内には、11.6mLの薬液Lが充填されることとなる。
【0070】
また、第2のシリンジ2dから廃棄すべき量を予め計算しておくのを省略することができ、よって、当該計算を行なう際の計算ミスを確実に防止することができる。また、計算を行なう手間も省くことができる。
【0071】
<第2実施形態>
図3および図4は、それぞれ、本発明の医療用注入具を用いた投与システム(第2実施形態)の使用過程を順に示す部分縦断面図である。なお、以下では、説明の都合上、図3および図4中の上側を「上」、下側を「下」、左側を「左」、右側を「右」と言う。
【0072】
以下、これらの図を参照して本発明の医療用注入具および医療用注入具を用いた投与システムの第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0073】
本実施形態は、主にコネクタの構成が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0074】
図3、図4に示す投与システム1Aでは、第1のコネクタ3Aは、第3のポート(排出ポート)7と、切換部材8とをさらに有している。
【0075】
第3のポート7は、その形状が筒状をなし、第1のポート5および第2のポート6とそれぞれ異なる位置に配置されている。換言すれば、第3のポート7は、第1のポート5の延長線上に第1のシリンジ2aの外筒21と平行に配置され、第2のポート6は、第1のシリンジ2aの外筒21に対し直交する右方向に配置されている。このような配置により、第1のシリンジ2aと第3のポート7とが一直線上に配置されることとなり、よって、第3のポート7に接続された針体11をバッグ12のポート121に穿刺し易くなる。
【0076】
この第3のポート7は、第1のシリンジ2aの外筒21内に充填された薬液Lが排出される部分である。また、第3のポート7は、針体11を介して、バッグ12に接続されている。これにより、第3のポート7から排出された薬液Lをバッグ12内に混注することができる。
【0077】
切換部材8は、薬液Lが第2のポートから第1のポート5(外筒21)へ流れる図3に示す状態と、薬液Lが第1のポート5から第3のポート7へ流れる図4に示す状態とに切り換えるものである。この切換部材8は、円筒状をなす円筒部81と、円筒部81に挿入された円柱状の胴部82とを有している。
【0078】
円筒部81の外周部には、第1のポート5、第2のポート6、第3のポート7が前述したように配置されている。そして、第1のポート5、第2のポート6、第3のポート7は、それぞれ、円筒部81の内腔と連通している。
【0079】
胴部82は、円筒部81内に気密性または液密性をもって回動に支持されている。この胴部82は、第1のポート5、第2のポート6、第3のポート7に対応する流路821、822および823がT字状に形成されている。すなわち、90°の角度を隔てて胴部84の径方向に延在する3本の流路821、822および823が、胴部84の中心部付近にて互いに連通するように形成されている。
【0080】
また、胴部82には、その径方向外方に向けて突出したレバー83が形成されている。このレバー83を手指で把持し、トルクを加えて胴部82の回動操作を行なう。なお、本実施形態では、胴部82は、胴部82に対し360°自由に回動することができる構成となっているが、これに限定されず、例えば、胴部82に対する回動角度範囲が規制されていてもよい。
【0081】
そして、レバー83を介して胴部82を回動操作することにより、第1のポート5と第2のポート6と第3のポート7との連通パターンを選択することができる、すなわち、前述した図3に示す状態と図4に示す状態とを取り得る。
【0082】
図3に示す状態では、第1のポート5と第2のポート6とが、胴部82に形成された流路821および822を介して連通し、第3のポート7が胴部82の外周面で封止されて、第1のポート5および第2のポート6から遮断されている。これにより、第1のポート5と第2のポート6とが開通状態、第3のポート7が閉鎖状態となる。
【0083】
図4に示す状態では、第1のポート5と第3のポート7とが、胴部82に形成された流路822および823を介して連通し、第2のポート6が胴部82の外周面で封止されて、第1のポート5および第3のポート7から遮断されている。これにより、第1のポート5と第3のポート7とが開通状態、第2のポート6が閉鎖状態となる。
【0084】
このような構成の投与システム1Aでは、第1のシリンジ2aに所定の目的の量「11.6mL」の薬液Lが充填されるまでは、第1のコネクタ3Aは、図3に示す状態となっている。その後、第1のシリンジ2aから「11.6mL」の薬液Lをバッグ12に混注するときには、第1のコネクタ3Aを図4に示す状態にして、その混注操作を行なうことができる。
【0085】
<第3実施形態>
図5および図6は、それぞれ、本発明の医療用注入具を用いた投与システム(第3実施形態)の使用過程を順に示す部分縦断面図、図7は、図5中のコネクタの斜視図、図8は、図6中のコネクタの斜視図である。
【0086】
以下、これらの図を参照して本発明の医療用注入具および医療用注入具を用いた投与システムの第3実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0087】
本実施形態は、コネクタの切換部材の構成が異なること以外は前記第2実施形態と同様である。
【0088】
図5、図6に示す投与システム1Bでは、第1のコネクタ3Bは、切換部材8が円筒部81内に気密性または液密性をもって、その軸方向に沿って移動可能に支持された円柱状の胴部84を有するものである。
【0089】
胴部84は、その軸方向の途中の異なる2箇所にそれぞれ胴部84を貫通する、L字状の流路841と、直線状の流路842とが形成されている。
【0090】
また、図7、図8に示すように、胴部84には、その両端部にそれぞれ押圧ボタン85が形成されている。これら2つの押圧ボタン85のうちの一方の押圧することにより、第1のポート5と第2のポート6と第3のポート7との連通パターンを選択することができる、すなわち、薬液Lが第2のポートから第1のポート5へ流れる図5に示す状態と、薬液Lが第1のポート5から第3のポート7へ流れる図6に示す状態とに切り換えることができる。第1のコネクタ3Bでは、図5に示す状態と図6に示す状態とに切り換える際、押圧ボタン85を片手でワンタッチ操作することができ、その操作性に優れる。
【0091】
図5に示す状態では、第1のポート5と第2のポート6とが、胴部84に形成された流路841を介して連通し、第3のポート7が胴部84の外周面で封止されて、第1のポート5および第2のポート6から遮断されている。これにより、第1のポート5と第2のポート6とが開通状態、第3のポート7が閉鎖状態となる。
【0092】
図6に示す状態では、第1のポート5と第3のポート7とが、胴部84に形成された流路842を介して連通し、第2のポート6が胴部84の外周面で封止されて、第1のポート5および第3のポート7から遮断されている。これにより、第1のポート5と第3のポート7とが開通状態、第2のポート6が閉鎖状態となる。
【0093】
このような構成の投与システム1Bでは、前記投与システム1Aと同様に、第1のシリンジ2aに所定の目的の量「11.6mL」の薬液Lが充填されるまでは、第1のコネクタ3Bは、図5に示す状態となっている。その後、第1のシリンジ2aから「11.6mL」の薬液Lをバッグ12に混注するときには、第1のコネクタ3Bを図6に示す状態にして、その混注操作を行なうことができる。
【0094】
以上、本発明の医療用注入具および医療用注入具を用いた投与システムを図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、医療用注入具および医療用注入具を用いた投与システムを構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0095】
また、医療用注入具を用いた投与システムでは、第1のシリンジは、被覆部材が省略されたものであってもよい。
【0096】
また、第1のシリンジは、外筒とコネクタとが一体的に形成されたものであってもよい。これにより、第1のシリンジに生じるデッドボリュームをできる限り抑制することができる。
【0097】
また、第1のシリンジの口部とコネクタの第1のポートとの接続は、図示の構成では嵌合によるものであるが、これに限定されず、例えば、螺合によるもの、いわゆる「ロックアダプタ」によるものであってもよい。
【符号の説明】
【0098】
1、1A、1B 投与システム(医療用注入具を用いた投与システム)
2a 第1のシリンジ(第1の薬液収納容器)
2b、2c、2d 第2のシリンジ(第2の薬液収納容器)
21 外筒(シリンジ外筒)
211 口部
212 フランジ
213 目盛り
214 内周面
22 ガスケット
221 外周面
23 プランジャ
231 本体部
232 指当て部
3、3A、3B 第1のコネクタ(コネクタ)
4 第2のコネクタ
41 本体部
42 封止部材
5 第1のポート(口部接続部)
6 第2のポート(接続ポート)
61 針管
611 針先
612 基端部
62 被覆部材
621 基端部
63 保護部材
631 テーパ部
7 第3のポート(排出ポート)
8 切換部材
81 円筒部
82 胴部
821、822、823 流路
83 レバー
84 胴部
841、842 流路
85 押圧ボタン
11 針体
12 バッグ
121 ポート
L 薬液
P 位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液が収納され、該薬液が排出される排出部と、該排出部を封止する封止部材とを有する薬液収納容器に接続され、
先端部に口部が形成され、前記薬液を収納可能な液室を有する外筒と、
前記口部に接続される口部接続部と、前記薬液収納容器の前記排出部に接続される接続ポートとを有するコネクタとを備える医療用注入具であって、
前記接続ポートは、針先を有する針管と、該針管の周囲を覆う弾性部材で構成された被覆部材と、筒状をなして前記被覆部材の周囲を覆う保護部材とを備え、
前記コネクタが前記薬液収納容器に装着されていない初期状態において、前記接続ポートの前記針先を覆う前記被覆部材は、前記針先を外気と遮断しており、
前記コネクタが前記薬液収納容器に装着された装着状態においては、前記接続ポートの前記保護部材の内部に前記排出部が配置され、前記被覆部材を貫通した前記針先が前記封止部材を穿刺し、前記薬液収納容器と前記外筒とが連通することを特徴とする医療用注入具。
【請求項2】
前記排出部は、その形状が管状をなす部分であり、
前記保護部材は、前記装着状態で前記排出部に嵌合する請求項1に記載の医療用注入具。
【請求項3】
前記保護部材と前記排出部とが嵌合することにより、前記装着状態で前記被覆部材が収縮した際に該被覆部材が元の形状に戻ろうとする復元力によって、前記コネクタと前記薬液収納容器とが分解してしまうのが防止される請求項2に記載の医療用注入具。
【請求項4】
前記コネクタは、前記接続ポートと異なる位置に配置され、前記外筒内に充填された前記薬液が排出される排出ポートと、
前記薬液の前記接続ポートから前記外筒への流れと、前記薬液の前記外筒から前記排出ポートへの流れを切り換える切換部材とを有する請求項1ないし3のいずれかに記載の医療用注入具。
【請求項5】
前記切換部材は、回転可能に支持されたレバーを有し、該レバーを回転操作することにより前記薬液の流れを切り換えるよう構成されている請求項4に記載の医療用注入具。
【請求項6】
前記切換部材は、押圧可能に支持されたボタンを有し、該ボタンを押圧操作することにより前記薬液の流れを切り換えるよう構成されている請求項4に記載の医療用注入具。
【請求項7】
薬液が収納され、該薬液が排出される排出部と、該排出部を封止する封止部材とを有する薬液収納容器と、
前記薬液収納容器に接続される、請求項1ないし6のいずれかに記載の医療用注入具とを備えることを特徴とする医療用注入具を用いた投与システム。
【請求項8】
薬液が収納され、該薬液が排出される排出部と、該排出部を封止する封止部材とを有する薬液収納容器と、
先端部に口部が形成され、前記薬液を収納可能な液室を有する外筒と、前記口部に接続される口部接続部と、前記薬液収納容器に接続される接続ポートとを有するコネクタとを備える医療用注入具とを備える医療用注入具を用いた投与システムであって、
前記接続ポートは、針先を有する針管と、筒状をなして前記針管の周囲を覆う保護部材とを備え、
前記コネクタが前記薬液収納容器に装着された装着状態においては、前記接続ポートの前記保護部材の内部に前記排出部が配置され、前記針先が前記封止部材を穿刺し、前記薬液収納容器と前記外筒とが連通することを特徴とする医療用注入具を用いた投与システム。
【請求項9】
前記薬液収納容器は、プレフィルド医療用注入具である請求項7または8に記載の医療用注入具を用いた投与システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−70929(P2012−70929A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217866(P2010−217866)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】