説明

医療用照明装置

【課題】透光性カバーの着脱作業時に、不意に落下することがないよう改良された医療用照明装置を提供する。
【解決手段】枠体11と、前記枠体11に保持された光源12と、前記枠体11における照射側部に着脱自在に装着された透光性カバー13とを備えた医療用照明装置10であって、前記透光性カバー13は、前記枠体11に対して第1及び第2のロック機構14,17を介して装着状態が維持可能とされると共に、前記透光性カバー13の枠体11に対する装着部分には弾性手段18が介在され、前記第1のロック機構14のロック解除操作をし、且つ、前記透光性カバー13に対して前記弾性手段18の弾力に抗した力を作用させない限り、前記第1及び第2のロック機構14,17によるロックの解除がなし得ないよう構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用等の医療用照明装置のように、照射側に透光性カバーが着脱自在に装着された医療用照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療用照明装置、例えば、歯科用診療台の側部に設置され、診療台上の患者に向け照射される医療用照明装置としては、所謂無影灯が用いられる(特許文献1及び特許文献2参照)。このような医療用照明装置は、光源からの光を反射ミラーで反射させて患部に向け照射させるよう構成され、患部にできるだけ影ができないよう、反射ミラーからの反射光が患部に対して多方向から入射されるようになされている。そして、光源や反射ミラーを保持する枠体の照射側部(反射ミラーとは反対側)には、光源や反射ミラーの汚れを防止したり、光源などの脱落或いは破損を防止したりする為の透光性カバーが取り付けられる。この透光性カバーは、それ自体及び内部の清掃の為、或いは光源の交換等の為に、枠体等に対して着脱自在に装着されている。特許文献1及び特許文献2においても、透光性カバーが着脱自在に装着し得るよう構成される旨の技術思想が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−292687号公報
【特許文献2】特開平7−262802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1においては、透光性カバーが、取付部材に設けられた孔に嵌入されて着脱自在とされている。そして、無影灯を下向きにした時に脱落しないように、例えば、ばねの押圧力や磁石の吸引力を利用し、或いは螺入されるボルトの係合作用を利用するロック機構を用いることが可能である旨記載されている(同特許文献の段落0010参照)。この場合、ロック機構は1個(種)のみで、ロック解除はワンアクション操作によってなされる為、無影灯を下向きにした状態で且つ透光性カバーに手を添えずにロック解除操作を行ったりすると、透光性カバーが不意に落下して破損したりする事態に至ることがある。また、特許文献2においては、透光性カバーが可撓性及び弾発性を有する材料からなり、透光性カバーを湾曲させて両端部を枠体の嵌合溝に嵌り込ませ、その弾発力を利用して嵌合溝に対する嵌り込み状態を維持することによって枠体に保持させるようになされている。この場合、透光性カバーを湾曲させれば、嵌合溝に対する嵌り込み状態から解放され、透光性カバーを枠体から簡易に取外すことができる。しかし、着脱作業時に湾曲状態とされる透光性カバーは弾性復元力を保有するから、その復元作用によって手から不意に飛び出し脱落することがある。このように、着脱作業時に透光性カバーが不意に落下したりすると、診療作業の円滑性を欠き、また、透光性カバーやその他の備品を破損したりすることにもなり、その抜本的な改良が望まれるところであった。
【0005】
本発明は、前記に鑑みなされたものであり、透光性カバーの着脱作業時に、不意に落下することがないよう改良された医療用照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る医療用照明装置は、枠体と、前記枠体に保持された光源と、前記枠体における照射側部に着脱自在に装着された透光性カバーとを備えた医療用照明装置であって、前記透光性カバーは、前記枠体に対して第1及び第2のロック機構を介して装着状態が維持可能とされると共に、前記透光性カバーの枠体に対する装着部分には弾性手段が介在され、前記第1のロック機構のロック解除操作をし、且つ、前記透光性カバーに対して前記弾性手段の弾力に抗した力を作用させない限り、前記第1及び第2のロック機構によるロックの解除がなし得ないよう構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の医療用照明装置において、前記第1のロック機構が、回動爪部材と、前記回動爪部材の爪片が掛止される被掛止部とよりなり、前記爪片が被掛止部から離脱する方向に前記回動爪部材を回転させた後、前記透光性カバーに対して前記弾性手段の弾力に抗した力を作用させることにより、前記爪片の被掛止部からの離脱がなし得、これによって前記第1のロック機構によるロックが解除されるように構成しても良い。この場合、前記第2のロック機構が、前記枠体及び透光性カバーの双方に形成された鉤型係止部片よりなり、前記第1のロック機構によるロックが解除された後に、前記鉤型係止部片同士の係止関係が解放可能とされ、これによって前記第2のロック機構によるロックが解除されるよう構成しても良い。
【0008】
また、本発明の医療用照明装置において、前記弾性手段としては、前記透光性カバーの辺部に形成された舌状部片からなるもの、或いは、ばね部材と、前記ばね部材によって弾力付勢される押当部材とからなるものであっても良い。
【0009】
更に、本発明の医療用照明装置において、前記透光性カバーが、紫外線吸収機能を備えているものであっても良い。透光性カバーに紫外線吸収機能を付与する方法としては、紫外線吸収素材を透光性カバーの表面にコーティグする方法や、紫外線吸収素材を含む材料で透光性カバーを形成する方法等が採用される。
【0010】
そして、本発明の医療用照明装置において、前記枠体における前記照射側部の反対側部に、反射ミラーを更に備えているものとすることができる。この場合、前記反射ミラーと前記光源とが一体とされて照明モジュールとされ、前記照明モジュールが、前記枠体に対して着脱自在に装着されているものとしても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る医療用照明装置によれば、枠体における照射側部に透光性カバーが装着されているから、光源からの照射光はこの透光性カバーを透して、患部等に照射される。透光性カバーが装着されていることにより、その背後にある光源やその他の備品等の汚染が防止され、更には、光源等が脱落したりすることがなく、本照明装置に外部から衝撃が加わった場合でも、光源等の破損を防ぐことができる。そして、透光性カバーは枠体に着脱自在に装着されているから、光源等の交換も簡易になされ、透光性カバーを単独で滅菌消毒することもできる。しかも、前記枠体に対して第1及び第2のロック機構を介して装着状態が維持可能とされているから装着状態が安定する。加えて、前記第1のロック機構のロック解除操作をし、且つ、前記透光性カバーに対して、前記透光性カバーの枠体に対する装着部分に介在される弾性手段の弾力に抗した力を作用させない限り、前記第1及び第2のロック機構によるロックの解除がなし得ないよう構成されているから、所謂ダブルアクションによって、透光性カバーの離脱取外が可能とされる。従って、取外作業時における透光性カバーの不意の脱落が生じ難くなる。
【0012】
また、前記第1のロック機構が、回動爪部材と、前記回動爪部材の爪片が掛止される被掛止部とよりなるものとすれば、爪片が被掛止部に掛止されている時には、第1のロック機構によるロック状態が維持される。そして、前記爪片が被掛止部から離脱する方向に前記回動爪部材を回転させると、第1のロック機構のロックが解除される態勢となるが、前記透光性カバーに対して前記弾性手段の弾力に抗した力を作用させない限り、前記爪片の被掛止部からの離脱がなし得ないから、回動爪部材を回転操作するだけでは透光性カバーの取外しはできず、この回転操作の際に透光性カバーが不意に脱落することがない。この場合、前記第2のロック機構が、前記枠体及び透光性カバーの双方に形成された鉤型係止部片よりなるものとし、前記第1のロック機構によるロックが解除された後に、前記鉤型係止部片同士の係止関係が解放可能とされるようにし、これによって前記第2のロック機構によるロックが解除されるよう構成すれば、第1のロック機構のロック解除及び第2のロック機構のロック解除が時間差をもってなされ、取外作業時における透光性カバーの脱落防止機能がより確実に発現される。
【0013】
前記弾性手段としては、例えば、前記透光性カバーの辺部に形成された舌状部片からなるもの、或いは、ばね部材と、前記ばね部材によって弾力付勢される押当部材とからなるものが好ましく採用される。前者の場合、舌状部片の自由端側が前記のようなロック機構の解除を弾性的に規制する機能を奏することになる。そして、この場合、透光性カバーの辺部を加工するだけで弾性手段としての舌状部片を形成することができるから、部品点数の増大をもたらすことがない。また、後者の場合、ばね部材によって弾力付勢される押当部材が、前記ロック機構の解除を弾性的に規制する機能を確実に奏することになる。
【0014】
前記透光性カバーが、紫外線吸収機能を備えているものとした場合、例えば、歯科治療においては、歯牙に紫外線で重合する樹脂を充填する治療が行われるが、本発明に係る照明装置の照明下においては、このような光重合樹脂の調合中に硬化が促進されてしまうことがなく、治療の円滑性が損なわれる懸念がない。
【0015】
前記枠体における前記照射側部の反対側部に、反射ミラーを更に備えているものとした場合、光源からの光が効率的に患部の照明光として用いられ、且つ無影灯としての機能も得られる。この場合、前記反射ミラーと前記光源とが一体とされて照明モジュールとされ、前記照明モジュールが、前記枠体に対して着脱自在に装着されているものとした場合、例えば、光源がハロゲンランプからなる照明モジュール、LEDからなる照明モジュール等を製品仕様として準備しておけば、需要者の種々のニーズにも的確に応えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る医療用照明装置が用いられた歯科診療装置の全体構成を示す模式的斜視図である。
【図2】(a)は同医療用照明装置の拡大斜視図、(b)は同医療用照明装置において透光性カバーを取外した状態の枠体の斜視図、(c)は同医療用照明装置における透光性カバーのみの斜視図である。
【図3】(a)(b)(c)は、ロック機構の動作状態を説明する図であり、図2のX−X線矢視断面部における枠体と透光性カバーとの関係を模式的に示す図である。
【図4】(a)は、図3(b)におけるY部の拡大図、(b)は、図3(c)におけるZ部の拡大図である。
【図5】(a)(b)は、別の実施形態を示す図4(a)(b)と同様図である。
【図6】(a)(b)は、図5(a)(b)に示す例の変形例を示す図4(a)(b)と同様図である。
【図7】更に別の実施形態における弾性手段を含む要部の断面図である。
【図8】同医療用照明装置において光源と反射ミラーとが照明モジュール化された例を示す分解斜視図である。
【図9】同光源と反射ミラーとが照明モジュール化された例の別例を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の医療用照明装置の実施の形態について図面に基づき説明する。図1は、本発明に係る医療用照明装置が用いられた歯科診療装置の全体構成を示している。図に示す歯科診療装置Aは、昇降自在な座板1a、該座板1aの一端に起伏自在に連結された背板1b及び該背板1bの上端に設けられたヘッドレスト1cを備える歯科診療台1と、ドクター用インスツルメントホルダー2を備え前記歯科診療台1の一側部に移動自在に設置されたトレーテーブル3と、前記歯科診療台1の他側部に移動自在に設置されたアシスタント用インスツルメントホルダー4と、同他側部に設置されたうがい用スピットン装置5と、該スピットン装置5に立設されたポール6にハンガーアーム7を介して支持された歯科用(医療用)照明装置10とを含んで構成されている。トレーテーブル3は、各種薬品、ピンセット等の治療器具の載置台であり、また、補綴材料(例えば、紫外線硬化樹脂)の調合等の作業台として用いられる。このトレーテーブル3の側部には、カルテの内容や患部の撮像画像等を映し出すモニターディスプレイ3aや、操作パネル3bが付設されている。
【0018】
前記ドクター用インスツルメントホルダー2には、主にドクターが使用するエアタービンハンドピース、マイクロモータハンドピース或いはスリーウェイシリンジ等の歯科用インスツルメント2aが取出し自在に保持されている。前記アシスタント用インスツルメントホルダー4には、主にアシスタントが使用するバキュームシリンジ、サライバエジェクタ或いはスリーウェイシリンジ等の歯科用インスツルメント4aが取出し自在に保持され、その上面にはアシスタント用の操作パネル4bが設けられている。トレーテーブル3及びアシスタント用インスツルメントホルダー4は、ドクター及びアシスタントが、診療姿勢に応じその都度使い易い位置に引寄せ移動し得るように構成されている。歯科診療台1の昇降或いは起伏操作、各種インスツルメント2a,4aの駆動操作、モニターディスプレイ3aのオン・オフ操作、或いは、スピットン装置5の給水オン・オフ操作等は、フートコントローラ8、前記操作パネル3b,4bの足踏み或いは手操作によってなされる。
【0019】
歯科用照明装置10は、歯科診療台1上の患者の着座或いは仰臥姿勢に応じて患者の口腔内を照射し得るよう、ハンガーアーム7を介してその位置調整が可能に前記ポール6に支持されている。ハンガーアーム7は、多関節アームからなり、前記ポール6にその軸心回りに回動自在に支持された第1アーム7aと、該第1アーム7aの先端に水平旋回可能に支持された第2アーム7bと、該第2アーム7bの先端に水平旋回可能且つ上下揺動可能に支持された第3アーム7cと、該第3アーム7cの先端に左右首振可能に支持されたフォーク状先端アーム7d(図2も参照)とより構成される。先端アーム7dの一対の自由端には、歯科用照明装置10がヒンジピン7e(図2も参照)を介して上下首振可能に支持されている。図示のハンガーアーム7の構造は一例であって、その他の従来公知のハンガーアームの構造も採用可能である。
【0020】
次に、歯科用照明装置10の詳細構成について図2〜図4も参照して説明する。図例の歯科用照明装置10は、合成樹脂の成型体からなる枠体11と、前記枠体11に保持された光源12と、前記枠体11における照射側部に着脱自在に装着される透光性カバー13とを備えている。ここで、照射側部とは本歯科用照明装置10の前面側(照明光が出射される側)であり、ハンガーアーム7によって支持される側が照射側部の反対側部である。前記枠体11は、方形の枠本体11aと、該枠本体11aの左右両側に、把持角度が可変とされる把手11b、11bが着脱自在に装着されている。前記枠体11の枠本体11aにおける照射側部の反対側部には椀形の反射ミラー111を含むミラー枠部材110が設けられている。前記光源12はハロゲンランプからなり、該ハロゲンランプ12の前記照射側部は遮光用筐体12aで覆われている。該遮光用筐体12aの反射ミラー111側部分は開口しており、ハロゲンランプ12による光は反射ミラー111で反射されて前記照射部側に指向され、透光性カバー13を透して照射対象に照射されるよう構成されている。反射ミラー111による反射光は、種々の角度で照射部側に指向され、これによって無影灯の機能を奏するよう構成されている。遮光用筐体12aは、手操作可能なビス12bによって、枠体11の所定位置に着脱自在に取付けられている。ハロゲンランプ12の交換等は、透光性カバー13を取外し、ビス12bを緩めて遮光用筐体12aを取外した上でなされる。前記ミラー枠部材110におけるハロゲンランプ12の設置位置に対応する部位の天板部分には、放熱用の格子状通気部112が形成されている。
【0021】
透光性カバー13はアクリル樹脂等の透光性合成樹脂の成型体からなり、前面側に緩やかに凸曲する略方形のカバー本体部13aと、該カバー本体部13aの周縁部に連成されて前記枠本体11aの内周部分に嵌装される差込部13bとが一体に形成されている。カバー本体部13aの表面には、メトキシ桂酸オクチル、ブチルベンゾイルメタン等からなる紫外線吸収素材がコーティングされている。上辺部側の前記差込部13bには、後記する第1のロック機構14を構成する被掛止部15と、一対の弾性手段18とが形成されている。具体的には、被掛止部15は、差込部13bに開設された方形の透孔からなり、弾性手段18は、差込部13bに切欠により形成された舌状部片からなる。弾性手段としての舌状部片18は、枠本体11aに対する差込側端部が自由端とされ、この自由端側の上面にはスペーサ突子18aが形成されている。また、下辺部側差込部13bには、後記する第2のロック機構17を構成する一対の鉤型係止部片17a,17aが下向きに形成されている。一方、枠本体11aの上辺部における前記被掛止部15に対応する位置には、後記する第1のロック機構14を構成する回動爪部材16が取付けられている。また、枠本体11aの下辺部側における前記鉤型係止部片17a,17aに対応する位置には、後記する第2のロック機構17を構成する一対の鉤型係止部片17b,17bが上向きに形成されている。
【0022】
図3及び図4は、前記第1及び第2のロック機構14,17の詳細構造、及び弾性手段18を介在させたこれらロック機構14,17の動作を説明する図である。前記回動爪部材16は、前記被掛止部(以下、透孔と言う)15に嵌まり込む爪片16aを備え、前記上辺部の枠本体11aに平行に取付けられた支軸16bに、その軸心回りに回動自在に支持されている。回動爪部材16は、更に、前記支軸16bを挟んで爪片16aとは反対側に手指によって操作し得る操作片16cと、規制片16dとを備えている。この規制片16dと枠本体11aとの間には圧縮ばね16eが弾装され、回動爪部材16は、この圧縮ばね16eの弾力により、支軸16bの軸心を中心に時計方向に回転付勢されている。図3(a)は、透光性カバー13が、枠体11に装着された状態を示しており、前記第2のロック機構17を構成する鉤型係止部片17a,17bが互いに行き違うような係止関係とされ、透光性カバー13の下辺部側が枠体11から外れないように保持されている。また、第1のロック機構14を構成する回動爪部材16の爪片16aは、前記透孔15に嵌まり込んで掛止され、前記圧縮ばね16eの弾力によってこの掛止状態に維持され、透光性カバー13の上辺部側が枠体11から外れないように保持されている。そして、透光性カバー13の枠体11に対する装着状態では、前記舌状部片からなる弾性手段(以下、舌状部片と言う)18のスペーサ突子18aが、上辺部側枠本体11aの下面に当接され、これによって、枠体11の上辺部側枠本体11aと透光性カバー13の上辺部側差込部13bとの間にスペーサ突子18aの高さ分に相当する間隔dが確保されている。歯科用照明装置10は、前記第1及び第2のロック機構14,17のロック機能によって透光性カバー13の枠体11に対する装着状態が維持され、この状態で図1に示すような歯科診療装置1において使用に供される。
【0023】
前記透光性カバー13を枠体11から取外す際、先ず、図3(b)及び図4(a)に示すように、前記操作片16cを手指Fによって圧縮ばね16eの弾力に抗して押上げるよう操作し、回動爪部材16を支軸16bの回りに反時計方向に回転させる。この回転によって、圧縮ばね16eが圧縮されると共に、爪片16aが透孔15から抜出す方向に動作する。而して、前記規制片16dが枠本体11aに形成されたストッパー突起11cに当接し、回動爪部材16のこれ以上の回転が阻止される。この状態では、爪片16aが前記透孔15から抜けきらず、前記掛止関係は未だ解除されない状態とされる。引き続き、前記操作片16cに対する押上げ操作を維持したまま、図3(c)に示す白抜矢印a方向に透光性カバー13を操作すると、前記舌状部片18はその自由端側がスペーサ突子18aによって規制されている為、その基部側を支点として相対的に下向きに弾性変形し、透光性カバー13が持上げられる。これによって、爪片16aが前記透孔15から抜けきり、図4(b)に示すように爪片16aと透孔15との前記掛止関係が完全に解除される。この状態で、透光性カバー13の上部を図3(c)に示す白抜矢印b方向に引出すように操作すると、第2のロック機構17を構成する鉤型係止部片17a,17bの係止関係も解除され、透光性カバー13を枠体11から取外すことができる。このように、手指Fによる操作片16cを押上げる操作と、透光性カバー13を持上げる操作とのダブルアクションによらなければ、透光性カバー13の枠体11からの取外離脱が不可とされ、透光性カバー13の取外作業時における透光性カバー13の不意の脱落が生じ難くなる。
【0024】
透光性カバー13を枠体11に装着する際は、先ず、透光性カバー13を斜めにしてその下辺部側差込部13bを枠本体11a内に差込み、透光性カバー13側の鉤型係止部片17aを枠体11側の鉤型係止部片17bに行き違い状に係止させる。次いで、舌状部片18のスペーサ突子18aを上辺部側枠本体11aの下面に当接させた状態で舌状部片18を弾性変形させるようにして透光性カバー13を持上げ、この状態で上辺部側差込部13bを枠本体11a内に押込み、透光性カバー13を手離せば装着が完了する。この押込み操作の際、回動爪部材16の爪片16aに押込み力が作用し、圧縮ばね16eの弾力に抗して回動爪部材16が反時計方向に回転し、透孔15が爪片16aの位置に達すると圧縮ばね16eの復元弾力によって爪片16aが透孔15に嵌り込んで掛止される。尚、回動爪部材16の前記操作片16cを図3(b)のように押上操作した状態で前記押込み操作を行っても良い。
【0025】
図5(a)(b)は弾性手段の別の実施形態を示している。この例では、弾性手段としての舌状部片19が枠体11側に形成されている。即ち、上辺部側の枠本体11aの下面には、その前面側が自由端となるよう舌状部片19が切欠により形成され、この舌状部片19の自由端側の下面にスペーサ突子19aが形成されている。このスペーサ突子19aは、上辺側差込部13bの上面に当接している。透光性カバー13が枠体11に装着された通常の使用状態や、図5(a)に示すように回動爪部材16を反時計方向に回転操作して第1のロック機構14のロック解除操作過程(爪片16aが透孔15から抜けきらない状態)では、舌状部片19は弾性変形せず、上辺側枠本体11aの下面と上辺側差込部13bの上面との間隔dがスペーサ突子19aによって維持された状態とされる。そして、図3(c)の白抜矢印a方向に透光性カバー13を持上げるよう操作すれば、図5(b)に示すように舌状部片19が弾性変形し、爪片16aの透孔15からの掛止離脱がなされる。従って、この実施形態でも、ダブルアクションによらなければ透光性カバー13の枠体11からの取外離脱が不可とされ、透光性カバー13の取外作業時における透光性カバー13の不意の脱落が生じ難くなる。その他の構成は前記実施形態と同様であるから、共通部分に同一の符号を付し、その説明を割愛する。
【0026】
図6(a)(b)は、図5(a)(b)に示す例の変形例を示している。即ち、この例では前記実施形態における弾性手段としての舌状部片19に代えて、板ばね部材20を上辺部側の枠本体11aの下面に設けている。板ばね部材20の基部は上辺部側枠本体11aの下面に固着され、その自由端側が上辺側差込部13bの上面に弾接している。この例においても、透光性カバー13が枠体11に装着された通常の使用状態や、図6(a)に示すように回動爪部材16を反時計方向に回転操作して第1のロック機構14のロック解除操作過程(爪片16aが透孔15から抜けきらない状態)では、板ばね部材20の弾力によって、上辺側枠本体11aの下面と上辺側差込部13bの上面との間隔dが維持された状態とされる。そして、前記と同様に透光性カバー13を持上げるよう操作すれば、図6(b)に示すように板ばね部材20が座屈するよう弾性変形し、爪片16aの透孔15からの掛止離脱がなされる。従って、この実施形態でも、ダブルアクションによらなければ透光性カバー13の枠体11からの取外離脱が不可とされ、透光性カバー13の取外作業時における透光性カバー13の不意の脱落が生じ難くなる。その他の構成は前記実施形態と同様であるから、共通部分に同一の符号を付し、ここでもその説明を割愛する。
【0027】
図7は弾性手段の更に別の実施形態を示している。図7は、上辺部側枠本体11aの長手方向に沿った破断面による断面図であり、弾性手段が設けられる部位のみを示し、上辺部側枠本体11aの他部位には図示は省略するが前記と同様の第1のロック機構14が装備されているものとする。この例では、弾性手段21が、ばね部材21aと、前記ばね部材21aによって弾力付勢される押当部材21bとより構成されている。押当部材21bはプランジャからなり、該プランジャ21bは、上辺部側枠本体11aに内装され、その下端部が、上辺部側枠本体11aの下面に形成された透孔11dより突出し、圧縮コイルばねからなるばね部材21aによって下向きに弾力付勢されて透孔性カバー13における上辺側差込部13bの上面に弾接するよう構成されている。これによって、透光性カバー13の枠体11に対する通常の装着状態においては、前記と同様の間隔dが維持されるようになされている。そして、図示を省略するが、透光性カバー13を持上げるよう操作すれば、圧縮コイルばね21aが圧縮するよう弾性変形し、爪片16aの透孔15からの掛止離脱がなされる(図4〜図6の各(b)参照)。従って、この実施形態でも、ダブルアクションによらなければ透光性カバー13の枠体11からの取外離脱が不可とされ、透光性カバー13の取外作業時における透光性カバー13の不意の脱落が生じ難くなる。
【0028】
図8及び図9は、光源と反射ミラーとが照明モジュール化された例を示す。前者は光源がハロゲンランプからなる例を、後者は光源がLEDからなる例を示している。図8に示す例は、図1及び図2に示す例と同様の反射ミラー221と、光源としてのハロゲンランプ12及び遮光用筐体12aとをモジュール本体220に一体として照明モジュール22としたものである。反射ミラー221は、モジュール本体220の椀形凹曲形状部の内面に設けられ、また、ハロゲンランプ12及び遮光用筐体12aはモジュール本体220の所定位置に着脱自在に設置されている。モジュール本体220は、ビス22a…によって、前記実施例と同様形状の枠体11の背面部に取付固定される。これによって、光源としてのハロゲンランプ12が枠体11に保持された状態とされる。この取付固定の際、ハロゲンランプ12の基板に設けられた受電端子(いずれも不図示)が、枠体11に設けられた給電端子11eに電気的に接合され、ハロゲンランプ12に対する給電が可能とされる。給電端子11eには、前記ハンガーアーム7を介して電源(不図示)に接続された給電用ケーブル(不図示)が配線されている。モジュール本体220におけるハロゲンランプ12の設置位置に対応する部位の天板部分には、放熱用の格子状通気部22bが形成されている。このように照明モジュール22を枠体11に取付固定して構成される歯科用照明装置10Aにおいて、ハロゲンランプ12が点灯されると、ハロゲンランプ12からの光は前記反射ミラー221によって反射されて、前記と同様に照射側に指向され、透光性カバー13を透して治療対象部位(患部)に照射される。
【0029】
図9に示す例は、一面が開放する方形箱形のモジュール本体230の内底面を反射ミラー231とし、この内底面に複数のLEDを配列した光源としてのLEDアレイ232を4個設置して照明モジュール23としたものである。モジュール本体230は、ビス23a…によって、前記実施例と同様形状の枠体11の背面部に取付固定される。これによって、光源としてのLEDアレイ232が枠体11に保持された状態とされる。この取付固定の際、LEDアレイ232の基板に設けられた受電端子(いずれも不図示)が、枠体11に設けられた給電端子11eに電気的に接合され、LEDアレイ232に対する給電が可能とされる。給電端子11eには、前記ハンガーアーム7を介して電源(不図示)に接続された給電用ケーブル(不図示)が配線されている。モジュール本体230におけるLEDアレイ232の設置位置に対応する部位の背面部分には、放熱用の格子状通気部23bが形成されている。このように照明モジュール23を枠体11に取付固定して構成される歯科用照明装置10Bにおいて、LEDアレイ232の各LEDが点灯されると、LEDからの光は前記反射ミラー231によって反射されて、前記と同様に照射側に指向され、透光性カバー13を透して治療対象部位(患部)に照射される。LEDは、小型でありながら出力が大きく、また寿命も長いので、特に、歯科用の照明装置として好ましく採用される。また、個々のLEDの向きを変化させ、これと反射ミラーとを組合せることにより、無影灯としての照射パターンの設計自由度が高くなり、実益が大である。
【0030】
尚、前記の実施形態では、歯科用照明装置を例に採って説明したが、本発明はその他の医療用照明装置としても広く適用されるものである。また、枠体11、透光性カバー13及びその付随部分の形状等は例示のものに限定されず、その他の形状であっても良い。更に、弾性手段として図示のものを例示したが、同様の機能を奏するものであれば、他の構成のものも採用可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0031】
10,10A,10B 歯科用(医療用)照明装置
11 枠体
111 反射ミラー
12 ハロゲンランプ(光源)
13 透光性カバー
14 第1のロック機構
15 透孔(被掛止部)
16 回動爪部材
16a 爪片
17 第2のロック機構
17a 鉤型係止部片
17b 鉤型係止部片
18 舌状部片(弾性手段)
19 舌状部片(弾性手段)
20 板ばね部材(弾性手段)
21 弾性手段
21a 圧縮コイルばね(ばね部材)
21b プランジャー(押当部材)
22,23 照明モジュール
221,231 反射ミラー
232 LEDアレイ(光源)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体と、前記枠体に保持された光源と、前記枠体における照射側部に着脱自在に装着された透光性カバーとを備えた医療用照明装置であって、
前記透光性カバーは、前記枠体に対して第1及び第2のロック機構を介して装着状態が維持可能とされると共に、前記透光性カバーの枠体に対する装着部分には弾性手段が介在され、
前記第1のロック機構のロック解除操作をし、且つ、前記透光性カバーに対して前記弾性手段の弾力に抗した力を作用させない限り、前記第1及び第2のロック機構によるロックの解除がなし得ないよう構成されていることを特徴とする医療用照明装置。
【請求項2】
請求項1に記載の医療用照明装置において、
前記第1のロック機構が、回動爪部材と、前記回動爪部材の爪片が掛止される被掛止部とよりなり、前記爪片が被掛止部から離脱する方向に前記回動爪部材を回転させた後、前記透光性カバーに対して前記弾性手段の弾力に抗した力を作用させることにより、前記爪片の被掛止部からの離脱がなし得、これによって前記第1のロック機構によるロックが解除されるように構成されていることを特徴とする医療用照明装置。
【請求項3】
請求項2に記載の医療用照明装置において、
前記第2のロック機構が、前記枠体及び透光性カバーの双方に形成された鉤型係止部片よりなり、前記第1のロック機構によるロックが解除された後に、前記鉤型係止部片同士の係止関係が解放可能とされ、これによって前記第2のロック機構によるロックが解除されるよう構成されていることを特徴とする医療用照明装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の医療用照明装置において、
前記弾性手段が、前記透光性カバーの辺部に形成された舌状部片からなることを特徴とする医療用照明装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の医療用照明装置において、
前記弾性手段が、ばね部材と、前記ばね部材によって弾力付勢される押当部材とからなることを特徴とする医療用照明装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の医療用照明装置において、
前記透光性カバーが、紫外線吸収機能を備えていることを特徴とする医療用照明装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の医療用照明装置において、
前記枠体における前記照射側部の反対側部に、反射ミラーを更に備えていることを特徴とする医療用照明装置。
【請求項8】
請求項7に記載の医療用照明装置において、
前記反射ミラーと前記光源とが一体とされて照明モジュールとされ、前記照明モジュールが、前記枠体に対して着脱自在に装着されていることを特徴とする医療用照明装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−154792(P2011−154792A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−13859(P2010−13859)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000138185)株式会社モリタ製作所 (173)
【Fターム(参考)】