医療用複室容器
【課題】薬剤室と排出ポートとの連通を阻害しかつ剥離可能な連通阻害用弱シール部を設けることにより形成される空間内を確実に滅菌できる医療用複室容器を提供するものである。
【解決手段】医療用複室容器1は、仕切用弱シール部9により第1の薬剤室21と第2の薬剤室22に区分された容器本体2と、第1の薬剤室と連通可能な排出ポート3と、第1の薬剤室に収納された第1の薬剤と、第2の薬剤室に収納された第2の薬剤と、第1の薬剤室と排出ポートとの連通を阻害しかつ剥離可能な連通阻害用弱シール部10を備える。連通阻害用弱シール部と排出ポートと下端側シール部6により形成される空間内に、空間内の容積1ml当たり、0.005〜0.1mlの液体が添加されている。
【解決手段】医療用複室容器1は、仕切用弱シール部9により第1の薬剤室21と第2の薬剤室22に区分された容器本体2と、第1の薬剤室と連通可能な排出ポート3と、第1の薬剤室に収納された第1の薬剤と、第2の薬剤室に収納された第2の薬剤と、第1の薬剤室と排出ポートとの連通を阻害しかつ剥離可能な連通阻害用弱シール部10を備える。連通阻害用弱シール部と排出ポートと下端側シール部6により形成される空間内に、空間内の容積1ml当たり、0.005〜0.1mlの液体が添加されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離可能な弱シール部により2つの薬剤室に区分されるとともに、各薬剤室に薬剤が充填された医療用複室容器に関する。
【背景技術】
【0002】
患者に静脈より栄養成分を投与する薬剤の中には、予め配合すると経時的変化を起こしやすい不安定な薬剤がある。例えば、あらかじめアミノ酸液とブドウ糖液を配合して保存すると、メイラード反応によって混合液が着色(褐変)する。また、カルシウム化合物はリン酸化合物と配合すると、高いpHの液剤中ではリン酸カルシウムの沈殿を生じ、製品価値が著しく低下してしまうことになる。このような薬剤を患者に投与する場合、例えば、特許第2675075号(特許文献1)のように混合前の成分を個別に収納する医療用複室容器を用い、投与直前に混合してから投与するようになってきている。
この医療用複室容器は、異なる成分の薬剤を個別に収納する複数の室と、各室間を仕切、外部からの圧力により剥離開封する仕切用弱シールとを備えている。
しかしながら、前記医療用複数容器は排出口側の収納部に液剤を収納している場合が多く、仕切用弱シールを剥離せずに、ゴム栓に瓶針を刺入し、排出口から液剤を取り出すという可能性がある。
このため、確実に各収納部に収納されている薬剤を混合した後に患者に投与することを保証し、薬剤を誤って混合しないで患者に投与する事故を確実に防止する方法が工夫されており、例えば、特開平9−327498号(特許文献2)や特開2002−136570号(特許文献3)のように薬剤排出口と薬剤を収納する分室との間を区切る連通阻害用弱シール部を備える複室容器が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2675075号公報
【特許文献2】特開平9−327498号公報
【特許文献3】特開2002−136570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2および3に示すものでは、仕切用弱シール部を剥離せずに、栓体に瓶針を刺入し、排出口から液剤を取り出すという可能性がかなり少ないものとなる。しかし、薬剤排出口と薬剤を収納する分室との間を仕切る連通阻害用弱シール部の間においてブロッキングによる密着が生じること、また逆に、薬剤排出口に近接していることにより連通阻害用弱シール部にシール不良が生じる場合がある。ブロッキングによる密着が生じると連通阻害用弱シール部の剥離作業に手間取るものとなる。また、連通阻害用弱シール部にシール不良が生じた場合には、仕切用弱シールを剥離せずに薬剤の投与が行われることが危惧される。また、ある程度の量の液体を連通阻害用弱シール部と薬剤排出ポート間に存在させることにより、ブロッキングを防止することも可能と考えるが、この場合、存在する液体のみ投与される危険性がある。
本発明の目的は、剥離可能な仕切用弱シール部により2つの薬剤室に区分されるとともに、薬剤室に薬剤が充填された医療用複室容器において、ブロッキングによる連通阻害用弱シール部の難剥離状態の形成を防止し、容易に投与準備ができ、さらに、連通阻害用弱シール部のシール不良を生じることがなく、薬剤が混合されずに投与されることを防止する医療用複室容器を提供するものである。
また、上記のような医療用複室容器では、連通阻害用弱シール部を設けることにより、空間(第3室)が形成される。複室容器より排出される薬剤は、この空間を通過するため、滅菌確保が必要となる。
そこで、上記の本発明の医療用複室容器は、上記の連通阻害用弱シール部を設けることにより形成される空間内を確実に滅菌できる医療用複室容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1) 可撓性材料により作製され、内部空間が剥離可能な仕切用弱シール部により第1の薬剤室と第2の薬剤室に区分された容器本体と、前記第1の薬剤室の下端部と連通可能な排出ポートと、前記第1の薬剤室に収納された第1の薬剤と、前記第2の薬剤室に収納された第2の薬剤とを備える医療用複室容器であって、該医療用複室容器は、前記第1の薬剤室と前記排出ポートとの連通を阻害しかつ剥離可能な連通阻害用弱シール部を備え、さらに、該連通阻害用弱シール部は、一端が前記排出ポートが取り付けられた閉塞部より前記仕切用弱シール部側に延びる第1の部分と、該第1の部分と連続しかつ前記排出ポートの中心軸に対してほぼ直交する方向に延びる第2の部分と、該第2の部分と連続しかつ前記閉塞部側に延びかつ前記閉塞部に到達する第3の部分を備え、前記排出ポートの先端部の上方を取り囲むように形成されており、前記排出ポートは、本体部と前記先端部を有する筒状体であり、該先端部は前記本体部より断面積が小さいものとなっており、さらに、該排出ポートの前記先端部の先端と前記連通阻害用弱シール部の前記第2の部分における排出ポート側端縁との距離は、6〜15mmである医療用複室容器。
(2) 前記排出ポートの先端部は、扁平形状となっている上記(1)に記載の医療用複室容器。
(3) 前記排出ポートの先端部は、前記連通阻害用弱シール部の前記第2の部分方向に向かってテーパー状に縮径している上記(1)に記載の医療用複室容器。
【0006】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
(4) 可撓性材料により作製され、内部空間が剥離可能な仕切用弱シール部により第1の薬剤室と第2の薬剤室に区分された容器本体と、前記第1の薬剤室の下端部と連通可能な排出ポートと、前記第1の薬剤室に収納された第1の薬剤と、前記第2の薬剤室に収納された第2の薬剤とを備える医療用複室容器であって、該医療用複室容器は、前記第1の薬剤室と前記排出ポートとの連通を阻害しかつ剥離可能な連通阻害用弱シール部を備え、さらに、該連通阻害用弱シール部は、一端が前記排出ポートが取り付けられた閉塞部より前記仕切用弱シール部側に延びる第1の部分と、該第1の部分と連続しかつ前記排出ポートの中心軸に対してほぼ直交する方向に延びる第2の部分と、該第2の部分と連続しかつ前記閉塞部側に延びかつ前記閉塞部に到達する第3の部分を備え、前記排出ポートの上方を取り囲むように形成されており、さらに、前記排出ポートは、ほぼ同一外径を備える円筒状であり、該排出ポートの先端部の先端と前記連通阻害用弱シール部の前記第2の部分における排出ポート側端縁との距離は、15〜30mmである医療用複室容器。
(5) 前記閉塞部は、第1の薬剤室側の端縁の前記排出ポートの両側部に形成された容器本体の側部方向に延びる直線部分を備え、前記連通阻害用弱シール部の前記第2の部分における排出ポート側端縁は、前記排出ポートの両側部に位置する前記閉塞部のそれぞれの直線部分を結ぶ仮想線より前記仕切用弱シール部側に位置している上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の医療用複室容器。
(6) 前記排出ポートの両側部に位置する前記閉塞部のそれぞれの直線部分を結ぶ仮想線は、前記排出ポートの先端部の先端より、前記連通阻害用弱シール部の前記第2の部分側となるものである上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の医療用複室容器。
(7) 前記連通阻害用弱シール部と前記排出ポートと前記閉塞部により形成される空間には、液体が添加されている上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の医療用複室容器。
(8) 前記仕切用弱シール部および前記連通阻害用弱シール部は、熱シールにより形成されている上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の医療用複室容器。
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
(9) 前記連通阻害用弱シール部と前記排出ポートと該排出ポートが固定された下端側シール部により形成される空間内には、液体が添加されており、かつ、該空間への前記液体の添加量は、前記空間内の容積1ml当たり、0.02〜0.1mlである上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の医療用複室容器。
(10) 前記連通阻害用弱シール部と前記排出ポートと該排出ポートが固定された下端側シール部により形成される空間内には、液体が添加されており、かつ、該空間への前記液体の添加量は、前記空間内の容積1ml当たり、0.005〜0.1mlである上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の医療用複室容器。
(11) 前記医療用複室容器は、高圧蒸気滅菌されているものである上記(9)または(10)に記載の医療用複室容器。
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
(12) 可撓性材料により作製され、内部空間が剥離可能な仕切用弱シール部により第1の薬剤室と第2の薬剤室に区分された容器本体と、該容器本体の下端側シール部に固定され、前記第1の薬剤室の下端部と連通する排出ポートと、前記第1の薬剤室に収納された第1の薬剤と、前記第2の薬剤室に収納された第2の薬剤と、前記第1の薬剤室と前記排出ポートとの連通を阻害しかつ剥離可能な連通阻害用弱シール部とを備える医療用複室容器であり、前記連通阻害用弱シール部と前記排出ポートと前記下端側シール部により形成される空間内に、該空間内の容積1ml当たり、0.005〜0.1mlの液体が添加されている医療用複室容器。
(13) 前記医療用複室容器は、高圧蒸気滅菌されているものである上記(12)に記載の医療用複室容器。
(14) 前記空間への前記液体の添加量は、前記空間内の容積1ml当たり、0.02〜0.1mlである上記(12)または(13)に記載の医療用複室容器。
(15) 前記空間への前記液体の添加量は、前記空間内の容積1ml当たり、0.01〜0.05mlである上記(12)または(13)に記載の医療用複室容器。
【発明の効果】
【0007】
本発明の医療用複室容器によれば、排出ポートの先端部の形状に対応して、連通阻害用弱シール部と排出ポートの先端部の先端との距離が的確なものとなっているため、連通阻害用弱シール部と前記排出ポート間において、医療用複室容器を形成する樹脂シートのブロッキングによる密着を防止でき、ブロッキングによる連通阻害用弱シール部の難剥離状態が形成されることを阻止する。また、排出ポートの先端部の形状に対応して、連通阻害用弱シール部と排出ポートの先端部の先端との距離が的確なものとなっているため、連通阻害用弱シール部のシール不良を生じることがない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の医療用複室容器の一実施例の正面図である。
【図2】図2は、図1の医療用複室容器の排出ポート付近の部分拡大図である。
【図3】図3は、図2のA−A線断面図である。
【図4】図4は、本発明の医療用複室容器の他の実施例の排出ポート付近の拡大部分断面図である。
【図5】図5は、本発明の医療用複室容器の他の実施例の正面図である。
【図6】図6は、図5の医療用複室容器の排出ポート付近の部分拡大図である。
【図7】図7は、図6のB−B線断面図である。
【図8】図8は、本発明の医療用複室容器の他の実施例の正面図である。
【図9】図9は、図8の医療用複室容器の排出ポート付近の部分拡大図である。
【図10】図10は、図9のC−C線断面図である。
【図11】図11は、本発明の医療用複室容器の他の実施例の正面図である。
【図12】図12は、図11の医療用複室容器の排出ポート付近の部分拡大図である。
【図13】図13は、図11の医療用複室容器に使用される排出ポートの正面図である。
【図14】図14は、図13に示す排出ポートの側面図である。
【図15】図15は、図13のD−D線断面図である。
【図16】図16は、図14のE−E線断面図である。
【図17】図17は、図13に示す排出ポートの作用を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の医療用複室容器について、図面に示す実施例を用いて説明する。
図1は、本発明の医療用複室容器の一実施例の正面図であり、図2は、図1の医療用複室容器の排出ポート付近の部分拡大図であり、図3は、図2のA−A線断面図であり、図4は、本発明の医療用複室容器の他の実施例の排出ポート付近の拡大部分断面図である。なお、図中の上側を「上端」、下側を「下端」として説明する。
この実施例の医療用複室容器1は、可撓性材料により形成され、内部空間が剥離可能な仕切用弱シール部9により第1の薬剤室21と第2の薬剤室22に区分された容器本体2と、第1の薬剤室21の下端部と連通可能な排出ポート3と、第1の薬剤室21に収納された第1の薬剤と、第2の薬剤室22に収納された第2の薬剤とを備える薬剤入り医療用複室容器である。医療用複室容器1は、第1の薬剤室21と排出ポート3との連通を阻害しかつ剥離可能な連通阻害用弱シール部10を備える。さらに、連通阻害用弱シール部10は、一端が排出ポート3が取り付けられた閉塞部6(6a)より仕切用弱シール部9側に延びる第1の部分11と、第1の部分11と連続しかつ排出ポート3の中心軸に対してほぼ直交する方向に延びる第2の部分12と、第2の部分12と連続しかつ閉塞部6(6b)側に延びかつ閉塞部に到達する第3の部分13を備え、排出ポート3の先端部の上方を取り囲むように形成されている。そして、排出ポート3は、本体部30aと先端部30bを有する筒状体であり、先端部30bは本体部30aより断面積が小さいものとなっており、さらに、排出ポート3の先端部30bの先端30dと連通阻害用弱シール部10の第2の部分12における排出ポート側端縁12aとの距離H1は、6〜15mmとなっている。好ましくは、8〜10mmである。
この実施例の医療用複室容器1は、シート状筒状体により形成された容器本体2を備え、この容器本体には、内部収納部を区画する仕切用弱シール部9が形成されており、収納部は、第1の薬剤室21と第2の薬剤室22とに区画されている。
また、図1に示すように、容器本体2の上端側および下端側には、第1の閉塞部(一端部シール部、言い換えれば、下端側シール部)6および第2の閉塞部(他端部シール部、言い換えれば、上端側シール部)5が設けられている。また、この実施例の医療用複室容器1では、第1の薬剤室21側に設けられた薬剤排出ポート3を備えている。
医療用複室容器1の容器本体2は、軟質合成樹脂により形成されている。容器本体2は、インフレーション成形法により筒状に成形されたものが好ましい。なお、容器本体2は、例えば、ブロー成形法などの種々の方法により製造されたものでもよい。また、容器本体2は、図1のような筒状体の外周部の全周(4辺)をシールしたもの、上下端のみ(2辺)をシールしたもの、2枚のシート材を重ねその外周部全周をシールしたもの、一枚のシートを2つ折りし、折り曲げ部以外の3辺をシールしたものなどの袋状物であってもよい。容器本体が、多層である場合は、共押出インフレーション成形法などによって成形することができる。また、容器本体2の上端側のシール部5のほぼ中央部には、医療用複室容器1をハンガー等に吊り下げるための孔25が設けられている。
【0010】
そして、容器本体2は、他端側シール部(第2の閉塞部)5の端部寄りの位置に薬剤容器4を固定するための薬剤容器固定部18(非シール部分)を備え、一端側(下端側)シール部6の中央部分には排出ポート3を固定するための排出ポート固定部19(非シール部分)を備えている。
容器本体2は、水蒸気バリヤー性を有することが好ましい。水蒸気バリヤー性の程度としては、水蒸気透過度が、50g/m2・24hrs・40℃・90%RH以下であることが好ましく、より好ましくは10g/m2・24hrs・40℃・90%RH以下であり、さらに好ましくは1g/m2・24hrs・40℃・90%RH以下である。この水蒸気透過度は、JISK7129(A法)に記載の方法により測定される。
このように容器本体2が水蒸気バリヤー性を有することにより、医療用複室容器1の内部からの水分の蒸散が防止できる。その結果、充填される薬剤(具体的には、薬液)の減少、濃縮を防止することができる。また、医療用複室容器1の外部からの水蒸気の侵入も防止することができる。
【0011】
このような容器本体2の形成材料として、ポリオレフィン類が含有されるとき、本発明の有用性が大きいものとなる。したがって、本発明においては、容器本体2の形成材料として、ポリオレフィン類を含むものであるのが好ましい。容器本体2の形成材料として、特に好ましいものとして、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブタジエン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)のようなポリオレフィン類に、スチレン−ブタジエン共重合体やスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体等のスチレン系熱可塑性エラストマーあるいはエチレン−プロピレン共重合体やエチレン−ブテン共重合体,プロピレン−αオレフィン共重合体等のオレフィン系熱可塑性エラストマーをブレンドした軟質樹脂を用いてもよい。この材料は、透明性に優れ、高強度で柔軟性に富み、耐熱性(特に滅菌時の耐熱性)、耐水性が高い他、加工性が特に優れ、製造コストの低減を図ることができる点で好ましい。
さらに、上記のブレンド樹脂を用いる場合には、2種以上の融点の異なる材料を用いることになり、容器本体2のシール部5やシール部6、第1の薬剤室21の側部シール部7、8、後述する仕切用弱シール部9および連通阻害用弱シール部10の各シール条件の設定、各シール部分のシール強度の安定化を容易かつ良好に図ることができる。
【0012】
また、容器本体は、このように前述したような材料よりなる単層構造のもの(単層体)であってもよいし、また種々の目的で、前述したような材料で内表面部分(内表面層)が形成された複数の層(特に異種材料の層)を重ねた多層積層体であってもよい。多層積層体の場合、複数の樹脂層を重ねたものであってもよいし、少なくとも1層の樹脂層に金属層を積層したものであってもよい。複数の樹脂層を重ねたものの場合、それぞれの樹脂の利点を併有することができ、例えば、容器本体2の耐衝撃性を向上させたり、対ブロッキング性を付与したりすることができる。また、金属層を有するものの場合、容器本体2のガスバリヤー性等を向上させることができる。例えば、アルミ箔等のフィルムが積層された場合、ガスバリヤー性の向上とともに、遮光性を付与することができる。また、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ケイ素等の酸化物からなる層を形成した場合、ガスバリヤー性の向上とともに、容器本体2の透明性を維持することができ、内部の視認性を確保することができる。
容器本体2を構成するシート材の厚さは、その層構成や用いる素材の特性(柔軟性、強度、水蒸気透過性、耐熱性等)等に応じて適宜決定され、特に限定されるものではないが、通常は、100〜550μm程度であるのが好ましく、200〜400μm程度であるのがより好ましい。
【0013】
そして、容器本体2は、仕切用弱シール部9を備えており、これにより、内部が2室に区分されている。仕切用弱シール部9は、容器本体2を横方向全体に横切る剥離可能な弱シール部と、弱シール部の両端に設けられた実質的に剥離不能な強シール部を備えるものであってもよい。上述した仕切用弱シール部9のシール強度(初期の剥離強度)は、特に限定されないが、通常は、0.12〜4.5kgf/20mm幅程度であるのが好ましく、0.35〜2.7kgf/20mm幅であるのがより好ましい。シール強度がこの範囲内であれば、輸送や保管中等に誤って仕切用弱シール部9が剥離することがなく、また、仕切用弱シール部9を剥離する作業も容易である。
そして、弱シール部は、熱シールにより形成することが好ましい。具体的には、加熱プレスにより行うことが好ましく、金型の温度は、容器本体2の形成材料の溶融温度より10℃以上低い温度で行うことにより形成することができる。
この実施例における仕切用弱シール部9は、容器本体2のシート材を帯状に融着することにより形成されている。この仕切用弱シール部9は、例えば、容器本体2の第1の薬剤室21もしくは第2の薬剤室22の部分を手で押圧し、第1の薬剤室21もしくは第2の薬剤室22の内圧を高めること、また、医療用複室容器1をハンガーに掛けた状態で容器本体2の第1の薬剤室21もしくは第2の薬剤室22部分を手で絞ることにより、第1の薬剤室21もしくは第2の薬剤室22の内圧を高めたりすることにより剥離する程度のシール強度を備える。これにより、特別の器具等を用いず、簡単な作業で仕切用弱シール部9による遮断を解除し、第1の薬剤室21と第2の薬剤室22の薬剤同士を混合することができる。
【0014】
また、医療用複室容器1の容積は、内部に収納する薬剤の種類等によって異なるが、通常は、第1の薬剤室の容積が、50〜3000mL程度であることが好ましく、第2の薬剤室の容積が、50〜3000mL程度であることが好ましい。
このように薬剤室を第1の薬剤室21と第2の薬剤室22の2つに区分することにより、反応等による変質、劣化を生じる物質を含有する液体を使用するまでは別々に保存でき、使用に際し、両液を混合することが好ましいとき等に適用することができる。それぞれの薬剤室に収納される薬剤としては、薬液、散剤などが考えられる。特に、本発明の医療用複室容器では、第1の薬剤は、薬液であることが好ましい。第2の薬剤は、薬液もしくは散剤いずれであってもよい。好ましくは、薬液である。第1の薬剤および第2の薬剤の組合せとしては、例えば、輸液剤では、メイラード反応による着色を防止するために、アミノ酸電解質液とブドウ糖液との組合せとしたり、他に、ブドウ糖液と重曹液等の組み合わせ、また、腹膜透析液剤としてブドウ糖が配合される側のpHを3〜5とし、他方の電解質液を混合後、投薬時にほぼ中性域のpHとなるように調整したものなどが挙げられる。
なお、本発明において、第1の薬剤および第2の薬剤は、特に限定されず、例えば、生理食塩水、電解質溶液、リンゲル液、高カロリー輸液、ブドウ糖液、アミノ酸輸液、脂肪輸液、注射用水、腹膜透析液、経口・経腸栄養剤等、いかなるものであってもよい。
【0015】
容器本体2の一端部(下端部)には、第1の薬剤室21に連通し得る薬剤排出ポート3が設けられている。薬剤排出ポート3は、一端側シール部(第1の閉塞部)6における軸方向(容器上下方向)に貫通するように形成された未閉塞部(未シール部)である固定部19部分のシート材間に挿入され、シール部17により融着され、容器本体2に対し液密に固着されている。
薬剤排出ポート3は、容器本体2内に充填された薬剤(薬液)を排出するためのものである。この実施例における排出ポート3は、図1ないし図3に示すように、上端(先端部)が開口した筒状体30と、筒状部材の下端側に液密に取り付けられた薬剤排出用針により連通可能な連通部を備えている。連通部は、キャップ部材31と、その後端開口を封止するとともに薬剤排出用針の刺通が可能な弾性部材32とを備えている。連通部としては、このような形態のものに限定されるものではない。
【0016】
弾性部材32は、瓶針、カヌラ針等の針管(図示せず)が刺通可能なものであり、必要時にこの針管を刺通して、容器本体2内からの薬剤の排出もしくは容器本体2内への薬剤等の添加を行うことができる。また、弾性部材は、自己閉塞性を有し、針管を弾性部材から抜き取った後は、その穿刺孔が瞬時に閉塞し、薬剤の漏れを防止する。弾性部材の構成材料としては、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等の各種熱可塑性エラストマー、天然ゴム、イソプレンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴムのような各種ゴム材料等の弾性材料、あるいはこれらのうちの任意の2以上を組み合わせたもの(ブレンド、積層体等)、さらに、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン、あるいは、エチレン−酢酸ビニル共重合体、架橋型エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリアミド等の高分子材料を配合したものが挙げられる。
【0017】
薬剤排出ポート3の筒状体30およびキャップ部材31の構成材料としては、その用途や機能に応じた条件、例えば硬度、強度、靭性、耐薬品性、透明性、その他の条件を有する材料が用いられ、比較的硬質な材料で構成されているのが好ましく、これらの材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン(低密度〜高密度)、ポリ塩化ビニル(軟質〜硬質)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル(PET、PBT等)、ポリアミド、ABS樹脂、AS樹脂、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、フッ素系樹脂等が挙げられ、前述したような条件に応じ、適宜選択して用いることができる。
【0018】
この実施例の医療用複室容器1は、薬剤排出ポート3の上方を取り囲むように形成された連通阻害用弱シール部10が形成されている。連通阻害用弱シール部10は、剥離可能なものであり、剥離されない状態では、第1の薬剤室21と排出ポート3との連通を阻害している。そして、この連通阻害用弱シール部10により、第1の薬剤室21から隔離された第3室23が形成されている。つまり、連通阻害用弱シール部10と排出ポート3と閉塞部6(6a,6b)により、空間(第3室23)が形成されている。この空間(第3室)23は、空室となっている。しかし、第3室には、生体に投与されても無害な液体(例えば、水、生理食塩水)が添加されていることが好ましい。第3室23にこのように液体を入れることにより、第3室の内部の滅菌が確実なものとなる。また、第3室23に入れられる液体の量としては、第3室の大きさによって相違するが、0.1〜0.5ml程度であることが好ましい。また、第3室の容量1ml当たりの液体の添加量は、0.02〜0.1ml程度であることが好ましい。連通阻害用弱シール部10は、シート材を帯状に熱シール(熱融着、高周波融着、超音波融着等)することにより形成することができる。
また、本発明の医療用複室容器1は、可撓性材料により作製され、内部空間が剥離可能な仕切用弱シール部9により第1の薬剤室21と第2の薬剤室22に区分された容器本体2と、容器本体2の下端側シール部6に固定され、第1の薬剤室21の下端部と連通する排出ポート3と、第1の薬剤室21に収納された第1の薬剤と、第2の薬剤室22に収納された第2の薬剤と、第1の薬剤室21と排出ポート3との連通を阻害しかつ剥離可能な連通阻害用弱シール部10とを備える。そして、連通阻害用弱シール部10と排出ポート3と下端側シール部6により形成される空間内に、空間内の容積1ml当たり、0.005〜0.1mlの液体が添加されている。
この医療用複室容器1のように、第1の薬剤室21と排出ポート3との連通を阻害しかつ剥離可能な連通阻害用弱シール部10を設けることにより、仕切用弱シール部9が剥離されることなく第1の薬剤室21内の第1の薬剤のみが投与されることを防止でき好ましい。しかし、連通阻害用弱シール部10を設けることにより空間(第3室23)が形成される。複室容器1より排出される薬剤は、この空間を通過するため、滅菌確保が必要となる。
そこで、上記の本発明の医療用複室容器は、上記の連通阻害用弱シール部10を設けることにより形成される空間内を確実に滅菌できる医療用複室容器を提供するものである。
この目的を達成するために、上述したように、連通阻害用弱シール部10を設けることにより形成される空間23内に微量の液体が添加されている。液体としては、生体に投与されても無害な液体(例えば、水、生理食塩水)が用いられる。そして、このように連通阻害用弱シール部10を設けることにより形成される空間23内に微量の液体が添加(封入)された状態にて、高圧蒸気滅菌されることにより、添加された液体が、閉塞空間である第3室23内にて蒸気化し、第3室23内の内面および空間を滅菌する。そして、第3室23への液体の添加量としては、第3室の空間内の容積1ml当たり、0.005ml〜0.1mlであることが好ましい。特に、第3室の空間内の容積1ml当たり、0.01〜0.05mlであることが望ましい。添加される液体としては、上述したように、水(例えば、無菌水、RO水、蒸留水)、生理食塩水などが好ましい。そして、本発明の医療用複室容器1は、上記の第3室23に上記の液体が添加された後に封止され、高圧蒸気滅菌される。
【0019】
そして、医療用複室容器1は、排出ポート3の付近に設けられ、第1の薬剤室21と排出ポート3との連通を阻害しかつ剥離可能な連通阻害用弱シール部10を備える。連通阻害用弱シール部10のシール強度(初期の剥離強度)は、特に限定されないが、通常は、0.5〜6.0kgf/20mm幅程度であるのが好ましく、1.0〜5.0kgf/20mm幅であるのがより好ましい。
連通阻害用弱シール部10のシール強度は、仕切用弱シール部9のシール強度とほぼ同じ、または若干弱いもしくは若干強いものであることが好ましい。第1の薬剤室21部分の圧迫による2つの弱シール部9,10の剥離を推奨する場合には、連通阻害用弱シール部10のシール強度は、仕切用弱シール部9のシール強度とほぼ同じまたは若干強いものであることが好ましい。このようにすることにより、容器本体2の第1の薬剤室21部分を圧迫したとき、連通阻害用弱シール部10が仕切用弱シール部9より先に剥離することがない。
また、第2の薬剤室22部分の圧迫による2つの弱シール部9,10の剥離を推奨するものであってもよく、この場合には、連通阻害用弱シール部10のシール強度は、剥離可能であればどのようなレベルのものであってもよい。好ましくは、仕切用弱シール部9のシール強度とほぼ同じまたは若干強いもしくは若干弱いものであることが好ましい。
【0020】
そして、医療用複室容器1は、筒状体であって、上述したように、排出ポート3が取り付けられる側に形成された一端部(下端部)シール部6を備えている。そして、連通阻害用弱シール部10は、図2に示すように、一端が閉塞部6(6a)より仕切用弱シール部9側に延びる第1の部分11と、第1の部分11と連続しかつ排出ポート3の中心軸に対してほぼ直交する方向に延びる第2の部分12と、第2の部分12と連続しかつ閉塞部6(6b)側に延びかつ閉塞部6(6b)に到達する第3の部分13を備え、排出ポート3の先端部の上方を取り囲むように形成されている。
【0021】
そして、排出ポート3は、図2および図3に示すように、ほぼ円筒状の先端部30aと扁平状の先端部30bを備える筒状体30を備えている。このため、排出ポート3の先端部30bは本体部30aより断面積が小さいものとなっている。具体的には、筒状体30は、扁平状の先端部30bを有し、端部(先端部)が開口している。排出ポートの先端30dの開口面積は、使用時に排出ポートに接続される針管の内部流の断面積よりも大きいことが、流量確保の点より好ましい。排出ポートの先端30dの開口面積としては、5mm2以上が好ましく、特に、10mm2以上であることが好ましい。また、排出ポートは、使用時に排出ポートに接続される針管が侵入可能な内径および抜け落ちないように侵入可能な長さを有するものが用いられる。排出ポートの本体部の内径は、5mm以上であることが好ましく、特に、8mm以上であることが好ましい。筒状体30の扁平状部分30bの長さとしては、10〜15mm程度が好適である。筒状体30の扁平状部分30bにおける厚さ(外面間厚さ)としては、2〜8mm程度が好適であり、特に、3〜5mmが好ましい。また、筒状体30の扁平状部分30bにおける内部通路の厚さWとしては、0.5〜2.5mm程度が好適である。また、筒状体30の円筒状部分の外径としては、10〜20mm程度が好適である、特に、14〜16mmが好ましい。
【0022】
そして、排出ポート3の先端部の先端30dと連通阻害用弱シール部10の第2の部分12における排出ポート側端縁12aとの距離H1は、6〜15mmとなっている。特に、距離H1は、8〜10mmであることが好ましい。この実施例では、図2および図3に示すように、排出ポート3の先端部30bは扁平状となっているため、排出ポート3の先端部の先端30dを連通阻害用弱シール部10の第2の部分12に近接させても、連通阻害用弱シール部10の第2の部分12が押し広げられることが少ない。このため、連通阻害用弱シール部10にシール不良が生じることが少ない。また、上述のように、排出ポート3の先端部の先端30dを連通阻害用弱シール部10の第2の部分12に近接させることができるため、第3室23を形成するシートの密着する部分の形成を少ないものとすることができ、予期しないブロッキングの発生を防止できる。
さらに、この実施例の医療用複室容器1では、図2に示すように、一端部(下端部)シール部6(6a、6b)は、第1の薬剤室21側の端縁の排出ポート3の両側部に形成された直線部分16a,16bを備える。連通阻害用弱シール部10の第2の部分12における排出ポート側端縁12aは、排出ポート3の両側部に位置する閉塞部6a,6bの直線部分16a,16bのそれぞれの排出ポート側端P1,P2を結ぶ仮想線より仕切用弱シール部9側に位置している。そして、排出ポート側端縁12aと上記の直線部分16a,16bのそれぞれの排出ポート側端P1,P2を結ぶ仮想線との間の距離Lは、0〜7mmであることが好ましい。特に、距離Lは、1〜5mmであることが好ましい。
【0023】
さらに、この実施例の医療用複室容器1では、図2に示すように、排出ポート3の両側部に位置する閉塞部6a,6bの直線部分16a,16bのそれぞれの排出ポート側端P1,P2を結ぶ仮想線は、排出ポート3の先端部の先端30dより、連通阻害用弱シール部10側となっている。つまり、排出ポート3の先端部の先端30dは、閉塞部6a,6bの直線部分16a,16bのそれぞれの排出ポート側端P1,P2を結ぶ仮想線より、連通阻害用弱シール部10側に突出しないものとなっている。
上記のようにすることにより、連通阻害用弱シール部10が薬剤室21側に大きく飛び出さない形状となり、連通阻害用弱シール部10のシール強度を強くしなくても、輸送時等の外圧によるシール部の剥離がない。
【0024】
そして、排出ポート3の先端部の先端30dと上記の直線部分16a,16bのそれぞれの排出ポート側端P1,P2を結ぶ仮想線との間の距離(H1−L)は、1〜15mmであることが好ましい。特に、距離(H1−L)は、4〜8mmであることが好ましい。
さらに、この実施例の医療用複室容器1では、図1に示すように、容器本体2の他端部(上端部)には、第2の薬剤室22内に侵入するように固定された薬剤容器4が設けられている。薬剤容器4は、他端側(上端側)シール部(第2の閉塞部)における軸方向(容器上下方向)に貫通するように形成された未閉塞部(未シール部)である固定部18部分のシート材間に挿入され、シール部15により融着され、容器本体2に対し液密に固着されている。薬剤容器4は、薬剤容器本体部と、操作部4aと蓋部4bとを有する。薬剤容器4は、操作部4aが第2の薬剤室22内に突出するように容器本体2に固定されている。薬剤容器4は、内部に薬剤を収納しており、操作部4aの破断操作を行うことにより、薬剤容器内の薬剤は、第2の薬剤室22内に流入する。
【0025】
薬剤容器4内に収納される薬剤としては、輸液剤に配合・溶解させるものであって、例えば抗生物質、ビタミン剤(総合ビタミン剤)、各種アミノ酸、ヘパリン等の抗血栓剤、インシュリン、抗腫瘍剤、鎮痛剤、強心剤、静注麻酔剤、抗パーキンソン剤、潰瘍治療剤、副腎皮質ホルモン剤、不整脈用剤、補正電解質、抗ウィルス薬、免疫賦活剤等が挙げられる。また、薬剤容器4内は、常圧でもよいが、減圧または真空状態としてもよい。
薬剤容器4の構成材料としては、硬質ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、環状ポリオレフィン[具体的には、ZEONEX(日本ゼオン株式会社製)、APEL(三井化学株式会社製)]、ポリプロピレンホモポリマー、高密度ポリエチレンのようなポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボネート、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアセタール、ポリアリレート、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、アイオノマー、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)のようなポリエステル、ブタジエン−スチレン共重合体、芳香族または脂肪族ポリアミド等の各種樹脂、あるいはこれらを任意に組み合わせたものが挙げられる。これらの中でも、安全性が高く、容器本体2との密着性に優れるという点で、硬質ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルが好ましい。
【0026】
また、上述した実施例では、排出ポート3に用いられる筒状体30は、本体部30aと連続する急激な変形部30cを有し、この変形部30cより端部側はほぼ同じ厚さの内部通路を有するものとなっている。しかし、このようなものに限定されるものではなく、図4に示す筒状部材50のように、本体部50aより徐々に内部通路の厚さが小さくなる傾斜した扁平状の先端部50bを備えるものであってもよい。
そして、筒状体50は、扁平状の先端部50bの先端50dにて開口している。排出ポートの先端50dの開口面積は、使用時に排出ポートに接続される針管の内部流の断面積よりも大きいことが、流量確保の点より好ましい。排出ポートの先端50dの開口面積としては、5mm2以上が好ましく、特に、10mm2以上であることが好ましい。また、排出ポートは、使用時に排出ポートに接続される針管が侵入可能な内径および抜け落ちないように侵入可能な長さを有するものが用いられる。排出ポートの本体部の内径は、5mm以上であることが好ましく、特に、8mm以上であることが好ましい。筒状体50の扁平状部分50bの長さとしては、10〜15mm程度が好適である。筒状体50の扁平状部分50bにおける厚さ(外面間厚さ)としては、2〜8mm程度が好適であり、特に、3〜5mmが好ましい。また、筒状体50の円筒状部分の外径としては、10〜20mm程度が好適である、特に、14〜16mmが好ましい。また、この実施例においても、排出ポート3の先端部の先端50dと連通阻害用弱シール部10の第2の部分12における排出ポート側端縁12aとの距離は、6〜15mmであることが好ましく、特に好ましくは、8〜10mmである。
【0027】
次に、図5ないし図7に示す実施例の医療用複室容器20について説明する。
図5は、本発明の医療用複室容器の他の実施例の正面図であり、図6は、図5の医療用複室容器の排出ポート付近の部分拡大図であり、図7は、図6のB−B線断面図である。
この実施例の医療用複室容器20は、可撓性材料により形成され、内部空間が剥離可能な仕切用弱シール部9により第1の薬剤室21と第2の薬剤室22に区分された容器本体2と、第1の薬剤室21の下端部と連通可能な排出ポート3と、第1の薬剤室21に収納された第1の薬剤と、第2の薬剤室22に収納された第2の薬剤とを備える薬剤入り医療用複室容器である。医療用複室容器20は、筒状体であって、排出ポート3が取り付けられる側に形成された閉塞部6と、第1の薬剤室21と排出ポート3との連通を阻害しかつ剥離可能な連通阻害用弱シール部10を備える。さらに、連通阻害用弱シール部10は、一端が閉塞部6(6a)より仕切用弱シール部9側に延びる第1の部分11と、第1の部分11と連続しかつ排出ポート3の中心軸に対してほぼ直交する方向に延びる第2の部分12と、第2の部分12と連続しかつ閉塞部6(6b)側に延びかつ閉塞部に到達する第3の部分13を備え、排出ポート3の先端部の上方を取り囲むように形成されている。そして、排出ポート3は、縮径する先端部を備える筒状体であり、排出ポート3の先端部の先端60aと連通阻害用弱シール部10の第2の部分12における排出ポート側端縁12aとの距離H2は、8〜15mmとなっている。
【0028】
この実施例の医療用複室容器20の基本構成は、上述した医療用複室容器1と同じである。同一構成部分については同じ符号を付し、上述した説明を参照するものとする。医療用複室容器20と上述した医療用複室容器1との相違は、排出ポート3の先端部60bの形状である。
この実施例の医療用複室容器20における排出ポート3は、図6および図7に示すように、円錐状に縮径する先端部60bを備える筒状体60が用いられている。そして、排出ポート3の先端部の先端60dと連通阻害用弱シール部10の第2の部分12における排出ポート側端縁12aとの距離は、8〜15mmとなっている。排出ポート3は、本体部60aと連続し、連通阻害用弱シール部10の第2の部分12方向に向かってテーパー状に縮径する先端部60bを有し、端部(先端部)60dにて開口した筒状部材60を備えている。排出ポートの先端60dの開口面積は、使用時に排出ポートに接続される針管の内部流の断面積よりも大きいことが、流量確保の点より好ましい。排出ポートの先端60dの開口面積としては、5mm2以上が好ましく、特に、10mm2以上であることが好ましい。また、排出ポートは、使用時に排出ポートに接続される針管が侵入可能な内径および抜け落ちないように侵入可能な長さを有するものが用いられる。排出ポートの本体部の内径は、5mm以上であることが好ましく、特に、8mm以上であることが好ましい。筒状体60の縮径部分60bの長さとしては、10〜15mm程度が好適である。筒状体60の先端外径としては、2〜8mm程度が好適であり、特に、3〜5mmが好ましい。また、筒状体60の先端内径としては、0.5〜2.5mm程度が好適である。また、筒状体60の円筒状部分の外径としては、10〜20mm程度が好適である、特に、14〜16mmが好ましい。
【0029】
そして、排出ポート3の先端部の先端60dと連通阻害用弱シール部10の第2の部分12における排出ポート側端縁12aとの距離H2は、6〜15mmとなっている。特に、距離H2は、8〜10mmであることが好ましい。この実施例では、図6に示すように、排出ポート3の先端部60bは円錐状(具体的には、円錐台状)となっているため、排出ポート3の先端部の先端60aを連通阻害用弱シール部10の第2の部分12に近接させても、連通阻害用弱シール部10の第2の部分12が押し広げられることが少ない。このため、連通阻害用弱シール部10にシール不良が生じることが少ない。また、上述のように、排出ポート3の先端部の先端60aを連通阻害用弱シール部10の第2の部分12に近接させることができるため、第3室23を形成するシートの密着する部分の形成を少ないものとすることができ、予期しないブロッキングの発生を防止できる。
【0030】
次に、図8ないし図10に示す実施例の医療用複室容器40について説明する。
図8は、本発明の医療用複室容器の他の実施例の正面図であり、図9は、図8の医療用複室容器の排出ポート付近の部分拡大図であり、図10は、図9のC−C線断面図である。
この実施例の医療用複室容器40は、可撓性材料により形成され、内部空間が剥離可能な仕切用弱シール部9により第1の薬剤室21と第2の薬剤室22に区分された容器本体2と、第1の薬剤室21の下端部と連通可能な排出ポート3と、第1の薬剤室21に収納された第1の薬剤と、第2の薬剤室22に収納された第2の薬剤とを備える薬剤入り医療用複室容器である。医療用複室容器40は、筒状体であって、排出ポート3が取り付けられる側に形成された閉塞部6と、第1の薬剤室21と排出ポート3との連通を阻害しかつ剥離可能な連通阻害用弱シール部10を備える。さらに、連通阻害用弱シール部10は、一端が閉塞部6(6a)より仕切用弱シール部9側に延びる第1の部分11と、第1の部分11と連続しかつ排出ポート3の中心軸に対してほぼ直交する方向に延びる第2の部分12と、第2の部分12と連続しかつ閉塞部6(6b)側に延びかつ閉塞部に到達する第3の部分13を備え、排出ポート3の先端部の上方を取り囲むように形成されている。そして、排出ポート3は、ほぼ同一外径を備える円筒状であり、排出ポート3の先端部の先端70aと連通阻害用弱シール部10の第2の部分12における排出ポート側端縁12aとの距離H3は、20〜25mmとなっている。
【0031】
この実施例の医療用複室容器40の基本構成は、上述した医療用複室容器1と同じである。同一構成部分については同じ符号を付し、上述した説明を参照するものとする。医療用複室容器40と上述した医療用複室容器1との相違は、排出ポート3の先端部の形状である。
この実施例の医療用複室容器40における排出ポート3は、図9および図10に示すように、ほぼ同一外径のまま上端側に延びる先端部を備える筒状体70が用いられている。そして、排出ポート3の先端部の先端70dと連通阻害用弱シール部10の第2の部分12における排出ポート側端縁12aとの距離H3は、20〜25mmとなっている。排出ポート3は、円筒状の本体部70aの先端により形成された先端部を有し、端部(先端部)が開口した筒状部材70を備えている。筒状部材70の先端部の先端70dの内径としては、10〜14mm程度が好適である。また、筒状部材70の円筒状部分の外径としては、14〜18mm程度が好適である。
【0032】
そして、排出ポート3の先端部の先端70dと連通阻害用弱シール部10の第2の部分12における排出ポート側端縁12aとの距離H3は、15〜30mmとなっている。特に、距離H3は、20〜25mmであることが好ましい。
そして、上述したすべて実施例の医療用複室容器における仕切用弱シール部9および連通阻害用弱シール部10の形成方法は、特に限定されず、通常使用されている熱シール用加熱金型(熱シールバー)等を用いて行うことができる。また、高圧蒸気滅菌等の熱滅菌時に仕切用弱シール部9と連通阻害用弱シール部10の部位にブロッキングを生じさせる方法を用いても良い。
【0033】
次に、図11ないし図17に示す実施例の医療用複室容器80について説明する。
図11は、本発明の医療用複室容器の他の実施例の正面図であり、図12は、図11の医療用複室容器の排出ポート付近の部分拡大図である。図13は、図11の医療用複室容器に使用される排出ポートの正面図である。図14は、図13に示す排出ポートの側面図である。図15は、図13のD−D線断面図である。図16は、図14のE−E線断面図である。図17は、図13に示す排出ポートの作用を説明するための説明図である。
この実施例の医療用複室容器80と上述した実施例の医療用複室容器1との相違は、排出ポート90の構成および連通阻害用弱シール部100の形態のみであり、その他は、同じであり、同じ符号を付し、上述した説明を参照するものとする。
【0034】
この医療用複室容器80においても、連通阻害用弱シール部100は、一端が排出ポート90が取り付けられた閉塞部6(6a)より仕切用弱シール部9側に延びる第1の部分101と、第1の部分101と連続しかつ排出ポート90の中心軸に対してほぼ直交する方向に延びる第2の部分102と、第2の部分102と連続しかつ閉塞部6(6b)側に延びかつ閉塞部に到達する第3の部分103を備え、排出ポート90の先端部の上方を取り囲むように形成されている。
そして、排出ポート90は、図12に示すように、本体部93aと先端部94を有する先端が閉塞した筒状体93であり、先端部94は本体部93aより断面積が小さいものとなっており、さらに、排出ポート90の先端部94の先端94aと連通阻害用弱シール部100の第2の部分102における排出ポート側端縁102aとの距離H1は、6〜15mmとなっている。好ましくは、8〜10mmである。
【0035】
排出ポート90が備える筒状体93は、本体部93aと閉塞しかつ破断可能な扁平状の先端部94を備えている。そして、この実施例では、先端部94の先端側は、先端94aに向かって外面間距離が短くなるように移行領域となっている。具体的には、先端94aに向かって外面間距離が短くなる傾斜部94bとなっている。なお、傾斜部に限定されるものではなく、先端94aに向かって外面間距離が短くなる湾曲部であってもよい。そして、このような移行領域を設けることにより、先端部94の先端94aにおける外面間距離が、先端部94において、最も短いものとなっている。
そして、破断後の排出ポートの開口面積は、使用時に排出ポートに接続される針管の内部流の断面積よりも大きいことが、流量確保の点より好ましい。破断後の排出ポートの開口面積としては、5mm2以上が好ましく、特に、10mm2以上であることが好ましい。また、排出ポートは、使用時に排出ポートに接続される針管が侵入可能な内径および抜け落ちないように侵入可能な長さを有するものが用いられる。排出ポートの本体部の内径は、5mm以上であることが好ましく、特に、8mm以上であることが好ましい。筒状体の扁平状部分94の長さとしては、10〜15mm程度が好適である。筒状体の扁平状部分94における厚さ(外面間厚さ)としては、2〜8mm程度が好適であり、特に、3〜5mmが好ましい。また、筒状体の円筒状部分(本体部93a)の外径としては、10〜20mm程度が好適である、特に、14〜16mmが好ましい。
【0036】
この医療用複室容器80に用いられる排出ポート90は、後端部が開口した筒状体93と、筒状体93の後端部を封鎖するシール部材95を備え、かつ、シール部材の一部が針管の穿刺が可能な弾性部材95aにより形成されているものである。
そして、医療用容器用筒状体93は、容器本体を備える医療用容器に用いられる医療用容器用筒状体であって、筒状体93は、硬質もしくは半硬質材料により形成されており、さらに、筒状体93は、本体部93aと、本体部93aの先端部に設けられた破断可能部96と、本体部93aの破断可能部96を挟むようにそれぞれ設けられるとともに容器本体の一方の内面に固着された第1の応力付与部91および容器本体の他方の内面に固着された第2の応力付与部92とを備え、破断可能部96は、第1の応力付与部91および第2の応力付与部92間の広がりにより破断し、本体部93aを開口するものである。また、2つの応力付与部91,92により先端部94が形成されている。
【0037】
この排出ポート90は、非連通排出ポートである。排出ポート90は、図15および図16に示すように、破断されない状態では、薬剤室21内と連通しないものとなっている。排出ポート90は、図13ないし図16に示すように、排出路98若しくは中空部を有する本体部93aと、本体部93aの先端部付近を一端として延びる第1の応力付与部91および第2の応力付与部92と、第1および第2の応力付与部91,92が広げられたときに破断し、本体部93aを外部と連通させる破断可能部96とを備え、さらに、第1の応力付与部91は容器本体2の薬液室を形成する一方のシート内面に固定されており、第2の応力付与部92は薬液室を形成する他方のシート内面に固定されており、薬液室の押圧時の容器本体2の第1の応力付与部91および第2の応力付与部92の固定部の膨らみにより、破断可能部96が破断するものである。
第1の応力付与部91は、本体部93aの先端部付近の一方のシート側部分から延びるものであり、第2の応力付与部92は、本体部93aの先端部付近の他方のシート側部分から延びるものであり、破断可能部96は、第1の応力付与部91及び第2の応力付与部92が薬剤室の押圧時の容器本体2の第1の応力付与部91および第2の応力付与部92の固定部の膨らみにより、一方のシート側及び他方のシート側に破断するものとなっている。
【0038】
この排出ポート90は、図13ないし図17に示すように、排出路98若しくは中空部を有する本体部93aと、本体部93aに設けられた破断可能部96と、第1の応力付与部91と、第2の応力付与部92とを備えている。
実施例の医療用容器用筒状体93は、本体部93aと、破断可能部96と、第1の応力付与部91と、第2の応力付与部92とを備えている。また、筒状部93の基端部には、シール部材95が取り付けられる蓋部取付部97が形成されている。また、筒状部93の基端部は、容器本体2に取り付け可能なように破断可能部より基端側にある程度の長さを有している。
また、シール部材95は、基端部が閉塞された筒状部となっている。シール部材95の先端部は、筒状部93の蓋部取付部97に取り付け可能な形状となっている。蓋部材95の基端部(排出ポートの排出口)には、針管(具体的には、排出用針:図示せず)等を挿通可能な弾性部材95aが設けられている。
弾性部材95aとしては、上述したものと同様であることが好ましい。筒状部の中空部には、粉末状もしくは固形状の薬剤が収容されていてもよい。特に、粉末状であることが好ましい。
【0039】
そして、この排出ポート90では、第1の応力付与部91および第2の応力付与部92は、図13ないし図16に示すように、本体部93aの破断可能部付近を基端として延出するとともに、先端は自由端となっている。第1の応力付与部91および第2の応力付与部92は、両者間を開く力が付与されたときに、その力を破断可能部96を破断するための応力に変換する機能を備えている。また、第1の応力付与部91と第2の応力付与部92とは向かい合うように形成されていることが好ましい。また、第1の応力付与部91と第2の応力付与部92の本体部は縦長の矩形状に形成されていることが好ましい。このような構成により、容器本体2を押圧して膨らませた際に、第1の応力付与部91と第2の応力付与部92とにより、破断可能部96に確実に破断応力が付与される。
【0040】
具体的には、この実施例の医療用容器における医療用容器用筒状体93では、第1の応力付与部91、第2の応力付与部92は、図13ないし図16に示すように、縦長の平板部と、平板部の両側に形成された側壁部とを備えている。さらに、第1の応力付与部91と第2の応力付与部92は、本体部の軸方向に延びるように設けられている。そして、第1の応力付与部91と第2の応力付与部92とは、側壁部分が対向するものとなっている。そして、第1の応力付与部91と第2の応力付与部92は、向かい合いかつ若干離間するように設けられている。また、第1の応力付与部91および第2の応力付与部92の先端(他端)は、この実施例のように自由端となっていることが好ましい。さらに、第1の応力付与部91および第2の応力付与部92は、向かい合うそれぞれの面に設けられ、相互に当接しない位置に配置されたリブを備えていることが好ましい。
【0041】
また、平板部の外面には、容器本体2の内面に接合される平面部91a,92aが形成されていることが好ましい。平面部91a,92aは、矩形状に形成され接合面が平坦に形成されている。平面部91a,92aは、第1の応力付与部91と第2の応力付与部92の基端部付近から先端まで形成されている。そして、容器本体2の内面に接合される平面部91a,92aは、その少なくとも一部が、容器本体2の内面に固着可能な材料により形成されている。具体的には、容器本体2の内面に接合される平面部91a,92aは、その一部若しくは全体が、容器本体2の形成材料(特に、容器本体2の内面側を形成する形成材料)と相溶性のある樹脂により形成されていることが好ましい。このような構成により、第1の応力付与部91と第2の応力付与部92を容器本体2の内面に確実に接合することができる。相溶性のある樹脂は、容器本体の構成材料と同一もしくは近似した材料であることが好ましい。相溶性のある樹脂層は、本発明の実施例では、2色成形により作製されていることが好ましい。なお、第1の応力付与部もしくは第2の応力付与部のすべてを薬剤容器の容器本体と相溶性のある樹脂により作製してもよい。相溶性のある樹脂層は容器本体の内面と接合し易いように平坦に作製されていることが好ましい。
【0042】
また、第1の応力付与部91と第2の応力付与部92とは、第1の応力付与部91と第2の応力付与部92の間において若干離間して形成されている。このように、第1の応力付与部91と第2の応力付与部92間はあまり大きく離間していない。このため、第1の応力付与部91と第2の応力付与部92間が、容器本体2への固定時に押圧されても、第1の応力付与部91および第2の応力付与部に許容される変形量は少なく、破断可能部96が破断するおそれがない。
そして、医療用複室容器80には、第1の応力付与部91の平面部91aの全体もしくは一部が、容器本体2の一方のシート内面と接合され、同様に、第2の応力付与部92の平面部92aの全体もしくは一部が、容器本体2の他方のシートの内面と接合されている。このため、第1の応力付与部及び第2の応力付与部が、薬剤室の押圧時の容器本体の第1の応力付与部および第2の応力付与部の固定部間の広がりに追従して広がり、後述する破断可能部を、一方のシート側及び他方のシート側に開き破断する。
【0043】
第1の応力付与部91の平面部91a及び第2の応力付与部92の平面部92aと容器本体2の各シートの内面との接合は、超音波融着、高周波融着、熱融着等により行われることが好ましい。
また、第1の応力付与部91もしくは第2の応力付与部92は、容器本体2の外部から担持して広げることが可能な構成であることが好ましい。
なお、本発明の第1の応力付与部及び第2の応力付与部は、上述した構成のものに限定されず、容器本体を構成する一方のシート内面と他方のシート内面と接合可能であり、かつ容器本体の膨らみに連動して破断可能部に応力を付与できる構成をしているものであればいかなる構成であってもよい。
【0044】
そして、破断可能部96は、本体部93aの先端部付近であって第1の応力付与部91と第2の応力付与部92間に位置しかつ排出ポート90の基端側に延びる先端側部分と、先端側部分96aのそれぞれの基端部において分岐して本体部93aの側面方向に延びる第1の応力付与部側部分96bおよび第2の応力付与部側部分96cを有している。このような構成により、第1の応力付与部91と第2の応力付与部92を広げたとき破断可能部96が破断して本体部93aが確実に開封される。
特に、この実施例における破断可能部96は、本体部93aの先端部付近において第1の応力付与部91と第2の応力付与部92との間を通るように設けられ基端側に延びている先端側部分96aと、先端側部分96aの基端部において分岐して先端側部分96aの基端部同士を繋ぐように設けられている第1の応力付与部側部分96bおよび第2の応力付与部側部分96cを備えている。つまり、この実施例では、破断可能部96の第1の応力付与部側部分96bおよび第2の応力付与部側部分96cは、とぎれることなく連続し、破断可能部96の先端側部分96aのそれぞれの基端部間を連結するものとなっている。なお、破断可能部96の第1の応力付与部側部分96bおよび第2の応力付与部側部分96cのいずれかのみ上記のように構成されているものとしてもよい。
【0045】
また、先端側部分96aは、図13,図15に示すように、本体部93aの先端部付近において第1の応力付与部91と第2の応力付与部92との中間付近を通り、かつ一方のシート側と他方のシート側のほぼ中間付近を通るように基端側に延びていることが好ましい。具体的に、この実施例の先端側部分96aは、図13,図15に示すように、本体部93aの一方のシート側及び他のシート側の中間付近に沿ってU字状に形成されている。このように構成することにより、本体部93aをほぼ真ん中から一方のシート側及び他方のシート側に引き裂くことができる。
【0046】
破断可能部96は、破断可能部な脆弱部である。具体的に、破断可能部は、薄肉部である。また、破断可能部96は、本体部93aに溝部を形成することにより作製されていることが好ましい。破断可能部は、溝部の断面がV字状の溝部を形成することにより作製されている。具体的には、溝部の角度は、30〜120°、特に、40〜60°、最小肉厚は、0.05〜0.3mm、特に、0.08〜0.2mmであることが好ましい。このような角度に溝形成部を作製することにより、容器本体2を膨らませた場合、破断可能部の中心に応力が集中して確実に破断するものとなる。また、溝部は、破断容易な形状であればいかなる形状のものであってもよく、実施例のようなV字形状に限られず半円形状、半楕円形状等であってもよい。また、本発明の破断可能部は、溝部が形成されることにより薄肉部が形成され破断可能となるものであるが、これに限定されるものではない。破断可能部は、例えば、薬剤収納部の破断可能部を形成する部分をその他の部分より脆弱な材質で形成することにより作製してもよい。具体的に、多色成形によって、破断可能部を形成する部分を破断容易な材料で作製して、その他の部分を破断容易でない材料にて作製することが好ましい。
【0047】
この実施例の医療用複室容器80においても、上述した医療用複室容器1と同様に、連通阻害用弱シール部100と排出ポート90と閉塞部6aにより、空間(第3室23)が形成されている。この空間(第3室)23は、空室となっている。しかし、第3室には、生体に投与されても無害な液体(例えば、水、生理食塩水)が添加されていることが好ましい。第3室23にこのように液体を入れることにより、第3室の内部の滅菌が確実なものとなる。また、第3室23に入れられる液体の量としては、第3室の大きさによって相違するが、0.1〜0.5ml程度であることが好ましい。また、第3室の容量1ml当たりの液体の添加量は、0.02〜0.1ml程度であることが好ましい。連通阻害用弱シール部100は、シート材を帯状に熱シール(熱融着、高周波融着、超音波融着等)することにより形成することができる。
【0048】
そして、図17に示すように、医療用複室容器80の第2の薬剤室22を押圧して仕切用弱シール部100を剥離させ、さらに押圧することにより第1の薬剤室21を膨らませると、膨らみに連動して第1の応力付与部91と第2の応力付与部92とが一方のシート及び他方のシート方向に開き、まず、破断可能部96の先端側部分96aが破断され、次いで、第1の応力付与部側部分96bおよび第2の応力付与部側部分96cが破断される。これにより、排出ポート90は開封され、本体部93aは薬液室21と連通し、容器本体2内の薬液は投与可能となる。また、この実施例の排出ポート90では、本体部93aより、第1の応力付与部91および第2の応力付与部92は分離する。
【0049】
(実験)
シート状筒状体として、ポリプロピレンにスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体をブレンドしてなる軟質樹脂をインフレーション成形により肉厚330μmの円筒状[折れ径(横幅210mm)]に成形したものを用いた。
そして、図1に示すように、上記のシート状筒状体の上端および下端にヒートシール部をヒート熱シールすることにより形成し、さらに、中央部に弱シール部、下端シール部の中央より上方に延びるように連通阻害用弱シール部をヒートシールすることにより形成した。そして、上端シール部の薬剤容器取付部に挿入し、ヒートシールにより固定した。また、下端シール部の排出ポート取付部に排出ポートの筒状体を挿入し、ヒートシールすることにより固定し、図1に示す医療用複室容器とほぼ同じ形態の実験用医療用複室容器を作製した。なお、筒状体には、封止部材は取り付けられていない。そして、この実験用医療用複室容器における排出ポートと連通し連通阻害用弱シール部により区画される空間の容積は、10mlであった。
上記のようにして、実験用医療用複室容器を9個準備した。
そして、上記の実験用医療用複室容器の各3個ずつのグループに分け、第1のグループの複室容器には、指標菌(バチルス・サブチルス)107cfuとRO水1.0mlを上記の連通阻害用弱シール部により区画される空間に添加した後、排出ポートの筒状体の先端部に封止部材を取付け、筒状体を封止した。また、第2のグループの複室容器には、指標菌(バチルス・サブチルス)107cfuとRO水0.1mlを上記空間に添加した後、排出ポートの筒状体の先端部に封止部材を取付け、筒状体を封止した。また、第3のグループの複室容器には、指標菌(バチルス・サブチルス)107cfuのみを上記空間に添加した後、排出ポートの筒状体の先端部に封止部材を取付け、筒状体を封止した。
そして、上記のように準備した複数の実験用医療用複室容器をオートクレーブ滅菌(115℃、加圧圧力約2気圧)し72時間放置後に、上記の連通阻害用弱シール部により区画される空間における生菌数を測定したところ、第1グループおよび第2グループでは、いずれの実験用医療用複室容器からも生菌は検出されなかった。しかし、第3グループの実験用医療用複室容器では、平均値107cfuの生菌の残存が検出された。
【符号の説明】
【0050】
1 医療用複室容器
2 容器本体
3 薬剤排出ポート
4 薬剤容器
5 他端側(上端側)シール部
6 一端側(下端側)シール部
9 仕切用弱シール部
10 連通阻害用弱シール部
21 第1の薬剤室
22 第2の薬剤室
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離可能な弱シール部により2つの薬剤室に区分されるとともに、各薬剤室に薬剤が充填された医療用複室容器に関する。
【背景技術】
【0002】
患者に静脈より栄養成分を投与する薬剤の中には、予め配合すると経時的変化を起こしやすい不安定な薬剤がある。例えば、あらかじめアミノ酸液とブドウ糖液を配合して保存すると、メイラード反応によって混合液が着色(褐変)する。また、カルシウム化合物はリン酸化合物と配合すると、高いpHの液剤中ではリン酸カルシウムの沈殿を生じ、製品価値が著しく低下してしまうことになる。このような薬剤を患者に投与する場合、例えば、特許第2675075号(特許文献1)のように混合前の成分を個別に収納する医療用複室容器を用い、投与直前に混合してから投与するようになってきている。
この医療用複室容器は、異なる成分の薬剤を個別に収納する複数の室と、各室間を仕切、外部からの圧力により剥離開封する仕切用弱シールとを備えている。
しかしながら、前記医療用複数容器は排出口側の収納部に液剤を収納している場合が多く、仕切用弱シールを剥離せずに、ゴム栓に瓶針を刺入し、排出口から液剤を取り出すという可能性がある。
このため、確実に各収納部に収納されている薬剤を混合した後に患者に投与することを保証し、薬剤を誤って混合しないで患者に投与する事故を確実に防止する方法が工夫されており、例えば、特開平9−327498号(特許文献2)や特開2002−136570号(特許文献3)のように薬剤排出口と薬剤を収納する分室との間を区切る連通阻害用弱シール部を備える複室容器が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2675075号公報
【特許文献2】特開平9−327498号公報
【特許文献3】特開2002−136570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2および3に示すものでは、仕切用弱シール部を剥離せずに、栓体に瓶針を刺入し、排出口から液剤を取り出すという可能性がかなり少ないものとなる。しかし、薬剤排出口と薬剤を収納する分室との間を仕切る連通阻害用弱シール部の間においてブロッキングによる密着が生じること、また逆に、薬剤排出口に近接していることにより連通阻害用弱シール部にシール不良が生じる場合がある。ブロッキングによる密着が生じると連通阻害用弱シール部の剥離作業に手間取るものとなる。また、連通阻害用弱シール部にシール不良が生じた場合には、仕切用弱シールを剥離せずに薬剤の投与が行われることが危惧される。また、ある程度の量の液体を連通阻害用弱シール部と薬剤排出ポート間に存在させることにより、ブロッキングを防止することも可能と考えるが、この場合、存在する液体のみ投与される危険性がある。
本発明の目的は、剥離可能な仕切用弱シール部により2つの薬剤室に区分されるとともに、薬剤室に薬剤が充填された医療用複室容器において、ブロッキングによる連通阻害用弱シール部の難剥離状態の形成を防止し、容易に投与準備ができ、さらに、連通阻害用弱シール部のシール不良を生じることがなく、薬剤が混合されずに投与されることを防止する医療用複室容器を提供するものである。
また、上記のような医療用複室容器では、連通阻害用弱シール部を設けることにより、空間(第3室)が形成される。複室容器より排出される薬剤は、この空間を通過するため、滅菌確保が必要となる。
そこで、上記の本発明の医療用複室容器は、上記の連通阻害用弱シール部を設けることにより形成される空間内を確実に滅菌できる医療用複室容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1) 可撓性材料により作製され、内部空間が剥離可能な仕切用弱シール部により第1の薬剤室と第2の薬剤室に区分された容器本体と、前記第1の薬剤室の下端部と連通可能な排出ポートと、前記第1の薬剤室に収納された第1の薬剤と、前記第2の薬剤室に収納された第2の薬剤とを備える医療用複室容器であって、該医療用複室容器は、前記第1の薬剤室と前記排出ポートとの連通を阻害しかつ剥離可能な連通阻害用弱シール部を備え、さらに、該連通阻害用弱シール部は、一端が前記排出ポートが取り付けられた閉塞部より前記仕切用弱シール部側に延びる第1の部分と、該第1の部分と連続しかつ前記排出ポートの中心軸に対してほぼ直交する方向に延びる第2の部分と、該第2の部分と連続しかつ前記閉塞部側に延びかつ前記閉塞部に到達する第3の部分を備え、前記排出ポートの先端部の上方を取り囲むように形成されており、前記排出ポートは、本体部と前記先端部を有する筒状体であり、該先端部は前記本体部より断面積が小さいものとなっており、さらに、該排出ポートの前記先端部の先端と前記連通阻害用弱シール部の前記第2の部分における排出ポート側端縁との距離は、6〜15mmである医療用複室容器。
(2) 前記排出ポートの先端部は、扁平形状となっている上記(1)に記載の医療用複室容器。
(3) 前記排出ポートの先端部は、前記連通阻害用弱シール部の前記第2の部分方向に向かってテーパー状に縮径している上記(1)に記載の医療用複室容器。
【0006】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
(4) 可撓性材料により作製され、内部空間が剥離可能な仕切用弱シール部により第1の薬剤室と第2の薬剤室に区分された容器本体と、前記第1の薬剤室の下端部と連通可能な排出ポートと、前記第1の薬剤室に収納された第1の薬剤と、前記第2の薬剤室に収納された第2の薬剤とを備える医療用複室容器であって、該医療用複室容器は、前記第1の薬剤室と前記排出ポートとの連通を阻害しかつ剥離可能な連通阻害用弱シール部を備え、さらに、該連通阻害用弱シール部は、一端が前記排出ポートが取り付けられた閉塞部より前記仕切用弱シール部側に延びる第1の部分と、該第1の部分と連続しかつ前記排出ポートの中心軸に対してほぼ直交する方向に延びる第2の部分と、該第2の部分と連続しかつ前記閉塞部側に延びかつ前記閉塞部に到達する第3の部分を備え、前記排出ポートの上方を取り囲むように形成されており、さらに、前記排出ポートは、ほぼ同一外径を備える円筒状であり、該排出ポートの先端部の先端と前記連通阻害用弱シール部の前記第2の部分における排出ポート側端縁との距離は、15〜30mmである医療用複室容器。
(5) 前記閉塞部は、第1の薬剤室側の端縁の前記排出ポートの両側部に形成された容器本体の側部方向に延びる直線部分を備え、前記連通阻害用弱シール部の前記第2の部分における排出ポート側端縁は、前記排出ポートの両側部に位置する前記閉塞部のそれぞれの直線部分を結ぶ仮想線より前記仕切用弱シール部側に位置している上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の医療用複室容器。
(6) 前記排出ポートの両側部に位置する前記閉塞部のそれぞれの直線部分を結ぶ仮想線は、前記排出ポートの先端部の先端より、前記連通阻害用弱シール部の前記第2の部分側となるものである上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の医療用複室容器。
(7) 前記連通阻害用弱シール部と前記排出ポートと前記閉塞部により形成される空間には、液体が添加されている上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の医療用複室容器。
(8) 前記仕切用弱シール部および前記連通阻害用弱シール部は、熱シールにより形成されている上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の医療用複室容器。
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
(9) 前記連通阻害用弱シール部と前記排出ポートと該排出ポートが固定された下端側シール部により形成される空間内には、液体が添加されており、かつ、該空間への前記液体の添加量は、前記空間内の容積1ml当たり、0.02〜0.1mlである上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の医療用複室容器。
(10) 前記連通阻害用弱シール部と前記排出ポートと該排出ポートが固定された下端側シール部により形成される空間内には、液体が添加されており、かつ、該空間への前記液体の添加量は、前記空間内の容積1ml当たり、0.005〜0.1mlである上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の医療用複室容器。
(11) 前記医療用複室容器は、高圧蒸気滅菌されているものである上記(9)または(10)に記載の医療用複室容器。
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
(12) 可撓性材料により作製され、内部空間が剥離可能な仕切用弱シール部により第1の薬剤室と第2の薬剤室に区分された容器本体と、該容器本体の下端側シール部に固定され、前記第1の薬剤室の下端部と連通する排出ポートと、前記第1の薬剤室に収納された第1の薬剤と、前記第2の薬剤室に収納された第2の薬剤と、前記第1の薬剤室と前記排出ポートとの連通を阻害しかつ剥離可能な連通阻害用弱シール部とを備える医療用複室容器であり、前記連通阻害用弱シール部と前記排出ポートと前記下端側シール部により形成される空間内に、該空間内の容積1ml当たり、0.005〜0.1mlの液体が添加されている医療用複室容器。
(13) 前記医療用複室容器は、高圧蒸気滅菌されているものである上記(12)に記載の医療用複室容器。
(14) 前記空間への前記液体の添加量は、前記空間内の容積1ml当たり、0.02〜0.1mlである上記(12)または(13)に記載の医療用複室容器。
(15) 前記空間への前記液体の添加量は、前記空間内の容積1ml当たり、0.01〜0.05mlである上記(12)または(13)に記載の医療用複室容器。
【発明の効果】
【0007】
本発明の医療用複室容器によれば、排出ポートの先端部の形状に対応して、連通阻害用弱シール部と排出ポートの先端部の先端との距離が的確なものとなっているため、連通阻害用弱シール部と前記排出ポート間において、医療用複室容器を形成する樹脂シートのブロッキングによる密着を防止でき、ブロッキングによる連通阻害用弱シール部の難剥離状態が形成されることを阻止する。また、排出ポートの先端部の形状に対応して、連通阻害用弱シール部と排出ポートの先端部の先端との距離が的確なものとなっているため、連通阻害用弱シール部のシール不良を生じることがない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の医療用複室容器の一実施例の正面図である。
【図2】図2は、図1の医療用複室容器の排出ポート付近の部分拡大図である。
【図3】図3は、図2のA−A線断面図である。
【図4】図4は、本発明の医療用複室容器の他の実施例の排出ポート付近の拡大部分断面図である。
【図5】図5は、本発明の医療用複室容器の他の実施例の正面図である。
【図6】図6は、図5の医療用複室容器の排出ポート付近の部分拡大図である。
【図7】図7は、図6のB−B線断面図である。
【図8】図8は、本発明の医療用複室容器の他の実施例の正面図である。
【図9】図9は、図8の医療用複室容器の排出ポート付近の部分拡大図である。
【図10】図10は、図9のC−C線断面図である。
【図11】図11は、本発明の医療用複室容器の他の実施例の正面図である。
【図12】図12は、図11の医療用複室容器の排出ポート付近の部分拡大図である。
【図13】図13は、図11の医療用複室容器に使用される排出ポートの正面図である。
【図14】図14は、図13に示す排出ポートの側面図である。
【図15】図15は、図13のD−D線断面図である。
【図16】図16は、図14のE−E線断面図である。
【図17】図17は、図13に示す排出ポートの作用を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の医療用複室容器について、図面に示す実施例を用いて説明する。
図1は、本発明の医療用複室容器の一実施例の正面図であり、図2は、図1の医療用複室容器の排出ポート付近の部分拡大図であり、図3は、図2のA−A線断面図であり、図4は、本発明の医療用複室容器の他の実施例の排出ポート付近の拡大部分断面図である。なお、図中の上側を「上端」、下側を「下端」として説明する。
この実施例の医療用複室容器1は、可撓性材料により形成され、内部空間が剥離可能な仕切用弱シール部9により第1の薬剤室21と第2の薬剤室22に区分された容器本体2と、第1の薬剤室21の下端部と連通可能な排出ポート3と、第1の薬剤室21に収納された第1の薬剤と、第2の薬剤室22に収納された第2の薬剤とを備える薬剤入り医療用複室容器である。医療用複室容器1は、第1の薬剤室21と排出ポート3との連通を阻害しかつ剥離可能な連通阻害用弱シール部10を備える。さらに、連通阻害用弱シール部10は、一端が排出ポート3が取り付けられた閉塞部6(6a)より仕切用弱シール部9側に延びる第1の部分11と、第1の部分11と連続しかつ排出ポート3の中心軸に対してほぼ直交する方向に延びる第2の部分12と、第2の部分12と連続しかつ閉塞部6(6b)側に延びかつ閉塞部に到達する第3の部分13を備え、排出ポート3の先端部の上方を取り囲むように形成されている。そして、排出ポート3は、本体部30aと先端部30bを有する筒状体であり、先端部30bは本体部30aより断面積が小さいものとなっており、さらに、排出ポート3の先端部30bの先端30dと連通阻害用弱シール部10の第2の部分12における排出ポート側端縁12aとの距離H1は、6〜15mmとなっている。好ましくは、8〜10mmである。
この実施例の医療用複室容器1は、シート状筒状体により形成された容器本体2を備え、この容器本体には、内部収納部を区画する仕切用弱シール部9が形成されており、収納部は、第1の薬剤室21と第2の薬剤室22とに区画されている。
また、図1に示すように、容器本体2の上端側および下端側には、第1の閉塞部(一端部シール部、言い換えれば、下端側シール部)6および第2の閉塞部(他端部シール部、言い換えれば、上端側シール部)5が設けられている。また、この実施例の医療用複室容器1では、第1の薬剤室21側に設けられた薬剤排出ポート3を備えている。
医療用複室容器1の容器本体2は、軟質合成樹脂により形成されている。容器本体2は、インフレーション成形法により筒状に成形されたものが好ましい。なお、容器本体2は、例えば、ブロー成形法などの種々の方法により製造されたものでもよい。また、容器本体2は、図1のような筒状体の外周部の全周(4辺)をシールしたもの、上下端のみ(2辺)をシールしたもの、2枚のシート材を重ねその外周部全周をシールしたもの、一枚のシートを2つ折りし、折り曲げ部以外の3辺をシールしたものなどの袋状物であってもよい。容器本体が、多層である場合は、共押出インフレーション成形法などによって成形することができる。また、容器本体2の上端側のシール部5のほぼ中央部には、医療用複室容器1をハンガー等に吊り下げるための孔25が設けられている。
【0010】
そして、容器本体2は、他端側シール部(第2の閉塞部)5の端部寄りの位置に薬剤容器4を固定するための薬剤容器固定部18(非シール部分)を備え、一端側(下端側)シール部6の中央部分には排出ポート3を固定するための排出ポート固定部19(非シール部分)を備えている。
容器本体2は、水蒸気バリヤー性を有することが好ましい。水蒸気バリヤー性の程度としては、水蒸気透過度が、50g/m2・24hrs・40℃・90%RH以下であることが好ましく、より好ましくは10g/m2・24hrs・40℃・90%RH以下であり、さらに好ましくは1g/m2・24hrs・40℃・90%RH以下である。この水蒸気透過度は、JISK7129(A法)に記載の方法により測定される。
このように容器本体2が水蒸気バリヤー性を有することにより、医療用複室容器1の内部からの水分の蒸散が防止できる。その結果、充填される薬剤(具体的には、薬液)の減少、濃縮を防止することができる。また、医療用複室容器1の外部からの水蒸気の侵入も防止することができる。
【0011】
このような容器本体2の形成材料として、ポリオレフィン類が含有されるとき、本発明の有用性が大きいものとなる。したがって、本発明においては、容器本体2の形成材料として、ポリオレフィン類を含むものであるのが好ましい。容器本体2の形成材料として、特に好ましいものとして、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブタジエン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)のようなポリオレフィン類に、スチレン−ブタジエン共重合体やスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体等のスチレン系熱可塑性エラストマーあるいはエチレン−プロピレン共重合体やエチレン−ブテン共重合体,プロピレン−αオレフィン共重合体等のオレフィン系熱可塑性エラストマーをブレンドした軟質樹脂を用いてもよい。この材料は、透明性に優れ、高強度で柔軟性に富み、耐熱性(特に滅菌時の耐熱性)、耐水性が高い他、加工性が特に優れ、製造コストの低減を図ることができる点で好ましい。
さらに、上記のブレンド樹脂を用いる場合には、2種以上の融点の異なる材料を用いることになり、容器本体2のシール部5やシール部6、第1の薬剤室21の側部シール部7、8、後述する仕切用弱シール部9および連通阻害用弱シール部10の各シール条件の設定、各シール部分のシール強度の安定化を容易かつ良好に図ることができる。
【0012】
また、容器本体は、このように前述したような材料よりなる単層構造のもの(単層体)であってもよいし、また種々の目的で、前述したような材料で内表面部分(内表面層)が形成された複数の層(特に異種材料の層)を重ねた多層積層体であってもよい。多層積層体の場合、複数の樹脂層を重ねたものであってもよいし、少なくとも1層の樹脂層に金属層を積層したものであってもよい。複数の樹脂層を重ねたものの場合、それぞれの樹脂の利点を併有することができ、例えば、容器本体2の耐衝撃性を向上させたり、対ブロッキング性を付与したりすることができる。また、金属層を有するものの場合、容器本体2のガスバリヤー性等を向上させることができる。例えば、アルミ箔等のフィルムが積層された場合、ガスバリヤー性の向上とともに、遮光性を付与することができる。また、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ケイ素等の酸化物からなる層を形成した場合、ガスバリヤー性の向上とともに、容器本体2の透明性を維持することができ、内部の視認性を確保することができる。
容器本体2を構成するシート材の厚さは、その層構成や用いる素材の特性(柔軟性、強度、水蒸気透過性、耐熱性等)等に応じて適宜決定され、特に限定されるものではないが、通常は、100〜550μm程度であるのが好ましく、200〜400μm程度であるのがより好ましい。
【0013】
そして、容器本体2は、仕切用弱シール部9を備えており、これにより、内部が2室に区分されている。仕切用弱シール部9は、容器本体2を横方向全体に横切る剥離可能な弱シール部と、弱シール部の両端に設けられた実質的に剥離不能な強シール部を備えるものであってもよい。上述した仕切用弱シール部9のシール強度(初期の剥離強度)は、特に限定されないが、通常は、0.12〜4.5kgf/20mm幅程度であるのが好ましく、0.35〜2.7kgf/20mm幅であるのがより好ましい。シール強度がこの範囲内であれば、輸送や保管中等に誤って仕切用弱シール部9が剥離することがなく、また、仕切用弱シール部9を剥離する作業も容易である。
そして、弱シール部は、熱シールにより形成することが好ましい。具体的には、加熱プレスにより行うことが好ましく、金型の温度は、容器本体2の形成材料の溶融温度より10℃以上低い温度で行うことにより形成することができる。
この実施例における仕切用弱シール部9は、容器本体2のシート材を帯状に融着することにより形成されている。この仕切用弱シール部9は、例えば、容器本体2の第1の薬剤室21もしくは第2の薬剤室22の部分を手で押圧し、第1の薬剤室21もしくは第2の薬剤室22の内圧を高めること、また、医療用複室容器1をハンガーに掛けた状態で容器本体2の第1の薬剤室21もしくは第2の薬剤室22部分を手で絞ることにより、第1の薬剤室21もしくは第2の薬剤室22の内圧を高めたりすることにより剥離する程度のシール強度を備える。これにより、特別の器具等を用いず、簡単な作業で仕切用弱シール部9による遮断を解除し、第1の薬剤室21と第2の薬剤室22の薬剤同士を混合することができる。
【0014】
また、医療用複室容器1の容積は、内部に収納する薬剤の種類等によって異なるが、通常は、第1の薬剤室の容積が、50〜3000mL程度であることが好ましく、第2の薬剤室の容積が、50〜3000mL程度であることが好ましい。
このように薬剤室を第1の薬剤室21と第2の薬剤室22の2つに区分することにより、反応等による変質、劣化を生じる物質を含有する液体を使用するまでは別々に保存でき、使用に際し、両液を混合することが好ましいとき等に適用することができる。それぞれの薬剤室に収納される薬剤としては、薬液、散剤などが考えられる。特に、本発明の医療用複室容器では、第1の薬剤は、薬液であることが好ましい。第2の薬剤は、薬液もしくは散剤いずれであってもよい。好ましくは、薬液である。第1の薬剤および第2の薬剤の組合せとしては、例えば、輸液剤では、メイラード反応による着色を防止するために、アミノ酸電解質液とブドウ糖液との組合せとしたり、他に、ブドウ糖液と重曹液等の組み合わせ、また、腹膜透析液剤としてブドウ糖が配合される側のpHを3〜5とし、他方の電解質液を混合後、投薬時にほぼ中性域のpHとなるように調整したものなどが挙げられる。
なお、本発明において、第1の薬剤および第2の薬剤は、特に限定されず、例えば、生理食塩水、電解質溶液、リンゲル液、高カロリー輸液、ブドウ糖液、アミノ酸輸液、脂肪輸液、注射用水、腹膜透析液、経口・経腸栄養剤等、いかなるものであってもよい。
【0015】
容器本体2の一端部(下端部)には、第1の薬剤室21に連通し得る薬剤排出ポート3が設けられている。薬剤排出ポート3は、一端側シール部(第1の閉塞部)6における軸方向(容器上下方向)に貫通するように形成された未閉塞部(未シール部)である固定部19部分のシート材間に挿入され、シール部17により融着され、容器本体2に対し液密に固着されている。
薬剤排出ポート3は、容器本体2内に充填された薬剤(薬液)を排出するためのものである。この実施例における排出ポート3は、図1ないし図3に示すように、上端(先端部)が開口した筒状体30と、筒状部材の下端側に液密に取り付けられた薬剤排出用針により連通可能な連通部を備えている。連通部は、キャップ部材31と、その後端開口を封止するとともに薬剤排出用針の刺通が可能な弾性部材32とを備えている。連通部としては、このような形態のものに限定されるものではない。
【0016】
弾性部材32は、瓶針、カヌラ針等の針管(図示せず)が刺通可能なものであり、必要時にこの針管を刺通して、容器本体2内からの薬剤の排出もしくは容器本体2内への薬剤等の添加を行うことができる。また、弾性部材は、自己閉塞性を有し、針管を弾性部材から抜き取った後は、その穿刺孔が瞬時に閉塞し、薬剤の漏れを防止する。弾性部材の構成材料としては、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等の各種熱可塑性エラストマー、天然ゴム、イソプレンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴムのような各種ゴム材料等の弾性材料、あるいはこれらのうちの任意の2以上を組み合わせたもの(ブレンド、積層体等)、さらに、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン、あるいは、エチレン−酢酸ビニル共重合体、架橋型エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリアミド等の高分子材料を配合したものが挙げられる。
【0017】
薬剤排出ポート3の筒状体30およびキャップ部材31の構成材料としては、その用途や機能に応じた条件、例えば硬度、強度、靭性、耐薬品性、透明性、その他の条件を有する材料が用いられ、比較的硬質な材料で構成されているのが好ましく、これらの材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン(低密度〜高密度)、ポリ塩化ビニル(軟質〜硬質)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル(PET、PBT等)、ポリアミド、ABS樹脂、AS樹脂、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、フッ素系樹脂等が挙げられ、前述したような条件に応じ、適宜選択して用いることができる。
【0018】
この実施例の医療用複室容器1は、薬剤排出ポート3の上方を取り囲むように形成された連通阻害用弱シール部10が形成されている。連通阻害用弱シール部10は、剥離可能なものであり、剥離されない状態では、第1の薬剤室21と排出ポート3との連通を阻害している。そして、この連通阻害用弱シール部10により、第1の薬剤室21から隔離された第3室23が形成されている。つまり、連通阻害用弱シール部10と排出ポート3と閉塞部6(6a,6b)により、空間(第3室23)が形成されている。この空間(第3室)23は、空室となっている。しかし、第3室には、生体に投与されても無害な液体(例えば、水、生理食塩水)が添加されていることが好ましい。第3室23にこのように液体を入れることにより、第3室の内部の滅菌が確実なものとなる。また、第3室23に入れられる液体の量としては、第3室の大きさによって相違するが、0.1〜0.5ml程度であることが好ましい。また、第3室の容量1ml当たりの液体の添加量は、0.02〜0.1ml程度であることが好ましい。連通阻害用弱シール部10は、シート材を帯状に熱シール(熱融着、高周波融着、超音波融着等)することにより形成することができる。
また、本発明の医療用複室容器1は、可撓性材料により作製され、内部空間が剥離可能な仕切用弱シール部9により第1の薬剤室21と第2の薬剤室22に区分された容器本体2と、容器本体2の下端側シール部6に固定され、第1の薬剤室21の下端部と連通する排出ポート3と、第1の薬剤室21に収納された第1の薬剤と、第2の薬剤室22に収納された第2の薬剤と、第1の薬剤室21と排出ポート3との連通を阻害しかつ剥離可能な連通阻害用弱シール部10とを備える。そして、連通阻害用弱シール部10と排出ポート3と下端側シール部6により形成される空間内に、空間内の容積1ml当たり、0.005〜0.1mlの液体が添加されている。
この医療用複室容器1のように、第1の薬剤室21と排出ポート3との連通を阻害しかつ剥離可能な連通阻害用弱シール部10を設けることにより、仕切用弱シール部9が剥離されることなく第1の薬剤室21内の第1の薬剤のみが投与されることを防止でき好ましい。しかし、連通阻害用弱シール部10を設けることにより空間(第3室23)が形成される。複室容器1より排出される薬剤は、この空間を通過するため、滅菌確保が必要となる。
そこで、上記の本発明の医療用複室容器は、上記の連通阻害用弱シール部10を設けることにより形成される空間内を確実に滅菌できる医療用複室容器を提供するものである。
この目的を達成するために、上述したように、連通阻害用弱シール部10を設けることにより形成される空間23内に微量の液体が添加されている。液体としては、生体に投与されても無害な液体(例えば、水、生理食塩水)が用いられる。そして、このように連通阻害用弱シール部10を設けることにより形成される空間23内に微量の液体が添加(封入)された状態にて、高圧蒸気滅菌されることにより、添加された液体が、閉塞空間である第3室23内にて蒸気化し、第3室23内の内面および空間を滅菌する。そして、第3室23への液体の添加量としては、第3室の空間内の容積1ml当たり、0.005ml〜0.1mlであることが好ましい。特に、第3室の空間内の容積1ml当たり、0.01〜0.05mlであることが望ましい。添加される液体としては、上述したように、水(例えば、無菌水、RO水、蒸留水)、生理食塩水などが好ましい。そして、本発明の医療用複室容器1は、上記の第3室23に上記の液体が添加された後に封止され、高圧蒸気滅菌される。
【0019】
そして、医療用複室容器1は、排出ポート3の付近に設けられ、第1の薬剤室21と排出ポート3との連通を阻害しかつ剥離可能な連通阻害用弱シール部10を備える。連通阻害用弱シール部10のシール強度(初期の剥離強度)は、特に限定されないが、通常は、0.5〜6.0kgf/20mm幅程度であるのが好ましく、1.0〜5.0kgf/20mm幅であるのがより好ましい。
連通阻害用弱シール部10のシール強度は、仕切用弱シール部9のシール強度とほぼ同じ、または若干弱いもしくは若干強いものであることが好ましい。第1の薬剤室21部分の圧迫による2つの弱シール部9,10の剥離を推奨する場合には、連通阻害用弱シール部10のシール強度は、仕切用弱シール部9のシール強度とほぼ同じまたは若干強いものであることが好ましい。このようにすることにより、容器本体2の第1の薬剤室21部分を圧迫したとき、連通阻害用弱シール部10が仕切用弱シール部9より先に剥離することがない。
また、第2の薬剤室22部分の圧迫による2つの弱シール部9,10の剥離を推奨するものであってもよく、この場合には、連通阻害用弱シール部10のシール強度は、剥離可能であればどのようなレベルのものであってもよい。好ましくは、仕切用弱シール部9のシール強度とほぼ同じまたは若干強いもしくは若干弱いものであることが好ましい。
【0020】
そして、医療用複室容器1は、筒状体であって、上述したように、排出ポート3が取り付けられる側に形成された一端部(下端部)シール部6を備えている。そして、連通阻害用弱シール部10は、図2に示すように、一端が閉塞部6(6a)より仕切用弱シール部9側に延びる第1の部分11と、第1の部分11と連続しかつ排出ポート3の中心軸に対してほぼ直交する方向に延びる第2の部分12と、第2の部分12と連続しかつ閉塞部6(6b)側に延びかつ閉塞部6(6b)に到達する第3の部分13を備え、排出ポート3の先端部の上方を取り囲むように形成されている。
【0021】
そして、排出ポート3は、図2および図3に示すように、ほぼ円筒状の先端部30aと扁平状の先端部30bを備える筒状体30を備えている。このため、排出ポート3の先端部30bは本体部30aより断面積が小さいものとなっている。具体的には、筒状体30は、扁平状の先端部30bを有し、端部(先端部)が開口している。排出ポートの先端30dの開口面積は、使用時に排出ポートに接続される針管の内部流の断面積よりも大きいことが、流量確保の点より好ましい。排出ポートの先端30dの開口面積としては、5mm2以上が好ましく、特に、10mm2以上であることが好ましい。また、排出ポートは、使用時に排出ポートに接続される針管が侵入可能な内径および抜け落ちないように侵入可能な長さを有するものが用いられる。排出ポートの本体部の内径は、5mm以上であることが好ましく、特に、8mm以上であることが好ましい。筒状体30の扁平状部分30bの長さとしては、10〜15mm程度が好適である。筒状体30の扁平状部分30bにおける厚さ(外面間厚さ)としては、2〜8mm程度が好適であり、特に、3〜5mmが好ましい。また、筒状体30の扁平状部分30bにおける内部通路の厚さWとしては、0.5〜2.5mm程度が好適である。また、筒状体30の円筒状部分の外径としては、10〜20mm程度が好適である、特に、14〜16mmが好ましい。
【0022】
そして、排出ポート3の先端部の先端30dと連通阻害用弱シール部10の第2の部分12における排出ポート側端縁12aとの距離H1は、6〜15mmとなっている。特に、距離H1は、8〜10mmであることが好ましい。この実施例では、図2および図3に示すように、排出ポート3の先端部30bは扁平状となっているため、排出ポート3の先端部の先端30dを連通阻害用弱シール部10の第2の部分12に近接させても、連通阻害用弱シール部10の第2の部分12が押し広げられることが少ない。このため、連通阻害用弱シール部10にシール不良が生じることが少ない。また、上述のように、排出ポート3の先端部の先端30dを連通阻害用弱シール部10の第2の部分12に近接させることができるため、第3室23を形成するシートの密着する部分の形成を少ないものとすることができ、予期しないブロッキングの発生を防止できる。
さらに、この実施例の医療用複室容器1では、図2に示すように、一端部(下端部)シール部6(6a、6b)は、第1の薬剤室21側の端縁の排出ポート3の両側部に形成された直線部分16a,16bを備える。連通阻害用弱シール部10の第2の部分12における排出ポート側端縁12aは、排出ポート3の両側部に位置する閉塞部6a,6bの直線部分16a,16bのそれぞれの排出ポート側端P1,P2を結ぶ仮想線より仕切用弱シール部9側に位置している。そして、排出ポート側端縁12aと上記の直線部分16a,16bのそれぞれの排出ポート側端P1,P2を結ぶ仮想線との間の距離Lは、0〜7mmであることが好ましい。特に、距離Lは、1〜5mmであることが好ましい。
【0023】
さらに、この実施例の医療用複室容器1では、図2に示すように、排出ポート3の両側部に位置する閉塞部6a,6bの直線部分16a,16bのそれぞれの排出ポート側端P1,P2を結ぶ仮想線は、排出ポート3の先端部の先端30dより、連通阻害用弱シール部10側となっている。つまり、排出ポート3の先端部の先端30dは、閉塞部6a,6bの直線部分16a,16bのそれぞれの排出ポート側端P1,P2を結ぶ仮想線より、連通阻害用弱シール部10側に突出しないものとなっている。
上記のようにすることにより、連通阻害用弱シール部10が薬剤室21側に大きく飛び出さない形状となり、連通阻害用弱シール部10のシール強度を強くしなくても、輸送時等の外圧によるシール部の剥離がない。
【0024】
そして、排出ポート3の先端部の先端30dと上記の直線部分16a,16bのそれぞれの排出ポート側端P1,P2を結ぶ仮想線との間の距離(H1−L)は、1〜15mmであることが好ましい。特に、距離(H1−L)は、4〜8mmであることが好ましい。
さらに、この実施例の医療用複室容器1では、図1に示すように、容器本体2の他端部(上端部)には、第2の薬剤室22内に侵入するように固定された薬剤容器4が設けられている。薬剤容器4は、他端側(上端側)シール部(第2の閉塞部)における軸方向(容器上下方向)に貫通するように形成された未閉塞部(未シール部)である固定部18部分のシート材間に挿入され、シール部15により融着され、容器本体2に対し液密に固着されている。薬剤容器4は、薬剤容器本体部と、操作部4aと蓋部4bとを有する。薬剤容器4は、操作部4aが第2の薬剤室22内に突出するように容器本体2に固定されている。薬剤容器4は、内部に薬剤を収納しており、操作部4aの破断操作を行うことにより、薬剤容器内の薬剤は、第2の薬剤室22内に流入する。
【0025】
薬剤容器4内に収納される薬剤としては、輸液剤に配合・溶解させるものであって、例えば抗生物質、ビタミン剤(総合ビタミン剤)、各種アミノ酸、ヘパリン等の抗血栓剤、インシュリン、抗腫瘍剤、鎮痛剤、強心剤、静注麻酔剤、抗パーキンソン剤、潰瘍治療剤、副腎皮質ホルモン剤、不整脈用剤、補正電解質、抗ウィルス薬、免疫賦活剤等が挙げられる。また、薬剤容器4内は、常圧でもよいが、減圧または真空状態としてもよい。
薬剤容器4の構成材料としては、硬質ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、環状ポリオレフィン[具体的には、ZEONEX(日本ゼオン株式会社製)、APEL(三井化学株式会社製)]、ポリプロピレンホモポリマー、高密度ポリエチレンのようなポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボネート、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアセタール、ポリアリレート、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、アイオノマー、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)のようなポリエステル、ブタジエン−スチレン共重合体、芳香族または脂肪族ポリアミド等の各種樹脂、あるいはこれらを任意に組み合わせたものが挙げられる。これらの中でも、安全性が高く、容器本体2との密着性に優れるという点で、硬質ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルが好ましい。
【0026】
また、上述した実施例では、排出ポート3に用いられる筒状体30は、本体部30aと連続する急激な変形部30cを有し、この変形部30cより端部側はほぼ同じ厚さの内部通路を有するものとなっている。しかし、このようなものに限定されるものではなく、図4に示す筒状部材50のように、本体部50aより徐々に内部通路の厚さが小さくなる傾斜した扁平状の先端部50bを備えるものであってもよい。
そして、筒状体50は、扁平状の先端部50bの先端50dにて開口している。排出ポートの先端50dの開口面積は、使用時に排出ポートに接続される針管の内部流の断面積よりも大きいことが、流量確保の点より好ましい。排出ポートの先端50dの開口面積としては、5mm2以上が好ましく、特に、10mm2以上であることが好ましい。また、排出ポートは、使用時に排出ポートに接続される針管が侵入可能な内径および抜け落ちないように侵入可能な長さを有するものが用いられる。排出ポートの本体部の内径は、5mm以上であることが好ましく、特に、8mm以上であることが好ましい。筒状体50の扁平状部分50bの長さとしては、10〜15mm程度が好適である。筒状体50の扁平状部分50bにおける厚さ(外面間厚さ)としては、2〜8mm程度が好適であり、特に、3〜5mmが好ましい。また、筒状体50の円筒状部分の外径としては、10〜20mm程度が好適である、特に、14〜16mmが好ましい。また、この実施例においても、排出ポート3の先端部の先端50dと連通阻害用弱シール部10の第2の部分12における排出ポート側端縁12aとの距離は、6〜15mmであることが好ましく、特に好ましくは、8〜10mmである。
【0027】
次に、図5ないし図7に示す実施例の医療用複室容器20について説明する。
図5は、本発明の医療用複室容器の他の実施例の正面図であり、図6は、図5の医療用複室容器の排出ポート付近の部分拡大図であり、図7は、図6のB−B線断面図である。
この実施例の医療用複室容器20は、可撓性材料により形成され、内部空間が剥離可能な仕切用弱シール部9により第1の薬剤室21と第2の薬剤室22に区分された容器本体2と、第1の薬剤室21の下端部と連通可能な排出ポート3と、第1の薬剤室21に収納された第1の薬剤と、第2の薬剤室22に収納された第2の薬剤とを備える薬剤入り医療用複室容器である。医療用複室容器20は、筒状体であって、排出ポート3が取り付けられる側に形成された閉塞部6と、第1の薬剤室21と排出ポート3との連通を阻害しかつ剥離可能な連通阻害用弱シール部10を備える。さらに、連通阻害用弱シール部10は、一端が閉塞部6(6a)より仕切用弱シール部9側に延びる第1の部分11と、第1の部分11と連続しかつ排出ポート3の中心軸に対してほぼ直交する方向に延びる第2の部分12と、第2の部分12と連続しかつ閉塞部6(6b)側に延びかつ閉塞部に到達する第3の部分13を備え、排出ポート3の先端部の上方を取り囲むように形成されている。そして、排出ポート3は、縮径する先端部を備える筒状体であり、排出ポート3の先端部の先端60aと連通阻害用弱シール部10の第2の部分12における排出ポート側端縁12aとの距離H2は、8〜15mmとなっている。
【0028】
この実施例の医療用複室容器20の基本構成は、上述した医療用複室容器1と同じである。同一構成部分については同じ符号を付し、上述した説明を参照するものとする。医療用複室容器20と上述した医療用複室容器1との相違は、排出ポート3の先端部60bの形状である。
この実施例の医療用複室容器20における排出ポート3は、図6および図7に示すように、円錐状に縮径する先端部60bを備える筒状体60が用いられている。そして、排出ポート3の先端部の先端60dと連通阻害用弱シール部10の第2の部分12における排出ポート側端縁12aとの距離は、8〜15mmとなっている。排出ポート3は、本体部60aと連続し、連通阻害用弱シール部10の第2の部分12方向に向かってテーパー状に縮径する先端部60bを有し、端部(先端部)60dにて開口した筒状部材60を備えている。排出ポートの先端60dの開口面積は、使用時に排出ポートに接続される針管の内部流の断面積よりも大きいことが、流量確保の点より好ましい。排出ポートの先端60dの開口面積としては、5mm2以上が好ましく、特に、10mm2以上であることが好ましい。また、排出ポートは、使用時に排出ポートに接続される針管が侵入可能な内径および抜け落ちないように侵入可能な長さを有するものが用いられる。排出ポートの本体部の内径は、5mm以上であることが好ましく、特に、8mm以上であることが好ましい。筒状体60の縮径部分60bの長さとしては、10〜15mm程度が好適である。筒状体60の先端外径としては、2〜8mm程度が好適であり、特に、3〜5mmが好ましい。また、筒状体60の先端内径としては、0.5〜2.5mm程度が好適である。また、筒状体60の円筒状部分の外径としては、10〜20mm程度が好適である、特に、14〜16mmが好ましい。
【0029】
そして、排出ポート3の先端部の先端60dと連通阻害用弱シール部10の第2の部分12における排出ポート側端縁12aとの距離H2は、6〜15mmとなっている。特に、距離H2は、8〜10mmであることが好ましい。この実施例では、図6に示すように、排出ポート3の先端部60bは円錐状(具体的には、円錐台状)となっているため、排出ポート3の先端部の先端60aを連通阻害用弱シール部10の第2の部分12に近接させても、連通阻害用弱シール部10の第2の部分12が押し広げられることが少ない。このため、連通阻害用弱シール部10にシール不良が生じることが少ない。また、上述のように、排出ポート3の先端部の先端60aを連通阻害用弱シール部10の第2の部分12に近接させることができるため、第3室23を形成するシートの密着する部分の形成を少ないものとすることができ、予期しないブロッキングの発生を防止できる。
【0030】
次に、図8ないし図10に示す実施例の医療用複室容器40について説明する。
図8は、本発明の医療用複室容器の他の実施例の正面図であり、図9は、図8の医療用複室容器の排出ポート付近の部分拡大図であり、図10は、図9のC−C線断面図である。
この実施例の医療用複室容器40は、可撓性材料により形成され、内部空間が剥離可能な仕切用弱シール部9により第1の薬剤室21と第2の薬剤室22に区分された容器本体2と、第1の薬剤室21の下端部と連通可能な排出ポート3と、第1の薬剤室21に収納された第1の薬剤と、第2の薬剤室22に収納された第2の薬剤とを備える薬剤入り医療用複室容器である。医療用複室容器40は、筒状体であって、排出ポート3が取り付けられる側に形成された閉塞部6と、第1の薬剤室21と排出ポート3との連通を阻害しかつ剥離可能な連通阻害用弱シール部10を備える。さらに、連通阻害用弱シール部10は、一端が閉塞部6(6a)より仕切用弱シール部9側に延びる第1の部分11と、第1の部分11と連続しかつ排出ポート3の中心軸に対してほぼ直交する方向に延びる第2の部分12と、第2の部分12と連続しかつ閉塞部6(6b)側に延びかつ閉塞部に到達する第3の部分13を備え、排出ポート3の先端部の上方を取り囲むように形成されている。そして、排出ポート3は、ほぼ同一外径を備える円筒状であり、排出ポート3の先端部の先端70aと連通阻害用弱シール部10の第2の部分12における排出ポート側端縁12aとの距離H3は、20〜25mmとなっている。
【0031】
この実施例の医療用複室容器40の基本構成は、上述した医療用複室容器1と同じである。同一構成部分については同じ符号を付し、上述した説明を参照するものとする。医療用複室容器40と上述した医療用複室容器1との相違は、排出ポート3の先端部の形状である。
この実施例の医療用複室容器40における排出ポート3は、図9および図10に示すように、ほぼ同一外径のまま上端側に延びる先端部を備える筒状体70が用いられている。そして、排出ポート3の先端部の先端70dと連通阻害用弱シール部10の第2の部分12における排出ポート側端縁12aとの距離H3は、20〜25mmとなっている。排出ポート3は、円筒状の本体部70aの先端により形成された先端部を有し、端部(先端部)が開口した筒状部材70を備えている。筒状部材70の先端部の先端70dの内径としては、10〜14mm程度が好適である。また、筒状部材70の円筒状部分の外径としては、14〜18mm程度が好適である。
【0032】
そして、排出ポート3の先端部の先端70dと連通阻害用弱シール部10の第2の部分12における排出ポート側端縁12aとの距離H3は、15〜30mmとなっている。特に、距離H3は、20〜25mmであることが好ましい。
そして、上述したすべて実施例の医療用複室容器における仕切用弱シール部9および連通阻害用弱シール部10の形成方法は、特に限定されず、通常使用されている熱シール用加熱金型(熱シールバー)等を用いて行うことができる。また、高圧蒸気滅菌等の熱滅菌時に仕切用弱シール部9と連通阻害用弱シール部10の部位にブロッキングを生じさせる方法を用いても良い。
【0033】
次に、図11ないし図17に示す実施例の医療用複室容器80について説明する。
図11は、本発明の医療用複室容器の他の実施例の正面図であり、図12は、図11の医療用複室容器の排出ポート付近の部分拡大図である。図13は、図11の医療用複室容器に使用される排出ポートの正面図である。図14は、図13に示す排出ポートの側面図である。図15は、図13のD−D線断面図である。図16は、図14のE−E線断面図である。図17は、図13に示す排出ポートの作用を説明するための説明図である。
この実施例の医療用複室容器80と上述した実施例の医療用複室容器1との相違は、排出ポート90の構成および連通阻害用弱シール部100の形態のみであり、その他は、同じであり、同じ符号を付し、上述した説明を参照するものとする。
【0034】
この医療用複室容器80においても、連通阻害用弱シール部100は、一端が排出ポート90が取り付けられた閉塞部6(6a)より仕切用弱シール部9側に延びる第1の部分101と、第1の部分101と連続しかつ排出ポート90の中心軸に対してほぼ直交する方向に延びる第2の部分102と、第2の部分102と連続しかつ閉塞部6(6b)側に延びかつ閉塞部に到達する第3の部分103を備え、排出ポート90の先端部の上方を取り囲むように形成されている。
そして、排出ポート90は、図12に示すように、本体部93aと先端部94を有する先端が閉塞した筒状体93であり、先端部94は本体部93aより断面積が小さいものとなっており、さらに、排出ポート90の先端部94の先端94aと連通阻害用弱シール部100の第2の部分102における排出ポート側端縁102aとの距離H1は、6〜15mmとなっている。好ましくは、8〜10mmである。
【0035】
排出ポート90が備える筒状体93は、本体部93aと閉塞しかつ破断可能な扁平状の先端部94を備えている。そして、この実施例では、先端部94の先端側は、先端94aに向かって外面間距離が短くなるように移行領域となっている。具体的には、先端94aに向かって外面間距離が短くなる傾斜部94bとなっている。なお、傾斜部に限定されるものではなく、先端94aに向かって外面間距離が短くなる湾曲部であってもよい。そして、このような移行領域を設けることにより、先端部94の先端94aにおける外面間距離が、先端部94において、最も短いものとなっている。
そして、破断後の排出ポートの開口面積は、使用時に排出ポートに接続される針管の内部流の断面積よりも大きいことが、流量確保の点より好ましい。破断後の排出ポートの開口面積としては、5mm2以上が好ましく、特に、10mm2以上であることが好ましい。また、排出ポートは、使用時に排出ポートに接続される針管が侵入可能な内径および抜け落ちないように侵入可能な長さを有するものが用いられる。排出ポートの本体部の内径は、5mm以上であることが好ましく、特に、8mm以上であることが好ましい。筒状体の扁平状部分94の長さとしては、10〜15mm程度が好適である。筒状体の扁平状部分94における厚さ(外面間厚さ)としては、2〜8mm程度が好適であり、特に、3〜5mmが好ましい。また、筒状体の円筒状部分(本体部93a)の外径としては、10〜20mm程度が好適である、特に、14〜16mmが好ましい。
【0036】
この医療用複室容器80に用いられる排出ポート90は、後端部が開口した筒状体93と、筒状体93の後端部を封鎖するシール部材95を備え、かつ、シール部材の一部が針管の穿刺が可能な弾性部材95aにより形成されているものである。
そして、医療用容器用筒状体93は、容器本体を備える医療用容器に用いられる医療用容器用筒状体であって、筒状体93は、硬質もしくは半硬質材料により形成されており、さらに、筒状体93は、本体部93aと、本体部93aの先端部に設けられた破断可能部96と、本体部93aの破断可能部96を挟むようにそれぞれ設けられるとともに容器本体の一方の内面に固着された第1の応力付与部91および容器本体の他方の内面に固着された第2の応力付与部92とを備え、破断可能部96は、第1の応力付与部91および第2の応力付与部92間の広がりにより破断し、本体部93aを開口するものである。また、2つの応力付与部91,92により先端部94が形成されている。
【0037】
この排出ポート90は、非連通排出ポートである。排出ポート90は、図15および図16に示すように、破断されない状態では、薬剤室21内と連通しないものとなっている。排出ポート90は、図13ないし図16に示すように、排出路98若しくは中空部を有する本体部93aと、本体部93aの先端部付近を一端として延びる第1の応力付与部91および第2の応力付与部92と、第1および第2の応力付与部91,92が広げられたときに破断し、本体部93aを外部と連通させる破断可能部96とを備え、さらに、第1の応力付与部91は容器本体2の薬液室を形成する一方のシート内面に固定されており、第2の応力付与部92は薬液室を形成する他方のシート内面に固定されており、薬液室の押圧時の容器本体2の第1の応力付与部91および第2の応力付与部92の固定部の膨らみにより、破断可能部96が破断するものである。
第1の応力付与部91は、本体部93aの先端部付近の一方のシート側部分から延びるものであり、第2の応力付与部92は、本体部93aの先端部付近の他方のシート側部分から延びるものであり、破断可能部96は、第1の応力付与部91及び第2の応力付与部92が薬剤室の押圧時の容器本体2の第1の応力付与部91および第2の応力付与部92の固定部の膨らみにより、一方のシート側及び他方のシート側に破断するものとなっている。
【0038】
この排出ポート90は、図13ないし図17に示すように、排出路98若しくは中空部を有する本体部93aと、本体部93aに設けられた破断可能部96と、第1の応力付与部91と、第2の応力付与部92とを備えている。
実施例の医療用容器用筒状体93は、本体部93aと、破断可能部96と、第1の応力付与部91と、第2の応力付与部92とを備えている。また、筒状部93の基端部には、シール部材95が取り付けられる蓋部取付部97が形成されている。また、筒状部93の基端部は、容器本体2に取り付け可能なように破断可能部より基端側にある程度の長さを有している。
また、シール部材95は、基端部が閉塞された筒状部となっている。シール部材95の先端部は、筒状部93の蓋部取付部97に取り付け可能な形状となっている。蓋部材95の基端部(排出ポートの排出口)には、針管(具体的には、排出用針:図示せず)等を挿通可能な弾性部材95aが設けられている。
弾性部材95aとしては、上述したものと同様であることが好ましい。筒状部の中空部には、粉末状もしくは固形状の薬剤が収容されていてもよい。特に、粉末状であることが好ましい。
【0039】
そして、この排出ポート90では、第1の応力付与部91および第2の応力付与部92は、図13ないし図16に示すように、本体部93aの破断可能部付近を基端として延出するとともに、先端は自由端となっている。第1の応力付与部91および第2の応力付与部92は、両者間を開く力が付与されたときに、その力を破断可能部96を破断するための応力に変換する機能を備えている。また、第1の応力付与部91と第2の応力付与部92とは向かい合うように形成されていることが好ましい。また、第1の応力付与部91と第2の応力付与部92の本体部は縦長の矩形状に形成されていることが好ましい。このような構成により、容器本体2を押圧して膨らませた際に、第1の応力付与部91と第2の応力付与部92とにより、破断可能部96に確実に破断応力が付与される。
【0040】
具体的には、この実施例の医療用容器における医療用容器用筒状体93では、第1の応力付与部91、第2の応力付与部92は、図13ないし図16に示すように、縦長の平板部と、平板部の両側に形成された側壁部とを備えている。さらに、第1の応力付与部91と第2の応力付与部92は、本体部の軸方向に延びるように設けられている。そして、第1の応力付与部91と第2の応力付与部92とは、側壁部分が対向するものとなっている。そして、第1の応力付与部91と第2の応力付与部92は、向かい合いかつ若干離間するように設けられている。また、第1の応力付与部91および第2の応力付与部92の先端(他端)は、この実施例のように自由端となっていることが好ましい。さらに、第1の応力付与部91および第2の応力付与部92は、向かい合うそれぞれの面に設けられ、相互に当接しない位置に配置されたリブを備えていることが好ましい。
【0041】
また、平板部の外面には、容器本体2の内面に接合される平面部91a,92aが形成されていることが好ましい。平面部91a,92aは、矩形状に形成され接合面が平坦に形成されている。平面部91a,92aは、第1の応力付与部91と第2の応力付与部92の基端部付近から先端まで形成されている。そして、容器本体2の内面に接合される平面部91a,92aは、その少なくとも一部が、容器本体2の内面に固着可能な材料により形成されている。具体的には、容器本体2の内面に接合される平面部91a,92aは、その一部若しくは全体が、容器本体2の形成材料(特に、容器本体2の内面側を形成する形成材料)と相溶性のある樹脂により形成されていることが好ましい。このような構成により、第1の応力付与部91と第2の応力付与部92を容器本体2の内面に確実に接合することができる。相溶性のある樹脂は、容器本体の構成材料と同一もしくは近似した材料であることが好ましい。相溶性のある樹脂層は、本発明の実施例では、2色成形により作製されていることが好ましい。なお、第1の応力付与部もしくは第2の応力付与部のすべてを薬剤容器の容器本体と相溶性のある樹脂により作製してもよい。相溶性のある樹脂層は容器本体の内面と接合し易いように平坦に作製されていることが好ましい。
【0042】
また、第1の応力付与部91と第2の応力付与部92とは、第1の応力付与部91と第2の応力付与部92の間において若干離間して形成されている。このように、第1の応力付与部91と第2の応力付与部92間はあまり大きく離間していない。このため、第1の応力付与部91と第2の応力付与部92間が、容器本体2への固定時に押圧されても、第1の応力付与部91および第2の応力付与部に許容される変形量は少なく、破断可能部96が破断するおそれがない。
そして、医療用複室容器80には、第1の応力付与部91の平面部91aの全体もしくは一部が、容器本体2の一方のシート内面と接合され、同様に、第2の応力付与部92の平面部92aの全体もしくは一部が、容器本体2の他方のシートの内面と接合されている。このため、第1の応力付与部及び第2の応力付与部が、薬剤室の押圧時の容器本体の第1の応力付与部および第2の応力付与部の固定部間の広がりに追従して広がり、後述する破断可能部を、一方のシート側及び他方のシート側に開き破断する。
【0043】
第1の応力付与部91の平面部91a及び第2の応力付与部92の平面部92aと容器本体2の各シートの内面との接合は、超音波融着、高周波融着、熱融着等により行われることが好ましい。
また、第1の応力付与部91もしくは第2の応力付与部92は、容器本体2の外部から担持して広げることが可能な構成であることが好ましい。
なお、本発明の第1の応力付与部及び第2の応力付与部は、上述した構成のものに限定されず、容器本体を構成する一方のシート内面と他方のシート内面と接合可能であり、かつ容器本体の膨らみに連動して破断可能部に応力を付与できる構成をしているものであればいかなる構成であってもよい。
【0044】
そして、破断可能部96は、本体部93aの先端部付近であって第1の応力付与部91と第2の応力付与部92間に位置しかつ排出ポート90の基端側に延びる先端側部分と、先端側部分96aのそれぞれの基端部において分岐して本体部93aの側面方向に延びる第1の応力付与部側部分96bおよび第2の応力付与部側部分96cを有している。このような構成により、第1の応力付与部91と第2の応力付与部92を広げたとき破断可能部96が破断して本体部93aが確実に開封される。
特に、この実施例における破断可能部96は、本体部93aの先端部付近において第1の応力付与部91と第2の応力付与部92との間を通るように設けられ基端側に延びている先端側部分96aと、先端側部分96aの基端部において分岐して先端側部分96aの基端部同士を繋ぐように設けられている第1の応力付与部側部分96bおよび第2の応力付与部側部分96cを備えている。つまり、この実施例では、破断可能部96の第1の応力付与部側部分96bおよび第2の応力付与部側部分96cは、とぎれることなく連続し、破断可能部96の先端側部分96aのそれぞれの基端部間を連結するものとなっている。なお、破断可能部96の第1の応力付与部側部分96bおよび第2の応力付与部側部分96cのいずれかのみ上記のように構成されているものとしてもよい。
【0045】
また、先端側部分96aは、図13,図15に示すように、本体部93aの先端部付近において第1の応力付与部91と第2の応力付与部92との中間付近を通り、かつ一方のシート側と他方のシート側のほぼ中間付近を通るように基端側に延びていることが好ましい。具体的に、この実施例の先端側部分96aは、図13,図15に示すように、本体部93aの一方のシート側及び他のシート側の中間付近に沿ってU字状に形成されている。このように構成することにより、本体部93aをほぼ真ん中から一方のシート側及び他方のシート側に引き裂くことができる。
【0046】
破断可能部96は、破断可能部な脆弱部である。具体的に、破断可能部は、薄肉部である。また、破断可能部96は、本体部93aに溝部を形成することにより作製されていることが好ましい。破断可能部は、溝部の断面がV字状の溝部を形成することにより作製されている。具体的には、溝部の角度は、30〜120°、特に、40〜60°、最小肉厚は、0.05〜0.3mm、特に、0.08〜0.2mmであることが好ましい。このような角度に溝形成部を作製することにより、容器本体2を膨らませた場合、破断可能部の中心に応力が集中して確実に破断するものとなる。また、溝部は、破断容易な形状であればいかなる形状のものであってもよく、実施例のようなV字形状に限られず半円形状、半楕円形状等であってもよい。また、本発明の破断可能部は、溝部が形成されることにより薄肉部が形成され破断可能となるものであるが、これに限定されるものではない。破断可能部は、例えば、薬剤収納部の破断可能部を形成する部分をその他の部分より脆弱な材質で形成することにより作製してもよい。具体的に、多色成形によって、破断可能部を形成する部分を破断容易な材料で作製して、その他の部分を破断容易でない材料にて作製することが好ましい。
【0047】
この実施例の医療用複室容器80においても、上述した医療用複室容器1と同様に、連通阻害用弱シール部100と排出ポート90と閉塞部6aにより、空間(第3室23)が形成されている。この空間(第3室)23は、空室となっている。しかし、第3室には、生体に投与されても無害な液体(例えば、水、生理食塩水)が添加されていることが好ましい。第3室23にこのように液体を入れることにより、第3室の内部の滅菌が確実なものとなる。また、第3室23に入れられる液体の量としては、第3室の大きさによって相違するが、0.1〜0.5ml程度であることが好ましい。また、第3室の容量1ml当たりの液体の添加量は、0.02〜0.1ml程度であることが好ましい。連通阻害用弱シール部100は、シート材を帯状に熱シール(熱融着、高周波融着、超音波融着等)することにより形成することができる。
【0048】
そして、図17に示すように、医療用複室容器80の第2の薬剤室22を押圧して仕切用弱シール部100を剥離させ、さらに押圧することにより第1の薬剤室21を膨らませると、膨らみに連動して第1の応力付与部91と第2の応力付与部92とが一方のシート及び他方のシート方向に開き、まず、破断可能部96の先端側部分96aが破断され、次いで、第1の応力付与部側部分96bおよび第2の応力付与部側部分96cが破断される。これにより、排出ポート90は開封され、本体部93aは薬液室21と連通し、容器本体2内の薬液は投与可能となる。また、この実施例の排出ポート90では、本体部93aより、第1の応力付与部91および第2の応力付与部92は分離する。
【0049】
(実験)
シート状筒状体として、ポリプロピレンにスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体をブレンドしてなる軟質樹脂をインフレーション成形により肉厚330μmの円筒状[折れ径(横幅210mm)]に成形したものを用いた。
そして、図1に示すように、上記のシート状筒状体の上端および下端にヒートシール部をヒート熱シールすることにより形成し、さらに、中央部に弱シール部、下端シール部の中央より上方に延びるように連通阻害用弱シール部をヒートシールすることにより形成した。そして、上端シール部の薬剤容器取付部に挿入し、ヒートシールにより固定した。また、下端シール部の排出ポート取付部に排出ポートの筒状体を挿入し、ヒートシールすることにより固定し、図1に示す医療用複室容器とほぼ同じ形態の実験用医療用複室容器を作製した。なお、筒状体には、封止部材は取り付けられていない。そして、この実験用医療用複室容器における排出ポートと連通し連通阻害用弱シール部により区画される空間の容積は、10mlであった。
上記のようにして、実験用医療用複室容器を9個準備した。
そして、上記の実験用医療用複室容器の各3個ずつのグループに分け、第1のグループの複室容器には、指標菌(バチルス・サブチルス)107cfuとRO水1.0mlを上記の連通阻害用弱シール部により区画される空間に添加した後、排出ポートの筒状体の先端部に封止部材を取付け、筒状体を封止した。また、第2のグループの複室容器には、指標菌(バチルス・サブチルス)107cfuとRO水0.1mlを上記空間に添加した後、排出ポートの筒状体の先端部に封止部材を取付け、筒状体を封止した。また、第3のグループの複室容器には、指標菌(バチルス・サブチルス)107cfuのみを上記空間に添加した後、排出ポートの筒状体の先端部に封止部材を取付け、筒状体を封止した。
そして、上記のように準備した複数の実験用医療用複室容器をオートクレーブ滅菌(115℃、加圧圧力約2気圧)し72時間放置後に、上記の連通阻害用弱シール部により区画される空間における生菌数を測定したところ、第1グループおよび第2グループでは、いずれの実験用医療用複室容器からも生菌は検出されなかった。しかし、第3グループの実験用医療用複室容器では、平均値107cfuの生菌の残存が検出された。
【符号の説明】
【0050】
1 医療用複室容器
2 容器本体
3 薬剤排出ポート
4 薬剤容器
5 他端側(上端側)シール部
6 一端側(下端側)シール部
9 仕切用弱シール部
10 連通阻害用弱シール部
21 第1の薬剤室
22 第2の薬剤室
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性材料により作製され、内部空間が剥離可能な仕切用弱シール部により第1の薬剤室と第2の薬剤室に区分された容器本体と、前記第1の薬剤室の下端部と連通可能な排出ポートと、前記第1の薬剤室に収納された第1の薬剤と、前記第2の薬剤室に収納された第2の薬剤とを備える医療用複室容器であって、該医療用複室容器は、前記第1の薬剤室と前記排出ポートとの連通を阻害しかつ剥離可能な連通阻害用弱シール部を備え、さらに、該連通阻害用弱シール部は、一端が前記排出ポートが取り付けられた閉塞部より前記仕切用弱シール部側に延びる第1の部分と、該第1の部分と連続しかつ前記排出ポートの中心軸に対してほぼ直交する方向に延びる第2の部分と、該第2の部分と連続しかつ前記閉塞部側に延びかつ前記閉塞部に到達する第3の部分を備え、前記排出ポートの先端部の上方を取り囲むように形成されており、前記排出ポートは、本体部と前記先端部を有する筒状体であり、該先端部は前記本体部より断面積が小さいものとなっており、さらに、該排出ポートの前記先端部の先端と前記連通阻害用弱シール部の前記第2の部分における排出ポート側端縁との距離は、6〜15mmであることを特徴とする医療用複室容器。
【請求項2】
前記排出ポートの先端部は、扁平形状となっている請求項1に記載の医療用複室容器。
【請求項3】
前記排出ポートの先端部は、前記連通阻害用弱シール部の前記第2の部分方向に向かってテーパー状に縮径している請求項1に記載の医療用複室容器。
【請求項4】
可撓性材料により作製され、内部空間が剥離可能な仕切用弱シール部により第1の薬剤室と第2の薬剤室に区分された容器本体と、前記第1の薬剤室の下端部と連通可能な排出ポートと、前記第1の薬剤室に収納された第1の薬剤と、前記第2の薬剤室に収納された第2の薬剤とを備える医療用複室容器であって、該医療用複室容器は、前記第1の薬剤室と前記排出ポートとの連通を阻害しかつ剥離可能な連通阻害用弱シール部を備え、さらに、該連通阻害用弱シール部は、一端が前記排出ポートが取り付けられた閉塞部より前記仕切用弱シール部側に延びる第1の部分と、該第1の部分と連続しかつ前記排出ポートの中心軸に対してほぼ直交する方向に延びる第2の部分と、該第2の部分と連続しかつ前記閉塞部側に延びかつ前記閉塞部に到達する第3の部分を備え、前記排出ポートの上方を取り囲むように形成されており、さらに、前記排出ポートは、ほぼ同一外径を備える円筒状であり、該排出ポートの先端部の先端と前記連通阻害用弱シール部の前記第2の部分における排出ポート側端縁との距離は、15〜30mmであることを特徴とする医療用複室容器。
【請求項5】
前記閉塞部は、第1の薬剤室側の端縁の前記排出ポートの両側部に形成された容器本体の側部方向に延びる直線部分を備え、前記連通阻害用弱シール部の前記第2の部分における排出ポート側端縁は、前記排出ポートの両側部に位置する前記閉塞部のそれぞれの直線部分を結ぶ仮想線より前記仕切用弱シール部側に位置している請求項1ないし4のいずれかに記載の医療用複室容器。
【請求項6】
前記排出ポートの両側部に位置する前記閉塞部のそれぞれの直線部分を結ぶ仮想線は、前記排出ポートの先端部の先端より、前記連通阻害用弱シール部の前記第2の部分側となるものである請求項1ないし4のいずれかに記載の医療用複室容器。
【請求項7】
前記連通阻害用弱シール部と前記排出ポートと前記閉塞部により形成される空間には、液体が添加されている請求項1ないし6のいずれかに記載の医療用複室容器。
【請求項8】
前記仕切用弱シール部および前記連通阻害用弱シール部は、熱シールにより形成されている請求項1ないし6のいずれかに記載の医療用複室容器。
【請求項9】
前記連通阻害用弱シール部と前記排出ポートと該排出ポートが固定された下端側シール部により形成される空間内には、液体が添加されており、かつ、該空間への前記液体の添加量は、前記空間内の容積1ml当たり、0.02〜0.1mlである請求項1ないし8のいずれかに記載の医療用複室容器。
【請求項10】
前記連通阻害用弱シール部と前記排出ポートと該排出ポートが固定された下端側シール部により形成される空間内には、液体が添加されており、かつ、該空間への前記液体の添加量は、前記空間内の容積1ml当たり、0.005〜0.1mlである請求項1ないし8のいずれかに記載の医療用複室容器。
【請求項11】
前記医療用複室容器は、高圧蒸気滅菌されているものである請求項9または10に記載の医療用複室容器。
【請求項12】
可撓性材料により作製され、内部空間が剥離可能な仕切用弱シール部により第1の薬剤室と第2の薬剤室に区分された容器本体と、該容器本体の下端側シール部に固定され、前記第1の薬剤室の下端部と連通する排出ポートと、前記第1の薬剤室に収納された第1の薬剤と、前記第2の薬剤室に収納された第2の薬剤と、前記第1の薬剤室と前記排出ポートとの連通を阻害しかつ剥離可能な連通阻害用弱シール部とを備える医療用複室容器であり、前記連通阻害用弱シール部と前記排出ポートと前記下端側シール部により形成される空間内に、該空間内の容積1ml当たり、0.005〜0.1mlの液体が添加されていることを特徴とする医療用複室容器。
【請求項13】
前記医療用複室容器は、高圧蒸気滅菌されているものである請求項12に記載の医療用複室容器。
【請求項14】
前記空間への前記液体の添加量は、前記空間内の容積1ml当たり、0.02〜0.1mlである請求項12または13に記載の医療用複室容器。
【請求項15】
前記空間への前記液体の添加量は、前記空間内の容積1ml当たり、0.01〜0.05mlである請求項12または13に記載の医療用複室容器。
【請求項1】
可撓性材料により作製され、内部空間が剥離可能な仕切用弱シール部により第1の薬剤室と第2の薬剤室に区分された容器本体と、前記第1の薬剤室の下端部と連通可能な排出ポートと、前記第1の薬剤室に収納された第1の薬剤と、前記第2の薬剤室に収納された第2の薬剤とを備える医療用複室容器であって、該医療用複室容器は、前記第1の薬剤室と前記排出ポートとの連通を阻害しかつ剥離可能な連通阻害用弱シール部を備え、さらに、該連通阻害用弱シール部は、一端が前記排出ポートが取り付けられた閉塞部より前記仕切用弱シール部側に延びる第1の部分と、該第1の部分と連続しかつ前記排出ポートの中心軸に対してほぼ直交する方向に延びる第2の部分と、該第2の部分と連続しかつ前記閉塞部側に延びかつ前記閉塞部に到達する第3の部分を備え、前記排出ポートの先端部の上方を取り囲むように形成されており、前記排出ポートは、本体部と前記先端部を有する筒状体であり、該先端部は前記本体部より断面積が小さいものとなっており、さらに、該排出ポートの前記先端部の先端と前記連通阻害用弱シール部の前記第2の部分における排出ポート側端縁との距離は、6〜15mmであることを特徴とする医療用複室容器。
【請求項2】
前記排出ポートの先端部は、扁平形状となっている請求項1に記載の医療用複室容器。
【請求項3】
前記排出ポートの先端部は、前記連通阻害用弱シール部の前記第2の部分方向に向かってテーパー状に縮径している請求項1に記載の医療用複室容器。
【請求項4】
可撓性材料により作製され、内部空間が剥離可能な仕切用弱シール部により第1の薬剤室と第2の薬剤室に区分された容器本体と、前記第1の薬剤室の下端部と連通可能な排出ポートと、前記第1の薬剤室に収納された第1の薬剤と、前記第2の薬剤室に収納された第2の薬剤とを備える医療用複室容器であって、該医療用複室容器は、前記第1の薬剤室と前記排出ポートとの連通を阻害しかつ剥離可能な連通阻害用弱シール部を備え、さらに、該連通阻害用弱シール部は、一端が前記排出ポートが取り付けられた閉塞部より前記仕切用弱シール部側に延びる第1の部分と、該第1の部分と連続しかつ前記排出ポートの中心軸に対してほぼ直交する方向に延びる第2の部分と、該第2の部分と連続しかつ前記閉塞部側に延びかつ前記閉塞部に到達する第3の部分を備え、前記排出ポートの上方を取り囲むように形成されており、さらに、前記排出ポートは、ほぼ同一外径を備える円筒状であり、該排出ポートの先端部の先端と前記連通阻害用弱シール部の前記第2の部分における排出ポート側端縁との距離は、15〜30mmであることを特徴とする医療用複室容器。
【請求項5】
前記閉塞部は、第1の薬剤室側の端縁の前記排出ポートの両側部に形成された容器本体の側部方向に延びる直線部分を備え、前記連通阻害用弱シール部の前記第2の部分における排出ポート側端縁は、前記排出ポートの両側部に位置する前記閉塞部のそれぞれの直線部分を結ぶ仮想線より前記仕切用弱シール部側に位置している請求項1ないし4のいずれかに記載の医療用複室容器。
【請求項6】
前記排出ポートの両側部に位置する前記閉塞部のそれぞれの直線部分を結ぶ仮想線は、前記排出ポートの先端部の先端より、前記連通阻害用弱シール部の前記第2の部分側となるものである請求項1ないし4のいずれかに記載の医療用複室容器。
【請求項7】
前記連通阻害用弱シール部と前記排出ポートと前記閉塞部により形成される空間には、液体が添加されている請求項1ないし6のいずれかに記載の医療用複室容器。
【請求項8】
前記仕切用弱シール部および前記連通阻害用弱シール部は、熱シールにより形成されている請求項1ないし6のいずれかに記載の医療用複室容器。
【請求項9】
前記連通阻害用弱シール部と前記排出ポートと該排出ポートが固定された下端側シール部により形成される空間内には、液体が添加されており、かつ、該空間への前記液体の添加量は、前記空間内の容積1ml当たり、0.02〜0.1mlである請求項1ないし8のいずれかに記載の医療用複室容器。
【請求項10】
前記連通阻害用弱シール部と前記排出ポートと該排出ポートが固定された下端側シール部により形成される空間内には、液体が添加されており、かつ、該空間への前記液体の添加量は、前記空間内の容積1ml当たり、0.005〜0.1mlである請求項1ないし8のいずれかに記載の医療用複室容器。
【請求項11】
前記医療用複室容器は、高圧蒸気滅菌されているものである請求項9または10に記載の医療用複室容器。
【請求項12】
可撓性材料により作製され、内部空間が剥離可能な仕切用弱シール部により第1の薬剤室と第2の薬剤室に区分された容器本体と、該容器本体の下端側シール部に固定され、前記第1の薬剤室の下端部と連通する排出ポートと、前記第1の薬剤室に収納された第1の薬剤と、前記第2の薬剤室に収納された第2の薬剤と、前記第1の薬剤室と前記排出ポートとの連通を阻害しかつ剥離可能な連通阻害用弱シール部とを備える医療用複室容器であり、前記連通阻害用弱シール部と前記排出ポートと前記下端側シール部により形成される空間内に、該空間内の容積1ml当たり、0.005〜0.1mlの液体が添加されていることを特徴とする医療用複室容器。
【請求項13】
前記医療用複室容器は、高圧蒸気滅菌されているものである請求項12に記載の医療用複室容器。
【請求項14】
前記空間への前記液体の添加量は、前記空間内の容積1ml当たり、0.02〜0.1mlである請求項12または13に記載の医療用複室容器。
【請求項15】
前記空間への前記液体の添加量は、前記空間内の容積1ml当たり、0.01〜0.05mlである請求項12または13に記載の医療用複室容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−131104(P2011−131104A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85737(P2011−85737)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【分割の表示】特願2006−41398(P2006−41398)の分割
【原出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【分割の表示】特願2006−41398(P2006−41398)の分割
【原出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
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