説明

医療用針

【課題】誤刺の発生を防止することができ、誤刺防止機能の信頼性に優れた医療用針を提供する。
【解決手段】湾曲針10と、基部20と、z軸方向に沿って伸縮可能に構成された伸縮部30と、伸縮部30を折り畳んだときに湾曲針10を通過させる通過部62を有する皮膚接触部60と、伸縮部30を伸ばしたときに、湾曲部14から針先端部16までの一部に対して、y軸方向に沿った外力を加えるように構成された外力付与機構40とを備える医療用針1。外力付与機構40は、伸縮部30を伸ばすことによって、針先端部16が通過部62から皮膚接触部60における通過部62を除く領域へと移動するように、湾曲針10に対して外力を加える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用針に関する。
【背景技術】
【0002】
湾曲針(フーバー針)を備える医療用針を扱う業界においては、医療用針の使用者が誤って使用後の医療用針を自分に刺してしまう事故(いわゆる誤刺)の発生を如何にして防ぐかが、重要な課題となっている。このような誤刺防止を目的とする医療用針として、例えば、特許文献1に開示された医療用針(以下、従来の医療用針という。)が知られている。
【0003】
図18は、従来の医療用針9を説明するために示す図である。図18(a)はキャップ部940内に針先端部916を移動させる前の状態を示す側面断面図であり、図18(b)はキャップ部940内に針先端部916を移動させた後の状態を示す側面断面図である。
【0004】
従来の医療用針9は、図18に示すように、所定角度(例えば90度)に湾曲した湾曲部914を有する湾曲針910と、湾曲針910のチューブ接続側端部に設けられた基部920と、湾曲部914から針先端部916までに沿って可動であるキャップ部940と、伸縮可能に構成されたシース状の伸縮部930とを備える。キャップ部940には、湾曲針910を通過させる孔942と、弾性を有するスプリングクリップ950とが設けられている。スプリングクリップ950は、図18(a)に示すように、湾曲針910と接触しているときには曲がった状態となるように配置されており、図18(b)に示すように、針先端部916をキャップ部940内に移動させる(針先端部916がスプリングクリップ950を越える)ことにより、元の真っ直ぐな状態に戻るように構成されている。
【0005】
従来の医療用針9によれば、上記したスプリングクリップ950を備えているため、針先端部916をキャップ部940内に収めることにより、孔942がスプリングクリップ950によって覆われることとなる。このため、針先端部916が孔942を介して再び出てしまうのを阻止することができ、結果として、誤刺の発生を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−195227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の医療用針9においては、図18(a)から分かるように、医療用針9を使用する前の状態ではスプリングクリップ950に常に負荷がかかった状態となることから、いわゆるクリープ変形によって、針先端部916をキャップ部940内に移動させてもスプリングクリップ950が元の真っ直ぐな状態に戻らなくなる可能性がある。針収納時にスプリングクリップ950が元の真っ直ぐな状態に戻らないと、孔942が露出した状態となってしまい、結果として誤刺の発生を防止することができない。
つまり、従来の医療用針9は、誤刺防止機能の信頼性の観点で満足のいくものではなかった。
【0008】
そこで、本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、誤刺の発生を防止することができ、誤刺防止機能の信頼性に優れた医療用針を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1]本発明の医療用針(1)は、所定角度に湾曲した湾曲部(14)を有する湾曲針(10)と、前記湾曲針のチューブ接続側端部(12)から前記湾曲部(14)までの、少なくとも一部の外面に設けられ、前記湾曲針(10)を保持する基部(20)と、前記基部(20)に設けられ、前記湾曲部(14)から前記湾曲針の針先端部(16)に向かう第1方向に沿って伸縮可能に構成された伸縮部(30)と、前記伸縮部(30)における前記基部(20)とは反対側の位置に設けられ、前記伸縮部(30)を折り畳んだときに前記湾曲針(10)を通過させる通過部(62)を有する皮膚接触部(60)と、前記伸縮部(30)を伸ばしたときに、前記湾曲部(14)から前記針先端部(16)までの一部に対して、前記第1方向と交差する第2方向に沿った外力を加えるように構成された外力付与機構(40)とを備え、前記伸縮部(30)は、前記伸縮部(30)を最も伸ばしたときの前記第1方向に沿った長さが、前記針先端部(16)から前記湾曲部(14)までの長さ以上となるように構成されており、前記外力付与機構(40)は、前記伸縮部(30)を伸ばすことによって前記針先端部(16)が前記通過部(62)から前記皮膚接触部(60)における前記通過部を除く領域へと移動するように、前記湾曲針(10)の一部に対して前記外力を加えることを特徴とする。
【0010】
このため、本発明の医療用針によれば、上記した伸縮部及び外力付与機構を備えているため、患者の皮膚(アクセスポート)から湾曲針を抜いて伸縮部を伸ばすことにより、湾曲針の針先端部を通過部から通過部を除く領域(以下、非通過領域ということもある。)へと移動させることが可能となる。つまり、使用後の医療用針における湾曲針の針先端部を、非通過領域でもってカバーすることができる。その結果、使用者による誤刺の発生を防止することができる。
【0011】
また、本発明の医療用針によれば、上記した外力付与機構は、使用前の状態(伸縮部を折り畳んだ状態)のときから湾曲針に対して外力を加えるのではなく、伸縮部を伸ばしたときに湾曲針に対して外力を加えるように構成されていることから、上述のクリープ変形による問題が発生することもない。その結果、誤刺防止機能について高い信頼性を確保することができる。
【0012】
したがって、本発明の医療用針は、誤刺の発生を防止することができ、誤刺防止機能の信頼性に優れた医療用針となる。
【0013】
[2]本発明の医療用針(1)においては、前記外力付与機構(40)は、一方端部(42a)側が前記基部(20)又は前記伸縮部(30)に接続され、少なくとも他方端部(42b)側に、前記湾曲針(10)を挿通可能な針挿通孔(44)が設けられたスライド部材(42)と、前記伸縮部(30)又は前記皮膚接触部(60)に設けられ、前記スライド部材(42)の移動をガイドするガイド部(50)とを有し、前記スライド部材(42)は、前記針挿通孔(44)に前記湾曲針(10)を挿通させた状態で前記伸縮部(30)を伸ばすことにより、前記スライド部材(42)の前記他方端部(42b)が前記第2方向に沿って移動可能に構成されていることが好ましい。
【0014】
このように構成することにより、伸縮部を伸ばすことによる針先端部の非通過領域への移動動作を、スライド部材及びガイド部という比較的簡単な構成でもって実現することができる。
【0015】
[3]本発明の医療用針(1)においては、前記スライド部材(42)は、可撓性を有することが好ましい。
【0016】
このように構成することにより、伸縮部を伸ばしたときのスライド部材の移動動作を、比較的スムーズなものとすることができる。
【0017】
[4]本発明の医療用針(1)においては、前記スライド部材(42)は、長尺部材であり、前記針挿通孔(44)は、前記スライド部材(42)の長手方向に沿って形成された長孔であり、前記スライド部材(42)は、前記伸縮部(30)を伸ばすことによって前記針挿通孔(44)における前記他方端部側の縁部分(44e)と前記湾曲針(10)とが係合する結果、前記外力が発生するように構成されていることが好ましい。
【0018】
このように構成することにより、伸縮部を伸ばすことによる針先端部の非通過領域への移動動作を確実に実現することができる。
【0019】
[5]本発明の医療用針(1)においては、前記スライド部材(42)の前記他方端部(42b)は、前記基部(20)側に向けて屈曲又は湾曲していることが好ましい。
【0020】
このように構成することにより、本発明の医療用針を患者の皮膚(アクセスポート)に穿刺しているときに、スライド部材の他方端部が患者の皮膚に強く当たってしまう(食い込んでしまう)のを抑制することが可能となる。
【0021】
[6]本発明の医療用針(2)においては、前記スライド部材(142)は、前記一方端部(142a)側に配置され、前記基部(20)又は前記伸縮部(30)に接続可能に構成された接続部(145)と、前記他方端部(142b)側に配置され、前記針挿通孔(144)が設けられた針保持部(147)と、前記接続部(145)と前記針保持部(147)とを連結する連結部(148)とを有し、前記針挿通孔(144)は、前記湾曲針(10)の管断面形状に対応する形状からなる孔であり、前記スライド部材(142)は、前記伸縮部(30)を伸ばすことによって前記針挿通孔(144)の縁部分と前記湾曲針(10)とが係合する結果、前記外力が発生するように構成されていることが好ましい。
【0022】
このように構成することによっても、伸縮部を伸ばすことによる針先端部の非通過領域への移動動作を確実に実現することができる。
【0023】
[7]本発明の医療用針(2)においては、前記連結部(148)は、ひも状部材であることが好ましい。
【0024】
このように構成することにより、使用前の状態(伸縮部を折り畳んだ状態)において、連結部を適当な長さで折り畳んだり小さく巻いたりすることができるため、そのように小さくまとめた連結部を、例えば伸縮部と翼部との間に生まれる微小なスペース等に収納することが可能となる。その結果、使用前の状態(伸縮部を折り畳んだ状態)における製品全体サイズの小型化を図ることが可能となる。
【0025】
[8]本発明の医療用針(1)においては、前記伸縮部(30)は、前記湾曲針(10)を間にして対向配置された2つの伸縮部材(32,36)を有し、パンタグラフ状に伸縮可能に構成されていることが好ましい。
【0026】
このように構成することにより、患者の皮膚(アクセスポート)から湾曲針を抜いたときに、湾曲部から針先端部までの部分を2つの伸縮部材によってカバーすることができるため、誤刺の発生をさらに防止することができる。また、使用者が、使用後の湾曲針に触れてしまうのを極力抑制することができるため、使用後の湾曲針に触れることによる感染症の発生を抑制することができる。
【0027】
なお、特許請求の範囲及び本欄(課題を解決するための手段の欄)に記載した各部材等の文言下に括弧をもって付加された符号は、特許請求の範囲及び本欄に記載された内容の理解を容易にするために用いられたものであって、特許請求の範囲及び本欄に記載された内容を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施形態1に係る医療用針1の斜視図。
【図2】図1とは異なる方向から見たときの医療用針1の斜視図。
【図3】医療用針1の正面図。
【図4】医療用針1の側面図。
【図5】医療用針1を説明するために示す図。
【図6】医療用針1を説明するために示す図。
【図7】医療用針1を説明するために示す図。
【図8】医療用針1を説明するために示す図。
【図9】医療用針1を説明するために示す図。
【図10】スライド部材42の拡大平面図。
【図11】医療用針1を説明するために示す図。
【図12】医療用針1を説明するために示す図。
【図13】針カバー部材80を説明するために示す図。
【図14】針カバー部材80を説明するために示す図。
【図15】実施形態2に係る医療用針2の側面図。
【図16】スライド部材142の拡大平面図。
【図17】医療用針2を説明するために示す図。
【図18】従来の医療用針9を説明するために示す図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の医療用針について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
【0030】
[実施形態1]
まず、実施形態1に係る医療用針1の構成について、図1〜図14を用いて詳細に説明する。
【0031】
図1は、医療用針1の斜視図である。図2は、図1とは異なる方向から見たときの医療用針1の斜視図である。図3は、医療用針1の正面図である。図4は、医療用針1の側面図である。なお、図1〜図4においては、針カバー部材80の図示を省略している。また、図4においては、伸縮部30を折り畳んだ状態のときの医療用針1の側面図を示している。
図5〜図9は、医療用針1を説明するために示す図である。図5(a)〜図9(a)は医療用針1を使用したときの各状態を示す正面図であり、図5(b)〜図9(b)は図5(a)〜図9(a)に示す状態のときの斜視図である。
【0032】
図10は、スライド部材42の拡大平面図である。
図11は、医療用針1を説明するために示す図である。なお、図11においては、発明の理解を容易にするため、第2伸縮部材36の一部を切り欠いて図示している。
図12は、医療用針1を説明するために示す図である。図12(a)は伸縮部30を折り畳んだ状態のときの医療用針1の側面断面図であり、図12(b)は伸縮部30を最も伸長させた状態のときの医療用針1の側面断面図である。なお、図12(a)及び図12(b)において、湾曲針10については断面で図示していない。
【0033】
図13及び図14は、針カバー部材80を説明するために示す図である。図13(a)は針カバー部材80の正面図であり、図13(b)は針カバー部材80の側面図であり、図13(c)は針カバー部材80の上面図であり、図13(d)は針カバー部材80の底面図である。図14(a)は針カバー部材80の斜視図であり、図14(b)は針カバー部材80を装着したときの医療用針1の斜視図である。
【0034】
なお、以下の説明においては、互いに直交する3つの方向をそれぞれx軸方向、y軸方向、z軸方向とする。x軸方向とは「第3方向」のことであり、y軸方向とは「第2方向」のことであり、z軸方向とは「第1方向」のことである。x軸方向は、皮膚接触部60の長辺方向と同じ方向であり、y軸方向は、皮膚接触部60の短辺方向と同じ方向(または、基部20の長手方向と同じ方向)であり、z軸方向は、湾曲針10の湾曲部14から針先端部16に沿った方向(または、皮膚接触部60における基部20側の面に垂直な方向)である。
【0035】
実施形態1に係る医療用針1は、患者の皮下に埋め込まれたアクセスポートに穿刺するための医療用針であって、図1〜図4に示すように、所定角度(例えば90度)に湾曲した湾曲部14を有する湾曲針10と、湾曲針10の一部が植設された基部20と、基部20に設けられ、パンタグラフ状に伸縮可能に構成された伸縮部30と、伸縮部30における基部20とは反対側に接続配置された皮膚接触部60と、スライド部材42及びガイド部50を有する外力付与機構40と、基部20に設けられた翼部70と、針カバー部材80(図13及び図14参照。)とを備える。
【0036】
湾曲針10は、図4に示すように、チューブ接続側端部12と、例えば90度に湾曲した湾曲部14と、患者の皮下に埋め込まれたアクセスポート(図示せず。)に穿刺される針先端部16とを有する。チューブ接続側端部12から湾曲部14までは、y軸方向に平行な直管状であり、湾曲部14から針先端部16の手前までは、z軸方向に平行な直管状である。針先端部16は、コアリング(アクセスポートにおけるセプタムの穴あきや削りカスの発生)防止のために若干屈曲した構成となっている。
【0037】
基部20は、管状のチューブ接続部22と、スライド部材接続部24とを有する。基部20は、湾曲針10のチューブ接続側端部12及び湾曲部14を覆うように構成されており、チューブ接続部22の部分で図示しないチューブに接続可能に構成されている。スライド部材接続部24は、鎌首形状(鎌継ぎの突出部側に似た形状)であり、スライド部材42の一方端部42a(後述する。)と接続されている。
【0038】
伸縮部30は、湾曲針10を間にして対向配置された第1伸縮部材32及び第2伸縮部材36を有する。第1及び第2伸縮部材32,36のそれぞれは、端部が基部20及び皮膚接触部60に接続されており、屈曲部34,38の部分で略「くの字」状に屈曲可能に構成されている(図3参照。)。また、第1及び第2伸縮部材32,36のそれぞれは、第1及び第2伸縮部材32,36の各端部と基部20及び皮膚接触部60との接続部分においても、屈曲可能に構成されている。このように構成された第1及び第2伸縮部材32,36が湾曲針10を間にして対向配置されているため、図5〜図9に示すように、x軸方向に沿って広がるように又は狭まるように、パンタグラフ状に伸縮することができる。
また、伸縮部30は、第1及び第2伸縮部材32,36の広がる方向が、皮膚接触部60の長辺方向と同じ方向となるように配置されている。
【0039】
伸縮部30は、図12から分かるように、伸縮部30(第1及び第2伸縮部材32,36)を最も伸ばしたときのz軸方向に沿った長さが、湾曲針10の針先端部16から湾曲部14までの長さ以上となるように構成されている。
【0040】
皮膚接触部60は、図1及び図2に示すように、略長方形状の板状部材であり、長方形の四隅の角は丸め処理が施されている。皮膚接触部60は、略中央位置に形成され湾曲針10を通過させる通過部62と、略中央位置に形成され湾曲針10を通過させない非通過領域64(図12参照。)とを有する。通過部62は、スリット状(切れ込み状)の通過部である。
【0041】
外力付与機構40は、図1〜図4及び図10に示すように、基部接続用孔43及び針挿通孔44が設けられたスライド部材42と、門型形状(アーチ形状)からなるガイド部50とを有する。
【0042】
スライド部材42は、図10に示すように長尺部材であって、可撓性を有する。基部接続用孔43は、スライド部材42の一方端部42a側に設けられた丸孔である。針挿通孔44は、スライド部材42の他方端部42b側からスライド部材42の長手方向に沿って形成された長孔である。スライド部材42は、基部接続用孔43を介して基部20のスライド部材接続部24と接続されており、ガイド部50と皮膚接触部60とによって形成された穴を通過させて、かつ、針挿通孔44に湾曲針10を挿通させた状態で配置されている(図1参照。)。
スライド部材42の他方端部42bを含む部分は、図4に示すように、基部20側に向けて緩やかに湾曲している。
【0043】
ガイド部50は、図1〜図4に示すように、伸縮部30(第1及び第2伸縮部材32,36)と皮膚接触部60との接続部分であって、皮膚接触部60における基部20側の面に配置されている。さらに具体的に言えば、図2及び図12から分かるように、皮膚接触部60を平面的に(x−y平面で)視たときに、通過部62が設けられている側の辺とは反対の辺(対辺)近傍に設けられている。ガイド部50は、スライド部材42の移動をガイドする機能を有する。
【0044】
外力付与機構40は、針挿通孔44に湾曲針10を挿通させた状態で伸縮部30を伸ばすことにより、針挿通孔44における他方端部42b側の縁部分44eと湾曲針10とが係合するように構成されている。針挿通孔44の縁部分44eと湾曲針10とが係合した状態で伸縮部30をさらに伸ばすと、湾曲針10に対してy軸方向に沿った外力が発生する。これにより、スライド部材42の他方端部42bがy軸方向に沿って移動することとなり、結果として、針先端部16が、通過部62から非通過領域64(図12(b)の破線で囲んだ部分)へと移動することとなる(図11及び図12参照。)。
【0045】
翼部70は、図1〜図3に示すように、基部20の側方に接続配置された一対の翼部材であって、略矩形状の把持部72,74と、基部20と各把持部72,74との間に配置され、把持部72,74の厚みよりも薄く形成された薄肉部77,78とを有する。把持部72,74は、基部20と薄肉部77,78との接続部分を軸として所定角度回動可能に構成されている(図5〜図9参照。)。薄肉部77,78の厚みが把持部72,74の厚みよりも薄いことから、翼部70を把持する際に、基部20と薄肉部77,78とが干渉してしまうのを抑制することができ、結果として、翼部70を把持しやすくなる。また、薄肉部77,78の厚みが把持部72,74の厚みよりも薄いことから、把持部72,74を回動させやすい。
【0046】
基部20、伸縮部30、皮膚接触部60、外力付与機構40及び翼部70は、同一のプラスチック材料(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど。)からなる。なお、基部20、伸縮部30、皮膚接触部60及び翼部70並びに外力付与機構40のうちガイド部50は、射出成形することによって一体形成されている。外力付与機構40のうちスライド部材42は、これら基部20などの部材とは別体として形成された後、スライド部材接続部24に接続配置されている。
【0047】
針カバー部材80は、図13及び図14に示すように、所定の厚みを残して中身がくり抜かれた、正面視略T字状の部材である。針カバー部材80は、伸縮部30を折り畳んだ状態で翼部70、伸縮部30及び皮膚接触部60を格納可能な第1格納部82と、伸縮部30を折り畳んだ状態で湾曲針10(の針先端部16)を格納可能な第2格納部84とを有する。第1格納部82の上面には、基部20の位置に対応して切り欠き83が設けられている。伸縮部30を折り畳んだ状態とすると、図14(b)から分かるように、翼部70、伸縮部30及び皮膚接触部60が第1格納部82に格納され、湾曲針10(の針先端部16)が第2格納部84に格納される。
【0048】
次に、実施形態1に係る医療用針1の使用方法について、主に図5〜図9を用いて説明する。
【0049】
医療用針1を使用する際には、まず、針カバー部材80が装着された状態の医療用針1(図14(b)参照。)から、針カバー部材80を取り外す。
次に、翼部70の把持部72,74を把持し、把持部72,74が接触するまで翼部70を回動させる(図5〜図7参照。)。
そして、把持部72,74を把持した状態で、患者の皮膚の下に埋め込まれたアクセスポートに湾曲針10を穿刺する。穿刺後は、必要に応じて、把持部72,74を広げて把持部72,74の上からテープ止めを行う。
【0050】
患者の皮膚(アクセスポート)から湾曲針10を抜くとき、テープ止めを行った場合はテープを剥がして、皮膚接触部60を押さえながら把持部72,74を摘まみ上げ、患者の皮膚から湾曲針10を引き抜く(図8及び図9参照。)。
【0051】
なお、患者の皮膚(アクセスポート)から湾曲針10を抜く方法としては、上述の方法に限定されない。図示による説明は省略するが、各把持部72,74を第1及び第2伸縮部材32,36に沿わせる(皮膚接触部60側に垂らす)ようにして、第1及び第2伸縮部材32,36と把持部72,74とを一緒に摘まみ上げてもよい。
【0052】
以上のように構成された実施形態1に係る医療用針1によれば、上記した伸縮部30及び外力付与機構40を備えているため、患者の皮膚(アクセスポート)から湾曲針10を抜いて伸縮部30を伸ばすことにより、湾曲針10の針先端部16を通過部62から非通過領域64へと移動させることが可能となる。つまり、使用後の医療用針1における湾曲針10の針先端部16を、非通過領域64でもってカバーすることができる。その結果、使用者による誤刺の発生を防止することができる。
【0053】
また、実施形態1に係る医療用針1によれば、上記した外力付与機構40は、使用前の状態(伸縮部30を折り畳んだ状態)のときから湾曲針10に対して外力を加えるのではなく、伸縮部30を伸ばしたときに湾曲針10に対して外力を加えるように構成されていることから、上述のクリープ変形による問題が発生することもない。その結果、誤刺防止機能について高い信頼性を確保することができる。
【0054】
したがって、実施形態1に係る医療用針1は、誤刺の発生を防止することができ、誤刺防止機能の信頼性に優れた医療用針となる。
【0055】
実施形態1に係る医療用針1においては、外力付与機構40は、上記したスライド部材42及びガイド部50を有し、スライド部材42が、針挿通孔44に湾曲針10を挿通させた状態で伸縮部30を伸ばすことにより、スライド部材42の他方端部42bがy軸方向に沿って移動可能に構成されている。これにより、伸縮部30を伸ばすことによる針先端部16の非通過領域64への移動動作を、スライド部材42及びガイド部50という比較的簡単な構成でもって実現することができる。
【0056】
実施形態1に係る医療用針1においては、スライド部材42は、可撓性を有するため、伸縮部30を伸ばしたときのスライド部材42の移動動作を、比較的スムーズなものとすることができる。
【0057】
実施形態1に係る医療用針1においては、スライド部材42が、伸縮部30を伸ばすことによって針挿通孔44の縁部分44eと湾曲針10とが係合する結果、上記した外力が発生するように構成されている。これにより、伸縮部30を伸ばすことによる針先端部16の非通過領域64への移動動作を確実に実現することができる。
【0058】
実施形態1に係る医療用針1においては、スライド部材42の他方端部42bは、基部20側に向けて湾曲している。これにより、医療用針1を患者の皮膚(アクセスポート)に穿刺しているときに、スライド部材42の他方端部42bが患者の皮膚に強く当たってしまう(食い込んでしまう)のを抑制することが可能となる。
【0059】
実施形態1に係る医療用針1においては、伸縮部30は、湾曲針10を間にして対向配置された第1及び第2伸縮部材32,36を有し、パンタグラフ状に伸縮可能に構成されている。これにより、患者の皮膚(アクセスポート)から湾曲針10を抜いたときに、湾曲部14から針先端部16までの部分を第1及び第2伸縮部材32,36によってカバーすることができるため、誤刺の発生をさらに防止することができる。また、使用者が、使用後の湾曲針10に触れてしまうのを極力抑制することができるため、使用後の湾曲針に触れることによる感染症の発生を抑制することができる。
【0060】
実施形態1に係る医療用針1においては、伸縮部30を折り畳んだときに第1及び第2伸縮部材32,36の広がる方向と、皮膚接触部60の長辺方向とが同じ方向となるように揃えられているため、両者が互いに異なる方向となっている場合に比べて、コンパクトな医療用針を実現することができる。
また、皮膚接触部60が略長方形状であることにより、テープ等を用いて患者の皮膚に医療用針1を固定する際に、固定しやすい(テープ止めがしやすい)。
【0061】
[実施形態2]
図15は、実施形態2に係る医療用針2の側面図である。図16は、スライド部材142の拡大平面図である。図17は、医療用針2を説明するために示す図である。図17(a)は伸縮部30(図には第1伸縮部材32のみ図示。)を折り畳んだ状態のときの医療用針2の側面断面図であり、図17(b)は伸縮部30(図には第1伸縮部材32のみ図示。)を最も伸長させた状態のときの医療用針2の側面断面図である。
なお、図15及び図17においては、針カバー部材80の図示を省略している。また、図15及び図17において、図4及び図12と同一の部材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0062】
実施形態2に係る医療用針2は、基本的には実施形態1に係る医療用針1と良く似た構成を有するが、外力付与機構(スライド部材)の構成が実施形態1に係る医療用針1とは異なる。
【0063】
すなわち、実施形態2に係る医療用針2においては、図15〜図17に示すように、外力付与機構140は、スライド部材142と、門型形状(アーチ形状)からなるガイド部50とを有する。
【0064】
スライド部材142は、図16に示すように、一方端部142a側に配置された接続部145と、他方端部142b側に配置された針保持部147と、接続部145と針保持部147とを連結する連結部148とを有する。接続部145には基部接続用孔143が設けられている。針保持部147には、湾曲針10の管断面形状に対応する形状からなる針挿通孔144が設けられている。連結部148は、細長い板状部材からなり、可撓性を有する。
【0065】
スライド部材142は、基部接続用孔143を介して基部20のスライド部材接続部24と接続されており、ガイド部50と皮膚接触部60とによって形成された穴を通過させて、かつ、針挿通孔144に湾曲針10を挿通させた状態で配置されている。
また、スライド部材142は、伸縮部30を折り畳んだ状態(図15及び図17(a)に示す状態)のとき、医療用針2の正面側に向かって、連結部148の部分で屈曲するように構成されている。
【0066】
ガイド部50は、実施形態1で説明したものと同一であるため、詳細な説明は省略する。
【0067】
外力付与機構140は、針挿通孔144に湾曲針10を挿通させた状態で伸縮部30(第1伸縮部材32のみ図17(b)に図示)を伸ばすことにより、針挿通孔144における他方端部142b側の縁部分と湾曲針10とが係合するように構成されている。針挿通孔144の縁部分と湾曲針10とが係合した状態で伸縮部30をさらに伸ばすと、湾曲針10に対してy軸方向に沿った外力が発生する。これにより、スライド部材142の他方端部142bがy軸方向に沿って移動することとなり、結果として、針先端部16が、通過部62から非通過領域64(図17(b)の破線で囲んだ部分)へと移動することとなる(図17参照。)。
【0068】
なお、図示による説明は省略するが、医療用針2における針カバー部材の構成が、実施形態1で説明した針カバー部材80とは若干異なる。具体的には、図13(a)に示した第1格納部82の正面中央位置に、スライド部材142の一部を通過させるための孔が設けられている。これにより、伸縮部30を折り畳んで医療用針2の各部を針カバー部材内に収納する際、収納しやすくなる。
【0069】
このように、実施形態2に係る医療用針2は、実施形態1に係る医療用針1とは外力付与機構(スライド部材)の構成が異なるが、上記した外力付与機構140を備えているため、実施形態1に係る医療用針1の場合と同様に、患者の皮膚(アクセスポート)から湾曲針10を抜いて伸縮部30を伸ばすことにより、湾曲針10の針先端部16を通過部62から非通過領域64へと移動させることが可能となる。つまり、使用後の医療用針2における湾曲針10の針先端部16を、非通過領域64でもってカバーすることができる。その結果、使用者による誤刺の発生を防止することができる。
また、上記した外力付与機構140は、使用前の状態(伸縮部30を折り畳んだ状態)のときから湾曲針10に対して外力を加えるのではなく、伸縮部30を伸ばしたときに湾曲針10に対して外力を加えるように構成されていることから、上述のクリープ変形による問題が発生することもない。その結果、誤刺防止機能について高い信頼性を確保することができる。
したがって、実施形態2に係る医療用針2は、誤刺の発生を防止することができ、誤刺防止機能の信頼性に優れた医療用針となる。
【0070】
また、実施形態2に係る医療用針2においては、スライド部材142は、伸縮部30を伸ばすことによって針挿通孔144の縁部分と湾曲針10とが係合する結果、上記した外力が発生するように構成されている。これにより、伸縮部30を伸ばすことによる針先端部16の非通過領域64への移動動作を確実に実現することができる。
【0071】
また、実施形態2に係る医療用針2においては、伸縮部30を折り畳んだ状態(図15及び図17(a)に示す状態)のとき、医療用針2の正面側に向かって、連結部148の部分で屈曲するように構成されている。これにより、医療用針2を患者の皮膚(アクセスポート)に穿刺しているときに、医療用針2に接続されたチューブとスライド部材142とが干渉してしまうこともない。
【0072】
実施形態2に係る医療用針2は、外力付与機構(スライド部材)の構成が異なる点以外では、実施形態1に係る医療用針1と同様の構成を有するため、実施形態1に係る医療用針1が有する効果のうち該当する効果をそのまま有する。
【0073】
以上、本発明の医療用針を上記の各実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0074】
(1)上記実施形態1においては、スライド部材42の他方端部42bが基部20側に向けて緩やかに湾曲している場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、スライド部材の他方端部が基部側に向けて屈曲して(所定角度に折れ曲がって)いてもよい。
【0075】
(2)上記実施形態2においては、スライド部材142の連結部148が、可撓性を有する細板部材からなる場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、連結部がひも状部材であってもよい。この場合、使用前の状態(伸縮部を折り畳んだ状態)において、連結部を適当な長さで折り畳んだり小さく巻いたりすることができるため、そのように小さくまとめた連結部を、例えば伸縮部と翼部との間に生まれる微小なスペース等に収納することが可能となる。その結果、使用前の状態(伸縮部を折り畳んだ状態)における製品全体サイズの小型化を図ることが可能となる。
【0076】
(3)上記各実施形態においては、スライド部材の一方端部側が基部20(スライド部材接続部24)に接続され、ガイド部が皮膚接触部に設けられている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。湾曲針10の一部に対して、z軸方向と交差する第2方向(例えばy軸方向)に沿った外力を加えることが可能であれば、スライド部材の一方端部は、例えば伸縮部30に接続されていてもよいし、ガイド部は例えば伸縮部に設けられていてもよい。
【0077】
(4)上記各実施形態においては、ガイド部が門型形状(アーチ形状)からなる場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。スライド部材の移動をガイドする機能を発揮することが可能であれば、ガイド部は他の形状からなっていてもよい。また、上記各実施形態においては、ガイド部の数が1つである場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、複数からなっていてもよい。
【0078】
(5)上記各実施形態においては、外力付与機構が湾曲針の一部に対して、y軸方向に沿った外力を加える場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。第1方向がz軸方向である場合には、外力付与機構は、例えばx軸方向に沿った外力を加えるように構成されていてもよいし、x軸方向のベクトル成分とy軸方向のベクトル成分とを含む方向に沿った外力を加えるように構成されていてもよい。
【0079】
(6)上記各実施形態においては、皮膚接触部の平面形状が略長方形状である場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、楕円形状や丸形状であってもよいし、三角形状や正方形状であってもよいし、5角形以上の多角形状であってもよい。
【0080】
(7)上記各実施形態においては、皮膚接触部に形成される通過部が、スリット状(切れ込み状)である場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。通過部としては、例えば、湾曲針10が通過する位置(皮膚接触部の略中央部)に形成された穴(丸穴や角穴)であってもよい。
【0081】
(8)上記各実施形態においては、基部20、伸縮部30、皮膚接触部60及び翼部70並びに外力付与機構40,140のうちガイド部50が一体成形されている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、これら各部材を個別に作成した後、各部材を接合してもよい。
【0082】
(9)上記各実施形態においては、基部20、伸縮部30、皮膚接触部60、外力付与機構40,140及び翼部70が同一のプラスチック材料(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど。)からなる場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、部材ごとで異なるプラスチック材料を用いてもよいし、プラスチック材料以外の材料でこれら部材を形成してもよい。
【0083】
(10)上記各実施形態においては、湾曲針10の湾曲部14が90度湾曲している場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。90度未満又は90度を超える角度で湾曲した湾曲針を備える医療用針についても本発明を適用可能である。
【0084】
(11)上記各実施形態においては、翼部70が、基部20の側方に接続配置された一対の翼部材である場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、基部20の上方に1つの翼部材がz軸方向に沿って伸びるように配置されていてもよい。また、上記各実施形態においては、略矩形状の把持部72,74を有する翼部70を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、略矩形状とは異なる形状(例えば丸形状など)の把持部を有する翼部であってもよい。
【0085】
(12)上記各実施形態においては、伸縮部30を折り畳んだときに第1及び第2伸縮部材32,36の広がる方向と皮膚接触部の長辺方向とが同じx軸方向で揃えられ、翼部70の把持部72,74がx軸方向に伸びる場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第1及び第2伸縮部材の広がる方向と皮膚接触部の長辺方向とが同じx軸方向で揃えられ、翼部の把持部がy軸方向に伸びるように構成されていてもよい。または、第1及び第2伸縮部材の広がる方向と皮膚接触部の長辺方向とが同じy軸方向で揃えられ、翼部の把持部がy軸方向に伸びるように構成されていてもよい。
なお、後者の場合、すなわち、第1及び第2伸縮部材の広がる方向と、皮膚接触部の長辺方向と、翼部の把持部が伸びる方向とが、基部20の長手方向であるy軸方向と同じ向きに揃えられているときには、医療用針全体のx軸方向の幅を比較的小さくすることができるため、例えば、医療用針を2つ以上並べて配置したいときに、各医療用針と繋がる各チューブの導出方向を一方向に揃えた状態で医療用針を配置することが可能となる。
【0086】
(13)上記各実施形態においては、基部として、チューブ接続部22を有する基部20を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、チューブ接続部が省略された基部(チューブ接続部を有しない基部)を備えていてもよい。この場合は、例えば、湾曲針10のチューブ接続側端部12を基部から露出させ、チューブ接続側端部12とチューブとを直接接続すればよい。
【0087】
(14)上記各実施形態においては、伸縮部として、2つの伸縮部材(第1及び第2伸縮部材32,36)によってパンタグラフ状に伸縮可能に構成された伸縮部30を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。伸縮部としては、1つの伸縮部材で構成された伸縮部であってもよい。
【符号の説明】
【0088】
1,2,9 医療用針
10,910 湾曲針
12 (湾曲針の)チューブ接続側端部
14,914 湾曲部
16,916 針先端部
20,920 基部
22 チューブ接続部
24 スライド部材接続部
30,930 伸縮部
32 第1伸縮部材
34,38 屈曲部
36 第2伸縮部材
40,140 外力付与機構
42,142 スライド部材
42a,142a (スライド部材の)一方端部
42b,142b (スライド部材の)他方端部
43,143 基部接続用孔
44,144 針挿通孔
44e 針挿通孔における他方端部側の縁部分
50 ガイド部
60 皮膚接触部板状部材
62 通過部
64 非通過領域
70 翼部
72,74 把持部
77,78 薄肉部
80 針カバー部材
82 第1格納部
83 切り欠き
84 第2格納部
145 接続部
147 針保持部
148 連結部
940 キャップ部
942 孔
950 スプリングクリップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定角度に湾曲した湾曲部(14)を有する湾曲針(10)と、
前記湾曲針のチューブ接続側端部(12)から前記湾曲部(14)までの、少なくとも一部の外面に設けられ、前記湾曲針(10)を保持する基部(20)と、
前記基部(20)に設けられ、前記湾曲部(14)から前記湾曲針の針先端部(16)に向かう第1方向に沿って伸縮可能に構成された伸縮部(30)と、
前記伸縮部(30)における前記基部(20)とは反対側の位置に設けられ、前記伸縮部(30)を折り畳んだときに前記湾曲針(10)を通過させる通過部(62)を有する皮膚接触部(60)と、
前記伸縮部(30)を伸ばしたときに、前記湾曲部(14)から前記針先端部(16)までの一部に対して、前記第1方向と交差する第2方向に沿った外力を加えるように構成された外力付与機構(40)とを備え、
前記伸縮部(30)は、前記伸縮部(30)を最も伸ばしたときの前記第1方向に沿った長さが、前記針先端部(16)から前記湾曲部(14)までの長さ以上となるように構成されており、
前記外力付与機構(40)は、前記伸縮部(30)を伸ばすことによって前記針先端部(16)が前記通過部(62)から前記皮膚接触部(60)における前記通過部を除く領域へと移動するように、前記湾曲針(10)の一部に対して前記外力を加えることを特徴とする医療用針(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の医療用針において、
前記外力付与機構(40)は、
一方端部(42a)側が前記基部(20)又は前記伸縮部(30)に接続され、少なくとも他方端部(42b)側に、前記湾曲針(10)を挿通可能な針挿通孔(44)が設けられたスライド部材(42)と、
前記伸縮部(30)又は前記皮膚接触部(60)に設けられ、前記スライド部材(42)の移動をガイドするガイド部(50)とを有し、
前記スライド部材(42)は、前記針挿通孔(44)に前記湾曲針(10)を挿通させた状態で前記伸縮部(30)を伸ばすことにより、前記スライド部材(42)の前記他方端部(42b)が前記第2方向に沿って移動可能に構成されていることを特徴とする医療用針(1)。
【請求項3】
請求項2に記載の医療用針において、
前記スライド部材(42)は、可撓性を有することを特徴とする医療用針(1)。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の医療用針において、
前記スライド部材(42)は、長尺部材であり、
前記針挿通孔(44)は、前記スライド部材(42)の長手方向に沿って形成された長孔であり、
前記スライド部材(42)は、前記伸縮部(30)を伸ばすことによって前記針挿通孔(44)における前記他方端部側の縁部分(44e)と前記湾曲針(10)とが係合する結果、前記外力が発生するように構成されていることを特徴とする医療用針(1)。
【請求項5】
請求項4に記載の医療用針において、
前記スライド部材(42)の前記他方端部(42b)は、前記基部(20)側に向けて屈曲又は湾曲していることを特徴とする医療用針(1)。
【請求項6】
請求項2又は3に記載の医療用針において、
前記スライド部材(142)は、
前記一方端部(142a)側に配置され、前記基部(20)又は前記伸縮部(30)に接続可能に構成された接続部(145)と、
前記他方端部(142b)側に配置され、前記針挿通孔(144)が設けられた針保持部(147)と、
前記接続部(145)と前記針保持部(147)とを連結する連結部(148)とを有し、
前記針挿通孔(144)は、前記湾曲針(10)の管断面形状に対応する形状からなる孔であり、
前記スライド部材(142)は、前記伸縮部(30)を伸ばすことによって前記針挿通孔(144)の縁部分と前記湾曲針(10)とが係合する結果、前記外力が発生するように構成されていることを特徴とする医療用針(2)。
【請求項7】
請求項6に記載の医療用針において、
前記連結部(148)は、ひも状部材であることを特徴とする医療用針(2)。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の医療用針において、
前記伸縮部(30)は、前記湾曲針(10)を間にして対向配置された2つの伸縮部材(32,36)を有し、パンタグラフ状に伸縮可能に構成されていることを特徴とする医療用針(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−143001(P2011−143001A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4966(P2010−4966)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(000200035)川澄化学工業株式会社 (103)
【Fターム(参考)】