説明

医療画像システムにおけるスキャンの起動

医療画像デバイスのスキャン起動方法は、磁気及び放射線に不感応な通信デバイスからの、患者の準備完了信号を検出し、前記患者の準備完了信号の検出により自動的に前記スキャンを起動することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連した出願に対する相互参照>
本出願は、2006年9月7日に出願された米国特許仮出願第60/843,469号の優先権の利益を受ける権利がある。その出願の開示内容は、ここに参照として統合される。
【0002】
<背景>
本開示は、医療画像システムにおいて使用される通信デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
磁気共鳴画像法(MRI)及びコンピュータ断層撮影(CT)のスキャン手続の際に、MRI装置またはCT装置内の患者に、スキャン手続に関する指示または情報を与える必要がしばしばある。例えば、ある状況では、満足なスキャンが得られるよう、息を止めてじっとしているように、患者に指示することが望ましい。これを容易にするため、1回またはそれ以上のスキャンに備えて、正確に定められた時間息を止めているように患者に聞こえるように指示する、ソフトウェア駆動の音声指示システムを、いくつかの装置は使用している。この指示を与えた後、自動化システムがスキャンを起動する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、スキャンの開始後にも患者の用意ができていない場合がしばしばある。従って、移動によるアーチファクトが結果のスキャン画像に表われ、スキャンの繰り返しが必要になる。スキャンの繰り返しには時間を要し、患者のストレスと同様に病院のコストを増大させる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
<概要>
本発明の種々の態様が、請求項に記載されている。
【0006】
例えば、ある態様では、医療画像システムにおいて使用される装置は、磁気及び放射線に不感応な通信デバイスと、前記通信デバイスに接続されたセンサと、前記センサに接続されたプロセッサを含んでいる。前記プロセッサは、前記通信デバイスの活性化により医療画像システムによるスキャンを起動するように動作可能である。
【0007】
他の態様では、医療画像デバイスのスキャン起動方法は、磁気及び放射線に不感応な通信デバイスからの、患者の準備完了信号を検出し、前記患者の準備完了信号の検出により自動的に前記スキャンを起動することを含む。
【0008】
いくつかの実施形態は、以下の1つまたはそれ以上の特徴を含む。例えば、前記通信デバイスは携帯型であってよい。ある場合には、前記センサが、前記通信デバイスにより生成される患者の準備完了信号を検出するように動作可能である。
【0009】
いくつかの実施形態では、前記患者の準備完了信号の検出が、気圧の変化または絶対圧力レベルの検出を含む。前記通信デバイスが、空圧作動デバイスを含んでもよい。さらに、前記装置は、前記通信デバイス及び前記センサに接続された空圧カプラをさらに含んでもよい。ある場合には、前記センサが圧力の変化または絶対圧力レベルを検出することができる、圧力センサを含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記患者の準備完了信号の検出が光信号または光信号の変化の検出を含む。例えば、前記光信号は、光信号の偏光状態または光強度の変化を含んでもよい。前記通信デバイスが光スイッチを含んでもよい。その代りに、または付け加えて、前記通信デバイスは偏光子を含んでもよい。他の実施形態では、前記装置は光導波路を含み、前記光導波路が前記通信デバイス及び前記センサに接続されている。ある場合には、前記装置は、光トランスミッタ及び/又は光強度の変化を検出することができる光検出器を含んでいる。ある場合には、前記光検出器は、光の偏光状態の変化を検出することができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、前記スキャンの自動的な起動が、前記患者の準備完了信号を前記医療画像デバイスが利用可能なものに変換して、前記変換された患者の準備完了信号を前記医療画像デバイスに送信することを含む。他の特徴と利点は、詳細な説明と図面、及び請求項から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
<図面の説明>
【図1】画像システムの一例の図である。
【図2】携帯型通信デバイスの一例の図である。
【図3】携帯型通信デバイスの一例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<詳細な説明>
MRI画像法とCTスキャン法は、患者の身体の内部構造と流れの解析を、非侵襲的に可能にする、有用な診断ツールである。一般的にMRIは、患者の身体内部の分子が検出可能な周波数で共鳴するように、磁場が変化する領域内で患者の身体に高周波を印加することを必要とする。検出された周波数は、内部及び外部の構造の映像化を可能にするように処理される。CTスキャンは、一つの回転軸周りで撮影された、大量の一連の2次元X線画像から、患者の内部構造の3次元画像を生成することを必要とする。
【0014】
MRIとCTスキャンの一般的な用途の一つは息を止めた画像の研究にあり、内科医学研究において非常に重要である。息を止めた画像は、1つまたはそれ以上の撮像スキャンの間に患者が息を止めている、技術である。息を止めることにより、腹部と胸部の撮影中の画像アーチファクトの原因となり得る、呼吸運動を患者は最少化することができる。息を止めた画像は、スキャン時間が15秒から20秒間継続する間、患者の全面的な協力を必要とする。ある場合には、検査中の反応を改善できるように、スキャナの外で患者が息止めの練習をすることが必要である。しかしながら多くの場合、画像データを取得するために必要な時間が長いので、患者の呼吸運動や動きに起因する画像の劣化は、顕著な問題である。これらの問題は、患者の用意ができていない時やまだ動いている時にスキャンを開始する、自動画像システムでは、一層悪化される。
【0015】
図1は、患者9がスキャン手続の開始への準備ができたことを報知できるようにする通信デバイス5を含む、画像システム1の一例を示す。このシステム1は、その内部に患者9が入るMRI装置3を含んでいる。他の実施形態では、MRI装置3の代わりにCTスキャン装置が使用される。患者が装置3に入ると、システム1内部の自動プログラムが、患者がスキャン開始の準備ができたら知らせるように、音声または視覚で患者9に要請する。患者9の準備ができると、患者の準備完了信号が装置5に接続されたセンサ7に送られるように、患者が要請に応じて装置5を起動する。患者の準備完了信号を受信して検出することにより、スキャン手続を起動するために、センサ7はMRI装置3にデータ信号を出力する。センサ7の出力は、スキャンデバイスが利用可能な任意のデータ信号であってよい。例えばある場合には、センサ7は患者の準備完了信号を、アスキーテキストデータ、TTL電圧信号または光信号に対応する、センサ7により出力されるデータ信号に変換する。他の信号フォーマットと型式が、同様に使用されてもよい。
【0016】
望ましくは、通信デバイス5は、例えばプッシュボタンやスイッチのような、単純な起動機構6を備えた、携帯型のデバイスである。それに加えてデバイス5は、MRI装置3の強い磁場またはCTスキャナのX線と相互作用をしない、鉄でない、磁場にも放射線にも感じない、材料で構成されるべきである。通信デバイス5により生成される患者の準備完了信号も、同様に、MRI装置3により生成される強い磁場またはCTスキャナにより生成されるX線と相互作用するべきでない。
【0017】
図2は、空圧作用を用いた第1実施形態の携帯型通信デバイス5の、一例を示す。デバイス5は、押圧されるとデバイス5内部に気圧の変化を生じる、柔軟なキノコ帽子を起動機構6として含んでいる。デバイス5は、気圧の変化を空圧センサ13に伝達する空圧管のような、導管11に接続されている。空圧センサ13は、絶対気圧またはデバイス5の活性化に起因する気圧変化を検出できる、任意の型式の圧力センサまたは圧力差センサであってよい。センサ13は、画像スキャンの起動と装置3の起動を担う、プロセッサ15に接続されている。気圧の変化の検出、または所定の気圧レベルの検出により、センサ13は電位または電流のような信号を生成してプロセッサ15に送信する。信号を受信すると、プロセッサ15は画像スキャンの手続を起動する。ある実施形態では、空圧センサ13はコンピュータの一部として、プロセッサ15と組合せられている。代案として、センサ13は、プロセッサ15を含むコンピュータに取り付け取り外しが可能な、別個の部品であってもよい。ある場合にはセンサ13は、センサ13により供給される信号がスキャンを起動するように、装置3に直接接続されている。
【0018】
気圧の変化を生成する他の機構が、同様に使用されてもよい。例えば柔軟なキノコ帽子は、押圧されるとデバイス5内部の圧力を増大させる、プランジャ機構に置き換えられることができる。この圧力の増加は、空圧管11を通してセンサ13に伝達され得る。
【0019】
他の実施形態では、携帯型の通信デバイス5は、例えば図3に示されるような、光通信リンクの割り込みにより、患者の準備完了信号を生成する。そのような実施形態では、光ファイバのような導波路21による光路を通して、通信デバイス5に伝達される光信号をトランシーバ17は生成する。光信号は導波路21によりデバイス5から戻り、トランシーバ17により検出される。光信号は発光ダイオードやレーザダイオードのような素子を用いて生成されることができ、一方その検出はフォトダイオードやソーラーセルのような素子を用いて行われることができる。他の光生成、光検出のための素子が、同様に用いられてもよい。光生成、光検出の素子は、単一のデバイスとして、または分離した別個のデバイスとして構成されることができる。さらに、光信号の伝達と検出のための導波路21は、単一の導波路であってもよいし、個別の導波路であってもよい。
【0020】
通信デバイス5が動作していない状態では、光路には割り込みはなく、患者がスキャンの開始に対し準備ができていないことを表わす信号を、トランシーバ17はプロセッサ15に出力する。プロセッサ15に送られる信号は、例えば、固定された電圧または電流を含むことができる。しかしながらデバイス5の起動により、光路は割り込みを受け、トランシーバ17は導波路21からの光を検出しなくなる。従って、トランシーバ17からの出力信号は、患者がスキャンの開始に対し準備ができたことを表わす状態に変化する。トランシーバ17からの出力信号は、例えば、デバイスが起動されていない場合に、トランシーバ17により出力される信号とは実質的に異なるレベルの電位または電流を含むことができる。トランシーバ17に接続されているプロセッサ15は、出力信号の変化を検出して、スキャンを起動する。代案として、トランシーバ17の出力信号がスキャンを起動するように、装置3に直接トランシーバ17が接続されてもよい。
【0021】
他の実施形態では、通信デバイス5の起動により、光路が復活されることができる。例えば、デバイス5が動作していない状態では、デバイスはトランシーバ17の受信器部分への光の伝達をブロックしている。しかしながら、患者がデバイス5を起動すると、光路は復活され光信号がトランシーバ17に配給される。
【0022】
光路に割り込むために、種々の異なる機構が使用されることができる。ある実施形態では、デバイス5の起動不起動に応じて、光路の光を偏向または吸収する機械的な光スイッチを、通信デバイス5は含んでいる。例えば、デバイス5は、患者がデバイス5のプッシュボタン6を押した時に、異なる位置に変位または回転する、レンズを光路に含むことができる。変位や回転の方向に応じて、光信号は、導波路21を通って伝わりトランシーバ17に戻ったり、または屈折されてトランシーバ17から離れたりする。また、同様に変位または回転する、ミラーでレンズを置き換えることもできる。例えば、デバイス5が動作していない時は、第1の状態にあるミラーは、入射する光を反射してトランシーバ17に戻すように動作可能である。デバイス5の起動により、光が反射してトランシーバ17に戻されないように、ミラーは第2の状態に回転または再配置される。
【0023】
他の実施形態では、通信デバイス5の起動は光路への割り込みとは対照的に、光信号の状態を変更する。例えば、通信デバイス5の起動により、光路を通る光の偏光度を変更する偏光子を、通信デバイス5は含んでもよい。偏光度の変化の検出により、患者がスキャンの開始に対し準備ができたことを表わす信号を、トランシーバ17は出力する。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態が記述された。それにかかわらず、本発明の精神と範囲から逸脱することなく、種々の変更がなされうることが理解されるべきである。従って、他の実施形態も請求項の範囲に属する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気及び放射線に不感応な通信デバイスと、
前記通信デバイスに接続されたセンサとを備え、
前記センサが、前記通信デバイスの活性化により医療画像システムによるスキャンを起動するように動作可能であることを特徴とする、医療画像システムにおいて使用される装置。
【請求項2】
前記通信デバイスが携帯型である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記センサが、前記通信デバイスにより生成される患者の準備完了信号を検出するように動作可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記通信デバイスが空圧作動デバイスを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記通信デバイス及び前記センサに接続された空圧カプラをさらに含む、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記センサが圧力センサを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記圧力センサが圧力の変化を検出するように動作可能である、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記圧力センサが絶対圧力レベルを検出するように動作可能である、請求項6に記載の装置。
【請求項9】
前記通信デバイスが光スイッチを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記通信デバイスが偏光子を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
さらに光導波路を含み、前記光導波路が前記通信デバイス及び前記センサに接続されている、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
さらに光トランスミッタ及び光導波路を含み、前記光導波路が前記光トランスミッタ及び前記通信デバイスに接続されている、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記センサが光検出器を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記光検出器が光の強度の変化を検出するように動作可能である、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記光検出器が光の偏光状態の変化を検出するように動作可能である、請求項13に記載の装置。
【請求項16】
前記センサに接続されたプロセッサをさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項17】
磁気及び放射線に不感応な通信デバイスからの、患者の準備完了信号を検出し、
前記患者の準備完了信号の検出により前記スキャンを起動する、
医療画像システムのスキャン起動方法。
【請求項18】
前記患者の準備完了信号の検出が気圧の変化の検出を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記患者の準備完了信号の検出が絶対圧力レベルの検出を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記患者の準備完了信号の検出が光信号の検出を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記患者の準備完了信号の検出が光信号の変化の検出を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
光信号の変化の検出が前記光信号の偏光状態の変化の検出を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
光信号の変化の検出が光強度の変化の検出を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記スキャンの自動的な起動が、前記患者の準備完了信号を前記医療画像システムが利用可能なものに変換して、前記変換された患者の準備完了信号を前記医療画像システムに送信することを含む、請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−502397(P2010−502397A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527568(P2009−527568)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際出願番号】PCT/US2007/077778
【国際公開番号】WO2008/030977
【国際公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(509066008)マグナコースティックス インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】