説明

医療診断支援装置及び医療診断支援方法

【課題】CAD所見がどの程度診断の参考になるのかを医師が適切に判断可能な情報として提示できるようにする。
【解決手段】被検体の検査データを解析してCAD所見を生成するCAD所見生成部102と、当該検査データに対する医師による読影所見を取得する読影所見取得部105と、CAD所見と読影所見との差異に関する情報を取得する所見管理部103と、CAD所見と読影所見との差異に関する情報に基づいて、CAD所見の信頼性を評価する信頼性評価部106を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療診断を支援する情報を提供する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療の分野において、医師は、患者を撮影した医用画像をモニタに表示し、モニタに表示された医用画像を読影して、病変部の状態や経時変化を観察する。医用画像を用いた画像診断において、医師は、診断対象である医用画像から異常陰影等を発見して、その異常陰影等が何であるかを診断する。画像診断の際に医師が作成する読影レポートには、発見した異常陰影等が何であるかを判断した結果(推定病名)と、その判断の根拠となる読影所見が記載される。このとき、医師が記した読影所見や推定病名は、以下のような場合には必ずしも正しいとは限らなかった。例えば、非常に忙しく1つの症例に対して多くの時間を費やせない医師や読影経験が浅い医師が、画像上で見つけにくい異常陰影や特徴を捉えづらい異常陰影を観察した場合には、異常陰影を見落とす可能性や、読影所見や推定病名の判断を誤る可能性があった。なお、以下の説明では、推定病名も広い意味における「所見(読影所見)」の1つと考える。
【0003】
そこで、医師による画像診断の精度を向上させる情報を提供することを目的として、医用画像をデジタル化して画像解析することにより疾患部位等を自動的に検出して、コンピュータ支援診断を行う医用画像処理装置が開発されている。以下、コンピュータ支援診断を、CAD(Computer-Aided Diagnosis)と称する。このようなCADでは、自動的に異常陰影候補を疾患部位として検出する。この異常陰影の検出処理では、医用画像データをコンピュータ処理することにより、癌等による異常な腫留陰影や高濃度の微小石灰化陰影等を検出する。そして、この検出結果を提示することにより、医師の読影に対する負荷を軽減し、また、読影結果の精度を向上させることができる。
【0004】
例えば、下記の特許文献1に記載されている装置では、CADにより異常陰影を検出した後、検出した異常陰影から医師が診断に用いる所見に対応する所見(の一部)を自動生成する。そして、自動生成した所見と医師が第一印象で記した読影所見とを自動比較し、比較結果が異なる場合に警告情報を提示する。ここで、CADを利用して自動生成した所見を「CAD所見」と呼ぶことにする。この技術により、医師が第一印象で記した読影所見とCAD所見が異なる場合に、医師に読影所見の見直しを促すことができ、精度の高い診断を実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3085724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、CAD所見が常に正しい場合には、医師が記した読影所見に誤りがあれば必ず警告提示されるが、実際には、CAD所見は、必ずしも正しい訳ではない。従って、実際には、CAD所見が間違っていて、かつ医師の読影所見が正しい場合にも警告提示されることとなり、警告提示されたからといって、医師は、そのときのCAD所見を正しいと判断できる訳ではなかった。つまり、提示されたCAD所見は、医師の診断の役に立つとは限らなかった。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、CAD所見がどの程度診断の参考になるのかを医師が適切に判断可能な情報として提示できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の医療診断支援装置は、被検体の第1の検査データを解析して第1の自動生成所見を生成する第1の生成手段と、操作部から入力された前記第1の検査データに対する第1の読影所見を取得する第1の取得手段と、前記第1の自動生成所見と前記第1の読影所見との差異に関する情報を取得する差異情報取得手段と、前記差異に関する情報に基づいて、前記第1の自動生成所見の信頼性を評価する評価手段とを有する。
また、本発明は、上述した医療診断支援装置による医療診断支援方法を含む。また、本発明は、上述した医療診断支援装置の各手段としてコンピュータを機能させるためのプログラム、及び、医療診断支援方法の各工程をコンピュータに実行させるためのプログラムを含む。さらに、本発明は、当該プログラムを記憶するコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、自動生成所見(CAD所見)がどの程度診断の参考になるのかを医師が適切に判断可能な情報として提示することができる。それにより、医師の診断の精度を向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態に係る医療診断支援装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態に係る医療診断支援装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【図3】第1の実施形態に係る医療診断支援装置における医療診断支援方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図4】第1の実施形態を示し、CAD所見と読影所見との関係を示す模式図である。
【図5】第1の実施形態を示し、図3のステップS305における所見入力画面の一例を示す模式図である。
【図6】第1の実施形態を示し、図3のステップS309において医師が読影所見を入力した後の所見入力画面の一例を示す模式図である。
【図7】図3のステップS306における詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図8】第1の実施形態を示し、所見項目ごとのCAD所見の信頼性の情報をまとめた図である。
【図9】第2の実施形態を示し、特徴量Sを時系列にプロットした特性図である。
【図10】第1の実施形態を示し、図3のステップS308における所見入力画面の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(実施形態)について説明する。
【0012】
[第1実施形態]
第1の実施形態に係る医療診断支援装置では、まず、被検体の異常陰影を含む医用画像(第1の検査データ)を画像解析してCAD所見(第1の自動生成所見)を自動生成する。この第1の自動生成所見を生成する医療診断支援装置の手段は、「第1の生成手段」を構成する。また、第1の実施形態に係る医療診断支援装置では、前記第1の検査データに対する医師による読影所見(第1の読影所見)を取得する。この第1の読影所見を取得する医療診断支援装置の手段は、「第1の取得手段」を構成する。
【0013】
続いて、第1の実施形態に係る医療診断支援装置では、CAD所見(第1の自動生成所見)を読影所見(第1の読影所見)の初期値として提示する。このCAD所見(第1の自動生成所見)を提示する医療診断支援装置の手段は、「第1の提示手段」を構成する。そして、第1の実施形態に係る医療診断支援装置では、CAD所見(第1の自動生成所見)を参照した医師が読影所見(第1の読影所見)としてCAD所見(第1の自動生成所見)を変更したか否かを、前記第1の自動生成所見と前記第1の読影所見との差異に関する情報として取得し記録する。この差異に関する情報を取得する医療診断支援装置の手段は、「差異情報取得手段」を構成する。
【0014】
さらに、第1の実施形態に係る医療診断支援装置では、同一の被検体の同一の異常陰影の新たな医用画像(第2の検査データ)が診断対象となったとき、当該第2の検査データを画像解析してCAD所見(第2の自動生成所見)を自動生成する。この第2の自動生成所見を生成する医療診断支援装置の手段は、「第2の生成手段」を構成する。また、第1の実施形態に係る医療診断支援装置では、当該第2の検査データに対する医師による読影所見(第2の読影所見)を取得する。この第2の読影所見を取得する医療診断支援装置の手段は、「第2の取得手段」を構成する。
【0015】
そして、第1の実施形態に係る医療診断支援装置では、同一の被検体の同一の異常陰影の新たな医用画像(第2の検査データ)が診断対象となったとき、過去の第1の検査データにおけるCAD所見(第1の自動生成所見)と読影所見(第1の読影所見)との差異に関する情報に基づいて、当該CAD所見(第1の自動生成所見)の信頼性を評価する。そして、第1の実施形態に係る医療診断支援装置では、評価した第1の検査データにおけるCAD所見(第1の自動生成所見)の信頼性の情報を、第2の検査データにおけるCAD所見(第2の自動生成所見)と関連付けて提示する。この提示を行う医療診断支援装置の手段は、「第2の提示手段」を構成する。これにより、第1の実施形態に係る医療診断支援装置では、現在提示されたCAD所見(第2の自動生成所見)の信頼性がどの程度かを医師に把握させることで、診断の参考になる情報を提供する。
【0016】
図1は、第1の実施形態に係る医療診断支援装置10の機能構成の一例を示すブロック図である。
図1に示す医療診断支援装置10は、医用情報取得部100、異常陰影検出部101、CAD所見生成部102、所見管理部103、所見提示部104、読影所見取得部105、及び、信頼性評価部106の各機能構成を有している。
【0017】
医用情報取得部100は、診断対象である症例に関する医用情報(医用画像や電子カルテの情報など)を不図示のサーバから取得する。或いは、医用情報取得部100は、外部記憶装置、例えばFDD、HDD、CDドライブ、DVDドライブ、MOドライブ、ZIPドライブ等を接続し、それらのドライブから医用情報を取得するようにしてもよい。そして、医用情報取得部100は、取得した医用情報を異常陰影検出部101へと出力する。
【0018】
異常陰影検出部101は、医用情報取得部100から取得した診断対象である医用画像を画像解析して異常陰影を検出し、検出結果(例えば、異常陰影を囲む関心領域の情報)をCAD所見生成部102へと出力する。
【0019】
CAD所見生成部102は、異常陰影検出部101から取得した異常陰影の検出結果からCAD所見を生成し、所見管理部103へと出力する。
【0020】
所見管理部103は、CAD所見生成部102から取得したCAD所見の情報、後述する読影所見取得部105から取得した読影所見の情報(具体的には、CAD所見の変更情報(以下、「所見変更情報」と呼ぶ)を取得する。そして、所見管理部103は、取得したそれらの情報を、当該異常陰影に関する読影レポートの一部をなす所見情報として磁気ディスクに格納する。また、所見管理部103は、それらの情報を所見提示部104及び信頼性評価部106へと出力する。
【0021】
所見提示部104は、所見管理部103から取得したCAD所見を表示して提示する。また、所見提示部104は、信頼性評価部106から、それぞれの所見項目に関するCAD所見の信頼性情報を取得した場合には、その情報をCAD所見と関連付けて表示して提示する。
【0022】
読影所見取得部105は、所見提示部104で表示された情報を参照した医師が記した読影所見の情報(具体的に、本実施形態では、CAD所見の変更情報(所見変更情報))を取得し、所見管理部103へと出力する。
【0023】
信頼性評価部106は、診断対象である異常陰影と同一の異常陰影の画像を過去に読影した読影レポートが存在している場合には、過去の読影レポート内に保存されている当該異常陰影の所見情報を所見管理部103から取得する。そして、信頼性評価部106は、取得した異常陰影の所見情報に基づいて、それぞれの所見項目に関するCAD所見の信頼性を評価し、信頼性情報(詳細は後述する)を得る。そして、信頼性評価部106は、評価した信頼性情報を所見提示部104へと出力する。
【0024】
なお、図1に示した医療診断支援装置10の各機能構成部の少なくとも一部は、独立した装置として実現されてもよい。また、医療診断支援装置10の各機能構成部は、それぞれが機能を実現するソフトウェアとして実現されてもよい。本実施形態では、図1に示した医療診断支援装置10の各機能構成部は、それぞれ、ソフトウェアにより実現されているものとする。
【0025】
図2は、第1の実施形態に係る医療診断支援装置10のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。即ち、図2は、図1に示した各機能構成部のそれぞれの機能を、ソフトウェアで実現するためのコンピュータの基本構成(ハードウェア構成)を示す図である。
【0026】
図2に示す医療診断支援装置10は、CPU200、主メモリ201、磁気ディスク202、表示メモリ203、モニタ204、マウス205、キーボード206、及び、共通バス207の各ハードウェア構成を有している。
【0027】
CPU200は、主として各構成要素の動作を制御して、医療診断支援装置10における動作を統括的に制御する。
【0028】
主メモリ201は、CPU200が実行する制御プログラムを格納したり、CPU200によるプログラム実行時の作業領域を提供したりする。
【0029】
磁気ディスク202は、オペレーティングシステム(OS)、周辺機器のデバイスドライブ、後述する処理等を行うためのプログラムを含む各種アプリケーションソフト等を格納する。
【0030】
表示メモリ203は、図1に示す所見提示部104が生成する表示用データを一時記憶する。
【0031】
モニタ204は、例えばCRTモニタや液晶モニタ等であり、表示メモリ203からの表示用データに基づいて画像やテキストなどの表示を行う。
【0032】
マウス205及びキーボード206は、それぞれ、ユーザによるポインティング入力及び文字等の入力を行う。
【0033】
共通バス207は、上記各構成要素(200〜206)を互いに通信可能に接続している。
【0034】
ここで、例えば、図1に示す、医用情報取得部100、CAD所見生成部102及び信頼性評価部106は、図2に示す、CPU200、及び、主メモリ201及び/又は磁気ディスク202に記憶されているプログラムから構成されている。また、例えば、図1に示す異常陰影検出部101及び所見管理部103は、図2に示す、CPU200、主メモリ201及び/又は磁気ディスク202に記憶されているプログラム、及び、磁気ディスク202から構成されている。また、例えば、図1に示す所見提示部104は、図2に示す、CPU200、主メモリ201及び/又は磁気ディスク202に記憶されているプログラム、表示メモリ、及び、モニタから構成されている。また、例えば、図1に示す読影所見取得部105は、図2に示す、CPU200、主メモリ201及び/又は磁気ディスク202に記憶されているプログラム、マウス205及びキーボード206から構成されている。
【0035】
次に、図3のフローチャートを用いて、医療診断支援装置10が行う全体の処理を説明する。
【0036】
図3は、第1の実施形態に係る医療診断支援装置10における医療診断支援方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。本実施形態では、図3のフローチャートは、CPU200が主メモリ201に格納されている各部の機能を実現するプログラムを実行することにより実現される。
【0037】
まず、図3のステップS301において、医用情報取得部100は、不図示のサーバ等から医療診断支援装置10へと入力された医用情報(医用画像や電子カルテの情報など)を取得する。そして、医用情報取得部100は、取得した医用情報を異常陰影検出部101へと出力する。
【0038】
続いて、ステップS302において、異常陰影検出部101は、医用情報取得部100から取得した医用情報に含まれる診断対象の医用画像を画像解析し、異常陰影を検出する。ここで、本実施形態では、医用画像は胸部CT画像であり、そこから肺の異常陰影(腫瘤影)を検出するものとする。そして、例えば、異常陰影検出部101は、特許文献1に記載されているCAD技術により、医用画像を画像解析することにより異常陰影の存在位置を自動的に検出して、さらに、異常陰影を囲む関心領域を自動設定する。そして、異常陰影検出部101は、自動設定した関心領域の画像をCAD所見生成部102へと出力する。また、異常陰影検出部101は、自動設定した関心領域の範囲を表す情報を磁気ディスク202へ格納する。なお、異常陰影の検出や関心領域の設定は、医師が行ってもよい。また、異常陰影が予め検出されていて医用情報とともに不図示のサーバ等に保存されている場合には、医用情報とともにこれを取得する構成であってもよい。
【0039】
ステップS303において、CAD所見生成部102は、異常陰影検出部101から取得した異常陰影の関心領域から画像特徴量を抽出して、これに基づいて医師が診断に利用し得る所見を生成し、これをCAD所見とする。なお、CAD所見の生成処理は、当該分野において実施可能ないずれの方法に基づいて行ってもよい。例えば、CAD所見生成部102は、画像特徴量の1つである腫瘤のサイズ(最大径)から、所見項目名:{大きさ}の所見を生成する。また、CAD所見生成部102は、画像特徴量の1つである辺縁の凹凸度を利用して、所見項目名:{全体形状}の所見を生成する。また、CAD所見生成部102は、画像特徴量の1つである辺縁の距離に基づいて、所見項目名:{切れ込み}の所見を生成する。また、CAD所見生成部102は、画像特徴量の1つである辺縁の距離の分散に基づいて、所見項目名:{放射状}の所見を選択するなどの処理を行うことができる。これらの処理は、本実施形態の特徴を表す部分ではないので、その説明は省略する。
【0040】
また、CAD所見生成部102は、上記で抽出した画像特徴量セットを用いて所見項目名:{推定病名}の所見を推論する。本実施形態では、{推定病名−原発性肺がん}、{推定病名−転移性肺腫瘍}、{推定病名−その他}の3つの病名に分類する。病名を推定するための推論器としては、例えば、サポートベクターマシンやニューラルネットワーク、ベイジアンネットワークを用いることができる。但し、推論器はこの手法に限定されるものではない。
【0041】
そして、CAD所見生成部102は、上記で生成したCAD所見を所見管理部103へと出力する。
【0042】
ステップS304において、所見管理部103は、診断対象である異常陰影と同一の異常陰影に関する過去の読影レポートが、磁気ディスク202に格納されていて存在するか否かを判断する。ここで、診断対象である異常陰影と過去の読影レポート中の異常陰影との対応付けは、例えば、肺野内における異常陰影の位置情報などに基づいて、公知の方法で行うものとする。
【0043】
そして、ステップS304の判断の結果、診断対象である異常陰影と同一の異常陰影に関する過去の読影レポートが存在する場合には、磁気ディスク202から当該異常陰影の所見情報を取得して信頼性評価部106へ出力し、ステップS306へと処理を進める。一方、診断対象である異常陰影と同一の異常陰影に関する過去の読影レポートが存在しない場合には、ステップS305へと処理を進める。
【0044】
ステップS305(過去の読影レポートが存在しない場合)に進むと、所見提示部104は、所見管理部103から取得したCAD所見を、S302で磁気ディスク202に格納した異常陰影の検出結果と共に、医師が読影可能な形でモニタ204に表示する。そして、ステップS309へと処理を進める。
【0045】
図5は、第1の実施形態を示し、図3のステップS305における所見入力画面500の一例を示す模式図である。
図5の所見入力画面500には、診断対象の医用画像501、CADが検出した異常陰影を囲む関心領域502、所見情報を入力する領域(所見入力領域)503、読影所見の入力完了の指示を入力する入力完了ボタン504が設けられている。医師は、所見入力画面500に表示された医用画像501を参照しながら読影し、CADが設定した関心領域502を参照する。このとき、医師が関心領域502を指定すると、所見入力領域503には、医師がテンプレート形式の入力支援方法を用いて、読影所見を入力するための初期値として、CAD所見が表示される。このように、CAD所見を、医師が読影所見を入力するための初期値として表示することで、医師が読影所見を入力する手間を省くことができる。
【0046】
ここで、再び、図3の説明に戻る。
ステップS305の処理が終了すると、ステップS309に進む。
ステップS309に進むと、読影所見取得部105は、医師がモニタ204に表示された医用画像とCAD所見を参照しCAD所見を変更した後の読影所見を取得する。本実施形態では、医師は、モニタ204に表示された医用画像の読影所見を、マウス205やキーボード206等の操作部を用いて入力する。なお、この処理は、例えば、テンプレート形式の読影所見入力支援方法を用いて、GUIにより選択できるような機能を備えることで実現される。
【0047】
図6は、第1の実施形態を示し、図3のステップS309において医師が読影所見を入力した後の所見入力画面600の一例を示す模式図である。図6において、600〜604は、それぞれ、図5の500〜504と同様のものを表す。
図6において、読影所見605、606及び607は、それぞれ、医師によってCAD所見が変更された後の読影所見を表す。図6の例では、読影所見605に関して、医師は、CAD所見{大きさ−小さい}を、{大きさ−中程度}に変更している。また、読影所見606に関して、医師は、CAD所見{放射状−非常に強い}を、{放射状−中程度}に変更している。また、読影所見607に関して、医師は、CAD所見{推定病名−原発性肺がん}を、{推定病名−転移性肺腫瘍}に変更している。医師は、入力完了ボタン604を押下することで、読影所見の入力を完了する。
【0048】
そして、読影所見取得部105は、医師によって入力完了ボタン604が押下された時に、所見入力領域603でCAD所見を変更した後の読影所見を取得し、所見管理部103へと出力する。
【0049】
ここで、再び、図3の説明に戻る。
ステップS309の処理が終了すると、ステップS310に進む。
ステップS310に進むと、所見管理部103は、ステップS309で取得した操作部を介して入力された読影所見をCAD所見と比較することで、所見変更情報(どの項目の所見が何から何へ変更されたかを表す情報)を抽出する。そして、これまでの処理で取得したCAD所見、読影所見、及び、所見変更情報を、当該異常陰影に関する読影レポートの一部をなす所見情報として、磁気ディスク202に格納して記録する。なお、所見変更情報には、実際に変更された所見が存在しない場合にも、「変更所見なし」という情報が記録される。この場合には、所見変更情報自体は存在することになるため、この情報が過去の異常陰影で記録された状態でステップS304における判断処理を行った場合には、過去の読影レポートが存在するという判断が行われ、次に、ステップS306へと進むことになる。
【0050】
以上が、診断対象の異常陰影と同一の異常陰影に関する過去の読影レポートが存在しない場合の処理(ステップS305以降の処理)の説明である。
次に、診断対象の異常陰影と同一の異常陰影に関する過去の読影レポートが存在する場合の処理(ステップS306以降の処理)を説明する。
【0051】
ステップS306(診断対象の異常陰影と同一の異常陰影に関する過去の読影レポートが存在する場合)において、信頼性評価部106は、ステップS304で取得した過去の所見情報に基づいて、それぞれの所見項目に関するCAD所見の信頼性を評価する。
【0052】
本ステップでは、ある所見項目に関してCAD所見が変更されている場合には、その所見項目のCAD所見は誤っていると医師が判断したとみなし、「CAD所見の信頼性は確実ではない」と判定する。逆に、ある所見項目に関してCAD所見が変更されていない場合には、その所見項目のCAD所見は正しいと医師が判断したとみなし、「CAD所見の信頼性は確実である」と判定する。
【0053】
次に、図7のフローチャートを用いて、上述した信頼性評価部106が行う判定処理(図3のステップS306におけるCAD所見の信頼性評価処理)を説明する。
図7は、図3のステップS306における詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0054】
図3のステップS306の処理が開始すると、まず、図7のステップS701において、信頼性評価部106は、処理対象のCAD所見の所見番号i=1と設定するとともに、その所見数nを取得する。
【0055】
続いて、ステップS702において、信頼性評価部106は、所見変更情報からi番目のCAD所見(CAD所見i)を取得し、医師によって変更された記録があるか否かを判断する。この判断の結果、CAD所見iが変更された場合には、ステップS703へと処理を進め、一方、CAD所見iが変更されていない場合には、ステップS704へと処理を進める。
【0056】
図6で示した例が診断対象の異常陰影に対応する過去の異常陰影であった場合を考えると、所見1{大きさ}、所見5{放射状}、及び、所見20{推定病名}に関しては、医師がCAD所見を変更している。従って、i=1,5,20の場合には、ステップS703へと処理を進めることになる。一方、所見2{全体形状}、所見3{気管支透瞭像}、所見4{切れ込み}に関しては、医師はCAD所見を変更していない。従って、i=2,3,4の場合には、ステップS704へと処理を進めることになる。
【0057】
ステップS703に進むと、信頼性評価部106は、医師によって過去にCAD所見iが変更されているという判定結果を受けて、「CAD所見iは信頼性が確実でない」と判断する。そして、信頼性評価部106は、CAD所見iがどの程度信頼できるかを表す信頼度を算出した後に、ステップS705へと処理を進める。
【0058】
本実施形態では、医師がCAD所見を変更している程度が小さいほどCAD所見の信頼性が高いとみなし、逆に、CAD所見を変更している程度が大きいほどCAD所見の信頼性が低いとみなす。ここで、所見項目であるCAD所見iの値が程度や確率の大きさで表現される場合、その値の取り得る最大値をViMAX、CAD所見iの値をViPRE、変更後の読影所見iの値をViPOSTとする。このとき、CAD所見iの信頼度RiCADは、次式で表される。
RiCAD=(ViMAX−|ViPOST−ViPRE|)/ViMAX ・・・(1)
但し、CAD所見i自体が程度や確率の大きさで表現できない場合には、医師が変更した読影所見の程度の大きさを評価できないため、信頼度は算出しない。
【0059】
図4は、第1の実施形態を示し、CAD所見と読影所見との関係を示す模式図である。図4(a)の例では、所見1{大きさ}について、医師は、CAD所見{大きさ−小さい}を、読影所見{大きさ−中程度}に変更している。従って、信頼度は、R1CAD=(4−|2−1|)/4=0.75と求まる。また、図4(b)の例では、所見5{放射状}について、医師は、CAD所見{放射状−非常に強い}を、読影所見{放射状−中程度}に変更している。従って、信頼度、R5CAD=(4−|4−2|)/4=0.5と求まる。即ち、本実施形態では、信頼性評価部106は、図4に示すように、CAD所見が提示された後に、医師が読影所見として当該CAD所見を変更した度合いに基づいて、当該CAD所見の信頼度を評価するようにしている。また、所見20{推定病名}については、所見の状態を程度や確率の大きさで表現できないため、信頼度は算出しない。
【0060】
ここで、再び、図7の説明に戻る。
図7のステップS704に進むと、信頼性評価部106は、医師によって過去にCAD所見が変更されていないという判定結果を受けて、「CAD所見iは信頼性が確実である」と判断する。そして、CAD所見の信頼度を、RiCAD=1.0と算出した後に、ステップS705へと処理を進める。ここで、図6に示す例では、所見2{全体形状}、所見3{気管支透瞭像}、所見4{切れ込み}に関しては、CAD所見iの信頼度は、1.0(100%)となる。
【0061】
ステップS705に進むと、信頼性評価部106は、所見番号iに1を加える。
【0062】
続いて、ステップS706において、信頼性評価部106は、所見番号iを所見数nと比較し、所見番号iが所見数nよりも大きい場合には、図7のフローチャートの処理を終了させる。一方、所見番号iが所見数n以下の場合には、ステップS702へと処理を進める。その後、ステップS702以降の処理が再度行われる。
【0063】
以上により、図7のフローチャートの説明を終了する。
以上のようにして、過去画像(過去の医用画像)におけるCAD所見の信頼性を、所見項目ごとに評価することができる。
【0064】
図8は、第1の実施形態を示し、所見項目ごとのCAD所見の信頼性の情報をまとめた図である。信頼性評価部106は、図8に記載された所見項目ごとのCAD所見の信頼性情報を、所見提示部104へと出力する。
【0065】
ここで、再び、図3の説明に戻る。
図3のステップS306の処理が終了すると、ステップS307に進む。
ステップS307に進むと、所見提示部104は、信頼性評価部106から取得した過去画像におけるCAD所見の信頼性情報を、所見管理部103から取得した診断対象画像におけるCAD所見に関連付ける。
【0066】
本ステップでは、過去画像でのCAD所見の信頼性が高ければ、同一の所見項目に関して、診断対象画像でもCAD所見は信頼できると判断する。
【0067】
そこで、本ステップでは、所見項目ごとに診断対象画像に対するCAD所見には、過去画像で求めたCAD所見の信頼性情報を関連付ける。
【0068】
例えば、所見項目1{大きさ}に関しては、診断対象画像におけるCAD所見に対して、「CAD所見の信頼性:確実ではない(信頼度75%)」の情報が関連付けられる。同様に、所見項目4{切れ込み}に関しては、診断対象画像のCAD所見に対して、「CAD所見の信頼性:確実(信頼度100%)」が関連付けられる。
【0069】
続いて、ステップS308において、所見提示部104は、ステップS307で過去画像におけるCAD所見の信頼性情報の関連付け処理が行われた診断対象画像のCAD所見をモニタ204に表示する。
【0070】
図10は、第1の実施形態を示し、図3のステップS308における所見入力画面1000の一例を示す模式図である。図10において、1001〜1004は、それぞれ、図6の601〜604と同様のものを表す。具体的に、所見入力領域1003には、診断対象画像におけるCAD所見が示されている。また、図10に示す所見入力画面1000には、CAD所見に誤りがある可能性を警告する警告メッセージ1005、警告メッセージ1005によって警告されたCAD所見の所見項目1006、1007及び1008が示されている。さらに、図10に示す所見入力画面1000には、警告メッセージ1005で警告された所見項目1006及び1007にそれぞれ対応する、CAD所見の信頼度を表すメッセージ1009及び1010が示されている。この際、警告メッセージ1005で警告された所見項目1008については、所見項目が推定病名であり、信頼度の算出は行われないため、CAD所見の信頼度を表すメッセージは表示されない。
【0071】
図10において、所見項目1006、1007及び1008は、過去画像でCAD所見が訂正(変更)されており、診断対象画像においてもCAD所見の信頼性は確実ではないと判断されたため、警告メッセージ1005によって警告されている。一方、所見項目2、3、4については、過去画像でCAD所見は訂正(変更)されておらず、診断対象画像においてもCAD所見の信頼性は確実であると判断されたため、警告提示されていない。このように、信頼性が確実ではないと判断された所見項目についてのみ警告提示することにより、医師は、CAD所見がどの程度参考になるのかを判断することができる。
【0072】
ここで、再び、図3の説明に戻る。
図3のステップS308の処理が終了すると、ステップS309に進む。
ステップS309に進むと、読影所見取得部105は、医師がモニタ204に表示された医用画像とCAD所見を参照することで、CAD所見を変更した後の読影所見を取得する。そして、読影所見取得部105は、医師によって入力完了ボタン1004が押下された時に、所見入力領域1003でCAD所見を変更した後の読影所見を取得し、所見管理部103へと出力する。
【0073】
続いて、ステップS310において、所見管理部103は、ステップS309で取得した読影所見をCAD所見と比較することで、所見変更情報(どの項目の所見が何から何へ変更されたかを表す情報)を抽出する。そして、これまでの処理で取得したCAD所見、読影所見、及び、所見変更情報を、当該異常陰影に関する読影レポートの一部をなす所見情報として、磁気ディスク202に格納して記録する。なお、所見変更情報には、実際に変更された所見が存在しない場合にも、「変更所見なし」という情報が記録される。
【0074】
以上により、図3のフローチャートの説明を終了する。
【0075】
なお、本実施形態では、CAD所見の信頼性が確実であるか否かの判断に応じて警告提示するか否かを変更しているが、表示方法はこれに限らない。例えば、図3のステップS306でCAD所見に関連付けられた信頼度の情報を常に提示してもよい。このとき、信頼性が確実であると判断された場合は必ず「信頼度:確実」が表示されるため、医師は、その所見項目のCAD所見は参考になると認識できる。
【0076】
上述した構成によれば、CAD所見の信頼性情報を、診断対象画像に対するCAD所見と関連付けて提示することで、医師は、CAD所見の信頼性を判断する参考にすることができ、診断に役立てることができる。
【0077】
(第1の実施形態の変形例1)
上述した第1の実施形態では、CAD所見を、読影所見をテンプレート形式で入力するための初期値として提示し、医師がCAD所見を変更したか否かで、CAD所見と読影所見の差異に関する情報を取得するものであった。しかしながら、CAD所見と読影所見の差異に関する情報を取得する方法はこれに限らない。例えば、医師がCAD所見を初期値に用いずに作成した読影所見と、別途生成したCAD所見とを比較し、両者の差異に関する情報を取得する方法を取ってもよい。この場合、予め医師が作成した読影所見さえ記録されていれば、過去の医用画像に遡ってCAD所見を生成し、記録された読影所見と比較することができる。従って、過去の医用画像であれば、通常、読影所見が付与されているため、過去のどのような症例に対してもCAD所見と読影所見との差異に関する情報を取得可能である。
【0078】
(第1の実施形態の変形例2)
上述した第1の実施形態では、過去画像の所見変更情報を所見管理部103に記録しておき、新しい画像が診断対象となったときに、当該所見変更情報を読み込んで信頼性の評価を行って、評価した信頼性情報を所見情報と関連付けて提示するものであった。しかしながら、信頼性情報の提示までの流れは、この方法に限らない。例えば、過去画像の所見変更情報からCAD所見の信頼性の評価を行った結果を記録しておくことで、新しい画像が診断対象となったときに、予め記録された信頼性情報を読み込み、これを所見情報と関連付けて提示してもよい。
【0079】
これにより、診断対象画像が入力された際に、CAD所見の信頼性を評価する手間を省くことができ、処理を効率化できる。
【0080】
[第2の実施形態]
第1の実施形態では、同一被検体(同一被験者)の過去画像の1つから、CAD所見の信頼性を評価していた。しかしながら、CAD所見の信頼性の評価方法はこれに限らず、他であってもよい。本実施形態では、同一被検体(同一被験者)の過去画像が複数存在する場合に、それらの複数の過去画像(以降、「時系列過去画像(時系列検査データ)」と呼ぶ)の中から診断対象画像に関連する過去画像のCAD所見を選択する。そして、選択されたCAD所見のみに基づきCAD所見の信頼性を評価する。例えば、過去に腫瘤を除去する手術などにより被検体(被験者)の医用画像の特徴が著しく変化している場合には、医用画像の特徴が診断対象画像(術後)に関連する過去画像の所見情報を選択して、術後の過去画像における所見情報のみが選ばれるようにする。これにより、診断対象画像と特徴が著しく異なる術前の過去画像を評価対象から除くことで、CAD所見の信頼性を高精度に評価する。
【0081】
なお、本実施形態に係る医療診断支援装置10の機能構成は、第1の実施形態における図1と同様である。但し、CAD所見生成部102が医用画像から抽出した画像特徴量を保存し、所見管理部103が時系列過去画像におけるCAD所見を管理し、信頼性評価部106が時系列過去画像の中から診断対象画像に関連する過去画像におけるCAD所見のみに基づきCAD所見の信頼性を評価する点が、第1の実施形態とは異なっている。また、図1に示した各機能構成部のそれぞれの機能をソフトウェアで実現するためのコンピュータの基本構成(ハードウェア構成)は、第1の実施形態における図2と同様である。
【0082】
また、医療診断支援装置10が行う全体の処理手順のフローチャートは、図3と同様である。但し、ステップS303、S304及びS306の処理の一部が第1の実施形態と異なっている。以下、第1の実施形態との相違部分についてのみ説明する。
【0083】
図3のステップS301における医用情報の取得処理及びステップS302における異常陰影の検出処理は、第1の実施形態と同様である。
【0084】
本実施形態では、続いて、ステップS303において、CAD所見生成部102は、異常陰影検出部101から取得した異常陰影の関心領域から画像特徴量を抽出して、医師が診断に利用し得る所見を生成し、これをCAD所見とする。CAD所見の生成方法は、第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。本実施形態では、CAD所見の生成に用いた画像特徴量を、医用画像のIDと対応付けて磁気ディスク202に格納する。このIDは、例えば、同一被検体(同一被験者)の医用画像に関して、撮影日時が古い順に1、2、3、・・・と割り振られるものとする。
【0085】
続いて、ステップS304において、まず、所見管理部103は、取得した診断対象画像に対するCAD所見を診断対象画像のIDと対応付けて磁気ディスク202に格納する。そして、所見管理部103は、この診断対象画像のCAD所見を所見提示部104へと出力する。
次に、所見管理部103は、診断対象である異常陰影と同一の異常陰影に関する過去の読影レポートが、磁気ディスク202に格納されていて存在するか否かを判断する。具体的には、同一被検体(同一被験者)に関して過去に医師がCAD所見を変更したか否かを表す所見変更情報が、磁気ディスク202に格納されているか否かを判断する。
そして、この判断の結果、当該所見変更情報が磁気ディスク202に格納されていた場合には、所見管理部103は、当該所見変更情報が記録されている全ての時系列過去画像についてのCAD所見を当該所見変更情報とともに磁気ディスク202から取得する。そして、所見管理部103は、取得した時系列過去画像についてのCAD所見及び所見変更情報と、診断対象画像のCAD所見を信頼性評価部106へ出力し、ステップS306へと処理を進める。
一方、当該所見変更情報が磁気ディスク202に格納されていない場合には、そのままステップS305へと処理を進める。
【0086】
本実施形態では、ステップS306に進むと、信頼性評価部106は、ステップS303でCAD所見生成部102が磁気ディスク202に格納した画像特徴量を全ての時系列過去画像に関して取得する。そして、信頼性評価部106は、取得した画像特徴量に基づいて、時系列過去画像の中から診断対象画像に関連する過去画像を選択し、そのCAD所見を抽出する。次に、信頼性評価部106は、抽出したCAD所見のみに基づき、それぞれのCAD所見の信頼性を評価する。
【0087】
ここで、最初に、診断対象画像に関連する過去画像のCAD所見を画像特徴量に基づいて抽出する方法を具体的に説明する。
本実施形態では、CAD所見を生成するために抽出した少なくとも1種類の画像特徴量に基づいて、診断対象画像に関連する過去画像のCAD所見を抽出する。ステップS303で磁気ディスク202に格納された画像特徴量を少なくとも1種類選択し、時系列過去画像及び診断対象画像から該当する種類の画像特徴量を全て取得する。例えば、所見項目1:{大きさ}を生成するために抽出した腫瘤のサイズ(最大径)の特徴量Sを、時系列過去画像全てと診断対象画像について取得する。ここで、時系列過去画像に含まれるある画像のIDをiとしたとき、画像ID:iに対応する腫瘤のサイズの特徴量をSiと表す。また、診断対象画像に対応する腫瘤のサイズの特徴量をStと表す。このとき、特徴量Stに関連する特徴量の集合をSgrとして、以下の条件1及び条件2の両方を満たす全ての特徴量Siを選定する。
【0088】
条件1:特徴量Stからの差異が所定の範囲内となる全ての特徴量Si
条件2:特徴量Stを起点にして時系列を遡ったとき、時系列で隣り合う2つの特徴量間の変化率の大きさが所定の閾値を最初に超えるまでに含まれる全ての特徴量Si
【0089】
上記の条件1は、診断対象画像の画像特徴量に近い画像特徴量を持つ過去画像のみを選択することを目的とする。即ち、上記の条件1は、診断対象画像の特性と複数の時系列過去画像の特性との間の差異に基づいて、複数の時系列過去画像の中から診断対象画像に関連する過去画像を選択する。
【0090】
また、上記の条件2は、時系列過去画像の間で、画像特徴量が急激に変化した時期がある場合には、それ以降の過去画像のみを選択することを目的とする。即ち、上記の条件2は、診断対象画像と複数の時系列過去画像からなる画像系列の特性の経時変化に基づいて、複数の時系列過去画像の中から診断対象画像に関連する過去画像を選択する。
【0091】
図9は、第2の実施形態を示し、特徴量Sを時系列にプロットした特性図である。
上記の条件1及び条件2を満たす集合Sgrを選定する具体例を、図9を用いて説明する。
【0092】
図9において、時系列の特徴量S1〜S10及び診断対象画像の特徴量Stがグラフ上にプロットされている。範囲Dは、特徴量Stを中心とする所定の特徴量の値の範囲を表す。このとき、条件1を満たす特徴量Siは、Stを中心に範囲Dに含まれる点であるので、{S2,S3,S4,S8,S9,S10}の6点である。
【0093】
続いて、時系列で隣り合う2つの特徴量をSjとSj+1とするとき、特徴量SjとSj+1の間の変化率をGjとする。図9のG5は、特徴量S5と特徴量S6との間の変化率を表す。ここで、変化率Gjに関する所定の閾値をGth(不図示)とする。このとき、条件2を満たす特徴量Siは、Stを起点にして時系列を遡ったとき、ある変化率Gjが最初にGj>Gthを満たすとき、Sj+1からStの間に含まれる全ての特徴量を表す。図9の例では、変化率G5が最初にG5>Gthを満たしており、条件2を満たす特徴量は{S6,S7,S8,S9,S10}の5点である。
【0094】
従って、条件1及び条件2の両方を満たす特徴量の集合Sgrは、{S8,S9,S10}の3点となる。そして、診断対象画像に関連する時系列過去画像として、特徴量の集合Sgrに対応する画像ID:8,9,10の画像に付与されたCAD所見を取得(抽出)する。
【0095】
このように、条件1及び条件2を用いて特徴量Stに関連する特徴量の集合Sgrを選択することで、手術などにより関心領域の画像特徴が著しく変化した場合に、それ以降の時系列過去画像のみを選択することができる。さらに、その中で、診断対象画像に対して画像特徴の値が近い(類似する)時系列過去画像のみを選択することができる。
【0096】
本実施形態では、特徴量の変化を考慮して診断対象画像に関連する特徴量を選択する方法として、時系列で隣接する特徴量間の変化率に閾値を設けて特徴量を選択したが、特徴量の選択方法はこれに限らない。例えば、診断対象画像の特徴量Stを基点にして、特定の関数モデルをフィッティングさせ、フィッティングされたモデルから所定の範囲に存在する特徴量Siのみを選択するようにしてもよい。このモデルとして、例えば、直線モデルを適用してもよい。これは、疾患が自然に進行する、または投薬などにより治療する際の変化は直線的に近似できると仮定した場合に適応される。或いは、疾患の進行または治療の変化を表す非線形の関数モデルを医学的な統計情報に基づき構築し、これを適用してもよい。このように、関数モデルを用いることで、時系列で隣接する特徴量間の変化が、疾患が自然に進行する或いは投薬などにより治療する際の変化に沿っているか否かで、診断対象画像に関連する画像の特徴量Siを選択することができる。
【0097】
また、本実施形態では、所見項目1{大きさ}に対応する画像特徴量:腫瘤のサイズを用いて、診断対象画像に関連する過去画像を選択する方法を説明したが、過去画像の選択方法はこの方法に限らない。例えば、上述と同様の方法でその他の複数の所見項目についてそれぞれ関連する過去画像を選択してもよい。また、複数の所見項目ごとに得られた過去画像の中で共通する過去画像のみを抽出することで、全ての所見項目に対して共通する過去画像を用いて信頼性の評価を行うようにしてもよい。或いは、複数の所見項目ごとに独立して、それぞれで得られた過去画像を用いて信頼性の評価を行うようにしてもよい。
【0098】
さらに、本実施形態では、画像特徴量に基づいて診断対象画像に関連する過去画像を選択したが、過去画像を選択するための判断材料はこれに限らない。例えば、画像特徴量から生成したCAD所見または医師が記した読影所見に基づいて選択してもよい。この場合、図9における縦軸を、特徴量の代わりに所見項目の程度の大きさに置き換えることで、上述と同様の方法で選択することができる。
【0099】
次に、上述で取得した過去画像のCAD所見に基づいて、CAD所見の信頼性を評価する方法を説明する。
上述の例では、画像ID:8,9,10に対応する過去画像のCAD所見に基づいて信頼性の評価を行う。まず、個々の画像ごとにCAD所見の信頼性を評価する。この方法は、第1の実施形態における図3のステップS306と同様の方法であるので、説明を省略する。そして、個々の画像ごとに評価された信頼性の情報を総合して、最終的な信頼性の情報を評価する。本実施形態では、得られた個々の画像の信頼性の情報の平均値を取ることで、最終的な信頼性の情報を求める。図9の例において、所見項目1:{大きさ}に関して画像ID:8,9,10の信頼性の評価結果が、次のようになっていたとする。
・ID:8 信頼性:確実ではない 信頼度R1CAD:75%
・ID:9 信頼性:確実である 信頼度R1CAD:100%
・ID:10 信頼性:確実である 信頼度R1CAD:100%
このとき、最終的なCAD所見の信頼度をR1CAD,ALLとすると、R1CAD,ALL=(1.0+1.0+0.75)/3≒0.92と求められる。そして、信頼度が100%ではないので、信頼性評価部106では、信頼性は「確実ではない」と判定する。従って、最終的なCAD所見の信頼性の情報は以下のようになる。
・総合 信頼性:確実ではない 信頼度R1CAD,ALL:92%
【0100】
但し、本実施形態では、個々の信頼度の平均値により最終的な信頼度を求めたが、信頼性の評価方法はこの方法に限らない。例えば、個々の画像の撮影時期が診断対象画像にどの程度近いかで画像IDごとに重み付けを行い(診断対象画像より古いほど重み付けを小さくして)、その上で平均値を取ってもよい。これにより、診断対象画像よりも古い画像ほど状態がかけ離れている可能性が高いため、それらが信頼度に及ぼす影響を少なくすることができる。また、個々の信頼度の最頻値を用いてもよい。これにより、殆どのデータの信頼性が「確実である」にも関わらず1つでも信頼性が「確実ではない」ものが含まれる場合に、「確実ではない」と判定され、警告表示の対象になることを防ぐことができる。
【0101】
そして、信頼性評価部106は、以上のようにして評価された所見項目ごとのCAD所見の信頼性情報を、所見提示部104へと出力する。
【0102】
上述した構成によれば、診断対象画像に関連する過去画像のCAD所見のみに基づきCAD所見の信頼性を評価することで、手術などの影響により診断対象画像と特徴が著しく異なる過去画像を、評価対象から取り除くことができる。その結果、CAD所見の信頼性を高精度に評価することができる。
【0103】
[その他の実施形態]
上述の実施形態では、読影所見はマウス205やキーボード206等の操作部を介して入力されることとしていたが、これに限らず、表示部のタッチパネル機能でもよい。また医師等のジェスチャや音声入力を検知して読影所見に関する情報を取得することとしてもよい。これらの例のように、診断に携わる者からの情報を入力するためのユーザインタフェースも本発明の操作部に含まれるものとする。
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。
即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
このプログラム及び当該プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、本発明に含まれる。
【0104】
なお、上述した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。即ち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0105】
10 医療診断支援装置、100 医用情報取得部、101 異常陰影検出部、102 CAD所見生成部、103 所見管理部、104 所見提示部、105 読影所見取得部、106 信頼性評価部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の第1の検査データを解析して第1の自動生成所見を生成する第1の生成手段と、
操作部から入力された前記第1の検査データに対する第1の読影所見を取得する第1の取得手段と、
前記第1の自動生成所見と前記第1の読影所見との差異に関する情報を取得する差異情報取得手段と、
前記差異に関する情報に基づいて、前記第1の自動生成所見の信頼性を評価する評価手段と
を有することを特徴とする医療診断支援装置。
【請求項2】
前記第1の自動生成所見を提示する第1の提示手段を更に有し、
前記第1の取得手段は、前記第1の提示手段で提示された前記第1の自動生成所見を変更する指示が前記操作部から入力されることによって前記第1の読影所見を取得することを特徴とする請求項1に記載の医療診断支援装置。
【請求項3】
前記評価手段は、前記操作部から入力された、前記第1の提示手段で提示された前記第1の自動生成所見を変更しないか否かを示す情報に基づいて、当該第1の自動生成所見が信頼できるか否かを評価することを特徴とする請求項2に記載の医療診断支援装置。
【請求項4】
前記評価手段は、前記第1の提示手段で提示された前記第1の自動生成所見の変更の度合いに基づいて、当該第1の自動生成所見の信頼度を評価することを特徴とする請求項2に記載の医療診断支援装置。
【請求項5】
前記第1の検査データよりも新しい前記被検体の第2の検査データを解析して第2の自動生成所見を生成する第2の生成手段と、
操作部から入力された前記第2の検査データに対する第2の読影所見を取得する第2の取得手段と、
前記第1の自動生成所見の信頼性の情報を、前記第2の自動生成所見とともに提示する第2の提示手段と
を更に有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の医療診断支援装置。
【請求項6】
前記第1の検査データは、前記被検体の複数の時系列検査データであり、
前記第1の生成手段は、前記第1の自動生成所見として前記複数の時系列検査データにおける自動生成所見を生成し、
前記第1の取得手段は、前記第1の読影所見として前記複数の時系列検査データにおける読影所見を取得し、
前記評価手段は、前記複数の時系列検査データの中から前記第2の検査データに関連する検査データを選択し、当該選択した検査データにおける前記第1の自動生成所見と前記第1の読影所見との差異に関する情報に基づいて、前記第1の自動生成所見の信頼性を評価することを特徴とする請求項5に記載の医療診断支援装置。
【請求項7】
前記評価手段は、前記第2の検査データの特性と前記複数の時系列検査データの特性との間の差異に基づいて、前記複数の時系列検査データの中から前記第2の検査データに関連する検査データを選択することを特徴とする請求項6に記載の医療診断支援装置。
【請求項8】
前記評価手段は、前記第2の検査データと前記複数の時系列検査データからなる検査データの特性の経時変化に基づいて、前記複数の時系列検査データの中から前記第2の検査データに関連する検査データを選択することを特徴とする請求項6に記載の医療診断支援装置。
【請求項9】
被検体の第1の検査データを解析して第1の自動生成所見を生成する第1の生成工程と、
操作部から入力された前記第1の検査データに対する第1の読影所見を取得する第1の取得工程と、
前記第1の自動生成所見と前記第1の読影所見との差異に関する情報を取得する差異情報取得工程と、
前記差異に関する情報に基づいて、前記第1の自動生成所見の信頼性を評価する評価工程と
を有することを特徴とする医療診断支援方法。
【請求項10】
コンピュータを、請求項1〜8のいずれか1項に記載の医療診断支援装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【請求項11】
コンピュータに、請求項9に記載の医療診断支援方法の各工程を実行させるためのプログラム。
【請求項12】
請求項10または11に記載のプログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−39230(P2013−39230A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178044(P2011−178044)
【出願日】平成23年8月16日(2011.8.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】