説明

医薬組成物271

本発明は、6−(4−ブロモ−2−クロロ−フェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシ−エトキシ)−アミド硫酸水素塩、及びその溶媒和物、結晶型及び非結晶型を含有する医薬組成物、薬剤としての前記組成物の使用、及び前記組成物の調製方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、6−(4−ブロモ−2−クロロ−フェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシ−エトキシ)−アミド硫酸水素塩(以下、「薬物」という)を含む医薬組成物、特に、前記薬物を含有する経口投与可能な組成物、薬剤としての前記組成物の使用、及び前記組成物の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本薬物は、国際特許出願WO2007/076245に開示されており、MEKの強力な阻害剤である。本薬物は、式Iの構造を有する化合物の硫酸水素塩である。
【0003】
【化1】

【0004】
本薬物は、増殖抑制活性を有し、MEKが単独であるいは部分的に媒介する疾患や病状、特に、癌、例えば、脳腫瘍、肺癌、扁平上皮細胞癌、膀胱癌、胃癌、膵臓癌、乳癌、頭部癌、頸部癌、腎(臓)癌、卵巣癌、前立腺癌、結腸直腸癌、食道癌、精巣癌、婦人科系癌、甲状腺癌、あるいは悪性黒色腫等の治療に有用であると期待されている。本薬物は、また、皮膚(例えば、乾癬)、動脈の再狭窄、または前立腺(例えば、良性前立腺肥大(BPH))の良性過形成等の非癌性過剰増殖性障害の治療にも用いられ、その他の、例えば、哺乳動物において膵炎、または腎臓疾患(増殖性糸球体腎炎、及び糖尿病誘発性腎疾患を含む)等のMEK媒介性疾患の治療、あるいは、哺乳動物における疼痛の治療にも使用することもできる。本薬物は、また、哺乳動物における胚盤胞移入の予防や、哺乳類における脈管新生または血管新生に関係する疾患の治療に有用であることが期待される。このような疾患には、腫瘍血管新生、関節リュウマチなどの慢性炎症性疾患、アテローム性動脈硬化症、炎症性腸疾患、ならびに乾癬、湿疹、及び強皮症などの皮膚疾患、糖尿病、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、加齢性黄斑変性、血管腫、神経膠腫、黒色腫、カポジ肉腫、ならびに卵巣癌、乳癌、肺癌、膵臓癌、前立腺癌、結腸癌、及び扁平上皮癌が含まれると考えられる。
【0005】
本薬物の遊離塩基型(即ち、6−(4−ブロモ−2−クロロ−フェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシ−エトキシ)−アミド)は、低い溶解度/溶解速度と低い透過性を有することを示すBCSクラス4の化合物(業界向けガイダンスにより規定された生物薬剤学分類システム(the Biopharmaceutical Classification System as defined by the Guidance for Industry):Waiver of In Vivo Bioavailability and Bioequivalence studies for immediate release solid oral dosage forms based on a Biopharmaceutics Classification Systemによる)に分類されている。そのような化合物は、典型的に、低い又は/及び変動し易い生物学的利用性を示し、実際、従来の錠剤処方での本薬物の遊離塩基型の生物学的利用性は比較的低い(イヌの場合で約18%)。
【0006】
本発明者らは、以前に、医薬用途の薬剤として特に好適になる特別の薬理学的性質を示す6−(4−ブロモ−2−クロロ−フェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシ−エトキシ)−アミドの特定の塩を同定している。この特定の塩型、即ち、6−(4−ブロモ−2−クロロ−フェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシ−エトキシ)−アミド硫酸水素塩(化合物:HSO=1:1)(これ以前及びこれ以降、「薬物」という)が、WO2007/076245に開示されている。この塩は、結晶であり、本薬物の遊離塩基型や6−(4−ブロモ−2−クロロ−フェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシ−エトキシ)−アミドのその他の塩に比べ、驚くべきことに薬理学的性質が改善されていることが見出された。特に、本薬物の遊離塩基型や6−(4−ブロモ−2−クロロ−フェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシ−エトキシ)−アミドのその他の塩と比較し、この塩の溶解速度と生物学的利用性が特に高いことが見出された。
【発明の概要】
【0007】
本薬物のような薬剤活性化合物を、適切に許容される投薬形態に製剤するには、この活性化合物が、溶解度や溶解性のような許容される生物薬理学的性質に加え、許容される安定性と取扱特性も適切に持っていなければならない。この点で、本薬物には、特別な問題がある。本薬物の遊離塩基型は、弱塩基化合物であり、pKaが約2.7と8.2の2つの塩基性基を有する。pKa値は、酸と塩基の強さ、即ち酸がプロトンを離す、あるいは塩基がプロトンを受け取る傾向を示す(Bronsted J.N. Rec.trav. Chim. (47)、 718、 1923)。本薬物(即ち、硫酸水素塩)は、特に、製剤加工及び/又は保存期間中に解離して遊離塩基型になり易い。このような転換は望ましくない、というのは本薬物の遊離塩基型は、薬理学的性質、特に溶解度と溶解速度の点で劣るからである。実際に、このような転換は回避されねばならない、というのは生物学的利用性の低下及び/又は患者内及び患者間の血漿濃度の変動の増加を招き、そのために患者の最適な治療ができなくなる可能性がある。
【0008】
従って、本薬物(即ち、硫酸水素塩)を含む薬剤学的組成物、特に、投与時に本薬物の許容される吸収及び/又は生物学的利用性が確実に達成されるように、製剤及び保存期間中に本薬物の安定性が維持される組成物が必要とされている。
【0009】
本発明の第一の側面によれば、本薬物及びキャリアマトリックスを含む薬剤学的組成物が提供される。ここで、キャリアマトリックスは、本質的に以下から選択される少なくとも一つの医薬的に許容されるキャリアからなる。
(a)D−α−トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシナート、
(b)ポリグリコール化グリセリド、
(c)ポリエチレングリコール(PEG)、及び
(d)硬性脂肪
ここで、本薬物はキャリアマトリックス内に分散されている。
【0010】
驚くべきことに、我々は、本薬物の安定性が、本発明の組成物の中で安定に保たれることを見出した。キャリアマトリックスを形成するための好適な材料の多く、例えば、乳化剤、可溶化剤や吸収促進剤等が従来から当業者に知られており、難溶解性薬化合物の溶解動態や生物学的利用性の改善に用いられている。しかしながら、驚くべきことに、本発明者らは、製剤加工や長期保存期間中、このような賦形剤も、硫酸水素塩型の本薬物を安定化する不活性キャリアマトリックスとして用いることができることを見出した。
【0011】
従って、本発明の組成物は、製剤加工やその後に続く長期保存期間中、硫酸水素塩型の本薬物を安定化する方法を提供し、結果として、投与時に本薬物の許容される吸収、及び/又は生物学的利用性が確実に達成される。
【0012】
さらなる本発明の利点は、本発明の好適な組成物を調製するために用いられる製造工程に関連する。従来の錠剤投薬形態の製剤に用いられるような従来の製剤工程のほとんどは、多大な時間のかかる複雑な工程を必要とし、本薬物を不安定にする可能性があるが、それらに比較して、本発明の組成物は比較的単純でスケールアップ可能な工程により製造可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、様々な量の本薬物の遊離塩基型と本薬物(即ち、硫酸水素塩)を含む組成物のX線粉末回折データを示す。x軸は2θ値を示し、y軸はLin(カウント)を示す。このデータは、X線粉末回折を用いる組成物中の本薬物の遊離塩基型の検出レベルの指標を提示する。
【図2】図2は、製造後の本発明の組成物のX線粉末回折パターンを示す。x軸は2θ値を示し、y軸はLin(カウント)を示す。データから、本薬物(即ち、硫酸水素塩)のみが組成物の中で検出可能であることが分かる。
【図3】図3は、19F固体NMRによるビタミンE−TPGS組成物中の薬物の遊離塩基型のおよその検出限界の測定に用いる19F固体NMRスペクトルを示す。
【図4】図4は、実施例1.2の組成物の19F固体NMRスペクトルを示す。このスペクトルから、組成物中に検出可能レベルの本薬物の遊離塩基型は存在しないことが分かる。
【図5】図5は、実施例1.3の組成物の19F固体NMRスペクトルを示す。このスペクトルから、組成物中に検出可能レベルの本薬物の遊離塩基型は存在しないことが分かる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
キャリアマトリックス
キャリアマトリックスは、上で定義した医薬的に許容される少なくとも一種のキャリアを含む。キャリアマトリックスは、上で定義された群から選ばれる一種の医薬的に許容されるキャリアを含んでもよいし、あるいは、混合物を含んでもよい。医薬的に許容されるキャリアは、以下の群のいずれからか選ばれる。
(a)D−α−トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシナート、
(b)ポリグリコール化グリセリド
(c)ポリエチレングリコール、及び
(d)硬性脂肪
D−α−トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシナート(別名ビタミンE−TPGS)は、天然物由来のビタミンEの水溶性誘導体であり、両親媒性物質に似た、親水性と親油性の二面性を有する。ビタミンE−TPGSは、結晶性D−α−トコフェリル酸スクシナートをポリエチレングリコールでエステル化して得られる(米国薬局方25−National Formulary20を参照)。ビタミンE−TPGSは、薬剤学的応用用途では、乳化剤、可溶化剤、吸収促進剤として既に知られており、WO96/36316、US5891845、及びWO00/76482を例として挙げることができる。このような応用でのビタミンE−TPGSの用途に関するさらなる情報については、「“Eastman Vitamin E TPGS”イーストマン社のカタログ、イーストマンケミカル社、テネシー州キングスポート(2002年11月)」も参照のこと。
【0015】
ポリグリコール化グリセリドは、脂肪酸のグリセリドと、ポリオキシエチレンの脂肪酸エステルとの混合物である。これらの混合物では、脂肪酸は、飽和又は不飽和であり、グリセリドは、モノグリセリド、ジグリセリド、またはトリグリセリド、あるいは、それらの任意の割合の混合物である。好適なポリグリコール化グリセリドの例としては、限定されないが、カプリロカプロイルマクロゴールグリセリド(例えば、ラブラゾル(Labrasol))、オレオイルマクロゴールグリセリド(例えば、ラブラフィル(Labrafil) M1944 CS)、リノレオイルマクロゴールグリセリド(例えば、ラブラフィルM2125 CS)、ラウロイルマクロゴールグリセリド(例えば、ラウロイルマクロゴール32グリセリド)、及びステアロイルマクロゴールグリセリド、例えば、ゲルシア(Gelucire)50/13(これらのポリグリコール化グリセリドのさらなる詳細については、PhEur 6th Edition 2008 を参照のこと)が挙げられる。組成物の特定の一群において、キャリアマトリックスに含まれるポリグリコール化グリセリドは、10を超える親水親油バランス値(HLB)を有する。組成物のさらに特定の一群において、キャリアマトリックスに含まれるポリグリコール化グリセリドは、水に分散可能である。組成物のさらに特定の一群において、ポリグリコール化グリセリドは、ラウロイルマクロゴールグリセリド、又はステアロイルマクロゴールグリセリドである。組成物のなおさらに特定の一群において、ポリグリコール化グリセリドは、ラウロイルマクロゴールグリセリドである。組成物のなおさらに特定の一群において、ポリグリコール化グリセリドは、ラウロイルマクロゴール32グリセリド、又はゲルシア50/13である。組成物のなおさらに特定の一群において、ポリグリコール化グリセリドは、ラウロイルマクロゴール32グリセリドである。ラウロイルマクロゴール32グリセリド(ゲルシア44/14、あるいはAcconon(登録商標)C-44,EPとして市販)は、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、及びポリエチレングリコール(PEG)のモノ及びジ脂肪酸からなる飽和ポリグリコール化グリセリドである。ラウロイルマクロゴール32グリセリドは、室温で半固体か固体で、融点は44℃であり、水添パーム核油とポリエチレングリコール1500との反応で得られる。
【0016】
ポリエチレングリコールUSP(PEG)は、マクロゴール(PhEur 6th Edition 2008を参照)としても知られており、オキシエチレンの親水性ポリマーである。900ダルトンを超える平均分子量を有するPEGは、一般的に、常温では半固体か固体である。本発明におけるPEGの好適な平均分子量範囲は900〜35,000ダルトンである。好適な市販の製品には、限定されないが、PEG900、PEG1000、PEG1450、PEG2000、PEG6000、及びPEG20000が含まれる。組成物の特定の一群において、キャリアマトリックスに存在するPEGは、900ダルトンと25,000ダルトンの間の平均分子量を有する。本態様の製剤のさらなる特定の一群において、このPEGは、約6,000ダルトンの平均分子量を有する。本態様の製剤のなおさらなる特定の一群において、このPEGは、約20,000ダルトンの平均分子量を有する。
【0017】
硬性脂肪は、実質的に水不溶性のモノグリセリド、ジグリセリド及びトリグリセリドの固体状の混合物である。好適な硬性脂肪の例としては、限定されないが、ゲルシア33/01(USP-NFの‘Hard fat’を参照)、ゲルシア39/01(USP-NF 及び EPの‘Hard fat’を参照)、及びゲルシア43/01(EP 3rd edition 及び USP24/NF19の‘Hard fat’を参照)が挙げられる。
【0018】
本発明の一態様によれば、キャリアマトリックスは、本質的に以下から選択される少なくとも一つの医薬的に許容されるキャリアからなる。
(a)D−α−トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシナート、
(b)ポリグリコール化グリセリド、及び
(c)ポリエチレングリコール(PEG)
ここで、本薬物は、キャリアマトリックス内に分散している。
【0019】
本発明のさらなる一態様において、キャリアマトリックスは、ビタミンE TPGSである。
本発明のなおさらなる一態様において、キャリアマトリックスは、ポリグリコール化グリセリドである。好ましくはポリグリコール化グリセリドは、ラウロイルマクロゴール32グリセリド、あるいはゲルシア 50/13であり、特に、ラウロイルマクロゴール32グリセリドである。
【0020】
本発明のさらなる一態様において、キャリアマトリックスは、ビタミンE−TPGSと少なくとも1種のポリグリコール化グリセリドの混合物を含む。好ましくはこの実施態様に存在する少なくとも1種のポリグリコール化グリセリドは、ラウロイルマクロゴール32グリセリドであり、より好ましくはラウロイルマクロゴール32グリセリドは、組成物中のキャリアマトリックス成分の重量で1〜60%を占める量存在し、さらにより好ましくは約30〜55%であり、最も好ましくは組成物中のキャリアマトリックス成分の約50%を占める。好ましくはラウロイルマクロゴール32グリセリドは、この態様に存在する唯一のポリグリコール化グリセリドである。
【0021】
本発明のさらなる態様において、キャリアマトリックスはビタミンE−TPGSと少なくとも1種のPEGの混合物を含む。好ましくは本態様に存在する少なくとも1種のPEGは、900ダルトンと25000ダルトンの間の平均分子量を有し、より好ましくはPEGは、組成物中のキャリアマトリックス成分の重量で1〜30%を占める量存在し、さらに好ましくは約5〜15%であり、最も好ましくは組成物中のキャリアマトリックス成分の重量で約10%を占める。好ましくはこの態様に1種類だけのPEGが存在する。本態様の製剤の特定の一群において、このPEGは6000ダルトンの平均分子量を有する。本態様の製剤のさらなる特定の一群において、PEGは20000ダルトンの平均分子量を有する。本態様の製剤のなおさらなる特定の一群において、PEGは1000ダルトンの平均分子量を有する。
【0022】
組成物中のキャリアマトリックス成分中におけるラウロイルマクロゴール32グリセリドあるいはPEGのような賦形剤の割合を述べる場合に、本明細書でこれまで使用されている「約」は、キャリアマトリックスの重量で±2%のことである。
【0023】
組成物は、キャリアマトリックスを重量で、好ましくは40〜99%、より好ましくは約60〜95%、さらに好ましくは約65〜95%含む。
本発明の組成物の特定の一群において、組成物はキャリアマトリックスを重量で約90〜95%含有し、より特別には重量で約95%含有する。
【0024】
本発明の組成物のさらなる特定の一群において、組成物はキャリアマトリックスを重量で約85〜90%含有し、より特別には重量で約90%含有する。
本発明の組成物のなおさらなる特定の一群において、組成物はキャリアマトリックスを重量で約75〜85%含有し、より特別にはキャリアマトリックス重量で約80%含有する。
【0025】
本発明の組成物のなおさらなる特定の一群において、組成物はキャリアマトリックスを重量で約65〜80%含有し、より特別にはキャリアマトリックス重量で約70%含有する。
【0026】
組成物中のキャリアマトリックスの割合に関連する用語「約」は、全組成物の重量で±2%のことである。そこで、一例として、仮に組成物が重量で約70%のキャリアマックスを含有するといった場合には、この組成物は重量で68%〜72%の間のキャリアマトリックスを含有する。
【0027】
本発明の組成物のなおさらなる特定の一群において、組成物は、重量で79%〜81%のキャリアマトリックスを含み、例えば、重量で79.83%含む。
薬物
典型的には、薬物は、組成物の重量で1〜50%の範囲内の量存在し、好ましくは約1〜35%で、特に好ましくは約5〜30%である。組成物の特定の一群において、本薬物は重量で最終組成物の約5%の量存在する。組成物のさらに特定の一群において、本薬物は重量で最終組成物の約10%の量存在する。組成物のなおさらに特定の一群において、本薬物は重量で最終組成物の約20%の量存在する。組成物のなおさらに特定の一群において、本薬物は重量で最終組成物の約30%の量存在する。組成物のなおさらなる特定の一群において、本薬物は例えば重量で最終生成物の19%〜21%の量存在し、例えば20.17%の量存在する。
【0028】
組成物中の薬物の割合に関連する用語「約」は、全組成物の重量で±2%のことである。
好ましくは本発明による組成物の単位用量は0.01mg〜500mgの本薬物を含んでもよい。好ましくは組成物の各々の治療用量は、少なくとも1用量の本薬物の1日用量分を提供するのに十分な量の本薬物を含む。様々な態様における1用量中の本薬物の好ましい量としては、例えば約6.05、12.1、18.15、30.25、60.5、72.6、78.65、84.7、90.75、96.8、102.85、108.9、114.95、121、151.25、181.5、242、302.5、363、423.5、484mg、あるいはそれ以上であり、必要とされる用量や医薬組成物の特定形態に依存する。特定の一態様において、組成物の1用量は1mgから150mgの本薬物、より好ましくは、例えば、約72.6、78.65、84.7、90.75、96.8、102.85、108.9、114.95、又は121mgのような50mgから130mgの本薬物、特に好ましくは、72.6、78.65、84.7、90.75、又は96.8mgの本薬物を含有する。この直前に使用されている「約」は、特定された重量の±2mgとして定義される。特定の一態様において、組成物の1用量は90.75、又は60.5mgの本薬物を含有する。特定の一態様において、組成物の1用量は90.75mgの本薬物を含有する。特定の一態様において、組成物の1用量は60.5mgの本薬物を含有する。
【0029】
本薬物は、種々の形態で使用され、それらはすべて本発明の範囲に包含される。これらは、非晶あるいは結晶形態、また、無水形及び溶媒和や水和された形態を含む。製剤の特定の群において、本薬剤は、結晶で無水の形態である。
【0030】
我々は本薬物が本発明の適切なキャリアマトリックス中で安定化されることを見出した。本明細書では、「安定化される」という用語は、製剤及び/または保存される組成物中に存在する活性成分である6−(4−ブロモ−2−クロロ−フェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシ−エトキシ)−アミドが硫酸水素塩、即ち、本薬物の遊離塩基型とは対照的な本薬物として実質的に存在することを意味する。当業者であれば、組成物中の本薬物の遊離塩基型の量及び本薬物(即ち、硫酸水素型)の量の値は、例えば、XRPDや19F固体NMR分光法等の手法により得られ、また溶解テストによっても測定できることは容易に理解できるであろう。
【0031】
本明細書では、「分散(された)」という用語は、キャリアマトリックスを含む第2の相に分散された本薬物から第1の相が成る2相系を表し、本薬物は被分散相であり、キャリアマトリックスは連続相である相を含む。製剤の特定の一群において、「被分散相」を形成する本薬物は、キャリアマトリックスを含む「第2の相」の全体に分布する微細に分割された粒子状として分散されている。製剤の特定の一群において、組成物に存在する薬物の総量の60重量%超が分散されている。さらに製剤の特定の一群において、組成物に存在する薬物の総量の90重量%超、好ましくは95重量%超が分散されている。当業者であれば、固体分散の形態で存在する薬物の割合の値は、示差走査熱量測定(DSC)、熱重量分析(TGA)、示差走査微小熱量測定、19F固体NMR分光法によって確認可能であることを理解するであろう。また、当業者であれば、薬物の結晶性が、例えば、X線回折等の手法で測定可能であることを理解するであろう。
【0032】
本発明の組成物の特定の一群において、分散された薬物の粒子径は約1ミクロンから20ミクロンまで様々であり得る。好ましくは分散された薬物は粒子の90%が15ミクロンより小さい直径の粒子径分布を有する。
【0033】
本発明の一態様において、薬物はキャリアマトリックス内に分散され、追加の溶媒や添加剤は存在しない。この態様の組成物は薬物を特に高比率で用いる。そうすることは有利である。その理由は、追加成分により患者の薬剤服用順守や治療の許容性に支障をきたす可能性のある潜在的な毒性危険性の増加や剤形が大きくなる等の欠点が、多くの場合、導入されるからである。
【0034】
本発明の更なる一側面によれば、
(i)薬物、及び
(ii)キャリアマトリックス
を含む医薬組成物が提供される。ここで、キャリアマトリックスは前記に定義したいずれかの意味を有し、薬物はキャリアマトリックス内に分散され、組成物は常温で半固体又は固体である。
【0035】
本明細書では、「半固体」という用語は、固体と液体の中間の硬さと粘度を有する成分または組成物である。半固体は、常温では、粉体のように流れず、液体ではない(即ち、融点は常温より高い)。本明細書では、「固化(する)」とういう用語は、固体又は半固体を形成することを意味する。常温とは、18〜23℃の範囲の温度を意味する。
【0036】
本発明の更なる一側面によれば、
(i)薬物、及び
(ii)本質的にビタミンE−TPGSから成るキャリアマトリックス
を含む医薬組成物が提供される。ここで、薬物はビタミンE−TPGS内に分散され、組成物は常温で半固体又は固体である。
【0037】
本発明の更なる一側面によれば、
(i)薬物、及び
(ii)本質的にポリグリコール化グリセリドから成るキャリアマトリックス
を含む医薬組成物が提供される。ここで、薬物はポリグリコール化グリセリド内に分散され、組成物は常温で半固体又は固体である。
【0038】
本発明の更なる一側面によれば、
(i)薬物、及び
(ii)本質的にビタミンE−TPGSとラウロイルマクロゴール32グリセリドから成るキャリアマトリックス
を含む医薬組成物が提供される。ここで、薬物はキャリアマトリックス内に分散され、組成物は常温で半固体又は固体である。
【0039】
本発明の更なる一側面によれば、
(i)薬物、及び
(ii)本質的にビタミンE−TPGSとPEGから成るキャリアマトリックス
を含む医薬組成物が提供される。ここで、薬物はキャリアマトリックス内に分散され、組成物は常温で半固体又は固体である。
【0040】
特定の一態様によれば、
(i)15〜30部(特に15〜25部)の薬物、及び
(ii)70〜85部(特に75〜85部)のキャリアマトリックスを含む医薬組成物が提供される。ここで、部はいずれも重量部であり、合計部:(i)+(ii)=100であり、キャリアマトリックスは前記に定義したいずれかの意味を有し、薬物はキャリアマトリックス内に分散され、組成物は常温で半固体又は固体である。
【0041】
特定の一態様によれば、
(i)15〜25部(特に18〜22部)の薬物、及び
(ii)75〜85部(特に78〜82部)のキャリアマトリックス
を含む医薬組成物が提供される。ここで、部はいずれも重量部であり、合計部:(i)+(ii)=100であり、キャリアマトリックスは前記に定義したいずれかの意味を有し、薬物はキャリアマトリックス内に分散され、組成物は常温で半固体又は固体である。
【0042】
特定の一態様によれば、
(i)25〜40部(特に25〜35部)の薬物、及び
(ii)60〜75部(特に65〜75部)のキャリアマトリックス
を含む医薬組成物が提供される。ここで、部はいずれも重量部であり、合計部:(i)+(ii)=100であり、キャリアマトリックスは前記に定義したいずれかの意味を有し、薬物はキャリアマトリックス内に分散され、組成物は常温で半固体又は固体である。
【0043】
特定の一態様によれば、
(i)25〜35部(特に28〜32部)の薬剤、及び
(ii)65〜75部(特に68〜72部)のキャリアマトリックス
を含む医薬組成物が提供される。ここで、部はいずれも重量部であり、合計部:(i)+(ii)=100であり、キャリアマトリックスは前記に定義したいずれかの意味を有し、薬物はキャリアマトリックス内に分散され、組成物は常温で半固体又は固体である。
【0044】
特定の一態様によれば、
(i)15〜25部(特に18〜22部)の薬物、及び
(ii)75〜85部(特に78〜82部)のビタミンE−TPGS
を含む医薬組成物が提供される。ここで、部はいずれも重量部であり、合計部:(i)+(ii)=100であり、薬物はビタミンE−TPGS内に分散され、組成物は常温で半固体又は固体である。
【0045】
特定の一態様によれば、
(i)25〜35部(特に28〜32部)の薬物、及び
(ii)65〜75部(特に68〜72部)のビタミンE−TPGS
を含む医薬組成物が提供される。ここで、部はいずれも重量部であり、合計部:(i)+(ii)=100であり、薬物はビタミンE−TPGS内に分散され、組成物は常温で半固体又は固体である。
【0046】
特定の一態様によれば、
(i)19〜21部、例えば20.17部の薬物、及び
(ii)79〜81部、例えば79.83部のビタミンE−TPGS
を含む医薬組成物が提供される。ここで、部はいずれも重量部であり、合計部:(i)+(ii)=100であり、薬物はビタミンE−TPGS内に分散され、組成物は常温で半固体又は固体である。
【0047】
特定の一態様によれば、
(i)25〜35部(特に、28〜32部)の薬物、及び
(ii)65〜75部(特に、68〜72部)の、ビタミンE−TPGSと少なくとも1種のポリグリコール化グリセリドとの混合物から成るキャリアマトリックス
を含む医薬組成物が提供される。ここで、部はいずれも重量部であり、合計部:(i)+(ii)=100であり、薬物は、ビタミンE−TPGSと少なくとも1種のポリグリコール化グリセリド内に分散され、組成物は常温で半固体又は固体である。
【0048】
製剤
組成物中の薬物の塩型の安定性に許容できない程の影響を及ぼさないのであれば、本発明による組成物に追加の賦形剤が任意に含まれてもよい。従って、本発明のある態様では、後述される特定の実施例のいくつかに記載されているような、キャリアマトリックスと追加の賦形剤から成る混合物に、本発明の組成物に存在する薬物を分散できることは当業者であれば理解するであろう。存在してもよい追加の賦形剤の例としては、保存料、安定剤、乳化剤、酸化防止剤、甘味料、着香料、pH調節剤、分散助剤 (例えば、エトキシル化ひまし油(Cremophor EL)、エトキシル化水添ひまし油(Cremophor RH40)、又はポリソルベート80)のような界面活性剤)、及び粘度調節剤が挙げられる。そのような追加の賦形剤は、当業者には周知であり、例えば、「the Handbook of Pharmaceutical Excipients(医薬賦形剤便覧), 4th Edition, American Pharmaceutical Association」、「The Theory and Practice of Industrial Pharmacy(工業医薬の理論と実践), 3rd Edition, Lachman et al. 1986」、「Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets Volume 1(医薬投与形態:錠剤第1巻), 2nd Edition, Lieberman, Hebert A., et al, 1989」「Modern Pharmaceutics(最近の医薬), Banker, Gilbert and Rhodes, Christopher T, 3rd edition, 1995」、及び「Remington's Pharmaceutical Sciences(レミントンの医薬の科学), 20th Edition, 2000」等に記載がある。
【0049】
好ましくは本発明による組成物は、経口投与に適合した剤形であり、例えば経口投与に好適なカプセル剤形や液体分散物である。好適なカプセル製剤はよく知られており、例えば、軟ゼラチン、又は硬ゼラチンカプセル、水溶性セルロースエーテル(例えば、ヒプロメロース)カプセル、あるいは澱粉カプセル内に含有された固体、液体、あるいは半固体組成物が含まれる。
【0050】
従って、本発明の更なる一側面は、薬物及びキャリアマトリックスを含む経口投与に適合した医薬組成物であり、キャリアマトリックスは前記に定義したいずれかの意味を有し、薬物はキャリアマトリックス内に分散される。
【0051】
本発明のなお更なる一側面は、薬物及びキャリアマトリックスを含む医薬カプセル組成物であり、キャリアマトリックスは前記に定義したいずれかの意味を有し、薬物はキャリアマトリックス内に分散される。
【0052】
本発明による組成物は、製剤技術で周知の従来技術によって調製することができる。例えば、特定の一態様によればキャリアマトリックスの成分を溶融するまで加熱し、例えば、あらかじめ粉砕つまり微粉末化により小さくした薬物は、確実に均一な分布になるように、一定のかき混ぜ/撹拌により徐々に溶融混合物に取り込まれる。次に溶融混合物を硬または軟カプセルに満たし、冷却、カプセル内で粘性液体、固体状、又は半固体状塊を形成させる。カプセルの本体と蓋は、例えば、バンド固定のような当技術分野で知られている方法により密閉することができる。
【0053】
あるいは、本発明の組成物は、例えば、溶融押出又は溶融造粒のような他の従来法によって調製してもよい(好適な製造方法の詳細については、A. Royce, J, Drug Dev. Ind. Pharm. 22 (1996) 917-924, G. Verreck, Bull. tech. Gattefosse (2004) 85-95 and J. Breitenbach, Eur. J. Pharm. Biopharm. 54 (2002) 107-117を参照のこと)。
【0054】
本薬物は増殖抑制作用を有し、従って、本発明による組成物は、本薬物(即ち、硫酸水素塩)を開示した国際特許出願WO2007/076245、及びまた本薬物の遊離塩基型が例示されている国際特許出願WO03/077914に記載されているような症状の治療に有用である。例えば、本発明の組成物は、悪性黒色腫、脳腫瘍、肺癌、扁平上皮細胞癌、膀胱癌、胃癌、膵臓癌、乳癌、頭部癌、頸部癌、腎(臓)癌、卵巣癌、前立腺癌、結腸直腸癌、食道癌、精巣癌、婦人科系癌、あるいは甲状腺癌等の多くの一般的なヒトの癌の治療に対し、有用である。本発明の組成物は、例えば、乾癬、動脈の再狭窄あるいは良性前立腺肥大(BPH)のような良性皮膚過形成等の過剰増殖を含むその他の病気の治療に有用であることが更に期待される。本薬物を用いて同様に治療できるMEK媒介性疾患のその他の例としては、膵炎、腎臓病(増殖性糸球体腎炎、および糖尿病誘発性腎疾患を含む)、あるいは哺乳動物における疼痛の治療が挙げられる。さらに、本薬物は、哺乳動物における胚盤胞移入の予防や、哺乳類における脈管新生または血管新生に関係する疾患の治療に用いてもよい。このような疾患には、腫瘍血管新生、関節リュウマチなどの慢性炎症性疾患、アテローム性動脈硬化症、炎症性腸疾患、ならびに乾癬、湿疹、および強皮症などの皮膚疾患、糖尿病、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、加齢性黄斑変性、血管腫、神経膠腫、黒色腫、カポジ肉腫、ならびに卵巣癌、乳癌、肺癌、膵臓癌、前立腺癌、結腸癌、および扁平上皮癌が含まれると考えられる。
【0055】
本発明の更なる一側面によれば、薬剤として使用に対し前記で定義された本発明の医薬組成物が提供される。
本発明の組成物に存在する薬物は、そのMEK阻害活性に起因すると考えられる制癌特性のような増殖抑制特性を有する。従って、本発明の組成物は、MEKが単独であるいは部分的に媒介する疾患や病状の治療に有用であると期待される。即ち、本発明の組成物は、MEK阻害作用を生じさせる治療を必要とする温血動物にMEK阻害作用を生じさせるために用いてもよい。このように、この発明の組成物は、MEKの阻害によって特徴づけられる悪性細胞の増殖を治療する方法を提供する。即ち、本発明の組成物は、MEKの阻害作用が単独であるいは部分的に媒介する増殖抑制効果を生じさせるために用いてもよい。従って、本発明の組成物は、増殖抑制効果を提供することによる癌の治療において、特に、前記の癌のようにMEKに敏感な癌の治療において有用であると期待される。
【0056】
本発明の一つの態様において、温血動物(好ましくはヒト)において、増殖抑制作用を生じさせるために使用される、前記で規定された本発明による医薬組成物が提供される。別の態様では、癌の治療における使用のための、前記で規定した本発明による医薬組成物が提供される。さらに別の態様では、MEKの阻害作用に敏感な腫瘍の予防あるいは治療における使用のための、本発明による医薬組成物を提供する。
【0057】
本発明の更なる側面により、温血動物(好ましくはヒト)において増殖抑制作用を生じさせる用途の薬剤の製造における、前記に規定した本発明による組成物の使用が提供される。
【0058】
本発明の更なる側面により、癌の治療用途の薬剤の製造における、前記に規定した本発明による組成物の使用が提供される。
本発明の更なる側面により、本薬物を必要とする患者における本薬物に対する生物学的利用性の許容できない低下の予防のための方法であって、前記で規定した本発明による患者への医薬組成物の経口投与を含む方法が提供される。
【0059】
本発明の更なる側面により、本薬物の生物学的利用性の許容できない低下の予防のための薬剤の製造における、前記で規定した本発明による医薬組成物の使用が提供される。
本発明の医療組成物は、単独療法として単独に投与してもよいし、あるいは、少なくとも1種の他の薬物との併用及び/又は治療と組合せて投与してもよい。このような併用療法は、個々の治療成分の同時、連続、または別々の投与により行われる。内科腫瘍学の分野では、治療のために癌患者ごとに異なる組み合わせの治療形態を用いることは、通常の医療行為である。内科腫瘍学において、本発明の組成物に追加して用いるこのような他の併用療法としては、外科手術、放射線治療や化学療法が考えられる。このような化学療法には、以下の各種の治療薬が含まれてもよい。
【0060】
(i)その他の抗血管新生剤、例えば、血管内皮増殖因子の効果を阻害するもの(例えば、抗血管内皮細胞増殖因子抗体ベバシズマブ[アバスチン(登録商標)])、前記の薬と異なる機序で作用するもの(例えば、リノマイド、インテグリンαVβ3作用の阻害剤、アンジオスタチン、ラゾキシン、サリドマイド、MMP−2(マトリックスメタロプロテアーゼ2)阻害剤、MMP−9(マトリックスメタロプロテアーゼ9)阻害剤、COX−II(シクロオキシゲナーゼII)阻害剤)、及び腫瘍血管を標的とする薬剤(例えば、リン酸コンブレタスタチン、国際特許出願WO00/40529、WO00/41669、WO01/92224、WO02/04434、及びWO02/08213に開示の化合物、及び文献の全体の開示は参照によって本願明細書に組み込まれる国際特許出願公開WO99/02166に記載の血管新生阻害剤(例えば、N−アセチルコルヒノール−O−ホスファート))、
(ii)細胞増殖抑制剤、例えば、抗エストロゲン剤(例えば、タモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、ヨードキシフェン)、エストロゲン受容体ダウンレギュレーター(例えば、フルベストラント)、プロゲストゲン(例えば、酢酸メゲストロール)、アロマターゼ阻害剤(アナストロゾール、レトラゾール、ボラゾール、エキセメスタン)、抗プロゲストゲン、抗男性ホルモン物質(例えば、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、酢酸シプロテロン)、LHRH作用薬及び拮抗薬(例えば、酢酸ゴセレリン、ルプロリド、ブセレリン)、5α−レダクターゼ阻害剤(例えば、フィナステリド)、抗侵襲剤(例えば、マリマスタットのようなメタロプロテイナーゼ阻害剤及びウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子受容体作用阻害剤)、及び増殖因子作用阻害剤(このような増殖因子は、例えば、血小板誘導増殖因子及び肝細胞増殖因子を含む)、このような阻害剤は、増殖因子抗体、増殖因子受容体抗体(例えば、抗ErbB2抗体トラスツズマブ[ハーセプチン(登録商標)]及び抗ErbB1抗体セツキシマブ[C225])、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、上皮細胞増殖因子ファミリー阻害剤等のチロシンキナーゼ阻害剤(例えば、N−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−7−メトキシ−6−(3−モルホリノプロポキシ)キナゾリン−4−アミン(ゲフィチニブ)、N−(3−エチニルフェニル)−6、7−ビス(2−メトキシエトキシ)キナゾリン−4−アミン(エルロチニブ、OSI774) 及び6−アクリルアミド−N−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−7−(3−モルホリノプロポキシ)キナゾリン−4−アミン (CI1033))等のEGFRファミリーチロシンキナーゼ阻害剤)及びセリン/トレオニンキナーゼ阻害剤)、
(iii)医療腫瘍学において使用されるような抗増殖性/抗腫瘍性薬物およびその組合せ(例えば、代謝拮抗剤(メトトレキサートのような葉酸代謝拮抗剤、5-フルオロウラシルのようなフルオロピリミジン、テガフール、プリン及びアデノシンの同族体);制癌抗生物質(例えば、アドリアマイシン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダウノマイシン、エピルビシン、及びイダルビシンのようなアントラサイクリン、マイトマイシンC、ダクチノマイシン、 ミトラマイシン);白金誘導体(例えば、シスプラチン、カルボプラチン);アルキル化剤 (例えば、ナイトロジェンマスタード、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、シクロホスファミド、イホスファミド、ニトロソ尿素、チオテパ);有糸分裂阻害剤(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビンのようなビンカアルカロイド、及びタキソールやタキソテールのようなタキソイド);トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、エトポシド及びテニポシドのようなエピポドフィロトキシン、アムサクリン、トポテカン、カンプトテシン及びイリノテカン);及び酵素(例えば、アスパラギナーゼ);更にチミジル酸生成酵素阻害剤(例えば、ラルチトレキセド);
更に、追加の化学療法薬としては、
(iv)生物応答調節剤(例えば、インターフェロン);
(v)抗体(例えば、エドレコロマ);
(vi)アンチセンス療法、例えば、上記標的を指向するもの、例えばISIS2503、抗rasアンチセンス;
(vii)療法アプローチ、例えば異常な遺伝子を置換するアプローチ(例えば異常なp53、または異常なBRCA1もしくはBRCA2)を含む、GDEPT(遺伝子指定酵素プロドラッグ療法)アプローチ(例えばシトシンデアミナーゼ、チミジンキナーゼまたは細菌のニトロ還元酵素を用いるもの)、および化学療法または放射線療法に対する患者の耐性を高めるアプローチ(例えば多剤耐性遺伝子療法)を含む;
(viii)免疫療法アプローチ、例えば、患者の腫瘍細胞の免疫原性を高める生体外及び生体内のアプローチ(例えばサイトカイン類(例えばインターロイキン−2、インターロイキン−4、または顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子)でのトランスフェクション)を含む、T細胞アネルギーを低下させるアプローチ、トランスフェクト免疫細胞を用いるアプローチ(例えばサイトカイン−トランスフェクト樹状細胞)、サイトカイン−トランスフェクト腫瘍細胞系を用いるアプローチ、および抗イディオタイプ抗体を用いるアプローチ;
(ix)細胞分裂阻害薬、例えば、ビンブラスチン;
(x)アルキル化剤、例えば、シスプラチン、カルボプラチン及びシクロホスファミド;
(xi)代謝拮抗剤、例えば、5−フルオロウラシル、シトシンアラビノシド及びヒドロキシ尿素、又は、例えばN−(5−[N−(3,4−ジヒドロ−2−メチル−4−オキソキナゾリン−6−イルメチル)−N−メチルアミノ]−2−テノイル)−L−グルタミン酸のような、ヨーロッパ特許出願EP239362B1(1991年4月12日発行)に開示される好ましい代謝拮抗剤の1つ)、
(xii)増殖因子阻害剤;細胞周期阻害剤;挿入抗生物質(例えば、アドリアマイシン及びブレオマイシン);酵素(例えば、インターフェロン);及び抗ホルモン剤(例えば、ノルバデックス(登録商標)(タモキシフェン)のような抗エストロゲン剤、又は、例えばカソデックス(登録商標)(4’−シアノ−3−(4−フルオロフェニルスルホニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−3’−(トリフルオロメチル)プロピオンアニリドのような抗男性ホルモン物質)。
【0061】
特に、本発明の医薬組成物は、抗血管新生薬、シグナル伝達阻害剤、及び抗増殖剤から選択される少なくとも1種の有効量の薬物と併用される。
特定の一態様において、MMP−2(マトリックスメタロプロテアーゼ2)阻害剤、MMP-9(マトリックスメタロプロテアーゼ9)、及びCOX−II(シクロオキシゲナーゼII)阻害剤等の抗血管新生薬は、本発明の医薬組成物と併用して用いることができる。有用なCOX−II阻害薬の例には、CELEBREX(商標)(アレコキシブ(alecoxib))、バルデコキシブ(valdecoxib)、ロフェコキシブ(rofecoxib)が挙げられる。有用なマトリックスメタロプロテアーゼ阻害薬の例は、WO96/33172(1996年10月24日公開)、同WO96/27583(1996年3月7日公開)、欧州特許出願公開EP0818442A2(1998年1月14日公開)、欧州特許公告EP1004578B1(2004年2月25日発行)、WO98/07697(1998年2月26日公開)、WO98/03516(1998年1月29日公開)、WO98/34918(1998年8月13日公開)、WO98/34915(1998年8月13日公開)、WO98/33768(1998年8月6日公開)、WO98/30566(1998年7月16日公開)、欧州特許出願公開EP606,046(1994年7月13日公開)、欧州特許出願公開EP931,788(1999年7月28日公開)、WO90/05719(1990年5月31日公開)、WO99/52910(1999年10月21日公開)、WO99/52889(1999年10月21日公開)、WO99/29667(1999年6月17日公開)、PCT国際出願第WO99/07675(1999年2月18日公開)、欧州特許EP0952148 B1(2004年5月12日発行)、英国特許出願第9912961.1(1999年6月3日出願)、米国特許仮出願番号第60/148,464号(1999年8月12日出願)、米国特許5,863,949(1999年1月26日発行)、米国特許5,861,510(1999年1月19日発行)、及び欧州特許出願公開780,386(1997年6月25日公開)であり、これらのすべては参照によって全体を本明細書に組み込まれる。好ましいMMP−2阻害剤とMMP−9阻害剤は、MMP−1を阻害する活性をほとんど有していないか全く有していない阻害剤である。より好ましいのは、他のマトリックスメタロプロテアーゼ類(即ち、MMP−1、MMP−3、MMP−4、MMP−5、MMP−6、MMP−7、MMP−8、MMP−10、MMP−11、MMP−12、及びMMP−13)に比べて選択的にMMP−2及び/又はMMP−9を阻害する阻害剤である。
【0062】
本発明で有用なMMP阻害剤のいくつかの例はAG−3340、RO32−3555、およびRS13−0830である。
特定の病気あるいは疾患(例えば、増殖性疾患)の治療あるいは予防的療法のための本発明の組成物において本薬物の必要な投与量は、例えば、治療される宿主や治療される病気の重症度に応じて必然的に変化する。投与される活性化合物の量は、治療される患者、病気あるいは疾患の重症度、投与率、化合物の性質及び処方医師の裁量に依存する。しかしながら、有効投与量は、単回量又は分割量で、約0.01〜約100mg/体重kg/日の範囲内であり、好ましくは約1〜約35mg/kg/日である。70kgのヒトでは、これは、約0.7〜約7000mg/日、好ましくは約70〜約2500mg/日になる。ある場合には、上記範囲の下限より低いレベルで十分な量以上であり、一方、他の場合には、さらに多い投与量を有害な副作用を生じることなく用いることができるが、このような多量の投与量を1日を通して投与するために、最初に幾つかの少ない投与量に分割することが前提である。組成物の単位投与量は、通常、例えば、1〜500mgの活性成分を、好ましくは、5〜150mgの活性成分を含有する。好ましくは、0.03〜6mg/kgの範囲の一日の投与量が想定される。
【0063】
本発明は、以下に続く非限定的な実施例によって示されるが、特に明記しない限り、本「薬物」は6−(4−ブロモ−2−クロロ−フェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシ−エトキシ)−アミドの硫酸水素塩である。
【0064】
実施例1:本発明の組成物の調製
表1に示した組成物を、キャリアマトリックスをオーブンで、60〜70℃の温度まで加熱して調製した。その温度を約2時間保持して、すべての材料を確実に完全に溶融させた。次に、本薬物を、キャリアマトリックスに徐々に添加しながら磁気攪拌子あるいは高せん断ホモジナイザーを用い機械的に攪拌した。攪拌している間、混合物が溶融状態を維持するのに十分高い温度にこの系を保持し、そのまま目視で均一な混合物が得られるまで続けた。攪拌時間は具体的な組成物によって異なるが、一般には、3分から35分の範囲内であった。次に、得られた混合物をHPMCカプセルに満たし、常温まで冷却した。カプセルは密閉し、ほとんどの場合、使用するまで冷蔵条件で保存した。
【0065】
【表1】

【0066】
実施例2:X線粉末回折(XRPD)による本発明の組成物の安定性
製剤中の本薬物(即ち、硫酸水素塩)の安定性の指標はXRPDによって提供される。この手法は、組成物内の本薬物の結晶性遊離塩基型と本薬物の結晶性硫酸水素塩型とを同時に検出することが可能である。組成物の試料をシリコン・ウェハ・マウントに乗せ、シーメンス(Siemens)D5000X線回折計を用いて分析した。試料を、シータ−シータモードで2°〜40°の2θの範囲に渡り、連続スキャンモードで0.02°θあたり4秒間暴露した。
【0067】
本発明の組成物内の薬物の結晶性遊離塩基型のおよその検出限界は、結晶性薬物(即ち、硫酸水素塩型)に対する本薬物の結晶性遊離型塩基の相対量を変えた製剤を調製することで測定でき、これらの組成物を、XRPDによって分析した。図1は、名目で21.2重量%の本薬物も含むビタミンE−TPGS系組成物中の本薬物の遊離塩基型が、遊離塩基として2.5重量%レベルまで検出可能であったことを示す。
【0068】
製造直後の実施例1.1、1.2及び1.3に記載の各々の組成物のXRPDパターンを得た。これらのパターン(図2に示す)から本薬物(即ち、硫酸水素塩型)のみが存在することが分かる。
【0069】
実施例3:固体NMR分光法による本発明の組成物の安定性
本発明の組成物中の本薬物の安定性の指標は19F固体NMR分光法(19FSS−NMR)を用いることによって提供される。この手法は、組成物内の本薬物の結晶性遊離塩基型と本薬物(即ち、硫酸水素塩型)との両方を検出することが可能である。本薬物の遊離塩基型、及び本薬物(即ち、硫酸水素塩)は共にスペクトルにおいて明確な特性フッ素ピークを示す。これらのピークは、NMR信号に対する通常の方法で積分することができ、これらのピークの割合は、存在する2種の固体状態の型、即ち、本薬物の遊離塩基型と本薬物(即ち、硫酸水素塩型)の割合に比例する。4mmMAS(マジックアングルスピニング)ローターに試料材料を取り付けて組成物の分析を行った。H複合パルスデカップリング[TPPM15]で19F固体NMR[376MHZ]スペクトルをAvance400分光計で4mmHFX(Bruker Biospin)プローブを用い記録した。すべてのサンプルは、パルスプログラム「aringdec」(anti-ring with decoupling)を用い、12kHzで回転させた。なお、マジックアングルスピンニングの手法に関連する摩擦力により結果的に常温より約10℃〜20℃高くまで試料が加熱された。
【0070】
本発明の組成物内の薬物の結晶性遊離塩基型のおよその検出限界は、薬物の結晶性遊離塩基型と結晶性薬物(即ち、硫酸水素塩型)の相対量を変えた製剤を調製することで測定できる。次に、これらの製剤を19F固体NMRによって分析した。図3に示されたNMRスペクトルから、28.9重量%の本薬物(即ち、硫酸水素塩)も含むビタミンE−TPGS系組成物中の本薬物の遊離塩基型が、遊離塩基として1重量%レベルまで検出可能であったことが分かる。
【0071】
製造後の実施例1.2及び実施例1.3に記載の製剤を19F固体NMRによって検査したが、本薬物の遊離塩基型が存在している兆候は見つからなかった。図4及び図5を参照のこと。これらの試料の分析に伴い、試料がある程度加熱され、その結果、−129.5ppmに等方性ピークが現れる。いかなる特定の理論に縛られることを望むものではないが、そのピークは、試料加熱により溶融したビタミンE−TPGS中に溶解している6−(4−ブロモ−2−クロロ−フェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシ−エトキシ)−アミドに帰属する可能性がある。
【0072】
実施例4:保存時における組成物の安定性
実施例1.2及び1.3に記載の組成物の12ヶ月間迄にわたる安定性の研究によると、白色高密度ポリエチレン(HDPE)ボトル(誘導密閉し、乾燥剤を含む)に封入されている間は、それらは高温高湿下でも安定である。25℃/60%相対湿度(RH)及び30℃/65%RHで、HDPEボトル中で、12ヶ月保存した後の実施例1.2及び実施例1.3の組成物の安定性データに有意な変化は観察されなかった(表1及び表2を参照のこと)。
【0073】
【表2】

【0074】
【表3】

【0075】
実施例5:本発明の組成物の溶解
生体外溶解試験法をHPMCカプセル内に含まれた製剤の性能を評価するために開発した。下の表3に列挙した製剤について、2重、3重に溶解性を調べた。
【0076】
カプセルの溶解を米国薬局方の装置II(パドル法)の基本手順に従って行った。カプセルを加えた後、溶解媒体試料を様々な時点で抜き取り、6−(4−ブロモ−2−クロロ−フェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシ−エトキシ)−アミドの濃度を、そのHPLCの応答ピーク面積をこの化合物が100%放出された場合に相当する量で調製した標準溶液のピーク面積と比較することで定量する。この方法では、透明ガラスピーク容器溶解ポット(clear glass peak vessel dissolution pots)を用い、カプセルの保持には、らせん状ステンレス製カプセル用おもし(Spiral Stainless Steel Capsule Sinkers)を用いる。リン酸緩衝液(900ml、pH2.0、735 mOsmol/L)を27℃で用い、100rpmのパドル速度を採用する。
【0077】
【表4】

【0078】
実施例1.1〜実施例1.3及び実施例1.5〜実施例1.7に記載の組成物に加えて、更に何種類かの比較用製剤を、結晶性遊離塩基と結晶性薬物(即ち、硫酸水素塩)との混合物を用い作製した。実施例1に記載の方法と類似の方法に従い、この2種の形態の混合物をビタミンE−TPGS中に分散し、HPMCカプセル中に満たした。
【0079】
比較用製剤の溶解データによると、組成物中の薬物の遊離塩基型の量が増加すると共に溶解性が減少した。薬物の2重量%の遊離塩基型を含有する製剤では、50分における溶解性が17%低下することが観察される。遊離塩基を含有する比較用製剤の解析によって得られたデータから、この溶解方法により組成物内に存在する薬物の遊離塩基型の量の指標が得られることが分かる。実施例1.1〜実施例1.3及び実施例1.5〜実施例1.7に記載の組成物の溶解性結果によると、95%以上の溶解が達成され、本化合物が実質的に硫酸水素塩型(即ち、本薬物)で存在していることを示している。
【0080】
実施例6:本発明の更なる組成物の調製
キャリアマトリックスを70℃に設定したオーブンで少なくとも1時間加熱することによって表4に示した組成物を調製した。次に、本薬物を、キャリアマトリックス中に徐々に添加しながら磁気攪拌子あるいは高せん断ホモジナイザーを用い機械的に攪拌した。攪拌している間、混合物が溶融状態を維持するのに十分高い温度にこの系を保持した。攪拌は、目視で均一な混合物が得られるまで続けた。これを達成するのに要する時間は組成物によって異なったが、少なくとも10分、そして60分まで要する場合もあった。この系の重量は3.75gから75gの範囲に渡った(表4に示した通り)。得られた混合物はHPMCカプセルに満たし、常温で冷却し固化させた。カプセルを室温あるいは冷蔵条件に使用されるまで保存した。
【0081】
【表5】

【0082】
実施例7:pH6.5の溶解媒体における組成物の溶解
pH6.5の溶解媒体を用いた生体外溶解試験法をHPMCカプセル内に含まれた組成物の性能を試験するために用いた。このpH6.5の溶解試験法により、実施例5に記載の溶解試験法に比べて、組成物中の本薬物の遊離塩基型の存在の識別が改善された。表4に列挙した製剤及び実施例1.7の製剤について溶解試験を2重あるいは3重に行った。
【0083】
カプセルの溶解を米国薬局方の装置II(パドル法)の基本手順に従って行った。カプセルを加えた後、溶解媒体試料を様々な時点で抜き取り、6−(4−ブロモ−2−クロロ−フェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシ−エトキシ)−アミドの濃度を、そのHPLCの応答ピーク面積とこの化合物が100%放出された場合に相当する量で調製した標準溶液のピーク面積とを比較することで定量する。この方法では、透明ガラスピーク容器溶解ポットを用い、カプセルの保持には、らせん状ステンレス製カプセル用おもしを用いる。1000mlのpH6.5の溶解媒体を37℃で用い、50rpmのパドル速度を採用する。
【0084】
1.74gの水酸化ナトリウムペレット、19.77gのリン酸二水素ナトリウム水和物(又は、17.19gの無水リン酸二水素ナトリウム)、及び30.93gの塩化ナトリウムを5リットルの脱イオン水に添加することによってpH6.5の溶解媒体を調製する。次に、1M塩酸あるいは1M水酸化ナトリウムでpHを6.5に調節する。
【0085】
表4に記載された組成物に加え、更に何種類かの比較用製剤を、本薬物の結晶性遊離塩基と結晶性薬物(即ち、硫酸水素塩型)との混合物を用い調製した。実施例6に記載の方法と類似の方法に従い、この2種の型の混合物をビタミンE−TPGS中に分散し、HPMCカプセル中に満たした。比較用製剤の具体的な組成物を表5に示す。
【0086】
【表6】

【0087】
比較用製剤の溶解データ(表6)によると、組成物中の薬物の遊離塩基型の量が増加すると共に溶解性が減少した。本薬物の0.4重量%の遊離塩基型を含有する製剤では、60分における溶解性が90%低下することが観察される。さらには、本薬物の遊離塩基が0.02重量%存在すると、60分での溶解性が13%低下した。遊離塩基を含有する比較用製剤の解析によって得られたデータから、pH6.5の溶解試験法により組成物内に存在する薬物の遊離塩基型の量に対して良い指標が得られることがわかる。
【0088】
【表7】

【0089】
実施例6に記載の組成物及び実施例1.7の製剤の溶解性結果を表7に示す。すべての製剤に対して60分において96%超の溶解が達成され、本薬物が、これらの組成物中で実質的に硫酸水素塩型で存在することが分かる。
【0090】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
6−(4−ブロモ−2−クロロ−フェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシ−エトキシ)−アミド硫酸水素塩及びキャリアマトリックスを含み、該キャリアマトリックスは、本質的に以下の群:
(a)D−α−トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシナート、
(b)ポリグリコール化グリセリド、
(c)ポリエチレングリコール(PEG)、及び
(d)硬性脂肪、
から選択される少なくとも一つの医薬的に許容されるキャリアからなり、
該6−(4−ブロモ−2−クロロ−フェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシ−エトキシ)−アミド硫酸水素塩が該キャリアマトリックス内に分散されている、医薬組成物。
【請求項2】
前記キャリアマトリックスが、本質的に以下の群:
a.D−α−トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシナート、
b.ポリグリコール化グリセリド、及び
c.ポリエチレングリコール、
から選択される少なくとも一つのグループからなる、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記キャリアマトリックスが、本質的に以下:
a.D−α−トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシナート、及び
b.ポリグリコール化グリセリド、
の一つまたは両方からなる、請求項1または請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記キャリアマトリックスが、D−α−トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシナートまたはラウロイルマクロゴール32グリセリドである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記キャリアマトリックスが、D−α−トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシナートとラウロイルマクロゴール32グリセリドとの混合物であり、該ラウロイルマクロゴール32グリセリドが、該組成物中の該キャリアマトリックス成分の重量で約30〜55%を占める量存在する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記キャリアマトリックスが、D−α−トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシナートである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記D−α−トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシナートが、該組成物の重量で約65〜95%を占める量存在する、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
組成物中の6−(4−ブロモ−2−クロロ−フェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシ−エトキシ)−アミド硫酸水素塩の全量の重量で90%超がキャリアマトリックス内に分散されている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記組成物が、6−(4−ブロモ−2−クロロ−フェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシ−エトキシ)−アミド硫酸水素を重量で5〜30%含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記組成物が、常温で半固体または固体である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
6−(4−ブロモ−2−クロロ−フェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシ−エトキシ)−アミド硫酸水素塩が、キャリアマトリックスを含む相の全体に分布する微細に分割された粒子状として分散されている、請求項1〜10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
(i)15〜25部の6−(4−ブロモ−2−クロロ−フェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシ−エトキシ)−アミド硫酸水素塩、及び
(ii)75〜85部のビタミンE−TPGSを含有し、
ここで、部は重量部で、部の合計(i)+(ii)=100であり、
該6−(4−ブロモ−2−クロロ−フェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシ−エトキシ)−アミド硫酸水素塩が該ビタミンE−TPGS中に分散され、該組成物が常温で半固体か固体である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項13】
(i)18〜22部の6−(4−ブロモ−2−クロロ−フェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシ−エトキシ)−アミド硫酸水素塩、及び
(ii)78〜82部のビタミンE−TPGSを含有し、
ここで、部はいずれも重量部であり、合計部:(i)+(ii)=100であり、
該6−(4−ブロモ−2−クロロ−フェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシ−エトキシ)−アミド硫酸水素塩が該ビタミンE−TPGS中に分散され、該組成物が常温で半固体又は固体である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項14】
(i)19〜21部の6−(4−ブロモ−2−クロロ−フェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシ−エトキシ)−アミド硫酸水素塩、及び
(ii)79〜81部のビタミンE−TPGSを含有し、
ここで、部はいずれも重量部であり、合計部:(i)+(ii)=100であり、
該6−(4−ブロモ−2−クロロ−フェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシ−エトキシ)−アミド硫酸水素塩は該ビタミンE−TPGS中に分散され、該組成物が常温で半固体か固体である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項15】
経口用カプセル組成物である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
a.キャリアマトリックスの成分を混合し、溶融する工程、
b.均一混合物を得るために薬物を該キャリアマトリックスに混合する工程、
c.工程(b)の生成物をカプセルに満たし、該混合物を冷却して該カプセル内に粘性液体、半固体状、又は固体状塊を形成させる工程、
を含む、請求項1に記載の医薬組成物の調製方法。
【請求項17】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の医薬組成物の投与を含む、6−(4−ブロモ−2−クロロ−フェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシ−エトキシ)−アミド硫酸水素塩により治療可能な疾患にかかっている温血動物(好ましくはヒト)の治療方法。
【請求項18】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の医薬組成物の投与を含む、温血動物(好ましくはヒト)の癌の治療方法。
【請求項19】
6−(4−ブロモ−2−クロロ−フェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシ−エトキシ)−アミド硫酸水素塩で治療可能な疾患の治療において薬剤として用いる、請求項1〜15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
癌の治療において薬剤として用いる、請求項1〜15のいずれか一項に記載の医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−515455(P2011−515455A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501300(P2011−501300)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際出願番号】PCT/GB2009/050293
【国際公開番号】WO2009/118562
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(300022641)アストラゼネカ アクチボラグ (581)
【出願人】(506125971)アレイ・バイオファーマ・インコーポレーテッド (10)
【Fターム(参考)】