説明

半導体ならびに半導体を生産する装置および方法

本発明は、一般に、半導体、半導体内部の材料層、半導体の生産方法、および半導体生産用の製造装置に関する。本発明による半導体は、表面を有してレーザーアブレーションによって生産される少なくとも1つの層を備え、生成される均一な表面積が少なくとも0.2dm2の領域を含み、パルスレーザビームが当該レーザービームを反射するための少なくとも1つのミラーを有する回転式光学スキャナで走査される超短パルスレーザーデポジションを用いることによって、層が生成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、半導体、半導体および集積回路の材料層、半導体の生産方法、および半導体生産用の製造装置に関する。特に、本発明は、独立クレームのプリアンブルに開示される内容に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体は、大部分の電子機器において用いられる。半導体の従来の使用は、例えばトランジスタおよび、メモリーやプロセッサのような集積回路を含むPCボードに、電子部品を提供することを含んでいた。半導体は、通常シリコン基板上に製造される。他の半導体、導体および絶縁材料、おそらくまた、シリコン基板上に生成される光学材料、そして、機能的な半導体回路/部品は、パターニングによって作られて、層を配線している。
【0003】
しかしながら、半導体のために新しい種類のニーズが進化した。電子平面ディスプレイおよび他の最新のユーザー・インターフェースは、重量において軽くしかも日常的な取り扱いのために堅牢でなければならない大型の回路を必要とする。シリコン基板に基づく半導体回路は、しかしながら、大型の用途にはあまりに高コストであり、また、必要なほど堅牢ではない。
【0004】
他の、低コストの材料を基材に使用して、薄膜層として半導体を提供することによって、半導体回路を生産することが示唆された。基材は、例えばガラスまたはプラスチックさらにはファイバー材料でさえ可能である。この種の技術は、重量がより軽く、機械的ストレスの影響を受けない大型半導体回路を許容する。特別な特性を有する他の半導体材料を使用することも、可能である。しかしながら、現在の技術では、大型でかつ工業的な分量の、充分高品質な材料層を生産する可能性はなかった。また、半導体層の非等質性は、半導体の非理想性能を生じさせる。
【0005】
出願人は、半導体の生産にレーザー低温アブレーションを使用することの可能性を調査した。近年において、レーザー技術の相当な進歩は、半導体ファイバに基づき、従って、いわゆる低温アブレーション法における前進を支持する非常に高性能なレーザー・システムを生産する手段を提供した。低温アブレーションは、例えばピコ秒レンジ内という短期間の高エネルギー・レーザーパルスを形成して、ターゲット材の表面にパルスを導くことに基づく。プラズマプルームは、従って、レーザービームがターゲットに届く領域からアブレーションされる。低温アブレーションの適用は、例えばコーティングおよび機械加工を含む。
【0006】
新規な低温アブレーションを用いるとき、コーティング、薄膜生産および切断/溝切り/彫刻等にともなう、質的および生産速度に関する問題は、レーザー出力を上げることおよびターゲット上のレーザー光のスポットサイズを小さくすることによってアプローチされてきた。しかしながら、出力上昇のほとんどはノイズに消費された。いくつかのレーザー製造業者はレーザー出力に関する問題を解決したが、質的および生産速度に関する問題は依然として残っていた。コーティング/薄膜、および切断/溝切り/彫刻等の代表的サンプルは、繰り返し速度が低く、走査幅が狭く、また、大きい物体について特に問題となるような工業的な実現可能性を超えた長い作業時間をかけることによってのみ、生産可能であった。
【0007】
パルスのエネルギー容量が原因で、パルスの出力は、パルス持続時間が短くなると上昇するが、この問題は、レーザーパルス持続時間が短くなるにつれて重大さが増す。この問題は、低温アブレーション法にはあてはまらないが、ナノ秒パルスレーザーでさえ重大さが発生する。
【0008】
パルス持続時間が、フェムト秒スケールさらにはアト秒スケールまで短くなると、この問題はほとんど解決できない。例えば、10〜15psのパルス持続時間を有するピコ秒レーザーシステムにおいて、レーザーの全出力が100Wで、繰り返し速度が20MHzの場合、パルスエネルギーは、10〜30μmスポットについて5μJである。このようなパルスに耐えられるファイバーは、本発明者らが知る限り本願の優先日において利用不可能である。
【0009】
先行技術のレーザー処理システムは、多くの場合、振動しているミラーに基づく光学スキャナを含む。この種の光学スキャナは、例えば文書DE10343080に開示されている。振動しているミラーは、ミラーと平行な軸に対して2つの決められた角度の間で振動(揺動)する。レーザービームがミラーの方向を目指すとき、レーザービームはミラーのその瞬間の位置次第である角度によって反射される。振動しているミラーは、従って、レーザービームを、ターゲット材の表面で1本の線の位置に反射または「走査」する。
【0010】
振動しているスキャナまたは「ガルバノスキャナ」の実施例は、図1aに例示される。これは2つの振動しているミラーを有し、一方はX軸に関してビームを走査し、他方は直交するy軸に関してビームを走査する。
【0011】
生産速度は、繰り返し速度または繰り返し周波数に正比例する。一方、公知のミラーフィルムスキャナ(ガルバノスキャナまたは前後に揺動するタイプのスキャナ)は、前後の動きによって特徴づけられるデューティサイクルを行うが、デューティサイクルの両端でのミラーの停止および、折り返し点における加減速および瞬間停止にはいくらか問題があり、これはすべて、スキャナとしてのミラーの利用可能性を制限し、特に走査幅も制限する。ガルバノスキャナを用いる本コーティング方法は、最大でも10cm、好ましくはそれ以下の走査幅を生成することができる。繰り返し速度を増して生産速度を高めようとすると、加減速が、走査範囲を狭めるかまたは放射分布を不均一にし、これにより、放射がミラーの加速および/または減速を介してターゲットをヒットするとき、ターゲットでプラズマが発生する。
【0012】
従来のガルバノスキャナは、約2〜3m/sの典型的最大速度、実際には約1m/sでレーザービームを走査するために使用される。単にパルス繰り返し速度を増すことによってコーティング/薄膜生産速度を高めようとすると、上述した公知のスキャナは、制御しない方法で、kHz範囲の低パルス繰り返し速度で既に設けられたターゲット領域のスポットにパルスを重ねる。繰り返し速度が2MHzであると、40〜60の連続パルスでさえ重なる。このような状況におけるスポット111で重なりが、図1bに例示される。
【0013】
最悪の場合、このようなアプローチは、プラズマの代わりに、少なくともプラズマ中に粒子を形成する、ターゲット材からの粒子の放出をもたらす。一旦いくつかの連続したレーザーパルスが、ターゲット表面の同じ位置に導かれると、蓄積効果がターゲット材を不均一に侵食し、ターゲット材の加熱を誘導することができ、そして、低温アブレーションの利点は失われる。
【0014】
同じ問題はナノ秒レンジのレーザーにあてはまり、高エネルギーで長続きするパルスのため、この問題は当然さらに厳しい。ここで、ターゲット材の加熱は常に発生し、ターゲット材の温度はほぼ5000Kまで上昇する。従って、ナノ秒レンジの1つの単一パルスでさえ、上述した問題をともないターゲット材を大幅に侵食する。
【0015】
公知の技術において、ターゲットは、不均一に消耗するか、容易にフラグメント(断片)化して、プラズマ品質を劣化させるかもしれない。従って、このようなプラズマでコーティングされる表面もまた、プラズマの有害な影響を被る。表面は、フラグメントを含むかもしれず、プラズマは、このようなコーティング等を形成するには不均一に分布したものかもしれず、これは精度を要求する用途では問題であるが、欠陥がその用途の検出限界より下である例えば塗料または顔料については、問題ないかもしれない。
【0016】
現在の方法は、1回の使用でターゲットを消耗させ、そのため、同じターゲットは同じ表面からの更なる使用のためには利用不可能である。この問題は、ターゲット材を移動させ、および/または、これによりビームスポットを移動させることによって、ターゲットの新しい表面を利用することで対処されてきた。
【0017】
機械加工または作業関連用途において、いくらかのフラグメントを含む残留物または破片も、切断線を不均一で不適切にすることができ、これは例えば、流れ制御の穿孔で可能性がある。また、表面は、リリース(放出)されたフラグメントによって生じるランダムな凹凸のある外観を有するように形成されることがあり、これは半導体の製造には適切でないかもしれない。
【0018】
加えて、前後に動くミラーフィルムスキャナは、構造自体に、そして、ミラーが取り付けられ、および/または、ミラーを移動させるベアリングにも、負荷をかける慣性力を発生する。特にこのようなミラーが、操作設定が可能なほとんど極端な範囲で作動している場合、このような慣性は、ミラーの取り付けを徐々に弛めるかもしれず、また、製品の不均一な品質が繰返される可能性から分かるように、長いタイムスケールで設定のブレを導くかもしれない。停止と、動きの方向および関連する速度変化のため、このようなミラーフィルムスキャナは、アブレーションおよびプラズマ生成に使用されるには非常に限られた走査幅を有する。動作はいずれにしろ全く遅いが、有効なデューティーサイクルは全サイクルに対して比較的短い。ミラーフィルムスキャナを利用するシステムの生産性を向上させるという観点において、プラズマ生成速度は必須条件として遅く、走査幅は狭く、動作は長期間スケールでは不安定であり、しかし歩留まりは、プラズマへの、そしてその結果として、機械および/またはコーティングを介してプラズマに関連する製品への、不必要な粒子の放出に関連する可能性が非常に高い。
【0019】
現在の高度な技術のコーティング方法も、ナノ秒レンジであれ低温アブレーションレンジ(ピコ秒レーザー、フェムト秒レーザー)であれレーザーアブレーションに関する現在のコーティング技術も、より大きい表面を備えたガラス製品の工業規模的コーティングのためのいかなる実行可能な方法も提供することができない。現在のCVDコーティング技術およびPVDコーティング技術は、バッチ式のコーティングプロセスのため高真空状態を必要とし、従って、半導体の工業規模的生産には実行可能でない。さらに、コーティングされる材料(対象材)とアブレーションされるコーティング材料との間隔は長く、典型的には50cmを超え、そのためコーティングチャンバは大きく、真空ポンプの排気期間およびエネルギーを消費する。このような大容量真空チャンバは、コーティングプロセス自体においてコーティング材料で容易に汚染もされ、連続的で時間のかかる洗浄プロセスを必要とする。
【0020】
現在のレーザーアシストコーティング方法において生産速度を高めようとすると、例えば、短絡欠陥要因、ピンホール、表面粗さの増加、光学的実施における光透過性の減少または消失、層表面の粒子状物質、腐蝕経路に影響を及ぼす表面構造内の粒子状物質、表面均一性の低下、接着性の低下、等のさまざまな欠陥が起きる。
【0021】
プラズマに関連する品質問題が、公知技術によるプラズマ発生を示す図2aおよび図2bに示される。レーザーパルス214は、ターゲット表面211に衝突する。このパルスは長いパルスであるので、深さhおよびビーム直径dは同じ強度であり、パルス214の熱は、衝突スポット領域の表面を加熱するだけでなく、表面211の下方を深さhより深くまで加熱する。この構造物は、熱ショックを経験し、緊張が高まり、破壊をともないながらFで示すフラグメントを生成する。この実施形態におけるプラズマは、品質が全く劣悪かもしれないため、分子およびそれらのクラスターも小さい点215で示してあり、これに関連して、図2bに示すガス216から形成される類似の構造の核またはクラスターも、数字215で示す。文字「o」は、ガスからおよび/または凝集を介して形成および成長できる粒子を示す。放出されたフラグメントは、凝縮および/または凝集(集塊)によって成長することもでき、これは点からFへおよびoからFへ湾曲した矢印で示される。湾曲した矢印は、プラズマ213からガス216へ、さらには粒子215および大サイズの粒子217への相転移も示す。図2bにおけるアブレーションプルームは、劣悪なプラズマ生成に起因してフラグメントFおよび、蒸気とガスから造られる粒子を含むことができるので、このプラズマは、プラズマ領域として連続的でなく、従って単一のパルスプルーム内で品質の変動が見られるかもしれない。組成および/または深さhより下方の構造における欠陥と、その結果としての深さの変動(図2a)とに起因して、図2bにおけるターゲット表面211は、更なるアブレーションのためにはもはや利用できず、いくらかの材料は利用可能であるにもかかわらずこのターゲットは無駄にされる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の目的は、先行技術の記載された不利な点が回避されまたは減少される、半導体ならびにそれを生産する装置および方法を提供することにある。
【0023】
本発明の目的は、従って、コーティング(被覆)された均一な表面積が少なくとも0.2dm2を含むように、パルスレーザーデポジションによって特定の表面を有する半導体用の層を生成するための技術を提供することである。
【0024】
本発明の第2の目的は、層の均一な表面積が少なくとも0.2dm2の領域を含むように、パルスレーザーデポジションによって生成された層を備える新規な半導体製品を提供することである。
【0025】
本発明の第3の目的は、ターゲット材がいかなる微粒子も、すなわち、プラズマは純粋なプラズマであるか、または、フラグメントが仮に存在しても希で、しかも、前記ターゲットからアブレーションによって発生するプラズマのアブレーション深さより少なくとも小さい微粒子も、プラズマに全く形成しないこの種の微細なプラズマを、半導体製品に使用されるターゲットから実際にどのようにして生成するかという問題を解決することである。
【0026】
本発明の第4の目的は、基材を純粋なプラズマでコーティングするために、前記ターゲットからアブレーションによって発生するプラズマのアブレーション深さより大きな粒状断片(フラグメント)層のない高品質プラズマを用いて、半導体製品における層の均一な表面積をどのようにして生成するかを解決する少なくとも新規な方法および/または関連した手段を提供することである。
【0027】
本発明の第5の目的は、前記純粋なプラズマによってガラス製品の均一な表面積にコーティングの良好な粘着を提供することであり、その結果、粒状断片の存在または前記アブレーション深さより小さいそれらのサイズを制限することによって、粒状断片に運動のエネルギーを浪費することは抑制される。同時に、粒状断片は顕著には存在しないため、それらは核形成および凝縮関連の現象を経てプラズマプルームの等質性に影響を及ぼすことができる低温表面を形成しない。
【0028】
本発明の第6の目的は、大きな半導体本体に対してでさえ、工業的な方法で微細なプラズマ品質および幅広いコーティング幅と同時に幅広い走査幅をどのようにして提供するかという問題を解決するための少なくとも新規な方法および/または関連した手段を提供することである。
【0029】
本発明の第7の目的は、前述の本発明の目的に従う工業規模の適用を実現するために用いる高い繰り返し速度をどのようにして提供するかという問題を解決するための少なくとも新しい方法および/または関連する手段を提供することである。
【0030】
本発明の第8の目的は、第1から第7の目的に従う半導体製品を製造するために、層/表面の生成のための高品質プラズマをどのようにして提供するか、しかし必要なところに同じ優良なコーティング/薄膜を生成するデポジション段階において使用するためのターゲット材をまだ節約するかという問題を解決するための少なくとも新しい方法および/または関連する手段を提供することである。
【0031】
本発明の更なる目的は、半導体の層をどのようにして冷間加工および/または生成するかという問題を解決するために、前述の目的に従ってこの種の方法および手段を使用することである。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本発明は、大きい表面を備える半導体製品のための層を、工業的生産速度および1つ以上の技術的特徴に関する優れた品質を備えて生産することができるという驚くべき発見に基づいていて、ここでの技術的特徴は、パルスレーザビームがそのレーザービームを反射するための少なくとも1つのミラーを備える回転式光学スキャナで走査されることによる超短パルスレーザーデポジションを用いることによる、例えば光透過性、化学的耐性および/または耐摩耗性、引っ掻き耐性、耐熱性および/または伝導性、抵抗率、コーティング粘着性、自己洗浄特性、微粒子のないコーティング、ピンホールのないコーティング、および電子導電性を含む。さらに、本方法は、ターゲット材が、高いコーティング結果を有するすでに供された材料の再使用を実現するようにアブレーションされるから、ターゲット材の経済的使用を達成する。本発明はさらに、低い真空条件で同時に高いコーティング特性を備える製品層の生産を達成する。さらに、必要なコーティングチャンバの容積は、競合する方法と比べて劇的に小さい。この種の特徴は、全体の設備コストを劇的に減少させて、コーティング生産速度を増加させる。多くの好ましい場合において、コーティング装置は、オンライン式の生産ラインに適合させることができる。
【0033】
より詳しくは、本発明の目的は、表面を有し、半導体の一部として使われる少なくとも1つの層を、レーザーアブレーションによって生産する方法であって、生成される表面積が少なくとも0.2dm2の領域を含み、パルスレーザビームが当該レーザービームを反射するための少なくとも1つのミラーを有する回転式光学スキャナで走査される超短パルスレーザーデポジションを用いることによって、コーティングが実行されることを特徴とする方法を提供することで、達成される。
【0034】
本発明はまた、表面を有し、レーザーアブレーションによって生産される少なくとも1つの層を備えた半導体であって、生成される均一な表面積が少なくとも0.2dm2の領域を含み、パルスレーザビームが当該レーザービームを反射するための少なくとも1つのミラーを有する回転式光学スキャナで走査される超短パルスレーザーデポジションを用いることによって、層が生成されていることを特徴とする半導体、に関する。
【0035】
本発明の実施形態は、従属クレームに記載されている。
【0036】
この特許出願において、用語「光」は、低温アブレーションのために使用可能ないかなる電磁放射も意味し、また、「レーザー」は、コヒーレントな光またはこの種の光を生成する光源を意味する。「光」または「レーザー」は、従って、いかなる形であれ光のスペクトルの可視部分に制限されない。
【0037】
この特許出願において、用語「超短パルスレーザーデポジション」は、ターゲット表面の特定の位置が、一度に1ns未満、好ましくは100ps未満の時間のレーザービームで放射されることを意味する。この種の露出は、ターゲットの同じ位置で繰り返されることができる。
【0038】
この特許出願において、用語「コーティング」は、基材上のいかなる厚みの形成材料層も意味する。コーティングは、従って、例えば1μm未満の厚みを有する薄膜を生成することも意味する。
【0039】
この特許出願において、用語「表面(面)」は、層の表面、コーティングを意味し、および/または、表面は外側表面でもよく、または、他の層/コーティング/基材とのインタフェースを形成してもよい。表面は、最終製品を達成するために更に処理されることができる半製品の表面でもよい。
【0040】
本発明の説明した利点および他の利点は、以下の詳細な説明から、そして図面を参照することにより明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
図1a、図1b、図2aおよび図2bは、先行技術説明においてすでに上記されているものである。
【0042】
図3は、フイルムレイヤ技術に基づく半導体の例示的なレイヤ(層構造)を示す。基材(基層、基板)360は、例えばガラスまたはプラスチックさらにはファイバー材料でさえあり、そして、基材の材料はまたフレキシブルである。ディスプレイのような光学回路において、反射防止膜(層)362が存在する。外表面を、クリーンで、環境ストレスから保護された状態に保つために、他のまたは付加的な層(レイヤ)を設けることもできる。基材360の内部表面に、半導体の回路レイアウトおよび回路分割に従ってパターン化される導電層(膜)364が存在する。導電層は、用途に応じて透明である。次に、導電層の上に、1つまたはいくつかの半導体層(膜)366が存在する。最後に、更なる配線を提供する別の導電層(膜)368が存在する。第2導電層の表面に、付加的な保護層を設けることもできる。
【0043】
半導体が、半導体基材に基づいて生産される場合、同様の層が同様の順序で存在するが、しかし、その生産は、半導体基材から始めて、その基材上に他の層を生成することによって行われる。
【0044】
図4は、材料をレーザーアブレーションで処理するための例示的なシステムを示す。レーザービームは、レーザービーム源44によって生成され、ターゲット(目標)に向けて回転式の光学スキャナ10で走査される。ターゲット47は、供給ロール48から巻き取りロール46へ巻き取られるバンドの形態を有する。ターゲットは、アブレーションの位置に開口部52を有するサポート板51によってサポートされる。しかしながら、ターゲットは、ターゲット材の回転シリンダのような、バンド以外のものでもよい。スキャナから受光されるレーザービーム49がターゲットに届くとき、材料はアブレーションされ、プラズマプルームが発生する。基材50は、プラズマプルームの内部に提供される。基材は、従って、ターゲット材の層(レイヤ)でコーティングされる。層(レイヤ)が、デポジション後に機械加工される場合、レーザービームによって行われることができる。
【0045】
レーザーアブレーションに、多くの他の代替となる構造および装置を提供することが可能である。例えば、基材の下から、または上から、あるいはその両方から、デポジションを提供することが当然可能である。透明シート上に設けられるターゲット材を使用することも可能である。この種の装置において、基材の非常に近くにターゲット材を設けて、レーザービームをシートの透明な一部を通してターゲット材に提供することが可能である。ターゲット材がシートの薄膜である場合、それは基材に向けてアブレーションされる。透明シート上のターゲット材をアブレーションすることによって、ターゲットシートは最初に生産されることができる。
【0046】
図5は、半導体用のレイヤを生産するための例示的な生産ライン装置を示す。この装置は、同じ処理室(チャンバ)510の中に、5台のレーザー処理装置571〜575を含む。処理装置の上方に、基材581〜585をラインに沿って搬送するコンベヤ591が存在する。各処理装置は、基材に特定の処理を提供する。処理装置は、層(レイヤ)を生成することができ、または、基材または生成されたレイヤのレーザー加工を提供することができる。当然、他のタイプの処理装置が、生産ラインの中に存在することもできる。異なる材料の層(レイヤ)が、同じ生産ラインの同じチャンバの中でデポジット(堆積)されることができることは、本発明の重要な効果である。おそらく必要なレーザー・パターニングを提供することさえ、可能である。全てまたは大部分の層(レイヤ)が同じチャンバ内で生成されるとき、半製品を取り扱うことによる混合汚染(コンタミネーション)または他の障害の危険度は、最小限である。
【0047】
次に、適切な回転スキャナの物理基礎および構造が記載される。
【0048】
本発明によれば、レーザーアブレーションによって特定の表面を有する半導体用の層(レイヤ)を生産する方法が、提供され、この方法は、コーティングされている表面積が少なくとも0.2dm2から成り、そして、パルスレーザビームがそのレーザービームを反射するための少なくとも1つのミラーを備える回転式光学スキャナで走査される、超短パルスレーザーデポジションを用いることによって、デポジション(堆積)が実行される。
【0049】
超短パルスレーザーデポジション(Ultra Short Laser Pulsed Deposition)は、しばしばUSPLDと略される。前記デポジションは、低温アブレーションとも呼ばれ、その特徴の1つは、例えば競合するナノ秒レーザーとは反対に、露出したターゲット領域からこの領域の周辺への熱移動は実際には起こらず、レーザーパルスエネルギーは、ターゲット材のアブレーション閾値を超えるのに依然充分である。パルスの長さ(パルス幅)は、典型的には50ps未満、例えば5〜30psすなわち超短であり、低温アブレーションの現象は、ピコ秒を用いて達成され、フェムト秒およびアト秒パルスレーザーでも達成される。レーザーアブレーションによってターゲットから気化した材料は、室温近くに保たれることができる基材上に堆積する。しかし、プラズマ温度は、露出したターゲット領域上で1,000,000Kに達する。プラズマ速度は、100,000m/sが得られるほど優れていて、従って、生成されるコーティング/薄膜のより良好な密着性に導く。本発明のより好ましい実施形態において、前記均一な表面積は、少なくとも0.5dm2を含む。本発明の更により好ましい実施形態において、前記均一な表面積は、少なくとも1.0dm2を含む。本発明は、0.5m2より大きい、例えば1m2以上の均一なコーティング表面積を有する製品のコーティングも、容易に達成する。このプロセスは、半導体用の大きい層表面を高品質プラズマでコーティングするために特に有益である。
【0050】
工業的な用途において、レーザー処理の高い効率を達成することが重要である。低温アブレーションにおいて、レーザーパルスの強度は、低温アブレーション現象を促進するために、予め定められた閾値を上回らなければならない。この閾値は、ターゲット材に依存する。高い処理効率および工業生産性を達成するために、パルスの繰返し速度は、例えば1MHz、好ましくは2MHz以上、より好ましくは5MHz以上の高さでなければならない。上述したように、ターゲット表面の同じ位置にいくつかのパルスを導かないことは有利である。その理由は、ターゲット表面の同じ位置にいくつかのパルスを導いた場合、粒子の堆積が劣悪な品質のプラズマを生じさせるターゲット材における蓄積効果を引き起こし、これにより、劣悪な品質のコーティングおよび薄膜、ターゲット材の望ましくない侵食、ターゲット材の加熱の可能性等が生じるからである。従って、処理の高い効率を達成するためには、レーザービームの高い走査速度を有することも必要である。本発明によれば、ターゲット表面のビーム速度は、通常、効率的な処理を達成する10m/sを超えなければならず、好ましくは50m/s、より好ましくは100m/sを超え、例えば2000m/sのような速度であるべきである。
【0051】
図6aは、本発明を実施する際に使用できる回転タービンスキャナの実施形態を示す。この実施形態によれば、回転式光学スキャナは、レーザービームを反射するための少なくとも3つのミラーを備える。本発明の一実施形態において、コーティング方法は、図6aに示されるポリゴンプリズムを使用する。ここで、ポリゴンプリズムは、表面21、22、23、24、25、26、27および28を有する。矢印20は、プリズムが、その対称軸線19の周りに回転できることを示す。図6aのプリズムの表面が、走査ラインを得るために有利に傾斜したミラー面であり、各ミラー面が、プリズムがその軸線の周りに回転することでそのミラー面上に入射する放射の方向を反射によって順番に変えるように配置されるとき、このプリズムは、回転スキャナすなわちタービンスキャナの一部として、本発明の実施形態による方法においてその放射ラインに適用可能である。図6aは、8つの表面を示すが、しかしそれよりかなり多くの、数ダースまたは数百の表面があってもよい。図6aは、ミラーが軸線に対して同一の傾斜角度であることも示すが、特にいくつかのミラーを含む実施形態では、特定の範囲内で段階化することによって、図6bに示すような作業スポットでの特定の段階的なシフトがターゲット上で得られるように、前記角度は段階的に変化してもよい。本発明の異なる実施形態は、レーザービーム反射ミラーの例えば寸法、形状および数に関して、種々のタービンスキャナミラーの構成に限定されない。
【0052】
タービンスキャナ(図6a)の構造は、中心軸線19の周りに対称的に配置された少なくとも2つのミラー、好ましくは6つ以上のミラー、例えば、8つのミラー(21〜28)を含む。タービンスキャナのプリズム21が中心軸19の周りで回転する(20)につれて、ミラーは、スポット29から反射される放射、例えばレーザービームを、常に同一方向からスタートする(図6b)ライン状領域へと正確に導く。タービンスキャナのミラー構造は、傾斜されなくてもよいし(図7)、または、所望の角度、例えば図8aおよび図8b、に傾斜されてもよい。タービンスキャナの寸法およびプロポーション(比率)は、自由に選択されることができる。コーティング方法の1つの有利な実施形態において、タービンスキャナは、周囲30cm、直径12cm、高さ5cmを有する
【0053】
本発明の実施形態において、タービンスキャナのミラー21〜28が、中心軸線19に対して好ましくは斜めに配置されることは、レーザービームがスキャナシステムに容易に導かれるから、有利である。
【0054】
本発明の実施形態により使用されるタービンスキャナ(図6a)において、ミラー21〜28は、1回転の間にミラー21〜28の数だけ多くのライン状領域(図6a)29が走査されるように、互いに食い違うことができる。
【0055】
本発明の一実施形態によれば、回転光学部材は、ここでは、レーザービームを反射するための少なくとも1つのミラーを備えたスキャナを意味する。この種のスキャナおよびその適用は、フィンランド国特許出願FI20065867に記載されている。図9は、1つの回転ミラーを有するスキャナ910を示す。ミラー914は、回転軸線916の周りを回転するように構成される。図9は、ミラーの側面図および端面図も示す。ミラーは、回転軸線916に関してわずかに傾けられたシリンダの形状を有する。ミラーは、その形状をより視覚化するために、傾けられたシリンダとして図示され、ミラーの端面は従って、傾斜している。しかしながら、回転軸線に対して直交する端面を有することも可能である。光学スキャナは、回転軸線上に、ミラーが接続される軸を有する。ミラーは、例えば端板またはスポーク(図示されない)によって回転軸に接続されてもよい。
【0056】
図10aは、隣接するパルスとわずかに重なるターゲット材のアブレーションを達成する速度で回転スキャナを用い、先行技術のガルバノスキャナと関連した問題を回避する、ピコ秒レンジのパルスレーザーによってアブレーションされたターゲット材を示す。図10bは、アブレーションされた材料の一部の拡大図を示し、材料のx軸およびy軸上の円滑で制御されたアブレーション、従って、高品質で粒子のないプラズマさらに、高品質の薄膜およびコーティングの発生を明らかに示す。図10cは、1つまたは2〜3のパルスによって達成される単一のアブレーションスポットの可能なx−y寸法の1つの実施例を示す。ここで、本発明は、アブレーションされたスポットの幅がアブレーションされたスポットの深さより常に非常に大きいように、材料のアブレーションを実現することが明らかに分かる。理論的には、可能な粒子(それらが発生する場合)は、スポット深さの最大サイズを有することができる。回転スキャナは、特にコーティングされる大きい表面積を有する基材のために有益な、大きな走査幅と同時に大きな生産速度で、高品質で粒子のないプラズマの生成を達成する。さらにまた、図10a、図10bおよび図10cは、現在の技術とは反対に、すでにアブレーションされたターゲット材領域が、高品質のプラズマの新たな生成のためにアブレーションされることができ、従って、コーティング/薄膜生産コスト全体が劇的に低減することを明らかに示す。
【0057】
図11は、ピコ秒USPLDレーザーを使用し、かつ、レーザーパルスをタービンスキャナで走査することによって、コーティングが実行される実施例を示す。ここで、走査速度は30m/s、レーザースポット幅は30μmである。この例では、隣接するパルス間に1/3の重なりがある。
【0058】
次に、半導体の層を形成するためのターゲット材として適切ないくつかの材料が記載される。導電性の透明材料の層は、例えば、インジウムスズ酸化物、アルミニウムドープト酸化亜鉛、酸化スズ、またはフッ素ドープト酸化スズでできていることが可能である。導電性の不透明材料の層は、例えば、アルミニウム、銅または銀でできていることが可能である。半導体材料の層は、例えば、シリコン、ゲルマニウム・インジウムスズ酸化物、アルミニウムドープト酸化亜鉛、酸化スズ、またはフッ素ドープト酸化スズでできていることが可能である。反射防止コーティングの層は、例えば、窒化ケイ素または酸化チタンでできていることが可能である。しかしながら、これは、一般的に使用される材料のいくつかの例である。次に、いくつかの更なる変形例が、更に詳細に述べられる。
【0059】
有利な金属酸化物は、例えば、酸化アルミニウムおよびその、例えばアルミニウムチタン酸化物(ATO)のような異なる複合物(コンポジット)を含む。抵抗率、高い品質をもたらす高い光透過性のため、インジウムスズ酸化物(ITO)は、コーティングされた表面のウォームアップにコーティングが使用可能な用途で、特に好まれる。優れた光学特性、耐磨耗特性をもたらす異なる酸化物の他の例である、イットリウム安定化酸化ジルコニウムが、ソーラーコントロールに用いられることも可能である。
【0060】
いくつかの更なる金属も、半導体の用途に適用されることができる。ここで、金属から派生した薄膜の光学特性は、バルク金属の光学特性とはいくらか異なる。超薄膜(厚さ100Å(10nm)未満)において、バリエーションが、光学定数の問題のある概念、コーティング(薄膜)の品質および表面粗さ、従って重要な技術的特徴を作る。この種のコーティングは、本発明の方法によって容易に生成されることができる
【0061】
本出願に用いられる誘電材料は、フッ化物(例えばMgF2、CeF3)、酸化物(例えばAI23、TiO2、SiO2)、硫化物つまりスルフィド(例えばZnS、CdS)および、ZnSe、ZnTeのような組み合わせた合成物を含む。誘電体光学材料の本質的で共通の特徴は、スペクトルのいくつかの関連部分における非常に低い吸収性(α<103/cm)であり、この領域で、誘電体光学材料は、基本的に透明である(例えば、可視光領域および赤外線領域でのフッ化物および酸化物、赤外線領域でのカルコゲニド)。誘電体コーティングは、本発明の方法によって、有利に生成されることができる。
【0062】
透明導電膜は、非常に薄い金属または半導体酸化物で作られることができ、ごく最近では、例えば半導体用の前部電極におけるインジウム窒化ガリウムのような、窒化物からさえ作られることができる。
【0063】
金属が、Au、Pt、Rh、Ag、Cu、FeおよびNiを含む透明導電体として、従来用いられていた。導電性および透明性を同時に最適化することは、膜の形成(フィルムデポジション)に相当な試練を与える。1つの極端では、相当な透明度であるがしかし高い電気抵抗の不連続な島部分が存在し、他の極端では、すぐに融合して連続的になる、高い導電性と低い透明性とをもたらす膜が存在する。これらの理由により、SnO2、In23、CdOのような半導体酸化物および、より共通に、それらの合金(例えばITO)、ドープされたIn23(Sn、Sbによって)、そして、ドープされたSnO2(F、Cl、等によって)が使われる。
【0064】
金属酸化物被膜(コーティング)は、活性酸素雰囲気中で1種類または複数種類の金属をアブレーションことによって、あるいは、酸化物材料をアブレーションすることによって、生成されることが可能である。後者の可能性でさえ、反応性(活性)酸素中のアブレーションを導入することによって、コーティング品質および/または生産速度を強化することが可能である。窒化物を生成するとき、コーティング品質を強化するために、窒素雰囲気または液体アンモニアを使用することが、本発明によれば可能である。発明の代表例は、窒化カーボン(C34フィルム)の生産である。
【0065】
本発明の他の実施形態によれば、半導体の層の前記均一な表面積は、70%以上のsp3ボンディングで90以上の炭素原子百分率を有する炭素材料によって生成される。この種の材料は、例えば、アモルファス・ダイヤモンド、ナノ結晶ダイヤモンドまたは、擬似単結晶ダイヤモンドさえ含む。さまざまなダイヤモンドコーティングは、ガラス製品に、優れたトライボロジーの、耐摩耗および耐引っ掻きの特性を与えるが、しかし、熱伝導率および熱抵抗も増加させる。ガラス上のダイヤモンドコーティングは、高品位すなわち結晶構造である場合、半導体における特別の選択によって使用されることができる。
【0066】
本発明の他の実施形態によれば、前記均一な表面積は、カーボン、窒素および/またはホウ素を異なる比率で含む材料で作られてもよい。この種の材料は、窒化ホウ素炭素、窒化炭素(C22およびC34)、{ちっか}窒化ホウ素、炭化ホウ素、またはB−N、B−C、C−Nフェーズの異なる混成フェーズを含む。前記材料は、低比重を有するダイヤモンドのような材料であり、極めて耐磨耗性であり、通常、化学的に不活性である。例えば、半導体のコーティングとして、窒化炭素は、ガラス製品を腐食条件から保護するために使用されることができる。
【0067】
更に可能な材料は、インジウム窒化ガリウム、銅インジウムセレン化ガリウム、酸化シリコン、6H炭化ケイ素(六角)およびテルル化カドミウムを含む。
【0068】
2つの異なる材料をアブレーションすることによって半導体層/表面を生成するが可能であることも注意すべきである。
【0069】
発明の一実施形態によれば、半導体製品の外表面は、単一のコーティングのみで被覆されている。本発明の他の実施形態によれば、半導体の前記均一な表面は、多層コーティングで被覆されている。いくつかのコーティングは、異なる理由のために生成されることができる。加えて、多層コーティングは、前記構造なしでは達成できないいくつかの機能を備えていることができる。本発明は、単一のコーティングチャンバ内、または、隣接するチャンバ内でいくつかのコーティングの生産を達成する。
【0070】
本発明はさらに、1つの複合材料ターゲットまたは、1つ以上の物質から成る2つ以上のターゲット材を同時にアブレーションする半導体に、複合した層/コーティングの生産を達成する。
【0071】
アブレーションされた層の適切な厚さは、例えば20nm〜20μm、好ましくは100nm〜5μmである。本発明は一方で分子スケール・コーティングの準備を達成するので、コーティングの厚さは、100μm以上のようなあまり厚いコーティングに限られてはならない。
【0072】
発明によれば、少なくとも0.2dm2から成る均一な表面積がレーザーアブレーションによってコーティングされていて、そのコーティングが、パルスレーザビームがそのレーザービームを反射するための少なくとも一つのミラーを備える回転式光学スキャナで走査される超短パルスレーザーデポジションを用いることによって実施されている、特定の表面を備える半導体製品もまた提供される。これらの製品で受け取られる利点は、方法の前述の説明において更に詳細に記載されている。
【0073】
本発明のより好ましい実施形態において、前記均一な表面積は、少なくとも0.5dm2を有する。本発明のさらにより好ましい実施形態において、前記均一な表面積は、少なくとも1.0dm2を有する。本発明は、0.5m2より大きい例えば1m2以上の均一にコーティングされた表面積有する製品も、容易に実現する。
【0074】
本発明の一実施形態によれば、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて100μm2の領域から走査した場合、前記均一な表面積上の生成されたコーティングの平均表面粗さは、100nm未満である。
【0075】
本発明の他の実施形態によれば、前記均一な表面積上の生成されたコーティングの光透過率は、88%以上、好ましくは90%以上、最も好ましくは92%以上である。場合によっては、光透過性は、98%を上回ることができる。
【0076】
本発明のさらに別の実施形態によれば、前記均一な表面積は、当該均一な表面積上のコーティングの最初の50%が、1000nm、好ましくは100nm、最も好ましくは30nmを上回る直径を有するいかなる粒子も含まないようにして、コーティングされる。
【0077】
本発明の一実施形態によれば、前記層は、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物またはこれらの混合物を含む。可能な金属は、本発明のコーティング法の説明の初期に記載された。
【0078】
本発明の他の実施形態によれば、半導体製品の前記層は、70%以上のsp3ボンディングで90以上の炭素原子百分率を有する炭素材料で提供される。可能な炭素材料は、本発明のコーティング法の説明の初期に記載された。
【0079】
本発明のさらに別の実施形態によれば、前記均一な表面積は、炭素、窒素および/またはホウ素を異なる比率で含む。この種の材料は、本発明のコーティング法の説明の初期に記載された。
【0080】
本発明のさらに別の実施形態によれば、製品の前記均一な表面積は、有機高分子材料でコーティングされる。この種の材料は、本発明のコーティング法の説明の初期に記載された。
【0081】
本発明の好ましい一実施形態によれば、ガラス製品の均一な表面上の前記コーティングの厚さは、20nm〜20μmの間、好ましくは100nm〜5μmの間にある。本発明は、1またはいくつかの原子層コーティング、および、100μmを超える例えば1mmのような厚膜コーティングを有するコーティングガラス製品も実現する。
【0082】
この特許明細書において、レーザーアブレーション装置の他の各種要素の構造については、上述の説明および当業者の一般的知識を使用して行うことができるので、更に詳細な説明は記載されない。
【0083】
上に、本発明による問題解決のいくつかの実施形態だけが記載された。本発明による原理は、当然、クレームにより定義される範囲内で、例えば実施の詳細および使用の範囲の修正により、修正されることができる。
【0084】
例えば、半導体のほんの少しの構造だけが、実施例として述べられた。共通に半導体材料、導電性材料、絶縁材料および透明材料として異なる材料の1つまたはいくつかの層を含む、多くの他のタイプの代替構造が存在する。このような他のタイプの構造の半導体に本発明を適用するために使用することも、当然可能である。
【0085】
大型の半導体について説明したが、当然、製造された大型半導体は、より小さい部品に分割されることが可能である。アブレーションプロセスにおけるマスクを使用することによって、その分割を行うことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1a】最高水準の技術である低温アブレーション・コーティング/薄膜生産において、機械加工および他の仕事関連用途において用いられる例示的なガルバノスキャナ装置の図である。
【図1b】従来技術のガルバノスキャナがレーザー光の走査に用いられ、2MHzの繰り返し速度でパルスが何重にも重なっている状況を示す図である。
【図2a】公知技術のプラズマに関連する問題を示す図である。
【図2b】公知技術のプラズマに関連する更なる問題を示す図である。
【図3】半導体のために生成される層の例を示す図である。
【図4】パルスレーザー技術を使用して半導体の層を生成するための本発明による装置の例を示す図である。
【図5】パルスレーザー技術を使用して半導体のいくつかの層を生成するための本発明による装置の例を示す図である。
【図6a】本発明による方法に用いられる1つの可能なタービンスキャナミラーを示す図である。
【図6b】図6aに示す例の各ミラーによって達成されるアブレーションビームの動きを示す図である。
【図7】本発明により用いられる1つの可能な回転スキャナを通したビームの誘導を示す図である。
【図8a】本発明により用いられる他の可能な回転スキャナを通したビームの誘導を示す図である。
【図8b】本発明により用いられる更に可能な回転スキャナを通したビームの誘導を示す図である。
【図10a】レーザービームを回転スキャナ(タービンスキャナ)で走査することによりターゲット材がアブレーションされた、本発明による実施形態を示す図である。
【図10b】図10aのターゲット材の一部を示す図である。
【図10c】図10bのターゲット材のアブレーションスポットを示す図である。
【図11】回転スキャナでターゲット材を走査およびアブレーションする、本発明による方法を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を有し、半導体の一部として使われる少なくとも1つの層を、レーザーアブレーションによって生産する方法であって、
生成される表面積が少なくとも0.2dm2の領域を含み、パルスレーザビームが当該レーザービームを反射するための少なくとも1つのミラーを有する回転式光学スキャナで走査される超短パルスレーザーデポジションを用いることによって、コーティングが実行されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記表面積が、均一な表面積であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記表面積は、少なくとも0.5dm2の領域を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記表面積は、少なくとも1.0dm2の領域を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記レーザーデポジションに用いるパルス周波数が、少なくとも1MHzであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
半導体または導電層の表面が、短絡する欠陥要因を含まないことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記レーザーアブレーションが、10-1〜10-12気圧(約100hPa〜約10-9hPa)の真空下、好ましくは10-1〜10-4気圧(約100hPa〜約10-1hPa)の真空下で実行されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
ターゲット材と、生成される前記均一な表面積との間の距離が、25cm未満、好ましくは15cm未満、最も好ましくは10cm未満であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ターゲット材のアブレーションされた表面が、欠陥のないコーティングを生成するために繰り返しアブレーションされることができることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
原子間力顕微鏡(AFM)を用いて100μm2の領域から走査した場合、前記均一な表面積上の生成された層の平均表面粗さが、100nm未満であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記均一な表面積上の生成された層の光透過率が、88%以上、好ましくは90%以上、最も好ましくは92%以上であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記均一な表面積上の前記コーティングの最初の50%が、1000nm、好ましくは100nm、最も好ましくは30nmを超える直径の粒子を含まないようにして、前記層の表面積が生成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
導電性の透明材料の層が、インジウムスズ酸化物、アルミニウムドープト酸化亜鉛、酸化スズ、またはフッ素ドープト酸化スズでできていることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
導電性の不透明材料の層が、アルミニウムまたは銅でできていることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
半導体の層が、シリコン、ゲルマニウム・インジウムスズ酸化物、アルミニウムドープト酸化亜鉛、酸化スズ、またはフッ素ドープト酸化スズでできていることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
反射防止コーティングの層が、窒化ケイ素または酸化チタンでできていることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
層が、少なくとも80%の金属酸化物またはその組成物を含むことを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
層が、70%以上のsp3ボンディングで90以上の炭素原子百分率からなる炭素材料でできていることを特徴とする請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記層の材料が、炭素、窒素および/またはホウ素を異なる比率で含むことを特徴とする請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記半導体の外表面が、多層コーティングで被覆されていることを特徴とする請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
層の厚さが、20nm〜20μm、好ましくは100nm〜5μmであることを特徴とする請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
表面を有し、レーザーアブレーションによって生産される少なくとも1つの層を備えた半導体であって、
生成される均一な表面積が少なくとも0.2dm2の領域を含み、パルスレーザビームが当該レーザービームを反射するための少なくとも1つのミラーを有する回転式光学スキャナで走査される超短パルスレーザーデポジションを用いることによって、層が生成されていることを特徴とする半導体。
【請求項23】
前記表面積が、均一な表面積であることを特徴とする請求項22に記載の半導体。
【請求項24】
前記均一な表面積は、少なくとも0.5dm2の領域を含むことを特徴とする請求項23に記載の半導体。
【請求項25】
前記均一な表面積は、少なくとも1.0dm2の領域を含むことを特徴とする請求項23に記載の半導体。
【請求項26】
原子間力顕微鏡(AFM)を用いて100μm2の領域から走査した場合、前記均一な表面積上の生成されたコーティングの平均表面粗さが、100nm未満であることを特徴とする請求項23〜25のいずれか1項に記載の半導体。
【請求項27】
前記均一な表面積上の生成されたコーティングの光透過率が、88%以上、好ましくは90%以上、最も好ましくは92%以上であることを特徴とする請求項23〜26のいずれか1項に記載の半導体。
【請求項28】
前記均一な表面積上の前記コーティングの最初の50%が、1000nm、好ましくは100nm、最も好ましくは30nmを超える直径の粒子を含まないようにして、前記表面積がコーティングされることを特徴とする請求項23〜27のいずれか1項に記載の半導体。
【請求項29】
導電性の透明材料の層が、インジウムスズ酸化物、アルミニウムドープト酸化亜鉛、酸化スズ、またはフッ素ドープト酸化スズでできていることを特徴とする請求項23〜28のいずれか1項に記載の半導体。
【請求項30】
導電性の不透明材料の層が、アルミニウム、銅または銀を含むことを特徴とする請求項23〜29のいずれか1項に記載の半導体。
【請求項31】
半導体の層が、シリコン、ゲルマニウム・インジウムスズ酸化物、アルミニウムドープト酸化亜鉛、酸化スズ、またはフッ素ドープト酸化スズを含むことを特徴とする請求項23〜30のいずれか1項に記載の半導体。
【請求項32】
反射防止コーティングの層が、窒化ケイ素または酸化チタンを含むことを特徴とする請求項23〜31のいずれか1項に記載の半導体。
【請求項33】
前記層が、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物またはこれらの混合物を含むことを特徴とする請求項23〜32のいずれか1項に記載の半導体。
【請求項34】
前記層が、70%以上のsp3ボンディングで90以上の炭素原子百分率からなる炭素材料を含むことを特徴とする請求項23〜33のいずれか1項に記載の半導体。
【請求項35】
前記層の材料が、炭素、窒素および/またはホウ素を異なる比率で含むことを特徴とする請求項23〜34のいずれか1項に記載の半導体。
【請求項36】
半導体の外表面が、多層コーティングで被覆されていることを特徴とする請求項23〜35のいずれか1項に記載の半導体。
【請求項37】
半導体用の前記層の厚さが、20nm〜20μm、好ましくは100nm〜5μmであることを特徴とする請求項23〜36のいずれか1項に記載の半導体。
【請求項38】
半導体が、電子ディスプレイ、発光ダイオードおよび/または集積回路の一部であることを特徴とする請求項23〜37のいずれか1項に記載の半導体。
【請求項39】
表面を有する少なくとも1つの層をレーザーアブレーションによって生成するための手段を備えた、半導体の少なくとも一部を生産するための装置であって、
生成される表面積が少なくとも0.2dm2の領域を含み、超短パルスレーザーデポジションを用いることによって層を生成するための手段を備え、パルスレーザビームを走査するための回転式光学スキャナを備え、回転式スキャナは、前記レーザービームを反射するための少なくとも1つのミラーを有することを特徴とする装置。
【請求項40】
前記表面積が、均一な表面積であることを特徴とする請求項39に記載の装置。
【請求項41】
同じチャンバ内で同じ半導体のための少なくとも2つの層を生成するための手段を備えることを特徴とする請求項39または40に記載の装置。
【請求項42】
同じチャンバ内で同じ半導体の層または基材を機械加工するための手段を備えることを特徴とする請求項39〜41のいずれか1項に記載の装置。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9】
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【図10a−c】
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【図11】
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【公表番号】特表2009−527915(P2009−527915A)
【公表日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555825(P2008−555825)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【国際出願番号】PCT/FI2007/050108
【国際公開番号】WO2007/096487
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(507283908)ピコデオン エルティーディー オイ (8)
【Fターム(参考)】