説明

半導体デバイスの試験用ソケット

【課題】大気暴露中で行う半導体デバイスの低温試験において、DUT周辺に生ずる結露は、端子間の電気的絶縁を低下させ、試験精度に悪影響を与える他、測定装置の腐食を招くなどの問題がある。
【解決手段】低温時の結露の問題を解決するためにソケットを密閉構造としDUTのパッケージに合わせて可能な限り空間容量の少ない状況を作り出すことが有効である。結露は大気中に含まれる水分が低温に接して凝結するものであるから、大気に曝された状況では連続して凝結が起こり結露を生じる。試験用ソケットの内部に固定されるDUTの上部に、伸縮性の膜を配置し、試験用ソケットの内部空間の大気を強制排出し、前記伸縮性の膜を前記DUTの表面に密着させて前記DUTを気密に保てれば、その空間内だけの水分しか凝結しないので、発生する結露は極めてわずかで試験に影響の無い範囲に収めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスの検査工程で用いられる試験用ソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの恒温試験は、DUT(Device
Under Test:被試験デバイス)を装着した試験ソケットを恒温槽内に置き、特定の環境条件および電気的条件を与えた上で、長期間の稼動試験を実施する。この試験はDUTの初期不良を選別することを目的に行われる。
【0003】
特に低温試験は、マイナス40℃までDUTを冷却する必要があるため、大気暴露中で冷却を行うと低温部分に多量な結露が発生し、電気的な短絡状態を招いて電機特性試験に影響を与えるという問題や、結露が凝結して凍り付きDUTの着脱が困難になるなどの問題が生じる。
【0004】
そのため従来は恒温槽の中にDUTを置くか、サーモストリーマーでDUTに乾燥空気を吹きつけながら試験を行うなど、DUTの周りに結露が発生させないために大規模な設備や装置が必要とされていた。例えば、特許文献1には、結露してDUTやICソケットなどに霜が付くのを防止するために循環気体の除湿を行う除湿器を設けることが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、基板に簡単に着脱交換できるICソケットが記載され、特許文献3には、Oリング及び板状パッキングを圧縮して半導体ベアチップを戴置した空間を密封したバーンイン試験治具が記載され、特許文献4には、プリント回路基板、導電ゴムコネクタ及びベヤーチップICを互いに対して押圧する手段を備えたベヤーチップIC用ソケットが記載されている。
【0006】
一方、低温発生方法は様々な方式が考案され、半導体試験用ソケットに実装できるまで小型化が可能になっており、これらを用いた低温試験方法や試験ソケットが多く考案されている。
【特許文献1】特開平10−90348号公報
【特許文献2】国際公開00−04610号
【特許文献3】特開平6−130122号公報
【特許文献4】特開平7−326692号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術では半導体デバイスを低温にすることはできても、冷却に伴う結露の発生に対して十分な配慮がなされておらず、従来と同様に恒温槽や乾燥空気中での使用が前提となっている。
【0008】
本発明はDUTソケットに気密機構と断熱構造を改良することで、大気暴露中でDUTを冷却する際に発生する結露を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の半導体デバイスの試験用ソケットは、前記試験用ソケットの内部に固定されるDUTの上部に、伸縮性の膜を配置し、前記試験用ソケットの内部空間の大気を強制排出し、前記伸縮性の膜を前記DUTの表面に密着させて前記DUTを気密に保つことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、半導体デバイスの低温試験を、恒温槽などの大規模設備を用いることなく、大気暴露中で行うことが可能となる。大規模設備を用いずに低温試験が可能となれば、半導体試験全体のコストを下げることができる。また、DUTと試験装置間の物理的距離を短くでき試験品質を格段に上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は、本発明の実施例1の半導体デバイスの試験用ソケットの分解斜視図である。
【0013】
図1において、1は試験用ソケット、2はDUT(半導体デバイス)、3は基板、4はソケット本体、5はソケット蓋、6は異方導電性シート、7はOリング(パッキン)、8はOリング(パッキン)、9はソケット固定ネジ、10はスプリングワッシャ、11はソケット固定ナット、12はソケット蓋止めネジ、13はデバイス押さえネジを示している。
【0014】
低温時の結露の問題を解決する方法として、試験用ソケット1を密閉構造とし、パッケージサイズに合わせて可能な限り空間容量の少ない状況を作り出すことが有効である。結露は大気中に含まれる水分が、低温に接して凝結するものであるから、大気に曝された状況では、連続して凝結が起こり結露を生じる。パッケージを密閉された空間で囲めば、その空間内だけの水分しか凝結しないので、発生する結露は極わずかで試験に影響の無い範囲に収めることができる。また、低温状態のソケット外周に発生する結露 は、ソケット外周を断熱材で囲むことで回避可能である。
【0015】
図1の試験用ソケット1においては、DUT(半導体デバイス)2は、基板3上に配置されるソケット本体4の内部に戴置され、ソケット本体4とソケット蓋5により形成される密閉構造内に収納される。
【0016】
基板3上には、異方導電性シート6及びOリング(パッキン) 7が配置され、ソケット固定ネジ9がスプリングワッシャ10を介してソケット固定ナット11と結合されて、ソケット本体4と基板3とが気密状態で固定される。
【0017】
ソケット本体4の上面には、Oリング(パッキン) 8が配置され、ソケット蓋止めネジによりソケット蓋5とソケット本体4とが気密状態で固定される。
【0018】
また、ソケット蓋5には、デバイス押さえネジ13が設けられており、デバイス押さえネジ13によりソケット本体4の内部に戴置されたDUT(半導体デバイス)2を押さえると、DUT(半導体デバイス)2の下面に配置された端子ピンの先端部が異方導電性シート6を押圧する。
【0019】
異方導電性シート6の押圧された部分は上下方向に導通し、DUT(半導体デバイス)2の端子ピンと異方導電性シート6の下に配置されている印刷配線の端子とを電気的接続して、DUT(半導体デバイス)2の電気的な試験を行うことができる。
【0020】
上記実施例1の気密機構を備えた試験用ソケットにおいては、Oリングパッキン7、8を用いて気密状態を確保している。
【実施例2】
【0021】
図2は、本発明の実施例2の半導体デバイスの試験用ソケットの分解斜視図である。
【0022】
図2において、1は試験用ソケット、2はDUT(半導体デバイス)、3は基板、4はソケット本体、5はソケット蓋、6は異方導電性シート、7はOリング(パッキン)、9はソケット固定ネジ、10はスプリングワッシャ、11はソケット固定ナット、12はソケット蓋止めネジ、13はデバイス押さえネジを示している。
【0023】
図2の実施例2では、気密機構を備えた試験用ソケット1として、ソケット蓋5とOリングパッキン8の代わりに伸縮性の膜14とラバーコート16を用いている。
【0024】
ソケット本体4内の空間に連通する排気孔15から、ソケット本体4内の気体を排気することにより、DUT2を装着するソケット本体4内の空間とソケット本体4の気圧差を用いてDUT2とソケット蓋5の固定を確実に行うことができる。
【0025】
また、ソケット本体4内の空間に連通する排気孔15から、ソケット本体4内の気体を排気してDUT2の置かれた空間内を減圧することで、DUT2の表面に伸縮性の膜14が密着し可能な限り空間容量の少ない状況を作り出すことができる。
【0026】
また、DUT2と接する部分にラバーコーティング16を施し、DUT2の置かれた空間内を減圧することでDUT2にラバーコート16を密着させることにより、DUT2をソケット本体4内に確実に固定することができる。
【実施例3】
【0027】
図3は、本発明の実施例3の半導体デバイスの試験用ソケットの組み立て手順を示す断面図である。
【0028】
図3において、21は試験用ソケット、22はDUT(BGA:Ball Grid Array)パッケージ、23は基板、24は伸縮性の膜を張った枠、25は伸縮性の膜、26は基板23を貫通する複数の排出孔を示している。
【0029】
図3の実施例3では、気密機構を備えた試験用ソケット1として、ソケット蓋5とOリングパッキン8の代わりに、伸縮性の膜25と排出孔26を用いている。
【0030】
図3の(a)において、基板23上にDUT(BGA)パッケージ22を戴置し、その上から伸縮性の膜を張った枠24を被せる。DUT(BGA)パッケージ22は下面に接続端子(BGA端子)が配置されており基板23上の対応する端子と接続される。
【0031】
図3の(b)において、基板23上に戴置されたDUT(BGA)パッケージは、伸縮性の膜25によって覆われる。
【0032】
図3の(c)において、基板23を貫通する排出孔26から、空気の排出を行うことにより、DUT(BGA)パッケージ22の置かれた空間内を減圧し、DUT22の表面に伸縮性の膜25が密着し可能な限り空間容量の少ない状況を作り出すことができる。
【0033】
図3の実施例では、複数のDUT22を基板上に戴置して、全体を固定し気密状態にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、本発明の実施例1の半導体デバイスの試験用ソケットの分解斜視図である。
【図2】図2は、本発明の実施例2の半導体デバイスの試験用ソケットの分解斜視図である。
【図3】図3は、本発明の実施例3の半導体デバイスの試験用ソケットの組み立て手順を示す断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 試験用ソケット
2 DUT(半導体デバイス)
3 基板
4 ソケット本体
5 ソケット蓋
6 異方導電性シート
7 Oリング(パッキン)
8 Oリング(パッキン)
9 ソケット固定ネジ
10 スプリングワッシャ
11 ソケット固定ナット
12 ソケット蓋止めネジ
13 デバイス押さえネジ
14 伸縮性の膜
15 排気孔
16 ラバーコート
21 試験用ソケット
22 DUT(BGA)パッケージ
23 基板
24 伸縮性の膜を張った枠
25 伸縮性の膜
26 排出孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体デバイスの試験用ソケットにおいて、
前記試験用ソケットの内部に固定されるDUTの上部に、伸縮性の膜を配置し、前記試験用ソケットの内部空間の大気を強制排出し、前記伸縮性の膜を前記DUTの表面に密着させて前記DUTを気密に保つことを特徴とする試験用ソケット。
【請求項2】
半導体デバイスの試験用ソケットにおいて、
前記試験用ソケットのDUTと接する部分にラバーコートを設置し、前記試験用ソケットの内部空間の大気を強制排出し、前記ラバーコートを前記DUTに密着させて前記DUTを気密に保つことを特徴とする試験用ソケット。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の試験用ソケットにおいて、
前記DUTを装着するソケット本体の側壁に、前記試験用ソケットの内部空間の大気をソケット外部に強制排出する排出孔を備えたことを特徴とする試験用ソケット。
【請求項4】
請求項3に記載の試験用ソケットにおいて、
前記ソケット本体と、前記試験用ソケットが実装される基板との間に気密を目的とするパッキンを備えたことを特徴とする試験用ソケット。
【請求項5】
請求項4に記載の試験用ソケットにおいて、
前記ソケット本体および前記ソケット本体を覆うソケット蓋の全外周に断熱機構を備えたことを特徴とする試験用ソケット。
【請求項6】
半導体デバイスの試験用ソケットにおいて、
前記試験用ソケットの基板上に配置されるDUTの上部に、前記DUTを覆う伸縮性の膜を配置し、前記試験用ソケットの内部空間の大気を強制排出して、前記伸縮性の膜を前記DUTの表面に密着させて前記DUTを気密に保つことを特徴とする試験用ソケット。
【請求項7】
請求項6に記載の試験用ソケットにおいて、
前記試験用ソケットの基板に前記試験用ソケットの内部空間の大気をソケット外部に強制排出する複数の貫通孔を備えたことを特徴とする試験用ソケット。
【請求項8】
請求項7に記載の試験用ソケットにおいて、
前記試験用ソケットの基板上に複数のDUTを配置し、前記複数のDUTの上部に前記複数のDUTを覆う伸縮性の膜を配置し、前記試験用ソケットの内部空間の大気を強制排出して、前記伸縮性の膜を前記複数のDUTの表面に密着させることを特徴とする試験用ソケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−42028(P2009−42028A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−206385(P2007−206385)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(501358507)株式会社シスウェーブ (17)
【Fターム(参考)】