説明

半導体パッケージのリペア、リワーク性の測定方法及びその装置

【課題】 本発明は、リペア、リワーク工程を前提とし、その工程の条件設定等有意義な情報を得るための測定方法及び測定装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 半導体チップ及び基板と、この片面を封止する封止樹脂と、前記片面の半対面に形成されるバンプと、前記バンプが接合する実装基板と、アンダーフィル・サイドフィルとを備える半導体パッケージの実装構造において、アンダーフィル或いはサイドフィルした後、硬化した液状樹脂組成物のリペア、リワーク性を定量化するための測定方法及びその測定装置であって、半導体チップ及び基板下部に、実装基板との間に電気的接続をするための半田ボール間を、半田間隙を260℃に耐えられるワイヤーで通し、この状態でアンダーフィル或いはサイドフィルした後、ワイヤーをロードセル或いは圧力センサー等に取り付けたものを、所定の温度に加熱後、引き上げることで荷重を測定する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置を製造する際に用いられる、リペア、リワーク技術を必要とし、そのアンダーフィル及びサイドフィル材のリペア、リワーク性の良否を判断するための測定方法及びその測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器の小型化、軽量化、高性能化等にともない、近年では半導体の実装方式として、旧来リード線タイプではなく、表面実装、即ちベアチップ実装が採用されるようになっている。一般に、BGA,CSP等の半田バンプ接合型の半導体装置は、衝撃がダイレクトに半田に伝わるため、リードによる応力緩和機能を持つリード接続型半導体装置と比較し、信頼性に劣る。そのため、信頼性を向上させるために、様々な補強が行われている。(特許文献1〜3参照)
【0003】
また実装の際、封止材による封止方式には、LSIチップのバンプ高さに由来する基板と半導体チップ等の素子との間隙を封止することを目的として、前記間隙内に封止材を充填するアンダーフィルタイプと、素子周辺部のみを封止するサイドフィルタイプとの二つの方法がある。前記両者ともに一長一短があるが、例えば、デバイスの内部の素子が光学的に構成されている場合、又は配線構造が緻密である場合には、作業性の観点から、アンダーフィルタイプよりもサイドフィルタイプの方が適している。(特許文献4参照)
【0004】
一方、配線構造が緻密でない場合には、信頼性の観点から、周辺のみを封止するサイドフィルタイプより、チップ下全面を封止するアンダーフィルタイプの方がより好ましい。なお、以下、前記サイドフィルタイプの方法で用いられる封止材を「サイドフィル材」、アンダーフィルタイプの方法で用いられる封止材を「アンダーフィル材」という。
【0005】
一方、通常、使用されている基板が高価なことから、搭載する素子が動作不良を起こした場合、その素子をリペア、リワークする工程が必要になるが、エポキシ系の樹脂は熱的、化学的に安定な物質で機械的強度が高い。これらの性質は、補強材料として理想的な反面、一度硬化させると除去は困難であるため、サイドフィル材として使用した場合、リペア、リワークに支障をきたす。その結果として、基板を廃棄せざるを得なくなり、経済的損失を被ることとなる。
【0006】
本発明者らは、リペア、リワークの可能な半導体製品を与え、かつサイドフィル材としては、液状成分のブリードを抑制でき、サイドフィル材の基板と素子との間の間隙への侵入を防止し得、アンダーフィル材としては、隙間侵入性が良好である実装用封止材を提案した。(特許文献5参照)
【0007】
本発明のリペア、リワークの可能な半導体製品のリペア、リワーク性を測定することの必要性について述べて下さい。現在、半田バンプの保護のために、リペア、リワーク性の良好なアンダーフィル材が上市されているが、必ずしもユーザーの満足されているリペア、リワーク性が得られていない。これは、リペア、リワーク性が定性的に扱われているためで、アンダーフィル材メーカーの認識とユーザーの認識に乖離が見られるためである。この問題を解決するためには、両者の共通認識が必要であり、リペア、リワーク性の定量化が必要となる所以である。
【0008】
なお、上記記載事項の関連先行技術文献としては、下記に示す特許文献1〜特許文献5が挙げられる。
【特許文献1】特開平9−260534号公報
【特許文献2】特開平10−321666号公報
【特許文献3】特開2001−77246号公報
【特許文献4】特開2005−105243号公報
【特許文献5】特開2008−177521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、リペア、リワーク工程を前提とし、その工程の条件設定等有意義な情報を得るための測定方法及び測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、市販のリペア、リワーク機器を用いて、アンダーフィルあるいはサイドフィルされたCSP等素子と、機器上部に設けたロードセルとを結合させ、所定温度での素子の外れ易さを定量化することで、本発明に至った。
【0011】
従って、本発明は、基板に半導体素子が半田バンプを介して接合し、その間を液状エポキシ樹脂組成物によりアンダーフィル・サイドフィルされた構造を有する半導体パッケージの装置において、液状エポキシ樹脂組成物を用いて、アンダーフィル或いはサイドフィルした後(含硬化工程)、基板からリペア、リワークする際に、液状樹脂組成物のリペア、リワーク性を定量化するための測定方法及びその測定装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のアンダーフィル或いはサイドフィルした後(含硬化工程)、基板からリペア、リワークする際、液状樹脂組成物のリペア、リワーク性を定量化するための測定方法及びその測定装置は、実際のリペア、リワーク工程において、失敗のリスクを最小限に抑制可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
半導体チップ及び基板と、この片面を封止する封止樹脂と、前記片面の半対面に形成されるバンプと、前記バンプが接合する実装基板と、液状エポキシ樹脂組成物を用いたアンダーフィル或いはサイドフィルとを備える半導体パッケージの実装構造において、実装基板から半導体チップ及び基板をリペア、リワークする際に、半導体チップ及び基板下部に、実装基板との間に電気的接続をするための半田ボールの間をワイヤーで通し、この状態でアンダーフィル或いはサイドフィルした後、ワイヤーをロードセル或いは圧力センサー等を取り付けたリペア、リワーク機器を用いて、半田溶融温度以上に加熱後、引き上げることで荷重を測定することにより、硬化樹脂のリペア、リワーク性を定量化する方法及びその装置に関するものである。
【0014】
ここで、用いられるワイヤーは半田ボールの間を通すものであるから、実装基板と半導体チップとの間隙(通常100〜500μm)よりも径の小さいものでなければならず、通常は50〜200μmの径のものが用いられる。また、半田溶融温度(およそ200〜260℃)の加熱に耐え、かつリペア、リワークの際の引き上げ荷重に耐える強度を有するものではならず、通常はSUS線が使用されるがこれに限定されない。
【0015】
一般のリペア、リワーク機器は、製造現場で使用される、一種の製造装置であるため、従来より局所加熱のみの機構で問題なかった。一方、これを運転する作業者は、かなりこの装置を熟知しており、勘にたよるところが多かった。本発明は、このように標準化しにくい作業を可能な限り定量化することで、作業の効率化及び品質安定化を図った。
【0016】
具体的には、リペア、リワーク性を定量化するための測定方法及びその測定装置は、デンオン機器株式会社製RD-500IIIを用いて、これに装着したロードセル或いは圧力センサーに連結されたワイヤーと、半導体チップ及び基板下部に、実装基板との間に電気的接続をするための半田ボールの間を半田溶融温度(およそ200〜260℃)に耐えられるワイヤーとで連結することで、素子の除去時の負荷を測定することにより、リペア、リワーク性の定量化を図ったものである。ただし、同様な機能を持つリペア、リワーク機器であれば、その製造機器の製造者を問わない。
【0017】
実際の作業内容は、予め除去対象素子下にワイヤーを通しておいてアンダーフィルするが、アンダーフィル後素子の一部に治具をかけて、各々ロードセルと繋げても構わない。その後、所定の温度プロファイルで加熱し、半田が溶融する温度に到達したところで、ロードセルを操作し、素子除去を行う。このときの最大荷重の相対比較で、リペア、リワーク性の良否判断が可能となる。
【0018】
[実装用アンダーフィル材及びサイドフィル材]
本発明に用いられる液状樹脂組成物は、基板と該基板上に実装された半導体チップとの間隙に対し、前記素子の半導体チップ下全面が封止されているアンダーフィル材と周辺部において封止するサイドフィル材として使用される。
【0019】
かかる液状エポキシ樹脂組成物としては特に制限はないが、一般的には(A)液状エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)無機充填剤及び(D)その他の添加剤の組合せからなる公知のものを使用することができる。具体的には、特開2005−105243号公報、特開2008−177521号公報に記載のものが例示される。
【0020】
この本発明の各々の適用方法、封止方法、硬化条件等については、公知の方法、条件等を採用することができる。例えば、封止工程としては、シリンジ等のディスペンサーに前記サイドフィル材を収容し、前記ディスペンサーから所要量のアンダーフィル材或いはサイドフィル材を封止部位に供給した後に、加熱硬化処理を施すことができる。前記加熱硬化処理の条件としては、通常、100〜200℃、特に120〜150℃で、通常、30〜60分間である。
【実施例】
【0021】
以下、本発明の実施例および比較例を示して具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0022】
[実施例1〜3]
PRACTICAL COMPONENTS社製CSP素子搭載基板のCSP素子と基板との間に、100μm径のSUS製ワイヤーを5本通し、この状態で下記表1に示す組成及び配合量で配合してなるエポキシ樹脂組成物を、下記条件にて製造したアンダーフィル材をアンダーフィルし、150℃を1時間かけて硬化した。得られたデバイスは、このワイヤーの末端同士を結び、ロードセルに連結させた。その後、デバイスを260℃に加熱後、ワイヤーを5mm/分の速度で引き上げた。用いたアンダーフィル材の組成及び結果を表1に示す。
【0023】
上記実施例で使用した材料の組成は、下記表1に示す組成及び配合量で配合し、均一に混練することによりエポキシ樹脂組成物を得た。結果も、表1に示す。
(A)液状エポキシ樹脂
ビスフェノール型エポキシ樹脂:ZX−1059(商品名、東都化成社製)
変性シリコーン樹脂:下記構造の化合物
【0024】
【化1】

【0025】
(B)硬化剤
ノボラック型フェノール:レジトップPL6328(商品名、群栄化学製)
ジアリルビスフェニルアルコール:DABPA(商品名、小西化学製)
・硬化促進剤
マイクロカプセル化トリフェニルフォスフィン:EPCAT−PS5(商品名、日本化薬社製)
【0026】
(C)無機充填剤
球状シリカ:PLV−503N(商品名、龍森社製、平均粒径:11μm)
(D)その他添加剤
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:PMA(商品名、協和発酵ケミカル社製)
【0027】
評価結果を表1に記す。
【0028】
【表1】

【0029】
[参考例]
実施例でアンダーフィルしない状態で、実施例同様の操作を行った。このときの最大荷重より剥離強度を測定すると、0.1gであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップ及び基板と、この片面を封止する封止樹脂と、前記片面の半対面に形成されるバンプと、前記バンプが接合する実装基板と、液状エポキシ樹脂組成物を用いたアンダーフィル或いはサイドフィルとを備える半導体パッケージの実装構造において、実装基板から半導体チップ及び基板をリペア、リワークする際に、半導体チップ及び基板下部に、実装基板との間に電気的接続をするための半田ボールの間をワイヤーで通し、この状態でアンダーフィル或いはサイドフィルした後、ワイヤーをロードセル或いは圧力センサー等を取り付けたリペア、リワーク機器を用いて、半田溶融温度以上に加熱後、引き上げることで荷重を測定することにより、硬化樹脂のリペア、リワーク性を定量化する方法。
【請求項2】
請求項1の方法により、硬化樹脂のリペア、リワーク性を定量化するための引き上げ荷重を測定する装置。