説明

半導体リソグラフィー用重合体およびその製造方法、レジスト組成物、ならびに基板の製造方法

【課題】重合体のロット間のバラツキを低減することができる、半導体リソグラフィー用重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】重合溶媒の存在下で、重合開始剤を使用して、単量体をラジカル重合させて重合体を製造する方法であって、予め、重合反応容器内に、重合溶媒の少なくとも一部および/または単量体の少なくとも一部を仕込んだ後、重合反応を開始する前に、前記重合反応容器内を20kPa以下まで減圧した後に該重合反応容器内の気体を不活性ガスで置換するガスパージ工程を有する、半導体リソグラフィー用重合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体リソグラフィー用重合体の製造方法、該製造方法により得られる半導体リソグラフィー用重合体、該半導体リソグラフィー用重合体を用いたレジスト組成物、および該レジスト組成物を用いて、パターンが形成された基板を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子、液晶素子等の製造工程において形成されるレジストパターンは、半導体リソグラフィー技術の進歩により急速に微細化が進んでいる。微細化の手法としては、照射光の短波長化がある。具体的には、従来のg線(波長:438nm)、i線(波長:365nm)に代表される紫外線から、より短波長のDUV(Deep Ultra Violet)へと照射光が短波長化してきている。
【0003】
最近では、KrFエキシマレーザー(波長:248nm)リソグラフィー技術が導入され、さらなる短波長化を図ったArFエキシマレーザー(波長:193nm)リソグラフィー技術およびEUV(波長:13.5nm)リソグラフィー技術が研究されている。さらに、これらの液浸リソグラフィー技術も研究されている。また、これらとは異なるタイプのリソグラフィー技術として、電子線リソグラフィー技術についても精力的に研究されている。
【0004】
該短波長の照射光または電子線を用いたレジストパターンの形成に用いられる高感度のレジスト組成物として、光酸発生剤を含有する「化学増幅型レジスト組成物」が提唱され、現在、該化学増幅型レジスト組成物の改良および開発が進められている。
例えば、ArFエキシマレーザーリソグラフィーにおいて用いられる化学増幅型レジスト用重合体として、波長193nmの光に対して透明なアクリル系重合体が注目されている。該アクリル系重合体としては、例えば、エステル部にアダマンタン骨格を有する(メタ)アクリル酸エステルとエステル部にラクトン骨格を有する(メタ)アクリル酸エステルとの重合体が提案されている(特許文献1等)。
【0005】
レジストパターンの微細化に伴って、半導体リソグラフィー用重合体の品質への要求も厳しくなっている。例えば、半導体リソグラフィー用重合体の製造上のロットバラツキが現像時に微少な欠陥を発生させ、デバイス設計における欠陥の原因となる場合がある。
下記特許文献2には、ロットの違いによる分子量分布の変動を小さくする方法として、リビングラジカル重合開始剤を用いて、酸解離性基を有する樹脂を合成する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−319595号公報
【特許文献2】特開2009−175746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献2に記載の方法では特定の重合開始剤を用いることが必要であり、重合開始剤の変更に伴う製造条件の適正化も必要となる。
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、特許文献2に記載の従来法とは異なる方法で、重合体のロット間のバラツキを低減することができる、半導体リソグラフィー用重合体の製造方法、該製造方法により得られる半導体リソグラフィー用重合体、該半導体リソグラフィー用重合体を用いたレジスト組成物、および該レジスト組成物を用いて、パターンが形成された基板を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、重合反応を開始する前、反応容器内に不活性ガスをパージする際の条件を制御することによって、ロット間バラツキを低減できることを見出して、本発明に至った。
【0009】
本発明の半導体リソグラフィー用重合体の製造方法は、重合溶媒の存在下で、重合開始剤を使用して、単量体をラジカル重合させて重合体を製造する方法であって、予め、重合反応容器内に、重合溶媒の少なくとも一部および/または単量体の少なくとも一部を仕込んだ後、重合反応を開始する前に、前記重合反応容器内を20kPa以下まで減圧した後に該重合反応容器内の気体を不活性ガスで置換するガスパージ工程を有することを特徴とする。
前記ガスパージ工程において、重合反応容器内を減圧した後、不活性ガスを供給する操作を2回以上繰り返すことが好ましい。
【0010】
本発明は、本発明の製造方法により半導体リソグラフィー用重合体を製造する工程と、
得られた半導体リソグラフィー用重合体と、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物とを混合する工程を有する、レジスト組成物の製造方法を提供する。
本発明は、本発明のレジスト組成物の製造方法により得られるレジスト組成物を、基板の被加工面上に塗布してレジスト膜を形成する工程と、該レジスト膜に対して、露光する工程と、露光されたレジスト膜を現像液を用いて現像する工程とを含む、パターンが形成された基板の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ロット間バラツキが小さい半導体リソグラフィー用重合体が得られる。
本発明の半導体リソグラフィー用重合体を用いたレジスト組成物は、重合体のロット間バラツキが小さいため、性能の安定性に優れる。
本発明の基板の製造方法によれば、高精度の微細なパターンを安定して形成できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書においては、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸またはメタクリル酸を意味し、「(メタ)アクリロイルオキシ」は、アクリロイルオキシまたはメタクリロイルオキシを意味する。
<重合体>
[構成単位(a)]
本発明の半導体リソグラフィー用重合体(以下、単に重合体ということもある。)は、極性基を有する構成単位(a)を有することが好ましい。
「極性基」とは、極性を持つ官能基または極性を持つ原子団を有する基であり、具体例としては、ヒドロキシ基、シアノ基、アルコキシ基、カルボキシ基、アミノ基、カルボニル基、フッ素原子を含む基、硫黄原子を含む基、ラクトン骨格を含む基、アセタール構造を含む基、エーテル結合を含む基などが挙げられる。
これらのうちで、波長250nm以下の光で露光するパターン形成方法におけるレジスト組成物に用いられる重合体は、極性基を有する構成単位として、ラクトン骨格を有する構成単位を有することが好ましく、さらに後述の親水性基を有する構成単位を有することが好ましい。
【0013】
(ラクトン骨格を有する構成単位・単量体)
ラクトン骨格としては、例えば、4〜20員環程度のラクトン骨格が挙げられる。ラクトン骨格は、ラクトン環のみの単環であってもよく、ラクトン環に脂肪族または芳香族の炭素環または複素環が縮合していてもよい。
重合体がラクトン骨格を有する構成単位を含む場合、その含有量は、基板等への密着性の点から、全構成単位(100モル%)のうち、20モル%以上が好ましく、25モル%以上がより好ましい。また、感度および解像度の点から、60モル%以下が好ましく、55モル%以下がより好ましく、50モル%以下がさらに好ましい。
【0014】
ラクトン骨格を有する単量体としては、基板等への密着性に優れる点から、置換あるいは無置換のδ−バレロラクトン環を有する(メタ)アクリル酸エステル、置換あるいは無置換のγ−ブチロラクトン環を有する単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、無置換のγ−ブチロラクトン環を有する単量体が特に好ましい。
【0015】
ラクトン骨格を有する単量体の具体例としては、β−(メタ)アクリロイルオキシ−β−メチル−δ−バレロラクトン、4,4−ジメチル−2−メチレン−γ−ブチロラクトン、β−(メタ)アクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン、β−(メタ)アクリロイルオキシ−β−メチル−γ−ブチロラクトン、α−(メタ)アクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン、2−(1−(メタ)アクリロイルオキシ)エチル−4−ブタノリド、(メタ)アクリル酸パントイルラクトン、5−(メタ)アクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトン、8−メタクリロキシ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカン−3−オン、9−メタクリロキシ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカン−3−オン等が挙げられる。また、類似構造を持つ単量体として、メタクリロイルオキシこはく酸無水物等も挙げられる。
ラクトン骨格を有する単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
(親水性基を有する構成単位・単量体)
本明細書における「親水性基」とは、−C(CF−OH、ヒドロキシ基、シアノ基、メトキシ基、カルボキシ基およびアミノ基の少なくとも1種である。
これらのうちで、波長250nm以下の光で露光するパターン形成方法におけるレジスト組成物に用いられる重合体は、親水性基としてヒドロキシ基またはシアノ基を有することが好ましい。
重合体における親水性基を有する構成単位の含有量は、レジストパターン矩形性の点から、全構成単位(100モル%)のうち、5〜30モル%が好ましく、10〜25モル%がより好ましい。
【0017】
親水性基を有する単量体としては、例えば、末端ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリ酸エステル;単量体の親水性基上にアルキル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基等の置換基を有する誘導体;環式炭化水素基を有する単量体(例えば(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸1−イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンチル、(メタ)アクリル酸2−メチル−2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸2−エチル−2−アダマンチル等。)が置換基としてヒドロキシ基、カルボキシ基等の親水性基を有するもの;が挙げられる。
【0018】
親水性基を有する単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−n−プロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシアダマンチル、2−または3−シアノ−5−ノルボルニル(メタ)アクリレート、2−シアノメチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。基板等に対する密着性の点から、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシアダマンチル、2−または3−シアノ−5−ノルボルニル(メタ)アクリレート、2−シアノメチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート等が好ましい。
親水性基を有する単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
[構成単位(a)]
本発明の重合体は、レジスト用途に用いる場合は上述した極性基を有する構成単位(a)以外に酸脱離性基を有する構成単位(b)を有することが好ましく、この他に、必要に応じて公知の構成単位を有していてもよい。
「酸脱離性基」とは、酸により開裂する結合を有する基であり、該結合の開裂により酸脱離性基の一部または全部が重合体の主鎖から脱離する基である。
レジスト組成物において、酸脱離性基を有する構成単位を有する重合体は、酸成分と反応してアルカリ性溶液に可溶となり、レジストパターン形成を可能とする作用を奏する。
酸脱離性基を有する構成単位の割合は、感度および解像度の点から、重合体を構成する全構成単位(100モル%)のうち、20モル%以上が好ましく、25モル%以上がより好ましい。また、基板等への密着性の点から、60モル%以下が好ましく、55モル%以下がより好ましく、50モル%以下がさらに好ましい。
【0020】
酸脱離性基を有する単量体は、酸脱離性基および重合性多重結合を有する化合物であればよく、公知のものを使用できる。重合性多重結合とは重合反応時に開裂して共重合鎖を形成する多重結合であり、エチレン性二重結合が好ましい。
酸脱離性基を有する単量体の具体例として、炭素数6〜20の脂環式炭化水素基を有し、かつ酸脱離性基を有している(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。該脂環式炭化水素基は、(メタ)アクリル酸エステルのエステル結合を構成する酸素原子と直接結合していてもよく、アルキレン基等の連結基を介して結合していてもよい。
該(メタ)アクリル酸エステルには、炭素数6〜20の脂環式炭化水素基を有するとともに、(メタ)アクリル酸エステルのエステル結合を構成する酸素原子との結合部位に第3級炭素原子を有する(メタ)アクリル酸エステル、または、炭素数6〜20の脂環式炭化水素基を有するとともに、該脂環式炭化水素基に−COOR基(Rは置換基を有していてもよい第3級炭化水素基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、またはオキセパニル基を表す。)が直接または連結基を介して結合している(メタ)アクリル酸エステルが含まれる。
【0021】
特に、波長250nm以下の光で露光するパターン形成方法に適用されるレジスト組成物を製造する場合には、酸脱離性基を有する単量体の好ましい例として、例えば、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、1−(1’−アダマンチル)−1−メチルエチル(メタ)アクリレート、1−メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1−エチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1−メチルシクロペンチル(メタ)アクリレート、1−エチルシクロペンチル(メタ)アクリレート、イソプロピルアダマンチル(メタ)アクリレート、1−エチルシクロオクチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
酸脱離性基を有する単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
<重合体の製造方法>
本発明の重合体の製造方法は、重合溶媒の存在下に、重合開始剤を使用して、単量体をラジカル重合させる溶液重合法である。
溶液重合法において、単量体および重合開始剤の重合反応容器への供給は、連続供給であってもよく、滴下供給であってもよい。製造ロットの違いによる平均分子量、分子量分布等のばらつきが小さく、再現性の良い重合体が得られやすい点から、単量体および重合開始剤を含む滴下溶液を重合反応容器内に滴下する、滴下重合法が好ましい。
【0023】
重合溶媒としては、例えば、下記のものが挙げられる。
エーテル類:鎖状エーテル(ジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、「PGME」と記す。)等。)、環状エーテル(テトラヒドロフラン(以下、「THF」と記す。)、1,4−ジオキサン等。)等。
エステル類:酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」と記す。)、γ−ブチロラクトン等。
ケトン類:アセトン、メチルエチルケトン(以下、「MEK」と記す。)、メチルイソブチルケトン(以下、「MIBK」と記す。)等。
アミド類:N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等。
スルホキシド類:ジメチルスルホキシド等。
芳香族炭化水素:ベンゼン、トルエン、キシレン等。
脂肪族炭化水素:ヘキサン等。
脂環式炭化水素:シクロヘキサン等。
重合溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
重合開始剤としては、熱により効率的にラジカルを発生するものが好ましい。該重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物(2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等。)、有機過酸化物(2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等。)等が挙げられる。
【0025】
本発明の製造方法においては、予め、重合反応容器内に、重合溶媒の少なくとも一部および/または単量体の少なくとも一部を仕込んでおく。
重合溶媒は、その一部を予め重合反応容器内に入れ、残りは滴下溶液の溶媒として重合反応容器内に供給することが好ましい。
単量体を予め重合反応容器内に仕込む場合は、重合反応に用いる全単量体のうちの一部を重合反応容器内に入れ、残りは滴下溶液に含有させて重合反応容器内に供給することが好ましい。
予め重合反応容器内に、重合溶媒のみを入れておいてもよく、単量体のみを入れておいてもよく、これらの混合物を入れておいてもよい。
このように、重合反応容器内に、予め、重合溶媒の少なくとも一部および/または単量体の少なくとも一部を仕込んだ状態で、ガスパージ工程を行うことにより、重合反応容器内の気層部だけでなく、重合溶媒および/または単量体からなる液層中の酸素も効率よく除去できる。
【0026】
本発明の製造方法においては、重合合反応に用いられる容器は圧力制御ができる点で耐圧製反応容器が好ましく、熱伝導性に優れ反応温度制御が容易になり反応のロット間バラツキを抑制できる点で耐圧製金属反応容器がより好ましい。金属としては耐食性が高く重合体への金属不純物の混入が低減できる点でステンレス鋼(以下、SUSとも言う)が好ましい。
【0027】
重合反応容器内に重合溶媒及び/又は単量体を仕込んだ後であって、重合反応を開始する前の工程として、重合反応容器内を所定の圧力(以下、「到達減圧度」ということもある。)にまで減圧した後、重合反応容器内の気体を不活性ガスで置換するガスパージ工程を行う。
具体的には、重合反応容器内を到達減圧度まで減圧した後に、該重合反応容器内に不活性ガスを供給する操作(以下、「減圧後パージ操作」ということもある。)を行う。不活性ガスを供給することにより、重合反応容器内は昇圧する。
不活性ガスは、ラジカルに対して不活性なガスを用いる。具体例としては、窒素または希ガス元素が好ましく、工業的に一般的に用いられていることから窒素またはアルゴンがより好ましい。
【0028】
ガスパージ工程において、重合反応容器内を減圧して脱気した後に、不活性ガスを供給することにより、重合反応容器内に存在していた空気が不活性ガスに効率良く置換されるため、ラジカル捕捉剤の一つである酸素を効率良く除去できる。
重合反応容器内のラジカル捕捉剤を低減することによって、ラジカル重合反応の再現性が向上し、ロット間や製造スケールが違った場合でも重合体の分子量バラツキを小さくすることができる。
到達減圧度は20kPa以下であり、15kPa以下が好ましく、10kPa以下がより好ましい。ガスパージ工程において、重合反応容器内を20kPa以下に減圧して脱気することにより、重合体の分子量バラツキを小さくする効果が良好に得られる。到達減圧度が低いほど該重合体の分子量バラツキがより小さくなる。到達減圧度の下限値は特に限定されないが、所望の減圧度に到達するまでの時間が短時間で実施できる点からは0.01kPa以上が好ましい。
【0029】
ガスパージ工程において、重合反応容器内の酸素をより低減させるために、重合反応容器内を減圧した後、不活性ガスを供給する操作(減圧後パージ操作)を2回以上繰り返すことが好ましく、3回以上繰り返すのがより好ましく、4回以上繰り返すのがさらに好ましい。
減圧後パージ操作を繰り返して行う場合、毎回の到達減圧度は均一であってもよく、変動してもよいが、全ての回の到達減圧度が20kPa以下であることが好ましい。
【0030】
ガスパージ工程において、減圧後に、不活性ガスを供給して昇圧する際の昇圧の程度(到達昇圧度)は特に限定されないが、ガスパージ工程後に重合反応を開始する際には、重合反応容器内の圧力が、重合反応を行う圧力(重合圧力)となるように調整する。
重合圧力が変動すると、重合溶媒および/または単量体の溶液沸点が変動し、重合反応時の反応温度が安定しないため、一定範囲内の重合圧力となることが好ましい。好ましい重合圧力は、70〜130kPaであり、より好ましくは90〜110kPaである。
減圧と昇圧を繰り返して行う場合、毎回の到達昇圧度は均一であってもよく、変動してもよいが、全ての回の到達昇圧度が重合圧力と同程度かそれより低いことが好ましく、重合圧力と同程度であることがより好ましい。具体的には、重合圧力±30kPaの範囲内であることがより好ましい。
【0031】
ガスパージ工程の後、重合反応を開始する。具体的には、重合反応容器内に予め仕込んだ液(重合溶媒および/または単量体)を所定の重合温度まで加熱し、単量体の存在下に、重合開始剤を供給することにより、重合反応が開始される。重合温度は50〜150℃が好ましい。
【0032】
滴下重合法において、単量体を滴下する方法は、単量体のみで滴下してもよく、単量体を重合溶媒に溶解させた単量体溶液として滴下してもよい。
重合開始剤は、単量体に直接に溶解させたて滴下してもよく、単量体溶液に溶解させて滴下してもよく、重合溶媒のみに溶解させて滴下してもよい。
単量体および重合開始剤を、同じ貯槽内で混合した後、重合反応容器中に滴下してもよく;それぞれ独立した貯槽から重合反応容器中に滴下してもよく;それぞれ独立した貯槽から重合反応容器に供給する直前で混合し、重合反応容器中に滴下してもよい。
単量体および重合開始剤は、一方を先に滴下した後、遅れて他方を滴下してもよく、両方を同じタイミングで滴下してもよい。
滴下速度は、滴下終了まで一定であってもよく、単量体または重合開始剤の消費速度に応じて、多段階に変化させてもよい。
滴下は、連続的に行ってもよく、間欠的に行ってもよい。
【0033】
所定量の単量体および重合開始剤を供給し、所定の時間、重合反応させた後、反応液を冷却して重合反応を停止させ、重合体溶液を得る。
得られた重合体溶液は、必要に応じて精製を行う。例えば、1,4−ジオキサン、アセトン、THF、MEK、MIBK、γ−ブチロラクトン、PGMEA、PGME、乳酸エチル等の希釈溶媒で適当な溶液粘度に希釈した後、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、水、ヘキサン、ヘプタン、ジイソプロピルエーテル、またはそれらの混合溶媒等の貧溶媒中に滴下し、重合体を析出させる。この工程は再沈殿工程と呼ばれ、重合体溶液中に残存する未反応の単量体、重合開始剤等を取り除くために非常に有効である。未反応単量体は、そのまま残存しているとレジスト組成物として用いた場合に感度が低下するため、できるだけ取り除くことが好ましい。重合体中の不純物としての単量体含有量は2.0質量%以下がより好ましく、1.0質量%以下がさらに好ましく、0.29質量%以下が特に好ましく、0.25質量%以下が最も好ましい。
【0034】
貧溶媒としては、製造する重合体が溶解せずに析出する溶媒であればよく、公知のものを使用できるが、半導体リソグラフィー用重合体に用いられる未反応の単量体、重合開始剤等を効率的に取り除くことができる点で、メタノール、イソプロピルアルコール、ジイソプロピルエーテル、ヘプタン、水、またはそれらの混合溶媒が好ましい。
使用する貧溶媒の量は残存する未反応単量体をより低減できるため、重合体溶液と同質量以上用いることができ、3倍以上が好ましく、4倍以上がより好ましく、5倍以上がさらに好ましく、6倍以上が特に好ましい。
【0035】
その後、析出物をろ別し、湿粉を得る。
また、湿粉を再び貧溶媒に分散させて重合体分散液を得た後、重合体をろ別する操作を繰り返すこともできる。この工程は、リスラリ工程と呼ばれ、重合体湿粉中に残存する未反応の単量体、重合開始剤等をより低減させるために非常に有効である。
重合体を高い生産性を維持したまま取得できる点ではリスラリ工程を行わず、再沈殿工程のみで重合体を精製することが好ましい。
【0036】
得られた湿粉は、十分に乾燥して、乾燥粉末状の重合体を得ることができる。
また、ろ別した後、乾燥せずに湿粉のまま適当な溶媒に溶解させて半導体リソグラフィー用組成物として用いてもよく、濃縮して低沸点化合物を除去してから半導体リソグラフィー用組成物として用いてもよい。その際、保存安定剤等の添加剤を適宜添加してもよい。
また、乾燥させた後に適当な溶媒に溶解させ、さらに濃縮して低沸点化合物を除去してから半導体リソグラフィー用組成物として用いてもよい。その際、保存安定剤等の添加剤を適宜添加してもよい。
【0037】
<レジスト組成物>
本発明のレジスト組成物は、本発明の製造方法で得られる重合体と、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(以下、「光酸発生剤」ということもある。)とを含有する、化学増幅型レジスト組成物である。
本発明のレジスト組成物は、重合体と、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物とをレジスト溶媒に溶解させて得られる。
【0038】
[レジスト溶媒]
レジスト溶媒としては、前記重合溶媒と同様の溶媒が挙げられる。
[活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(光酸発生剤)]
光酸発生剤は、化学増幅型レジスト組成物の光酸発生剤として公知のものを適宜選択して用いることができる。光酸発生剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
光酸発生剤としては、例えば、オニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、キノンジアジド化合物、ジアゾメタン化合物等が挙げられる。
レジスト組成物における光酸発生剤の含有量は、重合体100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましい。
【0039】
[含窒素化合物]
化学増幅型レジスト組成物は、含窒素化合物を含んでいてもよい。含窒素化合物を含むことにより、レジストパターン形状、引き置き経時安定性等がさらに向上する。つまり、レジストパターンの断面形状が矩形により近くなり、また、レジスト膜に光を照射し、ついでベーク(PEB)した後、次の現像処理までの間に数時間放置されることが半導体素子の量産ラインではあるが、そのような放置(経時)したときにレジストパターンの断面形状の劣化の発生がより抑制される。
【0040】
含窒素化合物としては、アミンが好ましく、第2級低級脂肪族アミン、第3級低級脂肪族アミンがより好ましい。
含窒素化合物の量は、重合体100質量部に対して、0.01〜2質量部が好ましい。
【0041】
[有機カルボン酸、リンのオキソ酸またはその誘導体]
化学増幅型レジスト組成物は、有機カルボン酸、リンのオキソ酸またはその誘導体(以下、これらをまとめて酸化合物と記す。)を含んでいてもよい。酸化合物を含むことにより、含窒素化合物の配合による感度劣化を抑えることができ、また、レジストパターン形状、引き置き経時安定性等がさらに向上する。
【0042】
有機カルボン酸としては、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸等が挙げられる。
リンのオキソ酸またはその誘導体としては、リン酸またはその誘導体、ホスホン酸またはその誘導体、ホスフィン酸またはその誘導体等が挙げられる。
酸化合物の量は、重合体100質量部に対して、0.01〜5質量部が好ましい。
【0043】
[添加剤]
本発明のレジスト組成物は、必要に応じて、界面活性剤、その他のクエンチャー、増感剤、ハレーション防止剤、保存安定剤、消泡剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。該添加剤は、当該分野で公知のものであればいずれも使用可能である。また、これら添加剤の量は、特に限定されず、適宜決めればよい。
【0044】
<微細パターンが形成された基板の製造方法>
本発明の、微細パターンが形成された基板の製造方法は、本発明のレジスト組成物を、基板の被加工面上に塗布してレジスト膜を形成する工程と、該レジスト膜に対して、露光する工程と、露光されたレジスト膜を現像液を用いて現像する工程とを含む。
以下、該基板の製造方法の一例について説明する。
【0045】
まず、所望の微細パターンを形成しようとするシリコンウエハー等の被加工基板の表面(被加工面)に、本発明のレジスト組成物をスピンコート等により塗布する。そして、該レジスト組成物が塗布された被加工基板を、ベーキング処理(プリベーク)等で乾燥することにより、基板上にレジスト膜を形成する。
【0046】
次いで、レジスト膜に、フォトマスクを介して、250nm以下の波長の光を照射して潜像を形成する(露光)。照射光としては、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、Fエキシマレーザー、EUVエキシマレーザーが好ましく、ArFエキシマレーザーが特に好ましい。また、電子線を照射してもよい。
また、該レジスト膜と露光装置の最終レンズとの間に、純水、パーフルオロ−2−ブチルテトラヒドロフラン、パーフルオロトリアルキルアミン等の高屈折率液体を介在させた状態で光を照射する液浸露光を行ってもよい。
【0047】
露光後、適宜熱処理(露光後ベーク、PEB)し、レジスト膜にアルカリ現像液を接触させ、露光部分を現像液に溶解させ、除去する(現像)。アルカリ現像液としては、公知のものを用いることができる。
現像後、基板を純水等で適宜リンス処理する。このようにして被加工基板上にレジストパターンが形成される。
【0048】
レジストパターンが形成された基板は、適宜熱処理(ポストベーク)してレジストを強化し、レジストのない部分を選択的にエッチングする。
エッチング後、レジストを剥離剤によって除去することによって、パターンが形成された基板が得られる。
【0049】
本発明の製造方法により得られる半導体リソグラフィー用重合体は、ロット間における分子量のばらつきや、製造スケールが違うことによる重合体の分子量バラツキが小さく抑えられている。
本発明のレジスト組成物は、該レジスト組成物に含まれる半導体リソグラフィー用重合体の分子量バラツキが小さいため、感度および現像コントラスト等のレジスト性能の安定性に優れる。
したがって本発明の基板の製造方法によれば、本発明のレジスト組成物を用いることによって、高精度の微細なレジストパターンを安定して形成できる。また、高感度のレジスト組成物の使用が要求される、波長250nm以下の露光光を用いるフォトリソグラフィーまたは電子線リソグラフィー、例えばArFエキシマレーザー(193nm)を使用するリソグラフィーによる、パターン形成にも好適に用いることができる。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、各実施例、比較例中「部」とあるのは、特に断りのない限り「質量部」を示す。測定方法および評価方法は以下の方法を用いた。
【0051】
<重量平均分子量の測定>
重合体の重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)は、下記の条件(GPC条件)でゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより、ポリスチレン換算で求めた。
[GPC条件]
装置:東ソー社製、東ソー高速GPC装置 HLC−8220GPC(商品名)、
分離カラム:昭和電工社製、Shodex GPC K−805L(商品名)を3本直列に連結したもの、
測定温度:40℃、
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)、
試料:重合体の約20mgを5mLのTHFに溶解し、0.5μmメンブレンフィルターで濾過した溶液、
流量:1mL/分、
注入量:0.1mL、
検出器:示差屈折計。
【0052】
検量線I:標準ポリスチレンの約20mgを5mLのTHFに溶解し、0.5μmメンブレンフィルターで濾過した溶液を用いて、上記の条件で分離カラムに注入し、溶出時間と分子量の関係を求めた。標準ポリスチレンは、下記の東ソー社製の標準ポリスチレン(いずれも商品名)を用いた。
F−80(Mw=706,000)、
F−20(Mw=190,000)、
F−4(Mw=37,900)、
F−1(Mw=10,200)、
A−2500(Mw=2,630)、
A−500(Mw=682、578、474、370、260の混合物)。
【0053】
<感度、現像コントラスト測定>
レジスト組成物を、6インチシリコンウエハー上に回転塗布し、ホットプレート上で120℃、60秒間プリベーク(PAB)して、厚さ300nmの薄膜を形成した。ArFエキシマレーザー露光装置(リソテックジャパン製 VUVES−4500)を用い、露光量を変えて10mm×10mmの18ショットを露光した。次いで110℃、60秒間ポストベーク(PEB)した後、レジスト現像アナライザー(リソテックジャパン製RDA−800)を用い、23℃にて2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で65秒間現像し、各露光量における現像中のレジスト膜厚の経時変化を測定した。
【0054】
[解析]
得られたデータを基に、露光量(mJ/cm)の対数と、初期膜厚に対する60秒間現像した時点での残存膜厚率(以下、残膜率という)(%)をプロットした曲線(以下、露光量−残膜率曲線という)を作成し、Eth感度(残膜率0%とするための必要露光量であり、感度を表す。)とγ値(露光量−残膜率曲線の接線の傾きであり、現像コントラストを表す。)を以下の通り求めた。
Eth感度:露光量−残膜率曲線が残膜率0%と交わる露光量(mJ/cm
γ値:露光量−残膜率曲線の残膜率50%における露光量をE50(mJ/cm)、露光量−残膜率曲線のE50における接線が、残膜率100%の線及び残膜率0%の線と交わる露光量をそれぞれE100及びE0として、以下の計算式で求めた。
γ=1/{log(E0/E100)}
【0055】
[重量平均分子量のロット間差]
各実施例において、同一の条件で半導体リソグラフィー用重合体を5回合成し、それぞれ得られた重合体の重量平均分子量を測定した。測定数5の標準偏差を求め、重量平均分子量のロット間差とした。該ロット間差の値が小さいほど、重合反応の再現性に優れ、重量平均分子量のロット間バラツキが小さいことを示す。
【0056】
[実施例1]
窒素導入口、攪拌機、コンデンサー、滴下漏斗1個、及び温度計を備えた容量1LのSUS製のフラスコに、重合溶媒として乳酸エチル243.6gを入れた。フラスコ内を18kPa(到達減圧度)まで減圧した後、窒素ガスを供給して101kPaまで昇圧した(ガスパージ工程)。すなわち、ガスパージ工程において、重合反応容器内を減圧した後不活性ガスを供給する操作(以下、減圧後パージ操作という)を1回だけ行った。重合圧力は常圧(101kPa)である。
次いで、フラスコ内を窒素雰囲気下に保ったままフラスコを湯浴に入れ、フラスコ内を攪拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。
続いて、下記混合物1を滴下漏斗より、4時間かけてフラスコ内に滴下し、さらに80℃の温度を3時間保持した。その後、25℃まで反応液を冷却し、重合反応を停止させて、重合体溶液を得た。
【0057】
(混合物1)
下記式(m1)の単量体を95.20g、
下記式(m2)の単量体を131.04g、
下記式(m3)の単量体を66.08g、
乳酸エチル438.5g、
ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(和光純薬工業社製、V601(商品名))8.649g。
各単量体の仕込み割合(モル%)を表1に示す。
【0058】
【化1】

【0059】
得られた重合体溶液を7.0倍量の、メタノール及び水の混合溶媒(メタノール/水=95/5容量比)に撹拌しながら滴下し、白色の析出物(重合体P1)の沈殿を得た。沈殿を濾別し、重合体湿粉を得た。重合体湿粉を減圧下40℃で約40時間乾燥した。得られた重合体P1の重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)を表2に示す。
【0060】
重合体P1の100部と、光酸発生剤であるトリフェニルスルホニウムトリフレートの2部と、溶媒であるPGMEAとを、重合体濃度が12.5質量%になるように混合して均一溶液とした後、孔径0.1μmのメンブレンフィルターで濾過し、レジスト組成物を得た。得られたレジスト組成物の感度(Eth)、現像コントラスト(γ値)を評価した。結果を表2に示す。
【0061】
同一の条件で重合体P1の製造を5回(製造1〜5)行った。各回で得られた重合体の重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)を測定した。製造1〜5の重合平均分子量の標準偏差を求め、重量平均分子量(Mw)のロット間差とした。
各回で得られた重合体をそれぞれ用い、同一の条件でレジスト組成物を調製し、感度(Eth)および現像コントラスト(γ値)を評価した。
主な製造条件(重合反応容器の材質および容量、到達減圧度、減圧パージ操作の回数)を表1に示し、結果を表2に示す。
【0062】
[実施例2、3]
表1に示す通りに条件を変えたほかは、実施例1と同様にして重合体を製造し、評価した。
すなわち、実施例2は、減圧到達度を10kPaに変更した。
実施例3は、減圧後パージ操作を2回繰り返して行った。1回目の減圧時の到達減圧度、および2回目の減圧時の到達減圧度はいずれも5kPaとした。減圧後に窒素ガスを供給して昇圧させる際の到達昇圧度は、1回目、2回目のいずれも101kPaとした。
主な製造条件を表1に示し、結果を表2に示す(以下、同様)。
【0063】
[実施例4]
実施例1において、重合反応容器を容量100Lのものに変更した。各原材料の使用量は全て質量基準で100倍にスケールアップした。そのほかは、実施例1と同様にして重合体を製造し、評価した。
すなわち、重合反応容器に予め仕込む乳酸エチルは24360g、混合物1における配合量は、式(m1)の単量体が9520g、式(m2)の単量体が13104g、式(m3)の単量体が6608g、乳酸エチルが43850g、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレートが864.9gとした。
【0064】
[実施例5]
本例では、容量100Lの重合反応容器を用い、式(m2)の単量体に変えて、下記式(m4)の単量体を用いた。また減圧後パージ操作を3回繰り返し、1回目〜3回目の到達減圧度はいずれも4kPa、到達昇圧度はいずれも101kPaとした。
すなわち、窒素導入口、攪拌機、コンデンサー、滴下漏斗1個、及び温度計を備えた容量100LのSUS製のフラスコに、乳酸エチル2.259kgを入れた。フラスコ内を4kPaまで減圧した後、窒素ガスを供給して101kPaまで昇圧させる操作を3回繰り返し行った。フラスコ内を窒素雰囲気下で保ったままフラスコを湯浴に入れ、フラスコ内を攪拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。
その後、下記混合物2を滴下漏斗より、4時間かけてフラスコ内に滴下し、さらに80℃の温度を3時間保持した。その後、25℃まで反応液を冷却し、重合反応を停止させて、重合体溶液を得た。
【0065】
(混合物2)
下記式(m1)の単量体を9520g、
下記式(m3)の単量体を6608g、
下記式(m4)の単量体を10976g、
乳酸エチル40660g、
ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート(和光純薬工業社製、V601(商品名))837.2g。
各単量体の仕込み割合(モル%)を表1に示す。
【0066】
【化2】

【0067】
得られた重合体溶液を7.0倍量のメタノール及び水の混合溶媒(メタノール/水=80/20容量比)に撹拌しながら滴下し、白色の析出物(重合体P5)の沈殿を得た。沈殿を濾別し、重合体湿粉を得た。重合体湿粉を減圧下40℃で約40時間乾燥した。得られた重合体P5の重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)を表21に示す。
また、実施例1と同様の評価を行った。
【0068】
[比較例1、2]
表1に示す通りに条件を変えたほかは、実施例1と同様にして重合体を製造し、評価した。
すなわち、比較例1は、減圧到達度を35kPaに変更し、比較例2は、減圧到達度を55kPaに変更した。
【0069】
[比較例3]
本例では、ガスパージ工程において減圧を行わず、常圧(101kPa)下で窒素ガスを供給する方法で、重合反応容器内の気体を窒素ガスで置換した。
すなわち、窒素導入口、攪拌機、コンデンサー、滴下漏斗1個、及び温度計を備えた容量1Lのガラス製のフラスコに、重合溶媒として乳酸エチル243.6gを入れた。次いで、常圧(101kPa)下でフラスコ内に窒素ガスを、200ml/分の流量で、10分間流入させて、窒素ガスパージを行った。
次いで、フラスコ内を窒素雰囲気下に保ったままフラスコを湯浴に入れ、フラスコ内を攪拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。この後は実施例1と同様にして重合体を製造し、評価した。
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】

【0072】
表1、2の結果より、重合反応を開始する前に、重合反応容器内を20kPa以下まで減圧した後、窒素ガスを供給して昇圧する操作(減圧後パージ操作)を行った実施例1〜5では、重合平均分子量のロット間差が小さい重合体が得られた。また該重合体を用いて調製したレジスト組成物の感度および現像コントラストについても、ロット間のバラツキが小さく安定したレジスト性能が得られた。
また実施例4では、重合反応容器の容量を100Lにスケールアップしても、得られた重合体の分子量(MwおよびMw/Mn)は実施例1〜3と同等であり、レジスト性能も実施例1〜3と同等であった。このことから重合反応のスケールが変化しても、重合反応の再現性が良好であることがわかる。
一方、減圧後パージ操作を行ったものの、到達減圧度が20kPaより大きい比較例1、2は、実施例1〜5に比べて、重合平均分子量のロット間差が格段に大きく、レジスト組成物の感度および現像コントラストにおいても、ロット間のバラツキが大きかった。
また、重合反応容器内の減圧を行わずに窒素ガスパージを行った比較例3も、重合平均分子量のロット間差が大きかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合溶媒の存在下で、重合開始剤を使用して、単量体をラジカル重合させて重合体を製造する方法であって、
予め、重合反応容器内に、重合溶媒の少なくとも一部および/または単量体の少なくとも一部を仕込んだ後、重合反応を開始する前に、
前記重合反応容器内を20kPa以下まで減圧した後に該重合反応容器内の気体を不活性ガスで置換するガスパージ工程を有する、半導体リソグラフィー用重合体の製造方法。
【請求項2】
前記ガスパージ工程において、重合反応容器内を減圧した後、不活性ガスを供給する操作を2回以上繰り返す、請求項1記載の半導体リソグラフィー用重合体の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の製造方法により半導体リソグラフィー用重合体を製造する工程と、
得られた半導体リソグラフィー用重合体と、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物とを混合する工程を有する、レジスト組成物の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のレジスト組成物の製造方法により得られるレジスト組成物を、基板の被加工面上に塗布してレジスト膜を形成する工程と、該レジスト膜に対して、露光する工程と、露光されたレジスト膜を現像液を用いて現像する工程とを含む、パターンが形成された基板の製造方法。

【公開番号】特開2012−184381(P2012−184381A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50169(P2011−50169)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】