説明

半導体レーザの検査装置及び検査方法

【課題】 半導体レーザごとに、また、各々の光出力ごとに測定をしなければならず、極めて長時間を必要とせざるを得ない、また、複数の波長を同時に出力させて、それを分割するという格別な要素が必要で使用する部品点数が増大してしまうという点である。
【解決手段】 先端に共用の光検出素子を備え、半導体レーザの光学特性(光出力、FFP、偏光比等)を検査することで複数のレーザ光を出力する半導体レーザの検査装置で、複数の対象となる半導体レーザに、独立した指定パルス駆動電流を時分割で供給し、各々の半導体レーザに対応する独立した給電手段と、その各々の給電装置と対応する同期パルス信号供給部と、前記した半導体レーザから出力される複数のレーザ光の光出力を時分割で検出する検出手段とを有し、前記した同期パルス信号供給部及び検出手段と対応して半導体レーザが良品であるか不良品であるかの判定を行う判定手段とを有していることとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体レーザ、特に複数の波長の異なるレーザ光を出力するワンパッケージの半導体レーザの検査装置及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年は、CD、DVD等の異なる記録媒体の再生を一台の機器で実行できる複合機が市場の主流となっており、この機器には各記録媒体に対応する波長のレーザ光を出力する半導体レーザが1パッケージとされて具備されている。
【0003】
この複数のレーザ光を出力する半導体レーザが良品であるか否かの検査を行なうには、従来より先端にPo(光出力)センサを備えたFFP(Far Field Pattern)アームを用いての測定が行なわれている。従来は、一つの半導体レーザに付いて異なる光出力で測定する場合に半導体レーザの数と指定する光出力の数の積の回数の測定が必要となる。即ち、半導体レーザの数が4つで指定光出力が4つの場合、その積の16回の測定、つまり16回FFPアームを動かす必要がある。
【0004】
ここで、1回の測定時間が0.4秒の場合0.4×16の6.4秒の時間を要することとなり、今後想定される半導体レーザの数が10個以上となると16秒以上の時間が必要となる。半導体レーザの測定時間(タクト)は短いほどよく2〜3秒以下が要求されているため、FFPアームを用いての高速測定は絶対に不可欠のものであるが、従来の方式ではこの条件に合わず、極めて長時間を要することとなっている。
【特許文献1】特開2008−34548号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は従来の検査方式によると、半導体レーザごとに、また、各々の光出力ごとに測定をしなければならず、極めて長時間を必要とせざるを得ないという点である。
【0006】
また、特許文献に記載の技術によると、複数の波長を同時に出力させて、それを分割するという格別な要素が必要で使用する部品点数が増大してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この問題点を解決するために、本発明に係る半導体レーザの検査装置は先端に共用の光検出素子を備え、半導体レーザの光学特性(光出力、FFP、偏光比等)を検査することで複数のレーザ光を出力する半導体レーザの検査装置であって、複数の対象となる半導体レーザに、独立した指定パルス駆動電流を時分割で供給し、各々の半導体レーザに対応する独立した給電手段と、その各々の給電装置と対応する同期パルス信号供給部と、前記した半導体レーザから出力される複数のレーザ光の光出力を時分割で検出する検出手段とを有し、前記した同期パルス信号供給部及び検出手段と対応して半導体レーザが良品であるか不良品であるかの判定を行う判定手段とを有していることを特徴とし、前記した同期パルス信号供給部は前記した各々独立した指定パルス駆動電流の給電手段と、光出力の検出部に同期パルス信号を供給して、時分割で独立した光出力を半導体レーザごとに独立して検出することを特徴としている。
【0008】
また、本発明に係る半導体レーザの検査装置は前記した複数の独立した給電手段は、半導体レーザごとに接続されたパルス電流を給電するパルス電流ドライバを有し、このパルス電流ドライバは、同期パルス信号供給部(パルスコントローラ)から供給させる同期パルス信号により、レーザ光時分割検出手段(検出回路)と同期を取り、半導体レーザごとに独立して光出力の検出を行なうことを特徴とし、前記した検出手段(検出回路)は給電手段と同期を取り、前記した共用の光検出素子を用いて複数の検査対象となる半導体レーザから時分割に独立して出力される複数のレーザ光を検出するためのOPアンプとS/H回路を備え、半導体レーザごとに独立して光出力を検出することを特徴とし、前記した複数のレーザ光は、波長の異なる通信用レーザ及び赤外線、赤色、青色のレーザ光であり、同一波長の赤外線のみ、赤色のみ、青色のみの場合も含まれる全ての波長であることを特徴とし、前記した光検出素子は回動するFFPアームに備えられていることを特徴としている。
【0009】
さらに、本発明に係る半導体レーザの検査方法は先端に共用の光検出素子(Poセンサ)を備え、回動するFFPアームを用いた複数のレーザ光を出力する半導体レーザの検査方法に於いて、複数の半導体レーザに複数の独立した給電手段(パルス電流ドライバ)で給電して、これを時分割で検査するための同期パルス信号供給部(パルスコントローラ)で同期させ、時分割で独立して出力される複数の光をOPアンプとS/H回路を有する光出力検出手段(回路)で検出し、対象の半導体レーザが良品であるか不良品であるかを判定手段(計測CPU)で判定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る半導体レーザの検査装置及び検査方法は上記のように構成されている。そのため、0.1度の測定ごとに複数の半導体レーザの指定光出力を時分割で測定することとなり、従来の1回の測定時間である0.4秒で終了する事ができる。
【0011】
また、2つの半導体レーザで2つの光出力測定では、レベル順に変化させ、それに同期したサンプリングパルスで測定する。これによって光出力を変えて測定する場合1回または数回で測定できる。0.1度の測定時間は0.4÷1001ポイント(±50度)=0.0003996秒=約400μsecで、半導体レーザ1個の1回(0.1度)の測定時間はパルス電流ON時間が2μsec、S/H時間が2μsec、計測部取込時間が2μsecで半導体レーザ10個の4回(0.1度、指定光出力4)の測定時間は6μsec×10個×4回=240μsec、CPUのデータ取込時間は(400μsec−240μsec)÷(10個×4回)=4μsecとなる。但し、同一半導体レーザのパルス出力まで延長可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図面として示し、実施例で説明したように構成することで実現した。
【実施例1】
【0013】
次に、本発明の好ましい実施の一例を図面を参照して説明する。図1は本発明を実施した半導体レーザの検査装置の概要を示すブロック図、図2は同じく回路ブロック図、図3は同じくタイミングチャート図である。
【0014】
これらの図にあって1は検査対象となる半導体レーザであり、この半導体レーザ1は図1、図2においてその数を4としてある。検査対象となる半導体レーザ1に対してはその数と対応する4つの独立した給電手段として、CW(連続した定電流)及びパルス電流ドライバ2、2‥が接続されている。
【0015】
前記パルス電流ドライバ2、2‥は各半導体レーザ1の各々と対応させて独立のものとしてあるのは独立した指定パルス電流を時分割で供給するためであり、このパルス電流ドライバ2、2‥は同期パルス信号の供給部であるパルスコントローラ3から供給される同期パルス信号で、後述する、共に同期パルス信号が供給される光出力の検出手段(FFPアンプ、光出力アンプ、偏光比アンプ等)と同期を取ることとなる。
【0016】
また、図中4はFFPアームを示し、このFFPアーム4はケーシングボックス5内に内蔵され、モータドライバ6で制御される駆動モータ7のモータ軸に減速機構を介して取り付けられ、回動されるものとなっている。
【0017】
前記したFFPアーム4の先端には共用のPo(光出力)センサ8が取り付けられ、FFPアーム4の回動によって半導体レーザ1からの光出力を測定する。この測定は0.1度の回動範囲で行なわれる。なお、前記ケーシングボックス5内にはFFPアーム4の回動を制御確認するエンコーダ9も取り付け内蔵されており、後述する検出手段としてのFFPアンプ10にはこのエンコーダ9のパルス出力をカウントするカウンター11及び前記したモータドライバ6のコントローラ12も収納されている。
【0018】
半導体レーザ1から出力されるレーザ光の光出力を時分割で検出する検出手段としてのFFPアンプ10には半導体レーザ1の数と対応するOPアンプ13、13‥と、そのOPアンプ13、13‥から入力されるサンプリングホールド(S/H)回路14、14‥が収納されており、このFFPアンプ10、特にサンプリングホールド(S/H)回路14、14‥からの出力及びパルスコントローラ3からの時分割のための同期パルス信号は計測CPU15に送られる。この計測結果はデータ処理のためのパソコン16に送られ、対象の半導体レーザ1が良品か否かを判定される。
【0019】
また、計測CPU15にあっては、FFPアンプ10の半導体レーザ1の数と対応する各サンプリングホールド(S/H)回路14、14‥からの入力をその数と対応する独立したA/Dコンバータ17、17‥で変換している。
【0020】
本実施例に係る半導体レーザ1の検査装置は上記のように構成されている。この実施例で対象とする複数のレーザ光は、波長の異なる通信用レーザ及び赤外線、赤色、青色のものであり、この中には同一波長の赤外線のみ、赤色のみ、青色のみの場合も含まれる全ての波長となっている。
【0021】
半導体レーザ1には各レーザ光ごとに独立した指定パルス駆動電流を時分割でパルス電流ドライバ2、2‥によって独立して給電される。この際に半導体レーザ1を時分割で検査するための同期パルス信号がパルスコントローラ3から供給される。
【0022】
こうして時分割で独立している複数の半導体レーザ1の光出力をFFPアーム4の先端に取り付けられたPoセンサ8で検出する。このPoセンサ8で検出された独立した複数の光出力はFFPアンプ10で、内部の各々独立して各レーザ光と対応するOPアンプ13、13‥とサンプリングホールド(S/H)回路14、14‥によってその光出力が検出され、この出力は計測CPU15でA/Dコンバータで変換され計測される。
【0023】
パルスコントローラ3からの同期パルス信号は各々独立したパルス電流ドライバ2、2‥及びFFPアンプ10、特にサンプリングホールド(S/H)回路14、14‥に対し供給されて、時分割で独立した光出力をそれぞれのレーザ光ごとに独立して検出する事となる。ここで、パルス電流ドライバ2、2‥はFFPアンプ10と同期を取ることで、前記したように半導体レーザごとに独立して光出力の検出をすることができることとなる。
【0024】
ここで、図3はタイミングチャートで、この図3では4波長、即ち4つの半導体レーザで4光出力を測定する場合を示しており、Poセンサ8のレベル変化は駆動電流パルスに同期したサンプリングパルスで測定する。このタイミングチャートは4つの半導体レーザ、即ち、出力するレーザ光が4種の場合にはパルス電流の発生数がそれに応じて増えることとなり、エンコーダ9による起動パルスの発生は初回の1回のみとなる。
【0025】
上記したように、本発明に係る半導体レーザの検査装置及び検査方法によると、複数のレーザ光を出力する半導体レーザの良否を短時間、特に単一のレーザ光を出力する場合と同様の時間でしかもFFPアームの一動作で正確に検査することができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本実施例は上記のように構成され、この実施例では出力すべきレーザ光が4つの例として説明したが、レーザ素子数が増え、想定される10、あるいはそれ以上の40程度となっても本発明を十分に応用することができる。また、FFPアームの存在にこだわらず光検出素子を静止状態とした構成(光パワー測定、偏光比測定等)にも応用する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明を実施した半導体レーザの検査装置の概要を示すブロック図である。
【図2】回路ブロック図である。
【図3】タイミングチャート図である。
【符号の説明】
【0028】
1 半導体レーザ
2 パルス電流ドライバ
3 パルスコントローラ
4 FFPアーム
5 ケーシングボックス
6 モータドライバ
7 駆動モータ
8 Poセンサ
9 エンコーダ
10 FFPアンプ
11 エンコーダカウンター
12 モータコントローラ
13 OPアンプ
14 サンプリングホールド(S/H)回路
15 計測CPU
16 データ処理パソコン
17 A/Dコンバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に共用の光検出素子を備え、半導体レーザの光学特性(光出力、FFP、偏光比等)を検査することで複数のレーザ光を出力する半導体レーザの検査装置であって、複数の対象となる半導体レーザに、独立した指定パルス駆動電流を時分割で供給し、各々の半導体レーザに対応する独立した給電手段と、その各々の給電装置と対応する同期パルス信号供給部と、前記した半導体レーザから出力される複数のレーザ光の光出力を時分割で検出する検出手段とを有し、前記した同期パルス信号供給部及び検出手段と対応して半導体レーザが良品であるか不良品であるかの判定を行う判定手段とを有していることを特徴とする半導体レーザの検査装置。
【請求項2】
前記した同期パルス信号供給部は前記した各々独立した指定パルス駆動電流の給電手段と、光出力の検出部に同期パルス信号を供給して、時分割で独立した光出力を半導体レーザごとに独立して検出することを特徴とする請求項1に記載の半導体レーザの検査装置。
【請求項3】
前記した複数の独立した給電手段は、半導体レーザごとに接続されたパルス電流を給電するパルス電流ドライバを有し、このパルス電流ドライバは、同期パルス信号供給部(パルスコントローラ)から供給させる同期パルス信号により、レーザ光時分割検出手段(検出回路)と同期を取り、半導体レーザごとに独立して光出力の検出を行なうことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体レーザの検査装置。
【請求項4】
前記した検出手段(検出回路)は給電手段と同期を取り、前記した共用の光検出素子を用いて複数の検査対象となる半導体レーザから時分割に独立して出力される複数のレーザ光を検出するためのOPアンプとS/H回路を備え、半導体レーザごとに独立して光出力を検出することを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3に記載の半導体レーザの検査装置。
【請求項5】
前記した複数のレーザ光は、波長の異なる通信用レーザ及び赤外線、赤色、青色のレーザ光であり、同一波長の赤外線のみ、赤色のみ、青色のみの場合も含まれる全ての波長であることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3または請求項4に記載の半導体レーザの検査装置。
【請求項6】
前記した光検出素子は回動するFFPアームに備えられていることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4または請求項5に記載の半導体レーザの検査装置。
【請求項7】
先端に共用の光検出素子(Poセンサ)を備え、回動するFFPアームを用いた複数のレーザ光を出力する半導体レーザの検査方法に於いて、複数の半導体レーザに複数の独立した給電手段(パルス電流ドライバ)で給電して、これを時分割で検査するための同期パルス信号供給部(パルスコントローラ)で同期させ、時分割で独立して出力される複数の光をOPアンプとS/H回路を有する光出力検出手段(回路)で検出し、対象の半導体レーザが良品であるか不良品であるかを判定手段(計測CPU)で判定することを特徴とする半導体レーザの検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−67659(P2010−67659A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−230532(P2008−230532)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【出願人】(591242209)アルファクス株式会社 (9)
【Fターム(参考)】