半導体光増幅器
【課題】活性層の厚さが0.3μm以上の半導体光増幅器において、活性層内の利得の不均一性を抑える。
【解決手段】n型InP基板1の上に、n−InPバッファ層2、InGaAsP活性層3、第1p−InPクラッド層4が積層されている。これらの層の側面に、価電子帯のエネルギー準位が、第1p−InPクラッド層4よりも大きく、InGaAsP活性層3よりも小さいInGaAsP中間層7を設けた構造とする。上記構造とすることにより、正孔は、InGaAsP活性層3の上面から直接注入される第1経路と、第1p−InPクラッド層4からInGaAsP中間層7を介してInGaAsP活性層3の側面から注入される第2経路との2つの経路を経由して注入される。これにより、InGaAsP活性層3内部の正孔の分布の偏りを緩和することができる。従って、活性層内の利得の不均一性を小さくすることができる。
【解決手段】n型InP基板1の上に、n−InPバッファ層2、InGaAsP活性層3、第1p−InPクラッド層4が積層されている。これらの層の側面に、価電子帯のエネルギー準位が、第1p−InPクラッド層4よりも大きく、InGaAsP活性層3よりも小さいInGaAsP中間層7を設けた構造とする。上記構造とすることにより、正孔は、InGaAsP活性層3の上面から直接注入される第1経路と、第1p−InPクラッド層4からInGaAsP中間層7を介してInGaAsP活性層3の側面から注入される第2経路との2つの経路を経由して注入される。これにより、InGaAsP活性層3内部の正孔の分布の偏りを緩和することができる。従って、活性層内の利得の不均一性を小さくすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体光増幅器に関し、特に、光通信、光情報処理用装置などにおいて、微弱な光を増幅する半導体光増幅器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体光増幅器では、活性層内への光閉じ込め係数を大きくし、利得の偏波依存性を小さくするために、断面形状が矩形に近い活性層構造が広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。このような構造では、活性層の幅、厚さは、ともに0.65μm程度に設計されることが多い。
【0003】
【特許文献1】特開2000−114671号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、活性層の厚さを0.3μm以上とすると、正孔の拡散距離(約0.3μm)に比べて活性層厚さが厚すぎるため、p型クラッド層から活性層内に正孔が十分に注入されない。このため、活性層内のn型クラッド層近傍では、電子数に対して正孔の数が不足し、活性層内に利得の不均一が生じる。そうすると、注入電流を大きくしても活性層利得が十分に大きくならず、半導体光増幅器の増幅効率が低下するという問題があった。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、活性層の厚さが0.3μm以上であっても、活性層内の利得の不均一性を小さくし、半導体光増幅器の増幅効率低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る半導体光増幅器は、基板上に設けられたn型の第1半導体層と、前記第1半導体層の上に設けられ、0.3μm以上の厚さを有し、レーザ光を発生させる活性層と、前記活性層の上に設けられたp型の第2半導体層と、前記活性層の側面に設けられたp型の第3半導体層とを備え、前記第3半導体層の価電子帯エネルギー準位は、前記第2半導体層の価電子帯エネルギー準位よりも大きく、前記活性層の価電子帯エネルギー準位よりも小さいことを特徴とする。本発明のその他の特徴については、以下において詳細に説明する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、活性層の厚さが0.3μm以上であっても、活性層内の利得の不均一性を小さくし、半導体光増幅器の増幅効率低下を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において同一または相当する部分には同一符号を付して、その説明を簡略化ないし省略する。
【0009】
実施の形態1.
本実施の形態に係る半導体光増幅器の断面図を図1に示す。この半導体光増幅器は、n型InP基板1の上に形成されている(以下、「n型」を「n−」、「p型」を「p−」と表記する)。n−InP基板1の上に、メサ形状のn−InPバッファ層2が設けられている。その上に、InGaAsP活性層3(不純物はドープされていない)、第1p−InPクラッド層4が積層されている。n−InPバッファ層2、InGaAsP活性層3、第1p−InPクラッド層4の外側には、p−InP電流ブロック層8、n−InP電流ブロック層9、p−InP電流ブロック層10が順次積層されている。
【0010】
ここで、図1の半導体光増幅器を動作させる際、InGaAsP活性層3には、第1p−InPクラッド層4側から正孔が注入され、n−InPバッファ層2側から電子が注入される。これらの正孔と電子を結合させることにより、InGaAsP活性層3にレーザ光が発生する。また、InGaAsP活性層3の幅、厚さは、ともに0.3μm以上、ここでは0.65μm程度となるように形成されている。
【0011】
n−InPバッファ層2の側面、InGaAsP活性層3の側面、第1p−InPクラッド層4の側面で、p−InP電流ブロック層8との間に、InGaAsP中間層7が設けられている。この層の価電子帯のエネルギー準位(以下、「EV7」という)は、第1p−InPクラッド層4の価電子帯のエネルギー準位(以下、「EV4」という)より大きく、InGaAsP活性層3の価電子帯のエネルギー準位(以下、「EV3」という)より小さい値である。すなわち、EV4<EV7<EV3の関係が成り立っている。
【0012】
また、p−InP電流ブロック層8の価電子帯のエネルギー準位(以下、「EV8」という)は、EV7より小さい値である。すなわちEV8<EV7<EV3の関係が成り立っている。また、n−InPバッファ層2の価電子帯のエネルギー準位(以下、「EV2」という)は、EV7より小さい値である。すなわちEV2<EV7<EV3の関係が成り立っている。
【0013】
上述したInGaAsP中間層7は、n−InPバッファ層2、InGaAsP活性層3、第1p−InPクラッド層4を形成した後に、有機金属化学気相成長(Metal Organic Chemical Vapor Deposition;以下、「MOCVD」という)法、液相エピタキシャル成長(Liquid Phase Epitaxy;以下、「LPE」という)法などの結晶成長法を用いて形成することができる。このとき、p−InP電流ブロック層8、n−InP電流ブロック層9、p−InP電流ブロック層10の電流狭窄効果を妨げないように、InGaAsP中間層7の幅は、0.2μm以下の厚さに形成することが好適である。
【0014】
また、p−InP電流ブロック層10、InGaAsP中間層7、第1p−InPクラッド層4の上には、第2p−InPクラッド層5が設けられている。さらにその上に、p−InGaAsコンタクト層6、p側電極12が設けられている。n−InP基板1の裏面側には、n側電極11が設けられている。
【0015】
次に、図1の半導体光増幅器の動作について説明する。この半導体光増幅器を動作させる際には、p側電極12に正電界が印加され、n側電極11に負電界が印加される。すると、p−InPクラッド層4側からInGaAsP活性層3に正孔が注入され、n−InPバッファ層2側からInGaAsP活性層3に電子が注入される。
【0016】
ここで、InGaAsP活性層3の上面には、p−InPクラッド層4が接触し、InGaAsP活性層3の側面には、InGaAsP中間層7が接触している。また、前述したように、第1p−InPクラッド層4、InGaAsP中間層7、InGaAsP活性層3の価電子帯のエネルギー準位EV4、EV7、EV3の間には、EV4<EV7<EV3の関係が成り立っている。
【0017】
このため正孔は、InGaAsP活性層3の上面から直接注入される第1経路と、第1p−InPクラッド層4からInGaAsP中間層7を介してInGaAsP活性層3の側面から注入される第2経路との2つの経路により、InGaAsP活性層3に注入される。上記InGaAsP中間層7は、正孔を通す必要があるため、p型半導体層が用いられる。
【0018】
ここで、InGaAsP活性層3の厚さは0.65μm程度、InGaAsP活性層3の中での正孔の拡散距離は約0.3μmである。このため、上記第1経路を経由して注入された正孔は、n−InPバッファ層2の近傍までは拡散しない。これに対して上記第2経路を経由する正孔は、InGaAsP活性層3の側面から注入される。これにより、InGaAsP活性層3に注入された正孔は、n−InPバッファ層2の近傍にも拡散させることができる。
【0019】
従って、InGaAsP活性層3の厚さが0.3μm以上であっても、InGaAsP活性層3の中で、正孔の分布の偏りを緩和することができる。このため、活性層内の利得の不均一性を小さくすることができる。
【0020】
本実施の形態に係る半導体光増幅器によれば、活性層の厚さを0.3μm以上に厚くしても、活性層内の利得の不均一性を小さくし、半導体光増幅器の増幅効率低下を抑制することができる。
【0021】
実施の形態2.
本実施の形態に係る半導体光増幅器の断面図を図2に示す。本実施の形態では、実施の形態1と異なる点を中心に説明する。図2に示すように、n−InPバッファ層2とInGaAsP活性層3との間にInGaAsP半導体層13が設けられ、その側面は、InGaAsP中間層7に接触している。この層は、n−InPバッファ層2を形成した後、InGaAsP活性層3を形成する前に、MOCVD法、LPE法などにより形成することができる。
【0022】
InGaAsP半導体層13の価電子帯のエネルギー準位(以下、「EV13」という)は、EV4よりも大きく、EV3よりも小さい値である。すなわち、EV4<EV13<EV3の関係が成り立っている。その他の構成については、実施の形態1と同様である。
【0023】
図2に示した半導体光増幅器を動作させる際には、実施の形態1と同様に、第1p−InPクラッド層4側からInGaAsP活性層3に正孔が注入される。このとき、正孔は、実施の形態1で示した第1経路および第2経路の他に、第1p−InPクラッド層4からInGaAsP中間層7、InGaAsP半導体層13を介してInGaAsP活性層3の下面から回り込む第3経路を経由して注入される。これにより、InGaAsP活性層3のn−InPバッファ層2近傍の正孔の分布の偏りを、実施の形態1よりも効果的に緩和することができる。
【0024】
上記構造とすることにより、実施の形態1で得られる効果に加えて、InGaAsP活性層3の中での正孔の分布の偏りを、さらに緩和させることができる。従って、実施の形態1よりも効果的に、活性層内の利得の不均一性を小さくし、半導体光増幅器の増幅効率低下を抑制することができる。
【0025】
実施の形態3.
本実施の形態に係る半導体光増幅器について説明する。本実施の形態では、実施の形態2と異なる点を中心に説明する。本実施の形態の半導体光増幅器は、図2のInGaAsP半導体層13のEV13が、InGaAsP活性層3側からn−InPバッファ層2側に向かって小さくなるように形成されたものである。
【0026】
例えば、InGaAsP半導体層13のEV13が、図3に示すように、InGaAsP活性層3側からn−InPバッファ層2側に向かって傾斜状に小さくなるようにする。又は、図4に示すように、EV13がInGaAsP活性層3側からn−InPバッファ層2側に向かって階段状に小さくなるようにする。すなわち、InGaAsP半導体層13のバンドギャップエネルギー(伝導帯のエネルギー準位と価電子帯のエネルギー準位との差)は、InGaAsP活性層3側からn−InPバッファ層2側に向かって大きくなっている。その他の構成については、実施の形態2と同様である。
【0027】
上記構造は、InGaAsP半導体層13をMOCVD法などで形成する際に、InGaAsPの組成比をなだらかに変化させながら結晶成長させることにより実現できる。
【0028】
InGaAsP半導体層13を上記のように形成することにより、半導体光増幅器を動作させる際に、InGaAsP活性層3に注入された正孔が、n−InPバッファ層2側にオーバーフローすることを抑制することができる。これにより、素子の増幅特性の低下を抑制することができる。
【0029】
本実施の形態に係る半導体光増幅器によれば、実施の形態2で得られる効果に加えて、素子の増幅特性の低下を抑制することができる。
【0030】
実施の形態4.
本実施の形態に係る半導体光増幅器について説明する。本実施の形態では、実施の形態1〜3と異なる点を中心に説明する。実施の形態1〜3では、活性層として、不純物が添加されていないInGaAsP活性層3(図1、図2参照)を用いるようにした。これに対して本実施の形態では、InGaAsP活性層3に置き換えて、p型の不純物が添加されたInGaAsP活性層を設けるようにする。
【0031】
上記不純物の濃度は、活性層内での価電子帯間吸収による光の損失を増大させないように、1×1017〜1×1018cm−3の範囲であることが好ましい。また、上記p型不純物としては、Zn、Be、Mg、Cなどの原子を用いる。その他の構成については、実施の形態1〜3と同様である。
【0032】
上記構造とすることにより、活性層内での正孔のフェルミ準位を下げることができる。これにより、活性層内への正孔の注入効率を向上させることができる。
【0033】
本実施の形態に係る半導体光増幅器によれば、実施の形態1〜3で得られる効果に加えて、活性層内への正孔の注入効率を向上させ、素子の特性を向上させることができる。
【0034】
実施の形態5.
本実施の形態に係る半導体光増幅器について説明する。本実施の形態では、実施の形態4と異なる点を中心に説明する。本実施の形態では、実施の形態4で説明した半導体光増幅器において、InGaAsP活性層3に添加されたp型の不純物濃度が、第1p−InPクラッド層4(図1、図2参照)とのヘテロ界面付近で、他の部分よりも相対的に大きくなるようにする。つまり、InGaAsP活性層3の第1p−InPクラッド層4との界面近傍に、p型不純物の濃度が他の部分よりも相対的に大きい領域を設けるようにしたものである。
【0035】
例えば、InGaAsP活性層3の第1p−InPクラッド層4近傍0.1μmの不純物濃度を第1p−InPクラッド層4と同等(1×1018cm−3程度)とし、その他の部分の不純物濃度を5×1017cm−3程度とする。その他の構成については、実施の形態4と同様である。
【0036】
上記構造とすることにより、InGaAsP活性層3全体の光損失を小さく保った状態で、ヘテロ接合界面での正孔のヘテロ障壁を緩和することができる。このため、InGaAsP活性層3への正孔の注入効率を向上させ、InGaAsP活性層3の利得の不均一をさらに小さくすることができる。
【0037】
本実施の形態に係る半導体光増幅器によれば、実施の形態4で得られる効果に加えて、活性層内への正孔の注入効率をさらに向上させ、素子の特性をさらに向上させることができる。
【0038】
実施の形態6.
本実施の形態に係る半導体光増幅器の断面図を図5に示す。本実施の形態では、実施の形態1と異なる点を中心に説明する。図5に示すように、n型InP基板1の上にメサ形状のn−InPバッファ層2が設けられ、その上に0.3μm以上の厚さを有するInGaAsP活性層3が設けられている。さらにその上に、第1p−InPクラッド層4が設けられている。
【0039】
InGaAsP活性層3は、InGaAsP組成比の異なる圧縮歪の層3aと引張歪の層3bとが、交互に積層された超格子構造となっている。これらの層には、不純物は添加されていない。また、実施の形態1で示したInGaAsP中間層7(図1参照)は設けられていない。
【0040】
上記活性層3a、3bは、膜厚制御性に優れたMOCVD法や分子線エピタキシー(Modecular Beam Epitaxy;MBE)法を用いて形成することができる。その他の構成については、実施の形態1と同様である。
【0041】
ここで、一般に半導体層に圧縮または引張の歪を加えると、価電子帯のバンド構造が変化し、正孔の有効質量が数分の1程度に小さくなる。正孔の拡散距離は有効質量にほぼ反比例するため、有効質量が小さくなると、正孔の拡散距離は長くなる。
【0042】
従って、上記構造とすることにより、第1p−InPクラッド層4から注入された正孔を、従来技術よりもn−InPバッファ層2近傍まで拡散させることができる。従って、InGaAsP活性層3の厚さが0.3μm以上であっても、実施の形態1と同様に、活性層内の利得の不均一性を小さくすることができる。
【0043】
本実施の形態に係る半導体光増幅器によれば、InGaAsP活性層3の厚さを0.3μm以上に厚くしても、InGaAsP活性層3内の利得の不均一性を小さくし、半導体光増幅器の増幅効率低下を抑制することができる。
【0044】
実施の形態7.
本実施の形態に係る半導体光増幅器について説明する。本実施の形態では、実施の形態6と異なる点を中心に説明する。実施の形態6では、圧縮歪の層3a、引張歪の層3bには、いずれも不純物が添加されていない構造とした。これに対して本実施の形態では、圧縮歪の層3a、引張歪の層3bにp型不純物を添加した構造とする。
【0045】
上記p型不純物の濃度は、InGaAsP活性層3内での価電子帯間吸収による光の損失を増大させないように、1×1017〜1×1018cm−3の範囲とすることが好ましい。また、上記p型不純物としては、Zn、Be、Mg、Cなどの原子を用いる。その他の構成については、実施の形態6と同様である。
【0046】
上記構造とすることにより、正孔の活性層内でのフェルミ準位を下げることができる。これにより、活性層内への正孔の注入効率を向上させることができる。
【0047】
本実施の形態に係る半導体光増幅器によれば、実施の形態6で得られる効果に加えて、活性層内への正孔の注入効率を向上させ、素子の特性を向上させることができる。
【0048】
実施の形態8.
本実施の形態に係る半導体光増幅器について説明する。本実施の形態では、実施の形態6、7と異なる点を中心に説明する。本実施の形態では、実施の形態6、7で説明した半導体光増幅器(図5参照)において、圧縮歪の層3aの層の厚さと、引張歪の層3bの層の厚さが、電子および正孔のドブロイ波長の長さよりも薄くなるようにしたものである。
【0049】
例えば、圧縮歪の層3a、引張歪の層3bの各層の層厚を3〜10nmの範囲に設定する。その他の構成については、実施の形態7、8と同様である。
【0050】
上記構造とすることにより、電子および正孔は、バンドギャップの異なる3a、3bの各層間の障壁をトンネル効果で乗り越えやすくなる。InGaAsP活性層3をこのように構成することで、実施の形態6、7と比較して、InGaAsP活性層3への正孔の注入効率をさらに向上させ、InGaAsP活性層3の利得の不均一をさらに小さくすることができる。
【0051】
本実施の形態に係る半導体光増幅器によれば、実施の形態6、7で得られる効果に加えて、InGaAsP活性層3内への正孔の注入効率をさらに向上させ、素子の特性をさらに向上させることができる。
【0052】
なお、実施の形態1で示した図1の構造にかえて、図6、図7に示すように、InGaAsP中間層7が、n−InPバッファ層2に接しない構造であっても良い。これらの図において、1はn−InP基板、2はn−InPバッファ層、3はInGaAsP活性層、4は第1p−InPクラッド層、5は第2p−InPクラッド層、6はp−InGaAsコンタクト層、7はp−InGaAsP中間層、8はp−InP電流ブロック層、9はn−InP電流ブロック層、10はp−InP電流ブロック層、11はn側電極、12はp側電極、13はInGaAsP半導体層である。
【0053】
また、実施の形態1〜8では、n型のInP基板を用いた例を示した。しかし、p型基板を用いて、図8〜図12に示す構造としても、同様の効果を得ることができる。これらの図において、1bはp−InP基板、2bはp−InPバッファ層、3はInGaAsP活性層、4bは第1n−InPクラッド層、5bは第2n−InPクラッド層、6bはn−InPコンタクト層、7はp−InGaAsP中間層、8はp−InP電流ブロック層、9はn−InP電流ブロック層、10はp−InP電流ブロック層、11はn側電極、12はp側電極、13はInGaAsP半導体層である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施の形態1、4、5に係る半導体光増幅器を示す図。
【図2】実施の形態2、4、5に係る半導体光増幅器を示す図。
【図3】実施の形態3に係る半導体光増幅器のエネルギー準位を示す図。
【図4】実施の形態3に係る半導体光増幅器のエネルギー準位を示す図。
【図5】実施の形態6、7、8に係る半導体光増幅器を示す図。
【図6】図1に示した構造の変形例を示す図。
【図7】図1に示した構造の変形例を示す図。
【図8】p型基板を用いた場合の変形例を示す図。
【図9】p型基板を用いた場合の変形例を示す図。
【図10】p型基板を用いた場合の変形例を示す図。
【図11】p型基板を用いた場合の変形例を示す図。
【図12】p型基板を用いた場合の変形例を示す図。
【符号の説明】
【0055】
1 n−InP基板、2 n−InPバッファ層、3 InGaAsP活性層、4 第1p−InPクラッド層、5 第2p−InPクラッド層、6 p−InGaAsコンタクト層、7 InGaAsP中間層、8、10 p−InP電流ブロック層、9 n−InP電流ブロック層、11 n側電極、12 p側電極、13 InGaAsP半導体層。
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体光増幅器に関し、特に、光通信、光情報処理用装置などにおいて、微弱な光を増幅する半導体光増幅器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体光増幅器では、活性層内への光閉じ込め係数を大きくし、利得の偏波依存性を小さくするために、断面形状が矩形に近い活性層構造が広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。このような構造では、活性層の幅、厚さは、ともに0.65μm程度に設計されることが多い。
【0003】
【特許文献1】特開2000−114671号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、活性層の厚さを0.3μm以上とすると、正孔の拡散距離(約0.3μm)に比べて活性層厚さが厚すぎるため、p型クラッド層から活性層内に正孔が十分に注入されない。このため、活性層内のn型クラッド層近傍では、電子数に対して正孔の数が不足し、活性層内に利得の不均一が生じる。そうすると、注入電流を大きくしても活性層利得が十分に大きくならず、半導体光増幅器の増幅効率が低下するという問題があった。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、活性層の厚さが0.3μm以上であっても、活性層内の利得の不均一性を小さくし、半導体光増幅器の増幅効率低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る半導体光増幅器は、基板上に設けられたn型の第1半導体層と、前記第1半導体層の上に設けられ、0.3μm以上の厚さを有し、レーザ光を発生させる活性層と、前記活性層の上に設けられたp型の第2半導体層と、前記活性層の側面に設けられたp型の第3半導体層とを備え、前記第3半導体層の価電子帯エネルギー準位は、前記第2半導体層の価電子帯エネルギー準位よりも大きく、前記活性層の価電子帯エネルギー準位よりも小さいことを特徴とする。本発明のその他の特徴については、以下において詳細に説明する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、活性層の厚さが0.3μm以上であっても、活性層内の利得の不均一性を小さくし、半導体光増幅器の増幅効率低下を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において同一または相当する部分には同一符号を付して、その説明を簡略化ないし省略する。
【0009】
実施の形態1.
本実施の形態に係る半導体光増幅器の断面図を図1に示す。この半導体光増幅器は、n型InP基板1の上に形成されている(以下、「n型」を「n−」、「p型」を「p−」と表記する)。n−InP基板1の上に、メサ形状のn−InPバッファ層2が設けられている。その上に、InGaAsP活性層3(不純物はドープされていない)、第1p−InPクラッド層4が積層されている。n−InPバッファ層2、InGaAsP活性層3、第1p−InPクラッド層4の外側には、p−InP電流ブロック層8、n−InP電流ブロック層9、p−InP電流ブロック層10が順次積層されている。
【0010】
ここで、図1の半導体光増幅器を動作させる際、InGaAsP活性層3には、第1p−InPクラッド層4側から正孔が注入され、n−InPバッファ層2側から電子が注入される。これらの正孔と電子を結合させることにより、InGaAsP活性層3にレーザ光が発生する。また、InGaAsP活性層3の幅、厚さは、ともに0.3μm以上、ここでは0.65μm程度となるように形成されている。
【0011】
n−InPバッファ層2の側面、InGaAsP活性層3の側面、第1p−InPクラッド層4の側面で、p−InP電流ブロック層8との間に、InGaAsP中間層7が設けられている。この層の価電子帯のエネルギー準位(以下、「EV7」という)は、第1p−InPクラッド層4の価電子帯のエネルギー準位(以下、「EV4」という)より大きく、InGaAsP活性層3の価電子帯のエネルギー準位(以下、「EV3」という)より小さい値である。すなわち、EV4<EV7<EV3の関係が成り立っている。
【0012】
また、p−InP電流ブロック層8の価電子帯のエネルギー準位(以下、「EV8」という)は、EV7より小さい値である。すなわちEV8<EV7<EV3の関係が成り立っている。また、n−InPバッファ層2の価電子帯のエネルギー準位(以下、「EV2」という)は、EV7より小さい値である。すなわちEV2<EV7<EV3の関係が成り立っている。
【0013】
上述したInGaAsP中間層7は、n−InPバッファ層2、InGaAsP活性層3、第1p−InPクラッド層4を形成した後に、有機金属化学気相成長(Metal Organic Chemical Vapor Deposition;以下、「MOCVD」という)法、液相エピタキシャル成長(Liquid Phase Epitaxy;以下、「LPE」という)法などの結晶成長法を用いて形成することができる。このとき、p−InP電流ブロック層8、n−InP電流ブロック層9、p−InP電流ブロック層10の電流狭窄効果を妨げないように、InGaAsP中間層7の幅は、0.2μm以下の厚さに形成することが好適である。
【0014】
また、p−InP電流ブロック層10、InGaAsP中間層7、第1p−InPクラッド層4の上には、第2p−InPクラッド層5が設けられている。さらにその上に、p−InGaAsコンタクト層6、p側電極12が設けられている。n−InP基板1の裏面側には、n側電極11が設けられている。
【0015】
次に、図1の半導体光増幅器の動作について説明する。この半導体光増幅器を動作させる際には、p側電極12に正電界が印加され、n側電極11に負電界が印加される。すると、p−InPクラッド層4側からInGaAsP活性層3に正孔が注入され、n−InPバッファ層2側からInGaAsP活性層3に電子が注入される。
【0016】
ここで、InGaAsP活性層3の上面には、p−InPクラッド層4が接触し、InGaAsP活性層3の側面には、InGaAsP中間層7が接触している。また、前述したように、第1p−InPクラッド層4、InGaAsP中間層7、InGaAsP活性層3の価電子帯のエネルギー準位EV4、EV7、EV3の間には、EV4<EV7<EV3の関係が成り立っている。
【0017】
このため正孔は、InGaAsP活性層3の上面から直接注入される第1経路と、第1p−InPクラッド層4からInGaAsP中間層7を介してInGaAsP活性層3の側面から注入される第2経路との2つの経路により、InGaAsP活性層3に注入される。上記InGaAsP中間層7は、正孔を通す必要があるため、p型半導体層が用いられる。
【0018】
ここで、InGaAsP活性層3の厚さは0.65μm程度、InGaAsP活性層3の中での正孔の拡散距離は約0.3μmである。このため、上記第1経路を経由して注入された正孔は、n−InPバッファ層2の近傍までは拡散しない。これに対して上記第2経路を経由する正孔は、InGaAsP活性層3の側面から注入される。これにより、InGaAsP活性層3に注入された正孔は、n−InPバッファ層2の近傍にも拡散させることができる。
【0019】
従って、InGaAsP活性層3の厚さが0.3μm以上であっても、InGaAsP活性層3の中で、正孔の分布の偏りを緩和することができる。このため、活性層内の利得の不均一性を小さくすることができる。
【0020】
本実施の形態に係る半導体光増幅器によれば、活性層の厚さを0.3μm以上に厚くしても、活性層内の利得の不均一性を小さくし、半導体光増幅器の増幅効率低下を抑制することができる。
【0021】
実施の形態2.
本実施の形態に係る半導体光増幅器の断面図を図2に示す。本実施の形態では、実施の形態1と異なる点を中心に説明する。図2に示すように、n−InPバッファ層2とInGaAsP活性層3との間にInGaAsP半導体層13が設けられ、その側面は、InGaAsP中間層7に接触している。この層は、n−InPバッファ層2を形成した後、InGaAsP活性層3を形成する前に、MOCVD法、LPE法などにより形成することができる。
【0022】
InGaAsP半導体層13の価電子帯のエネルギー準位(以下、「EV13」という)は、EV4よりも大きく、EV3よりも小さい値である。すなわち、EV4<EV13<EV3の関係が成り立っている。その他の構成については、実施の形態1と同様である。
【0023】
図2に示した半導体光増幅器を動作させる際には、実施の形態1と同様に、第1p−InPクラッド層4側からInGaAsP活性層3に正孔が注入される。このとき、正孔は、実施の形態1で示した第1経路および第2経路の他に、第1p−InPクラッド層4からInGaAsP中間層7、InGaAsP半導体層13を介してInGaAsP活性層3の下面から回り込む第3経路を経由して注入される。これにより、InGaAsP活性層3のn−InPバッファ層2近傍の正孔の分布の偏りを、実施の形態1よりも効果的に緩和することができる。
【0024】
上記構造とすることにより、実施の形態1で得られる効果に加えて、InGaAsP活性層3の中での正孔の分布の偏りを、さらに緩和させることができる。従って、実施の形態1よりも効果的に、活性層内の利得の不均一性を小さくし、半導体光増幅器の増幅効率低下を抑制することができる。
【0025】
実施の形態3.
本実施の形態に係る半導体光増幅器について説明する。本実施の形態では、実施の形態2と異なる点を中心に説明する。本実施の形態の半導体光増幅器は、図2のInGaAsP半導体層13のEV13が、InGaAsP活性層3側からn−InPバッファ層2側に向かって小さくなるように形成されたものである。
【0026】
例えば、InGaAsP半導体層13のEV13が、図3に示すように、InGaAsP活性層3側からn−InPバッファ層2側に向かって傾斜状に小さくなるようにする。又は、図4に示すように、EV13がInGaAsP活性層3側からn−InPバッファ層2側に向かって階段状に小さくなるようにする。すなわち、InGaAsP半導体層13のバンドギャップエネルギー(伝導帯のエネルギー準位と価電子帯のエネルギー準位との差)は、InGaAsP活性層3側からn−InPバッファ層2側に向かって大きくなっている。その他の構成については、実施の形態2と同様である。
【0027】
上記構造は、InGaAsP半導体層13をMOCVD法などで形成する際に、InGaAsPの組成比をなだらかに変化させながら結晶成長させることにより実現できる。
【0028】
InGaAsP半導体層13を上記のように形成することにより、半導体光増幅器を動作させる際に、InGaAsP活性層3に注入された正孔が、n−InPバッファ層2側にオーバーフローすることを抑制することができる。これにより、素子の増幅特性の低下を抑制することができる。
【0029】
本実施の形態に係る半導体光増幅器によれば、実施の形態2で得られる効果に加えて、素子の増幅特性の低下を抑制することができる。
【0030】
実施の形態4.
本実施の形態に係る半導体光増幅器について説明する。本実施の形態では、実施の形態1〜3と異なる点を中心に説明する。実施の形態1〜3では、活性層として、不純物が添加されていないInGaAsP活性層3(図1、図2参照)を用いるようにした。これに対して本実施の形態では、InGaAsP活性層3に置き換えて、p型の不純物が添加されたInGaAsP活性層を設けるようにする。
【0031】
上記不純物の濃度は、活性層内での価電子帯間吸収による光の損失を増大させないように、1×1017〜1×1018cm−3の範囲であることが好ましい。また、上記p型不純物としては、Zn、Be、Mg、Cなどの原子を用いる。その他の構成については、実施の形態1〜3と同様である。
【0032】
上記構造とすることにより、活性層内での正孔のフェルミ準位を下げることができる。これにより、活性層内への正孔の注入効率を向上させることができる。
【0033】
本実施の形態に係る半導体光増幅器によれば、実施の形態1〜3で得られる効果に加えて、活性層内への正孔の注入効率を向上させ、素子の特性を向上させることができる。
【0034】
実施の形態5.
本実施の形態に係る半導体光増幅器について説明する。本実施の形態では、実施の形態4と異なる点を中心に説明する。本実施の形態では、実施の形態4で説明した半導体光増幅器において、InGaAsP活性層3に添加されたp型の不純物濃度が、第1p−InPクラッド層4(図1、図2参照)とのヘテロ界面付近で、他の部分よりも相対的に大きくなるようにする。つまり、InGaAsP活性層3の第1p−InPクラッド層4との界面近傍に、p型不純物の濃度が他の部分よりも相対的に大きい領域を設けるようにしたものである。
【0035】
例えば、InGaAsP活性層3の第1p−InPクラッド層4近傍0.1μmの不純物濃度を第1p−InPクラッド層4と同等(1×1018cm−3程度)とし、その他の部分の不純物濃度を5×1017cm−3程度とする。その他の構成については、実施の形態4と同様である。
【0036】
上記構造とすることにより、InGaAsP活性層3全体の光損失を小さく保った状態で、ヘテロ接合界面での正孔のヘテロ障壁を緩和することができる。このため、InGaAsP活性層3への正孔の注入効率を向上させ、InGaAsP活性層3の利得の不均一をさらに小さくすることができる。
【0037】
本実施の形態に係る半導体光増幅器によれば、実施の形態4で得られる効果に加えて、活性層内への正孔の注入効率をさらに向上させ、素子の特性をさらに向上させることができる。
【0038】
実施の形態6.
本実施の形態に係る半導体光増幅器の断面図を図5に示す。本実施の形態では、実施の形態1と異なる点を中心に説明する。図5に示すように、n型InP基板1の上にメサ形状のn−InPバッファ層2が設けられ、その上に0.3μm以上の厚さを有するInGaAsP活性層3が設けられている。さらにその上に、第1p−InPクラッド層4が設けられている。
【0039】
InGaAsP活性層3は、InGaAsP組成比の異なる圧縮歪の層3aと引張歪の層3bとが、交互に積層された超格子構造となっている。これらの層には、不純物は添加されていない。また、実施の形態1で示したInGaAsP中間層7(図1参照)は設けられていない。
【0040】
上記活性層3a、3bは、膜厚制御性に優れたMOCVD法や分子線エピタキシー(Modecular Beam Epitaxy;MBE)法を用いて形成することができる。その他の構成については、実施の形態1と同様である。
【0041】
ここで、一般に半導体層に圧縮または引張の歪を加えると、価電子帯のバンド構造が変化し、正孔の有効質量が数分の1程度に小さくなる。正孔の拡散距離は有効質量にほぼ反比例するため、有効質量が小さくなると、正孔の拡散距離は長くなる。
【0042】
従って、上記構造とすることにより、第1p−InPクラッド層4から注入された正孔を、従来技術よりもn−InPバッファ層2近傍まで拡散させることができる。従って、InGaAsP活性層3の厚さが0.3μm以上であっても、実施の形態1と同様に、活性層内の利得の不均一性を小さくすることができる。
【0043】
本実施の形態に係る半導体光増幅器によれば、InGaAsP活性層3の厚さを0.3μm以上に厚くしても、InGaAsP活性層3内の利得の不均一性を小さくし、半導体光増幅器の増幅効率低下を抑制することができる。
【0044】
実施の形態7.
本実施の形態に係る半導体光増幅器について説明する。本実施の形態では、実施の形態6と異なる点を中心に説明する。実施の形態6では、圧縮歪の層3a、引張歪の層3bには、いずれも不純物が添加されていない構造とした。これに対して本実施の形態では、圧縮歪の層3a、引張歪の層3bにp型不純物を添加した構造とする。
【0045】
上記p型不純物の濃度は、InGaAsP活性層3内での価電子帯間吸収による光の損失を増大させないように、1×1017〜1×1018cm−3の範囲とすることが好ましい。また、上記p型不純物としては、Zn、Be、Mg、Cなどの原子を用いる。その他の構成については、実施の形態6と同様である。
【0046】
上記構造とすることにより、正孔の活性層内でのフェルミ準位を下げることができる。これにより、活性層内への正孔の注入効率を向上させることができる。
【0047】
本実施の形態に係る半導体光増幅器によれば、実施の形態6で得られる効果に加えて、活性層内への正孔の注入効率を向上させ、素子の特性を向上させることができる。
【0048】
実施の形態8.
本実施の形態に係る半導体光増幅器について説明する。本実施の形態では、実施の形態6、7と異なる点を中心に説明する。本実施の形態では、実施の形態6、7で説明した半導体光増幅器(図5参照)において、圧縮歪の層3aの層の厚さと、引張歪の層3bの層の厚さが、電子および正孔のドブロイ波長の長さよりも薄くなるようにしたものである。
【0049】
例えば、圧縮歪の層3a、引張歪の層3bの各層の層厚を3〜10nmの範囲に設定する。その他の構成については、実施の形態7、8と同様である。
【0050】
上記構造とすることにより、電子および正孔は、バンドギャップの異なる3a、3bの各層間の障壁をトンネル効果で乗り越えやすくなる。InGaAsP活性層3をこのように構成することで、実施の形態6、7と比較して、InGaAsP活性層3への正孔の注入効率をさらに向上させ、InGaAsP活性層3の利得の不均一をさらに小さくすることができる。
【0051】
本実施の形態に係る半導体光増幅器によれば、実施の形態6、7で得られる効果に加えて、InGaAsP活性層3内への正孔の注入効率をさらに向上させ、素子の特性をさらに向上させることができる。
【0052】
なお、実施の形態1で示した図1の構造にかえて、図6、図7に示すように、InGaAsP中間層7が、n−InPバッファ層2に接しない構造であっても良い。これらの図において、1はn−InP基板、2はn−InPバッファ層、3はInGaAsP活性層、4は第1p−InPクラッド層、5は第2p−InPクラッド層、6はp−InGaAsコンタクト層、7はp−InGaAsP中間層、8はp−InP電流ブロック層、9はn−InP電流ブロック層、10はp−InP電流ブロック層、11はn側電極、12はp側電極、13はInGaAsP半導体層である。
【0053】
また、実施の形態1〜8では、n型のInP基板を用いた例を示した。しかし、p型基板を用いて、図8〜図12に示す構造としても、同様の効果を得ることができる。これらの図において、1bはp−InP基板、2bはp−InPバッファ層、3はInGaAsP活性層、4bは第1n−InPクラッド層、5bは第2n−InPクラッド層、6bはn−InPコンタクト層、7はp−InGaAsP中間層、8はp−InP電流ブロック層、9はn−InP電流ブロック層、10はp−InP電流ブロック層、11はn側電極、12はp側電極、13はInGaAsP半導体層である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施の形態1、4、5に係る半導体光増幅器を示す図。
【図2】実施の形態2、4、5に係る半導体光増幅器を示す図。
【図3】実施の形態3に係る半導体光増幅器のエネルギー準位を示す図。
【図4】実施の形態3に係る半導体光増幅器のエネルギー準位を示す図。
【図5】実施の形態6、7、8に係る半導体光増幅器を示す図。
【図6】図1に示した構造の変形例を示す図。
【図7】図1に示した構造の変形例を示す図。
【図8】p型基板を用いた場合の変形例を示す図。
【図9】p型基板を用いた場合の変形例を示す図。
【図10】p型基板を用いた場合の変形例を示す図。
【図11】p型基板を用いた場合の変形例を示す図。
【図12】p型基板を用いた場合の変形例を示す図。
【符号の説明】
【0055】
1 n−InP基板、2 n−InPバッファ層、3 InGaAsP活性層、4 第1p−InPクラッド層、5 第2p−InPクラッド層、6 p−InGaAsコンタクト層、7 InGaAsP中間層、8、10 p−InP電流ブロック層、9 n−InP電流ブロック層、11 n側電極、12 p側電極、13 InGaAsP半導体層。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に設けられたn型の第1半導体層と、
前記第1半導体層の上に設けられ、0.3μm以上の厚さを有し、レーザ光を発生させる活性層と、
前記活性層の上に設けられたp型の第2半導体層と、
前記活性層の側面に設けられたp型の第3半導体層とを備え、
前記第3半導体層の価電子帯エネルギー準位は、前記第2半導体層の価電子帯エネルギー準位よりも大きく、前記活性層の価電子帯エネルギー準位よりも小さいことを特徴とする半導体光増幅器。
【請求項2】
基板上に設けられたp型の第1半導体層と、
前記第1半導体層の上に設けられ、0.3μm以上の厚さを有し、レーザ光を発生させる活性層と、
前記活性層の上に設けられたn型の第2半導体層と、
前記活性層の側面に設けられたp型の第3半導体層とを備え、
前記第3半導体層の価電子帯エネルギー準位は、前記第2半導体層の価電子帯エネルギー準位よりも大きく、前記活性層の価電子帯エネルギー準位よりも小さいことを特徴とする半導体光増幅器。
【請求項3】
前記第1半導体層と前記活性層との間に設けられ、側面が前記第3の半導体層に接触する第4の半導体層を有し、前記第4の半導体層の価電子帯エネルギー準位は、前記第2半導体層の価電子帯エネルギー準位よりも大きく、前記活性層の価電子帯エネルギー準位よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体光増幅器。
【請求項4】
前記第4の半導体層の価電子帯エネルギー準位は、前記活性層側から前記第1半導体層側に向かって小さくなることを特徴とする請求項3に記載の半導体光増幅器。
【請求項5】
前記活性層は、p型不純物を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の半導体光増幅器。
【請求項6】
前記活性層の前記第2半導体層との界面近傍に、前記p型不純物の濃度が他の部分よりも相対的に大きい領域を有していることを特徴とする請求項5に記載の半導体光増幅器。
【請求項7】
基板上に設けられた第1導電型の第1半導体層と、
前記第1半導体層の上に設けられ、0.3μm以上の厚さを有し、レーザ光を発生させる活性層と、
前記活性層の上に設けられた第2導電型の第2半導体層とを備え、
前記活性層は、圧縮歪の層と引張歪の層とが交互に積層された構造であることを特徴とする半導体光増幅器。
【請求項8】
前記圧縮歪の層および前記引張歪の層は、p型不純物を含むことを特徴とする請求項7に記載の半導体光増幅器。
【請求項9】
前記圧縮歪の層の厚さおよび前記引張歪の層の厚さは、電子のドブロイ波長の長さよりも薄いことを特徴とする請求項7又は8に記載の半導体光増幅器。
【請求項1】
基板上に設けられたn型の第1半導体層と、
前記第1半導体層の上に設けられ、0.3μm以上の厚さを有し、レーザ光を発生させる活性層と、
前記活性層の上に設けられたp型の第2半導体層と、
前記活性層の側面に設けられたp型の第3半導体層とを備え、
前記第3半導体層の価電子帯エネルギー準位は、前記第2半導体層の価電子帯エネルギー準位よりも大きく、前記活性層の価電子帯エネルギー準位よりも小さいことを特徴とする半導体光増幅器。
【請求項2】
基板上に設けられたp型の第1半導体層と、
前記第1半導体層の上に設けられ、0.3μm以上の厚さを有し、レーザ光を発生させる活性層と、
前記活性層の上に設けられたn型の第2半導体層と、
前記活性層の側面に設けられたp型の第3半導体層とを備え、
前記第3半導体層の価電子帯エネルギー準位は、前記第2半導体層の価電子帯エネルギー準位よりも大きく、前記活性層の価電子帯エネルギー準位よりも小さいことを特徴とする半導体光増幅器。
【請求項3】
前記第1半導体層と前記活性層との間に設けられ、側面が前記第3の半導体層に接触する第4の半導体層を有し、前記第4の半導体層の価電子帯エネルギー準位は、前記第2半導体層の価電子帯エネルギー準位よりも大きく、前記活性層の価電子帯エネルギー準位よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体光増幅器。
【請求項4】
前記第4の半導体層の価電子帯エネルギー準位は、前記活性層側から前記第1半導体層側に向かって小さくなることを特徴とする請求項3に記載の半導体光増幅器。
【請求項5】
前記活性層は、p型不純物を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の半導体光増幅器。
【請求項6】
前記活性層の前記第2半導体層との界面近傍に、前記p型不純物の濃度が他の部分よりも相対的に大きい領域を有していることを特徴とする請求項5に記載の半導体光増幅器。
【請求項7】
基板上に設けられた第1導電型の第1半導体層と、
前記第1半導体層の上に設けられ、0.3μm以上の厚さを有し、レーザ光を発生させる活性層と、
前記活性層の上に設けられた第2導電型の第2半導体層とを備え、
前記活性層は、圧縮歪の層と引張歪の層とが交互に積層された構造であることを特徴とする半導体光増幅器。
【請求項8】
前記圧縮歪の層および前記引張歪の層は、p型不純物を含むことを特徴とする請求項7に記載の半導体光増幅器。
【請求項9】
前記圧縮歪の層の厚さおよび前記引張歪の層の厚さは、電子のドブロイ波長の長さよりも薄いことを特徴とする請求項7又は8に記載の半導体光増幅器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−180228(P2007−180228A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−376283(P2005−376283)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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