説明

半導体光源点灯回路

【課題】半導体光源点灯回路を広範な順方向降下電圧に対応可能としつつ電気効率を改善する。
【解決手段】半導体光源点灯回路100は、互いに異なる直流のバッテリ電圧Vbatおよび接地電位を受け、接地電位との差が広がるようにバッテリ電圧Vbatを変換して直流のブースト電圧Vboostを生成するDC/DCコンバータ6と、ブースト電圧Vboostが印加されるブースト電圧出力端子BOOSTを有し、LED側コネクタと係合された場合ブースト電圧出力端子BOOSTとLED4のカソード側とが接続される3端子回路側コネクタと、LED電流が所望の値となるようDC/DCコンバータ6を制御すると共に、順方向降下電圧がバッテリ電圧Vbatよりも低い場合はバッテリ電圧Vbatをカソード側に印加されるべき電圧として選択し、バッテリ電圧Vbatが選択されない場合は接地電位を選択する制御回路102と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED(Light Emitting Diode)などの半導体光源を駆動する半導体光源点灯回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、前照灯などの車両用灯具に、従来のフィラメントを有するハロゲンランプに代えてより長寿命で低消費電力のLEDが利用されている。LEDの発光の度合いすなわち明るさは流す電流の大きさに依存するので、LEDを光源として利用する場合にはLEDに流れる電流を調節するための点灯回路が必要となる。
【0003】
直列に接続された複数のLEDを点灯させる場合、LEDの順方向降下電圧の総計とバッテリ電圧との大小関係によって点灯回路においてバッテリ電圧を昇圧するか降圧するかが分かれる。そのそれぞれの場合に対して専用の点灯回路を設計することとすると、点灯回路のバリエーションが増加し、製造コストが増大しうる。
【0004】
そこで本出願人は特許文献1において広範な順方向降下電圧に対応できる昇降圧DC/DCコンバータを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−98836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、LEDの順方向降下電圧の総計がバッテリ電圧よりも高い場合に昇降圧DC/DCコンバータを使用すると、昇圧型のDC/DCコンバータを使用する場合と比較して降圧機能を有する分電気効率の面で不利である。
【0007】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、半導体光源を発光させるために必要な発光電圧の広い範囲に対応可能でありながら良好な電気効率を有する半導体光源点灯回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様は、半導体光源点灯回路に関する。この半導体光源点灯回路は、互いに異なる直流の第1電圧および第2電圧を受け、第2電圧との差が広がるように第1電圧を変換して直流の第3電圧を生成するDC/DCコンバータと、第3電圧が印加される端子を有し、駆動対象の半導体光源側の対応する第2コネクタと係合された場合端子と半導体光源の一端とが接続される第1コネクタと、DC/DCコンバータと端子との間に流れる電流が所望の値となるようDC/DCコンバータを制御すると共に、半導体光源を発光させるために必要な発光電圧が第1電圧と第2電圧との差の絶対値よりも低い場合は第1電圧を半導体光源の他端に印加されるべき電圧として選択し、第1電圧が選択されない場合は第2電圧を半導体光源の他端に印加されるべき電圧として選択する制御回路と、を備える。
【0009】
この態様によると、第1電圧と第2電圧との差の絶対値と発光電圧との大小関係によって半導体光源の他端に印加されるべき電圧が選択される。
【0010】
本発明の別の態様もまた、半導体光源点灯回路である。この半導体光源点灯回路は、互いに異なる直流の第1電圧および第2電圧を受け、第2電圧との差が広がるように第1電圧を変換して直流の第3電圧を生成するDC/DCコンバータと、第1電圧が印加される第1端子と第2電圧が印加される第2端子と第3電圧が印加される第3端子とを有し、駆動対象の半導体光源側の対応する第2コネクタと係合された場合第3端子と半導体光源の一端とが接続される第1コネクタと、DC/DCコンバータと第3端子との間に流れる電流が所望の値となるようDC/DCコンバータを制御する制御回路と、を備える。第2コネクタは、半導体光源を発光させるために必要な既知の発光電圧が第1電圧と第2電圧との差の絶対値よりも低い場合は第1端子と半導体光源の他端とが接続されるよう、あるいは第1端子と半導体光源の他端とが接続されない場合は第2端子と半導体光源の他端とが接続されるよう、構成される。
【0011】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を装置、方法、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、半導体光源を発光させるために必要な発光電圧の広い範囲に対応可能でありながら良好な電気効率を有する半導体光源点灯回路を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施の形態に係る半導体光源点灯回路およびそれに接続される車載バッテリ、LEDの構成を示す回路図である。
【図2】順方向降下電圧がバッテリ電圧よりも低い場合および等しいか高い場合のそれぞれにおけるブースト電圧の時間変化を示すグラフである。
【図3】第2の実施の形態に係る半導体光源点灯回路の3端子回路側コネクタとLED側コネクタとの関係を示す模式図である。
【図4】第2の実施の形態に係る半導体光源点灯回路およびそれに接続される車載バッテリ、LEDの構成を示す回路図である。
【図5】第3の実施の形態に係る半導体光源点灯回路およびそれに接続される車載バッテリ、第1LEDパッケージ、第2LEDパッケージ、車両ECU(Engine Control Unit)の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、信号には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面において説明上重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0015】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0016】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態に係る半導体光源点灯回路はヘッドライトなどの車両用灯具の光源であるLEDを駆動する。半導体光源点灯回路はLEDのアノードにDC/DCコンバータの出力電圧を印加する。半導体光源点灯回路は、LEDを発光させるために必要な発光電圧すなわちLEDの順方向降下電圧と車載バッテリのバッテリ電圧との大小関係によって、LEDのカソードに印加する電圧をバッテリ電圧と基準電位である接地電位との間で切り替える。これにより、順方向降下電圧がバッテリ電圧よりも低い場合でもLEDを駆動でき、またそうでない場合にはLEDの駆動における電気効率をより高めることができる。
【0017】
図1は、第1の実施の形態に係る半導体光源点灯回路100およびそれに接続される車載バッテリ2、LED4の構成を示す回路図である。半導体光源点灯回路100は、DC/DCコンバータ6と、電流検出抵抗18と、第2スイッチング素子20と、第3スイッチング素子22と、制御回路102と、バッテリ電圧入力端子BATINと、バッテリ電圧出力端子BATOUTと、接地電位入力端子GNDINと、接地電位出力端子GNDOUTと、ブースト電圧出力端子BOOSTと、を備える。バッテリ電圧入力端子BATINは車載バッテリ2の正極端子と接続され、バッテリ電圧入力端子BATINにはバッテリ電圧Vbatが印加される。車載バッテリ2の負極端子および接地電位入力端子GNDINは接地され、接地電位入力端子GNDINには接地電位が印加される。
【0018】
LED4は、車載用のLEDを8つ直列に接続して構成される。LED4の順方向降下電圧Vは8つのLEDの順方向降下電圧を足し合わせたものである。LED4に流れる電流をLED電流と称す。半導体光源点灯回路100およびLED4は車両用灯具に搭載される。
【0019】
DC/DCコンバータ6は、互いに異なる直流のバッテリ電圧Vbatおよび接地電位を受け、接地電位との差が広がるようにバッテリ電圧Vbatを変換して直流のブースト電圧Vboostを生成する昇圧・非絶縁型のスイッチングレギュレータである。DC/DCコンバータ6は、第1キャパシタ8と、インダクタ10と、第1スイッチング素子12と、ダイオード14と、第2キャパシタ16と、を含む。
【0020】
第1キャパシタ8の一端およびインダクタ10の一端はバッテリ電圧入力端子BATINと接続される。第1キャパシタ8の他端は接地電位入力端子GNDINと接続されることにより接地される。第1スイッチング素子12は例えばNチャンネルMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)で構成される。インダクタ10の他端はダイオード14のアノードおよび第1スイッチング素子12のドレインと接続される。第1スイッチング素子12のソースは接地される。ダイオード14のカソードは第2キャパシタ16の一端と接続されると共に電流検出抵抗18の一端と接続される。第2キャパシタ16の他端は接地される。第1スイッチング素子12のゲートは制御回路102からパルス幅変調されたPWM(Pulse Width Modulation)信号S1を受ける。PWM信号S1は、DC/DCコンバータ6からLED4に出力されるLED電流を制御するための信号である。
【0021】
電流検出抵抗18の他端はブースト電圧出力端子BOOSTと接続される。以下、電流検出抵抗18の抵抗値は小さく、LED電流が電流検出抵抗18を流れることによる電圧降下は検出可能ではあるがブースト電圧Vboostと比較して無視できる程度であるとする。したがって、ブースト電圧出力端子BOOSTにはブースト電圧Vboostが印加される。
【0022】
第2スイッチング素子20、第3スイッチング素子22はそれぞれPチャンネルMOSFET、NチャンネルMOSFETである。第2スイッチング素子20、第3スイッチング素子22のソースはそれぞれバッテリ電圧入力端子BATIN、接地電位入力端子GNDINと接続される。第2スイッチング素子20、第3スイッチング素子22のドレインはそれぞれバッテリ電圧出力端子BATOUT、接地電位出力端子GNDOUTと接続される。第2スイッチング素子20、第3スイッチング素子22はそれぞれ、制御回路102からゲートに入力されるバッテリ出力制御信号S2、グランド出力制御信号S3によって制御される。
【0023】
ブースト電圧出力端子BOOST、バッテリ電圧出力端子BATOUT、接地電位出力端子GNDOUTはひとつの3端子回路側コネクタを形成する。この3端子回路側コネクタとLED4側の対応するLED側コネクタとが係合された場合、ブースト電圧出力端子BOOSTとLED4のアノード側とが接続され、バッテリ電圧出力端子BATOUTおよび接地電位出力端子GNDOUTとLED4のカソード側とが接続される。これにより、LED4のアノード側にはDC/DCコンバータ6から出力されるブースト電圧Vboostが印加される。
【0024】
制御回路102は、DC/DCコンバータ6とブースト電圧出力端子BOOSTとの間に流れる電流すなわちLED電流が所望の値となるようDC/DCコンバータ6を制御する。また制御回路102は、LED4の順方向降下電圧Vがバッテリ電圧Vbatよりも低い場合(以下、V<Vbatの場合と称す)はバッテリ電圧VbatをLED4のカソード側に印加されるべき電圧として選択し、バッテリ電圧Vbatが選択されない場合は接地電位をLED4のカソード側に印加されるべき電圧として選択する。バッテリ電圧Vbatが選択されない場合は、LED4の順方向降下電圧Vがバッテリ電圧Vbatと等しいかそれよりも高い場合(以下、V≧Vbatの場合と称す)であってもよい。
したがって、V<Vbatの場合はLED4のカソード側にバッテリ電圧Vbatが印加され、V≧Vbatの場合はLED4のカソード側に接地電位が印加される。
【0025】
制御回路102は、駆動部104と、第1差動増幅部106と、遅延付与部108と、第2差動増幅部110と、エラーアンプ112と、コンパレータ114と、第1バッファ116と、第2バッファ118と、第3バッファ120と、基準電圧源122と、を含む。
【0026】
第1差動増幅部106は、電流検出抵抗18の一端の電圧と電流検出抵抗18の他端の電圧との差を増幅し、電流検出抵抗18における電圧降下すなわちLED電流の大きさに応じた検出電圧Vdを生成する。第1差動増幅部106は生成された検出電圧Vdをエラーアンプ112の反転入力端子に印加する。
基準電圧源122は、LED電流の大きさの目標値に対応する基準電圧Vrefを生成し、エラーアンプ112の非反転入力端子に印加する。
【0027】
エラーアンプ112は、検出電圧Vdと基準電圧Vrefとを比較する。すなわちエラーアンプ112は検出電圧Vdが示すLED電流の大きさと基準電圧Vrefが示す目標値とを比較する。エラーアンプ112は、LED電流の大きさと目標値との差に応じた誤差電圧Veを生成し、駆動部104に出力する。
【0028】
駆動部104は、誤差電圧Veに基づいて第1スイッチング素子12のオンオフのデューティ比を制御する。駆動部104はPWM信号S1を生成し、第3バッファ120を介して第1スイッチング素子12のゲートに出力する。駆動部104は、LED電流の大きさが目標値に近づくように、誤差電圧Veに応じてPWM信号S1のデューティ比を設定する。
【0029】
第2差動増幅部110は、ブースト電圧出力端子BOOSTに印加される電圧と接地電位出力端子GNDOUTに印加される電圧との差をLED電圧VLEDとして生成する。LED電圧VLEDはLED4の両端電圧であり、LED4が通常の発光状態にある場合、LED電圧VLEDはLED4の順方向降下電圧Vと同等の値となる。第2差動増幅部110は生成されたLED電圧VLEDをコンパレータ114の非反転入力端子に印加する。
【0030】
コンパレータ114の反転入力端子にはバッテリ電圧Vbatが印加される。コンパレータ114は、バッテリ電圧VbatがLED電圧VLEDよりも高い場合はネゲートされすなわちローレベルとなり、そうでない場合はアサートされるすなわちハイレベルとなる切替信号S4を生成する。
【0031】
遅延付与部108は、半導体光源点灯回路100に電源が投入されてから所定の遅延期間が経過するまでは、制御回路102にLED4のカソード側に印加すべき電圧の選択動作を停止させる。遅延付与部108は、遅延期間において、バッテリ電圧VbatがLED4のカソード側に印加される状態を維持する。
【0032】
遅延付与部108は、半導体光源点灯回路100に電源が投入されてから遅延期間が経過するまではローレベルに固定され、その後は切替信号S4と同等となる遅延切替信号S5を生成する。遅延切替信号S5は切替信号S4を遅延期間中はローレベルでマスクすることで得られる信号に相当する。遅延付与部108は、生成された遅延切替信号S5を第1バッファ116、第2バッファ118を介して第3スイッチング素子22、第2スイッチング素子20のゲートにそれぞれ出力する。
【0033】
以上の構成による半導体光源点灯回路100の動作を説明する。
図2は、V<Vbatの場合、V≧Vbatの場合のそれぞれにおけるブースト電圧Vboostの時間変化を示すグラフである。図2の実線はV≧Vbatの場合のブースト電圧Vboostの時間変化を示し、一点鎖線はV<Vbatの場合のブースト電圧Vboostの時間変化を示す。
【0034】
時刻t1においてバッテリ電圧入力端子BATINにバッテリ電圧Vbatが印加されることにより半導体光源点灯回路100に電源が投入される。時刻t1を始点とする遅延期間DP中は遅延切替信号S5はローレベルに固定されるので、第2スイッチング素子20は導通状態とされ第3スイッチング素子22は非導通状態とされる。したがってLED4のカソード側にはバッテリ電圧Vbatが印加される。
【0035】
時刻t1において上昇を開始したブースト電圧Vboostは、LED4が発光すると、バッテリ電圧VbatにLED4の順方向降下電圧Vを加えた値付近で安定化する。以下、V≧Vbatの場合の順方向降下電圧Vを第1順方向降下電圧V1、V<Vbatの場合の順方向降下電圧Vを第2順方向降下電圧V2と称す。V≧Vbatの場合、ブースト電圧Vboostの安定値はバッテリ電圧Vbatに第1順方向降下電圧V1を加えた電圧である。V<Vbatの場合、ブースト電圧Vboostの安定値はバッテリ電圧Vbatに第2順方向降下電圧V2を加えた電圧である。
【0036】
≧Vbatの場合、時刻t1から遅延期間DPが経過した後の時刻t2において遅延切替信号S5はハイレベルとなり、第2スイッチング素子20は非導通状態とされ第3スイッチング素子22は導通状態とされる。したがって、LED4のカソード側には接地電位が印加される。するとブースト電圧Vboostは第1順方向降下電圧V1付近まで降下して安定化する。
なお、LED4のカソード側に印加する電圧の切り替えに際してデッドタイムを設けてもよい。
【0037】
<Vbatの場合、時刻t2以降も遅延切替信号S5はローレベルを維持するので、LED4のカソード側にはバッテリ電圧Vbatが印加されたままとなる。
【0038】
本実施の形態に係る半導体光源点灯回路100によると、V<Vbatの場合、V≧Vbatの場合のいずれにおいても同じ半導体光源点灯回路100、特に同じ昇圧型のDC/DCコンバータ6を使用することができる。したがって、例えばLEDの個数やスペック、バッテリ電圧の値によって異なる半導体光源点灯回路やDC/DCコンバータを使用しなくてよい分製造コストを削減できる。
【0039】
また、本実施の形態に係る半導体光源点灯回路100は、V<Vbatの場合はLED4のカソード側にバッテリ電圧Vbatを印加することによって降圧によるLED4の駆動を実現しつつ、V≧Vbatの場合はLED4のカソード側に印加する電圧を接地電位に切り替える。したがって、そのような切り替え機能を有さずLED4のカソード側にバッテリ電圧Vbatが固定的に印加される場合と比較して、通常点灯時のブースト電圧をより低くすることができるので、半導体光源点灯回路100の通常点灯時の電気効率をより高めることができる。その結果、発生する熱も少なくなり、より小型で低コストの素子を使用することが可能となる。
【0040】
また、本実施の形態に係る半導体光源点灯回路100では、LED4のカソード側に印加される電圧の切り替えは自動的に行われる。したがって、LEDの固体のばらつきや温度特性によりLED4の順方向降下電圧Vが変動することがあっても適応的に最適な駆動状態を選択できる。バッテリ電圧Vbatの変動についても同様である。
【0041】
また、本実施の形態に係る半導体光源点灯回路100では、電源投入後に遅延期間が設けられ、この遅延期間中はLED4のカソード側に印加すべき電圧の選択動作が停止される。したがって、ブースト電圧Vboostが立ち上がって十分に安定化するまでは、LED4のカソード側に印加される電圧の切り替えが行われないようにすることができる。その結果、十分に安定したブースト電圧Vboostに基づいて切り替えるべきかの比較判定が行われるので、そのような判定の信頼性を高めることができる。また、切り替える場合でも、遅延期間経過後のDC/DCコンバータ6の状態は十分に安定しているので、切り替えはよりスムーズに行われうる。
【0042】
また、本実施の形態に係る半導体光源点灯回路100では、遅延期間中はLED4のカソード側にバッテリ電圧Vbatが印加される。したがって、V<Vbatの場合、遅延期間中にLED4に順方向降下電圧Vを大きく超える電圧が加わることを防止できる。
【0043】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、LED4の順方向降下電圧Vとバッテリ電圧Vbatとの大小関係に基づいて、制御回路102がLED4のカソード側に印加される電圧を自動的に切り替える場合について説明した。第2の実施の形態に係る半導体光源点灯回路200では、半導体光源点灯回路200の3端子回路側コネクタ250に対応するLED側コネクタを2端子とした上で、その2端子と回路側の3端子との対応関係を既知の順方向降下電圧Vとバッテリ電圧Vbatとの大小関係に基づいて決定する。
【0044】
図3は、第2の実施の形態に係る半導体光源点灯回路200の3端子回路側コネクタ250とLED側コネクタ252との関係を示す模式図である。3端子回路側コネクタ250は、ブースト電圧出力端子BOOSTと、バッテリ電圧出力端子BATOUTと、接地電位出力端子GNDOUTと、を有する。ブースト電圧出力端子BOOSTにはDC/DCコンバータ6によって生成されるブースト電圧Vboostが印加され、バッテリ電圧出力端子BATOUTにはバッテリ電圧Vbatが印加され、接地電位出力端子GNDOUTには接地電位が印加される。
【0045】
LED側のモジュールは、3端子回路側コネクタ250に対応するLED側コネクタ252と、LED側ケーブルハーネス254と、LEDと、を有する。LED側コネクタ252はアノード端子258およびカソード端子260を有し、そのそれぞれはLED側ケーブルハーネス254を介してLEDのアノード、カソードと接続される。
【0046】
第2の実施の形態ではLEDの順方向降下電圧Vは既知とする。
LED262の順方向降下電圧Vがバッテリ電圧Vbatよりも低い場合、LED側コネクタ252は、ブースト電圧出力端子BOOSTとアノード端子258とが対応するよう、かつ、バッテリ電圧出力端子BATOUTとカソード端子260とが対応するよう、構成される。したがって、3端子回路側コネクタ250とLED側コネクタ252とが係合された場合、ブースト電圧出力端子BOOSTとLED262のアノードとが接続され、バッテリ電圧出力端子BATOUTとLED262のカソードとが接続される。
【0047】
LED256の順方向降下電圧Vがバッテリ電圧Vbatと等しいかそれよりも高い場合、LED側コネクタ252は、ブースト電圧出力端子BOOSTとアノード端子258とが対応するよう、かつ、接地電位出力端子GNDOUTとカソード端子260とが対応するよう、構成される。したがって、3端子回路側コネクタ250とLED側コネクタ252とが係合された場合、ブースト電圧出力端子BOOSTとLED256のアノードとが接続され、接地電位出力端子GNDOUTとLED256のカソードとが接続される。
【0048】
3端子回路側コネクタ250は例えば、3つのターミナルピンと、ターミナルピンが保持される3つのスロットを有するハウジングと、を有するレセプタクルであってもよい。LED側コネクタ252は、2つのターミナルピンと、ターミナルピンが保持される3つのスロットを有するハウジングと、を有するプラグであってもよい。順方向降下電圧Vとバッテリ電圧Vbatとの大小関係によって、プラグのハウジングの3つのスロットのうちどの2つのスロットにターミナルピンが保持されるかが決定される。
【0049】
図4は、第2の実施の形態に係る半導体光源点灯回路200およびそれに接続される車載バッテリ2、LED270の構成を示す回路図である。図4はLED270の順方向降下電圧Vがバッテリ電圧Vbatと等しいかそれよりも高い場合を示しており、LED270のカソード側は接地電位出力端子GNDOUTと接続される。
【0050】
半導体光源点灯回路200は、第1の実施の形態に係る半導体光源点灯回路100から自動切り替え機能を除いたものに相当する。半導体光源点灯回路200は、DC/DCコンバータ6と、電流検出抵抗18と、制御回路202と、バッテリ電圧入力端子BATINと、バッテリ電圧出力端子BATOUTと、接地電位入力端子GNDINと、接地電位出力端子GNDOUTと、ブースト電圧出力端子BOOSTと、を備える。制御回路202は第1の実施の形態に係る制御回路102と同様の電流フィードバック機能を有する。
【0051】
本実施の形態に係る半導体光源点灯回路200によると、半導体光源点灯回路の共用化および電気効率に関して第1の実施の形態に係る半導体光源点灯回路100と同様の作用効果が奏される。
【0052】
(第3の実施の形態)
第2の実施の形態では、LED256の順方向降下電圧Vがバッテリ電圧Vbatと等しいかそれよりも高い場合、接地電位出力端子GNDOUTとLED256のカソードとが接続される場合について説明した。第3の実施の形態に係る半導体光源点灯回路300は、接地電位出力端子GNDOUTとLEDのカソードとが接続される場合に所定の短絡条件が満たされると、接地電位出力端子GNDOUTに印加される電圧を接地電位からバッテリ電圧Vbatに切り替え、断検信号S6を生成する。
【0053】
短絡条件は例えば、LEDに短絡が発生した場合に電気的パラメータが取り得る値の範囲にその電気的パラメータの実測値が入ることであってもよく、LEDの順方向降下電圧Vの実測値が既知の値よりも低くなることであってもよく、さらにはLEDの順方向降下電圧Vの実測値が、既知の値よりも低くバッテリ電圧Vbatよりも高い所定の短絡しきい値よりも低くなることであってもよい。
【0054】
図5は、第3の実施の形態に係る半導体光源点灯回路300およびそれに接続される車載バッテリ2、第1LEDパッケージ350、第2LEDパッケージ352、車両ECU358の構成を示す回路図である。図5は第1LEDパッケージ350および第2LEDパッケージ352を合わせた順方向降下電圧Vがバッテリ電圧Vbatと等しいかそれよりも高い場合を示している。2つのLEDが直列に接続されたパッケージである第1LEDパッケージ350のアノード側は、ブースト電圧出力端子BOOSTと接続される。第1LEDパッケージ350のカソード側は、4つのLEDが直列に接続されたパッケージである第2LEDパッケージ352のアノード側と接続される。第2LEDパッケージ352のカソード側は接地電位出力端子GNDOUTと接続される。
【0055】
半導体光源点灯回路300は、DC/DCコンバータ6と、電流検出抵抗18と、制御回路302と、切替ダイオード354と、第4スイッチング素子356と、バッテリ電圧入力端子BATINと、バッテリ電圧出力端子BATOUTと、接地電位入力端子GNDINと、接地電位出力端子GNDOUTと、ブースト電圧出力端子BOOSTと、を備える。
【0056】
切替ダイオード354のアノードは接地電位出力端子GNDOUTと接続され、カソードはバッテリ電圧出力端子BATOUTと接続される。
第4スイッチング素子356はNチャンネルMOSFETであり、第4スイッチング素子356のドレインは切替ダイオード354のアノードおよび接地電位出力端子GNDOUTと接続され、ソースは接地電位入力端子GNDINと接続される。第4スイッチング素子356は制御回路302からゲートに入力される短絡切替信号S7によって制御される。
【0057】
制御回路302は、第1の実施の形態に係る制御回路102と同様の電流フィードバック機能を有する。制御回路302は、第1LEDパッケージ350および第2LEDパッケージ352を合わせた順方向降下電圧Vを監視する。制御回路302は、順方向降下電圧Vの実測値が短絡しきい値よりも低くなると、接地電位出力端子GNDOUTに印加されるべき電圧としてバッテリ電圧Vbatを選択すると共に断検信号S6を生成する。特に制御回路302は、順方向降下電圧Vの実測値が短絡しきい値よりも低くなると、短絡切替信号S7をハイレベルからローレベルに遷移させ、第4スイッチング素子356を導通状態から非導通状態に切り替える。これにより、接地電位出力端子GNDOUTには接地電位の代わりにバッテリ電圧Vbatに切替ダイオード354の順方向降下電圧を加味した電圧が印加される。
制御回路302は生成された断検信号S6を外部の車両ECU358に送信する。
【0058】
本実施の形態に係る半導体光源点灯回路300によると、半導体光源点灯回路の共用化および電気効率に関して第1の実施の形態に係る半導体光源点灯回路100と同様の作用効果が奏される。
【0059】
また、第1LEDパッケージ350、第2LEDパッケージ352のいずれかがパッケージショートした場合、それら全体の順方向降下電圧Vがバッテリ電圧Vbatを下回る可能性がある。そこで本実施の形態に係る半導体光源点灯回路300では、そのようなパッケージショートが検知された場合、接地電位出力端子GNDOUTに印加される電圧が接地電位からバッテリ電圧Vbatに切り替えられる。これにより、LEDの点灯を維持することができる。また、車両ECU358は断検信号S6に応じて適切な処理を行うことができる。
【0060】
以上、実施の形態に係る半導体光源点灯回路について説明した。これらの実施の形態は例示であり、その各構成要素や各処理の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。また、実施の形態同士の組み合わせも可能である。例えば、第3の実施の形態に係る半導体光源点灯回路300の短絡検出・切替機能を第1の実施の形態に係る半導体光源点灯回路100に導入してもよい。
【0061】
第1の実施の形態では、ブースト電圧出力端子BOOST、バッテリ電圧出力端子BATOUT、接地電位出力端子GNDOUTはひとつの3端子回路側コネクタを形成する場合について説明したが、これに限られない。例えば、バッテリ電圧出力端子BATOUTおよび接地電位出力端子GNDOUTの代わりに第2スイッチング素子20のドレインおよび第3スイッチング素子22のドレインの両方に半導体光源点灯回路の内部で接続された新たな端子を設け、その新たな端子とブースト電圧出力端子BOOSTとが2端子回路側コネクタを形成してもよい。
【0062】
第1の実施の形態において、第2スイッチング素子20をダイオードで置き換えてもよい。この場合、そのダイオードのアノードはバッテリ電圧出力端子BATOUTと接続され、カソードはバッテリ電圧入力端子BATINと接続される。本変形例によると、第1の実施の形態と比較して制御対象のスイッチがひとつ減るので制御をより簡易化できる。しかしながらダイオードの順方向降下電圧のため、電気効率は第1の実施の形態のほうが優れる。
【0063】
第1から第3の実施の形態では、駆動対象のLEDのカソード側に印加すべき電圧を選択するためのLEDの順方向降下電圧のしきい値をバッテリ電圧Vbatとする場合について説明したが、これに限られない。例えば、しきい値をバッテリ電圧Vbatよりも高い電圧としてもよい。
【0064】
第1から第3の実施の形態では、正のブースト電圧Vboostを生成してLEDを駆動する場合について説明したが、これに限られず、第1、第2または第3の実施の形態の技術的思想は負のブースト電圧を生成してLEDを駆動する場合にも適用できる。
【符号の説明】
【0065】
2 車載バッテリ、 4 LED、 6 DC/DCコンバータ、 20 第2スイッチング素子、 22 第3スイッチング素子、 100 半導体光源点灯回路、 102 制御回路、 200 半導体光源点灯回路、 202 制御回路、 300 半導体光源点灯回路、 302 制御回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる直流の第1電圧および第2電圧を受け、前記第2電圧との差が広がるように前記第1電圧を変換して直流の第3電圧を生成するDC/DCコンバータと、
前記第3電圧が印加される端子を有し、駆動対象の半導体光源側の対応する第2コネクタと係合された場合前記端子と前記半導体光源の一端とが接続される第1コネクタと、
前記DC/DCコンバータと前記端子との間に流れる電流が所望の値となるよう前記DC/DCコンバータを制御すると共に、前記半導体光源を発光させるために必要な発光電圧が前記第1電圧と前記第2電圧との差の絶対値よりも低い場合は前記第1電圧を前記半導体光源の他端に印加されるべき電圧として選択し、前記第1電圧が選択されない場合は前記第2電圧を前記半導体光源の他端に印加されるべき電圧として選択する制御回路と、を備えることを特徴とする半導体光源点灯回路。
【請求項2】
前記制御回路は、電源投入から所定の期間が経過するまでは選択動作を停止し、前記第1電圧または前記第2電圧のいずれか一方が前記半導体光源の他端に印加される状態を維持することを特徴とする請求項1に記載の半導体光源点灯回路。
【請求項3】
前記制御回路は、前記第1電圧が前記半導体光源の他端に印加される状態を前記所定の期間維持することを特徴とする請求項2に記載の半導体光源点灯回路。
【請求項4】
互いに異なる直流の第1電圧および第2電圧を受け、前記第2電圧との差が広がるように前記第1電圧を変換して直流の第3電圧を生成するDC/DCコンバータと、
前記第1電圧が印加される第1端子と前記第2電圧が印加される第2端子と前記第3電圧が印加される第3端子とを有し、駆動対象の半導体光源側の対応する第2コネクタと係合された場合前記第3端子と前記半導体光源の一端とが接続される第1コネクタと、
前記DC/DCコンバータと前記第3端子との間に流れる電流が所望の値となるよう前記DC/DCコンバータを制御する制御回路と、を備え、
前記第2コネクタは、前記半導体光源を発光させるために必要な既知の発光電圧が前記第1電圧と前記第2電圧との差の絶対値よりも低い場合は前記第1端子と前記半導体光源の他端とが接続されるよう、あるいは前記第1端子と前記半導体光源の他端とが接続されない場合は前記第2端子と前記半導体光源の他端とが接続されるよう、構成されることを特徴とする半導体光源点灯回路。
【請求項5】
前記第2端子と前記半導体光源の他端とが接続される場合、前記制御回路は、前記発光電圧の実測値が既知の値よりも低くなると、前記第2端子に印加されるべき電圧として前記第1電圧を選択すると共に検出信号を生成することを特徴とする請求項4に記載の半導体光源点灯回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−8615(P2013−8615A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141546(P2011−141546)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】