半導体光素子とその製造方法
【課題】本発明は、リッジなどが形成されて平坦でない半導体表面に対しエピタキシャル成長を行った際に生じる半導体層の突起による弊害を回避できる半導体光素子とその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】半導体基板と、前記半導体基板上に形成されたリッジと、前記リッジの側面に接して形成された半導体層とを備える。そして、前記リッジの側面であって前記半導体層に埋め込まれた部分の上端部分には(111)B面が形成される。
【解決手段】半導体基板と、前記半導体基板上に形成されたリッジと、前記リッジの側面に接して形成された半導体層とを備える。そして、前記リッジの側面であって前記半導体層に埋め込まれた部分の上端部分には(111)B面が形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライエッチングなどの半導体プロセスにより加工され平坦でなくなった半導体表面にエピタキシャル成長を行う工程を有する半導体光素子とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体光素子の製造工程では、微細な凸構造を有する表面にエピタキシャル成長を行う場合がある。そのような半導体光素子としては、光導波路となる微細なリッジ構造を形成したあとに、電流ブロック層をエピタキシャル成長させる場合が挙げられる。リッジ構造にのみ電流を流すために電流ブロック層でリッジ構造を埋め込む半導体光素子は埋込型半導体レーザと呼ばれる。その他、各種デバイスを同一基板にモノリシックに結合するために複数回のエピタキシャル成長が行われる複合デバイスも平坦でない半導体表面にエピタキシャル成長を行う。ここで、同一基板に搭載されるデバイスとしては、レーザ素子、導波路、光結合器、光増幅器、EA変調器、位相変調器などが挙げられる。
【0003】
平坦でない半導体表面にエピタキシャル成長を行う工程を含む半導体光素子の製造工程などについては特許文献1乃至5に記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−314853号公報
【特許文献2】特開平5−235467号公報
【特許文献3】特開平4−349679号公報
【特許文献4】特開昭62−128516号公報
【特許文献5】特開平8−5853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
表面に微細構造を有する半導体基板にエピタキシャル成長を行う場合、成長レートには面方位依存性がある。成長レートの面方位依存性に起因してエピタキシャル成長後の半導体層が平坦とならない問題があった。
【0006】
半導体光素子に用いられるIII-V族結晶材料を有機金属気相成長法(MOCVD)によって成長する場合、通常はV族原料ガス供給量がIII族ガス供給量より多い条件で成長される。そのような成長条件においては、(100)面に比べて(111)A面の成長が早い。また、(111)B面の成長は遅くなる。このことについて図15、16を参照して説明する。半導体基板100上に形成された活性層102、クラッド層104が上述の微細構造を形成する。そしてマスク層106をクラッド層104上に形成する。次いで、半導体基板100上に半導体層をエピタキシャル成長する。図16にはエピタキシャル成長した半導体層108が記載されている。そうすると、半導体層108の(111)A面の成長レートが大きいため、半導体基板100表面に突起が形成される場合がある。当該突起は図16に(111)A面として矢示されている。なお、図16において半導体層108は複数のラインで記載されているが、これは成長の進捗を可視化するものである。つまり、一定時間経過毎に半導体層108を線引きして示した。
【0007】
この突起が形成された結果、後の半導体加工プロセスが狙いどおり行えないことがある。その結果、光導波路近傍に不均一な形状が形成され実効的な屈折率変化が生じ、導波する光の散乱や反射などが生じる。すなわち、半導体光素子の特性に悪影響を及ぼす問題があった。
【0008】
このような突起発生の抑制のために以下の対策をとることが考えられる。すなわち、半導体層のエピタキシャル成長時の成長炉内圧力を低くする、成長温度を高くする、V/III比を変更する、または成長時に原料ガスと同時にHClガスなどのエッチング性ガスを同時に供給するなどの方法がある。しかし上述のような成長条件の変更は、結晶欠陥やアンドープレベルなどの結晶特性を保持する観点や、装置パラメータの制限などから禁止される場合が多い。よって、エピタキシャル成長条件を変えることによる突起の抑制は困難であるという問題があった。
【0009】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので半導体層の突起による弊害を回避した半導体光素子とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願の発明にかかる半導体光素子は、半導体基板と、該半導体基板上に形成されたリッジと、該リッジの側面に接して形成された半導体層とを備える。そして、該リッジの側面であって該半導体層に埋め込まれた部分の上端部分には(111)B面が形成されたことを特徴とする。
【0011】
本願の発明にかかる半導体光素子の製造方法は、半導体基板上にリッジを形成する工程と、該リッジ上にマスク層を形成する工程と、該リッジの側面であって該マスク層と接する部分に(111)B面を形成するようにエッチングを行う工程と、該リッジの側面と接し該リッジを埋め込むように半導体層を形成する工程とを備えたことを特徴とする。
【0012】
本願の発明にかかる半導体光素子の製造方法は、半導体基板上にリッジを形成する工程と、該リッジ上にマスク層を形成する工程と、該リッジの側面をウェットエッチし、該マスク層が該リッジのひさしを形成するように張り出した状態とする工程と、該リッジの側面と接し該リッジを埋め込むように半導体層を形成する工程とを備えたことを特徴とする。
【0013】
本願の発明にかかる半導体光素子の製造方法は、半導体基板上にリッジを形成する工程と、該リッジ上にマスク層を形成する工程と、該リッジの側面と接し該リッジを埋め込むように半導体層を形成する工程と、該半導体層を形成する工程で形成された突起部分を物理的な力で除去する工程とを備えたことを特徴とする。
【0014】
本願の発明にかかる半導体光素子の製造方法は、半導体基板上にリッジを形成する工程と、該リッジ上にマスク層を形成する工程と、該リッジの側面と接し該リッジを埋め込むように半導体層を形成する工程と、該半導体層を形成する工程で形成された突起部分を選択的にエッチングする異方性エッチングを行う工程とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、平坦でない半導体表面にエピタキシャル成長を行った際の突起による弊害を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態1の半導体光素子の断面図である。
【図2】実施形態1の半導体光素子の製造方法を説明するフローチャートである。
【図3】リッジの形成について説明する図である。
【図4】(111)B面の形成について説明する図である。
【図5】半導体層の形成について説明する図である。
【図6】実施形態2の半導体光素子の断面図である。
【図7】実施形態2の半導体光素子の製造方法を説明するフローチャートである。
【図8】リッジの形成について説明する図である。
【図9】マスク層のひさし部分の形成について説明する図である。
【図10】半導体層の形成について説明する図である。
【図11】実施形態3における突起の除去について説明する図である。
【図12】マスク層を尖らせて突起の除去を行うことを説明する図である。
【図13】マスク層を尖らせて突起の除去を行うことを説明する図である。
【図14】異方性エッチングにより突起を除去することを説明する図である。
【図15】本発明の課題を説明する図である。
【図16】本発明の課題を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施の形態1
本実施形態は図1乃至図5を参照して説明する。なお、同一または対応する構成要素には同一の符号を付して複数回の説明を省略する場合がある。他の実施形態でも同様である。
【0018】
図1は本実施形態の半導体光素子の断面図である。本実施形態の半導体光素子10は半導体基板12上に形成されたリッジを備える。リッジは活性層14、クラッド層16、コンタクト層18を備える。なお、説明の便宜上、コンタクト層を含まない構造をリッジと称することもある。リッジの側面にはリッジに接して半導体層20が形成される。半導体層20は電流ブロック層である。半導体層20は半導体基板12の(100)面に形成される。活性層14とクラッド層16は半導体層20によって埋め込まれる。
【0019】
クラッド層16の側面はほとんど(011)面である。しかし、クラッド層16の側面であって、半導体層20によって埋め込まれた部分の上端部分には(111)B面が形成される。
【0020】
図2は半導体光素子10の製造方法について説明するフローチャートである。図2に沿って半導体光素子の製造工程を説明する。まず、ステップ50にてマスク層30が形成される。マスク層30は活性層14となるべき層とクラッド層16となるべき層の上に形成される。活性層14となるべき層およびクラッド層16となるべき層はエッチングされてリッジを構成する層であるのでこのように称する。ステップ50を終えるとステップ52へと処理が進められる。ステップ52は活性層14となるべき層およびクラッド層16となるべき層をエッチングしてリッジを形成する工程である。ステップ52では先ずマスク層30上にレジストを塗布する。そして転写処理により当該レジストをパターニングする。その後マスク層30をエッチングしてマスク層30のパターンを形成する。次いでマスク層30をマスクとして、活性層14となるべき層とクラッド層16となるべき層をエッチングする。こうしてマスク層30のパターンを反映したリッジが形成される。ステップ52までを終えると図3に示す構造が得られる。マスク層30は後述の半導体層がクラッド層16上に形成されることを防止するものである。マスク層30はたとえばSiO2で形成される。
【0021】
ステップ52を終えるとステップ54へと処理が進められる。ステップ54ではリッジの側面をエッチングする。このエッチングは酸性溶液と過酸化水素の混合溶液を用いたウェットエッチングまたは、HCl、HBrなどのハロゲン系の反応性ガスを用いたガスエッチングである。これらのエッチングは(111)B面のエッチレートが低い。よって、エッチングの結果、図4に記載のリッジ側面形状が形成できる。ステップ54でリッジがエッチングされた幅は、図4において「L」で示されている。ここで、(100)面に成長するべき層厚×<100>方向の成長レート÷<011>方向の成長レート、で求められる値を「必要エッチング幅」と称する。前述のLは必要エッチング幅より大きい値である。
【0022】
ステップ54を終えるとステップ56へと処理が進められる。ステップ56では半導体層20が形成される。半導体層20によりバットジョイント構造が形成される。半導体層20は成長の進捗を可視化するために等時間間隔で線引きされて表示されている。図5に示されるように、ステップ56を終えるとほぼ平坦の半導体層20が形成される。
【0023】
リッジなどの微細構造を有する平坦でない表面にエピタキシャル成長を行う場合は、成長レートの大きい(111)A面が形成されることがある。エピタキシャル成長において、(111)A面の成長が急速に進み、半導体層の突起が形成される問題があった。しかしながら、本実施形態の半導体光素子はリッジに(111)B面が形成されているためこの問題を解消できる。すなわち、(111)B面は一般的なIII−V族結晶成長条件において成長レートが遅くなるため、半導体層20の形成過程での突起の発生を抑制できる。特に、リッジ側面は上述の必要エッチング幅より深くエッチングされるため、半導体層20の形成過程において突起発生を防止できる。これによりエピタキシャル成長の成長条件の変更を伴わず、突起による弊害を防止できる。
【0024】
実施の形態2
本実施形態は図6乃至図10を参照して説明する。本実施形態はSiO2などのマスク層を利用して半導体層の(111)A面方向の成長を抑制することが特徴である。図6は本実施形態の半導体光素子の断面図である。本実施形態の半導体光素子60は活性層62、クラッド層64、コンタクト層18からなるリッジを備える。活性層62、クラッド層64は半導体層66に埋め込まれる。
【0025】
図7は半導体光素子60の製造方法について説明するフローチャートである。図7に沿って半導体光素子60の製造工程を説明する。ステップ50および、ステップ52にて図8に示す構造が形成される。ステップ50およびステップ52については実施形態1で説明したので省略する。ステップ52を終えた段階では、マスク層30はクラッド層64上に配置されている。
【0026】
ステップ52を終えるとステップ70へと処理が進められる。ステップ70では活性層62とクラッド層64の側面をウェットエッチングする。このウェットエッチングは、臭化水素酸と過酸化水素水の混合溶液などの、等方的なエッチングレートをもったエッチャントを用いて行う。図9は前述のウェットエッチング後の形状を説明する図である。ウェットエッチングの結果、マスク層30がひさしのようにリッジに対して数μm程度張り出す。マスク層30のひさし部分は図9において破線72で囲む部分である。
【0027】
ステップ70を終えるとステップ56へと処理が進められる。ステップ56では図9に示す構造に対してエピタキシャル成長を行い半導体層66が形成される。ステップ56では、マスク層30のひさしによりマスク層30上からマイグレーションによりマスク層30直下に供給されるIII族原子や、直接的にマスク層30下に供給される原料原子が減少する。従って、マスク層30下の結晶成長は抑制される。半導体層66は活性層62とクラッド層64の側面と接し、それらを埋め込む。図10に示されるように、ステップ56を終えるとほぼ平坦の半導体層66が形成される。
【0028】
本実施形態ではマスク層30の一部であるひさし部分72が半導体層の(111)A面方向の成長を抑制する。そのため、実施形態1と同様に半導体層の突起などの形状不良を抑制できる。なお、本実施形態ではウェットエッチングによりひさし部分を形成したが、ドライエッチングによって形成してもよい。
【0029】
実施の形態3
本実施形態は図11乃至図14を参照して説明する。本実施形態は、半導体層の(111)A面が成長し突起が形成された後に、突起を除去する点が特徴である。図11は本実施形態の半導体光素子の断面図である。図11に示すように破線で囲まれた突起82が形成されたあとに、突起82に物理的な力を加えることにより突起82を除去する。そのような物理的な力は図11に矢印で示す方向に行う。また、物理的な力はブラシなどを用いて直接的に力を加えても良いし水流によって力を加えても良い。
【0030】
図12を参照して本実施形態の変形例について説明する。図12に示すように、マスク層84の形状をリッジ側面方向に尖った形状としても良い。このようにマスク層を尖らせるためには、たとえばマスク層84のパターニングに用いられるレジストとマスク層84の付着力を強化すれば良い。あるいはマスク層84のパターニングをする際のエッチング条件を、側面方向へエッチングレートを増大するように変更することも考えられる。しかしながらマスク層84を図12のように尖らせる方法は上述の方法に限定されない。
【0031】
このようなマスク層84により突起82に加わる力を一箇所に集中させ、突起除去性を向上させることができる。同様に図13に示すマスク層86のようにマスク層86を尖らせても良い。半導体基板12には複数のリッジが形成されることが一般的であるが、図12、13のように突起を除去すれば面内で均一な突起除去が可能である。
【0032】
図14を参照して本実施形態の変形例について説明する。図14は半導体層の突起を異方性エッチングにより除去する方法について説明する図である。図14に破線で示すように、半導体層80は突起82を有している。この突起は半導体層80が(111)A面方向に急速に成長したために形成されたものである。この変形例では突起82の除去のために硫酸、塩酸、リン酸、酒石酸などといった酸性溶液を用いた異方性エッチングを行う。エッチレートの異方性により(100)方向のエッチング量を最小限に抑制しつつ、(111)A面方向のエッチングが進む。その結果、突起82が選択的にエッチングされるため、突起82を除去または半導体光素子の特性上無視できる程度まで微小にできる。
【0033】
ここまでの全ての実施形態においては半導体層がリッジを埋め込む際に突起が形成されることを問題とした。しかしながら、平坦でない表面にエピタキシャル成長を行う場合であって(111)A面方向の成長が急速に進む場合には本発明が実施できる。よって、リッジの組成は実施形態の記載に限定されない。また、たとえば、各種デバイスを同一基板に搭載する場合などにも本発明が実施できる。
【符号の説明】
【0034】
10 半導体光素子、 12 半導体基板、 14 活性層、 16 クラッド層、 20 半導体層
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライエッチングなどの半導体プロセスにより加工され平坦でなくなった半導体表面にエピタキシャル成長を行う工程を有する半導体光素子とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体光素子の製造工程では、微細な凸構造を有する表面にエピタキシャル成長を行う場合がある。そのような半導体光素子としては、光導波路となる微細なリッジ構造を形成したあとに、電流ブロック層をエピタキシャル成長させる場合が挙げられる。リッジ構造にのみ電流を流すために電流ブロック層でリッジ構造を埋め込む半導体光素子は埋込型半導体レーザと呼ばれる。その他、各種デバイスを同一基板にモノリシックに結合するために複数回のエピタキシャル成長が行われる複合デバイスも平坦でない半導体表面にエピタキシャル成長を行う。ここで、同一基板に搭載されるデバイスとしては、レーザ素子、導波路、光結合器、光増幅器、EA変調器、位相変調器などが挙げられる。
【0003】
平坦でない半導体表面にエピタキシャル成長を行う工程を含む半導体光素子の製造工程などについては特許文献1乃至5に記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−314853号公報
【特許文献2】特開平5−235467号公報
【特許文献3】特開平4−349679号公報
【特許文献4】特開昭62−128516号公報
【特許文献5】特開平8−5853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
表面に微細構造を有する半導体基板にエピタキシャル成長を行う場合、成長レートには面方位依存性がある。成長レートの面方位依存性に起因してエピタキシャル成長後の半導体層が平坦とならない問題があった。
【0006】
半導体光素子に用いられるIII-V族結晶材料を有機金属気相成長法(MOCVD)によって成長する場合、通常はV族原料ガス供給量がIII族ガス供給量より多い条件で成長される。そのような成長条件においては、(100)面に比べて(111)A面の成長が早い。また、(111)B面の成長は遅くなる。このことについて図15、16を参照して説明する。半導体基板100上に形成された活性層102、クラッド層104が上述の微細構造を形成する。そしてマスク層106をクラッド層104上に形成する。次いで、半導体基板100上に半導体層をエピタキシャル成長する。図16にはエピタキシャル成長した半導体層108が記載されている。そうすると、半導体層108の(111)A面の成長レートが大きいため、半導体基板100表面に突起が形成される場合がある。当該突起は図16に(111)A面として矢示されている。なお、図16において半導体層108は複数のラインで記載されているが、これは成長の進捗を可視化するものである。つまり、一定時間経過毎に半導体層108を線引きして示した。
【0007】
この突起が形成された結果、後の半導体加工プロセスが狙いどおり行えないことがある。その結果、光導波路近傍に不均一な形状が形成され実効的な屈折率変化が生じ、導波する光の散乱や反射などが生じる。すなわち、半導体光素子の特性に悪影響を及ぼす問題があった。
【0008】
このような突起発生の抑制のために以下の対策をとることが考えられる。すなわち、半導体層のエピタキシャル成長時の成長炉内圧力を低くする、成長温度を高くする、V/III比を変更する、または成長時に原料ガスと同時にHClガスなどのエッチング性ガスを同時に供給するなどの方法がある。しかし上述のような成長条件の変更は、結晶欠陥やアンドープレベルなどの結晶特性を保持する観点や、装置パラメータの制限などから禁止される場合が多い。よって、エピタキシャル成長条件を変えることによる突起の抑制は困難であるという問題があった。
【0009】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので半導体層の突起による弊害を回避した半導体光素子とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願の発明にかかる半導体光素子は、半導体基板と、該半導体基板上に形成されたリッジと、該リッジの側面に接して形成された半導体層とを備える。そして、該リッジの側面であって該半導体層に埋め込まれた部分の上端部分には(111)B面が形成されたことを特徴とする。
【0011】
本願の発明にかかる半導体光素子の製造方法は、半導体基板上にリッジを形成する工程と、該リッジ上にマスク層を形成する工程と、該リッジの側面であって該マスク層と接する部分に(111)B面を形成するようにエッチングを行う工程と、該リッジの側面と接し該リッジを埋め込むように半導体層を形成する工程とを備えたことを特徴とする。
【0012】
本願の発明にかかる半導体光素子の製造方法は、半導体基板上にリッジを形成する工程と、該リッジ上にマスク層を形成する工程と、該リッジの側面をウェットエッチし、該マスク層が該リッジのひさしを形成するように張り出した状態とする工程と、該リッジの側面と接し該リッジを埋め込むように半導体層を形成する工程とを備えたことを特徴とする。
【0013】
本願の発明にかかる半導体光素子の製造方法は、半導体基板上にリッジを形成する工程と、該リッジ上にマスク層を形成する工程と、該リッジの側面と接し該リッジを埋め込むように半導体層を形成する工程と、該半導体層を形成する工程で形成された突起部分を物理的な力で除去する工程とを備えたことを特徴とする。
【0014】
本願の発明にかかる半導体光素子の製造方法は、半導体基板上にリッジを形成する工程と、該リッジ上にマスク層を形成する工程と、該リッジの側面と接し該リッジを埋め込むように半導体層を形成する工程と、該半導体層を形成する工程で形成された突起部分を選択的にエッチングする異方性エッチングを行う工程とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、平坦でない半導体表面にエピタキシャル成長を行った際の突起による弊害を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態1の半導体光素子の断面図である。
【図2】実施形態1の半導体光素子の製造方法を説明するフローチャートである。
【図3】リッジの形成について説明する図である。
【図4】(111)B面の形成について説明する図である。
【図5】半導体層の形成について説明する図である。
【図6】実施形態2の半導体光素子の断面図である。
【図7】実施形態2の半導体光素子の製造方法を説明するフローチャートである。
【図8】リッジの形成について説明する図である。
【図9】マスク層のひさし部分の形成について説明する図である。
【図10】半導体層の形成について説明する図である。
【図11】実施形態3における突起の除去について説明する図である。
【図12】マスク層を尖らせて突起の除去を行うことを説明する図である。
【図13】マスク層を尖らせて突起の除去を行うことを説明する図である。
【図14】異方性エッチングにより突起を除去することを説明する図である。
【図15】本発明の課題を説明する図である。
【図16】本発明の課題を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施の形態1
本実施形態は図1乃至図5を参照して説明する。なお、同一または対応する構成要素には同一の符号を付して複数回の説明を省略する場合がある。他の実施形態でも同様である。
【0018】
図1は本実施形態の半導体光素子の断面図である。本実施形態の半導体光素子10は半導体基板12上に形成されたリッジを備える。リッジは活性層14、クラッド層16、コンタクト層18を備える。なお、説明の便宜上、コンタクト層を含まない構造をリッジと称することもある。リッジの側面にはリッジに接して半導体層20が形成される。半導体層20は電流ブロック層である。半導体層20は半導体基板12の(100)面に形成される。活性層14とクラッド層16は半導体層20によって埋め込まれる。
【0019】
クラッド層16の側面はほとんど(011)面である。しかし、クラッド層16の側面であって、半導体層20によって埋め込まれた部分の上端部分には(111)B面が形成される。
【0020】
図2は半導体光素子10の製造方法について説明するフローチャートである。図2に沿って半導体光素子の製造工程を説明する。まず、ステップ50にてマスク層30が形成される。マスク層30は活性層14となるべき層とクラッド層16となるべき層の上に形成される。活性層14となるべき層およびクラッド層16となるべき層はエッチングされてリッジを構成する層であるのでこのように称する。ステップ50を終えるとステップ52へと処理が進められる。ステップ52は活性層14となるべき層およびクラッド層16となるべき層をエッチングしてリッジを形成する工程である。ステップ52では先ずマスク層30上にレジストを塗布する。そして転写処理により当該レジストをパターニングする。その後マスク層30をエッチングしてマスク層30のパターンを形成する。次いでマスク層30をマスクとして、活性層14となるべき層とクラッド層16となるべき層をエッチングする。こうしてマスク層30のパターンを反映したリッジが形成される。ステップ52までを終えると図3に示す構造が得られる。マスク層30は後述の半導体層がクラッド層16上に形成されることを防止するものである。マスク層30はたとえばSiO2で形成される。
【0021】
ステップ52を終えるとステップ54へと処理が進められる。ステップ54ではリッジの側面をエッチングする。このエッチングは酸性溶液と過酸化水素の混合溶液を用いたウェットエッチングまたは、HCl、HBrなどのハロゲン系の反応性ガスを用いたガスエッチングである。これらのエッチングは(111)B面のエッチレートが低い。よって、エッチングの結果、図4に記載のリッジ側面形状が形成できる。ステップ54でリッジがエッチングされた幅は、図4において「L」で示されている。ここで、(100)面に成長するべき層厚×<100>方向の成長レート÷<011>方向の成長レート、で求められる値を「必要エッチング幅」と称する。前述のLは必要エッチング幅より大きい値である。
【0022】
ステップ54を終えるとステップ56へと処理が進められる。ステップ56では半導体層20が形成される。半導体層20によりバットジョイント構造が形成される。半導体層20は成長の進捗を可視化するために等時間間隔で線引きされて表示されている。図5に示されるように、ステップ56を終えるとほぼ平坦の半導体層20が形成される。
【0023】
リッジなどの微細構造を有する平坦でない表面にエピタキシャル成長を行う場合は、成長レートの大きい(111)A面が形成されることがある。エピタキシャル成長において、(111)A面の成長が急速に進み、半導体層の突起が形成される問題があった。しかしながら、本実施形態の半導体光素子はリッジに(111)B面が形成されているためこの問題を解消できる。すなわち、(111)B面は一般的なIII−V族結晶成長条件において成長レートが遅くなるため、半導体層20の形成過程での突起の発生を抑制できる。特に、リッジ側面は上述の必要エッチング幅より深くエッチングされるため、半導体層20の形成過程において突起発生を防止できる。これによりエピタキシャル成長の成長条件の変更を伴わず、突起による弊害を防止できる。
【0024】
実施の形態2
本実施形態は図6乃至図10を参照して説明する。本実施形態はSiO2などのマスク層を利用して半導体層の(111)A面方向の成長を抑制することが特徴である。図6は本実施形態の半導体光素子の断面図である。本実施形態の半導体光素子60は活性層62、クラッド層64、コンタクト層18からなるリッジを備える。活性層62、クラッド層64は半導体層66に埋め込まれる。
【0025】
図7は半導体光素子60の製造方法について説明するフローチャートである。図7に沿って半導体光素子60の製造工程を説明する。ステップ50および、ステップ52にて図8に示す構造が形成される。ステップ50およびステップ52については実施形態1で説明したので省略する。ステップ52を終えた段階では、マスク層30はクラッド層64上に配置されている。
【0026】
ステップ52を終えるとステップ70へと処理が進められる。ステップ70では活性層62とクラッド層64の側面をウェットエッチングする。このウェットエッチングは、臭化水素酸と過酸化水素水の混合溶液などの、等方的なエッチングレートをもったエッチャントを用いて行う。図9は前述のウェットエッチング後の形状を説明する図である。ウェットエッチングの結果、マスク層30がひさしのようにリッジに対して数μm程度張り出す。マスク層30のひさし部分は図9において破線72で囲む部分である。
【0027】
ステップ70を終えるとステップ56へと処理が進められる。ステップ56では図9に示す構造に対してエピタキシャル成長を行い半導体層66が形成される。ステップ56では、マスク層30のひさしによりマスク層30上からマイグレーションによりマスク層30直下に供給されるIII族原子や、直接的にマスク層30下に供給される原料原子が減少する。従って、マスク層30下の結晶成長は抑制される。半導体層66は活性層62とクラッド層64の側面と接し、それらを埋め込む。図10に示されるように、ステップ56を終えるとほぼ平坦の半導体層66が形成される。
【0028】
本実施形態ではマスク層30の一部であるひさし部分72が半導体層の(111)A面方向の成長を抑制する。そのため、実施形態1と同様に半導体層の突起などの形状不良を抑制できる。なお、本実施形態ではウェットエッチングによりひさし部分を形成したが、ドライエッチングによって形成してもよい。
【0029】
実施の形態3
本実施形態は図11乃至図14を参照して説明する。本実施形態は、半導体層の(111)A面が成長し突起が形成された後に、突起を除去する点が特徴である。図11は本実施形態の半導体光素子の断面図である。図11に示すように破線で囲まれた突起82が形成されたあとに、突起82に物理的な力を加えることにより突起82を除去する。そのような物理的な力は図11に矢印で示す方向に行う。また、物理的な力はブラシなどを用いて直接的に力を加えても良いし水流によって力を加えても良い。
【0030】
図12を参照して本実施形態の変形例について説明する。図12に示すように、マスク層84の形状をリッジ側面方向に尖った形状としても良い。このようにマスク層を尖らせるためには、たとえばマスク層84のパターニングに用いられるレジストとマスク層84の付着力を強化すれば良い。あるいはマスク層84のパターニングをする際のエッチング条件を、側面方向へエッチングレートを増大するように変更することも考えられる。しかしながらマスク層84を図12のように尖らせる方法は上述の方法に限定されない。
【0031】
このようなマスク層84により突起82に加わる力を一箇所に集中させ、突起除去性を向上させることができる。同様に図13に示すマスク層86のようにマスク層86を尖らせても良い。半導体基板12には複数のリッジが形成されることが一般的であるが、図12、13のように突起を除去すれば面内で均一な突起除去が可能である。
【0032】
図14を参照して本実施形態の変形例について説明する。図14は半導体層の突起を異方性エッチングにより除去する方法について説明する図である。図14に破線で示すように、半導体層80は突起82を有している。この突起は半導体層80が(111)A面方向に急速に成長したために形成されたものである。この変形例では突起82の除去のために硫酸、塩酸、リン酸、酒石酸などといった酸性溶液を用いた異方性エッチングを行う。エッチレートの異方性により(100)方向のエッチング量を最小限に抑制しつつ、(111)A面方向のエッチングが進む。その結果、突起82が選択的にエッチングされるため、突起82を除去または半導体光素子の特性上無視できる程度まで微小にできる。
【0033】
ここまでの全ての実施形態においては半導体層がリッジを埋め込む際に突起が形成されることを問題とした。しかしながら、平坦でない表面にエピタキシャル成長を行う場合であって(111)A面方向の成長が急速に進む場合には本発明が実施できる。よって、リッジの組成は実施形態の記載に限定されない。また、たとえば、各種デバイスを同一基板に搭載する場合などにも本発明が実施できる。
【符号の説明】
【0034】
10 半導体光素子、 12 半導体基板、 14 活性層、 16 クラッド層、 20 半導体層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板上に形成されたリッジと、
前記リッジの側面に接して形成された半導体層とを備え、
前記リッジの側面であって前記半導体層に埋め込まれた部分の上端部分には(111)B面が形成されたことを特徴とする半導体光素子。
【請求項2】
半導体基板上にリッジを形成する工程と、
前記リッジ上にマスク層を形成する工程と、
前記リッジの側面であって前記マスク層と接する部分に(111)B面を形成するようにエッチングを行う工程と、
前記リッジの側面と接し前記リッジを埋め込むように半導体層を形成する工程とを備えたことを特徴とする半導体光素子の製造方法。
【請求項3】
半導体基板上にリッジを形成する工程と、
前記リッジ上にマスク層を形成する工程と、
前記リッジの側面をウェットエッチし、前記マスク層が前記リッジのひさしを形成するように張り出した状態とする工程と、
前記リッジの側面と接し前記リッジを埋め込むように半導体層を形成する工程とを備えたことを特徴とする半導体光素子の製造方法。
【請求項4】
半導体基板上にリッジを形成する工程と、
前記リッジ上にマスク層を形成する工程と、
前記リッジの側面と接し前記リッジを埋め込むように半導体層を形成する工程と、
前記半導体層を形成する工程で形成された突起部分を物理的な力で除去する工程とを備えたことを特徴とする半導体光素子の製造方法。
【請求項5】
前記マスク層は前記リッジ側面方向に尖った形状となるように形成されることを特徴とする請求項4に記載の半導体光素子の製造方法。
【請求項6】
半導体基板上にリッジを形成する工程と、
前記リッジ上にマスク層を形成する工程と、
前記リッジの側面と接し前記リッジを埋め込むように半導体層を形成する工程と、
前記半導体層を形成する工程で形成された突起部分を選択的にエッチングする異方性エッチングを行う工程とを備えたことを特徴とする半導体光素子の製造方法。
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板上に形成されたリッジと、
前記リッジの側面に接して形成された半導体層とを備え、
前記リッジの側面であって前記半導体層に埋め込まれた部分の上端部分には(111)B面が形成されたことを特徴とする半導体光素子。
【請求項2】
半導体基板上にリッジを形成する工程と、
前記リッジ上にマスク層を形成する工程と、
前記リッジの側面であって前記マスク層と接する部分に(111)B面を形成するようにエッチングを行う工程と、
前記リッジの側面と接し前記リッジを埋め込むように半導体層を形成する工程とを備えたことを特徴とする半導体光素子の製造方法。
【請求項3】
半導体基板上にリッジを形成する工程と、
前記リッジ上にマスク層を形成する工程と、
前記リッジの側面をウェットエッチし、前記マスク層が前記リッジのひさしを形成するように張り出した状態とする工程と、
前記リッジの側面と接し前記リッジを埋め込むように半導体層を形成する工程とを備えたことを特徴とする半導体光素子の製造方法。
【請求項4】
半導体基板上にリッジを形成する工程と、
前記リッジ上にマスク層を形成する工程と、
前記リッジの側面と接し前記リッジを埋め込むように半導体層を形成する工程と、
前記半導体層を形成する工程で形成された突起部分を物理的な力で除去する工程とを備えたことを特徴とする半導体光素子の製造方法。
【請求項5】
前記マスク層は前記リッジ側面方向に尖った形状となるように形成されることを特徴とする請求項4に記載の半導体光素子の製造方法。
【請求項6】
半導体基板上にリッジを形成する工程と、
前記リッジ上にマスク層を形成する工程と、
前記リッジの側面と接し前記リッジを埋め込むように半導体層を形成する工程と、
前記半導体層を形成する工程で形成された突起部分を選択的にエッチングする異方性エッチングを行う工程とを備えたことを特徴とする半導体光素子の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−155205(P2011−155205A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16998(P2010−16998)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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