説明

半導体封止用エポキシ樹脂組成物及び半導体装置

【課題】 連続成形性、半田リフロー性、素子の封止成形時における離型性、樹脂硬化物表面の外観、金型汚れ性に優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(A)第1のエポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂系硬化剤、(C)ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)、及び/又は、ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)と第2のエポキシ樹脂との反応生成物(c2)、並びに(D)トリレンジイソシアネート変性酸化ワックスを含むことを特徴とするエポキシ樹脂組成物、好ましくは、前記(C)成分中に含まれるポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)成分としての配合量W(c1)と前記(D)トリレンジイソシアネート変性酸化ワックスの配合量W(D)との重量比W(c1)/W(D)が3/1から1/5までの範囲であるエポキシ樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体封止用エポキシ樹脂組成物及びそれを用いた半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、軽量化、高性能化の市場動向に伴い、電子部品の高集積化が年々進み、またパッケージの表面実装化が促進されてきている。一方地球環境へ配慮した企業活動が重要視され、電子機器の分野でも有害物質である鉛を2006年までに特定用途以外で全廃することが求められている。そのような中で電子部品に使用される半田においても鉛フリー半田への転換が求められている。しかしながら、鉛フリー半田の融点は従来の鉛/スズ半田に比べて高いため、赤外線リフロー、半田浸漬等の半田実装時の温度も従来の220〜240℃から、今後240℃〜260℃へと高くなる。このような実装温度の上昇により、半導体を封止する樹脂については実装時に樹脂部にクラックが入り易くなり、半導体の信頼性を保証することが困難になってきているという問題が生じている。更にリードフレームについても、外装半田メッキも脱鉛する必要があるとの観点から、外装半田メッキの代わりに事前にニッケル・パラジウムメッキを施したリードフレームの適用が進められている。このニッケル・パラジウムメッキは一般的な封止材料との密着性が低く、実装時に界面において剥離が生じ易く、樹脂部にクラックも入り易いという問題が生じている。
【0003】
このような課題に対し、半田リフロー性の向上に対して封止用樹脂として低吸水性のエポキシ樹脂や硬化剤を適用することにより(例えば、特許文献1、2参照。)、実装温度の上昇に対して対応が取れるようになってきた。その反面、このような低吸水・低弾性率を示すエポキシ樹脂組成物は架橋密度が低く、硬化直後の成形物は軟らかく、連続生産では金型への樹脂トラレ等の成形性での不具合が生じ、生産性を低下させる問題があった。
また、連続成形性向上への取り組みとしては、離型効果の高い離型剤の適用が提案されているが、離型効果の高い離型剤は必然的に樹脂硬化物の表面に浮き出しやすく、連続生産すると樹脂硬化物表面の外観及び金型表面を著しく汚してしまう欠点があった。また樹脂硬化物表面の外観に優れるエポキシ樹脂組成物として、特定の構造を有するシリコーン化合物を添加する手法等が提案されている(例えば、特許文献3、4参照。)が、離型性は不充分で連続成形においてエアベント部分で樹脂が付着してエアベントを塞ぐことにより、未充填等の成形不具合を生じさせる等、連続成形性の低下を引き起こす問題があった。以上より、半田リフロー性、離型性、連続成形性、樹脂硬化物表面の外観、金型汚れ全ての課題に対応した半導体封止用エポキシ樹脂組成物が求められている。
【0004】
【特許文献1】特開平9−3161号公報
【特許文献2】特開平9−235353号公報
【特許文献3】特開2002−97344号公報
【特許文献4】特開2001−310930号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、連続成形性、半田リフロー性、素子の封止成形時における離型性、樹脂硬化物表面の外観、金型汚れ性とのバランスに優れる半導体封止用エポキシ樹脂組成物及びそれを用いた半導体装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、
(A)第1のエポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂系硬化剤、(C)ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)、及び/又は、ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)と第2のエポキシ樹脂との反応生成物(c2)、並びに(D)トリレンジイソシアネート変性酸化ワックスを含むことを特徴とする。
【0007】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、前記ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)が下記一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサンであるエポキシ樹脂組成物であるものとすることができる。
【化1】

(ただし、上記一般式(1)において、R1は水素、メチル基、フェニル基、又はR2から選ばれる基であり、互いに同一であっても異なっていてもよいが、少なくとも1つ以上がR2で表されるポリカプロラクトン基を有する有機基である。n1の平均値は1以上、50以下の正数である。上記R2において、aの平均値は1以上、20以下の正数であり、R3は炭素数1〜30の有機基である。)
【0008】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、前記(D)トリレンジイソシアネート変性酸化ワックスの滴点が70℃以上、120℃以下であるエポキシ樹脂組成物であるものとすることができる。
【0009】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、前記(D)トリレンジイソシアネート変性酸化ワックスの酸価が10mgKOH/g以上、50mgKOH/g以下であるエポキシ樹脂組成物であるものとすることができる。
【0010】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、前記(D)トリレンジイソシアネート変性酸化ワックスの平均粒径が20μm以上、70μm以下であり、全トリレンジイソシアネート変性酸化ワックス中における粒径106μm以上の粒子の含有比率が0.1重量%以下であるエポキシ樹脂組成物であるものとすることができる。
【0011】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、前記ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)の配合量W(c1)と前記(D)トリレンジイソシアネート変性酸化ワックスの配合量W(D)との重量比W(c1)/W(D)が3/1から1/5までの範囲であるエポキシ樹脂組成物であるものとすることができる。
【0012】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、前記(A)第1のエポキシ樹脂が下記一般式(2)で表されるエポキシ樹脂(a1)を含むエポキシ樹脂組成物であるものとすることができる。
【化2】

(ただし、上記一般式(2)において、Ar1、Ar2は炭素数6〜20の芳香族基であり、互いに同じであっても異なっていてもよい。R4、R5は炭素数1〜6の炭化水素基であり、互いに同じであっても異なっていてもよい。R6、R7は水素、炭素数1〜4の炭化水素基又は炭素数6〜20の芳香族基であり、互いに同じであっても異なっていてもよい。R8は炭素数1〜4の炭化水素基で、W1は酸素原子又は硫黄原子である。OGはグリシドキシ基である。b、cは0〜10の整数、dは0〜3の整数、eは1〜3の整数である。m2は0〜20の整数であり、n2は1〜20の整数であり、かつm2/n2の平均は1/10〜1/1である。m2個の繰り返し単位とn2個の繰り返し単位は、それぞれが連続で並んでいても、お互いが交互もしくはランダムに並んでいてもよいが、それぞれの間には必ず−CR6R7−を有する構造をとる。)
【0013】
本発明の半導体装置は、前述の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて素子を封止してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に従うと、電子部品装置実装時において優れた耐半田リフロー性を示すとともに、素子の封止成形時における離型性、連続成形性、樹脂硬化物表面の外観、金型汚れ性等とのバランスに優れる半導体封止用エポキシ樹脂組成物及びそれを用いた半導体装置が得られるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、(A)第1のエポキシ樹脂および(B)フェノール樹脂系硬化剤を必須成分とする樹脂組成物に、(C)ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)、及び/又は、ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)と第2のエポキシ樹脂との反応生成物(c2)、並びに(D)トリレンジイソシアネート変性酸化ワックスを含有させることにより、素子の封止成形時において離型性、連続成形性、樹脂硬化物表面の外観が良好で金型汚れも発生し難いという優れた成形性を示すとともに、電子部品装置実装時の半田リフロー性にも優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物及びそれを用いた半導体装置が得られるものである。
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0017】
本発明で用いられる(A)第1のエポキシ樹脂とは、1分子内にエポキシ基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、その分子量、分子構造を特に限定するものではないが、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、フェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、アントラセン又はその水添化物の骨格を有するエポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、フェノール性水酸基含有芳香族類とアルデヒド類とアルコキシ基もしくはチオアルキル基を含有する芳香族類とを共縮合して得られたフェノール樹脂類をエピクロルヒドリンでグリシジルエーテル化したエポキシ樹脂、等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。なかでも、半田リフロー性及び耐燃性の観点からは、下記一般式(2)で表されるエポキシ樹脂(a1)が好ましい。
【0018】
【化2】

(ただし、上記一般式(2)において、Ar1、Ar2は炭素数6〜20の芳香族基であり、互いに同じであっても異なっていてもよい。R4、R5は炭素数1〜6の炭化水素基であり、互いに同じであっても異なっていてもよい。R6、R7は水素、炭素数1〜4の炭化水素基又は炭素数6〜20の芳香族基であり、互いに同じであっても異なっていてもよい。R8は炭素数1〜4の炭化水素基で、W1は酸素原子又は硫黄原子である。OGはグリシドキシ基である。b、cは0〜10の整数、dは0〜3の整数、eは1〜3の整数である。m2は0〜20の整数であり、n2は1〜20の整数であり、かつm2/n2の平均は1/10〜1/1である。m2個の繰り返し単位とn2個の繰り返し単位は、それぞれが連続で並んでいても、お互いが交互もしくはランダムに並んでいてもよいが、それぞれの間には必ず−CR6R7−を有する構造をとる。)
【0019】
一般式(2)で表されるエポキシ樹脂(a1)は、異なるm2、n2値である複数の成分の集合体であり、各々の成分はm3が0〜20の整数であり、n3が1〜20の整数であって、各々の成分毎に互いに同じであっても異なっていてもよいが、m3/n3の全体としての平均値は1/10〜1/1であることが好ましく、1/9〜1/2であることがより好ましい。m3/n3の平均値が上記下限値以上であれば、半田リフロー性及び耐燃性向上効果を得ることができる。また、上記上限値以下であれば、樹脂粘度が高くなることによる樹脂組成物の流動性の低下を引き起こす恐れが少なく、良好な流動性を得ることができる。
【0020】
一般式(2)で表される構造を有するエポキシ樹脂(a1)の具体例としては、フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂(一般式(2)において、−Ar1−:フェニレン基、−Ar2−:フェニレン基、R6:水素、R7:水素、b=0、c=0、d=0、e=1、m2/n2の平均値:1)、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂(一般式(2)において、−Ar1−:ビフェニレン基、−Ar2−:フェニレン基、R6:水素、R7:水素、b=0、c=0、d=0、e=1、m2/n2の平均値:1)、フェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂(一般式(2)において、−Ar1−:ナフタレン基、−Ar2−:フェニレン基、R6:水素、R7:水素、b=0、c=0、d=0、e=1、m2/n2の平均値:1)、メトキシナフタレンとフェノールとホルムアルデヒドを共縮合して得られるノボラック型フェノール樹脂のエポキシ化樹脂(一般式(2)において、−Ar1−:ナフタレン基、−Ar2−:フェニレン基、R6:水素原子、R7:水素原子、R8:メチル基、W1:酸素原子、b=0、c=0、d=1、e=1、全体としての平均値におけるm2/n2の平均値:1/10〜1/1)、メトキシナフタレンとクレゾールとホルムアルデヒドを共縮合して得られるノボラック型フェノール樹脂のエポキシ化樹脂(一般式(2)において、−Ar1−:ナフタレン基、−Ar2−:フェニレン基、R5:メチル基、R6:水素原子、R7:水素原子、R8:メチル基、W1:酸素原子、b=0、c=1、d=1、e=1、全体としての平均値におけるm2/n2の平均値:1/10〜1/1)等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0021】
本発明で用いられる(A)第1のエポキシ樹脂全体の配合割合の下限値については、特に限定されないが、全エポキシ樹脂組成物中に、3重量%以上であることが好ましく、5重量%以上であることがより好ましい。配合割合の下限値が上記範囲内であると、樹脂組成物は成形時の流動性に優れたものとなる。また、(A)第1のエポキシ樹脂全体の配合割合の上限値については、特に限定されないが、全エポキシ樹脂組成物中に、12重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましい。配合割合の上限値が上記範囲内であると、樹脂組成物は半田リフロー性に優れたものとなる。
【0022】
本発明で用いられる(B)フェノール樹脂系硬化剤とは、1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、その分子量、分子構造を特に限定するものではないが、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、トリフェノールメタン型樹脂、フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン及び/又はビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂、ビスフェノール化合物、等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。これらのうち、硬化性の点から水酸基当量は90g/eq以上、250g/eq以下のものが好ましい。
【0023】
本発明で用いられる(B)フェノール樹脂系硬化剤の配合割合の下限値については、特に限定されないが、全エポキシ樹脂組成物中に、2重量%以上であることが好ましく、4重量%以上であることがより好ましい。配合割合の下限値が上記範囲内であると、樹脂組成物は成形時の流動性に優れたものとなる。また、(B)フェノール樹脂系硬化剤の配合割合の上限値については、10重量%以下であることが好ましく、8重量%以下であることがより好ましい。配合割合の上限値が上記範囲内であると、樹脂組成物は半田リフロー性に優れたものとなる。
【0024】
また、(A)第1のエポキシ樹脂及び(B)フェノール樹脂系硬化剤の配合比率としては、全エポキシ樹脂のエポキシ基数(EP)と全フェノール樹脂系硬化剤のフェノール性水酸基数(OH)との比(EP)/(OH)が0.8以上、1.3以下であることが好ましい。当量比がこの範囲であると、エポキシ樹脂組成物の硬化性が維持でき、又は樹脂硬化物の物性を良好に保つことができる。
【0025】
本発明では、(C)ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)、及び/又は、ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)と第2のエポキシ樹脂との反応生成物(c2)と、(D)トリレンジイソシアネート変性酸化ワックスと、を併用することが好ましい。これにより、エポキシ樹脂マトリックスと(D)トリレンジイソシアネート変性酸化ワックスとを適正な状態に相溶化させることができるため、これらを併用したエポキシ樹脂組成物は、その成形時において、樹脂硬化物表面の外観と離型性とを両立させることができ、連続成形性が良好になる。
【0026】
それに対し、(D)トリレンジイソシアネート変性酸化ワックスを使用せずに、(C)ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)、及び/又は、ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)と第2のエポキシ樹脂との反応生成物(c2)のみを使用した場合では、離型性が不充分となり、連続成形性が低下する。反対に(C)ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)、及び/又は、ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)と第2のエポキシ樹脂との反応生成物(c2)を使用せずに、(D)トリレンジイソシアネート変性酸化ワックスのみを使用した場合では、エポキシ樹脂マトリックス中における(D)トリレンジイソシアネート変性酸化ワックスの相溶化が不充分となり、樹脂硬化物表面の外観が悪化する。ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)の配合量W(c1)と(D)トリレンジイソシアネート変性酸化ワックスの配合量W(D)との重量比W(c1)/W(D)としては、3/1から1/5までの範囲が好ましく、この範囲内にあるときが最も両者を併用する効果が高くなる。尚、(C)成分としてポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)と第2のエポキシ樹脂との反応生成物(c2)を用いる場合のポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)の配合量W(c1)とは、第2のエポキシ樹脂と反応させる前のポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)の全エポキシ樹脂組成物に対する配合量を意味する。
【0027】
本発明で用いられるポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)は、ポリカプロラクトンとオルガノポリシロキサンを混合し、白金触媒下50〜100℃で反応させることで得られる。ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)としては、特に限定するものではないが、下記一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサンが好ましい。
【化1】

(ただし、上記一般式(1)において、R1は水素、メチル基、フェニル基、又はR2から選ばれる基であり、互いに同一であっても異なっていてもよいが、少なくとも1つ以上がR2で表されるポリカプロラクトン基を有する有機基である。n1の平均値は1以上、50以下の正数である。上記R2において、aの平均値は1以上、20以下の正数であり、R3は炭素数1〜30の有機基である。)
【0028】
前記一般式(1)において、R1は水素、メチル基、フェニル基、又はR2から選ばれる基であり、互いに同一であっても異なっていてもよいが、少なくとも1つ以上がR2で表されるポリカプロラクトン基を有する有機基である。R2において、aの平均値は1以上、20以下の正数であり、R3は炭素数1〜30の有機基である。ポリカプロラクトン基を有する有機基の炭素数が上記範囲内であると、エポキシ樹脂マトリックスとの相溶性が適正な状態となり、樹脂硬化物表面の外観が良好なものとなる。また、前記一般式(1)において、n1の平均値は1以上、50以下の正数である。n1の平均値が上記範囲内であると、オルガノポリシロキサン自体の粘度が適正な範囲となるため、流動性が良好なものとなる。
【0029】
前記(C)ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)、及び/又は、ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)と第2のエポキシ樹脂との反応生成物(c2)を使用すると、流動性の低下を引き起こさず、(D)トリレンジイソシアネート変性酸化ワックスのように樹脂との相溶性が悪い離型剤を用いた場合においても、樹脂硬化物表面の外観を良好にすることができる。
【0030】
(C)ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)と第2のエポキシ樹脂との反応生成物(c2)の製法については、特に限定するものではないが、例えば、ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)を第2のエポキシ樹脂とともに硬化促進剤により溶融・反応させることで得ることができる。ここで言う硬化促進剤とは、オルガノポリシロキサン(c1)のポリカプロラクトン基と第2のエポキシ樹脂のエポキシ基との硬化反応を促進させるものであればよく、後述する(A)第1のエポキシ樹脂のエポキシ基と(B)フェノール樹脂系硬化剤のフェノール性水酸基との硬化反応を促進させる硬化促進剤と同じものを用いることができる。また、ここで言う第2のエポキシ樹脂とは、1分子内にエポキシ基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、前述した(A)第1のエポキシ樹脂と同じものを用いることができる。 (C)ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)と第2のエポキシ樹脂との反応生成物(c2)を使用すると、更に、連続成形後の型汚れが発生し難く、連続成形性が極めて良好になる。
【0031】
(C)ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)、及び/又は、ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)と第2のエポキシ樹脂との反応生成物(c2)の配合量は、ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)での配合量として、全エポキシ樹脂組成物中0.01重量%以上、3重量%以下であることが好ましい。配合量が上記範囲内であると、(D)トリレンジイソシアネート変性酸化ワックスによる樹脂硬化物表面の外観汚れを抑えることができ、良好な外観を得ることができる。また、配合量が上記範囲内であると、ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)自体による樹脂硬化物表面の外観悪化を抑えることができ、良好な外観を得ることができる。
また、本発明に用いられる(C)ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)、及び/又は、ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)と第2のエポキシ樹脂との反応生成物(c2)を添加する効果を損なわない範囲で、他のオルガノポリシロキサンを併用することができる。
【0032】
本発明で用いられる(D)トリレンジイソシアネート変性酸化ワックスは、酸化ワックスをトリレンジイソシアネート変性することにより得られ、離型性が非常に優れている。本発明で用いられる(D)トリレンジイソシアネート変性酸化ワックスとしては、特に限定するものではないが、例えば、トリレンジイソシアネート変性酸化ポリプロピレンワックス、トリレンジイソシアネート変性酸化ポリエチレンワックス、トリレンジイソシアネート変性酸化パラフィンワックスが挙げられる。中でもトリレンジイソシアネート変性酸化ポリエチレンワックス、トリレンジイソシアネート変性酸化パラフィンワックスが、エポキシ樹脂組成物の離型性と樹脂硬化物表面の外観の観点から、より好ましい。これらのトリレンジイソシアネート変性酸化ワックスは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0033】
本発明で用いられる(D)トリレンジイソシアネート変性酸化ワックスの滴点は、70℃以上、120℃以下が好ましく、より好ましくは80℃以上、110℃以下である。滴点は、ASTM D127に準拠した方法により測定することができる。具体的には、金属ニップルを用いて、溶融したワックスが金属ニップルから最初に滴下するときの温度として測定される。以下の例においても、同様の方法により測定することができる。滴点が上記範囲内にあると、(D)トリレンジイソシアネート変性酸化ワックスは熱安定性に優れ、連続成形時に(D)トリレンジイソシアネート変性酸化ワックスが焼き付きにくい。そのため、金型からの樹脂硬化物の離型性に優れるとともに、連続成形性にも優れる。さらに、上記範囲内であると、エポキシ樹脂組成物を硬化させる際、(D)トリレンジイソシアネート変性酸化ワックスが充分に溶融する。これにより、樹脂硬化物中に(D)トリレンジイソシアネート変性酸化ワックスが略均一に分散する。そのため、樹脂硬化物表面における(D)トリレンジイソシアネート変性酸化ワックスの偏析が抑制され、金型の汚れや樹脂硬化物表面の外観の悪化を低減することができ、樹脂組成物は良好な外観となる。
【0034】
本発明で用いられる(D)トリレンジイソシアネート変性酸化ワックスの酸価は、10/mg以上、50mgKOH/g以下が好ましく、より好ましくは15mgKOH/g以上、40mgKOH/g以下である。酸価は樹脂硬化物との相溶性に影響を及ぼす。酸価は、JIS K 3504に準拠した方法により測定することができる。具体的には、ワックス類1g中に含有する遊離脂肪酸を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数として測定される。以下の例においても、同様の方法により測定することができる。酸価が上記範囲内にあると、(D)トリレンジイソシアネート変性酸化ワックスは、樹脂硬化物中において、エポキシ樹脂マトリックスと好ましい相溶状態となる。これにより、(D)トリレンジイソシアネート変性酸化ワックスと、エポキシ樹脂マトリックスとが、相分離を起こすことがない。そのため、樹脂硬化物表面における(D)トリレンジイソシアネート変性酸化ワックスの偏析が抑制され、金型の汚れや樹脂硬化物表面の外観の悪化を低減することができ樹脂組成物は良好な外観となる。さらに、(D)トリレンジイソシアネート変性酸化ワックスが樹脂硬化物表面に存在するため、樹脂硬化物は金型からの離型性に優れる。一方、エポキシ樹脂マトリックスとの相溶性が高すぎると、(D)トリレンジイソシアネート変性酸化ワックスが樹脂硬化物表面に染み出すことができず、充分な離型性を確保することができない場合がある。
【0035】
本発明で用いられる(D)トリレンジイソシアネート変性酸化ワックスの平均粒径は、20μm以上、70μm以下が好ましく、より好ましくは30μm以上、60μm以下である。平均粒径は、例えば(株)島津製作所製のSALD−7000などのレーザー回折式粒度分布測定装置を用いて、溶媒を水として、重量基準の50%粒子径として測定することができる。以下の例においても、同様の方法により測定することができる。上記範囲内にあると、(D)トリレンジイソシアネート変性酸化ワックスは、樹脂硬化物中において、エポキシ樹脂マトリックスと好ましい相溶状態となる。これにより、(D)トリレンジイソシアネート変性酸化ワックスが樹脂硬化物表面に存在し、金型からの硬化物の離型性に優れる。一方、エポキシ樹脂マトリックスとの相溶性が高すぎると、樹脂硬化物表面に染み出すことができず、充分な離型性を確保することができない。さらに、(D)トリレンジイソシアネート変性酸化ワックスと、エポキシ樹脂マトリックスとが好ましい相溶状態にあるため、樹脂硬化物表面における(D)トリレンジイソシアネート変性酸化ワックスの偏析が抑制され、金型の汚れや樹脂硬化物表面の外観を良好にすることができる。またさらに、上記範囲にあると、エポキシ樹脂組成物を硬化させる際、(D)トリレンジイソシアネート変性酸化ワックスが充分に溶融する。そのため、エポキシ樹脂組成物は流動性に優れる。
【0036】
また、全(D)トリレンジイソシアネート変性酸化ワックス中における粒径106μm以上の粒子の含有比率は、0.1重量%以下であることが好ましい。この含有比率は、JIS Z 8801の目開き106μmの標準篩を用いて測定することができる。以下の例においても、同様の方法により測定することができる。上記の含有比率であれば、(D)トリレンジイソシアネート変性酸化ワックスがエポキシ樹脂組成物中に略均一に分散し、金型の汚れや樹脂硬化物の外観の悪化を抑制することができる。また、エポキシ樹脂組成物を硬化させる際、(D)トリレンジイソシアネート変性酸化ワックスが充分に溶融するため、流動性に優れる。
【0037】
本発明で用いられる(D)トリレンジイソシアネート変性酸化ワックスの配合量の下限値については、エポキシ樹脂組成物中に、0.01重量%以上が好ましく、より好ましくは0.03重量%以上である。配合量の下限値が上記範囲内にあると、金型からの樹脂硬化物の離型性に優れる。また、(D)トリレンジイソシアネート変性酸化ワックスの配合量の上限値については、エポキシ樹脂組成物中に、1重量%以下が好ましく、より好ましくは0.5重量%以下である。配合量の上限値が上記範囲内にあると、リードフレーム部材との密着性が良好となり、半田処理時におけるエポキシ樹脂組成物の樹脂硬化物とリードフレーム部材との剥離を抑制することができる。またさらに、金型汚れや樹脂硬化物表面の外観の悪化を抑制し、良好な外観を得ることができる。
【0038】
本発明で用いられる(D)トリレンジイソシアネート変性酸化ワックスは、市販のものが入手でき、必要により粒度調整して使用することができる。
本発明で用いられる(D)トリレンジイソシアネート変性酸化ワックスを用いることによる効果を損なわない範囲で、他の離型剤を併用することもできる。併用できる離型剤としては、例えばカルナバワックス等の天然ワックス、ステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸の金属塩類等が挙げられる。
【0039】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)第1のエポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂系硬化剤、(C)ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)、及び/又は、ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)と第2のエポキシ樹脂との反応生成物(c2)、並びに(D)トリレンジイソシアネート変性酸化ワックスを必須成分とするが、その他の主要構成成分として(E)硬化促進剤、(F)無機充填材等を配合することができる。
【0040】
本発明に用いることができる(E)硬化促進剤としては、(A)第1のエポキシ樹脂のエポキシ基と、(B)フェノール樹脂系硬化剤のフェノール性水酸基との硬化反応を促進させるものであればよく、一般に封止材料に使用するものを用いることができる。例えば、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のジアザビシクロアルケン及びその誘導体;トリフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類;2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物;テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても、2種類以上を併用しても差し支えない。
【0041】
本発明に用いることができる(E)硬化促進剤の配合割合の下限値については、特に限定されないが、全半導体封止用エポキシ樹脂組成物中0.05重量%以上であることが好ましく、0.1重量%以上であることがより好ましい。配合割合の下限値が上記範囲内であると、硬化性の低下等を引き起こす恐れが少ない。また、(E)硬化促進剤の配合割合の上限値については、特に限定されないが、全半導体封止用エポキシ樹脂組成物中1重量%以下であることが好ましく、0.5重量%以下であることがより好ましい。配合割合の上限値が上記範囲内であると、流動性の低下等を引き起こす恐れが少ない。
【0042】
本発明に用いることができる(F)無機充填材としては、一般に半導体封止用エポキシ樹脂組成物に使用されているものを用いることができる。例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、タルク、アルミナ、窒化珪素等が挙げられ、最も好適に使用されるものは、球状の溶融シリカである。これらの(F)無機充填材は、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用しても差し支えない。またこれらがカップリング剤により表面処理されていてもかまわない。(F)無機充填材の形状としては、流動性の観点から、できるだけ真球状であり、かつ粒度分布がブロードであることが好ましい。
【0043】
本発明に用いることができる(F)無機充填材の含有量の下限値については、全エポキシ樹脂組成物中80重量%以上であることが好ましく、84重量%以上であることがより好ましい。含有量の下限値が上記範囲内であると、成形時における充分な流動性を得ることができる。また、(F)無機充填材の含有量の上限値については、全エポキシ樹脂組成物中92重量%以下であることが好ましく、90重量%以下であることがより好ましい。含有量の上限値が上記範囲内であると、実装時における良好な半田リフロー性を得ることができる。
【0044】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記(A)〜(F)成分以外に、更に必要に応じて、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等のシランカップリング剤や、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、アルミニウム/ジルコニウムカップリング剤等のカップリング剤;カーボンブラック等の着色剤;シリコーンオイル、ゴム等の低応力添加剤;臭素化エポキシ樹脂や三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ほう酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、フォスファゼン等の難燃剤等の添加剤を適宜配合しても差し支えない。
【0045】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記(A)〜(F)成分、その他の添加剤等を、ミキサー等を用いて充分に均一に混合したもの、その後、更に熱ロール、ニーダー、押出機等の混練機で溶融混練し、冷却後粉砕したものなど、必要に応じて適宜分散度や流動性等を調整したものを用いることができる。
【0046】
封止を行う素子としては、例えば、集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード、固体撮像素子等で特に限定されるものではなく、素子を封止して得られる半導体装置の形態も特に限定されない。低圧トランスファー成形などの方法で封止された半導体装置は、そのまま、或いは80〜200℃の温度で15秒〜10時間かけて完全硬化させた後、電子機器等に搭載される。
【0047】
本発明の半導体装置の形態としては、例えば、デュアル・インライン・パッケージ(DIP)、プラスチック・リード付きチップ・キャリヤ(PLCC)、クワッド・フラット・パッケージ(QFP)、スモール・アウトライン・パッケージ(SOP)、スモール・アウトライン・Jリード・パッケージ(SOJ)、薄型スモール・アウトライン・パッケージ(TSOP)、薄型クワッド・フラット・パッケージ(TQFP)、テープ・キャリア・パッケージ(TCP)、ボール・グリッド・アレイ(BGA)、チップ・サイズ・パッケージ(CSP)等が挙げられる。
【0048】
図1は、本発明に係る半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いた半導体装置の一例について、断面構造を示した断面図である。ダイパッド3上に、ダイボンド材硬化体2を介して半導体素子1が固定されている。半導体素子1の電極パッドとリードフレーム5との間は金線4によって接続されている。半導体素子1は、半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化体6によって封止されている。
【0049】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて、半導体素子等の各種の電子部品を封止し、半導体装置を製造するには、トランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の従来からの成形方法で硬化成形すればよい。
【実施例】
【0050】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。配合割合は重量部とする。
【0051】
実施例1
エポキシ樹脂1:下記一般式(2)で表される構造を有するエポキシ樹脂であるビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂(但し、下記一般式(2)において、m2/n2の平均値:1、Ar1=ビフェニル基、Ar2=フェニル基、R6=水素、R7=水素、b=0、c=0、d=0、e=1。日本化薬(株)製、NC−3000P。エポキシ当量275、軟化点60℃。) 8.64重量部
【化2】

【0052】
フェノール樹脂系硬化剤1:一般式(3)で表されるフェノールノボラック樹脂(住友ベークライト(株)製、スミライトレジン(登録商標)PR−HF−3。式(3)において、n3の平均値:3.0。水酸基当量104、軟化点80℃。) 3.26重量部
【化3】

【0053】
オルガノポリシロキサン1:下記式(4)で表されるオルガノポリシロキサン(ポリカプロラクトンとオルガノポリシロキサンを混合し、白金触媒下80℃で反応させることで得た。) 0.20重量部
【化4】

【0054】
離型剤1:トリレンジイソシアネート変性酸化パラフィンワックス(前述の方法により作成したトリレンジイソシアネート変性酸化パラフィンワックスをターボミルにより粒度調整したもの。滴点80℃、酸価30mgKOH/g、数平均分子量2000、平均粒径35μm、粒径106μm以上の粒子0.0重量%。) 0.20重量部
【0055】
硬化促進剤1:1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(以下、DBUという) 0.20重量部
【0056】
無機質充填材1:溶融球状シリカ(平均粒径21μm) 87.00重量部
【0057】
シランカップリング剤1:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン 0.20重量部
【0058】
着色剤1:カーボンブラック 0.30重量部
【0059】
前記に示すエポキシ樹脂1、フェノール樹脂系硬化剤1、オルガノポリシロキサン1、離型剤1、硬化促進剤1、無機質充填剤1、シランカップリング剤1、および着色剤1をそれぞれ混合し、熱ロールを用いて、95℃で8分間溶融混練して冷却後粉砕し、エポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物を、以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0060】
評価方法
スパイラルフロー:低圧トランスファー成形機(コータキ精機(株)製、KTS−15)を用いて、EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用金型に、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間120秒の条件でエポキシ樹脂組成物を注入し、流動長を測定した。単位はcm。判定基準は70cm未満を不合格、70cm以上を合格とした。
【0061】
連続成形性:低圧トランスファー自動成形機(第一精工(株)製、GP−ELF)を用いて、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間70秒で、80ピンクワッドフラットパッケージ(80pQFP;Cu製リードフレーム、パッケージ外寸:14mm×20mm×2mm厚、パッドサイズ:6.5mm×6.5mm、チップサイズ6.0mm×6.0mm×0.35mm厚)を、エポキシ樹脂組成物により連続で700ショットまで封止成形した。判定基準は未充填等全く問題なく700ショットまで連続成形できたものを◎、未充填等全く問題なく500ショットまで連続成形できたものを○、それ以外を×とした。
【0062】
パッケージ外観及び金型汚れ性:上記連続成形性の評価において、300、500及び700ショット成形後のパッケージ表面及び金型表面について、目視で汚れを評価した。パッケージ外観判断及び金型汚れ基準は、700ショットまで汚れていないものを◎で、500ショットまで汚れていないものを○で、300ショットまで汚れていないものを△で、汚れているものを×で表す。また、上記連続成形性において、300ショットまで連続成形できなかったものについては、連続成形を断念した時点でのパッケージ外観及び金型汚れ状況で判断した。
【0063】
半田リフロー性:上記連続成形性の評価において成形したパッケージを、175℃、8時間加熱処理を行って後硬化し、次いで85℃、相対湿度60%で168時間加湿処理後、260℃の半田槽にパッケージを10秒間浸漬した。半田に浸漬させたパッケージ20個の半導体素子とエポキシ樹脂組成物の硬化物との界面の密着状態を、超音波探傷装置(日立建機ファインテック(株)製、mi−scope 10)により観察し、剥離発生率[(剥離発生パッケージ数)/(全パッケージ数)×100]を算出した。単位は%。半田リフロー性の判断基準は、剥離が発生しなかったものは◎、剥離発生率が5%以上、10%未満のものは○、10%以上、20%未満のものは△、20%以上のものは×とした。
【0064】
実施例2〜10、比較例1〜4
表1及び2の配合に従い、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を得て、実施例1と同様にして評価した。結果を表1及び2に示す。
【0065】
実施例1以外で用いた原材料を以下に示す。
エポキシ樹脂2:下記一般式(2)で表される構造を有するエポキシ樹脂(但し、下記一般式(2)において、m/nの平均値:1/4、Ar1=ナフタレン基、Ar2=フェニル基、R5=メチル基、R6=水素、R7=水素、R8=メチル基、W1=酸素、b=0、c=1、d=1、e=1。大日本インキ化学(株)製、EXA−7320。エポキシ当量251、融点58℃。)
【0066】
【化2】

【0067】
エポキシ樹脂3:オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製、EOCN−1020 62。エポキシ当量200g/eq、軟化点62℃。)
【0068】
フェノール樹脂系硬化剤2:フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂(三井化学(株)製、ミレックス(登録商標)XLC−4L。水酸基当量165、軟化点65℃。)
【0069】
オルガノポリシロキサン2:下記式(5)で表されるオルガノポリシロキサン(ポリカプロラクトンとオルガノポリシロキサンを混合し、白金触媒下80℃で反応させることで得た。)
【化5】

【0070】
オルガノポリシロキサン3:下記式(6)で表されるオルガノポリシロキサン(GE東芝シリコーン(株)製、SILSOFT034)
【化6】

【0071】
反応生成物A:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン製、YL−6810、エポキシ当量170g/eq、融点47℃)66.1重量部を140℃で加温溶融し、オルガノポリシロキサン1(式(4)で表されるオルガノポリシロキサン)33.1重量部及びトリフェニルホスフィン0.8重量部を添加して、30分間溶融混合して反応生成物Aを得た。
【0072】
離型剤2:トリレンジイソシアネート変性酸化ポリエチレンワックス(前述の方法により作成したトリレンジイソシアネート変性酸化ポリエチレンワックスをハンマーミルにより粒度調整したもの。滴点90℃、酸価30mgKOH/g、数平均分子量1800、平均粒径33μm、粒径106μm以上の粒子0.0重量%。)
【0073】
離型剤3:トリレンジイソシアネート変性酸化ポリプロピレンワックス(前述の方法により作成したトリレンジイソシアネート変性酸化ポリプロピレンワックスをジェットミルにより粒度調整したもの。滴点102℃、酸価15mgKOH/g、数平均分子量3500、平均粒径40μm、粒径106μm以上の粒子0.0重量%。)
【0074】
離型剤4:カルナバワックス(日興ファインプロダクツ(株)製、商品名ニッコウカルナバ、滴点83℃、酸価5mgKOH/g、数平均分子量650、平均粒径38μm、粒径106μm以上の粒子0.0重量%。)
【0075】
【表1】

【0076】
【表2】

【0077】
実施例1〜10は、(C)ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)、及び/又は、ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)と第2のエポキシ樹脂との反応生成物(c2)、並びに(D)トリレンジイソシアネート変性酸化ワックスを含むとともに、(C)成分の配合量や種類を変えたもの、(D)成分の配合量や種類を変えたもの、或いは、エポキシ樹脂の種類や無機充填材の配合量を変えたものであるが、いずれにおいても、流動性(スパイラルフロー)、連続成形性、パッケージ外観及び金型汚れ性、半田リフロー性のバランスに優れた結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明に従うと、流動性に優れるとともに、連続成形性、半田リフロー性、素子の封止成形時における離型性、樹脂硬化物表面の外観、金型汚れ性とのバランスに優れたエポキシ樹脂組成物を得ることができるため、半導体装置封止用として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明に係るエポキシ樹脂組成物を用いた半導体装置の一例について、断面構造を示した断面図である。
【符号の説明】
【0080】
1 半導体素子
2 ダイボンド材硬化体
3 ダイパッド
4 金線
5 リードフレーム
6 半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)第1のエポキシ樹脂、
(B)フェノール樹脂系硬化剤、
(C)ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)、及び/又は、ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)と第2のエポキシ樹脂との反応生成物(c2)、
並びに
(D)トリレンジイソシアネート変性酸化ワックス
を含むことを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)が下記一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサンである請求項1に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【化1】

(ただし、上記一般式(1)において、R1は水素、メチル基、フェニル基、又はR2から選ばれる基であり、互いに同一であっても異なっていてもよいが、少なくとも1つ以上がR2で表されるポリカプロラクトン基を有する有機基である。n1の平均値は1以上、50以下の正数である。上記R2において、aの平均値は1以上、20以下の正数であり、R3は炭素数1〜30の有機基である。)
【請求項3】
前記(D)トリレンジイソシアネート変性酸化ワックスの滴点が70℃以上、120℃以下である請求項1又は請求項2に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
前記(D)トリレンジイソシアネート変性酸化ワックスの酸価が10mgKOH/g以上、50mgKOH/g以下である請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
前記(D)トリレンジイソシアネート変性酸化ワックスの平均粒径が20μm以上、70μm以下であり、全トリレンジイソシアネート変性酸化ワックス中における粒径106μm以上の粒子の含有比率が0.1重量%以下である請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリカプロラクトン基を有するオルガノポリシロキサン(c1)の配合量W(c1)と前記(D)トリレンジイソシアネート変性酸化ワックスの配合量W(D)との重量比W(c1)/W(D)が3/1から1/5までの範囲である請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
前記(A)第1のエポキシ樹脂が下記一般式(2)で表されるエポキシ樹脂(a1)を含む請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【化2】

(ただし、上記一般式(2)において、Ar1、Ar2は炭素数6〜20の芳香族基であり、互いに同じであっても異なっていてもよい。R4、R5は炭素数1〜6の炭化水素基であり、互いに同じであっても異なっていてもよい。R6、R7は水素、炭素数1〜4の炭化水素基又は炭素数6〜20の芳香族基であり、互いに同じであっても異なっていてもよい。R8は炭素数1〜4の炭化水素基で、W1は酸素原子又は硫黄原子である。OGはグリシドキシ基である。b、cは0〜10の整数、dは0〜3の整数、eは1〜3の整数である。m2は0〜20の整数であり、n2は1〜20の整数であり、かつm2/n2の平均は1/10〜1/1である。m2個の繰り返し単位とn2個の繰り返し単位は、それぞれが連続で並んでいても、お互いが交互もしくはランダムに並んでいてもよいが、それぞれの間には必ず−CR6R7−を有する構造をとる。)
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて素子を封止してなることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【公開番号】特開2009−179772(P2009−179772A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−22419(P2008−22419)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】