説明

半導体材料の処理方法及び処理された半導体材料

半導体材料を処理するための方法が開示される。開示される方法において、結晶構造を有する半導体材料が提供され、半導体材料の少なくとも一部分が熱源にさらされてメルトプールが形成され、次いで半導体材料が冷却される。この方法で処理された半導体材料も開示される。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、2008年6月2日に出願された、名称を「半導体材料の処理方法及び処理された半導体材料(Methods of Treating Semiconducting Materials and Treated Semi conducting Materials)」とする、米国特許出願第12/156499号の優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は全般的に半導体材料を処理する方法及び処理された半導体材料に関する。
【背景技術】
【0003】
半導体材料は多くの用途に用いられる。例えば、半導体材料は半導体ウエハ上に形成されたプロセッサとして電子デバイスに用いることができる。別の例として、半導体材料は、光起電力を利用して太陽光を電気エネルギーに変換するために用いることもできる。
【0004】
半導体材料の半導体特性は材料の結晶構造に依存し得る。半導体材料の結晶構造内の欠陥は材料の半導体特性を毀損させ得る。
【0005】
半導体材料は異なる様々な方法を用いて形成することができ、方法の内の少なくともいくつかは最適に至らない半導体特性を有する材料を生じさせ得る。単結晶半導体材料が作成される方法には、例えばチョクラルスキー法がある。多結晶半導体材料が作成される方法には、例えば電磁鋳造法及びリボン結晶成長法がある。多結晶半導体材料作成のための別の方法は、2008年2月29日に出願された、名称を「純またはドープト半導体元素または合金の無支持品の作成方法(METHOD OF MAKING AN UNSUPPORTED ARTICLE OF A PURE OR DOPED SEMICONDUCTING ELEMENT OR ALLOY)」とする、特許文献1に開示されている。この開示は本明細書に参照として含まれる。
【0006】
チョクラルスキー法は単結晶構造を有する半導体材料を作成するが、この方法は低速で不経済である。チョクラルスキー法を用いて作成されたウエハは単結晶から切り分けられ、これはかなりの切り代損を生じさせる。
【0007】
多結晶半導体材料を形成するためにリボン結晶成長法を用いることができる。しかし、リボン結晶成長法は、収率が約1〜2cm/分の、低速プロセスである。リボン結晶成長法で作成された半導体材料は結晶成長方向に延びる長結晶を有する傾向がある。
【0008】
電磁鋳造法は多結晶半導体材料を大量に形成することができるが、形成された多結晶材料を切り分ける必要があり、これは切り代損を生じさせる。さらに、電磁鋳造法で形成された半導体材料内の結晶粒は一様な結晶粒方位を有していない。
【0009】
特許文献1に開示される方法では、溶融半導体材料内に浸漬された型の上に半導体材料が形成されることで多結晶半導体材料がつくられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国仮特許出願第61/067679号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
既知の方法で作成された結晶半導体材料を処理するための、半導体材料の結晶粒構造及び/または表面特性を向上させるであろう、方法が工業界で長らく必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明にしたがう様々な実施形態例によれば、結晶構造を有する半導体材料を提供する工程、半導体材料の少なくとも一部を熱源にさらして、メルトプールを形成する工程、及び半導体材料を冷却する工程を含む、半導体材料を処理するための方法が提供される。本発明にしたがう方法は半導体材料の結晶粒構造及び表面特性の内の少なくとも1つを向上させることができる。
【0013】
本発明にしたがう別の実施形態例は、結晶構造を有するシリコンまたはシリコン合金材料を提供する工程、シリコンまたはシリコン合金材料の少なくとも一部を熱源にさらして、メルトプールを形成する工程及び、シリコンまたはシリコン合金材料を冷却して、向上した結晶粒構造及び表面特性のいずれかまたはいずれをも有するシリコンまたはシリコン合金材料を形成する工程を含む、シリコンまたはシリコン合金材料の結晶粒構造及び表面特性の内の少なくとも1つを向上させるための方法に関する。
【0014】
本発明にしたがう別の実施形態例は、結晶構造を有する半導体材料を提供する工程、半導体材料の少なくとも一部を熱源にさらして、メルトプールを形成する工程、及び半導体材料を冷却する工程を含む方法によって処理された半導体材料に関する。
【0015】
本明細書に用いられるように、「向上した結晶粒構造」は、例えば、結晶粒テクスチャー、結晶粒一様性及び結晶粒径のような、半導体材料の1つ以上の結晶粒のいずれかの特徴における向上を意味する。
【0016】
本明細書に用いられるように、「向上した表面特性」は、例えば表面トポグラフィ及び表面外観のような、1つ以上のいずれかの表面特性の向上を意味する。向上した表面特性には、例えば一様な厚さの形成及び/または半導体材料の厚さの低減のような、半導体材料の厚さにおける向上も含めることができる。
【0017】
本明細書に用いられるように、「結晶」は、例えば単結晶材料及び多結晶材料を含む、結晶構造を有するいかなる材料も意味する。
【0018】
本明細書に用いられるように、「多結晶」は複数の結晶粒を有するいかなる材料も含む。例えば、多結晶材料には、ポリクリスタル材料、微結晶材料及びナノクリスタル材料を含めることができる。
【0019】
本明細書に用いられるように、「メルトプール」は半導体材料上または半導体材料内に集められたある量の溶融材料を意味し、溶融材料は半導体材料とほぼ同じ組成を有し、半導体材料のいくらかの部分を溶融させるに十分な熱源に半導体材料をさらすことによって形成される。
【0020】
本明細書に説明されるように、本発明は半導体材料を処理する方法及び処理された半導体材料に関する。以下の説明において、いくつかの態様及び実施形態が明らかになるであろう。本発明が、その広い意味において、そのような態様及び実施形態の1つ以上の特徴を有することなく実施され得ることは当然である。そのような態様及び実施形態が例示及び説明を目的とするに過ぎず、特許請求されるような本発明を限定しないことは当然である。
【0021】
以下で説明される、本明細書に組み入れられて本明細書の一部をなす図面は本発明にしたがう実施形態例を示し、本発明にはその他の等しく有効な他の実施形態があり得るから、本発明の範囲の限定と見なされるべきではない。図面は必ずしも比例尺で描かれてはおらず、図面のいくつかの特徴及びいくつかの図は、明解さ及び簡潔さのため、大きさが誇張されて、あるいは簡略に、示されることがある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明にしたがう実施形態例による、半導体材料を処理するために用いられる装置の一例の略図である。
【図2A】図2Aは本発明にしたがう実施形態例によって半導体材料に形成されたメルトプールの略図である。
【図2B】図2Bは、本発明にしたがう実施形態例による、半導体材料に形成されたメルトプールを冷却する工程の略図である。
【図3】図3は本発明にしたがう実施形態例によって部分的に処理された半導体材料を示すマイクログラフである。
【図4】図4は本発明にしたがう実施形態例によって半導体材料に形成されたメルトプールの略図である。
【図5A】図5Aは本発明にしたがう実施形態例による方法の略図である。
【図5B】図5Bは本発明にしたがう実施形態例による方法の略図である。
【図5C】図5Cは本発明にしたがう実施形態例による方法の略図である。
【図5D】図5Dは本発明にしたがう実施形態例による方法の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明にしたがう様々な実施形態例をここで参照し、実施形態の少なくとも一例が添付図面に示される。しかし、これらの様々な実施形態例は本開示の限定を目的としていない。むしろ、本発明の完全な理解を提供するために数多くの特定の詳細が述べられる。しかし、そのような特定の詳細のいくらかまたは全てがなくとも本発明を実施できること及び本開示が代替、改変または等価物を包含するとされていることが当業者には明らかであろう。例えば、本発明を不必要に曖昧にしないため、周知の特徴及び/またはプロセス工程には言及されていない。さらに、共通であるかまたは同様の要素を識別するために同様であるかまたは同じ参照数字が用いられる。
【0024】
本発明では、結晶構造を有する半導体材料を提供する工程、半導体材料の少なくとも一部を熱源にさらして、メルトプールを形成する工程、及び半導体材料を提供する工程を含む、半導体材料を処理する方法に対する様々な実施形態例が考えられる。別の実施形態例にしたがえば、半導体材料を処理する方法は材料の結晶粒構造及び表面特性のいずれかまたはいずれをも向上させることができる。
【0025】
本発明にしたがう実施形態による方法の一例は、結晶構造を有するシリコンまたはシリコン合金材料を提供する工程、シリコンまたはシリコン合金材料の少なくとも一部を熱源にさらして、メルトプールを形成する工程及び、シリコンまたはシリコン合金材料を冷却して、向上した結晶粒構造及び表面特性のいずれかまたはいずれをも有するシリコンまたはシリコン合金材料を形成する工程によって、シリコンまたはシリコン合金材料の結晶粒構造及び表面特性の内の少なくとも1つを向上させることができる。一実施形態例において、単結晶半導体材料を半導体材料に接触させ、半導体材料が単結晶半導体材料に接している領域にメルトプールを形成する。単結晶半導体材料は処理される半導体材料の結晶成長のシードになり得る。別の実施形態例において、半導体材料の比較的大きな結晶粒にメルトプールを形成して、大きな結晶粒を結晶成長のシードとすることができる。
【0026】
本発明では、一実施形態例において、後続の半導体材料を熱源にさらす処理に先立って半導体材料の少なくとも一部を予備加熱する工程も考えられる。予備加熱により、半導体材料内の温度勾配を最小限に抑えることができ、よって熱応力を低減することができる。続いて熱源にさらされる半導体材料の少なくとも一部を、例えばメルトプール形成のために熱源にさらされたときの半導体材料の熱衝撃誘起クラックのような、熱欠陥または損傷を防止するに十分な温度まで予備加熱することができる。熱欠陥または損傷を防止するに十分な温度は半導体材料のタイプ及び特性に依存し、そのような温度の決定は当業者の能力の範囲内にある。
【0027】
例えば、半導体材料は、例えば半導体材料の融点とほぼ同じ温度、または例えば半導体材料の融点よりほぼ10℃ないしさらに低い温度、のような半導体材料の融点に近い温度まで加熱することができる。半導体材料の融点近くの温度までの半導体材料の予備加熱により、半導体材料に応力アニールを施し、欠陥形成を低減し、結晶粒成長を向上させることができる。半導体材料がシリコンである一実施形態例において、続いて熱源にさらされるシリコンの少なくとも一部は、例えば約800℃〜約1300℃または約1300℃〜約1400℃のような、約800℃〜約1400℃の範囲の温度に、あるいは約1300℃からほぼシリコンの融点までの範囲の温度に、予備加熱することができる。当業者には、本発明の実施時における半導体材料の予備加熱温度が半導体材料の組成に依存することは当然であろう。予備加熱は、いくつかの実施形態において、例えば新しく形成される半導体材料の熱欠陥または損傷を防止するに十分な温度までの冷却及び、続く、半導体材料の処理を可能にすることによるように、半導体材料形成プロセスの一貫とすることができる。
【0028】
本発明にしたがう一実施形態例において、半導体材料は当業者に既知のいずれかの方法で形成することができる。得られた半導体材料が、例えば、先の固化が速すぎたために、最適ではない、結晶粒径または構造及び表面トポグラフィのような、特性を有していれば、さらに低速の、例えば数秒間の、メルトプールの固化を可能にすることによって特性を向上させることができる、半導体材料の再溶融及び再固化を行うために、本発明の方法を用いることができる。メルトプールの低速固化を可能にすることにより、結晶粒形成を向上させることができ、残留熱応力を低減することができる。さらに、半導体材料を低速冷却することによって、一層大きな結晶を形成することができる。本発明にしたがう少なくとも1つの実施形態において、冷却は半導体材料の融点近くの温度から開始することができ、また、冷却速度は、クラックを生じさせ得る、大きな結晶粒の過冷却を最小限に抑えるように制御することができる。
【0029】
いくつかの実施形態において、例えば処理されている半導体材料全体に対して、冷却の一様性を制御することが有利であり得る。例えば、一実施形態において、熱源と半導体材料の間隔を大きくすることによって半導体材料の温度を下げることができる。熱源が火炎を有する場合のような、別の実施形態例において、半導体材料の冷却はより大きな表面積にかけて熱源の火炎をあおることで行うことができる。別の実施形態例において、半導体材料は加熱することができる支持体で支持することができ、支持体に供給される熱を徐々に減じて半導体材料を冷却することができる。
【0030】
本発明の様々な実施形態にしたがって処理することができる半導体材料の例には、シリコン、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム及びこれらの合金及び混合物を含めることができる。一実施形態例において、処理される半導体材料はシリコンである。理論に制約されることは望まず、本明細書に説明される本発明に用いられ得る半導体材料を以下で限定するつもりはないが、望ましければ、シリコンの薄片が一方の面では溶融することができ、他方の面では溶融しないように、入力熱流束をメルトプールからの熱損失で釣り合わせることが可能にし得る、大きい融解熱と高い熱伝導度の組合せのため、シリコンが有用であり得るという仮説が立てられる。したがって、例えば、本発明の方法にしたがって処理される半導体材料は、例えば、約50μmより小さい結晶粒、約500μmまでの範囲の結晶粒、約100μm〜約10mmの範囲の結晶粒、または約50μm〜約500μmの範囲の結晶粒を含む粒径分布をもつシリコンから選ぶことができる。本発明の方法にしたがって処理される半導体材料は、平均表面高より、例えば、約10μmより小さいか、約10μm〜約100μmの範囲にあるか、約50μm〜約2mmの範囲にあるか、または例えば約1mmより大きい、大きさのトポグラフィ変動を示すシリコンから選ぶことができる。
【0031】
本発明では、一実施形態例において、冷却後に、少なくとも熱源にさらされて処理された半導体材料部分が結晶粒を有し、処理された半導体材料の断面積で少なくとも約75%が少なくとも1つの次元において半導体材料の厚さの約2倍より大きい寸法を有する結晶粒を含む、半導体材料を処理する方法も考えられる。少なくとも1つの別の実施形態において、処理された半導体材料の断面積で少なくとも約85%、例えば少なくとも約90%が、少なくとも1つの次元において半導体材料の厚さの約2倍より大きい寸法を有する結晶粒を含む。別の実施形態例においては、冷却後に、処理された半導体材料の断面積で少なくとも約75%が少なくとも1つの次元において半導体材料の厚さの約3倍より大きい寸法を有する結晶粒を含む。少なくとも1つの別の実施形態において、処理された半導体材料の断面積で少なくとも約85%、例えば少なくとも約90%が、少なくとも1つの次元において半導体材料の厚さの約3倍より大きい寸法を有する結晶粒を含む。
【0032】
本発明の別の実施形態例では、冷却後に結晶粒を有し、処理された半導体材料の断面積で少なくとも約75%が少なくとも1つの次元において約500μmより大きい寸法を有する結晶粒を含む、半導体材料を処理する方法が考えられる。少なくとも1つの別の実施形態において、処理された半導体材料の断面積で少なくとも約85%、例えば少なくとも約90%が、少なくとも1つの次元において約500μmより大きい寸法を有する結晶粒を含む。少なくとも1つの実施形態において、約500μmより大きい少なくとも1つの次元における寸法は半導体材料の最小寸法より大きい。例えば、処理される半導体材料は厚さが200μmのシートの形態とすることができ、処理された半導体材料の断面積で少なくとも約75%は少なくとも1つの次元において約500μmより大きい寸法を有する結晶粒を含むことができ、約500μmより大きい少なくとも1つの次元における寸法は半導体材料シートと実質的に同一平面上に延びる。
【0033】
本発明の少なくとも1つの実施形態において、処理された半導体材料の断面積で少なくとも約75%が、半導体材料の表面から半導体材料の裏面まで延びる個体結晶粒を含む。少なくとも1つの別の実施形態において、処理された半導体材料の断面積で少なくとも約85%、例えば少なくとも約90%が、半導体材料の表面から半導体材料の裏面まで延びる個体結晶粒を含む。
【0034】
本発明にしたがう実施形態による半導体材料を処理するための一方法では、半導体材料を熱源にさらすことによって半導体材料の上面から半導体材料の底面まで延びる溶融材料を有するメルトプールを作成する工程、及び次いで半導体材料を冷却する工程が考えられる。一実施形態において、メルトプールは、例えばメルトプールの周縁の未溶融半導体材料まで濡らすことによって、安定化することができる。本発明のこの方法例を実施する場合、プールが大きくなりすぎて、プールが不安定になり、半導体材料に穴を開けるに至らないように、注意が払われるべきことが当業者には当然であろう。
【0035】
本発明にしたがう実施形態による別の方法例では、半導体材料の上面または半導体材料の底面を熱源にさらすことによって半導体材料の上面または底面からの溶融材料を有するメルトプールを形成する工程及び半導体材料を冷却する工程が考えられる。別の実施形態例において、半導体材料の上面を処理し、続いて半導体材料の底面を処理する、あるいは逆に半導体材料の底面を処理してから上面を処理することが望ましいこともある。また別の実施形態例において、一方の表面の処理後直ちに第2の表面を処理することができる。この迅速な連続処理により、第1の処理からの熱で次の処理中の熱応力を排除することが可能になり得る。本発明にしたがう少なくとも1つの実施形態例において、上面と底面を交互に処理するプロセスは所望に応じて何度でも反復することができ、半導体材料の結晶構造及び/または表面特性を一層向上させることができる。半導体材料の上面が処理され、続いて半導体材料に底面が処理される、あるいは逆に半導体材料の底面が処理されてから上面が処理される、実施形態において、上面及び底面のそれぞれに形成されるメルトプールは、必要に応じて、半導体材料の厚さの1/2をこえて延び拡がることができる。半導体材料の厚さの1/2をこえて延び拡がるメルトプールの形成によって、結晶粒構造を累進的に向上させることで半導体材料全体の結晶構造を向上させることができる、重なり区画を生じさせることができる。
【0036】
本開示による一実施形態例において、半導体材料を処理する方法は、ほぼ半導体材料の一方の端からほぼ半導体材料の他方の端まで熱源を移動させることによって半導体材料の少なくとも一部を熱源にさらして、冷却時にほぼ平滑な表面を形成する工程を含む。本発明にしたがう別の実施形態例において、半導体材料を処理する方法は、半導体材料の少なくとも一部を熱源にさらしてメルトプールを形成し、次いで冷却する工程、及びこの工程を、半導体材料の表面全体が処理されてしまうまで、半導体材料の別の部分に反復する工程を含む。
【0037】
本発明にしたがう一実施形態例において、半導体材料を処理する方法は、半導体材料の上面にメルトプールを、また半導体材料の底面にメルトプールを、ほぼ同時に形成するため、半導体材料の上面の少なくとも一部を第1の熱源にさらし、半導体材料の底面の少なくとも一部を第2の熱源にさらす工程、及び次いで半導体材料を冷却する工程を含む。
【0038】
本発明にしたがう別の実施形態例において、半導体材料を処理する方法は、半導体材料の少なくとも一部を熱源にさらして、メルトプールを形成する工程、及び溶融材料の少なくともいくらかの部分を動き回らせるためにメルトプールを熱源によって操作する工程を含む。例えば、溶融材料の一部を半導体材料の端に向けて移動させ、技術上既知のいずれかの方法で端を整えて、半導体材料の厚さを減じるかまたは均等化することができる。本発明にしたがう別の実施形態例において、半導体材料の表面から溶融半導体材料をはじき出すために、例えば、炭化シリコン、カーボン、シリコンまたは二酸化シリコンのような、材料を用いることができる。
【0039】
本発明にしたがう別の実施形態例において、例えば小結晶粒を有するかまたは厚さが一様ではない半導体材料半導体材料の、例えば結晶構造及び/または表面特性を向上させることができる、半導体材料をスポット処理する方法は、そのような半導体材料を熱源にさらして、メルトプールを形成する工程を含む。
【0040】
本発明にしたがう少なくとも1つの実施形態において、半導体材料を処理する方法は、半導体材料の表面上に合金化材料またはドーピング材料を被着することによって半導体材料を合金化するかまたは半導体材料にドープする工程、半導体材料の少なくとも一部を熱源にさらして、メルトプールを形成する工程、及び半導体材料を冷却する工程を含み、半導体材料の少なくとも一部を熱源にさらす工程において合金化材料またはドーピング材料は溶融半導体材料と混合する。半導体材料と合金化するかまたは半導体にドープされる材料深さは、例えば熱源の熱流束を制御して、形成されるメルトプールの深さを制限することによって、制御することができる。
【0041】
様々な実施形態例において、熱源は局所的に、本明細書に説明されるように、半導体材料にメルトプールを形成するに十分な熱流束をもって、あてることができる。熱源は、いくつかの実施形態において、例えば、水素/酸素トーチ、水素/ハロゲントーチ(例:水素/塩素トーチ)、必要に応じて二酸化シリコン封入タングステン電極を有するタングステン不活性ガス(TIG)トーチ、例えばハロゲンランプのようなIRランプ、レーザ、アルゴンまたはヘリウムプラズマトーチ及び、必要に応じて密封できるRF加熱カーボンロッドのような、カーボンロッド、のような十分な熱流束を供給するに十分ないずれかの熱源から選ぶことができる。いくつかの実施形態例において、本明細書に説明されるような処理に際して半導体材料を汚染させないであろう熱源を用いることが有利であり得る。例えば、処理されている半導体材料がシリコンである場合、シリコンノズルを備える熱源を用いることができる。一実施形態例において、水素を過剰に含む水素/酸素トーチを使用することが有利であり得る。熱源は、いくつかの実施形態において、単オリフィスノズルタイプあるいは、複ノズルタイプ、ラインノズルタイプまたは異形ノズルタイプとすることができる。少なくとも1つの実施形態において、熱源は複、ラインまたは異形の輻射熱源とすることができる。
【0042】
当業者であれば、本明細書に説明される方法の実施に適切な加熱を容易に決定できるであろう。例えば、当業者であれば、メタルプールまたは半導体材料のいずれかまたはいずれの寸法及び形状にも相応する熱源の寸法及び/形状を選ぶことができる。さらに、熱源の流量及び熱が印加される時間長は、例えば、生成されるべきメルトプールの寸法、制御されるべき熱流束、及び本発明を実施する当業者が容易に決定することができるその他の因子にしたがって、変わり得る。熱源は、いくつかの実施形態において、例えばアレイに配置された複数の熱源のような、複数の熱源を有することができる。熱源は、様々な実施形態例において、可動とすることができる。メルトプールの形成に適する温度は、例えば半導体材料の融点ないしさらに高い温度とすることができる。
【0043】
いくつかの実施形態において、半導体材料の放射率の変化を観察することによって熱源の適用をモニタすることが可能であり得る。例えば、半導体材料がシリコンまたはシリコン合金から選ばれる一実施形態において、熱源をあてた時の温度の上昇を白熱の強まりによってモニタすることができる。しかし、溶融時には、溶融領域は高温であるにもかかわらず、放射率が対応する輝度の減少に伴い、低下し得る。例えば溶接眼鏡を通して見た場合、当該技術者は、未溶解材料の方が明るく、したがってメルトプールが形成されている点の決定が可能であり得ることに、気付くであろう。
【0044】
本明細書に説明される態様のいずれかで半導体を熱源にさらすことで、いくつかの実施形態において、冷却された半導体材料の最終特性に影響を与えることができる。したがって、当業者であれば、熱源にさらす適切な時間及び方法を、例えば処理された材料の所望の特性に基づいて、決定することができる。例えば、いくつかの実施形態において、半導体の単一領域に熱源をあてることができる。別の実施形態において、半導体材料の全領域または選択された領域にかけていずれかの所望のパターンで緩やかにまたは迅速に熱源を移動させることができる。例えば、一実施形態において、表面アスペリティの形成を最小限に抑えるため、メルトプールを半導体材料の一辺から他辺に、メルトプールから分離した液体溜まりを取り残さずに熱源の前にメルトプール前線を押して滑らかに移動させ、次いで、パスの終わりにあたり、熱源が端に近づくにつれて熱源を緩やかに遠ざけるかまたは熱流束を緩やかに減少させてメルトプールを縮小させるような、態様で熱源をあてることができる。この点において、当該技術者であれば半導体材料の端に単一の小ピークを形成し、そのピークを冷却させることができる。
【0045】
本発明の様々な実施形態例にしたがえば、本明細書に説明される方法は、例えば空気中のような、周囲条件の下で実施することができ、あるいは、例えば、アルゴン、水素またはこれらの混合物が入っている閉鎖容器(例:グローブボックス)内のような、制御された環境内で実施することができる。
【0046】
本明細書において様々な実施形態例で説明したように、半導体材料の冷却は当業者には既知のいずれかの方法によって実施することができ、冷却には、例えば、オーブンまたは炉内の制御された緩やかな冷却または高速の対流冷却を含めることができる。冷却は、例えば、能動工程に限定されず、いくつかの実施形態において、熱源を遠ざけて材料を自然冷却させる工程を含めることができる。様々な実施形態例において、結晶寸法のような特性を向上させることができ、残留熱応力を低めることができるから、冷却は低速で行うことが望ましいであろう。望ましい最適な冷却の速度及び方法は、当業者が容易に決定することができ、例えば、冷却された半導体材料の望ましい特性、熱源のタイプ、処理される半導体材料のタイプ及び厚さ、等に依存し得る。
【0047】
本発明の様々な実施形態では、本明細書に説明されるような、結晶構造を有する半導体材料を提供する工程、半導体材料の少なくとも一部を熱源にさらして、メルトプールを形成する工程、及び半導体材料を冷却する工程を含む方法によって処理された材料も考えられる。
【0048】
本発明の様々な実施形態例にしたがえば、図1は、本発明の方法にしたがう半導体材料11を処理するための装置10の略図である。
【0049】
半導体材料11は、例えば、シリコン、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、及びこれらの合金及び混合物から、選ぶことができる。半導体材料11は、例えば、シート、フィルム、ウエハ、インゴット、リボンまたはロッドのような、いずれかの形態とすることができる。本発明にしたがう少なくとも1つの実施形態において、半導体材料11には、厚さが約50μmから約1000μmないしさらに大きい範囲にあるシートが含まれる。別の実施形態において、半導体材料11には厚さが約100μmから約300μmの範囲にあるシートが含まれる。
【0050】
図1において、半導体材料11は支持体16で支持される。支持体16は、半導体材料11の全面を支持することができ、あるいは半導体材料11の末端またはエッジを支持することができる。支持体16はいくつかの実施形態において、例えば二酸化シリコンのような、耐火材料を含むことができる。他の材料を支持体16の形成に用いることもでき、いくつかの実施形態において、高温に耐えることができ、及び/または半導体材料11を不純物で汚染するリスクを低めることができる、材料の能力に基づいて選ぶことができる。支持体16はいくつかの実施形態において熱源を有する。
【0051】
半導体材料11及び支持体16は必要に応じて閉鎖容器14内に収めることができる。閉鎖容器14内の雰囲気は、例えば、空気、水素、アルゴン及びこれらの混合気を含むことができる。少なくとも1つの実施形態において、閉鎖容器14内の雰囲気は水素とアルゴンの混合気を含む。ガスインレット15を通してガスを閉鎖容器14に供給することができる。
【0052】
半導体材料11内のメルトプール12を形成するため、熱源13が熱流束を供給する。熱源13は十分な熱流束を供給するに十分ないずれかの熱源から選ぶことができ、当業者であれば容易に決定することができる。熱源は、例えば、水素/酸素トーチ、水素/ハロゲントーチ、必要に応じて二酸化シリコン封入タングステン電極を有するタングステン不活性ガス(TIG)トーチ、例えばハロゲンランプのようなIRランプ、レーザ、アルゴンまたはヘリウムプラズマトーチ、またはカーボンロッドとすることができる。熱源13としてカーボンロッドが用いられる場合、カーボンが半導体材料11に入るか、そうではなくとも汚染することを防止するために、必要に応じて、カーボンロッドを密封することができる。
【0053】
図2Aは半導体材料21の上面27上のメルトプール22の形成を示す。熱源23がメルトプール22を形成するに十分な熱流束を半導体材料22に供給する。図2Aには上面27に形成されたメルトプール22しか示されていないが、別の実施形態において、メルトプール22は、(図2Aに破線29で示されるように)上面27から底面28まで延び拡がることができ、底面28にだけ形成することができ、上面27に形成し続いて底面28に形成することができ、あるいは底面28に形成し続いて上面27に形成することができ、あるいは別の態様で形成することもできる。それぞれの表面からの溶融材料を有するメルトプールは、例えば、メルトプールの周縁において未溶融材料を濡らすことによって、あるいは溶融材料の表面張力によって、安定化することができる。
【0054】
メルトプール22の形成は、実施形態例において、放射率の変化を目で見て、または光学的に、検出することで判定することができる。例えば、シリコンは温度の上昇にともなう放射率の上昇を示すが、シリコンが溶融すると、放射率は急激に低下する。
【0055】
図2Bは、半導体材料を冷却させるために、熱源23が半導体材料21の上面27から遠ざけられている、半導体材料を示す。
【0056】
図3は本発明にしたがう方法によって一部が処理されたシリコン材料を示すマイクログラフである。A側は処理されておらず、B側が本発明にしたがう方法で処理されている。処理されたB側は処理されていないA側に比較して、より平滑な表面及びより大きな結晶粒径を示す。本発明にしたがう少なくとも1つの実施形態において、半導体材料は未処理半導体材料より一様な表面、例えばトポグラフ変動が10μmより小さい表面を有する。
【0057】
図4は本発明にしたがう別の実施形態例による半導体材料41を処理する方法を示す。半導体41の表面47が第1の熱源43に、また半導体材料41の底面48が第2の熱源43'に、ほぼ同時にさらされて、半導体材料41にメルトプール42及び42'がそれぞれ形成される。
【0058】
図5A〜5Dは本発明にしたがう一実施形態による方法の例を示す。図5Aにおいては半導体材料51の上面57が熱源53にさらされてメルトプール52Aが形成される。続いて、図5Bに示されるように、半導体材料51の底面58が熱源53にさらされてメルトプール52Bが形成される。図5Cおよび5Dでは、上面57と底面58が熱源53に反復してさらされて、メルトプール52Cと52Dが続けて形成される。このプロセスは、例えば半導体材料の結晶粒構造をさらに一層向上させるために、反復させることができる。熱源53は単一熱源または複数の熱源とすることができる。
【0059】
本明細書及び添付される特許請求の範囲に用いられるように、単数形の冠詞‘a’,‘an'及び‘the’は、そうではないことが別に明白にまた決定的に1つの指示対象に限定されていない限り複数の指示対象を含み、また逆の場合もあり得ることに注意されたい。したがって、単に例として、「熱源」への言及は1つ以上の熱源を指すことができ、「半導体材料」への言及は1つ以上の半導体材料を指すことができる。本明細書に用いられるように、語句「含む」及びその文法的異形語は、リスト内の項目の列挙がリストに挙げられた項目を置き換えるかまたはリストに挙げられた項目に追加することができる他の同様の項目の排除ではないように、非限定であるとされる。
【0060】
本開示のプログラム及び方法に本開示の教示の範囲を逸脱しない様々な改変及び変形がなされ得ることが当業者には明らかであろう。当業者には本明細書の考察及び本明細書に開示される教示の実施から本開示の別の実施形態が明らかになるであろう。本明細書に説明される実施形態は単なる例として見なされるべきである。
【符号の説明】
【0061】
10 半導体材料処理装置
11,21,41,51 半導体材料
12,22,42,42',52A,52B,52C,52D メルトプール
13,23,43,43',53 熱源
14 閉鎖容器
15 ガスインレット
16 支持体
27,47,57 半導体材料上面
28,48,58 半導体材料底面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体材料を処理する方法において、
結晶構造を有する半導体材料を提供する工程、
前記半導体材料の少なくとも一部を熱源にさらして、メルトプールを形成する工程、及び
前記半導体材料を冷却する工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記メルトプールが、前記半導体材料の上面から前記半導体材料の底面まで延び拡がる溶融材料を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記メルトプールが、前記半導体材料の上面からまたは前記半導体材料の底面からの溶融材料を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
シリコン材料またはシリコン合金材料の結晶粒構造及び表面特性の内の少なくとも1つを向上させる方法において、
結晶構造を有するシリコン材料またはシリコン合金材料を提供する工程、
前記シリコン材料またはシリコン合金材料の少なくとも一部を熱源にさらして、メルトプールを形成する工程、及び
前記シリコン材料またはシリコン合金材料を冷却して、向上した結晶粒構造または表面特性あるいはいずれをも有する処理されたシリコン材料またはシリコン合金材料を形成する工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
半導体材料において、
結晶構造を有する半導体材料を提供する工程、
前記半導体材料の少なくとも一部を熱源にさらして、メルトプールを形成する工程、及び
前記半導体材料を冷却する工程、
を含む方法によって処理されていることを特徴とする半導体材料。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【公表番号】特表2011−522437(P2011−522437A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512460(P2011−512460)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【国際出願番号】PCT/US2009/003332
【国際公開番号】WO2009/148561
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】