説明

半導体発光素子アレイおよびこれを用いた照明用器具

【課題】高輝度化を図ることが可能な半導体発光素子アレイおよびこれを用いた照明用器具を提供すること。
【解決手段】それぞれがn−GaN層2、活性層3、およびp−GaN層4を有する複数の半導体発光素子Edを備えた半導体発光素子アレイAであって、複数の半導体発光素子Edは、SiCからなる基板1上に形成されており、基板1のうち複数の半導体発光素子Edが搭載された面とは反対側の面が、光出射面1aとされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEDなど複数の半導体発光素子を有する半導体発光素子アレイおよびこれを用いた照明用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
図4は、従来の半導体発光素子アレイの一例を示している(たとえば、特許文献1参照)。同図に示された半導体発光素子アレイXにおいては、基板91上に複数の半導体発光素子Edが形成されている。半導体発光素子Edは、n−GaN層92、活性層93、およびp−GaN層94が積層された構造を有している。n−GaN層92から注入された電子とp−GaN層94から注入された正孔とが活性層93において再結合することによって青色光が発せられる。活性層93からの青色光は、透明電極とされたp側電極95を透過し、蛍光体層96に入射する。蛍光体層96には、蛍光体微粉末が含有されている。この蛍光体微粉末によって上記青色光の一部が黄色光に変換される。変換された黄色光と残りの青色光とが混色されることにより、蛍光体層96の上面から白色に近い光が出射される。
【0003】
しかしながら、半導体発光素子アレイの高輝度化を図ろうとすると、以下の問題点があった。
【0004】
まず、蛍光体層96は一般的に樹脂材料に上述した蛍光体微粉末が混入された構成とされている。この樹脂材料と、青色発光に適したGaNとは、互いの屈折率が大きく異なる。このため、p−GaN層94から蛍光体層96へと青色光が進行する過程において、全反射されてしまう青色光の割合が大きい。このため、活性層93によって発せられた光のうち蛍光体層96から適切に出射される割合である出射効率が十分に高められなかった。
【0005】
また、半導体発光素子Edから発光させるために電流を流すと、n−GaN層92、活性層93、およびp−GaN層94が発熱する。半導体発光素子Edは、樹脂を主成分とする蛍光体層96によってその大部分を覆われているため、放熱されにくい構成となっている。さらに、蛍光体層96によって青色光が色変換されると、この色変換においても熱が生じる。この熱は、蛍光体層96にこもってしまうこととなる。半導体発光素子アレイXに流す電流が大きくなるほどこれらの発熱量が大きくなる。したがって、半導体発光素子アレイXの高輝度化を目的として大電流化を図るには、半導体発光素子アレイXからの放熱をさらに促進する必要があった。
【0006】
【特許文献1】特開2005−79202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、高輝度化を図ることが可能な半導体発光素子アレイおよびこれを用いた照明用器具を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の側面によって提供される半導体発光素子は、それぞれがn型半導体層、活性層、およびp型半導体層を有する複数の半導体発光素子を備えた半導体発光素子アレイであって、上記複数の半導体発光素子は、SiCからなる基板上に形成されており、上記基板のうち上記複数の半導体発光素子が搭載された面とは反対側の面が、光出射面とされていることを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、SiCは熱伝導率が高い材質であるため、上記基板を比較的熱伝導性が良好なものとすることができる。これにより、上記半導体発光素子から生じた熱を上記基板を介して放熱することが可能である。また、上記半導体発光素子とは反対側に位置する上記光出射面から光を出射する構成とすることにより、たとえば上記半導体発光素子を覆う樹脂製の色変換層を設ける必要が無い。以上より、上記半導体発光素子アレイは、発光時に生じる熱を適切に放熱させることが可能であり、高輝度化を目的とした大電流化を図ることができる。さらに、SiCは代表的な半導体材料であるGaNと屈折率が大きく異ならない。したがって、上記活性層からの光が上記基板によって全反射される割合を小さくすることができる。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記基板と上記複数の半導体発光素子との間には、SiCを含む色変換層が設けられている。このような構成によれば、上記色変換層を介して上記半導体発光素子からの熱を上記基板へと伝達することができる。また、たとえばドナーおよびアクセプタを含むSiCを用いれば、上記半導体発光素子からの青色光を高い変換効率で白色光へと変換することができる。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記各半導体発光素子は、上記基板側から順に上記n型半導体層、上記活性層、および上記p型半導体層が積層された構成とされており、上記複数の半導体発光素子のうち隣り合うものどうしは、その底部が上記n型半導体層よりも上記基板側に位置するものとされた溝によって区画されている。このような構成によれば、上記複数の半導体発光素子どうしが不当に導通するおそれがない。したがって、上記半導体発光素子アレイの漏れ電流を抑制可能であり、上記半導体発光素子アレイの大電流化を図るのに適している。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記基板と上記n型半導体層との間に追加のp型半導体層が介在している。このような構成によれば、上記n型半導体層と上記追加のp型半導体層との間には、非常に高抵抗な境界面が形成される。これは、上記複数の半導体発光素子間の漏れ電流を抑制するのに有利である。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記複数の半導体発光素子どうしを導通させ、かつ上記基板の厚さ方向視において上記活性層の少なくとも一部を覆う金属製の素子間配線をさらに備える。このような構成によれば、上記活性層から向かってきた光を上記素子間配線によって上記基板に向けて適切に反射させることができる。これは、上記半導体発光素子アレイの高輝度化に有利である。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記活性層と上記基板との間に位置し、かつSiCを含む層とSiCとは屈折率が異なる層とが接している境界面を有しており、上記活性層と上記境界面との距離tが、上記活性層から発せられる光の波長をλとした場合に、t=a×λ/2n×(1±x)(ただし、aは整数、nはn型半導体層の屈折率、x≦10%)を満たすものとされている。このような構成によれば、上記活性層と上記境界面との間において、上記活性層からの光を増幅させることが可能である。したがって、上記半導体発光素子アレイの高輝度化をさらに促進させることができる。
【0015】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記複数の半導体発光素子に対して電源供給するための1対の端子を備えており、上記複数の半導体発光素子は、いずれもが上記1対の端子間に直列に接続されており、かつ互いの順方向が逆である2組の半導体発光素子群を含んでいる。このような構成によれば、上記半導体発光素子アレイを交流電源によって発光させることができる。
【0016】
本発明の第2の側面によって提供される照明用器具は、本発明の第1の側面によって提供される半導体発光素子アレイと、上記半導体発光素子アレイの上記基板に接しており、かつ上記半導体発光素子アレイを支持する金属部材と、外部電源から電源供給を受け、かつ機械的に保持されるための接続部と、を備えることを特徴としている。
【0017】
このような構成によれば、上記金属部材を介して上記半導体発光素子アレイからの熱を適切に放熱することができる。また、上記照明用器具を従来の規格化された照明用器具の代替品として用いるのに適している。
【0018】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0020】
図1および図2は、本発明に係る半導体発光素子アレイの一例を示している。本発明に係る半導体発光素子アレイAは、基板1上に複数の半導体発光素子Edが形成された構造とされており、図1に示すように基板1から図中下方に向けて光が出射される構成とされている。本実施形態においては、半導体発光素子アレイAは、その平面視寸法が0.4〜1.5mm角程度とされている。
【0021】
基板1は、SiCからなる。これにより、基板1は、赤色光、緑色光、青色光、および白色光などの可視光を透過させる一方、紫外線を選択的に吸収するものとされている。本実施形態においては、基板1は、その厚さが200μm程度とされている。基板1の図中下面は、光を出射させる光出射面1aとなっている。光出射面1aは、平滑な面とされている。また、光出射面1aは、光の出射効率を高めるために好適な凹凸面としてもよい。基板1上には、SiC色変換層11、n−SiC層12、バッファ層13、およびp−GaN層14が積層されている。
【0022】
SiC色変換層11は、半導体発光素子Edからの青色光を白色光に変換させるための層である。SiC色変換層11は、SiCを主成分とし、これにドナーとアクセプタとが含まれている。SiC色変換層11において、ドナーは電子を生じさせるものであり、アクセプタは正孔を生じさせるものである。SiC色変換層11に青色光が照射されると、上記ドナーとアクセプタとの間で輻射再結合が生じる。この再結合によって白色光が発せられる。SiC色変換層11によって青色光を白色光に変換させるためには、上記ドナーとしてNを用い、上記アクセプタとしてB,Alを用いることが好ましい。これらのドナーおよびアクセプタの濃度としては、1.0×1015〜1020atoms/cm3程度が好ましい。本実施形態においては、SiC色変換層11は、その厚さが20〜200μm程度とされている。
【0023】
n−SiC層12は、SiCにNなどの元素がドープされることによりn型の半導体とされた層である。上述したドナーおよびアクセプタを含むことによってSiC色変換層11の結晶性が悪化するが、SiC色変換層11よりも結晶性が良好であるn−SiC12を設けることにより結晶性の改善が図られる。本実施形態においては、n−SiC層12は、その厚さが2〜4μm程度とされている。
【0024】
バッファ層13は、たとえばAlGaNからなり、SiCとGaNとの格子歪を緩和するためのものである。バッファ層13を設けることにより、SiCからなるn−SiC層12上に主成分がGaNであるp−GaN層14、n−GaN層2、活性層3、およびp−GaN層4を安定して形成することができる。本実施形態においては、バッファ層13は、その厚さが20〜200nm程度とされている。
【0025】
バッファ層13を形成するAlGaNの屈折率は2.5程度であり、n−SiC層12を形成するSiCの屈折率は2.6程度である。互いの屈折率が異なるn−SiC層12とAlGaN層13との境界面12aは、同材質からなる層どうしの境界面と比較して光を反射させやすい面となっている。境界面12aと活性層3との距離tは、活性層3から発せられる光の波長をλとした場合に、t=a×λ/2n×(1±x)(ただし、aは整数、nはn−GaN層2の屈折率、x≦10%)を満たすものとされている。本実施形態においては、波長λは460nm程度であり、距離tは0.92〜1.84μm程度である。
【0026】
p−GaN層14は、GaNにたとえばMgがドープされたp型半導体からなり、本発明で言う追加のp型半導体層の一例である。本実施形態においては、p−GaN層14は、その厚さが300nm程度とされている。p−GaN層14上には、複数の半導体発光素子Edが配置されている。
【0027】
半導体発光素子Edは、n−GaN層2、活性層3、およびp−GaN層4を具備して構成されている。本実施形態においては、5〜50個程度の半導体発光素子Edがマトリクス状に配置されている。
【0028】
n−GaN層2は、GaNにたとえばSiがドープされたn型半導体からなり、本発明で言うn型半導体層の一例である。本実施形態においては、n−Gan層2は、その厚さが0.6〜1.34μm程度の厚肉部分と、その厚さが0.3〜0.67μm程度の薄肉部分とを有している。この薄肉部分には、n側電極21が形成されている。n側電極21は、たとえばTiおよびAlが積層されたものである。
【0029】
活性層3は、たとえばInGaNを含むMQW(重量子井戸:Multiple Quantum Well)構造とされた層であり、電子と正孔とが再結合することにより発せられる光を増幅させるための層である。活性層3は、たとえば複数のInGaN層と複数のGaN層とが交互に積層されている。上記InGaN層は、Inの組成比がたとえば17%程度とされることにより、n−GaN層2よりもバンドギャップが小とされており、活性層3の井戸層を構成している。上記GaN層は、活性層3のバリア層を形成している。本実施形態においては、活性層3は、厚さが1.5〜4.0nm程度のInGaN層と厚さが6〜20nm程度のGaN層とが積層されており、その全体的な厚さが100nm程度とされている。なお、n−GaN層2と活性層3との間には、格子歪を緩和することを目的として、InGaNおよびGaNが一原子毎に交互に積層された超格子層を形成してもよい。
【0030】
p−GaN層4は、GaNにたとえばMgがドープされたp型半導体からなり、本発明で言うp型半導体層の一例である。本実施形態においては、p−GaN層4は、その厚さが50〜200nm程度とされている。p−GaN層4には、p側電極41が形成されている。p側電極41は、たとえばNiからなり、p−GaN層4の図中上面右側部分を覆っている。なお、活性層3とp−GaN層4との間には、GaN層またはInの組成が0.1%程度のInGaN層を形成してもよい。
【0031】
p側電極41と、このp側電極41が形成された半導体発光素子Edと隣り合う半導体発光素子Edのn側電極21とは、素子間配線5によって接続されている。素子間配線5は、たとえばAlまたはPtからなり、比較的反射率が高いものとされている。素子間配線5は、半導体発光素子Edの上面右寄りに形成されたp側電極41と、この半導体発光素子Edの左側に位置する半導体発光素子Edのn側電極21との間を跨ぐように形成されている。これにより、p−GaN層4のうちp側電極41によって覆われていない部分は、素子間配線5によって覆われている。図示された3つの半導体発光素子Edは、素子間配線5により互いに直列に接続されている。
【0032】
隣り合う半導体発光素子Edどうしの間には、溝6が形成されている。溝6は、隣り合う半導体発光素子Edどうしを電気的に区画するためのものである。溝6は、その底部6aがn−GaN層2よりも基板1寄りに位置する深さとされている。本実施形態においては、溝6は、n−GaN層2およびp−GaN層14を貫通しており、底部6aがバッファ層13に達している。このような溝6は、たとえばエッチングを用いて形成することができる。
【0033】
溝6の内側領域、半導体発光素子Edと素子間配線5との間の領域、および半導体発光素子Edの表面の一部には、絶縁膜71が形成されている。絶縁膜71は、たとえばSiO2からなり、可視光に対して透明とされている。
【0034】
図2は、半導体発光素子アレイAの概略図である。本図に示されるように、半導体発光素子アレイAに搭載された複数の半導体発光素子Edは、2つの半導体発光素子群Ge1,Ge2に分けられている。半導体発光素子群Ge1,Ge2のそれぞれに含まれる複数の半導体発光素子Edどうしは、上述した素子間配線5によって互いに直列に接続されている。半導体発光素子群Ge1,Ge2は、いずれも基板1に設けられた1対の端子15に接続されている。一対の端子15は、たとえば交流電源Pを半導体発光素子アレイAに接続するためのものである。半導体発光素子群Ge1は、その順方向が図中左側の端子15から図中右側の端子15へと向かうように接続されている。一方、半導体発光素子群Ge2は、その順方向が図中右側の端子15から図中左側の端子15へと向かうように接続されている。このような接続形態とすることにより、交流電源Pから交流電圧が印加されると、半導体発光素子Ge1,Ge2が交互に発光することとなる。
【0035】
図3は、半導体発光素子アレイAを用いた照明用器具の一例を示している。同図に示された電球Bは、口金81、ガラス球体82、金属部材83、および半導体発光素子アレイAを具備して構成されている。
【0036】
口金81は、半導体発光素子アレイAに電源供給するとともに、電球Bを支持するための部分であり、本発明で言う接続部の一例である。口金81は、略円筒形状であり、らせん状の凸部が形成されている。このような形状とされることにより、口金81は、たとえばJIS規格に定められるE17口金、E26口金に適合している。
【0037】
ガラス球体82は、ガラス製の殻体であり、半導体発光素子アレイAからの光を透過させる部分である。必要に応じ、ガラス球体82には、半導体発光素子アレイAからの光の色調を調整するための着色が施されている。
【0038】
金属部材83は、半導体発光素子アレイAを口金81に対して固定するためのものである。金属部材83は、たとえばCu製である。金属部材83は、半導体発光素子アレイAの基板1に対して接合されている。本実施形態においては、金属部材83は、半導体発光素子アレイAと口金81とを電気的に接続する機能を有する。金属部材83は、図2に示す1対の端子15に対してたとえばワイヤ(図示略)によって接続されている。
【0039】
電球Bにおいては、半導体発光素子アレイAは、基板1の光出射面1aが口金81とは反対側にあるガラス球体82の頂部を向く姿勢で搭載されている。これにより、光出射面1aから出射された光が、ガラス球体82の球状部分を透過し拡散していく。
【0040】
次に、半導体発光素子アレイAおよび電球Bの作用について説明する。
【0041】
本実施形態によれば、半導体発光素子Edからの光は、基板1側に配置されたSiC色変換層11において色変換される。この色変換において発生する熱は、比較的熱伝導性が良好であるSiCからなる基板1へと伝達されやすい。また、半導体発光素子Edは、図4に示した従来技術による例と異なり、比較的厚肉な樹脂からなる蛍光体層によって覆われた構成とはなっていない。このため、半導体発光素子Edからの熱が上記蛍光体層などにこもってしまうおそれがない。したがって、半導体発光素子アレイAは、発光によって生じる熱を適切に放熱することが可能であり、高輝度化を目的とした大電流化を図るのに適している。これに加えて、電球Bにおいては、基板1に金属部材83が接合されている。これにより、半導体発光素子アレイAに生じた熱を、基板1から金属部材83へと伝達させることができる。これは、電球Bの大電流化および長寿命化に適している。
【0042】
ドナーおよびアクセプタを含むSiC色変換層11を用いて色変換することにより、半導体発光素子Edからの青色光を白色光に近い状態に変換可能である。この色変換は、たとえば従来の蛍光体を用いた色変換に比べてその変換効率が顕著に高い。したがって、半導体発光素子アレイAを白色光を発光可能としつつ、その輝度を高めることができる。また、基板1を形成するSiCは、紫外線を良好に吸収する。これにより、半導体発光素子Edから発せられた光のうち、紫外線を選択的に吸収し、可視光を適切に透過させることができる。したがって、半導体発光素子アレイAは、紫外線が人体に影響を及ぼすことを抑制することが可能であり、たとえば電球Bに用いられるのに適している。
【0043】
複数の半導体発光素子Edどうしは、溝6によって区画されている。この溝6は、その底部6aがn−GaN層2よりも基板1寄りに配置されたものである。これにより、複数の半導体発光素子Edのn−GaN層2どうしが完全に区画されている。また、n−GaN層2の下方にp−GaN層14が設けられていることにより、n−GaN層2とp−GaN層14との間には、非常に高抵抗な境界面が形成されている。以上より、複数の半導体発光素子Edどうしが互いに不当に導通するおそれがなく、漏れ電流の発生を適切に抑制することができる。これは、半導体発光素子アレイAの大電流化に有利である。
【0044】
活性層3から図中上方へと向かった光は、透明とされた絶縁膜71を透して素子間配線5によって下方へと反射される。素子間配線5は比較的反射率が高いため、反射による光の減衰を抑制することが可能である。これは、半導体発光素子アレイAの高輝度化に適している。また、Niなどからなるp側電極41は、p−GaN層4と良好なオーミックコンタクトを形成することが可能である反面、p−GaN層4との接合面が黒ずんでしまうことが多い。しかし、本実施形態においては、p側電極41を形成する領域を、p−GaN層4の上面の一部に限定することにより、黒ずんだ接合面において光が吸収されてしまうことを抑制することが可能である。
【0045】
活性層3と境界面12aとの距離tを上述した関係とすることにより、活性層3から発せられた波長λの光が距離tの区間において反射を繰り返すと、この光の輝度を増幅する効果が得られる。この輝度の増幅効果は、基板1の厚さ方向において得られるものであり、基板1の面内方向に進行する光に対しては、増幅効果は得られない。この結果、基板1の厚さ方向に進行する光が支配的となり、基板1の面内方向に進行する光は相対的に無視できる程度の輝度となる。したがって、光出射面1aからの光を高輝度とするとともに、その他の部分から光が漏れることを抑制することができる。なお、距離tを波長λの1/2nの整数倍の値に対して±10%の範囲内のものとしておけば、輝度増幅効果を適切に発揮させることができる。
【0046】
複数の半導体発光素子Edを互いの順方向が逆である2つの半導体発光素子群Ge1,Ge2とすることにより、交流電源Pからの交流電流によって半導体発光素子軍Ge1,Ge2を交互に発光させることができる。交流電源Pがたとえば50Hzまたh60Hzの周波数であると、肉眼には2つの半導体発光素子群Ge1,Ge2が同時に発光しているように見える。したがって、半導体発光素子アレイAは、家庭用電源からの電力供給によって広い領域を均一に照明することができる。また、電球Bは、E17口金またはE26口金に適合した口金81を備えている。したがって、電球Bは、従来の白熱電球などの代替品として広く一般的に用いることができる。
【0047】
本発明に係る半導体発光素子アレイおよび照明用器具は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る半導体発光素子アレイおよび照明器具の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0048】
本発明で言うn型半導体層、活性層、p型半導体層、および追加のp型半導体層は、GaNを主成分とするものに限定されず、電子と正孔とを再結合させることにより適切に発光可能な材質によって形成すればよい。SiCを含む色変換層は、高い変換効率で白色光へと変換するとともに、紫外線を適切に吸収するのに適しているが、本発明に係る半導体発光素子アレイは、これ以外の色変換層を用いたり、色変換層を用いたりすることなく活性層からの光を直接出射させる構成としてもよい。複数の半導体発光素子を互いの順方向が異なる2つの半導体発光素子群とすれば、交流電流による発光が可能であるが、本発明はこれに限定されず、1つの半導体発光素子群を備えることにより、直流電源によって発光される構成としてよい。
【0049】
本発明に係る照明用器具は、上述した電球に限定されず、たとえば、一般的な棒状の蛍光灯の代替品として使用可能な形態であってもよい。このような形態は、接続部などの形状を適宜変更することにより実現可能である。また、本発明に係る照明用器具は、従来の規格化された照明用器具の代替品として使用可能なものに限定されず、たとえば照明装置の全面を覆うほどのサイズとされた半導体発光素子アレイを用いた専用の照明用器具であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る半導体発光素子アレイの一例を示す要部断面図である。
【図2】本発明に係る半導体発光素子アレイの一例を示す概略平面図である。
【図3】本発明に係る照明用器具の一例を示す断面図である。
【図4】従来の半導体発光素子アレイの一例を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0051】
A 半導体発光素子アレイ
B 電球(照明用器具)
Ed 半導体発光素子
Ge1,Ge2 半導体発光素子群
t 距離
1 基板
2 n−GaN層(n型半導体層)
3 活性層
4 p−GaN層(p型半導体層)
5 素子間配線
6 溝
6a 底部
1a 光出射面
11 SiC色変換層
12 n−SiC層
13 バッファ層
14 p−GaN層(追加のp型半導体層)
15 端子
21 n側電極
41 p側電極
71 絶縁膜
81 口金(接続部)
82 ガラス球体
83 金属部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれがn型半導体層、活性層、およびp型半導体層を有する複数の半導体発光素子を備えた半導体発光素子アレイであって、
上記複数の半導体発光素子は、SiCからなる基板上に形成されており、
上記基板のうち上記複数の半導体発光素子が搭載された面とは反対側の面が、光出射面とされていることを特徴とする、半導体発光素子アレイ。
【請求項2】
上記基板と上記複数の半導体発光素子との間には、SiCを含む色変換層が設けられている、請求項1に記載の半導体発光素子アレイ。
【請求項3】
上記各半導体発光素子は、上記基板側から順に上記n型半導体層、上記活性層、および上記p型半導体層が積層された構成とされており、
上記複数の半導体発光素子のうち隣り合うものどうしは、その底部が上記n型半導体層よりも上記基板側に位置するものとされた溝によって区画されている、請求項1または2に記載の半導体発光素子アレイ。
【請求項4】
上記基板と上記n型半導体層との間に追加のp型半導体層が介在している、請求項3に記載の半導体発光素子アレイ。
【請求項5】
上記複数の半導体発光素子どうしを導通させ、かつ上記基板の厚さ方向視において上記活性層の少なくとも一部を覆う金属製の素子間配線をさらに備える、請求項1ないし4のいずれかに記載の半導体発光素子アレイ。
【請求項6】
上記活性層と上記基板との間に位置し、かつSiCを含む層とSiCとは屈折率が異なる層とが接している境界面を有しており、
上記活性層と上記境界面との距離tが、上記活性層から発せられる光の波長をλとした場合に、t=a×λ/2n×(1±x)(ただし、aは整数、nはn型半導体層の屈折率、x≦10%)を満たすものとされている、請求項1ないし5のいずれかに記載の半導体発光素子アレイ。
【請求項7】
上記複数の半導体発光素子に対して電源供給するための1対の端子を備えており、
上記複数の半導体発光素子は、いずれもが上記1対の端子間に直列に接続されており、かつ互いの順方向が逆である2組の半導体発光素子群を含んでいる、請求項1ないし6のいずれかに記載の半導体発光素子アレイ。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の半導体発光素子アレイと、
上記半導体発光素子アレイの上記基板に接しており、かつ上記半導体発光素子アレイを支持する金属部材と、
外部電源から電源供給を受け、かつ機械的に保持されるための接続部と、
を備えることを特徴とする、照明用器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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