説明

半導体発光装置及びこれを用いた照明器具

【課題】所望の合成光を供給することができるとともに、低コスト化を容易に図ることができる半導体発光装置及びそれを用いた照明器具を提供する。
【解決手段】配線基板と、前記配線基板の実装面に配置され、発光ピークの波長が360nm〜480nmである半導体発光素子と、前記半導体発光素子が発する放射光に対して交差するように延設され、前記放射光のすくなくとも一部を波長変換する波長変換部と、を有し、前記波長変換部は、有機蛍光体及び光拡散材を含むとともに前記半導体発光素子が発する放射光の平均透過率が20%以下である第1波長変換領域と、無機蛍光体を含む第2波長変換領域とに、前記波長変換部の延設方向において領域分割されていること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定波長範囲の光を発するLEDチップと、このLEDチップが発する光を波長変換する波長変換部材とを用いた半導体発光装置、及びこれを用いた照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
発光装置の光源として白熱電球や蛍光灯が従来より広く用いられている。近年では、これらに加え、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)や有機EL(OLED)等の半導体発光素子を光源とした半導体発光装置が開発され使用されつつある。これらの半導体発光素子では、様々な発光色を得ることが可能であるため、発光色の異なる複数の半導体発光素子を組み合わせ、それぞれの発光色を合成して所望の色の合成光を得るようにした半導体発光装置も開発され使用され始めている。
【0003】
例えば、発光色が赤色のLEDチップを用いた赤色LEDと、発光色が緑色のLEDチップを用いた緑色LEDと、発光色が青色のLEDチップを用いた青色LEDとを組み合わせ、各LEDに供給する駆動電流を調整して各LEDから発せられた光を合成することにより、所望の白色光を放射させるようにした半導体発光装置が特許文献1に開示されている。
【0004】
元来、LEDチップ自体の発光スペクトル幅は比較的狭いため、LEDチップ自体が発する光をそのまま照明に用いた場合、一般的な照明光において重要となる演色性が低下するという問題がある。そこで、このような問題を解消すべく、LEDチップが発する光を蛍光体などの波長変換部材によって波長変換し、波長変換によって得られた光を放射するようにしたLEDが開発され、このようなLEDを組み合わせた半導体発光装置が、例えば特許文献2に開示されている。
【0005】
特許文献2の半導体発光装置では、発光色が青色のLEDチップを用いた青色LEDに加え、同様のLEDチップに、このLEDチップが発した光で励起されて緑色光を発する緑色蛍光体を組み合わせた緑色LEDと、同様のLEDチップに、このLEDチップが発した光で励起されて赤色光を発する赤色蛍光体を組み合わせた赤色LEDとが用いられている。そして、これら青色LED、緑色LED及び赤色LEDがそれぞれ発する光の合成によって、半導体発光装置が放射する光に優れた演色性を確保すると共に、各LEDの光出力を調整することで、半導体発光装置が放射する光の色を多彩に変化させることができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−4839号公報
【特許文献2】特開2007−122950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来から、波長変換部材に用いられる材料としては、無機蛍光体や有機蛍光体が知られていた。有機蛍光体は、無機蛍光体よりも安価であるものの、無機蛍光体よりも透明であることから、LEDチップからの放射光をそのまま透過する確率が高く、無機蛍光体と比較して励起光が生じにくいことも知られていた。このため、合成光を放射する半導体発光装置に有機蛍光体からなる波長変換部材を用いても、所望の白色光の特性を実現することが困難であり、当該半導体発光装置には無機蛍光体からなる波長変換部材を用いる場合が多かった。
【0008】
しかしながら、LEDチップを用いた半導体発光装置を備える照明器具の普及にともない、照明器具の低コスト化及び半導体発光装置の低コスト化が要求されているが、無機蛍光体を用いた半導体発光装置によっては十分な低コスト化が図ることができていなかった。
【0009】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、所望の合成光を供給することができるとともに、低コスト化を容易に図ることができる半導体発光装置及びそれを用いた照明器具を提供することになる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の半導体発光装置は、配線基板と、前記配線基板の実装面に配置され、発光ピークの波長が360nm〜480nmである半導体発光素子と、前記半導体発光素子が発する放射光に対して交差するように延設され、前記放射光のすくなくとも一部を波長変換する波長変換部と、を有し、前記波長変換部は、有機蛍光体及び光拡散材を含むとともに前記半導体発光素子が発する放射光の平均透過率が20%以下である第1波長変換領域と、無機蛍光体を含む第2波長変換領域とに、前記波長変換部の延設方向において領域分割されていることを特徴とする。
【0011】
上述した半導体発光装置において、前記第1波長変換領域における前記有機蛍光体の濃度は10重量%以下であることがより好ましく、更に好ましくは0.1重量%以上5.0重量%以下である。
【0012】
上述した半導体発光装置において、前記波長変換部は、透明基板の表面に形成されてもよい。
【0013】
また、上述した半導体発光装置において、前記波長変換部は、透光性材料と混合されて形成されてもよい。
【0014】
上述した半導体発光装置において、前記第1波長変換領域は、前記有機蛍光体からなる有機蛍光体層と、前記光拡散材かなる光拡散層とから構成されてもよい。このような場合に、前記第1波長変換領域は、前記光拡散層上に前記有機蛍光体層が積層された積層構造を有し、前記有機蛍光体層よりも前記光拡散層が前記半導体発光素子に対して近接していてもよい。
【0015】
上述した半導体発光装置において、前記有機蛍光体は、赤色有機蛍光体から構成されてもよい。このような場合に、前記赤色有機蛍光体は、ペリレン構造又はポルフィリン構造を有してもよい。
【0016】
上述した半導体発光装置において、前記無機蛍光体は、緑色無機蛍光体及び黄色無機蛍光体の少なくともいずれか一方から構成されてもよい。
【0017】
上述した半導体発光装置において、前記半導体発光素子の発光ピークの波長は、440nm〜470nmであってもよい。
【0018】
上述した半導体発光装置において、前記第1波長変換領域における前記光拡散材の含有率は、1.0重量%以上70重量%以下であることがより好ましい。
【0019】
上述した半導体発光装置において、前記光拡散材は、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、及び酸化ホウ素よりなる群から選ばれる1種又は2種以上であってもよい。
【0020】
上述した半導体発光装置において、前記第1波長変換領域の膜厚は、10μm以上であることがより好ましい。
【0021】
上述した半導体発光装置において、前記波長変換部によって波長変換されずに前記波長変換部を透過した前記放射光と、前記有機蛍光体によって波長変換された第1変換光と、前記無機蛍光体によって波長変換された第2変換光と、を混合して白色光を生成してもよい。
【0022】
上述した半導体発光装置を用いて照明器具を構成してもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の半導体発光装置においては、波長変換部が有機蛍光体及び光拡散材を含む第1波長変換領域と、無機蛍光体を含む第2波長変換領域から構成されているため、LEDチップから放射される光は、各波長変換領域において、各蛍光体に応じた光に波長変換される。
【0024】
また、本発明の半導体発光装置においては、第1波長変換領域の平均透過率が20%以下であるため、LEDチップからの光を有機蛍光体に応じた他の光に良好に波長変換することができる。
【0025】
従って、上述したような半導体発光装置の構成により、所望の合成光を容易に供給することができるとともに、低コスト化を容易に図ることが可能になる。
【0026】
上述した半導体発光装置において、第1波長変換領域における前記有機蛍光体の濃度を10重量%以下、より好ましくは0.1重量%以上5.0重量%以下調整することにより、第1波長変換領域における波長変換効率を向上させ、当該波長変換によって容易に所望の光を放射することができる。
【0027】
上述した半導体発光装置において、第1波長変換領域における光拡散材の含有率を1.0重量%以上70重量%以下に調整することにより、第1波長変換領域に入射したLEDチップからの光を良好に拡散することができる。これによって、第1波長変換領域において有機蛍光体によって波長変換される光が増加し、第1波長変換領域における波長変換効率を向上することになる。従って、当該波長変換によって容易に所望の光を放射することができる。
【0028】
上述した半導体発光装置において、第1波長変換領域の膜厚を10μm以上に調整することにより、第1波長変換領域における波長変換効率を向上させ、当該波長変換によって容易に所望の光を放射することができる。
【0029】
上述した半導体発光装置を照明器具に用いることで、様々な色温度の光の供給を可能にするとともに、低コストでその製造を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】第1実施形態に係る半導体発光装置の全体構成の概略を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る半導体発光装置の平面図である。
【図3】図2中のIII−III線に沿う半導体発光装置の断面図である。
【図4】図3における要部の拡大断面図である。
【図5】図3における図4とは異なる要部の拡大断面図である。
【図6】第1実施形態に係る半導体発光装置を用いた照明装置の電気回路構成の概略を示す電気回路図である。
【図7】第1実施形態に係る半導体発光装置の波長変換部の第1変形例を示す平面図である。
【図8】第1実施形態に係る半導体発光装置の波長変換部の第2変形例を示す平面図である。
【図9】第1実施形態に係る半導体発光装置の第3変形例を示す断面図である。
【図10】第1実施形態に係る半導体発光装置の第4変形例を示す断面図である。
【図11】第2実施形態に係る半導体発光装置の要部の拡大断面図である。
【図12】第2実施形態に係る半導体発光装置の第1波長変換領域の概略構成図である。
【図13】第3実施形態に係る半導体発光装置の基本構成を示す斜視図である。
【図14】第3実施形態に係る半導体発光装置の平面図である。
【図15】図14中のXV−XV線に沿う半導体発光装置の断面図である。
【図16】波長変換部材から放射される光の波長とピーク強度の関係を示すグラフである。
【図17】実施例17に係る半導体発光装置の発光スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について、いくつかの実施形態に基づき詳細に説明する。なお、本発明は以下に説明する内容に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において任意に変更して実施することが可能である。また、各実施形態の説明に用いる図面は、いずれも本発明による半導体発光装置を模式的に示すものであって、理解を深めるべく部分的な強調、拡大、縮小、または省略などを行っており、各構成部材の縮尺や形状等を正確に表すものとはなっていない場合がある。更に、各実施形態で用いる様々な数値は、いずれも一例を示すものであり、必要に応じて様々に変更することが可能である。
【0032】
<第1実施形態>
(半導体発光装置の構成)
図1は、第1実施形態に係る半導体発光装置1の全体構成の概略を示す斜視図であり、図2は図1の半導体発光装置1の平面図である。なお、図1及び図2において、半導体発光装置1の幅方向をX方向、長手方向をY方向、高さ方向をZ方向と定義する。図1に示すように、半導体発光装置1は電気絶縁性に優れて良好な放熱性を有したアルミナ系セラミックからなる配線基板2を備える。配線基板2のチップ実装面2aには、等間隔で配線基板2の幅方向(すなわち、X方向)に4個、長手方向(すなわち、Y方向)に5個の合計20個の半導体発光素子である発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)チップ3が配列されている。図1には示していないが、配線基板2には、これらLEDチップ3のそれぞれに電力を供給するための配線パターンが形成され、後述する電気回路を構成している。
【0033】
なお、配線基板2の材質はアルミナ系セラミックに限定されるものではなく、例えば、電気絶縁性に優れた材料として、樹脂、ガラスエポキシ、樹脂中にフィラーを含有した複合樹脂などから選択された材料を用いて配線基板2の本体を形成してもよい。或いは、配線基板2のチップ実装面2aにおける光の反射性を良くして半導体発光装置1の発光効率を向上させる上では、アルミナ粉末、シリカ粉末、酸化マグネシウム、酸化チタンなどの白色顔料を含むシリコーン樹脂を用いるのが好ましい。一方、より優れた放熱性を得るため、配線基板2の本体を金属製としてもよい。この場合には、配線基板2の配線パターンなどを金属製の本体から電気的に絶縁する必要がある。
【0034】
図1に示すように、LEDチップ3が実装された配線基板2のチップ実装面2aに対向するように、ガラス製で板状の透明基板4が配設されている。なお、便宜上、図1では配線基板2と透明基板4とを離間して示しているが、後述するように、実際には配線基板2と透明基板4とは近接して配置される。なお、透明基板4の材質はガラスに限定されるものではなく、LEDチップ3が発した光に対して透光性を有した樹脂などを用いて透明基板4を形成するようにしてもよい。
【0035】
また、図1及び図2に示すように、LEDチップ3が発した光の少なくとも一部の波長を変換する波長変換部5は、第1波長変換領域P1(第1波長変換部材)及び第2波長変換領域P2(第2波長変換部材)の2つの波長変換領域に区分されている。このような波長変換部5の区分に対応して、配線基板2に実装されている各LEDチップ3も、図1及び図2に示すように、第1波長変換領域P1及び第2波長変換領域P2の各位置に対応して2つのLED群に区分されている。すなわち、図2に示すように、半導体発光装置1を平面視した場合には(すなわち、半導体発光装置1のXY平面図においては)、これら第1波長変換領域P1及び第2波長変換領域P2の2つの波長変換領域に対応して、それぞれ10個ずつのLEDチップ3が配置されている。ここで、対応するとは、第1LED群D1に対向(すなわち、重複又はオーバーラップ)するように第1波長変換領域P1が設けられ、第2LED群D2に対向するように第2波長変換領域P2が設けられた状態をいう。以下において、これら波長変換領域毎に区別してLEDチップ3を呼称する際には、第1波長変換領域P1及び第2波長変換領域P2に対応して、符号の末尾にそれぞれa又はbを付するものとする。以上のことから、第1波長変換領域P1に対応する位置にある10個のLEDチップ3aが第1LED群D1を構成し、第2波長変換領域P2に対応する位置にある10個のLEDチップ3bが第2LED群D2を構成する。
【0036】
従って、本実施形態においては、第1波長変換領域P1及び第2波長変換領域P2のそれぞれと、これに対応する第1LED群D1及び第2LED群D2との組み合わせにより、第1発光ユニットU1及び第2発光ユニットU2が構成されている。すなわち、第1LED群D1及び第1波長変換領域P1が第1発光ユニットU1を構成し、第2LED群D2及び第2波長変換領域P2が第2発光ユニットU2を構成する。本実施形態においては、第1発光ユニットU1及び第2発光ユニットU2は、一体的に設けられるとともに発光ユニット群である半導体発光装置1を構成している。なお、以下において、第1発光ユニットU1及び第2発光ユニットU2のそれぞれが放射する光を一次光と称し、第1発光ユニットU1及び第2発光ユニットU2のそれぞれが放射する一次光を合成してなるとともに半導体発光装置1から放射される光を合成光と称する。
【0037】
図3は、図2中のIII−III線に沿う半導体発光装置1の断面図であり、図4は図3に示された断面図の第1発光ユニットU1側の要部拡大図であり、図5は図3に示された断面図の第1発光ユニットU2側の要部拡大図である。図3に示すように、透明基板4は複数のスペーサ6を介して配線基板2に接合されており、これらスペーサ6を介在させることにより、図4及び図5に示すように、透明基板4と各LEDチップ3との間に空隙を設けている。
【0038】
ここで設ける空隙は、LEDチップ3から発せられた光が、このLEDチップ3に対応する位置にある波長変換部5に確実に達するように予め算出された距離L1をもって設けられている。LEDチップ3を波長変換部5にできるだけ近接させるようにすれば、LEDチップ3が発した光が波長変換部5に確実に到達することになるが、LEDチップ3が波長変換部5に近接しすぎると、LEDチップ3が発する熱により波長変換部5が加熱されて波長変換機能や発光効率の低下を招いてしまうおそれがある。このため、このような過剰な温度上昇を防止する上で、LEDチップ3と波長変換部5との間隔は0.01mm以上であるのが好ましい。
【0039】
また、半導体発光装置1に熱的な余裕があれば、このような空隙を設けず、透明基板4の第1の面4aをLEDチップ3に密着させてもよい。また、LEDチップ3と透明基板4とを離間する場合であっても、透光性を有したシリコーン樹脂、エポキシ樹脂或いはガラスなどで空隙を封止するようにしてもよい。こうすることにより、LEDチップ3からの光を効率よく波長変換部5に導くことができる。
【0040】
なお、本実施形態では、透明基板4の第2の面4bに波長変換部5を設けたが、透光基板5の第1の面4a、即ち配線基板2側の面に波長変換部5を設けるようにしてもよい。この場合にも、本実施形態と同様に波長変換部5とLEDチップ3との間に適切な空隙を設けることが可能であるが、熱的に余裕がある場合などには、波長変換部5をLEDチップ3に密着又はその直前まで近接させることも可能となる。
【0041】
(LEDチップ)
本実施形態においてLEDチップ3には、460nmのピーク波長を有した青色光を発するLEDチップを用いる。具体的には、このようなLEDチップとして、例えばInGaN半導体が発光層に用いられるGaN系LEDチップがある。なお、LEDチップ3の種類や発光波長特性はこれに限定されるものではなく、本発明の要旨から逸脱しない限りにおいて、様々なLEDチップなどの半導体発光素子を用いることができる。本実施形態においてLEDチップ3が発する光のピーク波長は、360nm〜480nmの波長範囲内にあるのが好ましく、440nm〜470nmの波長範囲内にあることがより好ましい。
【0042】
図4及び図5に示すように、LEDチップ3a、3bの配線基板2側に向く面には、p電極7とn電極8とが設けられている。図4に示すLEDチップ3の場合、配線基板2のチップ実装面2aに形成されている配線パターン9にp電極7が接合されると共に、同じくチップ実装面2aに形成された配線パターン10にn電極8が接合されている。これらp電極7及びn電極8の配線パターン9及び配線パターン10への接続は、図示しない金属バンプを介し、ハンダ付けによって行っている。図示されていない他のLEDチップ3も、それぞれのLEDチップ3に対応して配線基板2のチップ実装面2aに形成された配線パターンに、それぞれのp電極7及びn電極8が同様にして接合されている。
【0043】
なお、LEDチップ3の配線基板2への実装方法は、これに限定されるものではなく、LEDチップ3の種類や構造などに応じて適切な方法を選択可能である。例えば、LEDチップ3を配線基板2の所定位置に接着固定した後、各LEDチップ3の2つの電極をワイヤボンディングで対応する配線パターンに接続してもよいし、一方の電極を上述のように対応する配線パターンに接合すると共に、他方の電極をワイヤボンディングで対応する配線パターンに接続するようにしてもよい。
【0044】
(波長変換部)
上述したように、波長変換部5は、第1LED群D1及び第2LED群D2に対応して2つの第1波長変換領域P1及び第2波長変換領域P2に区分されている。また、図3及び図4に示すように、波長変換部5を構成する2つの波長変換領域のうち、第1波長変換領域P1は、更に2つの層から構成されている。具体的には、第1波長変換領域P1は、透明基板4上に形成された光拡散層11、及び光拡散層11上に形成された有機蛍光体層12から構成されている。また、光拡散層11は、LEDチップ3から放射される光を拡散する光拡散粒子11a及び当該光拡散粒子を分散して保持する充填材11bから構成され、LEDチップ3から放射される光を拡散して当該光を波長変換領域P1の全面に広げる効果を有している。更に、有機蛍光体層12は、LEDチップ3が発した青色光を波長変換して赤色光を放射する赤色有機蛍光体12a、及び当該赤色有機蛍光体を分散して保持する充填材12bから構成されている。なお、波長変換領域12の膜厚は、10μm以上が好ましい。当該理由については、後述する評価結果において説明する。
【0045】
一方、図5に示すように、第2波長変換領域P2は1つの層から構成されている。具体的には、第2波長変換領域P2は、LEDチップ3が発した青色光を波長変換して緑色光を放射する緑色無機蛍光体13a、及び当該無機蛍光体を分散して保持する充填材13bから構成されている。なお、第2波長変換領域P2は、緑色無機蛍光体13aに代えて、LEDチップ3が発した青色光を波長変換して黄色光を放射する黄色無機蛍光体を含んでもよく、緑色無機蛍光体13aに加えて当該黄色無機蛍光体を更に含んでいてもよい。
【0046】
なお、有機蛍光体は赤色有機蛍光体に限られることはなく、LEDチップからの光を他の色の光に変換する他の色の有機蛍光体であってもよい。同様に、無機蛍光体は、緑色無機蛍光体及び黄色無機蛍光体に限られることはなく、LEDチップからの光を他の色の光に変換する他の色の無機蛍光体であってもよい。
【0047】
以下において、光拡散層11を構成する光拡散粒子11a及び充填材11b、有機蛍光体層12を構成する赤色有機蛍光体12a及び充填材12b、波長変換領域P2を形成する無機蛍光体である緑色無機蛍光体13a及び充填材13b、並びに上述した黄色蛍光体の具体例について説明する。
【0048】
(光拡散粒子)
本実施形態において、光拡散粒子11aとしては、無機化合物からなる無機光拡散材、又は有機化合物からなる有機光拡散材等の光拡散材を用いることができる。
【0049】
無機光拡散材としては、酸化ケイ素(シリカ)、ホワイトカーボン、タルク、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ホウ素、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸アルミ化ナトリウム、珪酸亜鉛、ガラス、マイカ等の材料が挙げられる。
【0050】
有機光拡散材としては、スチレン系(共)重合体、アクリル系(共)重合体、シロキサン系(共)重合体、ポリアミド系(共)重合体等の材料が挙げられる。ここで、「(共)重合体」とは「重合体」及び「共重合体」の双方を意味する。
【0051】
上述した材料のうち、少量で光拡散効果が大きい材料である、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、及び酸化ホウ素が好ましい。
【0052】
光拡散粒子11aの平均粒径は、通常10μm以下で、好ましくは0.1〜10μmでありm、より好ましくは0.1〜5μm、更に好ましくは1〜5μmである。光拡散粒子11aの粒径が大きすぎると励起光の漏れ光が多くなる。また、光拡散粒子11aの粒径が小さすぎると励起光を遮蔽する効果が低下する。ここで、光拡散粒子11aの平均粒径とは、体積基準による50%平均粒子径であり、レーザー又は回折散乱法によって測定される体積基準粒度分布のメジアン径(D50)の値である。
【0053】
上述した光拡散粒子11aとして用いられる無機光拡散材及び有機拡散材は、1種類を単独で用いてもよく、材質や平均粒径の異なるものを2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0054】
第1波長変換領域P1における光拡散材(光拡散粒子11a)の含有率は、1.0重量%以上70重量%以上であることが好ましい。当該理由については、後述する評価結果において説明する。
【0055】
(赤色有機蛍光体)
赤色蛍光体12aとしては、β−ジケトネート、β−ジケトン、芳香族カルボン酸、又は、ブレンステッド酸等のアニオンを配位子とする希土類元素イオン錯体からなる赤色有機蛍光体、ペリレン系顔料(例えば、ジベンゾ{[f,f']−4,4',7,7'−テトラフェニル}ジインデノ[1,2,3−cd:1',2',3'−lm]ペリレン)、ポルフィリン系顔料、アントラキノン系顔料、レーキ系顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、アントラセン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、フタロシアニン系顔料、トリフェニルメタン系塩基性染料、インダンスロン系顔料、インドフェノール系顔料、シアニン系顔料、ジオキサジン系顔料等が挙げられる。これらの中で特にペリレン系顔料、及びポルフィリン系顔料が好ましい。なお、赤色有機蛍光体はこれらに限定されることはない。また、上記の材料の内から1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0056】
第1波長変換領域P1における赤色蛍光体(有機蛍光体)の濃度は、10重量%以下であることが好ましくは、0.1重量%以上5.0重量%以下がより好ましい。当該理由については、後述する評価結果において説明する。
【0057】
(緑色無機蛍光体)
緑色蛍光体13aの発光ピーク波長は、通常は500nm以上、好ましくは510nm以上、より好ましくは515nm以上で、通常は550nm未満、好ましくは542nm以下、より好ましくは535nm以下の波長範囲にあるものが好適である。中でも、緑色蛍光体として例えば、Y3(Al,Ga)512:Ce、CaSc24:Ce、Ca3(Sc,Mg)2Si312:Ce、(Sr,Ba)2SiO4:Eu、(Si,Al)6(O,N)8:Eu(β−サイアロン)、(Ba,Sr)3Si612:N2:Eu、SrGa24:Eu、BaMgAl1017:Eu,Mnが好ましい。
【0058】
(黄色無機蛍光体)
黄色蛍光体の発光ピーク波長は、通常は530nm以上、好ましくは540nm以上、より好ましくは550nm以上で、通常は620nm以下、好ましくは600nm以下、より好ましくは580nm以下の波長範囲にあるものが好適である。中でも、黄色蛍光体として例えば、Y3Al512:Ce、(Y,Gd)3Al512:Ce、(Sr,Ca,Ba,Mg)2SiO4:Eu、(Ca,Sr)Si222:Eu、α−サイアロン、La3Si611:Ce(但し、その一部がCaやOで置換されていてもよい)が好ましい。
【0059】
(充填材)
光拡散粒子11aを分散して保持する充填材11bには、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂などが用いられるが、LEDチップ3から発せられる青色光に対して十分な透明性と耐久性とを有した材料を用いるのが好ましい。具体的には、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレンやスチレン−アクリロニトリル共重合体などのスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ブチラール樹脂、ポリビニルアルコール、エチルセルロースやセルロースアセテートやセルロースアセテートブチレートなどのセルロース系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂などがあげられる。また、無機系材料、例えば、金属アルコキシド、セラミック前駆体ポリマーもしくは金属アルコキシドを含有する溶液をゾル−ゲル法により加水分解重合してなる溶液またはこれらの組み合わせを固化した無機系材料、例えばシロキサン結合を有する無機系材料やガラスを用いることができる。
【0060】
赤色蛍光体12aを分散して保持する充填材12bとしては、熱可塑性高分子樹脂、熱硬化性高分子樹脂、反応性高分子樹脂、及び紫外線硬化型樹脂の少なくとも1つを用いることができる。また、これらの樹脂の中から2種類以上の樹脂を選択して併用してもよい。
【0061】
熱可塑性高分子樹脂としては、例えば、PVC、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ビニルアセタール樹脂、ビニルカルバゾール樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、スチロール樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、アセタール樹脂、塩化エーテル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂等の単体又は共重合体を用いることができる。
【0062】
熱硬化性高分子樹脂、及び反応性高分子樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、反応性ポリウレタン樹脂などの単体又は共重合体を用いることができる。
【0063】
紫外線硬化型樹脂としては、例えば、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ウレタンアクリレート等を用いることができる。
【0064】
緑色無機蛍光体13a及び黄色無機蛍光体等の無機蛍光体を分散して保持する充填材13bには、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂などが用いられるが、LEDチップ3から発せられる青色光に対して十分な透明性と耐久性とを有した材料を用いるのが好ましい。具体的には、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレンやスチレン−アクリロニトリル共重合体などのスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ブチラール樹脂、ポリビニルアルコール、エチルセルロースやセルロースアセテートやセルロースアセテートブチレートなどのセルロース系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂などがあげられる。また、無機系材料、例えば、金属アルコキシド、セラミック前駆体ポリマーもしくは金属アルコキシドを含有する溶液をゾル−ゲル法により加水分解重合してなる溶液またはこれらの組み合わせを固化した無機系材料、例えばシロキサン結合を有する無機系材料やガラスを用いることができる。
【0065】
(第1波長変換領域における平均透過率)
実施形態に係る第1波長変換領域P1において、LEDチップ3aから放射された一次光を透過する確率である平均透過率は、20%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、更に好ましくは2%以下、特に好ましくは1%以下0.01%以上である。当該平均透過率が当該20%以上の場合には、第1波長変換領域P1における波長変換効率(すなわち、赤色光の放射率)が低くなり、半導体発光装置1から良好な合成光を放射することができなくなる。
【0066】
ここで透過率とは、第1波長変換領域P1を設けていない場合において、所定領域を通過する光量に対し、当該所定領域に第1波長変換領域P1を設けた場合において、第1波長変換領域P1を透過した光量の割合のことである。すなわち、波長λにおける透過率f(λ)=(波長λの透過光強度)/(波長λの入射光強度)として算出される。
【0067】
本実施形態における第1波長変換領域P1の平均透過率は、例えば、顕微分光光度計(大塚電子株式会社 MCPD2000)を用いて測定結果と、以下の数式(1)を用いて算出することができる。
【0068】
【数1】

【0069】
上述したような波長変換部5の構成から、第1LED群D1を構成するLEDチップ3aから放射される青色光は、光拡散層11にて拡散されつつ有機蛍光体層12に到達する。そして、有機蛍光体層12は、到達した青色光の一部の波長を変換して赤色光を放射する。また、有機蛍光体層12で波長変換されなかった青色光は、有機蛍光体層12からそのまま放射される(すなわち、有機蛍光体層12を透過することになる)。一方、第2LED群D2を構成するLEDチップ3bから放射される青色光は、第2波長変換領域P2に到達する。そして、第2波長変換領域P2においては、到達した青色光の一部の波長を変換して緑色光を放射する。また、第2波長変換領域P2で波長変換されなかった青色光は、第2波長変換領域P2からそのまま放射される(すなわち、第2波長変換領域P2を透過することになる)。なお、第2波長変換領域P2が黄色無機蛍光体を含む場合には、第2波長変換領域P2から黄色光も放射されることになる。
【0070】
このように、波長変換部5からは、青色光、赤色光、及び緑色光又は黄色光が放射されることになり、本実施形態の半導体発光装置1を目視する観測者にとっては、半導体発光装置1から青色光、赤色光、及び緑色光又は黄色光の合成光が放射されていることになる。また、無機蛍光体として緑色無機蛍光体及び黄色無機蛍光体を用いる場合には、波長変換部5からは、青色光、赤色光、緑色光、及び黄色光が放射されることになり、本実施形態の半導体発光装置1を目視する観測者にとっては、半導体発光装置1から青色光、赤色光、緑色光、及び黄色光の合成光が放射されていることになる。例えば、青色光、赤色光及び緑色光をバランス良く放射することにより、当該合成光は白色光となる。
【0071】
(半導体発光装置を用いた照明装置)
図6は、上述した半導体発光装置1を用いた照明装置20の電気回路構成の概略を示す電気回路図である。図6に示すように、半導体発光装置1には、上述した第1LED群D1のLEDチップ3a、第2LED群D2のLEDチップ3bに加え、電流制限用の抵抗R1及び抵抗R2、並びにLED群毎に各LEDチップ3のための駆動電流を供給するためのトランジスタQ1及びトランジスタQ2が設けられている。なお、抵抗R1、R2は、それぞれ対応するLEDチップ3に流れる電流を適正な大きさ(例えば、LEDチップ3の1個あたり60mA)に制限するために設けられている。
【0072】
具体的には、第1LED群D1を構成する10個のLEDチップ3aが極性を同じくして互いに並列に接続されており、各LEDチップ3aのアノードが抵抗R1を介して電源21の正極に接続されている。また、各LEDチップ3aのカソードはトランジスタQ1のコレクタに接続され、トランジスタQ1のエミッタが電源21の負極に接続されている。第2LED群D2を構成する10個のLEDチップ3bも極性を同じくして互いに並列に接続されており、LEDチップ3aと同様に、アノードが抵抗R2を介して電源21の正極に接続されると共に、カソードがトランジスタQ2を介して電源21の負極に接続されている。
【0073】
このような電気回路構成において、トランジスタQ1がオン状態となることにより、第1LED群D1の各LEDチップ3aに電源21から供給される順方向の電流が流れ、LEDチップ3aがそれぞれ発光する。従って、トランジスタQ1をオン状態とすることにより、第1LED群D1及びこれに対応する第1波長変換領域P1からなる第1発光ユニットU1から、青色光及び赤色光が放射される。
【0074】
同様に、トランジスタQ2がオン状態となることにより、第2LED群D2の各LEDチップ3bに電源21から供給される順方向の電流が流れ、LEDチップ3bがそれぞれ発光する。従って、トランジスタQ2をオン状態とすることにより、第2LED群D2及びこれに対応する第2波長変換領域P2からなる第2発光ユニットU2から、青色光及び緑色光が放射される。
【0075】
上述したような半導体発光装置1の構成より、第1LED群D1に供給する電力量よりも第2LED群D2に供給する電力量が大きい場合には、第2発光ユニットU2から放射される光の量が多くなり、半導体発光装置1から放射される合成光は第2発光ユニットU2から放射される放射光の影響が大きくなる。従って、第2LED群D2に供給する電力量が第1LED群D1に供給する電力量よりも大きくなるにつれて、半導体発光装置1から放射される合成光は、白色からシアン(第1波長変換群P1のみからの一次光の色)に変化していく。一方、第1LED群D1に供給する電力量よりも第2LED群D2に供給する電力量が小さい場合には、第1発光ユニットU1から放射される光の量が多くなり、半導体発光装置1から放射される合成光は第1発光ユニットU1から放射される放射光の影響が大きくなる。従って、第1LED群D1に供給する電力量が第2LED群D2に供給する電力量よりも大きくなるにつれて、半導体発光装置1から放射される合成光は、白色からマゼンダ(第2波長変換群P2のみからの一次光の色)に変化していく。すなわち、当該制御によって、合成光の色温度を変化させることができる。
【0076】
以上のように、第1LED群D1及び第2LED群D2に供給する電力量を変化させることにより、半導体発光装置1から放射される合成光を様々な色の光に調整することが可能になる。すなわち、当該制御によって、合成光の色温度を変化させることができる。
本実施形態においては、電力量を具体的に変化させる方法として、各発光ユニットに対応するトランジスタを、所定の周期で断続的にオンオフ駆動させ、このときの電流供給パルスのデューティ比を調整することにより、その発光ユニットのLED群に供給される電力を調整する方法が用いられている。
【0077】
このようなトランジスタQ1、Q2のオン・オフ状態を制御するため、本実施形態の照明装置20には発光制御部22が設けられている。トランジスタQ1、Q2は、いずれもそれぞれのベース信号に応じてオン・オフ状態を切り換え可能であり、発光制御部22からそれぞれのベースに対して個別にベース信号が送出されるようになっている。
【0078】
このように、トランジスタQ1、Q2のオン・オフ状態を制御することにより、半導体発光装置1の合成光の色温度を変更せることができるので、合成光の色温度の調整を外部から行うため、本実施形態の照明装置20には操作部23が設けられている。操作部23は、発光制御部22に接続され、合成光の色温度を設定するための外部からの操作に応じ、設定された色温度に対応した電気信号を発光制御部22に伝達して、設定色温度に対応する指示を行うようになっている。
【0079】
(第1変形例)
上述した実施形態においては、波長変換部5を1つの第1波長変換領域P1及び1つの第2波長変換領域P2に区分し、第1波長変換領域P1及び第2波長変換領域P2を並置していた。しかしながら、このような波長変換部5のパターンに代え、図7に示すようなパターンに代えてもよく、このようなパターンに形成された波長変換部5'を第1変形例として、以下に説明する。なお、図7は、本実施形態に係る半導体発光装置1の平面図であって、波長変換部の異なるパターン図である。
【0080】
図7に示すように、本変形例の波長変換部5'においては、2つの第1波長変換領域P1'及び2つの第2波長変換領域P2'に分割されるとともに、第1波長変換領域P1'及び第2波長変換領域P2'が交互に配置されている。すなわち、波長変換部5'は、ストライプ状に形成された第1波長変換領域P1'及び第2波長変換領域P2'が交互に並置された構造を有している。なお、第1波長変換領域P1'の構造は上述した第1実施形態の第1波長変換領域P1と同一であり、第2波長変換領域P2'の構造は上述した第2波長変換領域P2と同一であるため、その層構造及び材料等の説明は省略する。
【0081】
このような場合には、複数のLEDチップ3も、第1波長変換領域P1'に対応する第1ELD群D1’、及び第2波長変換領域P2'に対応する第2ELD群D2’に区分され、第1ELD群D1’及び第2ELD群D2’が交互に配置されることになる。
【0082】
このように、波長変換部5'のパターンを形成することにより、各波長変換領域が他の波長変換領域と隣り合うため、波長変換部5’から放射される一次光を良好に合成することが可能になる。
【0083】
(第2変形例)
上述した実施形態においては、波長変換部5を1つの第1波長変換領域P1及び1つの第2波長変換領域P2に区分し、第1波長変換領域P1及び第2波長変換領域P2を並置していた。しかしながら、このような波長変換部5のパターンに代え、図8に示すようなパターンに代えてもよく、このようなパターンに形成された波長変換部5”を第2変形例として、以下に説明する。なお、図8は、本実施形態に係る半導体発光装置1の平面図であって、波長変換部の異なるパターン図である。
【0084】
図8に示すように、本変形例の波長変換部5”においては、波長変換部5”を1つずつのLEDチップ3に対応する複数のセル領域に分割し、第1波長変換領域P1”及び第2波長変換領域P2”が格子状に配置されている。なお、第1波長変換領域P1”の構造は上述した第1実施形態の第1波長変換領域P1と同一であり、第2波長変換領域P2”の構造は上述した第2波長変換領域P2と同一であるため、その層構造及び材料等の説明は省略する。
【0085】
このような場合には、複数のLEDチップ3も、各第1波長変換領域P1”に対応するようにLEDチップ3a、及び各第1波長変換領域P1”に対応するようにLEDチップ3bが格子状に配置されることになる。
【0086】
このように、波長変換部5”のパターンを形成することにより、各波長変換領域が複数の他の波長変換領域と隣り合うため、波長変換部5”から放射される一次光をより良好に合成することが可能になる。
【0087】
(第3変形例)
上述した実施形態においては、透明基板4及び波長変換部5が配線基板2に対して平行に配置されていた。しかしながら、このような透明基板4及び波長変換部5の形状に代え、図9に示すような形状にしてもよく、このように形成された透明基板及び波長変換部を備える発光装置31を第3変形例として、以下に説明する。なお、図9は、本変形例に係る半導体発光装置31を図3と同様の断面で示す断面図である。また、第1実施形態と異なる部分は、透明基板及び波長変換部のみであり、第1実施形態と同一構成については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0088】
図9に示すように、透明基板34は中央部分において折れ曲がった形状を有している。例えば、当該中央部分における折れ曲がりの角度は鈍角である。また、透明基板34は、両端においてスペーサ6を介して配線基板2に接合さている。従って、透明基板34は、配線基板2に対して平行ではなく、配線基板2に対して傾斜している。具体的には、配線基板2の中央部に向かうにつれて、配線基板2と透明基板34との距離が大きくなるように、透明基板34は、配線基板2に対して傾斜している。すなわち、透明基板34は、そのXY断面が略V状となるように、折れ曲がった形状を有している。
【0089】
波長変換部35は、透明基板34上に形成されている。具体的には、透明基板34の中央部から−X側に第1波長変換領域P31が配置され、透明基板34の中央部から+X側に第2波長変換領域P32が配置されている。従って、第1波長変換領域P31及び第2波長変換領域P32も配線基板2に対して平行ではなく、傾斜するように配置されている。すなわち、波長変換部35も、そのXY断面が略V状となるように、折れ曲がった形状を有している。なお、第1波長変換領域P31の構造は上述した第1実施形態の第1波長変換領域P1と同一であり、第2波長変換領域P32の構造は上述した第2波長変換領域P2と同一であるため、その層構造及び材料等の説明は省略する。
【0090】
(第4変形例)
上述した実施形態においては、透明基板4及び波長変換部5が配線基板2に対して平行に配置されていた。しかしながら、このような透明基板4及び波長変換部5の形状に代え、図10に示すような形状にしてもよく、このように形成された透明基板及び波長変換部を備える発光装置41を第4変形例として、以下に説明する。なお、図10は、本変形例に係る半導体発光装置41を図3と同様の断面で示す断面図である。また、第1実施形態と異なる部分は、透明基板及び波長変換部のみであり、第1実施形態と同一構成については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0091】
図10に示すように、透明基板44は湾曲しており、両端においてスペーサ6を介して配線基板2に接合さている。具体的には、透明基板44は中央部分が配線基板2から最も離間するように湾曲している。従って、透明基板44と配線基板2と距離は、中央部分に向うつれて大きくなっている。すなわち、透明基板44は、略樋状に形成され、そのXY断面が略U状となるように湾曲した形状を有している。
【0092】
また、図8に示すように、透明基板44上には、全体的に湾曲した波長変換部45が形成されている。具体的には、透明基板44の中央部から−X側に第1波長変換領域P41が配置され、透明基板44の中央部から+X側に第2波長変換領域P42が配置されている。従って、第1波長変換領域P41及び第2波長変換領域P42は、配線基板2に対して平行ではなく、概ね傾斜して配置されている。すなわち、波長変換部35も、そのXY断面が略U状となるように、湾曲した形状を有している。なお、第1波長変換領域P41の構造は上述した第1実施形態の第1波長変換領域P1と同一であり、第2波長変換領域P42の構造は上述した第2波長変換領域P2と同一であるため、その層構造及び材料等の説明は省略する。
【0093】
上述したような第3変形例及び第4変形例のように、透明基板及び波長変換部の形状をすることができれば、半導体発光装置が用いられる環境に応じて、半導体発光装置の放射面側(すなわち、波長変換部が設けられている面側)の形状を最適化することができる。また、照明器具に用いられる場合には、当該照明器具のデザイン性も向上させることが可能になる。
【0094】
(本実施形態による効果)
【0095】
本実施形態の半導体発光装置1においては、波長変換部5が赤色有機蛍光体12a及び光拡散粒子11aを含む第1波長変換領域P1と、緑色無機蛍光体13aを含む第2波長変換領域P2から構成されているため、LEDチップ3から放射される光は、各波長変換領域において、各蛍光体に応じた光に波長変換される。
【0096】
また、本実施形態の半導体発光装置1においては、第1波長変換領域P1の平均透過率が20%以下であるため、LEDチップからの光を有機蛍光体に応じた他の光に良好に波長変換することができる。
【0097】
従って、このような半導体発光装置1の構成により、所望の合成光を供給することができるとともに、低コスト化を容易に図ることが可能になる。
【0098】
また、上述した半導体発光装置1を用いて照明装置20を形成することにより、様々な色温度の光の供給を可能にするとともに、低コストでその製造を行うことが可能になる。
【0099】
なお、上述した実施形態においては、波長変換領域とLED群とを対応させることで発光ユニットを形成していたが、このような形態に限定されることはない。例えば、半導体発光装置から常に同じ色温度の合成光(例えば、白色光)を放射させる場合には、LED群を構成することはなく、LEDチップの配置を波長変換領域のパターン形状に無関係にし、所望の白色光が常に放射されるようにしてもよい。
【0100】
<第2実施形態>
第1実施形態においては、波長変換部5を構成する第1波長変換領域P1が、光拡散層11及び有機蛍光体層12からなる2層構造を有していたが、第1波長変換領域が1層から構成されてもよい。このような波長変換部材を有する半導体発光装置を第2実施形態として、図11及び図12を参照しつつ、詳細に説明する。なお、第1波長変換領域以外の構成については、第1の実施形態と同一であるため、第1波長変換領域以外の部材及び構造については、第1の実施形態と同一符号を付し、その説明は省略する。
【0101】
(半導体発光装置の構成)
図11は、本実施形態に係る半導体発光装置51の第1波長変換領域P51側における要部を図4と同様にして示す拡大断面図である。図12は、本実施形態に係る半導体発光装置51の第1波長変換領域P51の概略構成図である。図11に示すように、第1波長変換領域P51は、透明基板4上に形成され、1層構造を有している。なお、図示されていないが、第2波長変換領域は、第1の実施形態と同一の構造であり、1層構造を有している。
【0102】
図12に示すように、第1波長変換領域P51は、LEDチップ3から放射される光を拡散する光拡散粒子52、LEDチップ3aが発した青色光を波長変換して赤色光を放射する赤色有機蛍光体53、並びに光拡散粒子52及び赤色有機蛍光体53を分散して保持する充填材54から構成されている。従って、第1波長変換領域P51内には、LEDチップ3から放射されて青色光を拡散する光拡散粒子52、及び青色光を赤色光に変換する赤色有機蛍光体53が存在している。すなわち、本実施形態における第1波長変換領域51は、光拡散粒子を含む光拡散層及び赤色有機蛍光体を含む有機蛍光体層の2層構造を有さず、1つの層内に光拡散粒子52及び赤色有機蛍光体53が混在する層構造を有している。
【0103】
なお、光拡散粒子52は上述した第1実施形態の光拡散粒子11aと同一であり、赤色有機蛍光体53は上述した第1実施形態の赤色有機蛍光体12aと同一であり、充填材54は上述した第1実施形態の充填材12bと同一であるため、その層構造及び材料等の説明は省略する。
【0104】
本実施形態に係る第1波長変換領域P51を半導体発光装置51に用いる場合にも、第1実施形態に係る半導体発光装置1と同様の効果を得ることできる。すなわち、半導体発光装置51においても、所望の合成光を供給することができるとともに、低コスト化を容易に図ることが可能になる。
【0105】
また、光拡散粒子52及び赤色蛍光体粒子53が混在し、近接して存在しているため、光拡散粒子52が拡散した青色光を、赤色蛍光体粒子53によって赤色光に良好に波長変換することができる。すなわち、第1波長変換領域51における波長変換効率を向上させることができ、第1波長変換領域51から放射される赤色光の光量を増加させることができる。
【0106】
<第3実施形態>
上述した第1実施例では、配線基板2に実装した複数のLEDチップ3と、透光基板4に設けた波長変換部5から半導体発光装置1を構成した。しかしながら、本発明の半導体発光層は、このような形態に限定されるものではなく、本発明の要旨から逸脱しない限りにおいて、様々に変更や置き換えが可能である。そこで、第1実施形態の構造とは異なる構造を有する半導体発光装置の一例を、本発明の第3実施形態として以下に説明する。
【0107】
(半導体発光装置の構成)
図13は、本実施形態に係る半導体発光装置101の基本構成を示す斜視図であり、図14は半導体発光装置101の平面図である。半導体発光装置101は、電気絶縁性に優れて良好な放熱性を有したアルミナ系セラミックからなる配線基板102のチップ実装面102aに4個ずつ2列に実装されたLEDチップ103を備えている。更に、配線基板102のチップ実装面102aには、これらLEDチップ103を取り囲むように、環状且つ円錐台形状のリフレクタ(壁部材)104が設けられている。
【0108】
リフレクタ104の内側は、仕切り部材105によって第1領域106と第2領域107とに分割されている。そして、第1領域106には、2列に配列されたLEDチップ103のうちの一方の列のLEDチップ103が配置され、第2領域107には、他方の列のLEDチップ103が配置されている。なお、リフレクタ104及び仕切り部材105は、樹脂、金属、セラミックなどで形成することができ、接着剤などを用いて配線基板102に固定される。また、リフレクタ104及び仕切り部材105に導電性を有する材料を用いる場合は、後述する配線パターンに対して電気的な絶縁性を持たせるための処理が必要となる。なお、以下においては説明上の便宜のために、第1領域106に配列されたLEDチップ103をLEDチップ103aとも称し、第2領域107に配列されたLEDチップ103をLEDチップ103bとも称する。
【0109】
なお、本実施形態におけるLEDチップ103の数は一例であって、必要に応じて増減可能であり、第1領域106と第2領域107とに1個ずつとすることも可能であり、またそれぞれの領域で数を異ならせることも可能である。また、配線基板102の材質についても、アルミナ系セラミックに限定されるものではなく、様々な材質を適用可能であり、例えば、セラミック、樹脂、ガラスエポキシ、樹脂中にフィラーを含有した複合樹脂などから選択された材料を用いても良い。更に、配線基板102のチップ実装面102aにおける光の反射性を良くして半導体発光装置101の発光効率を向上させる上では、アルミナ粉末、シリカ粉末、酸化マグネシウム、酸化チタンなどの白色顔料を含むシリコーン樹脂を用いるのが好ましい。一方、銅製基板やアルミ製基板などのような金属製基板を用いて放熱性を向上させることも可能である。但し、この場合には、電気的絶縁を間に介して配線基板に配線パターンを形成する必要がある。
【0110】
また、上述したリフレクタ104及び仕切り部材105の形状も一例を示すものであって、必要に応じて様々に変更可能である。例えば、予め成形したリフレクタ104及び仕切り部材105に代えて、ディスペンサなどを用い、配線基板102のチップ実装面102aにリフレクタ104に相当する環状壁部(壁部材)を形成し、その後に仕切り部材105に相当する仕切り壁(仕切り部材)を形成するようにしても良い。この場合、環状壁部及び仕切り壁部に用いる材料には、例えばペースト状の熱硬化性樹脂材料またはUV硬化性樹脂材料などがあり、無機フィラーを含有させたシリコーン樹脂が好適である。
【0111】
図13及び図14に示すように、リフレクタ104内の第1領域106には、4個のLEDチップ103が仕切り部材105の延設方向と平行に一列に配置され、リフレクタ104内の第2領域107にも、4個のLEDチップ103が仕切り部材105の延設方向と平行に一列に配置されている。なお、図14では、便宜上リフレクタ104及び仕切り部材105を破線で示している。
【0112】
配線基板102のチップ実装面102aには、LEDチップ103のそれぞれに駆動電流を供給するための配線パターン108、109、110及び111が、図14に示すように形成されている。配線パターン108は、リフレクタ104の外側にある一方の端部に外部接続用の接続端子108aが形成されており、第1領域106内にある他方の端部側は、図14に示すように仕切り部材105と平行に延設されている。また、配線パターン109は、リフレクタ104の外側にある一方の端部に外部接続用の接続端子109aが形成されており、第1領域106内にある他方の端部側は、図14に示すように仕切り部材105と平行に延設されている。
【0113】
第1領域106内にある4個のLEDチップ103は、このようにして形成された配線パターン108と配線パターン109との間に、互いに極性方向を同じにして並列に接続されている。より具体的には、LEDチップ103は、駆動電流供給用の2つの電極(図示省略)を配線基板102側の面に有している。そして、これらLEDチップ103は、その一方の電極(p電極)が配線パターン108に接続されると共に、その他方の電極(n電極)が配線パターン109に接続されている。
【0114】
一方、配線パターン110は、リフレクタ104の外側にある一方の端部に外部接続用の接続端子110aが形成されており、第2領域107内にある他方の端部側は、図14に示すように仕切り部材105と平行に延設されている。また、配線パターン111は、リフレクタ104の外側にある一方の端部に外部接続用の接続端子111aが形成されており、第2領域107内にある他方の端部側は、図14に示すように仕切り部材105と平行に延設されている。
【0115】
第2領域107内にある4個のLEDチップ103は、このようにして形成された配線パターン110と配線パターン111との間に、互いに極性方向を同じにして並列に接続されている。より具体的には、これらLEDチップ103は、その一方の電極(p電極)が配線パターン110に接続されると共に、その他方の電極(n電極)が配線パターン111に接続されている。
【0116】
このようなLEDチップ103の実装、並びに各配線パターンへの両電極の接続は、フリップチップ実装を採用し、図示しない金属バンプを介し、共晶ハンダを介して行っている。なお、LEDチップ103の配線基板102への実装方法は、これに限定されるものではなく、LEDチップ103の種類や構造などに応じて適切な方法を選択可能である。例えば、LEDチップ103を上述したような配線基板102の所定位置に接着固定した後、LEDチップ103の電極をワイヤボンディングで対応する配線パターンに接続するダブルワイヤボンディングを採用しても良いし、一方の電極を上述のように配線パターンに接合すると共に、他方の電極をワイヤボンディングで配線パターンに接続するシングルワイヤボンディングを採用しても良い。
【0117】
リフレクタ104内の第1領域106及び第2領域107には、それぞれ異なる波長変換特性を有した波長変換部材が、LEDチップ103を覆うようにして収容される。具体的な波長変換部材について、図15を参照しつつ以下に説明する。
【0118】
図15は、図14中のXV−XV線に沿う半導体発光装置101の断面図である。図15に示すように、半導体発光装置101において、リフレクタ104内の第1領域106には、第1波長変換部材121が4個のLEDチップ103aをそれぞれ覆うようにして収容され、リフレクタ104内の第2領域107には、第2波長変換部材122が4個のLEDチップ103bをそれぞれ覆うようにして収容されている。
【0119】
第1波長変換部材121は、LEDチップ103aから放射される光を拡散する光拡散粒子131、LEDチップ103aが発した青色光を波長変換して赤色光を放射する赤色有機蛍光体132、並びに拡散粒子113及び赤色有機蛍光体132を分散させて保持する第1透光性材料133から構成されている。一方、第2波長変換部材122は、LEDチップ103bが発した青色光を波長変換して緑色光を放射する緑色無機蛍光体134、及び緑無機蛍光体134を分散させて保持する第2透光性材料135から構成されている。なお、第2波長変換部材122は、緑色無機蛍光体134に代えて、LEDチップ103bが発した青色光を波長変換して黄色光を放射する黄色無機蛍光体を含んでもよく、緑色無機蛍光体134に加えて当該黄色無機蛍光体を更に含んでいてもよい。
【0120】
従って、本実施形態においては、第1領域106に収容された波長変換部材121と、第2領域107に収容された波長変換部材122とから波長変換部123が構成されている。すなわち、当該波長変換部123は、第1領域106に形成された第1波長変換領域と、第2領域107に形成された第1波長変換領域とに領域分割されている。
【0121】
(LEDチップ)
本実施形態においてLEDチップ3には、460nmのピーク波長を有した青色光を発するLEDチップを用いる。具体的には、このようなLEDチップとして、例えばInGaN半導体が発光層に用いられるGaN系LEDチップがある。なお、LEDチップ3の種類や発光波長特性はこれに限定されるものではなく、本発明の要旨から逸脱しない限りにおいて、様々なLEDチップなどの半導体発光素子を用いることができる。本実施形態においてLEDチップ3が発する光のピーク波長は、360nm〜480nmの波長範囲内にあるのが好ましく、440nm〜470nmの波長範囲内にあることがより好ましい。
【0122】
(波長変換部材)
拡散粒子113、赤色有機蛍光体132、緑色無機蛍光体134、及び黄色無機蛍光体は、第1実施形態の拡散粒子11a、赤色有機蛍光体12a、緑色無機蛍光体13a、及び黄色無機蛍光体と同一の材料から構成されている。一方、第1透光性材料133として、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂等の透光性を備える材料を用いることができる。また、第2透光性材料135として、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂等の透光性を備える材料を用いることができる。
【0123】
本実施形態の半導体発光装置101は、第1実施形態の半導体発光装置1と同様に、照明装置へ適用することができる。ここで、本実施形態の半導体発光装置101は、第1実施形態の半導体発光装置1と電気回路構成は同一であり、第1実施形態の半導体発光装置1を本実施形態の半導体発光装置101に置き換えれば、第1実施形態の照明装置20と機能的には同一の照明装置を構成することができる。従って、半導体発光装置101を照明装置の電気回路構成は、第1実施形態の照明装置20の電気回路構成と同一であるため、その説明は省略する。
【0124】
本実施形態に係る第1波長変換部材121を半導体発光装置101に用いる場合にも、第1実施形態に係る半導体発光装置1と同様の効果を得ることできる。すなわち、半導体発光装置101においても、所望の合成光を供給することができるとともに、低コスト化を容易に図ることが可能になる。
【0125】
また、光拡散粒子131及び赤色蛍光体粒子132が混在し、近接して存在しているため、光拡散粒子131が拡散した青色光を、赤色蛍光体粒子132によって赤色光に良好に波長変換することができる。すなわち、第1波長変換部材121における波長変換効率を向上させることができ、第1波長変換部材121から放射される赤色光の光量を増加させることができる。
【0126】
<第1波長変換部材の評価>
先ず、上述した第3実施形態における第1波長変換部材(第1波長変換領域)における赤色有機蛍光体の濃度を変化させ、赤色有機蛍光体の濃度に対する赤色光のピーク波長(nm)及び蛍光強度を測定した。
【0127】
具体的には、バインダー樹脂(帝国インキ社製MRX−HF)1gとBASF社製赤色蛍光色素「Lumogen F Red 305」(0.0085g、0.017g、0.02125g、0.0255g、0.0425g、0.085g)、及びバウコウスキージャパン社製「CR−1」0.1gを同一容器に入れ、あわとり練太郎(シンキー社製)によって混合攪拌したものを、スクリーン印刷機(奥原電気社製ST−310F1G)を用いて厚さ100μmのPET樹脂上に塗布し、それを80℃、30分の加熱によって乾燥させて樹脂を固化させることで6種類の波長変換部材(実施例1乃至6)を作製した。
【0128】
具体的な測定としては、実施例1乃至6に360nmから480nmの光を入射させ、実施例1乃至6から放射される赤色光のピーク波長を、日立蛍光分光光度計「F4500」を用いて測定した。また、実施例1乃至6から放射される赤色光の蛍光強度をJETI社製輝度計「SpecBos1200」を用いて測定した。評価結果を以下の表1に示す。
【0129】
【表1】

【0130】
表1から判るように、良好の赤色光を第1波長変換部材から放射させるためには、赤色蛍光体の濃度を10重量%以下にすることが好ましい。より好ましくは、赤色蛍光体の濃度を0.1重量%以上5.0重量%以下に調整することである。特に好ましくは、赤色蛍光体の濃度を約4重量%に調整することである。
【0131】
次に、上述した第3実施形態における第1波長変換部材(第1波長変換領域)の膜厚及びそれに含まれる光拡散材の量を変化させ、平均透過率(%)、青色発光スペクトルのピーク強度、及び赤色発光スペクトルのピーク強度を測定した。
【0132】
具体的には、バインダー樹脂(帝国インキ社製MRX−HF)1gとBASF社製赤色蛍光色素「Lumogen F Red 305」0.017gを同一容器に入れ、あわとり練太郎(シンキー社製)によって混合攪拌したものを、スクリーン印刷機(奥原電気社製ST−310F1G)を用いて厚さ100μmのPET樹脂上に塗布し、それを80℃、30分の加熱によって乾燥させて樹脂を固化させることで波長変換部材(実施例7乃至10)を作製した。
【0133】
また、バインダー樹脂(帝国インキ社製MRX−HF)1gとBASF社製赤色蛍光色素「Lumogen F Red 305」0.017g、バウコウスキージャパン社製「CR−1」(0.1g:実施例11、0.5g:実施例12乃至16)を同一容器に入れ、あわとり練太郎(シンキー社製)によって混合攪拌したものを、スクリーン印刷機(奥原電気社製ST−310F1G)を用いて厚さ100μmのPET樹脂上に塗布し、それを80℃、30分の加熱によって乾燥させて樹脂を固化させることで波長変換部材(実施例11乃至16)を作製した。なお、波長変換部材の膜厚の調整は、スクリーン印刷機を用いて波長変換部材を重ね塗りすることによって行った。
【0134】
具体的な測定としては、実施例7乃至16に360nmから480nmの光を入射させ、実施例7乃至16から放射される青色発光スペクトルのピーク強度、及び赤色発光スペクトルのピーク強度を、オーシャンオプティクス社製ファイバマルチチャンネル分光器「USB2000」を用いて測定した。評価結果を以下の表1、及び図16に示す。図16は、各実施例から放射される光の波長とピーク強度の関係を示すグラフである。
【0135】
【表2】

【0136】
表2から判るように、光拡散材を含まない波長変換部材(実施例7乃至10)は、波長変換部材の膜厚を変化させても赤色発光スペクトルのピーク強度が大きくなることはなかった。従って、青色光を波長変換して赤色光を良好に放射させるためには、赤色蛍光体を含む波長変換部材内に、光拡散材を混合する必要がある。ここで、上記の結果から、第1波長変換部材における光拡散材の含有率を1.0重量%以上70重量%以下にすることが好ましい。なお、表2における光拡散材の量は、樹脂に対する割合で記載されているため、第1波長変換部材における光拡散材の含有率とは異なっている。
【0137】
また、実施例12乃至15の結果から、波長変換部材の膜厚を増加させると、赤色発光スペクトルのピーク強度が大きくなることが判った。しかしながら、実施例16の結果から、一定の膜厚を超えると、赤色発光スペクトルのピーク強度が増加しないことも判った。このような結果から、第1波長変換部材の膜厚は、10μm以上が好ましい。
【0138】
更に、上述した結果から、波長変換部材の平均透過率を20%以下にすることにより、良好な赤色発光スペクトルのピーク強度を得ることができる。また、平均透過率を小さくすると、青色発光スペクトルのピーク強度が小さくなるため、平均透過率を小さくしすぎるとLEDチップからの青色光が無駄に吸収されるおそれがある。しかしながら、本発明においては、第2波長変換部材(第2波長変換領域)からも青色光を放射することができるため、半導体発光装置として青色光が不足することはない。従って、上述した半導体発光装置を構成する場合には、第1波長変換部材の平均透過は、通常0.01%以上であればよい。
【0139】
<半導体発光装置の評価>
第2実施形態に係る波長変換部を有する半導体発光装置を実施例17として製造し、発光スペクトル及び発光特性を評価した。以下に、具体的な半導体発光装置の製造方法、及び評価結果を説明する。
【0140】
先ず、発光ピーク波長が460nmの青色LEDチップを、3528SMD型PPA(ポリフタル酸アミド)樹脂パッケージの端子に透明ダイボンドペーストで接着した。その後、150℃で2時間加熱しダイボンドペーストを硬化させた後、青色LEDチップとパッケージの電極とを直径25μmの金線でワイヤボンディングした。
【0141】
次に、2液型シリコーン樹脂をEME社製真空脱法装置「V−mini300」にて真空脱泡混合し、ディスペンサを用いてこれを前記青色LEDを設置したSMD型樹脂パッケージの凹部に4μL注液した。その後、100℃の環境下で1時間、更に150℃の環境下で5時間加熱して樹脂を硬化させ半導体発光装置の発光部を得た。
【0142】
次に、バインダー樹脂(帝国インキ社製MRX−HF)1gとBASF社製赤色蛍光色素「Lumogen F Red 305」0.017g、及びバウコウスキージャパン社製光拡散材「CR−1」(酸化アルミニウム)0.5gを同一容器に入れ、あわとり練太郎(シンキー社製)によって混合攪拌したものを、スクリーン印刷機(奥原電気社製ST−310F1G)を用いて厚さ100μmのPET樹脂上に塗布し、それを80℃、30分の加熱によって乾燥させて樹脂を固化させることで膜厚13μmの第1蛍光体塗布膜(第1波長変換領域、第1波長変換部)を得た。なお、当該第1蛍光体塗布膜は、上記実施例1に相当し、その平均透過率は13.2%である。
【0143】
次に、バインダー樹脂(帝国インキ社製MRX−HF)1gとYAG蛍光体(Y3(Al,Ga)512:Ce、CaSc24:Ce、Ca3(Sc,Mg)2Si312:Ce)1gを同一容器に入れ、あわとり練太郎(シンキー社製)によって混合攪拌したものを、スクリーン印刷機(奥原電気社製ST−310F1G)を用いて厚さ100μmのPET樹脂上に塗布し、それを80℃、30分の加熱によって乾燥させて樹脂を固化させる操作を6回繰り返し、膜厚104μmの第2蛍光体塗布膜(第2波長変換領域、第2波長変換部)を得た。
【0144】
次に、第1蛍光体塗布膜と第2蛍光体塗布膜をそれぞれ17mm×28mmに切り取り、水平方向に隣り合わせる様に外枠36mm×28mm(開口部内径の直径2mm)のパーキンエルマー社の蛍光アッセイシートに接着した。接着された2つの蛍光体塗布膜を上記工程を経て得られた発光部の上面に設置し、白色光を放射する半導体発光装置(実施例17)を得た。
【0145】
そして、得られた半導体発光装置に20mAの電流を通電し、ファイバマルチチャンネル分光器USB2000(オーシャンオプティクス社製)を用いて、発光スペクトルを測定した。得られた発光スペクトルを図17に示す。また、得られた半導体発光装置の発光特性の値を表3に示す。
【0146】
【表3】

【0147】
更に、得られた半導体発光装置の発光効率は約30.3lm/Wであり、発光効率が優れていることも判った。
【符号の説明】
【0148】
1,31,41,51,101 半導体発光装置
2,102 配線基板
3,3a,3b,103a,103b LEDチップ(半導体発光素子)
5,35,45,123 波長変換部
11a 光拡散粒子(光拡散材)
12a 赤色有機蛍光体(有機蛍光体)
13a 緑色無機蛍光体(無機蛍光体)
P1 第1波長変換領域(第1波長変換部材)
P2 第2波長変換領域(第1波長変換部材)
111 第1波長変換部材
112 第2波長変換部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板と、
前記配線基板の実装面に配置され、発光ピークの波長が360nm〜480nmである半導体発光素子と、
前記半導体発光素子が発する放射光に対して交差するように延設され、前記放射光のすくなくとも一部を波長変換する波長変換部と、を有し、
前記波長変換部は、有機蛍光体及び光拡散材を含むとともに前記半導体発光素子が発する放射光の平均透過率が20%以下である第1波長変換領域と、無機蛍光体を含む第2波長変換領域とに、前記波長変換部の延設方向において領域分割されていることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項2】
前記第1波長変換領域における前記有機蛍光体の濃度は、10重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項3】
前記第1波長変換領域における前記有機蛍光体の濃度は、0.1重量%以上5.0重量%以下であることを特徴とする請求項2に記載の半導体発光装置。
【請求項4】
前記波長変換部は、透明基板の表面に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の半導体発光装置。
【請求項5】
前記波長変換部は、透光性材料と混合されて形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の半導体発光装置。
【請求項6】
前記第1波長変換領域は、前記有機蛍光体からなる有機蛍光体層と、前記光拡散材かなる光拡散層とから構成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1に記載の半導体発光装置。
【請求項7】
前記第1波長変換領域は、前記光拡散層上に前記有機蛍光体層が積層された積層構造を有し、前記有機蛍光体層よりも前記光拡散層が前記半導体発光素子に対して近接していることを特徴とする請求項6に記載の半導体発光装置。
【請求項8】
前記有機蛍光体は、赤色有機蛍光体からなることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1に記載の半導体発光装置。
【請求項9】
前記赤色有機蛍光体は、ペリレン構造又はポルフィリン構造を有することを特徴とする請求項8に記載の半導体発光装置。
【請求項10】
前記無機蛍光体は、緑色無機蛍光体及び黄色無機蛍光体の少なくともいずれか一方からなることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1に記載の半導体発光装置。
【請求項11】
前記半導体発光素子の発光ピークの波長は、440nm〜470nmであることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1に記載の半導体発光装置。
【請求項12】
前記第1波長変換領域における前記光拡散材の含有率は、1.0重量%以上70重量%以下であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1に記載の半導体発光装置。
【請求項13】
前記光拡散材は、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、及び酸化ホウ素よりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1に記載の半導体発光装置。
【請求項14】
前記第1波長変換領域の膜厚は、10μm以上であることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1に記載の半導体発光装置。
【請求項15】
前記波長変換部によって波長変換されずに前記波長変換部を透過した前記放射光と、前記有機蛍光体によって波長変換された第1変換光と、前記無機蛍光体によって波長変換された第2変換光と、を混合して白色光を生成することを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1に記載の半導体発光装置。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれかに記載の半導体発光装置を備えることを特徴とする照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−98458(P2013−98458A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242072(P2011−242072)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】