説明

半導体素子の装着装置

【課題】半導体素子の装着装置を構成するワーク搬送路への空気の侵入を防ぎ、チャンバ内の酸素濃度を均一に低減し、ワークの酸化を防ぐ。
【解決手段】ワーク搬送路205を構成するカバー202と搬送路形成体201の接合部に小空間203A及び203Bを設け、供給管206A及び206Bから酸化防止ガスを供給する。この小空間203A及び203Bに絞り部207を設け、その開口幅208を制限することで、小空間203A及び203Bの流路面積を保持したまま、酸化防止ガスの漏れ量を抑える。これにより、小空間203A及び203Bの搬送方向の全長に亘って酸化防止ガスを行き渡らせることができ、前記課題を達成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子の装着装置に係り、特に搬送路内にワークを間欠移送して半導体素子を装着する半導体素子の装着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の装着装置は、例えば特許文献1に記載されているように、搬送路内に基板やリードフレーム等のワークを供給し、このワークを順次間欠的に移送しつつ、このワーク上に半田を塗布した後、半導体素子を装着するように構成されている。このための搬送路は凹状の搬送路形成体をカバーで覆うことで構成され、この搬送路に沿ってワーク供給ステーション、半田塗布ステーション、半導体装着ステーション、及び排出ステーション等が配置されている。
【0003】
このような装着装置のチャンバ内の酸素濃度は、ハンダ濡れ性の向上、ワークの酸化防止にとって重要な管理項目である。従来、間欠送りされるワークに対して、接合材の供給部、半導体素子の装着部等の必要箇所において、窒素やこれに水素ガスを加えたものを吹き付けることで酸化防止や還元対策を行なってきた。例えば前記特許文献1では、チャンバ内に酸化防止ガスを供給し、ガスの逃げ空間を設けることで、ガスをよどみなく流れるようにして、酸素濃度の低減を図っている。
【0004】
また特許文献2には、ボンディング装置用の加熱装置であるが、その加熱体とカバーのいずれかにガス溝を設け、このガス溝に酸化防止ガスを供給することで空気の侵入を防止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−332523号公報
【特許文献2】特開平9−82734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、チャンバ内の酸素濃度低減は半導体素子装着装置の性能にとって重要な技術課題となっている。
【0007】
そこで、前記特許文献1では、酸化防止ガスをチャンバ内によどみなく流れるようにすることで、酸素濃度を低減することを可能としている。しかし、カバーと搬送路形成体との接合部をボルトで締結しているため微小な隙間を生じ、その隙間から空気が侵入する可能性がある。
【0008】
また、前記特許文献2では、カバーと加熱体との間にガス溝を設け、酸化防止ガスを供給することで空気の吸込みを抑えるようにしている。しかし、加熱体の構造上、ガス溝の流路面積を充分取れず、また、チャンバは搬送方向に長いために供給した酸化防止ガスがチャンバ内および外部に排出されてしまい、全長に亘ってガス溝に酸化防止ガスを行き渡らせることが困難となる。
【0009】
本発明は、このような従来技術に鑑みてなされたもので、その主な目的とするところは、搬送路への空気の侵入を防ぎ、その搬送方向に亘ってガス流量を確保しつつガス洩れを効果的に抑制することで、搬送路の全長に亘ってワークの酸化を軽減することのできる半導体素子の装着装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明の主な特徴は、搬送路形成体とカバーとで形成される搬送路内にワークを間欠的に移送し、前記搬送路内のワークに半導体素子を装着する半導体素子装着装置において、前記搬送路形成体とカバーとの接合面に絞り部を介して小空間を形成し、この小空間に酸化防止ガスを供給する手段を備えたことにある。
【0011】
ここで上記絞り部とは、接合面に接して形成され上記小空間の幅を絞り込む部位であり、これにより搬送路の搬送方向に亘ってガス流量を確保しつつガス洩れを効果的に抑制するものである。従って、必ずしも搬送路の全長に設ける必要は無いが、それらの具体的構成、更にはその他の特徴等については以下述べる実施の態様で詳述する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、搬送路内のガス流量をその搬送方向に亘って確保しつつ、ガス洩れを効果的に抑制することで、搬送路内に空気が侵入することを防止することができ、搬送路の全長に亘ってワークの酸化を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による半導体素子の装着装置の一実施例上面図である。
【図2】図1における搬送路の断面図(a)および小空間部の斜視図(b)である。
【図3】本発明の他の実施例に係る搬送路の断面図(a)および斜視図(b)である。
【図4】本発明の他の実施例に係る小空間部の斜視図である。
【図5】本発明の更に他の実施例に係る小空間部の斜視図である。
【図6】本発明の更に他の実施例に係る小空間部の斜視図である。
【図7】本発明の更に他の実施例に係る搬送路の断面図である。
【図8】本発明の更に他の実施例に係る小空間部の斜視図(a)および断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、図示する実施例を用いて説明する。
【実施例1】
【0015】
図1及び図2は本発明の第一の実施例であり、図1は半導体素子の装着装置の上面図、特に本発明の特徴に係る搬送路の部分を中心に示した図である。
【0016】
図1において、101はワーク、102は搬送路形成体、103はカバー、104はボルト、105A及び105Bはカバーと搬送路形成体との接合部に設けられた小空間、106は覗き窓、107は覗き窓の固定具、108は搬送路への酸化防止ガスの供給管、109は開閉シャッター、110は小空間への酸化防止ガス供給管である。前述したように、ワーク供給ステーション、半田塗布ステーション、半導体装着ステーション、及び排出ステーション等はこの搬送路に沿って配置されており、夫々のステーションに位置する上記開閉シャッター109を開閉することで所定の作業を行う。
【0017】
図2(a)は図1の装着装置をワークの搬送方向に対して垂直に切断した断面図、図2(b)は小空間部を拡大した斜視図である。図において、201は搬送路形成体、202はカバー、203A及び203Bは小空間、204A及び204Bはワーク搬送路へ供給する酸化防止ガスの供給管、205はワーク搬送路、206A及び206Bは小空間に酸化防止ガスを供給する供給管、207はカバーとの接合面に設けた絞り部、208は絞り部207の開口幅である。
【0018】
尚、小空間203Bへの酸化防止ガス供給管206Bは、搬送路形成体201の下側を通して酸化防止ガス供給管206Aに連結しているが、ここでは省略している。
【0019】
搬送路形成体102とカバー103はボルト104で締結され、上記カバー103には作業の確認、例えば半田の塗布確認等のため、透明なガラス等で構成される覗き窓106が設けられている。また、高温下でのワークの酸化を防止するため、ワークの搬送時には供給管108(204A、204B)を通して酸化防止ガスをワークの搬送路205に供給している。
【0020】
ここで、上記カバーと搬送路形成体の間には微小な隙間が存在するため、供給した酸化防止ガスが隙間から外部に排出されるとともに、外部から空気が侵入する可能性がある。そこで、上記カバーと搬送路形成体の接合部に小空間203A及び203Bを設け、上記小空間に酸化防止ガスを供給管206A及び206Bにより供給する。
【0021】
これにより、小空間203A及び203B内の圧力が上昇し、小空間203A及び203Bから酸化防止ガスがワーク搬送路205及び外部に流出するため、ワーク搬送路205への空気の侵入を防ぐことができる。
【0022】
また、上記小空間203A及び203Bに絞り部207を設けることにより、その開口幅208を制限しているので、小空間203A及び203Bの流路面積を保持したまま、酸化防止ガスの漏れ量を抑えることができる。これにより、小空間203A及び203Bの搬送方向に対してガスを十分行き渡らせることができる。
【0023】
さらに、酸化防止ガスの供給箇所から近い箇所では圧力が高く、遠くなるにつれて圧力が小さくなることから、上記絞りの開口幅208を酸化防止ガスの供給箇所から連続的に広くすることで、酸化防止ガスの漏れ量を均一化し、結果として空気の侵入を均一に防止することができるようにしている。
【0024】
加えて、外部からの空気の侵入を防ぐことができるため、酸化防止ガスのチャンバへの供給量の総量を抑えることができる。さらに、酸化防止ガスの供給量が少なければ、酸化防止ガスが奪う熱量を抑えられるため、加熱に必要な電力を抑えることができ、半導体の装着装置が必要な温度まで加熱されるまでの立ち上がり時間を短縮することができる。
【0025】
なお、小空間203A及び203Bに酸化防止ガスを供給する供給管206A及び206Bは、小空間203A及び203Bに対して1箇所に設けてもよいし、複数に分けて設けてもよい。また、小空間203A及び203Bの最下流側は開いてあってもよいし、塞いであってもよい。
【実施例2】
【0026】
本発明の第二の実施例を図3に示す。図3(a)はワーク搬送方向に対して垂直に切断した断面図および、図3(b)は小空間を拡大した斜視図である。301は搬送路形成体、302はカバー、303A及び303Bは小空間、304A及び304Bはワーク搬送路305へ供給する酸化防止ガスの供給管、305はワークの搬送路、306A及び306Bは小空間303A及び303Bに酸化防止ガスを供給する供給管、308は小空間に設けた絞り部である。
【0027】
本実施例は上述した第一の実施例と基本的に同様の仕組みであるが、第一の実施例では小空間が搬送路形成体201側に設けられているのに対し、本実施例ではカバー302側に設けられている点で異なる。このように構成しても、絞り開口幅309は酸化防止ガスの供給箇所から離れるに従って連続的に広くすることができるので、上述した第一の実施例と同等の効果を奏することができ、場所等の制約で選択的に実施することができる。
【実施例3】
【0028】
本発明の第三の実施例を図4に示す。図4はカバーと搬送路形成体の接合部に設けた小空間を拡大した斜視図であり、401は小空間402に酸化防止ガスを供給する供給管、403は絞り部である。
【0029】
本実施例は上述した第二の実施例と基本的に同様の仕組みであるが、第二の実施例では小空間に設けられた絞り部が連続的に広がっているのに対し、本実施例では段階的に広がっている点に特徴がある。このように構成しても上述した第二の実施例と同等の効果を奏するが、小空間402の搬送方向に沿った位置に応じてガス洩れ量を連続的に微調整する場合は、前記第二の実施例が優れている。
【実施例4】
【0030】
本発明の第四の実施例を図5に示す。図5はカバーと搬送路形成体の接合部に設けた小空間を拡大した斜視図であり、501は搬送路形成体、502は搬送路形成体501側に設けた小空間、503は小空間を塞ぐための絞り部材、504は絞り部材503に設けられた通気孔、505は小空間502に酸化防止ガスを供給する供給管である。
【0031】
本実施例では小空間502を覆う絞り部材503で絞り部を形成した点に特徴が有り、その絞り部材503に酸化防止ガスが通過する複数の通気孔504を設ける。この通気孔504の大きさを供給管505から離れるに従って段階的に広くすることで、搬送路の搬送方向に沿って小空間502からの酸化防止ガスの漏れ量を調整し、均一化することができる。
【実施例5】
【0032】
本発明の第五の実施例を図6に示す。図5と同様に、図6も接合部に設けた小空間を拡大した斜視図であり、601は搬送路形成体、602は小空間、603は小空間602を塞ぐ絞り部材、604は絞り部材603に設けられた通気孔、605は小空間に酸化防止ガスを供給する供給管である。
【0033】
本実施例では、絞り部材603に設けた通気孔604の間隔を搬送方向に沿って段階的に狭くすることで、ガス漏れ量を調整できるようにしている。このように構成しても上述した実施例と同等に、小空間602から搬送路内および外部への酸化防止ガスの漏れ量を均一化することができる。
【実施例6】
【0034】
本発明の第六の実施例を図7に示す。図7はワークの搬送方向に対して垂直に切断した断面図であり、701は搬送路形成体、702はカバー、703は覗き窓、704は覗き窓の固定具、705A及び705Bはカバーと覗き窓との間の小空間、706A及び706Bはワーク搬送路707へ供給する酸化防止ガスの供給管、708は小空間705Aに酸化防止ガスを供給する供給管である。
【0035】
本実施例は、カバー702と搬送路形成体701との間だけではなく、カバー702と覗き窓703との間の隙間に対しても小空間705A及び705Bを設けている。前述したとおり、カバーには半田の塗布確認のため、透明なガラス等で構成される覗き窓703が設けられており、この覗き窓703は固定具704により固定されている。しかし、覗き窓703とカバー702との間、およびカバー702と固定具704との間には微小な隙間が存在するため、空気が侵入する可能性がある。
【0036】
そこで、本実施例では小空間705A及び705Bを設け、酸化防止ガスを供給することで、覗き窓703とカバー702との間、およびカバー702と固定具704との間の両方の隙間からの空気の侵入を防ぐことができる。
【実施例7】
【0037】
最後に、本発明の第七の実施例を図8に示す。図8(a)はカバーと搬送路形成体との接合部に設けた小空間を拡大した斜視図、図8(b)はワークの搬送方向に対して垂直に切断した断面図である。
【0038】
図において、801は搬送路形成体、802は搬送路形成体に設けた小空間、803は絞り部、804は酸化防止ガスを供給する供給管、805は接合面側に離散的に設けられた突起である。また、807はカバー、806A及び806Bは搬送路形成体801とカバー807との間の隙間である。
【0039】
本実施例は、小空間802の内側と外側とで段差を設け、小空間802の外側に突起805を離散的に設けたことを特徴とする。これにより小空間802の外側の隙間806Aの方が内側の隙間806Bよりも広くなるため、小空間802に供給した酸化防止ガスが搬送路側よりも外部に漏れやすくなる。よって、外部からの空気の侵入をより効率的に防ぐことができる。
【0040】
以上、多様な実施例を上げて説明したが、本発明はこれらの実施例に限られるものではなく、また前記第一の実施例で述べた効果、即ち、外部からの空気の侵入を防ぐことができるため酸化防止ガスの総量を抑えることができこと、酸化防止ガスの供給量が少なければ酸化防止ガスが奪う熱量を抑えられ、加熱に必要な電力を抑えることができること、その結果、装着装置が必要な温度まで加熱されるまでの立ち上がり時間を短縮すること等の効果も、適用する装着装置に応じて適宜役立てることができる。
【符号の説明】
【0041】
101・・・ワーク
102・・・搬送路形成体
103・・・カバー
104・・・ボルト
105A,105B,203A,203B・・・小空間
106・・・覗き窓
108,204A,204B・・・搬送路への酸化防止ガス供給管
109・・・開閉シャッター
110,206A,206B・・・小空間への酸化防止ガス供給管
205・・・搬送路
207・・・絞り部
208・・・絞り部の開口幅
503,603・・・絞り部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送路形成体とカバーとで形成される搬送路内にワークを間欠的に移送し、前記搬送路内のワークに半導体素子を装着する半導体素子装着装置において、前記搬送路形成体とカバーとの接合面に絞り部を介して小空間を形成し、当該小空間に酸化防止ガスを供給する手段を備えたことを特徴とする半導体素子の装着装置。
【請求項2】
請求項1において、前記搬送路に酸化防止ガスを供給する第2の供給手段を備え、かつ前記搬送路に沿って当該搬送路の両側に前記小空間を夫々形成し、当該両側の小空間に酸化防止ガスを供給する手段を前記第2の供給手段とは別に設けたことを特徴とする半導体素子の装着装置。
【請求項3】
請求項1において、前記絞り部を介して形成される小空間は、前記カバーと接合する前記搬送路形成体内に設けたことを特徴とする半導体素子の装着装置。
【請求項4】
請求項1において、前記絞り部を介して形成される小空間は、前記搬送路形成体と接合する前記カバー内に設けたことを特徴とする半導体素子の装着装置。
【請求項5】
請求項1において、前記搬送路形成体とカバーとの接合面に設けた絞り部の開口は、搬送方向に沿って連続的に広くなるように形成したことを特徴とする半導体素子の装着装置。
【請求項6】
請求項1において、前記搬送路形成体とカバーとの接合面に設けた絞り部の開口は、搬送方向に沿って段階的に広くなるように形成したことを特徴とする半導体素子の装着装置。
【請求項7】
請求項1において、前記絞り部は前記小空間を覆う絞り部材で構成し、当該絞り部材に設けた通気孔の大きさを搬送方向に沿って段階的に広くしたことを特徴とする半導体素子の装着装置。
【請求項8】
請求項1において、前記絞り部は前記小空間を覆う絞り部材で構成し、当該絞り部材に設けた通気孔の間隔を搬送方向に沿って段階的に狭くしたことを特徴とする半導体素子の装着装置。
【請求項9】
請求項1において、前記搬送路形成体とカバーとの接合面は前記絞り部を挟んで前記搬送路側と外側とで段差を設け、かつ、当該外側の接合面の隙間を広げる突起を離散的に形成したことを特徴とする半導体素子の装着装置。
【請求項10】
搬送路形成体とカバーとで形成される搬送路内にワークを間欠的に移送し、前記搬送路内のワークに半導体素子を装着する半導体素子装着装置において、前記カバーに覗き窓を設け、当該カバーと覗き窓との接合面に小空間を形成し、当該小空間に酸化防止ガスを供給する手段を備えたことを特徴とする半導体素子の装着装置
【請求項11】
請求項10において、前記覗き窓を設けたカバーと前記搬送路形成体との接合面に絞り部を介して小空間を形成し、当該小空間に酸化防止ガスを供給する手段を備えたことを特徴とする半導体素子の装着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−204962(P2011−204962A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71715(P2010−71715)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(300022504)株式会社日立ハイテクインスツルメンツ (607)
【Fターム(参考)】