説明

半導体装置、インクカートリッジ及び電子機器

【課題】インクカートリッジ内のインク情報を簡易な構成で正確かつ確実に検出及び管理することができ、電気的接続が安定的に行え、インクの無駄遣いを防止しユーザーの満足度を向上させることのできる半導体装置、インクカートリッジ及び電子機器を提供する。
【解決手段】半導体基板10に、インクに接液することで該インクの残量を検出する接液電極9,9と、電子機器本体側のコンタクトピン群との間で情報の授受を行う接点電極20,20と、半導体基板10の厚さ方向を貫通する貫通電極22,22と、を備え、半導体基板10の能動素子形成面10aに設けられた接液電極9,9と、能動素子形成面10aと反対側の裏面10bに設けられた接点電極20,20とが、貫通電極22,22を介して電気的に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、インクカートリッジ及び電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、インクによって記録を行うプリンタ等におけるインクカートリッジのインク消費の管理方法としては、記録ヘッドでのインク滴の吐出数やメンテナンスにより吸引されたインク量をソフトウェアにより積算してインク消費を計算により管理する方法などがある。
【0003】
しかしながら、ソフトウェアによりインク消費を計算上管理する上記の方法には、次のような問題がある。ヘッドの中には吐出インク滴に重量バラツキを有するものがある。このインク滴の重量バラツキは画質に影響を与えることはないものの、バラツキによるインク消費量の誤差がインクカートリッジ内に累積してしまう。そのため、計算上で得られたインク残量と実際のインク残量とが異なり、インク残量がゼロと表示された場合にも、実際には、インクカートリッジ内にインクが余っているという問題があり、インクの無駄遣いが発生しユーザーが問題意識を持つ場合があった。
【0004】
上記の課題を解決すべく、特許文献1には、圧電装置を用いてインクカートリッジ内のインク残量を監視する技術が開示されている。この方法によれば、圧電装置の振動部の残留振動に起因して発生する残留振動信号の共振周波数が変化することを利用して、インクカートリッジ内のインク残量を監視することができる。
【特許文献1】特開2002−283586号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この特許文献1は、センサ構造が複雑で、それに伴いシステムも複雑化していることから製造コストが掛かってしまっていた。また、圧電装置に接続された電極端子は、インクカートリッジをホルダ内にセットした際に、ホルダ内に設けられた接触端子に接触することにより電気的に接続されるようになっている。しかしながら、これら圧電装置の電極端子及びホルダ内の接触端子の電気的接続以外にインクカートリッジと本体機器との電気的接点の少なくとも2つ以上の接続点が必要なので、この電気的接続における信頼性が懸念されていた。そのため、これらの接続を確実に行えるようにし、電気的接点の信頼性を向上させる必要がある。
さらに、従来技術においては、インク情報を検出する検出電極とインク情報を記憶する記憶回路とがそれぞれ独立したシステムで本体機器を介してインク検出情報を記憶回路に記憶させるシステムとなっていることが多く、双方の情報を統合し、例えば本体機器にインクカートリッジをセットしない状態で機能させることができないなど簡便で詳細な情報管理は難しいものとなっていた。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、インクカートリッジ内のインク情報を簡易な構成で正確かつ確実に検出及び管理することができ、電気的接続が安定的に行え、インクの無駄遣いを防止しユーザーの満足度を向上させることのできる半導体装置、インクカートリッジ及び電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、情報授受用の電気的接点を備えた電子機器本体に用いられるインクカートリッジに設けられ、インクカートリッジ筐体の収容部に収容されるインクの残量を検出する半導体装置であって、半導体基板に、前記インクに接液することで該インクの残量を検出する検出電極と、前記電子機器本体側の前記電気的接点との間で情報の授受を行う接点電極と、前記半導体基板の厚さ方向を貫通する貫通電極と、を有し、前記半導体基板の能動素子形成面に設けられた前記検出電極と、前記能動素子形成面と反対側の裏面に設けられた前記接点電極とが、前記貫通電極を介して電気的に接続されていることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、検出電極と接点電極とを半導体基板の表裏に分けて設けたことから、半導体基板の表面スペースを効率よく活用でき、装置の小型化を図ることができる。さらに、半導体基板を貫通する貫通電極によって、配線(導電層)を引き回すことなく、能動素子形成面及び裏面を良好に導通させることができる。これは、一般的な実装構造(例えば、ワイヤーボンディング等)に比較して、最短距離の配線となるため周囲からノイズが入り難く、半導体装置の信頼性を向上させることができる。また、検出電極と接点電極とを統合して一体型の半導体装置としたことにより、インクカートリッジに組み込む際にも手間が掛からず製造が容易となるとともに製造コストが削減できる。こうすれば、検出電極から接点電極までの電気的な接点数を減らすともできる。また、インクに接液する検出電極によって、収容部内のインクの残量(実量)等を検出できることから、インクカートリッジ内のインクの有無を確実に把握することができる。これにより、インクを収容部に残すことなくインクカートリッジを交換することが可能となるので、ユーザーのインクに掛かるコストを削減することができ、ユーザーの立場からはインクの無駄遣いを防止しユーザーの満足度を向上させることができる。このことは、以下に説明するすべての作用効果にも共通する重要な内容である。
【0009】
半導体基板に、インクの残量を記憶する記憶回路と、検出電極、接点電極及び記憶回路を制御する制御回路と、をさらに有することも好ましい。
この構成によれば、検出手段により検出されたインク情報を記憶回路に記憶することができるとともに、制御回路により記憶回路に記憶されているインク情報を随時更新することなどができるようになるので、インクカートリッジ内のインクの有無を確実に把握することができる。
【0010】
また本発明の半導体装置は、半導体基板の能動素子形成面及び裏面のそれぞれにパッシベーション膜を介して形成される導電層と、該導電層を覆うようにして形成される保護膜と、該保護膜に形成され且つ導電層の少なくとも一部を露出させる開口部と、を備え、開口部から露出する導電層の一部を検出電極及び接点電極とすることも好ましい。
【0011】
この構成によれば、開口部から露出する導電層の一部を検出電極及び接点電極としているため、例えば、能動素子形成面あるいは裏面の所定の場所に導電層を引き回すことによって、隣り合う検出電極及び接点電極との間のピッチを広げることができる。また、開口部の大きさによって検出電極及び接点電極の大きさが決定されるため、検出電極及び接点電極を所望の大きさ(範囲)で形成することができる。
【0012】
また、能動素子形成面側において、開口部より露出した導電層上にバンプを形成し、該バンプを検出電極とすることも好ましい。
この構成によれば、導電層上に形成されるパンプを検出電極とすることにより、能動素子形成面と検出電極との距離、つまり、相互間における半導体基板の厚さ方向における距離を稼ぐことができるので、能動素子形成面に対するインクの影響を防止することができる。
【0013】
また、検出電極の表面にメッキ層が形成されていることも好ましい。
この構成によれば、インクに接触する検出電極を、例えば、耐薬品性に優れた金属によってメッキすることにより、検出電極の腐食が防止され、半導体基板(能動素子形成面)へのインクの浸入を防止することができ、例えば、記憶回路及び制御回路(能動素子)に対するインクの影響を防止することができる。また、インクは、強アルカリ性を有するものが殆どであるため、メッキ材料に耐薬品性の金属を用いることにより、インクの浸入を確実に阻止することができる。
【0014】
また、検出電極の下層側に絶縁体層が形成されていることも好ましい。
この構成によれば、検出電極の下層側に絶縁体層を形成することによって、能動素子形成面からの検出電極の距離を稼ぐことができるので能動素子に対するインクによるダメージを防止することができる。
【0015】
また、接点電極の下層側に応力緩和層が形成されていることも好ましい。
この構成によれば、接点電極の下層側に応力緩和層を形成することによって、例えば、電子機器本体とインクカートリッジを電気的に接続する場合、電気的接点による半導体基板への衝撃を抑えることができるとともに、確実な電気的接続が実現され、接点寿命及び長期信頼性を確保することができる。
【0016】
また、接点電極及び前記検出電極が、前記半導体基板上の能動素子を構成する導電材料と同一の導電材料によって、能動素子形成面或いは裏面上に直接形成されていることも好ましい。
この構成によれば、能動素子からなる集積回路、接点電極及び検出電極を一度に形成することができるので、製造が容易となる。
【0017】
本発明の半導体装置は検出電極が、3つ以上形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、仮に2つの検出電極間に気泡やごみが存在して、検出電極による検出精度が低下しても、それ以外の検出電極間で検出精度を補うことができ、正確なインクの有無情報を得ることができる。
【0018】
本発明のインクカートリッジは、インクを収容する収容部を有するインクカートリッジ筐体に、インク情報を検出及び管理する液センサの機能を果たす本発明の半導体装置を少なくとも一つ有し、該半導体装置の検出電極を収容部内に露出させるとともに、電子機器本体側の電気的接点とインク情報の授受を行う接点電極を、電子機器本体の電気的接点側に露出させるようにして設けることも好ましい。
【0019】
この構成によれば、検出電極及び接点電極とを一体化した半導体装置を備えることにより、電子機器本体側のインク情報(例えば、色、液滴カウント数等)と検出電極側のインク情報(例えば、残量,実量等)とを統合して記憶回路に記憶させることができるので、インクに対する幅広い情報管理が可能となる。例えば、インク充填の有無、インクの充填日、インクの終了日及びインク充填回数等のインク情報を、予め記憶回路に記憶させておくことで、上記したインク情報とともにインクに関する詳細な情報を一括管理することができる。このように、きめ細かい情報管理が行えるとユーザーに有益な情報をユーザーにきめ細かく伝達するシステムを組むことができる。加えて、インクカートリッジが電子機器本体にセットされていない状態であっても、記憶回路の内容情報の参照や該記憶回路への書き込み等を行うことができる他、検出電極からのインク情報を電子機器本体を通さずに記憶回路に記録させることができる。そのため、インクカートリッジ単体でインク情報を検出及び管理することも可能となり、インクカートリッジの汎用性を高めることができる。このように、インクカートリッジ側に管理検出機能を持たせることで、電子機器本体側の配線数が減り、構造を簡易なものとすることができる。すると、電子機器本体の設計レイアウトの自由度向上を実現することができるようになる。
【0020】
また、半導体装置の検出電極をインクカートリッジ筐体の収容部内に露出させるようにして設けることで検出電極がインクに直接接することになり、収容部内のインクの残量(有無)を確実に検出することができるとともに、検出電極以外の能動素子形成面上をインクカートリッジ内に埋設させることで能動素子形成面上に形成された能動素子に対するインクによるダメージを阻止することができる。さらに、半導体装置の接点電極が電子機器本体の電気的接点側に露出するようにしてインクカートリッジ筐体内に設けられているので、これら電気的接点及び接点電極同士が良好に接続され、情報の授受効率が向上する。
これらのことから、インクの有無を確実に知ることができるので収容部内にインクを残すことなくインクカートリッジを交換することが可能となる。
【0021】
本発明のインクカートリッジは、半導体装置の検出電極が収容部の深さ方向に沿って複数設けられ、検出電極が収容部の底面に沿うようにして配置されていることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、インク量の低下に伴って、上方の検出電極間から順に、検出電極間のインク無しの情報(液位)が検出され、底面に沿った検出電極間でインク無しの情報が検出されると、インクカートリッジから完全にインクがなくなったという情報も得ることができるので、正確なインクの有無情報のみならず、次第に減少するインク量の情報を経時的に的確に得ることができる。このような構成をとることによって、特にユーザー側で気になるインク残量小の領域で、タイムリーなインク残量情報を得ることができるから、ユーザー満足度は大いに向上する。
【0023】
また、半導体装置が収容部の深さ方向に沿って複数設けられ、複数の半導体装置のうちの少なくとも一つの半導体装置の検出電極が収容部の底面に沿うようにして配置されていることも好ましい。
この構成によれば、収容部の深さ方向に沿って複数の半導体装置を設けることにより、インクの液位を検出することができ、インク残量を正確に把握することができる。また、少なくとも一つの半導体装置の検出電極を収容部の底面に沿うようにして設けることにより、インクの有無を確実に検出することができる。このような構成をとることによっても、特にユーザー側で気になるインク残量小の領域で、タイムリーなインク残量情報を得ることができるから、ユーザー満足度は大いに向上する。
【0024】
本発明の電子機器は、本発明のインクカートリッジと、電気的接点を備えた電子機器本体と、を備え、これらインクカートリッジ及び電子機器本体は前記電気的接点により接続されることを特徴としている。
【0025】
この構成によれば、インクカートリッジと電気機器本体とを、電気的接点により電気的に接続することとしたため、電気的接点に応力が掛かり相互間を確実に接続することができる。また、インクカートリッジと電気機器本体との電気的接点にこれらの接続を安定させる応力を与えるように構成することによって、接続の信頼性が向上する。そして、電波通信によって信号の授受を行う場合に比べて安価で容易な構成で信頼性の高い情報の授受を行うことができる。さらに、上記したようなインクの情報を確実に検出、管理することができるため、例えば、インクカートリッジの適正な交換時期を決定することができる。そのため、インクを残すことなくインクカートリッジを交換することができるので、インクカートリッジの交換サイクルが延長され、インクに掛かるコストダウンを図ることができる。このように、インクの詳細な情報管理を実現することにより、効率的で無駄のないインクカートリッジのリサイクルが可能となる。また、例えば、インク充填回数の情報から、インクカートリッジのリサイクル回数を決定することができるなど、ユーザー側にとってのサービスに欠かすことのできない機能となり得るだけでなく、リサイクルを推進する環境側面からも有益な情報となる。当然、高信頼性、高品質の製品を提供することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の半導体装置、インクカートリッジ及び電子機器の実施の形態を、図1から図8を参照して説明する。この半導体装置1は、後述する、コンタクトピン群21,21(電気的接点)を備えたプリンタ本体23(電子機器本体)に装着されるインクカートリッジ7に内蔵されるものである。
【0027】
[半導体装置]
図1は本発明の電子機器の基本構成を示すブロック図、図2は本発明の半導体装置の第1実施形態を示す断面図であり、図3は本発明の半導体装置の第1実施形態を示す外観図であり、これらの図において符号1は、ウエハレベルCSP(W−CSP)構造の半導体装置である。この半導体装置1は、矩形状の半導体基板10上に、インクの残量を検出する接液電極9,9(検出電極)と、プリンタ本体23側のコンタクトピン群21との間で情報の授受を行う接点電極20と、インクの情報を記憶するEEPROM4(記憶回路)と、これら接液電極9,9、接点電極20及びEEPROM4を一括して制御するコントローラ5(制御回路)と、を有して構成されている。
【0028】
半導体基板10は、シリコンからなっており、能動素子形成面10a(表面)上に、トランジスタ等の能動素子から構成されるコントローラ5及びEEPROM4を有する集積回路(不図示)が形成されている。集積回路は、少なくとも配線パターンが形成されており、EEPROM4やコントローラ5(制御回路)、その他のアクティブコンポーネントを相互に接続する配線等によって構成されている。本実施形態においては、記憶回路として、読み出し書き込み可能な記憶媒体であるEEPROM(不揮発性メモリ)4が用いられている。また、コントローラ5は、インクタンク6(収容部)に残っているインク残量に基づいて、EEPROM4の記憶するインク情報の更新などを行うものである。
【0029】
一方、半導体基板10における能動素子形成面10aの周縁部には、集積回路を導通させるための一対の素子電極11,11が形成されている。これら素子電極11,11は、半導体基板10の前記集積回路に直接導通して形成されたもので、矩形状の半導体基板10の周縁部に配列して設けられている。素子電極11は、チタン(Ti)、窒化チタン(TiN)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、あるいは、これらを含む合金等によって形成することができるが、本実施形態ではアルミニウム(Al)で形成している。
【0030】
また、能動素子形成面10a上に形成された素子電極11,11は、半導体基板10を貫通する一対のスルーホール25,25を介して、該半導体基板10の裏面10b側に引き出されている。スルーホール25,25は、半導体基板10の能動素子形成面10aから裏面10b側に向かって貫通しており、例えば、フォトリソグラフィー法等の公知の手法を用いて所定の孔径に形成されている。そして、印刷法によりスルーホール25,25の内部まで導電性ペーストを埋め込んだ、いわゆるコンタクトプラグを形成することにより貫通電極22,22としている。導電性ペーストとしては、例えばCu(銅)やW(タングステン)等の電気抵抗が低いものを好適に採用できる。これら貫通電極22,22は、裏面10bから若干突出するよう形成されている。
【0031】
図2に示すように、各スルーホール25,25は、各素子電極11,11の直下に形成されていることが好ましい。素子電極11の直下には、通常、能動素子が存在していないことが多いため、このようにすることにより、スルーホール25,25を形成するためだけの半導体基板10の面積を割り振る必要がなく、半導体基板10の面積を最小限の大きさに抑えることができる。このような方法を採用することにより、半導体装置1に不可欠な素子電極11を採用することができるので、半導体装置1をカスタム設計することなく、汎用タイプを流用することができる。
【0032】
そして、能動素子形成面10aの素子電極11,11は、該能動素子形成面10a上に形成されるパッシベーション膜14によって覆われて保護されている。これらパッシベーション膜14は電気絶縁性材料からなるものであって、例えばポリイミド樹脂、シリコーン変性ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、BCB(benzocyclobutene)及びPBO(polybenzoxazole)等により形成されている。または、酸化珪素(SiO)、窒化珪素(Si)等の無機絶縁材料によって形成することもできる。本実施形態においては、ポリイミド樹脂を用いて形成されている。
【0033】
半導体基板10の能動素子形成面10aにおけるパッシベーション膜14上には、素子電極11,11を避けた位置、本実施例では半導体基板10の中央部に、絶縁樹脂からなる絶縁体層15’が形成されている。また、裏面10b側のパッシベーション膜14上には、貫通電極22,22を避けた位置に、可撓性を有する絶縁樹脂からなる応力緩和層15が形成されている。これら応力緩和層15及び絶縁体層15’は、半導体基板10の中央部にそれぞれ形成され、図2に示すように、その断面が略台形状となっている。応力緩和層15及び絶縁体層15’を形成する材料としては、感光性ポリイミド樹脂、シリコン変性ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、シリコン変性エポキシ樹脂等から適宜選択されて構成される。能動素子形成面10a上に、上記材料からなる絶縁体層15’を形成することにより、能動素子(集積回路)の熱ストレスが緩和され、信頼性寿命が著しく向上することになる。
【0034】
そして、能動素子形成面10a側のパッシベーション膜14には、前記素子電極11上に開口部14aが形成されている。このような構成によって素子電極11は、前記開口部14a内にて外側に露出した状態となっている。また、裏面10b側のパッシベーション膜14にも、貫通電極22上に開口部14bが形成されており、このような構成によって、貫通電極22は前記開口部14b内にて外側に露出した状態となっている。
【0035】
そして、前記素子電極11には、前記パッシベーション膜14の開口部14a内にて再配置配線16(導電層)が電気的に接続されている。この再配置配線16は、前記集積回路の素子電極11の再配置を行うためのもので、半導体基板10の周辺部に配置された素子電極11から中央部側に延びて形成され、さらに絶縁体層15’上にまで引き回されて形成されたものである。この再配置配線16は、半導体基板10の素子電極11と後述する接液電極9,9との間を配線することから一般的には再配置配線と呼ばれ、微細設計されることの多い半導体基板10の素子電極11の位置と、ラフピッチの接液電極9,9との物理的な位置をずらして配置するための重要な手段である。
【0036】
接液電極9間の抵抗や電流を測定することによって、インクの有無を検出することができる。例えば、一つの接液電極9は、集積回路のトランジスタゲートに接続され、もう一つの接液電極9は、電源に接続されるようにすると、インクの有の時にONになっていたトランジスタは、インク無しの時にOFFとなる。これを検出すれば、インクの有無を検出することができる。インク組成物の電気分解による劣化を防止するために、接液電極9,9間に流れる電流はなるべく少なく、しかもパルス状であることが好ましい。
【0037】
一方、半導体基板10の裏面10bの貫通電極22においても、前記パッシベーション膜14の開口部14b内にて再配置配線24(導電層)が電気的に接続されている。この再配置配線24は、貫通電極22の再配置を行うもので、貫通電極22から中央部側に延びて形成され、さらに応力緩和層15上にまで引き回されて形成されたものである。この再配置配線24は、後述する接点電極20,20との間を配線する再配置配線である。
【0038】
これら再配置配線16,24の材料としては、金(Au)、銅(Cu)、銀(Ag)、チタン(Ti)、タングステン(W)、チタンタングステン(TiW)、窒化チタン(TiN)、ニッケル(Ni)、ニッケルバナジウム(NiV)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、パラジウム(Pd)等の単層膜や複層膜、その合金膜を用いることができるが、本実施形態では、Cuで形成している。
【0039】
そして、半導体基板10の能動素子形成面10a上には、再配置配線16や絶縁体層15’、パッシベーション膜14を覆うようにして、ソルダーレジストからなる耐熱性の保護層17が形成されている。この保護層17を形成するための樹脂としては、例えば、耐アルカリ性を有する樹脂として、ポリイミド樹脂、PPS、PE等が用いられる。或いは、シリコン窒化物(SiN)、SiO2、SiON等を用いて無機膜としてもよい。保護層17は、インクが減少したときにその表面にインクが残留して接液電極9,9間の抵抗値を下げないように(接液センサーのS/N比を向上させるために)、インクに対して發液性を有しているものを採用することが好ましい。本実施形態においては、ポリイミド樹脂が用いられる。このような保護層17には、前記絶縁体層15’上の各再配置配線16上にそれぞれ開口部17aが形成されている。このような構成によって再配置配線16は、前記開口部17a内にて外側に一部露出した状態となっている。また、保護層17は、表面がフッ化処理やシリコーン処理等の發液加工されていてもよい。そうすれば保護層17全体がインクに対して發液性を有していなくとも良く、樹脂選択の幅が広がる。また、保護層17は半導体装置1の側面を覆うようにしても良い。こうすれば、半導体装置1がインクによってダメージを受けることは皆無となる。
【0040】
また、裏面10b上にも、再配置配線24や応力緩和層15、パッシベーション膜14を覆ってソルダーレジストからなる耐熱性の上記保護層17が形成されている。この保護層17においても、前記応力緩和層15の各再配置配線24上にそれぞれ開口部17bが形成されている。このような構成によって再配置配線24は、前記開口部17b内にて外側に一部露出した状態となっている。
【0041】
そして、図2に示すように、それぞれの開口部17aから露出する再配置配線16上には、高速メッキ可能なCuで形成されたコアの表面にAuメッキ膜18(メッキ層)が成膜されてなるバンプが形成されており、インクに接液することによってインク情報を検出する接液電極9,9として機能する。Cuコア表面にAuメッキ膜18を形成しておくことにより、半導体基板10へのインクの浸入が確実に阻止されることになる。メッキ膜としては、強アルカリ性のインク成分による影響を受けることのない耐薬品性に優れた金属が好ましく、前記したAuメッキ膜の他、例えば、Ptメッキ膜、Ni−pメッキ膜、或いはNi−p+Auメッキ膜等を用いてもよい。
【0042】
また、これら接液電極9,9の下層側に応力緩和層15が既存していることから、能動素子形成面10aからの距離を稼ぐことができるので、能動素子に対するインクの影響をさらに防止することができる。
【0043】
一方、裏面10b側における一対の開口部17b,17bから露出する再配置配線24の一部は、プリンタ本体23と電気的な接続をなすための接点電極20,20となっている。これら接点電極20,20にも、表面にAuメッキ膜(不図示)が成膜された構成となっており、外部に露出することで接点電極20,20が酸化することを防止している。メッキ膜としては、Auメッキ膜の他、上記したメッキ材料から適宜選択される。このようにして、半導体基板10の能動素子形成面10aに、絶縁体層15’、再配置配線16及び保護層17を設け、同じ様態で、裏面10b側に、応力緩和層15、再配置配線24及び保護層17を設ける。これにより、半導体基板10の表裏面において、略同様の製造工程を適用することができるので、製造工程が大幅に削減される。
【0044】
上述した構造によれば、接液電極9,9と接点電極20,20とを半導体基板10の表裏に分けて設けたことから、半導体基板10の表面スペースを効率よく活用でき、半導体装置1の小型化を図ることができる。さらに、半導体基板10の厚さ方向を貫通する貫通電極22,22によって、配線を引き回すことなく、能動素子形成面10a及び裏面10bを良好に導通させることができる。これは、一般的な実装構造(例えば、ワイヤーボンディング等)に比較して、最短距離の配線となるため周囲からノイズが入り難く、半導体装置1の信頼性を向上させることができる。また、接液電極9,9、接点電極20,20、コントローラ5及びEEPROM4を統合して一体型の半導体装置1としたことにより、インクカートリッジ7に組み込む際にも手間が掛からず製造が容易となるとともに製造コストが削減できる。また、接液電極9,9によってインクの残量(実量)等を検出できることから、インクカートリッジ7内のインクの有無を確実に把握することができる。これにより、インクを残すことなくインクカートリッジ7を交換することが可能となるので、ユーザーのインクに掛かるコストを削減することができる。このような構成をとることにより、接液電極9,9からのアナログの接液信号は、コントローラ5を介してデジタル信号として接点電極20,20から直接出力することができ、機械的な接続接点を減らすことができるとともに、ノイズの載りやすい不安定なアナログ信号ではなく、安定したデジタル信号で出力することができる。
【0045】
また、保護層17の開口部17aから露出する再配置配線16上に接液電極9,9を設けるとともに、保護層17の開口部17bから露出する再配置配線24の一部を接点電極20,20としているため、例えば、隣り合う接液電極9,9間のピッチや接点電極20,20間のピッチを広げることができる。また、開口部17a,17bの大きさによって接液電極9,9及び接点電極20,20の大きさが決定されるため、これら接液電極9,9及び接点電極20,20を所望の大きさ(範囲)で形成することができる。
【0046】
なお、半導体基板10は、シリコンの他、ガラス、石英、水晶等から構成してもよい。また、記憶回路として、EEPROM4ではなくFlush MEMORY等他の記憶素子を用いることも可能である。さらに、再配置配線16,24は集積回路形成時に使用される配線(Al,Cu)等で形成してもよい。
【0047】
図3には、図2の断面図で示される本発明の半導体装置1の外観図の一例を示す。
この例では、検出電極は、一組2つの接液電極9,9で構成され、この間の抵抗や電流を測定することによって、インクの有無を検出することができる。また、図4には、図2の断面図で示される本発明の半導体装置1の外観図の別の一例を示す。この例では、接液電極9が、6つ形成されている。こうすれば、仮に一組の接液電極9,9間に気泡やごみが存在して、接液電極9,9による検出精度が低下しても、それ以外の組の接液電極9,9間で検出精度を補うことができ、正確なインクの有無情報を得ることができる。この場合、1組以上の接液電極9,9で精度低下を防止することができ、接液電極9が多いほど検出精度を向上させることができる。なお、接液電極9,9を3組以上設けても良く、これにより詳細なインク情報を得ることができる。
【0048】
次に、第2実施形態について図5を参照して説明する。図5において、図1〜図3の各部に対応する部分には同一の符号を付け、その説明を省略する。
符号41は、本実施形態の半導体装置を示すもので、上記第1実施形態と異なる点は、能動素子形成面10a上に形成された保護層17の開口部17aから露出する再配置配線16の一部を接液電極12(検出電極)としたことである。本実施形態は、開口部17a内に浸入するインクが露出する再配置配線16の一部に接液することによってインク情報を検出するものである。そのため、開口部17aから露出する再配置配線16上には、上記したような耐薬品性に優れた金属によりメッキが施されている。本実施形態では、不図示のNi−p+Auメッキ膜が形成されている。このようなメッキ膜を形成しておくことによって開口部17aから半導体装置41内にインクが浸入することが防止される。これにより、半導体装置41の能動素子形成面10a上の能動素子(集積回路)にインクの影響が及ぶことを阻止することができる。
このように、再配置配線16の一部を接液電極12とすることによって簡易な構成で上記実施形態と同様の機能を奏することができる。
【0049】
[インクカートリッジ]
次に、本実施形態におけるインクカートリッジ7について、図1、図6及び図7を参照して説明する。ここで、図7は図6のA−A断面図である。
インクカートリッジ7は、上記した半導体装置1を内蔵しており、後述する、コンタクトピン群21,21(電気的接点)を備えたプリンタ本体23(電子機器本体)に装着されるものである。この半導体装置1は、インクカートリッジ7内のインク情報を管理及び検出する液センサの機能を果たす。
【0050】
インクカートリッジ7は、図7に示すように、インクを収容するインクタンク6を備えたインクカートリッジ筐体8内に上記半導体装置1を内蔵すべく、例えば、樹脂の射出成形により一体形成されている。この半導体装置1は、一対の接液電極9,9をインクが収容されたインクタンク6内に露出させるとともに、一対の接点電極20,20をインクカートリッジ7の外部に露出させるようにして、接液電極9,9及び接点電極20,20以外の半導体装置1の他の部分をインクカートリッジ筐体8内に埋設してなる。このとき、一対の接液電極9,9がインクタンク6の底面に沿うように、インクカートリッジ筐体8の壁部下方に設ける。これにより、インクの有無を確実に検出することができる。
また、これらインクカートリッジ7のインクタンク6内には異なる種類のインクがそれぞれ収容されており、各インクカートリッジ7の所定箇所からインクを導出できるようになっている。
【0051】
この構成によれば、接液電極9、コントローラ5、EEPROM4及び接点電極20とを一体化した半導体装置1を備えることにより、プリンタ本体23側のインク情報(例えば、色、液滴カウント数等)と接液電極9,9側のインク情報(例えば、残量,実量等)とを統合してEEPROM4に記憶させることができるので、インクに対する幅広い情報管理が可能となる。加えて、インクカートリッジ7がプリンタ本体23にセットされていない状態であっても、EEPROM4の内容情報の参照や該EEPROM4への書き込み等を行うことができる他、接液電極9,9からのインク情報をプリンタ本体23を通さずにEEPROM4に記録させることができる。また、例えば、インクの種類(色)、インク充填の有無、インクの充填日、インクの終了日及びインク充填回数等のインク情報を、工場出荷時に予めEEPROM4に記憶させておくことが好ましく、これにより上記したインク情報とともにインクに関する詳細な情報を一括管理することができる。さらに、インクカートリッジ単体でインク情報を検出及び管理することも可能となり、インクカートリッジ7の汎用性を高めることができる。
【0052】
これらにより、インクをインクタンク6内に残すことなくインクカートリッジ7を交換することが可能となる。
【0053】
また、半導体装置1の接液電極9,9をインクカートリッジ筐体8のインクタンク6内に露出させるようにして設けることで接液電極9,9がインクに直接接することになり、インクタンク6内のインクの残量(有無)を確実に検出することができる。このように埋設させることで、能動素子形成面10a上に形成された能動素子に対するインクによるダメージを阻止することができるとともに、接液電極9,9間が樹脂で覆われることになるのでインク残量が少なくなったときの誤判定を防止することができる。
【0054】
なお、インクカートリッジ7は、半導体装置1を複数内蔵したものとして構成してもよく、この場合、例えば、インクカートリッジ筐体8の壁部に、インクタンク6の深さ方向に沿って所定の間隔をおいて接液電極9,9が並ぶように連設させる。これにより、インクの液位を検出することができ、インク残量や消費経過を正確に把握することができる。この場合、少なくとも一つの半導体装置1の接液電極9,9をインクタンク6の底面に沿うようにして設けることによって、インクの有無を確実に検出することができるようになる。また、半導体装置1は、インクカートリッジ7の成形後に該インクカートリッジ7内に接着させるようにしてもよい。
【0055】
さらに、インクカートリッジ7に表示部を設け、EEPROM4に格納されたインク情報を表示部に反映させるようにしてもよい。
【0056】
図8には、本発明の別のインクカートリッジ7の例を示す。ここで、用いられる半導体装置1は、図4に示すように接液電極9,9が3組設けられている。インクカートリッジ筐体8の内壁部の底部付近に、インクタンク6の深さ方向に沿って半導体装置1を配置する。接液電極9,9が、3組(この場合は6つ)あるので、どの組の接液電極9,9にインクが接しているかを測定すれば、インクの液位を検出することができ、インク残量や消費経過を正確に把握することができる。またこのとき、少なくとも一組の接液電極9,9をインクタンク6の底面に沿うようにして設けることにより、インクの有無を確実に検出することもできるようにすることもできる。こうすれば、1つの半導体装置1で上記の情報を検出でき、簡略な構成で高性能な検出を行うことができる。
【0057】
次に、プリンタ本体について図1、図6及び図7を参照して説明する。
図6に示すように、プリンタ本体23は、上記インクカートリッジ7を着脱可能に複数備えるもので、図7に示すインクカートリッジ7に設けられている接点電極20,20に各々接続するコンタクトピン群21,21(電気的接点)を有して構成されている。このプリンタ本体23は、装着された各インクカートリッジ7からのインクの供給を受ける記録ヘッドと、記録用紙13を記録ヘッドに対して相対的に移送させる紙送り手段と、を備えており、印刷データに基づいて記録ヘッドを移動させながら記録用紙13にインクを吐出させることで記録を行うものである。
【0058】
図7に示すように、前記したコンタクトピン群21,21は、インクカートリッジ7の接点電極20,20にそれぞれ接触できる位置に予め位置決めされている。ここで、インクカートリッジ7は、同図に示すように、半導体装置1をその接点電極20,20がプリンタ本体23のコンタクトピン群21,21側に露出するようにインクカートリッジ筐体8内に設けていることから、コンタクトピン群21,21と接点電極20,20とが良好に接続されるようになっている。
【0059】
ここで例えば、コンタクトピン群21,21の基部にバネ等の弾性部材(不図示)を有するよう構成しておくことで、前記コンタクトピン群21,21が接点電極20,20との接続方向に対して進退できるようになっていることが好ましい。
【0060】
すると、プリンタ本体23にインクカートリッジ7が装着される際には、接点電極20,20によってコンタクトピン群21,21が押圧されながら互いに接続するようになる。プリンタ本体23及びインクカートリッジ7間におけるインク情報の授受は、こうして互いに接触状態にあるコンタクトピン群21,21と接点電極20,20との間の電気的な接続により行われる。この電気的な接続を安定的に行なうため、コンタクトピン群21,21は、例えばインクカートリッジ7側の接点電極20,20に対する所定の押圧力を必要とする。この押圧力は、相互間の接続に必要な接点電極20より受ける反力よりも大きく、コンタクトピン群21と接点電極20との対向方向に作用する。このような作用は、コンタクトピン群21,21に設けられた上記弾性部材によって実現され、該弾性部材によりコンタクトピン群21,21が接点電極20,20を付勢することで接続が安定するようになる。
【0061】
また、このようなコンタクトピン群21,21と接点電極20,20との接点応力は、接点電極20,20下層側に形成されている応力緩和層15によって緩和されるようになっていることから、一対の接点電極20,20に各コンタクトピン群21,21が良好に接触することになり、接点寿命及び信頼性を向上させることができる。さらに、このようなコンタクトピン群21,21の押圧力を利用してインクカートリッジ7のプリンタ本体23に対する位置決めもなされるように構成することもできる。ここで、コンタクトピン群21,21に掛かる反力には、例えば、可撓性を有する樹脂材料からなる応力緩和層15の弾性力も影響することが考えられる。
【0062】
このように、コンタクトピン群21,21と接点電極20,20とが電気的に接続され、且つ、相互の電気的接点に応力が掛かるようにして構成されることにより、インクカートリッジ7とプリンタ本体23との間で安定した接続及び情報の授受が行われる。また、インクカートリッジ7側の接点電極20,20とプリンタ本体23側のコンタクトピン群21,21との接続を利用してプリンタ本体23にインクカートリッジ7が正確に装着されたか否かを判断することができ、このとき、例えばインクカートリッジ7がプリンタ本体23に正確に装着されていない場合には、その旨、プリンタ本体23の表示部或いはコンピュータに表示されるようになっている。
【0063】
なお、プリンタ本体23は、インクカートリッジ7から吐出されるインク滴をカウントして、インク消費量からインクタンク6内のインクの残量を算出する吐出液滴カウンタ部(不図示)をさらに備えているものとする。
【0064】
このような構成のプリンタ本体23には、図6に示すように、複数のインクカートリッジ7が装着されることになるが、その際、各インクカートリッジ7に収容されているインクの種類によって予め決められた配列にしたがって並列状態に装着される。本実施形態のインクカートリッジ7は、プリンタ本体23に装着されると、半導体装置1の駆動電源として、接点電極20,20に接続するプリンタ本体23のコンタクトピン群21,21から必要な電力を取り出すように構成されている。
【0065】
また、上記した半導体装置1を内蔵したインクカートリッジ7によって、インクカートリッジ7側に管理検出機能を持たせることができるようになり、プリンタ本体23側の配線数が減って、構造を簡易なものとすることができる。これにより、プリンタ本体23の設計レイアウトの自由度向上を実現することができる。
【0066】
また、インクカートリッジ7のEEPROM4に格納されたインク情報は、プリンタ本体23の電源を切ったり、プリンタ本体23からインクカートリッジ7を取り外したりしたとしてもその格納情報は保持されるようになっているため、インクカートリッジ単体であってもインク情報が管理できる。
【0067】
[電子機器]
次に、本発明に係るインクジェット式プリンタ30(電子機器)の主要構成について、図1及び図6に示す実施の形態に基づいて説明する。このインクジェット式プリンタ30は、プリンタ本体23に複数のインクカートリッジ7を着脱可能に備えたインクジェット式プリンタ30である。図6において符号31はキャリッジであり、このキャリッジ31は、キャリッジモータ32により駆動されるタイミングベルト33を介し、ガイドロッド34に案内されてプラテン35の軸方向に往復移動されるように構成されている。
【0068】
前記キャリッジ31が走査される走査領域には、記録用紙13が配置され、この記録用紙13はキャリッジ31の走査方向に直交するように搬送されるように構成されている。そして、キャリッジ31における前記記録用紙13と対向する面には、記録ヘッドが設けられ、またその上部には前記記録ヘッドにインクを供給するブラック、イエロー、シアン、マゼンタの各インクがそれぞれ貯留されたインクカートリッジ7B,7Y,7C,7Mが着脱可能となるように装着されている。
【0069】
また、非印字領域外であるホームポジションには、キャッピング手段36が配置されており、このキャッピング手段36は、キャリッジ31がホームポジション側へ移動した場合、キャリッジ31の移動に伴い、キャリッジ31に搭載された記録ヘッドのノズル形成面を封止できるように構成されている。
【0070】
また前記キャッピング手段36は、前記キャリッジ31が印字領域側へ移動するに伴って降下し、記録ヘッドの封止状態を解くことができるように構成されている。そして、前記キャッピング手段36の下方には、キャッピング手段36の内部空間に対して負圧を与えるための吸引ポンプ37が配置されている。
【0071】
前記キャッピング手段36は、インクジェット式プリンタ30の休止期間中における記録ヘッドのノズル開口の乾燥を防止する蓋体として機能する他、記録ヘッドに印刷とは関係のない駆動信号を印加してインク滴を吐出させるフラッシング動作時のインク受けとして機能し、さらに前記吸引ポンプ37からの負圧を記録ヘッドに作用させて、記録ヘッドよりインクを吸引排出させるクリーニング手段としての機能も兼ね備えている。
【0072】
そして、キャッピング手段36の印字領域側に隣接して、ゴムなどの弾性板からなるワイピング部材38が配置されていて、キャリッジ31がキャッピング手段36側に往復移動する際に、必要に応じて記録ヘッドのノズル形成面を払拭して清掃するワイピング動作がなされるように構成されている。
【0073】
インクジェット式プリンタ30は、各インクカートリッジ7からのインクの供給を受けるインクジェット式記録ヘッドに対して記録用紙13を相対的に移送させるようになっており、印刷データに基づいて記録ヘッドを移動させながら、記録用紙13にインク滴を吐出させることで記録を行うように構成されている。
【0074】
このようにして構成されるインクジェット式プリンタ30は、インクカートリッジ7がプリンタ本体23にセットされると、まず、図9に示すように、ステップS1において、装着されたインクカートリッジ7が使用可能か否かを検出するようにしており、これには、コンタクトピン群21,21及び接点電極20,20間の信号の授受が利用される。そして、コンタクトピン群21,21からの信号によりプリンタ本体23側から電力が供給されることによって半導体装置1のICが起動し、接液電極9,9に所定の電圧が印加される。すると、インクタンク6内にインクが収容されている場合には、接液電極9,9に接しているインクを通じて接液電極9,9間に電流が流れる。このような接液電極9,9により検出された信号(電流値)はコントローラ5へと出力される。コントローラ5は、検出電極により検出された信号が、接液電極9,9間で通電するという場合にはインク有りと判定し、この判定結果に基づくインク情報(インクの有無)をEEPROM4へと格納する。そして、インクカートリッジ7が使用可能であることが判明すると、その情報がプリンタ本体23へと伝送され、該プリンタ本体23は印字待機状態に入り、印字信号を受け次第、ステップS2に移行して印字データの記録を実行する。
【0075】
一方、検出電極による検出信号が接液電極9,9間で通電しないという信号の場合には、コントローラ5はインク無し(インクエンド状態)と判定する。この判定結果に基づくインク情報(インクの有無)をEEPROM4へと格納し、ステップS5に示すように、インクカートリッジ7の交換を促す信号をプリンタ本体23へと出力する。
このようにして、接液電極9,9間の通電状態を検知することでインクタンク6内のインクの有無を確認し、インクカートリッジ7の使用可否を判定する。
【0076】
ステップS2に示すように、プリンタ本体23を駆動して印字を実行している際、インクカートリッジ7は、これら接液電極9,9間の通電状態を所定時間毎に検出する(ステップS3)。接液電極9,9により検出された検出信号(電流値)はコントローラ5へと出力される。このインク情報の検出周期は適宜設定される。コントローラ5は、この判定結果に基づいてEEPROM4のインク情報を随時更新する。このようにしてインク残量(インクの有無)の管理が行われる。そして、EEPROM4に格納されたインク情報は、コントローラ5により接点電極20,20を介してプリンタ本体23側へ出力され、表示部或いはコンピュータからユーザーへと提供される。
【0077】
一方、プリンタ本体23側では、インク滴の吐出液滴カウント数やメンテナンスにより使用されたインク量をソフトウェアにより積算して、インクの消費量を計算する(ステップS3)。その結果が所定時間毎にコンタクトピン群21,21を介してインクカートリッジ7のEEPROM4へと伝送され、該EEPROM4においてインク残量(消費量)の管理が行われる。このように、プリンタ本体23のコンタクトピン群21,21より出力された出力信号に基づいて、EEPROM4のインクに関する情報が随時更新される。そして、EEPROM4に格納されたインク情報は、EEPROM4から接点電極20,20を介してプリンタ本体23側の表示部或いはコンピュータへと出力されてユーザーへ提供される。これによりユーザーは、インクの消費経過を監視したり、インク残量等を確認したりすることができる。
【0078】
印字をスタートしてしばらくすると、例えば、コントローラ5に、プリンタ本体23側からインク残量がゼロとなった計算結果が送られてくる。しかしながら、ステップS4において、検出電極による検出信号がインク有りの信号、つまり、接液電極9,9間が通電状態である場合には、インクタンク6内にインクが残留していることが明らかであるため、この時点ではインクタンク6内のインクが無くなったという判断はなされず、ステップS2に戻って印字データの記録が続行される。
【0079】
その後、インクカートリッジ7側において、ステップS4において、接液電極9,9間で通電しなくなったという信号が検出されると、コントローラ5がその信号に基づいてインクエンドの判定を行い、EEPROM4のインク情報を更新する。一対の接液電極9,9は、それぞれインクタンク6の底面に沿って設けられていることから、接液電極9,9間で通電しなくなったということはインクタンク6内にインクがなくなったことを意味する。これは、吐出液滴カウンタ部において計算で算出されるインク残量よりも確かであるため、コントローラ5では、あくまでもインクに接液している接液電極9,9からの信号を優先して制御する。
【0080】
その理由は、吐出液滴カウンタ部から得られるインク残量と実際にインクタンク6に存在するインクの実量との間で生じる差は、インク滴の重量バラツキや製造時のインク注入量のバラツキに起因して貯留するものであって通常よく起こりうる現象であることから、吐出液滴カウンタ部によるインク残量がゼロになった時点でインクカートリッジ7をインクエンド状態と判断した場合、実際にはインクタンク6内にインクが累積しているにも関わらず、インクカートリッジ7の交換の指示がなされるという問題を避けるためである。
【0081】
接液電極9,9からの信号に基づいてインクエンドの判定を行ったコントローラ5は、インクカートリッジ7の交換を促す信号を接点電極20,20を介してプリンタ本体23側へと出力し、ステップS5に示すように、プリンタ本体23の表示部(不図示)或いはコンピュータを通じてユーザーへと警告する。これによりユーザーは、インクカートリッジ7を交換する適正な時期を知ることができる。そして、ステップS6に示すように、インクエンド状態となったインクカートリッジ7はプリンタ本体23から取り外され、新たなインクカートリッジ7と交換される。
【0082】
ここで、例えば、インクカートリッジ7の接液電極9,9によってインクタンク6内がインクエンド状態であることが判明しているにも関わらず、プリンタ本体23側の吐出液滴カウンタ部によって算出されるインク残量がインク有りとされているとするならば、プリンタ本体23側の異常とみられるため、プリンタ本体23の表示部或いはコンピュータに、異常内容を示すエラーメッセージが表示されるようになっている。
【0083】
また、プリンタ本体23側でインク残量ゼロと算出された時点で、インクカートリッジ7内に残留しているインクの量が、インク滴の重量バラツキから生じるインク残量よりもはるかに多いと判定される場合、通常吐出されるインク滴の量よりも少ない量で吐出されていると考えられるため、例えばインク吐出ヘッドのクリーニング等を促すメッセージを表示部或いはコンピュータに出力させるようにする。
【0084】
このように、プリンタ本体23側のインク情報と、インクカートリッジ7の接液電極9,9によって検出されたインク情報とを、EEPROM4において統合管理を行うことにより、双方を比較することでプリンタ本体23及びインクカートリッジ7における異常が検出される。
【0085】
本実施形態のインクジェット式プリンタ30によれば、インクカートリッジ7とプリンタ本体23とを、コンタクトピン群21,21により接続することとしたため、電気的接点が良好となり、相互間を電気的且つ確実に接続することができる。また、インクカートリッジ7とプリンタ本体23との電気的接点にこれらの接続を安定させる応力を与えるように構成することによって、接続の信頼性が向上する。これは、電波通信によって信号の授受を行う場合に比べて安価で容易な構成で信頼性の高い情報の授受を行うことができると言える。さらに、上記したようなインクの情報を確実に検出、管理することができるため、例えば、インクカートリッジ7の適正な交換時期を決定することができるようになる。そのため、インクを残すことなくインクカートリッジ7を交換することができるので、インクカートリッジ7の交換サイクルが延長されて、ユーザーのインクに掛かるコストダウンを図ることができる。このように、インクの詳細な情報管理を実現することにより、効率的で無駄のないインクカートリッジ7のリサイクルが可能となる。また、例えば、インク充填回数の情報からインクカートリッジ7のリサイクル回数を決定することができるなど、ユーザーだけでなく、リサイクル業者(製造者)側にとっても有益な情報となる。
以上のことから、インクカートリッジ7内のインク情報を簡易な構成で正確かつ確実に検出及び管理することができ、高信頼性、高品質の製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の一例に係るインクジェット式プリンタの概念を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る半導体装置の概略構成を示す断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る半導体装置の外観を示す平面図である。
【図4】半導体装置の他の実施形態における外観を示す平面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る半導体装置の概略構成を示す断面図である。
【図6】インクジェット式プリンタの主要構成を示す斜視図である。
【図7】図6のA−A断面図である。
【図8】インクカートリッジの一変形例を示す平面図である。
【図9】インクジェット式プリンタのシステムを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0087】
1…半導体装置、4…EEPROM(記憶回路)、5…コントローラ(制御回路)、6…インクタンク(収容部)7…インクカートリッジ、8…インクカートリッジ筐体、9,12…接液電極(検出電極)、10…半導体基板、10a…能動素子形成面、11…素子電極、13…記録用紙、14…パッシベーション膜、15…応力緩和層、15’…絶縁体層、16,24…再配置配線(導電層)、17…保護層、18…Auメッキ膜、20…接点電極、21…コンタクトピン群(電気的接点)、22…貫通電極、23…プリンタ本体(電子機器本体)、25…スルーホール、30…インクジェット式プリンタ(電子機器)、31…キャリッジ、32…キャリッジモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報授受用の電気的接点を備えた電子機器本体に用いられるインクカートリッジに設けられ、インクカートリッジ筐体の収容部に収容されるインクの残量を検出する半導体装置であって、
半導体基板に、
前記インクに接液することで該インクの残量を検出する検出電極と、
前記電子機器本体側の前記電気的接点との間で情報の授受を行う接点電極と、
前記半導体基板の厚さ方向を貫通する貫通電極と、を有し、
前記半導体基板の能動素子形成面に設けられた前記検出電極と、
前記能動素子形成面と反対側の裏面に設けられた前記接点電極とが、前記貫通電極を介して電気的に接続されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記半導体基板に、前記インクの残量を記憶する記憶回路と、
前記検出電極、前記接点電極及び前記記憶回路を制御する制御回路と、をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記半導体基板の前記能動素子形成面及び前記裏面のそれぞれにパッシベーション膜を介して形成される導電層と、
該導電層を覆うようにして形成される保護膜と、
該保護膜に形成され且つ前記導電層の少なくとも一部を露出させる開口部と、を備え、
前記開口部から露出する前記導電層の一部を前記検出電極及び前記接点電極とすることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体基板の前記能動素子形成面及び前記裏面のそれぞれに設けられるパッシベーション膜を介して形成される導電層と、
該導電層を覆うようにして形成される保護膜と、
該保護膜に形成され且つ前記導電層の少なくとも一部を露出させる開口部と、を備え、
前記能動素子形成面側において、前記開口部より露出した前記導電層上にバンプを形成し、該バンプを前記検出電極とすることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記検出電極の表面にメッキ層が形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記検出電極の下層側に絶縁体層が形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記接点電極の下層側に応力緩和層が形成されていることを特徴とする請求項1から3に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記接点電極及び前記検出電極が、前記半導体基板上の能動素子を構成する導電材料と同一の導電材料によって、前記能動素子形成面或いは前記裏面上に直接形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記検出電極が、3つ以上形成されていることを特徴とする請求項1から請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
電気的接点を備えた電子機器本体に用いられるインクカートリッジであって、
インクを収容する収容部を有するインクカートリッジ筐体に、インク情報を検出及び管理する液センサの機能を果たす上記請求項1から9に記載の半導体装置を少なくとも一つ有し、該半導体装置の検出電極を前記収容部内に露出させるとともに、前記電子機器本体側の電気的接点とインク情報の授受を行う接点電極を、前記電子機器本体の前記電気的接点側に露出させるようにして設けてなることを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項11】
前記半導体装置の前記検出電極が前記収容部の深さ方向に沿って複数設けられ、前記検出電極が前記収容部の底面に沿うようにして配置されていることを特徴とする請求項10に記載のインクカートリッジ。
【請求項12】
前記半導体装置が前記収容部の深さ方向に沿って複数設けられ、前記複数の半導体装置のうちの少なくとも一つの前記半導体装置の前記検出電極が前記収容部の底面に沿うようにして配置されていることを特徴とする請求項11に記載のインクカートリッジ。
【請求項13】
上記請求項10から12に記載のインクカートリッジと、
電気的接点を備えた電子機器本体と、を備え、
前記インクカートリッジと前記電子機器本体とが前記電気的接点により電気的に接続されることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−237715(P2007−237715A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−67425(P2006−67425)
【出願日】平成18年3月13日(2006.3.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】