説明

半導体装置、半導体装置のノイズ除去方法

【課題】より確実にノイズ除去のできるノイズ除去回路を搭載する半導体装置、ノイズ除去方法を提供する。
【解決手段】半導体装置は、ノイズ検知回路(21)と、入力信号遅延回路(22)と、マスク回路(23)とを具備する。ノイズ検知回路(21)は、入力信号(RESETB)に重畳するノイズを検知して、所定時間のマスク信号(NE_FLG)を出力する。入力信号遅延回路(22)は、入力信号(RESETB)を遅延させて遅延信号(RES_DLY)を出力する。マスク回路(23)は、マスク信号(NE_FLG)に基づいて、前記遅延信号(RES_DLY)をマスクした出力信号(RESB)を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、その半導体装置のノイズ除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人体やその他の帯電した物体からの静電気放電(ESD:ElectroStatic Discharge)によって電子機器が誤動作を起こすことはよく知られている。電子機器の高機能化に伴いESDに対するイミュニティの重要性は高まっている。国際電気標準会議(IEC)では、ESDに対するイミュニティ試験がIEC61000−4−2として規定されている。携帯電話機等においても本体や表示パネルモジュールに対し、試験器(ESDガン)を用いたイミュニティ試験が実施される。筐体の導電性の部分に対しては接触放電試験が行われ、非導電性の部分に対しては気中放電試験が行われる。その判定基準は、放電の瞬間にディスプレイ(表示パネル)に表示される画像が乱れても、その直後に正常な表示に復帰することである。このため、表示パネルに実装される表示用ドライバIC(Integrated Circuit)は、ESD破壊試験によってサージ破壊しないという耐性に加えて、動作中に誤動作しないという耐性も求められるようになった。
【0003】
携帯電話器機等の表示用ドライバICは、フリップフロップ等を含む順序回路と、論理和回路、論理積回路等を含む組み合わせ回路とを備える表示制御回路を有する。順序回路は、CPU(Central Processing Unit)から受信した命令や表示ドライバIC内部の時系列的に変化する状態等を2値の論理情報として保持している。一般的に、表示用ドライバICは、システム起動時に内部状態を安定させるために、入力端子から非同期に供給されるリセット信号によって初期化される。すなわち、内部の順序回路は、初期化されて常に同じ状態から動作を開始する。初期化後、CPUから動作条件などの情報が設定され、表示動作が開始される。
【0004】
表示用ドライバICが装置に実装されると、信号配線が表示パネルに長く引き出される。そのため、表示用ドライバICの端子は、静電気放電(ESD)を受けやすい環境にある。特に、リセット信号が妨害されると、上述のように内部順序回路の保持情報が初期化される。しかし、その後の動作条件の設定等が行われないため、表示用ドライバICは、表示異常を起こし自己回復できなくなる。したがって、リセット信号には、静電気放電(ESD)により強力なノイズ除去回路が必要となる。
【0005】
短いパルス状のノイズの除去には、例えば、特開平6−132791号公報に記載されているように、コンデンサと抵抗器とを組み合わせた積分回路や遅延回路と論理積回路とを組み合わせた回路が使われる。積分回路によってノイズを除去する技術は、IC外部から混入するノイズの除去回路として一般的に用いられている。また、遅延回路と論理積回路を組み合わせた回路は、デジタル回路のハザード対策の回路としてよく用いられる。
【0006】
静電気放電対策には、前者の積分回路が使われることが多いが、耐力を上げるためには、コンデンサの容量と抵抗器の抵抗を大きくするとよい。しかし、表示用ドライバICの内部に搭載可能な抵抗器およびコンデンサのサイズには限界があり、それほど大きな容量や抵抗を有する積分回路の実装は難しい。また、連続的なノイズが入力されると、積分回路は飽和することもある。すなわち、フィルタの機能が低下し、ノイズを除去しきれないこともある。
【0007】
また、ノイズは、筐体や表示パネルから接合部等を介して表示用ドライバICに回り込む。そのため、表示装置の設計によってノイズのピーク電圧、周波数、減衰振動等が大きく異なり、ノイズ波形は一様ではなく、予測が困難である。
【0008】
特開2002−217695号公報には、外部から入力端子に入力されたデータ信号に付加されるノイズを除去するノイズ除去回路に関する技術が記載されている。そのノイズ除去回路は、ノイズ除去レベル変更部と、制御部とを備える。ノイズ除去レベル変更部は、入力端子に対するノイズの除去レベルを設定変更する。その設定変更されるノイズの除去レベルは、データ信号に対するヒステリシス特性を有し、その特性が変更される。制御部は、ノイズ除去レベル変更部に対してノイズの除去レベルを変更制御する。
【0009】
また、特開昭60−137121号公報には、チャタリング防止回路が開示されている。チャタリング防止回路は、スイッチと、パルス発生回路と、遅延回路と、AND回路とを備える。パルス発生回路は、スイッチに接続されパルスの立ち上り部を検出して所定時間の幅を持つパルスを発生する。遅延回路は、パルス発生回路が接続されたスイッチの端子に接続されスイッチング信号を遅延させる。AND回路は、パルス発生回路および遅延回路の両出力のANDをとる。チャタリング防止回路は、スイッチのチャタリングによって発生されたチャタリング発生時間よりも長い幅を持つパルスによってチャタリングパルスをマスクする。
【0010】
さらに、特開平01−305719号公報には、雑音が重畳した入力パルス信号を受け、入力パルス信号の振幅が設定しきい値よりも大きい場合にはそれを信号として検出する信号検出装置に関する技術が記載されている。信号検出装置は、第1および第2のしきい値発生回路と、第1および第2の振幅比較回路と、時間比弁別回路とを備える。第1および第2のしきい値発生回路は、第1と第2のしきい値の比が一定かつ第2のしきい値の振幅が大となるように設定した第1および第2のしきい値を発生する。第1および第2の振幅比較回路は、第1および第2のしきい値をそれぞれ入力し、これらしきい値と入力パルス信号とを振幅比較して検出した量子化パルス信号を出力する。時間比弁別回路は、第1の振幅比較回路の出力する量子化パルスを入力し、この量子化パルス信号が所定の一定時間内でパルスとして検出された期間の和と検出されなかった期間の和との時間比を算出する。その上で、時間比弁別回路は、この時間比が所定の一定値以上もしくは以下となるのに対応して前記時間比を低減もしくは増大せしめるように第1のしきい値を増大もしくは低減する。そして、時間比弁別回路は、その振幅を常時入力パルス信号に重畳する雑音の振幅近傍とするように第1のしきい値発生回路を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平06−132791号公報
【特許文献2】特開2002−217695号公報
【特許文献3】特開昭60−137121号公報
【特許文献4】特開平01−305719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、より確実にノイズ除去のできるノイズ除去回路を搭載する半導体装置、ノイズ除去方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以下に、[発明を実施するための形態]で使用される番号・符号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号・符号は、[特許請求の範囲]の記載と[発明を実施するための形態]との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号・符号を、[特許請求の範囲]に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0014】
本発明の観点では、半導体装置は、ノイズ検知回路(21)と、入力信号遅延回路(22)と、マスク回路(23)とを具備する。ノイズ検知回路(21)は、入力信号(RESETB)に重畳するノイズを検知して、所定時間のマスク信号(NE_FLG)を出力する。入力信号遅延回路(22)は、入力信号(RESETB)を遅延させて遅延信号(RES_DLY)を出力する。マスク回路(23)は、マスク信号(NE_FLG)に基づいて、前記遅延信号(RES_DLY)をマスクした出力信号(RESB)を出力する。
【0015】
本発明の他の観点では、半導体装置のノイズ除去方法は、入力信号に重畳するノイズを少なくとも1箇所で検知するステップと、入力信号を遅延させるステップと、ノイズを検知したとき、入力信号を遅延させた遅延信号をマスクするステップとを具備する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、より確実にノイズ除去のできるノイズ除去回路を搭載する半導体装置、ノイズ除去方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係る表示装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る制御回路の構成を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る表示制御回路の構成を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る表示用ドライバのコマンド例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る表示制御回路の動作を説明する図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るノイズ検知回路の構成を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態に係るノイズ除去回路の動作を説明する図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る複数のノイズ検知回路を備えるノイズ除去回路の構成を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態に係るノイズ検知回路の配置例を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る複数のノイズ検知回路を備えるノイズ除去回路の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態に係る表示装置の構成を示すブロック図である。表示装置は、画像を表示する表示パネル10と、表示パネル10を駆動する表示用ドライバ11とを具備する。本発明の適用は、表示用ドライバに限られることはないが、ここでは、半導体装置として、表示用ドライバを例示する。
【0020】
表示用ドライバ11は、階調電源15、制御回路16、ゲートドライバ(走査電極駆動回路)17、ソースドライバ(データ電極駆動回路)18を具備し、表示パネル10を駆動する。表示パネル10は、例えば、薄膜トランジスタ(TFT)をスイッチ素子に用いたアクティブマトリクス駆動方式の液晶パネルである。
【0021】
制御回路16は、外部からドットクロック信号、水平同期信号および垂直同期信号、データイネーブル信号等が供給される(図示せず)。制御回路2は、これらの入力信号に基づいて、ストローブ信号、クロック信号、水平走査パルス信号、極性信号、垂直走査パルス信号等を生成し、ゲートドライバ17及びソースドライバ18に供給する。また、制御回路16は、外部から動作を指示するコマンドを受信してコマンドに指示された動作を行い、リセット信号を受けて表示ドライバ11を初期化する。
【0022】
ゲートドライバ17は、制御回路16から供給される垂直走査パルス信号のタイミングに同期してゲートパルスを順次生成し、表示パネル10に供給する。階調電源15は、表示パネル10に画像を表示するときの階調を設定する電圧を生成してソースドライバ18に供給する。ソースドライバ18は、画像データに基づいて、供給される階調電圧を使ってデジタル信号で入力される画像データをアナログ信号に変換して表示パネル10に供給する。
【0023】
このように、表示用ドライバ11において、制御回路16は、外部と信号を入出力する最もESDを受けやすい回路である。制御回路16は、図2に示されるように、表示制御回路30と、ノイズ除去回路20と、CRノイズ除去回路28とを備える。表示制御回路30は、制御回路16の本体部分で、各種制御を行う論理回路を有する。CRノイズ除去回路28は、抵抗器とコンデンサとを備える積分回路であり、表示用ドライバ11に入力されるリセット信号RESETBに重畳する軽微なノイズを取り除く。CRノイズ除去回路28は、省略されてもよい。
【0024】
ノイズ除去回路20は、ノイズ検知回路21、遅延回路22、負論理AND回路23を備える。ノイズ検知回路21は、クロック信号DOTCLKとリセット信号RESETBとを取り込み、マスク信号NG_FLGを負論理AND回路23に出力する。信号RESETBは、CRノイズ除去回路28を介してノイズ検知回路21に入力してもよいし、介さずに入力してもよい。ノイズ検知回路21は、ノイズを検出すると、その出力NG_FLGをハイレベルにする。遅延回路22は、リセット信号RESETBを遅延させたリセット信号RES_DLYを負論理AND回路23に出力する。負論理AND回路23は、マスク信号NG_FLGと遅延リセット信号RES_DLYとが両方ともローレベルのとき、出力であるリセット信号RESBをローレベルにする。したがって、ノイズ検知回路21がノイズを検知してマスク信号NG_FLGをハイレベルにしている間、表示制御回路30に入力されるリセット信号RESBはハイレベルに固定される。すなわち、ノイズ検知回路21がノイズを検知すると、遅延リセット信号RES_DLYは、マスク信号NG_FLGによってマスクされることになり、ノイズが除去されたリセット信号RESBが生成される。ここで、リセット信号RESETB、マスク信号NG_FLG、および、遅延リセット信号RES_DLYは、負論理信号であり、ローレベルレベルのときに信号がアクティブであることを示す。そのため、回路23は、負論理で表現されており、正論理のOR回路と同等である。
【0025】
図3に、表示制御回路30の構成が示される。表示制御回路30は、シリアルパラレル変換回路31、アドレスデコーダ32、コマンドレジスタ33、シンクロナイザ34を備え、ホスト装置から送られるコマンドを受信し、解析して制御信号を各部へ出力する。シリアルパラレル変換回路31は、チップセレクト信号CSに基づいて、シリアルデータ信号SI(チップへの入力時は、信号SD)をシリアルクロック信号SCK(同じく信号SCLK)に同期して入力する。シリアルパラレル変換回路31は、シリアルデータをパラレルのアドレス信号AD0〜AD2に変換してアドレスデコーダ32へ出力し、データ信号DATAをコマンドレジスタ33へ出力する。
【0026】
アドレスデコーダ32は、3ビットのアドレス信号AD0〜AD2をデコードして、それぞれのアドレスに対応してアクティブになる信号ADD1〜ADD7をコマンドレジスタ33に出力する。コマンドレジスタ33は、信号ADD1〜ADD7とデータ信号DATAとに基づいて、コマンドデータを保持し、コマンドに対応する信号REG2〜REG7をシンクロナイザ34に出力する。シンクロナイザ34は、クロック信号DCK(同じく信号DOTCLK)に基づいて信号REG2〜REG7の同期をとってコマンド信号として各部に供給する。コマンドレジスタ33、シンクロナイザ34は、リセット信号RESBによってリセットされる。
【0027】
ここでは、コマンドは、図4に示されるように、7種類ある。アドレスに対応して、コマンドリセット(CRES)、表示オン(DISPON)、表示左右反転(RL)、表示上下反転(UD)、表示白黒反転(REV)、表示全面白(WH)、表示全面黒(BL)が割り当てられる。初期値は、全て“0”であり、リセット信号RESBが入力されると、この初期値がセットされる。例えば、DISPON=1は表示開始を指示し、DISPON=0は表示停止を指示する。したがって、リセットによって表示は停止される。
【0028】
図5に、表示制御回路30の動作が示される。図5(a)に示されるように、動作に先立ってリセット信号RESETBがハイレベルになり、リセットが解除される。チップセレクト信号CSによってコマンド入力のタイミングが示される(図5(b))。クロック信号SCLK(表示制御回路30内では信号SCK)の立ち上がりに同期して(図5(c))、データ信号SD(表示制御回路30内では信号SI)が取り込まれる。図5(e)は、パラレル変換されたアドレス信号AD0〜AD2を示し、図5(f)は、それをデコードした信号ADD1〜ADD7を示す。図5(g)は、クロック信号SCLKの4回目の立ち上がりで取り込まれる信号DATAを示す。信号ADD1〜ADD7で示されるコマンドレジスタ33の位置にデータ信号DATAで示される値が反映される。ここでは、チップセレクト信号CSの1つ目は、AD[2:0]=6h(110)が入力されて、ADD6が“1”となり、DATA=1であるので、REG6が“1”に変わる(図5(j))。2つ目は、AD[2:0]=7h(111)が入力されて、ADD7が“1”となり、DATA=1であるので、REG7が“1”に変わる(図5(k))。3つ目は、AD[2:0]=2h(010)が入力されて、ADD2が“1”となり、DATA=0であるので、REG2が“0”に変わる(図5(i))。コマンドレジスタ33にセットされたデータは、クロック信号DOTCLK(図5(l):表示制御回路30内では信号DCK)の立ち上がりに同期して、それぞれ対応する信号WH(図5(n))、信号BL(図5(o))、信号DISPON(図5(m))として各部へ供給される。
【0029】
図6に、ノイズ検知回路21の構成が示される。ノイズ検知回路21は、ノイズに敏感に反応するように設計されたDタイプのフリップフロップ40と、通常のDタイプのフリップフロップ42〜46と、EXOR回路61と、NOT回路62〜63と、RSフリップフロップ50とを備える。RSフリップフロップ50は、ここでは、2つのNAND回路51〜52と、NOT回路53とを備える。
【0030】
フリップフロップ40、42は、共にNOT回路63の出力をクロック信号DOTCLKの立ち上がりに基づいて取り込み、リセット信号RESETBによって非同期にリセットされる。フリップフロップ40、42の出力Q40、Q42は、EXOR回路61に入力される。フリップフロップ42の出力Q42は、RSフリップフロップ50にも入力される。EXOR回路61の出力EOR61は、縦続接続されるフリップフロップ43〜46に入力され、クロック信号DOTCLKに基づいて順に後段のフリップフロップに送られる。フリップフロップ46の出力Q46は、NOT回路63を介してフリップフロップ40、42に入力される。ここでは、縦続接続されるフリップフロップは4段であるが、この段数によってノイズ検知回路21のマスク時間が設定されるため、マスク時間に応じた段数を備えることが好ましい。
【0031】
EXOR回路61の出力EOR61は、NOT回路62にも入力され、NOT回路62で論理が反転されてRSフリップフロップ50に入力される。RSフリップフロップ50は、NOT回路62で反転されたEXOR回路61の出力によりセットされ、フリップフロップ42の出力Q42によってリセットされる。EXOR回路61は、フリップフロップ40の出力Q40とフリップフロップ42の出力Q42とが一致しているか否かを示す。したがって、RSフリップフロップ50は、フリップフロップ40の出力とフリップフロップ42の出力とが不一致になるとセットされる。また、フリップフロップ42がリセット状態になると、RSフリップフロップ50はリセットされる。RSフリップフロップ50の出力は、マスク信号NG_FLGとして負論理AND回路23に供給される。
【0032】
通常、フリップフロップ40の出力とフリップフロップ42の出力とは一致するため、EXOR回路61の出力EOR61は、ローレベルであり、NOT回路63によって反転されたハイレベルがフリップフロップ40、フリップフロップ42に入力される。すなわち、フリップフロップ40、フリップフロップ42は、セット状態を保持する。リセット信号RESETBによってリセットされると、フリップフロップ40、フリップフロップ42は、そのリセットが終了し、さらにクロック信号DOTCLKが立ち上がるまで、リセット状態を保持する。なお、リセット状態であっても、フリップフロップ40、42の出力は一致しているため、EXOR回路61の出力はローレベルである。
【0033】
不一致となった場合、不一致を示す信号は、フリップフロップ43〜46によって遅延され、フリップフロップ40、42をリセット状態にする。これによって、RSフリップフロップ50がリセットされるため、フリップフロップ43〜46は、RSフリップフロップ50がリセットされるまでの時間、すなわちマスク期間を決めることになる。
【0034】
フリップフロップ40、42は、非同期リセット入力を有し、リセット信号RESETによってリセットされる。また、フリップフロップ40、42は、共にNOT回路63の出力をクロック信号DOTCLKに基づいて取り込み、EXOR回路61に出力する。したがって、フリップフロップ40、42は、通常同じ動作を行う。ノイズに対してフリップフロップ40が敏感に反応するため、フリップフロップ42が反応する前にリセット信号RESETBに重畳するノイズに反応してリセット状態になる。このとき、フリップフロップ40とフリップフロップ42とは不一致状態になり、EXOR回路61はハイレベルを出力し、RSフリップフロップ50をセット状態にする。正規のリセット信号が入力されたときは、EXOR回路61の出力がローレベルであり、フリップフロップ42の出力Q42がローレベルとなるため、RSフリップフロップ50はリセットされる。このとき、フリップフロップ40が先に反応して一旦不一致状態になっても、フリップフロップ42の出力Q42がローレベルとなることによって、RSフリップフロップ50はリセットされる。
【0035】
遅延回路22で遅延させる時間は、少なくともノイズを検知してRSフリップフロップ50からマスク信号NG_FLGが出力されるまでの時間があればよい。ここでは、表示用ドライバ11は、同期型の回路であり、最短周期のクロック信号がクロック信号DOTCLKであるため、遅延回路22は、リセット信号RESETBにクロック信号DOTCLKの1周期分の遅延を与えて遅延リセット信号RES_DLYを出力する。
【0036】
図7に、上述のノイズ除去回路20を備える制御回路16の動作が示される。
【0037】
リセット信号RESETBは、表示用ドライバ11のシステム初期化信号であり、ローレベルのときに表示制御回路30およびノイズ検知回路21に含まれるフリップフロップは、初期値を設定する。フリップフロップ43〜46もリセット信号によってリセットされてもよいが、図示されるように、フリップフロップ43〜46にはリセット信号が入力されていない。フリップフロップ43〜46のようなリセット信号によってリセットされないフリップフロップは、リセット信号RESETBがローレベルである期間にクロック信号DOTCLKを入力することにより初期化される。
【0038】
図7(a)に示されるように、リセット信号RESETBがリセット解除を示し、動作が開始される。リセットが解除された後、図7(c)に示されるように、クロック信号DOTCLKの立ち上がりに同期して、フリップフロップ40およびフリップフロップ42は、セット状態になる(図7(d)(e))。RSフリップフロップ50の出力であるマスク信号NG_FLGは、図7(l)に示されるように、ローレベル(ノイズ検出なし)を示すため、遅延リセット信号RES_DLY(図7(b))が負論理AND回路23を介してそのままリセット信号RESB(図7(m))として出力される。このときリセット信号RESBはリセット解除を示し、表示制御回路30は通常の動作を開始する。
【0039】
ここでは、表示開始を示す表示オンコマンドがホストから送られ、表示制御回路30は、図7(n)に示されるように、信号DISPONをハイレベルにする。信号DISPONがハイレベルになると、表示が開始される。
【0040】
その後、表示中にサージによってノイズがリセット信号RESETBに加わり、フリップフロップ40が反応して出力Q40をローレベルにする。一時的なサージであるため、フリップフロップ40は、クロック信号DOTCLKの立ち上がりに同期して元の状態に復帰する(図7(d))。一方、フリップフロップ42はノイズに反応せず、その出力Q42は、フリップフロップ40の出力40と不一致になる。したがって、EXOR回路61の出力EOR61は、一時的にハイレベルとなり(図7(f))、RSフリップフロップ50をセットし、出力NG_FLGをハイレベルにする(図7(l))。ここからマスク期間が始まる。
【0041】
フリップフロップ43〜46は、クロック信号DOTCLKに同期して出力EOR61のハイレベル状態を順に伝達する(図7(g)〜(j))。フリップフロップ46の出力Q46は、NOT回路63によって論理反転され(図7(k))、クロック信号DOTCLKの立ち上がりでフリップフロップ40、42に取り込まれる(図7(d)(e))。フリップフロップ42の出力Q42がローレベルになると、RSフリップフロップ50がリセットされ、出力NG_FLGはローレベルになる(図7(l))。ここでマスク期間が終わる。
【0042】
このマスク期間では、遅延リセット信号RES_DLY(図7(b))は、マスク信号NG_FLGによってマスクされるため、遅延リセット信号RES_DLYにサージによるノイズが重畳していても、リセット信号RESBには影響しない(図7(m))。したがって、信号DISPONは、サージの影響を受けずに、状態を維持する(図7(n))。
【0043】
連続するサージを受けたとき、フリップフロップ40の出力Q40がローレベルを示す時間が長くなり(図7(d))、EXOR回路61の出力EOR61が不一致を示す時間が長くなる(図7(f))。以降は、単発のサージのときと同じように動作する。不一致状態をシフトするフリップフロップの段数やクロック信号DOTCLKの周期により、連続するノイズの除去幅(マスク期間)を調整することができる。
【0044】
なお、図7右側に示されるように、有効なリセット信号RESETBの入力に対して、フリップフロップ40とフリップフロップ42との反応時間にずれがあっても、フリップフロップ42がリセットされると、それによってマスク信号NG_FLGもリセットされ、リセット信号RESBに影響はない。したがって、上記では、フリップフロップ40、フリップフロップ42は共に非同期リセットタイプとして説明したが、一般的に同期リセットタイプのフリップフロップのほうが非同期ノイズに強く、フリップフロップ42は、同期リセットタイプでもよい。
【0045】
上記では、ノイズ検知回路21は1回路として説明したが、入力経路が不明なノイズに対応するため、複数のノイズ検知回路21を備えてもよい。図8に、複数のノイズ検知回路211〜21nを備えるノイズ除去回路200の構成を示す。複数のノイズ検知回路211〜21nから出力されるマスク信号NG_FLG−1〜NG_FLG−nは、そのいずれか1つでもノイズ検出を示すと、負論理AND回路230により遅延リセット信号RES_DLYをマスクする。
【0046】
表示用ドライバ11のチップ上のノイズを受けやすい箇所に複数のノイズ検知回路211〜21nを分散させて配置することができる。外部に直接信号線が引き出されるリセット信号端子や電源端子、チップの周辺は、ノイズを受け易い。したがって、図9に示されるように、リセット端子72の近傍、電源端子71の近傍、チップの周辺部分に、ノイズ検知回路(ND)211〜216を配置し、リセット端子72近傍に遅延回路22、負論理AND回路230を含む除去回路209を配置して、ノイズ除去の効果を向上することができる。
【0047】
図10に示されるように、短いサージによるノイズは、ノイズ検知回路211、215が検知してマスク信号NG_FLG1、NG_FLG5をハイレベルにし、連続的なサージによるノイズは、ノイズ検知回路211、213が検知してマスク信号NG_FLG1、NG_FLG3をハイレベルにする。いずれの状態でも遅延リセット信号RES_DLYはマスクされ、リセット信号RESBに影響を与えることはない。
【0048】
上記では、フリップフロップ40は、ノイズに敏感に反応するとしたが、このようなフリップフロップは、一般的な技術で実現できる。例えば、トランジスタサイズを小さくしても実現できる。電源配線に若干の抵抗を持たせ電源供給を制限してもよい。NチャネルトランジスタとPチャネルトランジスタとのバランスを崩しても実現できる。その他の方法でもよく、これらを組み合わせても実現できる。
【0049】
ノイズ検知回路21において、フリップフロップ40とフリップフロップ42とには、リセット信号RESETBが共通に入力されていたが、フリップフロップ40のリセット入力ノードには、CRノイズ除去回路28を経由せずにリセット信号RESETBが入力されてもよい。また、フリップフロップ42のリセット入力ノードには、より強力なCRノイズ除去回路を介してリセット信号RESETBが入力されてもよい。さらに、リセット信号RESETBは、フリップフロップ40には非同期リセット入力ノードに、フリップフロップ42には同期データ入力ノードあるいは同期リセット入力ノードに入力されてもよい。この場合、有効なリセット信号を受けたときに、出力は一旦不一致になるが、その後同期信号によって両方のフリップフロップとも同じリセット状態になるので、効果は変わらない。
【0050】
上記実施の形態では、リセット信号に対するノイズ除去を例示したが、他の信号に適用することもできる。対象となる信号は、遅延回路22によって遅れるため、タイミングが重要な信号には適用できないが、リセット信号のように、レベルによって伝達する信号であれば、適用可能である。
【0051】
このように、本発明では、ノイズ検知回路によって保護対象回路より先にノイズを検知し、ノイズ成分がマスクされる。これにより、ESDによるノイズが除去される。これまでは、フリップフロップ等をリセットする非同期リセット信号に重畳するノイズを直接的に除去することにより、誤動作を回避する方法がとられていたが、完全に除去できずに誤動作することがあった。本発明では、保護対象回路より先にノイズを検知して、保護対象回路へのノイズが重畳した信号をマスクすることができる。したがって、イミュニティ耐性が向上し、信頼性が高まる。また、イミュニティ試験耐量が向上し、耐量不足のために再設計するロスコストを削減することができる。
【符号の説明】
【0052】
10 表示パネル
11 表示用ドライバ
15 階調電源
16 制御回路
17 ゲートドライバ
18 ソースドライバ
20、200 ノイズ除去回路
21、211〜21n ノイズ検知回路
22 遅延回路
23、230 負論理AND回路
28 CRノイズ除去回路(あってもなくてもよい)
30 表示制御回路
31 シリアルパラレル変換回路
32 アドレスデコーダ
33 コマンドレジスタ
34 シンクロナイザ
40、42〜46 フリップフロップ
50 RSフリップフロップ
51、52 NAND回路
53、62、63 NOT回路
61 EXOR回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号に重畳するノイズを検知して、所定時間のマスク信号を出力するノイズ検知回路と、
前記入力信号を遅延させて遅延信号を出力する入力信号遅延回路と、
前記マスク信号に基づいて、前記遅延信号をマスクした出力信号を出力するマスク回路と
を具備する半導体装置。
【請求項2】
前記ノイズ検知回路は、
前記ノイズまたは前記入力信号に応答してリセットされる第1フリップフロップと、
前記入力信号に応答してリセットされる第2フリップフロップと、
前記第1フリップフロップの出力と前記第2フリップフロップの出力とが一致するか否かを判定し、不一致を示す不一致信号を出力する一致判定回路と、
前記不一致信号を前記所定時間遅延させる不一致信号遅延回路と、
前記不一致信号に応答してセットされ、前記第2フリップフロップがリセット状態になるとリセットされる第3フリップフロップと
を備える
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1フリップフロップおよび前記第2フリップフロップは、前記入力信号に応答して非同期にリセット状態になる
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1フリップフロップは、前記入力信号に応答して非同期にリセット状態になり、
前記第2フリップフロップは、クロック信号に同期し、前記入力信号に応答してリセット状態になる
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2フリップフロップおよび遅延回路は積分回路を介して前記入力信号を入力する
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項6】
さらに、前記第1フリップフロップは、前記積分回路を介して前記入力信号を入力する
請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1フリップフロップは、前記第2フリップフロップより耐ノイズ性能が低く設定されている
請求項1から請求項6のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1フリップフロップに含まれるトランジスタのサイズは、前記第2フリップフロップに含まれるトランジスタより小さい
請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第1フリップフロップに供給される電源電圧は、前記第2フリップフロップに供給される電源電圧より低い
請求項7に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第1フリップフロップに含まれるトランジスタの閾値電圧は、前記第2フリップフロップに含まれるトランジスタの閾値電圧より低い
請求項7に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記入力信号が入力される入力端子近傍に前記ノイズ検知回路を搭載する
請求項1から請求項10のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項12】
電源を供給する電源供給端子近傍に前記ノイズ検知回路を搭載する
請求項1から請求項11のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項13】
前記ノイズ検知回路を複数備え、
前記複数のノイズ検知回路は、前記半導体装置の周辺部に分散して配置される
請求項1から請求項12のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項14】
前記入力信号は、遅延を許容する電圧レベルによって情報を伝達するレベル信号である
請求項1から請求項13のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項15】
前記レベル信号は、非同期に初期設定するリセット信号である
請求項14に記載の半導体装置。
【請求項16】
入力信号に重畳するノイズを少なくとも1箇所で検知するステップと、
前記入力信号を遅延させるステップと、
前記ノイズを検知したとき、前記入力信号を遅延させた遅延信号をマスクするステップと
を具備する半導体装置のノイズ除去方法。
【請求項17】
前記検知するステップは、
前記入力信号に基づいて第1フリップフロップをリセット状態にするステップと、
前記入力信号に基づいて第2フリップフロップをリセット状態にするステップと、
前記第1フリップフロップの出力と前記第2フリップフロップの出力との不一致を判定するステップと、
前記不一致と判定されたときに、所定時間経過後に前記第1フリップフロップおよび前記第2フリップフロップをリセット状態にするステップと、
前記前記不一致と判定されたときに、第3フリップフロップをセット状態にしてマスク信号を出力するステップと、
前記第2フリップフロップがリセット状態になったときに前記第3フリップフロップをリセット状態にして前記マスク信号を解除するステップと
を含み、
前記マスクするステップは、前記マスク信号に基づいて前記遅延信号をマスクするステップを含む
請求項16に記載の半導体装置のノイズ除去方法。
【請求項18】
前記第1フリップフロップの耐ノイズ性能を前記第2フリップフロップの耐ノイズ性能より低く設定するステップを具備する
請求項17に記載の半導体装置のノイズ除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−14963(P2011−14963A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154589(P2009−154589)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】