説明

半導体装置、半導体装置製造装置、半導体装置製造方法及びICタグ

【課題】ICチップの小型化に伴い、ICタグの組立てに必要な位置決め精度が高くなってきている。そこで、被搬送物のサイズに比して、位置決め精度を緩和できる半導体搭載基板の表面構造と配置及び当該構造や配置を利用した製造技術を提供する。
【解決手段】半導体基板より大きいサイズに生成された液滴を半導体搭載基板上に付着し、当該液滴上に半導体基板を付着させることにより半導体装置を製造する。液滴に付着された半導体基板は、液滴の蒸発と共に親水領域に誘導され、自己整合的に位置決めされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICタグや半導体装置を低コストで作製するための組み立て技術に関する。例えば極小かつ極薄のICチップを実装するICタグや半導体装置の製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、ICチップのデータを非接触で読み書きできる半導体装置(いわゆるICタグ)が広まっている。通常、ICチップとの間の通信には、例えば誘導電磁界や電波が用いられる。ICタグは物品に取り付けられた状態で使用される。ICタグは、製造・物流管理、各種チケット、病院カルテ管理など多方面での利用が期待される。ICタグは、バーコードと比べると、物品移動中の認識性能、遠隔読み取り、複数同時読み取り、ネットワークリンク、複製困難さ等の点で優ると期待されている。
【0003】
現在、ICタグの利用は、リユースが中心である。しかし、今後は、使い捨て用途へのICタグの展開が期待される。例えば安価で極薄のICタグを紙に埋め込み、有価証券その他の紙媒体の管理や偽造防止に利用することが期待されている。なお、使い捨て用途へのICタグの普及には、更なる低コスト化技術の開発が重要であると言われている。
【0004】
低コスト化技術の一つはICチップの小型化である。ICチップを小型化すると、1枚の半導体ウェハから取得できるICチップの枚数が増加する。このため、材料コストの低減に有効である。これまでに、50μm角、厚さ5μmという極小・極薄のICチップが開発されている(非特許文献1)。
【0005】
ところが、ICチップの小型化に伴い、ICタグの組み立て工程に必要とされる位置決め精度が非常に高くなってきている。このため、ICチップのハンドリング技術に関する新たな技術開発が必要となってきている。従来、ICチップのハンドリングには、ピック&プレースという手法が用いられてきた。
【0006】
この手法は、以下の3つの工程でなる。まず、タック性を有する支持シート上のウェハをダイシング処理する。次に、ダイシング前のウェハ形状に配置されたままのICチップを突き上げピンで1個ずつ持ち上げる。最後に、ロボットにより位置制御される真空ピンセットでICチップをピックアップして搬送する。
【0007】
しかし、ICチップの小型化に伴い、様々な課題が生じている。例えば突き上げピンによるICチップの損傷のおそれが指摘されている。また、位置決め精度が高いロボットを使用することに伴う組立コストの増大が指摘されている。それに伴い、タック性制御や隣り合うチップの間隔を広げるエキスパンド機能を有する支持シート材の開発も行われている(非特許文献2)。
【0008】
ところが、上述した50μm角、厚さ5μmなるサイズに代表される極めて小さい半導体チップをドライ環境で扱う場合、静電気力やファンデルワールス力によるチップの飛散と吸着が起こる。これらの現象は、チップの損傷を引き起こす。このため、重力よりも静電気力やファンデルワールス力が支配的になる100μm以下の物体をドライ環境でハンドリングすることは困難である。
【0009】
以上の課題を解決する方法として、ウェット環境下でのハンドリング、すなわち溶液を用いた流体制御によるICチップのハンドリング法が幾つか考案されている(非特許文献3、特許文献1、2)。
【0010】
非特許文献3には、台形状に切り出したICチップを、その収納領域である基板上のくぼみに、溶液のフローを用いて搬送する方法が示されている。なお、収納領域近辺に搬送されたICチップは、重力とファンデルワールス力、さらに表面の相互作用により基板上のくぼみに嵌め込まれる。
【0011】
特許文献1には、自己組織化機能を用いてICチップをプレースする際、親水力と疎水力を用いて半導体チップの方向を調整する方法が示されている。
【0012】
特許文献2には、特殊な溶液中にICチップを保持し、あたかも微粒子が入った試薬のように取り扱うチップハンドリング技術が示されている。この技術は、数10μm以上のサイズのICチップに対して適用することができる。なお、この技術では、溶液中に分散されたICチップを該溶液とともにICチップ保持ノズルで吸引し、ICチップ保持ノズルの先端にICチップを1枚だけ捕捉する。この後、捕捉されたICチップを搭載領域まで搬送する。その状態で、ICチップ保持ノズルの先端に圧力を加え、搭載領域にICチップをリリースする。または、粘着性を有する搭載領域に捕捉されたICチップを搬送し、搭載領域の粘着性を利用してリリースする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008-258390号公報
【特許文献2】国際公開第2006/077739号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】ISSCC Dig. Tech. Papers.、 482−483 (2007).
【非特許文献2】Proc. MANTECH Conference、 Austin TX、 33-36 (2007).
【非特許文献3】IEEE Photons. Technol. Lett.、6 706-708 (1994).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところが、ICチップ保持ノズルを使用するICタグの製造技術では、半導体搭載基板上にICチップを正確に位置決めする必要がある。そこで、従来手法の場合には、両面電極構造のICチップを利用して、ICチップの反転や角度ずれに対する許容度を高めている。しかし、位置決め精度は、半導体搭載基板に対して高さ方向にも要求される。例えばICチップ保持ノズルの高さ方向の位置決めに少しでもずれがあると、半導体搭載基板にICチップが押し付けられることになる。この際、押し付け力が過大であると、ICチップに機械的損傷が発生する可能性がある。そこで、半導体搭載基板から高さ方向に離れた位置からICチップを吹き落とす手法を採用することがある。しかし、吹き落とす位置が半導体搭載基板から離れすぎると、搭載位置の許容範囲内にICチップを搭載できない可能性がある。さらに、ICチップが極薄の場合には、半導体搭載基板面に押し付けられる際に、ICチップにクラックや割れを発生させることがあり、ICタグの製造歩留まりを低下させてしまう。
【0016】
本発明は、上述した課題を解決する手段と方法を提供することを目的とする。特に、被搬送物である物体のサイズに比して位置決め精度を緩和できる半導体搭載基板の表面構造と配置、当該構造や配置を利用した製造技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明においては、半導体搭載基板上に、半導体基板を搭載する第1の表面エリアと、当該第1の表面エリアの周辺に配置され、第1の表面エリアより臨界表面張力が小さい第2の表面エリアとを形成する。例えば第1の表面エリアを親水性表面とし、第2の表面エリアを疎水性表面とする。なお、第1の表面エリアと第2の表面エリアは、後述するように、親水性表面と疎水性表面に限らない。
【0018】
次に、半導体基板の半導体搭載基板への搭載方法について説明する。まず、半導体基板の搭載位置の周辺に形成される疎水性エリアまで広がるような比較的大きな液滴を生成し、半導体基板の搭載位置に付着させる。この状態で、1個の半導体基板を液滴に添加する。この後、液滴は蒸発する。この蒸発過程において、半導体基板は液滴の壁に吸着されたまま移動し、最終的には搭載位置に配置される。
【0019】
このような搭載が可能であるのは、以下の理由による。半導体基板は、液滴上又は液滴内に一旦内包されると、液滴の表面張力により気液界面に保持される。従って、液滴の蒸発により液滴の大きさが変化していく過程において、半導体基板は液滴の外周上に存在し続ける。このため、液滴の大きさの変化や液滴の動きに伴って半導体基板も移動する。蒸発過程において、液滴内部では流動が起こり、蒸発が起きるのが最も遅い親水性エリアに半導体基板が自動的に搬送される。
【0020】
この方法を用いると、半導体基板を液滴に遊離した際の初期位置が、所定の搭載位置に対する位置決め精度の数倍から100倍程度離れていても、半導体基板を所定の搭載位置まで搬送することができる。つまり、半導体基板を半導体搭載基板に搭載する工程における半導体基板の遊離は、所定の搭載位置に直接位置決めする場合に比して非常に荒い精度で構わない。しかも、半導体基板の遊離は液滴との接触により行われる。すなわち、遊離時に半導体基板は、ソリッドな半導体搭載基板と直接的に接しない。このため、半導体基板に損傷を与えることなく、半導体搭載基板上の所定の搭載位置に半導体基板を配置することができる。
【0021】
以下では、半導体基板と半導体搭載基板で構成される半導体装置の一例であるICタグについて説明する。ICタグに使用する半導体基板には、例えば片面にのみ電極を持つICチップ(いわゆる片面電極ICチップ)やチップの両面に1個ずつ電極を有し、反転が許容されるICチップ(いわゆる両面電極ICチップ)を使用する。
【0022】
一方、半導体搭載基板としての外付けアンテナは、ICチップの保護と両面電極ICチップに対応するために2枚用意することが望ましい。2枚の外付けアンテナを用いるICタグの場合、ICチップは、その両面が2枚の外付けアンテナによって挟み込む構造を採用する。すなわち、ICタグは、いわゆるサンドイッチ構造を採る。勿論、ICチップの周辺のみがサンドイッチ構造となれば良い。従って、2枚の外付けアンテナは同等の大きさである必要はなく、一方の面積は他方の面積に比して小さくても構わない。また、必ずしも外付けアンテナは2枚必要ではなく、一方は、ICチップの保護シートでも良い。
【0023】
少なくとも、ICチップを搭載する側の外付けアンテナには、ICチップを搭載する親水性エリアと、それを取り囲む疎水性エリアを設けておくことが望ましい。
【0024】
最終的なICタグの構成は、1枚の外付けアンテナ上の親水性エリア内にICチップを搭載し、その上にもう1枚の外付けアンテナ又は保護シートを配置したサンドイッチ形態を採る。勿論、ICチップの電極と外付けアンテナとは電気的に接続される形態を採る。
【0025】
次に、本発明の製造方法を用いて、ICチップを外付けアンテナに搭載する場合について説明する。まず、液滴の生成又は供給手段について説明する。液滴を生成又は供給する方法には幾つかの方法が考えられる。例えば液体ディスペンサを用いて、一定量の液体を外付けアンテナ上のチップ搭載位置に添加する方法がある。
【0026】
次に、ICチップの捕捉手段について説明する。ICチップの捕捉手段は、例えば複数のICチップの入った溶液を収納する収納容器と、先端にICチップを捕捉する細長いICチップ保持ノズルと、ICチップ保持ノズルに連結したポンプ(吸引機と加圧機)と、ICチップ保持ノズルの先端部を容器中の溶液に挿入し、ICチップを先端に付着した状態で引き上げるアクチュエータとで実現できる。ICチップ保持ノズルの先端に開口する孔は、ICチップの直径より小さいものを使用する。
【0027】
まず、ICチップが複数入った溶液中に、先端にICチップの直径より小さい孔が開口しているICチップ保持ノズルを挿入し、ICチップ保持ノズルの先端に吸引力を作用させる。先端に1個のICチップが吸引保持されると、その状態のままICチップ保持ノズルを溶液から引き出す。次に、先端に吸引保持されているICチップ5を加圧力を作用させ、外付けアンテナ上に付着された液滴に遊離する。遊離位置は、液滴の中心である必要はなく、ICチップが液体と接することが可能な場所であればどこでも良い。
【0028】
次に、液滴の蒸発手段について説明する。蒸発は、室温による自然乾燥が最も単純な形態である。ただし、ICチップの搭載にかかる時間を早めるためには、ランプやヒータその他の加熱機を設置することが望ましい。
【0029】
本発明による半導体装置の製造方法を応用したICタグの製造方法は、親水エリアと疎水エリアを有する外付けアンテナ、液滴生成・供給手段、ICチップ捕捉手段、必要に応じて液滴蒸発手段を利用することで実現できる。具体的には、ICチップを1個だけ捕捉する工程と、親水性エリアと疎水性エリアを表面に有する外付けアンテナのICチップ搭載部に液滴を供給する工程と、捕捉したICチップを加圧して液滴側に遊離する工程と、ICチップが遊離された液滴を蒸発させる工程とで構成される。この製造方法の適用により、ICチップは、外付けアンテナ上に形成された所定の搭載位置(親水性エリア)内に配置される。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、臨界表面張力の異なる表面(例えば疎水性表面と親水性表面)を用いた液滴の流体制御を用い、半導体基板を所定の位置に位置決めできる。このため、半導体基板が極薄の場合でも、半導体基板自体には機械的損傷を与えずに済む。また、本発明に係る製造方法はプロセスが簡単であるため、複雑な組み立て設備を必要としない。従って、低い製造コストかつ高効率により、高品質の半導体装置を作製することができる。また、本発明に係る製造方法は、半導体基板のみならず、シート状の基板材料や微粒子などの搬送にも適用できる。このため、本発明は、半導体基板の搬送だけでなく、三次元実装に伴う各種材料の搬送にも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1A】ICタグの構成例を示す模式図。
【図1B】ICタグの構成例を示す模式図。
【図1C】ICタグの構成例を示す模式図。
【図2A】外付けアンテナの作製工程の一工程を示す模式図。
【図2B】外付けアンテナの作製工程の一工程を示す模式図。
【図2C】外付けアンテナの作製工程の一工程を示す模式図。
【図3A】チップ接着用樹脂膜付き外付けアンテナの作製工程の一工程を示す模式図。
【図3B】チップ接着用樹脂膜付き外付けアンテナの作製工程の一工程を示す模式図。
【図3C】チップ接着用樹脂膜付き外付けアンテナの作製工程の一工程を示す模式図。
【図3D】チップ接着用樹脂膜付き外付けアンテナの作製工程の一工程を示す模式図。
【図4A】ICチップと外付けアンテナとの搭載位置関係を示す模式図。
【図4B】ICチップと外付けアンテナとの搭載位置関係を示す模式図。
【図4C】ICチップと外付けアンテナとの搭載位置関係を示す模式図。
【図4D】ICチップと外付けアンテナとの搭載位置関係を示す模式図。
【図4E】ICチップと外付けアンテナとの搭載位置関係を示す模式図。
【図4F】ICチップと外付けアンテナとの搭載位置関係を示す模式図。
【図5】複数の外付けアンテナを平面上に配置した外付けアンテナアレイを示す模式図。
【図6】チップの両面に電極を1個ずつ配置した両面電極ICチップの例を示す模式図。
【図7A】ICチップを親水性導電性膜層に搭載したICチップと外付けアンテナの主要部の断面構造を示す模式図。
【図7B】ICチップを親水性導電性膜層に搭載したICチップと外付けアンテナの主要部の断面構造を示す模式図。
【図7C】ICチップを親水性導電性膜層に搭載したICチップと外付けアンテナの主要部の断面構造を示す模式図。
【図8A】ICチップを親水性樹脂膜層に搭載したICチップと外付けアンテナの主要部の断面構造を示す模式図。
【図8B】ICチップを親水性樹脂膜層に搭載したICチップと外付けアンテナの主要部の断面構造を示す模式図。
【図9A】ICチップを導電性粒子を含む親水性樹脂膜層に搭載したICチップと外付けアンテナの主要部の断面構造を示す模式図。
【図9B】ICチップを導電性粒子を含む親水性樹脂膜層に搭載したICチップと外付けアンテナの主要部の断面構造を示す模式図。
【図10A】両面電極構造のICチップを外付けアンテナ2枚で挟みこんだICタグの主要部の断面構造を示す模式図。
【図10B】両面電極構造のICチップを外付けアンテナ2枚で挟みこんだICタグの主要部の断面構造を示す模式図。
【図10C】両面電極構造のICチップを外付けアンテナ2枚で挟みこんだICタグの主要部の断面構造を示す模式図。
【図10D】両面電極構造のICチップを外付けアンテナ2枚で挟みこんだICタグの主要部の断面構造を示す模式図。
【図10E】両面電極構造のICチップを外付けアンテナ2枚で挟みこんだICタグの主要部の断面構造を示す模式図。
【図11A】チップの片面に電極を2個配置した片面電極ICチップの例を示す模式図。
【図11B】チップの片面に電極を2個配置した片面電極ICチップの例を示す模式図。
【図12A】チップの両面に電極を2個ずつ配置した両面電極ICチップの例を示す模式図。
【図12B】チップの両面に電極を2個ずつ配置した両面電極ICチップの例を示す模式図。
【図13A】外付けアンテナの主要部の構成例を示す模式図。
【図13B】外付けアンテナの主要部の構成例を示す模式図。
【図14A】外付けアンテナの主要部の構成例を示す模式図。
【図14B】外付けアンテナの主要部の構成例を示す模式図。
【図15A】片面電極ICチップを親水性導電性膜層に搭載したICチップと外付けアンテナの主要部の断面構造を示す模式図。
【図15B】両面電極ICチップを親水性導電性膜層に搭載したICチップと外付けアンテナの主要部の断面構造を示す模式図。
【図16A】片面電極ICチップを保護シートで挟みこんだICタグの主要部の断面構造を示す模式図。
【図16B】両面電極ICチップを保護シートで挟みこんだICタグの主要部の断面構造を示す模式図。
【図17】ICタグの作製フローを示すブロック図。
【図18】液滴を用いてICチップを外付けアンテナの所定の位置に搭載するための装置構成と製造工程を説明する模式図。
【図19】液体捕捉ピンを用いて液体を捕捉し、当該液滴を外付けアンテナの所定の位置に供給又は配置するための装置構成と製造工程を説明する模式図。
【図20】液滴溶液で満たされた溶液バスの中に外付けアンテナを浸すことで、液滴を外付けアンテナの所定の位置に生成又は配置する装置構成と製造工程を説明する模式図。
【図21A】外付けアンテナの基板上に液滴が配置された状態を示す模式図。
【図21B】外付けアンテナの基板上に液滴が配置された状態を示す模式図。
【図22A】液滴にICチップを添加し、液滴の気液界面にICチップが存在する状態を示す模式図。
【図22B】液滴の気液界面にICチップが捕捉され、液滴の乾燥によりICチップが親水性導電性膜層へ搬送される状態を示す模式図。
【図22C】液滴が親水性導電性膜層上で蒸発する直前の状態を示す模式図。
【図22D】液滴が完全に乾燥し、ICチップが親水性導電性膜層上に搭載された状態を示す模式図。
【図23】気液界面にICチップが捕捉される原理を示す説明図。
【図24A】ICチップが液滴表面を移動する原理を示す説明図。
【図24B】ICチップが液滴表面を移動する原理を示す説明図。
【図24C】ICチップが液滴表面を移動する原理を示す説明図。
【図25A】液滴にICチップを添加し、外付けアンテナを反転させ重力に逆らった状態で液滴の気液界面にICチップが捕捉された状態を示す模式図。
【図25B】液滴の乾燥によりICチップが親水性導電性膜層上へと重力に逆らって近づく様子を示す模式図。
【図25C】液滴が完全に乾燥し、ICチップが親水性導電性膜層上に搭載された状態を示す模式図。
【図26】外付けアンテナの基板上に液滴が配置された状態を示す模式図。
【図27】形態例に係る液滴搬送法を用いて基板を三次元的に積み上げた構造を説明する模式図。
【図28】形態例に係る液滴搬送法を用いて基板と配線層を三次元的に積み上げた構造を説明する模式図。
【図29A】ICタグ作製装置を説明する模式図。
【図29B】ICタグ作製装置を説明する模式図。
【図29C】ICタグ作製装置における圧着方法を説明する模式図。
【図30】完成したICタグを1個ずつ単離する装置及びその方法を説明する模式図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下の実施例においては、主に、ICタグの構造、ICチップとアンテナ基板の接続工程について説明する。ただし、本発明の応用分野はこれに限るものでなく、後述する実施例の内容は、半導体実装技術の全般に活用できる。
【0033】
[実施例1]
本実施例では、ICタグを構成する外付けアンテナの構造とICタグの作製方法について説明する。
【0034】
(ICタグの構造例)
図1A及びBに、ICタグ54の典型的な構成例を示す。図1AはICタグ54の平面外観図であり、図1Bはその分解斜視図である。図1Bに示す通り、ICタグ54は、ICチップ5と2枚の外付けアンテナ52で構成される。2枚の外付けアンテナ52は、ICチップ5を両面側から挟み込むように配置される。外付けアンテナ52には、アンテナスリット53が形成されている。アンテナスリット53は、ICチップ5とアンテナとのインピーダンス整合に必要な構造であり、アンテナからのエネルギーを効率良く導く働きをする。2枚の外付けアンテナ52は、必ずしも同じ長さである必要はない。また、2枚の外付けアンテナ52の両方がスリット構造を有する必要は無い。ただし、2枚の外付けアンテナ52の一方が、他方側に形成されたアンテナスリット53と干渉しないことが必要である。
【0035】
この他、図1Cに示すように、アンテナスリット53の形成された外付けアンテナ52を1枚だけ有するICタグ54も可能である。この形態のICタグの場合には、外付けアンテナ52に搭載されたICチップ5を防護シート55で保護すると良い。
【0036】
ICタグ54の大きさは、用途により様々である。例えば紙の中や糸の中に埋め込むような特殊な用途に使用するICチップ5の場合、大きさは10−200μm、厚みは0.2−200μmの範囲するのが良い。なお、外付けアンテナ52も含めて紙の中に埋め込むためには、紙の平均的な厚み(おおよそ100μm)以下であることが必要となる。従って、この種の用途に用いる場合、ICチップ5の厚みは10μm以下とし、外付けアンテナ52の厚みを含めたICタグ54のトータルの厚みを100μm以下とすることが望ましい。つまり、この種の用途で取り扱う外付けアンテナ52には、極薄のフィルム形態も含まれる。
【0037】
(ICチップの構造例)
図6に、第1の両面電極ICチップ59の代表例を示す。この実施例の場合、第1の両面電極ICチップ59の平面構造は正方形状(矩形)である。また、第1の両面電極ICチップ59の断面構造は、一端側から順番に、第1の電極層7、集積回路層6、第2の電極層8で構成される。両面電極構造の採用により、搭載領域に対するICチップ5の電極面の反転や角度ずれが許容される。
【0038】
図12A及びBは、両面電極構造のICチップの変形例である。以下では、この構造を有するICチップを、第2の両面電極ICチップ42という。第2の両面電極ICチップ42の場合も、半導体の集積回路層6の両面に同じ電極パターンが形成される。ただし、その片面には、第1の片面電極層56と第2の片面電極層57の2つのパターンが形成される。このうち、第1の片面電極層56は、半導体の集積回路層6の面中心位置に形成される。一方、第2の片面電極層57は、第1の片面電極層56との間に所定のギャップを挟んで形成される。図に示すように、第2の片面電極層57は環状であり、第1の片面電極層56を取り囲むように形成される。集積回路層6の内部には、第1の電極貫通路35と第2の電極管通路36が形成される。第1の電極貫通路35は集積回路層6の両面に形成された第1の片面電極層56同士を電気的に接続し、第2の電極管通路36は集積回路層6の両面に形成された第2の片面電極層57同士を電気的に接続する。
【0039】
図12Aは、第1の片面電極層56が四角形状であり、第2の片面電極層57が矩形リング形状の例である。図12Bは、第1の片面電極層56が丸形状であり、第2の片面電極層57がリング形状の例である。ただし、第1の片面電極層56はどのような多角形状でも良く、第2の片面電極層57もどのような多角形リング形状でも良い。
【0040】
図11A及びBは、片面電極ICチップ41の例である。片面電極ICチップ41の場合、集積回路層6の片面にのみ、図12A及びBに示したものと同様の第1の片面電極層56と第2の片面電極層57が形成される。図12と異なるのは、両面に臨界表面張力の違いも持たせている点である。なお、片面電極ICチップ41の場合には、電極層が形成される側の集積回路層6の表面を親水性とし、電極層が存在しない側の集積回路層6の表面を疎水性とする必要がある。
【0041】
様々な用途を考慮すると、図6、図11A及びB、図12A及びBに示すICチップの大きさは、10−200μm、厚みは0.2−200μmの範囲で作製することが好ましい。
【0042】
(製造工程の例1)
図2A−Cに、外付けアンテナ主要部58の作製工程の一例を示す。まず、非導電性基材1上に親水性導電性膜層10をパターン形成し、その後、疎水性非導電性膜層9をパターン形成する。各層の形成方法は様々である。例えばホトリソグラフィー技術を利用した半導体プロセスによるスパッタ蒸着やメッキ法、印刷技術の適用などが考えられる。
【0043】
非導電性基材1は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリイミド(PI)フィルムが好適である。
【0044】
親水性導電性膜層10は、例えばTi、Ni、Au、Cu、Sn、Agなどの材料が一般的である。なお、親水性導電性膜層10は、非導電性基材1との接着力を増強するためのバッファ層(例えばTi、Ni)と、その上面層(例えばAu、Cu、Sn、Ag)とで構成される積層構造を採用しても良い。
【0045】
図2A−Cの場合、親水性導電性膜層10を非導電性基材1の表面に最初にパターン形成しているが、最終的に、ICチップが導電性膜上に搭載されれば良い。従って、ICチップを導電性膜上に搭載するまでのいずれかの時点で、ICチップを搭載する領域の表面が親水性となれば良い。
【0046】
疎水性非導電性膜層9は、例えばフロロカーボン膜、各種アモルファスフッ素膜、シリコーン膜、メタン系単結晶又はアモルファス膜などが好適である。ここで、親水と疎水の違いは、臨界表面張力の差で定義されるものである。親水性導電性膜層10の臨界表面張力をγとし、疎水性非導電膜層9の臨界表面張力をγとし、接触する液体の表面張力をγとしたとき、γ<<γ、かつ、γ<<γの関係を有している。
【0047】
(製造工程の例2)
図3A−Dは、図2A−Cの例と異なり、親水性樹脂膜層11を親水性導電性膜層10と疎水性非導電性膜層9の間に形成する方法を示す図である。この場合、非導電性基材1上に親水性導電性膜層10をパターン形成した後、親水性樹脂膜層11を形成し、さらに、疎水性非導電性膜層9をパターン形成する。
【0048】
親水性樹脂膜層11の形成方法も様々ではある。一般的には、ディスペンサを用いた塗布技術、スピンコート、ディップコート法を用いたコート技術、さらに各種印刷技術が適用される。ここで、親水性樹脂膜層11は、ICチップ5と外付けアンテナ主要部58との接着剤として機能する。親水性樹脂膜層11としては、例えばエポキシ系の熱硬化性樹脂が好適である。親水性樹脂膜11の表面に位置決めされたICチップ5に外部から圧力を加えると、ICチップ5は親水性樹脂膜層11(熱硬化性樹脂)を押しのけるように移動し、一端面において親水性導電性膜層10に接触する。その状態で温度を上げると、ICチップ5の周辺に押しのけられた親水性樹脂膜層11(熱硬化性樹脂)が硬化する。これにより、親水性導電性膜層10とICチップ5の電極面との間に強固なオーミック接着が実現される。
【0049】
(製造工程の例3)
他の製造工程例を、図13A及びB、14A及びBに示す。各図は、第2の両面電極チップ42や片面電極チップ41を外付けアンテナ52に液滴を用いた搬送手法により実装するために要求される外付けアンテナ主要部58の構造例を示している。
【0050】
親水性導電性膜層10の配置には、ICチップ5の電極の形に応じて、図13Bに示す配置と図14Bに示す配置が考えられる。なお、図13A及び図14Aに示す配置は、図13B及び図14Bに対する前工程での配置である。
【0051】
図13Bと図14Bに示すように、疎水性非導電性膜層9を最表面に配置する。各図の断面構成に示すように、疎水性非導電性膜層9は、ICチップ5が配置される親水性ポケット61の外側を取り囲むように配置される。すなわち、親水性エリアの外周を疎水性エリアで取り囲む。このパターンにより、液滴によるICチップ5の自己整合的な位置決めが可能となる。なお、非導電性基材1の内部には、ICチップ上でショートを避けるための埋め込み電極路60を配置する。
【0052】
(外付けアンテナ主要部の構造例)
図4A−Fに、ICチップ5と外付けアンテナ主要部58の搭載位置関係を示す。また、図4A−Fには、図2C、図3D、図13B、図14Bで示した親水性導電性膜層10と疎水性非導電性膜層9の最表面パターンの幾つかの例を示す。
【0053】
図4Aは、外付けアンテナ主要部58上に四角形状の親水性エリア2が形成され、その外周を取り囲むように疎水性エリア3が形成された構造を示している。図4Bは、親水性エリア2が円形状の例を示す。図4C−Fは、図4A及びBに示した各親水性エリア2から疎水性エリア3の方向に流路4が形成される例である。各図において流路4の一端は親水性エリアと連結しているが、親水性エリアから分離したパターンも可能である。図4C−Fに示す流路4の利用形態については後述する。
【0054】
各図に示すように、親水性エリア2の大きさは、搭載するICチップ5よりも大きく形成される。液滴によるICチップ5の搬送方法は、面内におけるICチップ5の向きまでは制御できない。このため、親水性エリア2の内径の最短距離は、ICチップ5の外径の最長距離よりも長いことが必要である。この条件が満たされることで、ICチップ5は親水性エリア2内に確実に収納することが可能となる。
【0055】
なお、図4Aは、図2C、図3D、図13B、図14Bで説明したパターンに相当する。親水性エリア2内にICチップ5が配置される形態であり、ICチップ5の面積より広いエリアであれば、図4B〜Fに示すパターンであっても構わない。第2の両面電極ICチップ42や片面電極ICチップ41を用いる場合には、親水性エリア2の面積はICチップ5の面積の1.5倍以下にするのが歩留まり上好適である。一方、第1の両面電極チップ59の場合には、外付けアンテナ52同士のショートがなければ、特に上限をもたない。実際には、親水性エリア2の面積をICチップ5の面積の5倍以下にするのが好ましい。その理由は、電極が広いと寄生容量が発生し、使い方によっては通信性能が低下する可能性があるためである。
【0056】
[実施例2]
本実施例では、実施例1で説明したICチップ5と外付けアンテナ52を用いてICチップ5を実装する方法と原理について説明する。
【0057】
(ICチップの液滴への添加)
まず、図21Aのように、外付けアンテナ主要部58に液滴18を添加する。勿論、外付けアンテナ主要部58には、図4A−Fに示すように、親水性エリア2の外周を疎水性エリア3で取り囲んだパターンが形成されている。液滴18の添加時には、液滴18が親水性エリア2の表面に接するように配置する。
【0058】
次に、図21Bに示すように、液滴上にICチップ5を1枚添加する。小さくて薄いICチップ5は、図21Bのように、液滴18の気液界面に吸着保持され、重力により、外付けアンテナ52と接する位置まで移動する。図23及び図24に、ICチップ5の液滴上の移動の原理を示す。
【0059】
図23に示すように、液滴18の気液界面にICチップ5が保持される条件は、アイソスタシーと浮力の関係式、ラプラス圧と重力の関係で導き出すことができる。また、同関係により、保持の状態を実現できる限界のチップ厚みも導き出すことができる。
【0060】
チップの材料の密度ρs、面積S、重みで湾曲する界面の半径をr、チップ底面までの水深をdとすると、式1のようにつりあい関係が成り立つ。ここで、ρl、gはそれぞれ液体の密度と、重力である。
【0061】
【数1】

【0062】
ここで、便宜上、チップと気液界面の構造を円柱として考えると、式2となる。
【0063】
【数2】

【0064】
ここで、式2を式1に代入して整理すると、以下のようになる。
【0065】
【数3】

【0066】
さらに、ラプラス圧(P=γ/r)と深さrまでの平均水圧の釣り合いを考えると、式4が得られる。
【0067】
【数4】

【0068】
ここで、γは液体の表面張力である。
【0069】
式4と式3を纏めると式5となり、チップが液滴内に沈むことができない限界厚みを導き出すことができる。
【0070】
【数5】

【0071】
例えば、本発明のICチップ5を大きさ75μm、厚み5μmというディメンジョンとした場合、極薄のICチップ5は、比重の高いAu(19.32g/cm)を主材料とした場合においても、水の液滴18中では、210μm、メタノール100%の液滴では、その表面から103μmの深さ位置でICチップ5を遊離しても、図23のような気液界面で吸着保持される状態が得られる。
【0072】
図24Aは、液滴上に保持されたICチップが、液滴を添加した基板の方向に移動する原理を示している。液滴内部には、放射上に均一なラプラス圧が生じており、ICチップはどこに移動しても液滴内部に侵入することはできない。しかし、重力がICチップに働くため、液滴の頂点に存在し続けるのは困難である。微小振動等によりICチップが液滴頂点からずれると、ICチップは重力の影響により液滴の気液界面に沿って移動し、やがて液滴が添加された基板へとずり落ちていく(図24B)。結果、図24Cに示すように、液滴と接し、さらに液滴が添加されている基板と接することで安定な状態を得る。
【0073】
(ICチップの搬送)
次に、液滴18により、ICチップ5が親水性エリア2に搬送される様子を説明する。
図22A−Dは、親水性エリア2にICチップ5が配置される様子を示す模式図である。液滴18に添加されたICチップ5は、図22Aのように、液滴18の気液界面に保持された後、重力の影響を受けて、疎水性エリア表面3とICチップ5の一部が接触した位置に配置される。ここでの疎水性エリア3は、アモルファスフッ素系樹脂膜をサブミクロンの厚みでコートしたものとする。この場合、液滴18と疎水性エリア3の表面との接触角は110度となる。また、親水性エリア2はAuであるものとする。この場合、液滴18と親水性エリア2の表面との接触角は30度となる。
【0074】
蒸発が始まると、液滴18は親水性エリア2にアンカーが打たれた状態で、親水性エリア2へ液滴18中の液体が流動しながら縮小していく。疎水性エリア3の疎水度は一定である。このため、ICチップ5は、液滴18の気液界面上に一定の接触角で保持されたまま搬送されていく。図22Cの状態まで液滴18の径が縮小すると、親水性エリア2に液滴18とICチップ5が侵入する。親水性エリア2における液滴18の接触角は30度であるので、ICチップ5はこれまでの直立状態から親水性エリア2内へ倒れこむように姿勢を変える。図22Dは、液滴18が完全に蒸発した状態である。この状態で、ICチップ5は、親水性エリア2内に搭載される。
【0075】
図22A−Dにおいて、疎水性エリア3上にゴミや突起は極力無い方が良い。なぜなら、ICチップ5がゴミや突起にひっかかり、そこから動けなくなり、疎水性エリア3上でプレースされてしまう可能性があるからである。
【0076】
それを回避する方法の変形例を図25A−Cに簡単に示す。図25Aは、ICチップ5を液滴18に添加した後に、液滴18とICチップ5を載置した面を上下反転させた状態を表している。この場合、重力の影響により、ICチップ5は、液滴18の頂点部に吸着保持される。このままの状態で液滴18を乾燥させると、基材とは非接触の状態のまま、ICチップを親水性エリア2まで搬送することができる。従って、疎水性エリア3上のゴミや突起などの構造物があったとしても、これを回避することができる。
【0077】
(液滴に求められる条件)
液滴18に用いる液体は水でも良いが、液滴の蒸発を促進するためには、アルコール水溶液等でも良い。ただし、表面張力の関係上、アルコールの過剰添加は疎水性エリア3の接触角を低下させ、ICチップ5の横倒れを招く懸念がある。
【0078】
配置する液滴の大きさは、ICチップ5の比重や面積に関係する。例えば、ICチップ5が50μm角、厚さ10μm以下であり、比重の高いAuを主材料とする場合、水やアルコール水溶液の半径が、5mm以下となる液滴18を配置すれば問題ない。この場合には、400μL程度の液滴18を第1のアンテナ基板1上に置いても大丈夫である。勿論、製造プロセスを意識した乾燥時間と表面のゴミ対策を考えると、小さい液滴18の方が好適である。0.5〜数10μL程度の液量で液滴18を生成又は供給するのが良い。
【0079】
なお、液滴の表面積は、以下に示す2つの条件を同時に満たすことが求められる。
(条件1)ICチップのうち液滴と接する側の表面積よりも液滴の表面積が大きい。
(条件2)基板に対してICチップ面が平行になるように液滴に付着した状態で基板面の上面側から観察した場合に、液滴の最外径がICチップの外縁よりも外側に位置する。
【0080】
図26は、液滴18の添加されたエリアとICチップ5の位置関係を示す図である。図26は、液滴18の中心位置が親水性エリア2から外れているものの、液滴18の全体が疎水性エリア3内に収まっている場合を示している。図26の場合、ICチップ5は、その初期位置において、親水性エリア2からもっとも遠い位置にある。ただし、図に示すように、液滴18の全体が疎水性エリア3内に収まり、かつ、液滴18の一部が親水性エリア2と接触していれば、前述したように液滴18の蒸発に伴ってICチップ5を親水性エリア2に搬送することができる。
【0081】
[実施例3](ICチップの取り付け構造)
図7A−C、図8A及びB、図9A及びBに、第1の両面電極ICチップ59を搭載した外付けアンテナ主要部58の断面構成例を幾つか示す。なお、図7A−Cは、親水性導電性膜層10上に、第1の両面電極ICチップ59を搭載した場合の断面構造例を示している。図8A及びBは、親水性樹脂膜層11上に、第1の両面電極ICチップ59を搭載した場合の断面構造例を示している。図9A及びBは、導電性粒子を含む親水性樹脂膜層12上に、第1の両面電極ICチップ59を搭載した断面構造例を示している。
【0082】
実施例1でも述べたが、樹脂膜層は、ICチップと外付けアンテナ主要部58との接着力の増加に作用する。例えば樹脂膜層を用いる場合、ICチップに外力を加えて熱硬化性樹脂をICチップの下面から周囲に押しのけ、その後、ICチップの下面が導電性膜層に接した態で温度を上げると、ICチップを導電性膜層に固定することができる。一方、図7A−Cのように樹脂膜層(接着剤)を用いない場合には、ICチップの実装後に外部から超音波接合等を行う必要がある。
【0083】
図7Aは、最も単純な構造例である。非導電性基材1が十分な疎水力を備えている場合に用いることができる構造である。非導電性基材1がテフロン、PET、PI等である場合に適用可能である。しかしながら、PETやPIは、吸水性を有している。このため、使用条件にもよるが、液滴中の液体の蒸発による液滴の縮小現象よりも早く、非導電性基材1に液体が染み込んでしまう可能性がある。この場合、実施例2で説明した液滴によるICチップの搬送が困難となる。従って、非導電性基材1に吸水性を有する基材を用いる場合には、液滴を加熱して液滴内の液体の蒸発速度を高める必要がある。
【0084】
図7B及びCは、疎水性非導電性膜層9を、親水性導電性膜層10の周囲に配置する場合の断面構造例である。疎水性非導電性膜層9には、吸水性を有さない、いわゆるフッ素系、シリコーン系の撥水剤を用いることが好ましい。この場合、ICチップの搬送を伴う液滴の蒸発過程において、ICチップ5と疎水性導電性膜層9との接触角に変化は生じない。従って、第1の両面電極ICチップ59を安定的に親水性導電性膜層10の位置に搬送することができる。
【0085】
図7Bと図7Cの違いは、親水性導電性膜層9と疎水性非導電性膜層10と第1の両面電極ICチップ59の面積比の関係である。図7Cに示す構成は、親水性エリアの面積が第1の両面電極ICチップ59に対してかなり余裕を持っている。従って、図7Cに示す構成は、第1の電極層と第2の電極層を有しない第1の両面電極ICチップ59を用いる場合にのみ適用できる。
【0086】
図8A及びBは、親水性エリア2の最表面が親水性樹脂膜層11で覆われている場合の構造例である。図8Aは、下地層の全面が親水性樹脂膜層11であるが、図8Bのように、疎水性非導電性膜層9で囲まれた親水性ポケットのみに親水性樹脂膜層11を配置しても良い。図8Bの構造は、図に示すように、親水性導電性膜層10の面積が小さい場合に効果的である。図8Bの構造の場合、第1の両面電極ICチップ59に圧力を加えて親水性導電性膜層10と接着させる際、親水性樹脂膜層11の流動による第1の両面電極ICチップ59の位置づれを回避し易い。
【0087】
図9A及びBは、親水性エリア2の最表面が、導電性粒子を含む親水性樹脂膜層12で覆われている場合の構成例である。導電性粒子は、チップの電極と導電性膜層の接合において、粒子を介して点接触を可能とすることから、確実なオーミック接合を得やすいという利点がある。また、導電性粒子が樹脂膜層に入ることで、圧着時の圧力を低くできるという利点もある。
【0088】
一方で、UHF帯域を無線に使用するICチップの場合には、容量カップリングによっても駆動することができる。つまり、ICチップと導電性膜層との間に薄い絶縁層が介在しても問題なく動作することができる。このため、ICチップは、導電性粒子を含まない親水性樹脂膜層11を挟んで導電性膜層と接合しても構わない。従って、UHF帯域のICチップを採用する際は、図8A及びBや図9A及びBで示した断面構造のまま(圧着することなく)用いることができる。
【0089】
以上の説明では、ICチップ5の搭載部である親水性エリア2について、金属材料、樹脂材料などを取り上げた。また、ここで親水性についての定義は、あくまでも疎水性エリア3と比較した場合に、水やアルコール水溶液に馴染みやすいということである。親水性エリア2の導電性材料層10には、Au、Cu、Al、Ti、Ni等を空気中に晒したもの、樹脂膜層11はエポキシ系材料を含む熱硬化性樹脂が好適である。また、疎水性非導電性膜層9には、清浄Si、フッ素系樹脂、テフロン系樹脂、レジスト、WAX等が好適である。
【0090】
図7A−C、図8A及びB、図9A及びBでは簡単のために、疎水性非導電性膜層9の厚みをICチップ5の厚みと同程度にしているが、実際には、極めて薄い層で良く、原子又は分子レベルの厚みでも良い。なお、疎水性非導電性膜層9は、ICチップより厚くても良い。ただし、その場合にはICチップの上面が周囲の疎水性非導電性膜層9よりも低くなり、隙間が発生する。この場合、発生する隙間を、導電性粒子を含む親水性樹脂膜層12で充填することが望ましい。
【0091】
(ICタグの断面構造)
図10A−Eに、外付けアンテナを2枚重ねで接合し、ICタグを作製した時点における外付けアンテナ主要部付近の断面構造例を示す。
【0092】
図10Aは、第1のアンテナ基板の基材(非導電性基材1)の最表面層に位置する親水性導電性膜層10と第2のアンテナ基板の基材(非導電性基材1)の最表面層に位置する親水性導電性膜層10とが、第1の両面電極ICチップ59の各電極面と直に接する構造例を示す。図10Aは、疎水性非導電性膜層9の膜厚と第1の両面電極ICチップ59の厚みとがほぼ同じである。なお、第1の両面電極ICチップ59の周囲には空気層14が配置されており、空気層14の外周は疎水性非導電性膜層9で覆われている。
【0093】
図10Bの断面構造は、図10Aとほぼ同じである。ただし、図10Bに示す構造は、親水性樹脂膜層11に第1の両面電極ICチップ59を搭載した後(図8B)、第2のアンテナ基板を第1の両面電極ICチップ59の上に被せ、さらに両電極側から圧着した場合に得られる。圧着の際、第1の両面電極ICチップ59の下層に位置する親水性樹脂膜層11は、疎水性非導電性膜層9と第1の両面電極ICチップ59との隙間に押し出される。押し出された親水性樹脂膜層11は、第1の両面電極ICチップ59の外縁を取り囲む位置に移動する。
【0094】
なお、親水性樹脂膜層11が押し出されることで、第1のアンテナ基板の最表面に位置する親水性導電性膜層10と第1の両面電極ICチップ59とは、第1の電極層7を介して電気的に接続される。また、第2のアンテナ基板の最表面である親水性導電性膜層11と第1の両面電極ICチップ59とは、第2の電極層8を介して電気的に接続される。前述したように、親水性樹脂膜層11の樹脂は温度変化で溶解したり、硬化したりする樹脂で接着剤の役割をするものが良い。溶解温度よりも硬化温度が高いものが好適であり、不可逆反応の材料が良い。
【0095】
図10Cは、第1の両面電極ICチップ59の厚みが、その周辺に形成される疎水性非導電性膜層9の膜厚よりも大きい場合の断面構造例である。この断面構造は、親水性樹脂膜層11に第1の両面電極ICチップ59を搭載した後(図8B)、第2のアンテナ基板を第1の両面電極ICチップ59の上に被せ、両電極側から加熱圧着することにより得ることができる。
【0096】
この場合も、親水性樹脂膜層11は、圧着により第1の両面電極ICチップ59の下面からその周囲に押し出される。結果的に、第1のアンテナ基板の最表面に位置する親水性導電性膜層10と第1の両面電極ICチップ59とは、第1の電極層7を介して電気的に接続される。また、第2のアンテナ基板の最表面である親水性導電性膜層11と第1の両面電極ICチップ59とは、第2の電極層8を介して電気的に接続される。
【0097】
ただし、図10Cの場合、第1の両面電極ICチップ59が載置される領域以外は、第1のアンテナ基板と第2のアンテナ基板の間に親水性樹脂膜層11が挟まれた断面構造となる。この点が図10Bとの違いである。
【0098】
図10D及びEは、図9B及び図9Aの工程後、第2のアンテナ基板を第1の両面電極ICチップ59の上に被せ、両電極側から圧着した後の断面構造である。この例の場合、導電性粒子を含む親水性樹脂膜層12が圧着により押し出され、第1の両面電極ICチップ59の両電極面を覆っている。このため、第1のアンテナ基板の最表面に位置する親水性導電性膜層10と第1の両面電極ICチップ59とは、第1の電極層7と導電性粒子を介して電気的に接続される。また、第2のアンテナ基板の最表面である親水性導電性膜層11と第1の両面電極ICチップ59とは、第2の電極層8と導電性粒子を介して電気的に接続される。
【0099】
なお、親水性導電性膜層10の下層となるアンテナ基板の基材は絶縁材料であることが好ましく、その厚みに制限はない。本実施例の場合、アンテナ基板の厚みは1ミクロン以上から使用でき、フレキシブルなフィルム基板でも取り扱うことができる。図4C−Fに図示した第1のアンテナ基板1の流路4は、圧着により生じる樹脂層の体積変化や流動に伴う余分な樹脂を回収するための回収路として用いることができる。
【0100】
図15Aに片面電極ICチップ41(図11A及びB)を配置した結果を示す。図15Aの場合、片面電極ICチップの親水性面(第1の片面電極層56及び第2の片面電極層57の形成面)が疎水性エリアで囲まれた親水性ポケット内に積極的に侵入し、親水性エリア内の親水性導電膜層10と接合した状態を示している。
図15Bは、第2の両面電極ICチップ42(図12A及びB)を配置した結果を示す。図15Bの接続関係は片面電極ICチップ41と同様であるが、第2の両面電極ICチップ42の場合には、接合面が反転しても構わないので、図のような接合を容易に取ることができる。
【0101】
図16A及びBは、ICチップを1枚のアンテナ基板に取り付けた後に、片面を保護シート62で覆う場合の断面構成を示す。図中の白抜き部分は空気層でも良いし、絶縁層が形成されていても良い。
【0102】
以上の手順で、ICチップ5とアンテナ基板が互いに接続され、ICタグの組み立てが完了する。なお、アンテナ基板の導電性材料層の下層は絶縁材料であることが好ましく、厚みに制限はない。本実施例では、アンテナ基板の厚みは1ミクロン以上から使用でき、フレキシブルなフィルム基板でも取り扱える。図4C―Fに図示した第1のアンテナ基板1の親水性路4は、圧着時により生じる樹脂層の体積変化によって余分となる樹脂を回収するための回収路として用いることができる。
【0103】
[実施例4]
本実施例では、生産性を考慮したICタグの作成方法とその装置について説明する。
(外付けアンテナアレイ)
ICタグの作製の効率化と外付けアンテナ52の作製コストの削減を考慮すると、外付けアンテナ52をアレイ状に1枚のシートに並べたもの(以下、「外付けアンテナアレイ51」という。)を用意することが好ましい。図5に示す外付けアンテナアレイ51の場合、1枚のシート上に外付けアンテナ51が2列に連続して配置されている。
【0104】
いずれの外付けアンテナ52も、その中心部分に親水性エリア2が形成されており、その周囲を疎水性エリア3で覆っている。この構成より、ICチップを、親水性エリア2に搬送することができる。図5は、親水性エリア2以外の全シート領域を疎水性エリア3で覆った例である。勿論、親水エリア2の周囲が疎水性エリア3で囲まれていれば、その全域が疎水性エリアで覆われる必要はない。親水性エリア2のパターンとしては、図4A−Fに示した全てのパターンを適用できる。
【0105】
(製造装置の概要)
アレイ化により、1枚の基材上に一度に複数枚の外付けアンテナ52の構造を形成できる。従って、プロセスコストを大幅に低減できる利点がある。なお、各外付けアンテナ52にICチップ5が搭載されるたび、それぞれをアレイから切り外して1枚の基板として使用しても良い。しかし、ICタグの分野に限っては、複数のICチップ5がアレイ上に搭載された後も、そのまま複数の工程を実行し、ICタグ製造工程における最終工程において、図30に示すように裁断して使用するのが一般的である。また、外付けアンテナアレイ51は、図に示すように、フレキシビリティを利用してロール状にしておくと、生産ラインの自動化に適用させやすく扱いが便利である。
【0106】
図30の場合、搬送ローラ74の回転により、ICタグアレイ71はICタグ巻取りリール68から引き出され、下流工程へ搬送される。搬送ローラ74は、ICタグアレイ71のキャリアシート79の裏面側(外付けアンテナ52が形成されていない側)に配置される。なお、ICタグアレイ71の搬送は、キャリアシート79の両側に形成されたスプロケット穴78に対応する送り爪の回転駆動によっても行われる。なお、下流工程には、第1の切削装置75と第2の切削装置76が配置される。第2の切削装置76の下面位置には切削用支持台77が配置される。
【0107】
図17は、実施例に係るICタグの作製工程を示すフローである。製造工程は、(1) ICチップの捕捉、(2) 外付けアンテナへの液滴供給、(3) 液滴中へのICチップ遊離、(4) 液滴蒸発によるICチップの親水性エリア2への搭載、(5) 外付けアンテナの張り合わせにより達成される。
【0108】
前述のように、ICタグの製造に外付けアンテナアレイ51を使用する場合には、図17に示す製造工程の後、個々のICタグが基材から切り離される。さらに、出荷前には、各々のICタグの品質チェック等が行われるが、本フロー図から省略した。図29A及びBは、図17に示した製造フローを実現するための装置構成の全体を概略的に示したものである。
【0109】
図29Aに示す装置の場合、第1の外付けアンテナリール63と第2の外付けアンテナリール64には、外付けアンテナアレイ51が巻かれている。外付けアンテナアレイ51の他端側はICタグ巻取りリール68に巻き付けられている。ICタグ巻取りリール68がテンションを保ちながら回転することで、押付けローラ69により2枚の外付けアンテナアレイ51が接合される。
【0110】
押付けローラ69よりも上流側には、分注装置65、ICチップ操作装置66、ヒータ27が工程順に配置される。まず、分注装置65が、第1の外付けアンテナリール63から引き出された第1の外付けアンテナアレイ51の所定位置に液滴18を供給する。次に、ICチップ操作装置66が液滴18の表面にICチップ5を供給する。この後、キャリアシートの裏面側に配置されているヒータ27の加熱により、親水性エリア上の液滴18が乾燥される。この乾燥により、ICチップ5は親水性エリアの所定の位置に搭載される。この後、押付けローラ69が、第2の外付けアンテナリール64から引き出された第1の外付けアンテナアレイ51をICチップ5の表面に押し付ける。これにより、ICチップ5は、2枚の外付けアンテナ51で挟み込まれる。その後、圧着装置67による圧着により、ICチップ5は親水性エリアの導電性膜層とオーミック接合される。完成したICタグ群は、ICタグ巻取りリール68でリール状に回収される。
【0111】
図29Bに示す装置も基本的な工程は、図29Aと同じである。違いは、液滴18が付着された状態の外付けアンテナアレイ51の上下を反転する反転用ローラ70を追加した点である。すなわち、図29Bは、液滴を重力に逆らった状態で乾燥させる図25A及びBに対応するシステム構成を示している。
【0112】
(製造装置の詳細)
図18に、実施例に係るICチップ搭載装置の一部のシステム構成例を示す。なお、図18に示す構成部分は、図17に示す工程のうち、ICチップの捕捉、外付けアンテナへの液滴供給、液滴中へのICチップ遊離、液滴蒸発によるICチップの親水性エリア2への搭載までの工程を自動で行うシステム構成について表している。
【0113】
図18の場合、ICチップ5は、極小かつ極薄で、大きさは25μm角以上、150μm角以下、厚さは10μm以下であるものとする。大きさが150μm角以下と小さく、かつ、厚さが10μm以下と薄くなると、ICチップ5同士の付着力(ファンデルワールス力、静電力)の影響が顕著となってくる。このため、ドライ環境において、ICチップ5を1個ずつのピックアップすることは不可能に近い。また、回路の静電破壊など、半導体装置としては致命的な事態も起こり兼ねない。
【0114】
そこで、図18に示すように、溶液(ICチップ保存溶液16)中にICチップ5を分散させ、ICチップ5同士のファンデルワールス力や静電力を低下させることが可能なICチップのピックアップ手法を利用する。本実施例では、以下に示す1例のみを取り上げているが、ICチップ5を1枚だけ操作でき、かつ、流体を用いる手法を採用するシステムであれば、如何なる方法を採用しても構わない。
【0115】
ここで、ICチップ収納瓶15中のICチップ保存溶液16には、ICチップ同士の吸着を防ぐため、界面活性剤やアルコールを添加しておくと良い。また、ICチップ5の分散状態を保つため、ICチップ収納瓶15の外部から攪拌機などを利用してICチップ保存溶液16に振動や回転を与え続けると更に良い。
【0116】
ICチップ保存溶液16中でICチップ5が1個ずつ分散し、サスペンドしている状態において、ICチップ捕捉ノズル17を吸引し、その先端にICチップ5をピックアップする。ICチップ捕捉ノズル17は、陰圧・陽圧制御可能な第1のポンプ29に、第1の配管37を介して繋がっている。この構成により、ICチップ捕捉ノズル17は、その先端にICチップ5を吸引保持するだけでなく、先端に保持したICチップ5を遊離することも可能である。
【0117】
また、ICチップ捕捉ノズル17は、第1のアクチュエータ39により任意のx−y−z位置に位置決めすることができる。この実施例の場合、ICチップ捕捉ノズル17の先端部の内径はICチップ5の1辺よりも小さいもので、材質はガラス又はステンレス又はプラスチックである。
【0118】
外付けアンテナアレイ51は、図の左から右方向へベルト状の支持台等に搭載された状態でアクチュエータやスプロケット機構等を用いて搬送される。その際、外付けアンテナアレイ51に形成された各親水性エリア2には、分注ノズル19により液滴18が順次分注される。分注ノズル19の先端位置は、第2のアクチュエータ40により制御される。分注ノズル19の他端(根元側)は、第2の配管38を通じて第2のポンプ30に繋がっている。第2のポンプ30には溶液がストックされている。第2のポンプ30の圧力により、分注ノズル19の先端から一定量の微量液体が吐出される。圧力の発生には、圧縮空気の供給、内蔵シリンジによる空気の圧縮又は液体の圧縮、ピエゾ素子の変形等を利用できる。液滴18を第1の外付けアンテナアレイ51に付着させる方法には、液滴18を空中を飛ばす方法、親水領域の粘着性を利用してスタンプする方法のどちらを採用しても良い。
【0119】
第1の外付けアンテナアレイ51に液滴18が付着されると、次に、ICチップ捕捉ノズル17がICチップ5を保持した状態で液滴18上に搬送される。この後、第1のポンプ29を加圧すると、ICチップ5が先端から液滴18中に遊離される。
【0120】
その後、液滴18が乾燥される。液滴18の乾燥は、常温による自然乾燥でも良い。図18の場合には、プロセス速度を向上させるため、ヒータ27やランプ28等の加熱手段を、液滴18の搬送流路に配置する。
【0121】
(液滴の他の付着方法)
液滴の供給や配置に係る方法の変形例を図19及び図20に示す。図19は、液滴溶液収納瓶21に保存されている液滴溶液22に液滴捕捉ピン20の先端31を浸し、先端31に滴32を形成する。このため、先端31は先端ほど細くなる錐形状に加工されている。図19に示す装置構成の場合には、先端31に形成された滴32を、第1の外付けアンテナアレイ51上の親水性エリア2に接触させる。これにより、親水性エリア2に接触した液滴18が生成又は配置される。この場合、親水性エリア2の表面の方が、液体捕捉ピン20の先端よりも親水度が高いようにしておく必要がある。
【0122】
図20は、外付けアンテナアレイ51を液滴溶液バス23内の液滴溶液22に浸しながら通過させることにより、外付けアンテナアレイ51の親水性エリア2に液滴18を形成する方法を示している。この方法の場合、親水性エリア2を中心に非常に簡便に、かつ、多数の液滴18を一度に生成又は配置できる。ただし、親水性エリア2の周囲に形成される疎水性エリア3の疎水度を高くしておくことが重要である。また、疎水性エリア3の疎水度は、その表面に液体を乗せた場合に接触角が100度以上になるように選択しておくことが必要である。
【0123】
なお、図20に示す経路で外付けアンテナアレイ51を搬送する場合、その基材はフレキシブルなシートであることが望ましい。この場合、外付けアンテナアレイ51は、搬送支持ローラ33により液滴溶液バス23内に誘導され、その後、液滴溶液22中から引き上げるられる。
【0124】
(圧着方法)
図29Cは、圧着工程を示す図である。押付けローラ69で2枚の外付けアンテナアレイ51を密着させ、その後、圧着ヘッド73による押付けで、ICチップ5と外付けアンテナ52との接合を完了する。押付け機72によって圧着ヘッド73を上下に動かすことにより、図5に示すように、ICチップ5を外付けアンテナ52に押付けることができる。圧着ヘッド73の底面は全面が平らでも良いが、ICチップ5の搭載エリアを選択的に押付けるように底面にピンが立っていても良い。図29Cの場合、ICタグアレイ71の下部にヒータを設置し、ヒータ27との併用で熱圧着する場合を示している。もっとも、圧着ヘッド73自体が温調機能により、熱圧着を実現しても良い。また、ICチップ5の接合に熱硬化樹脂を用いず、超音波接合を採用する場合には、圧着ヘッド73の先端に超音波振動子を搭載すれば良い。
【0125】
(裁断システム)
図30は、ICタグ巻取りリール68を裁断システムに設置し、第1の切削装置75と第2の切削装置76でICタグアレイ71を単一のICタグ54に切り離す工程を示している。この例の場合、搬送ローラ74が、第1の切削装置75と第2の切削装置76の設置場所にICタグアレイ71を搬送する。図30に示すように、スプロケット穴78をキャリアシート79の両端に加工した厚めのプラスチック製のキャリアシート79を極薄のICタグアレイ71に裏打ちしておくと、ICタグアレイ71のよれや破れを防止でき、搬送が容易となる。
【0126】
[実施例5]
図27に、液滴によるICチップ5の搬送方法を用いて、基板を三次元的に組み立てた場合の断面構造例を示す。図27の場合、積層基板24は3枚であり、各基板はいずれも液滴によって搬送される。図28は、液滴による搬送方法を用いて、ICチップ5だけでなく金属板25と、さらに、その上に金属配線26も実装した場合の断面構造例である。金属板25には、例えば金箔、Cu、Al、Sn、Ti、NICo、Agがある。図28の場合、位置決めされた後のICチップ5の表面に新たに液滴18を付着し、更に、液滴18に金属板25を付着することにより、金属板25を自己整合的に搬送できる。その後に、さらに液滴18に微小な金属配線を付着させて、金属配線26をも搬送することが可能である。なお、この三次元的な組み立て方法の場合、新たに積層する基板や金属板25の下地となる表面は親水性を有することが必要がある。なお、材料自体が親水性を有しない場合には、新たに基板等を積層する前に親水性加工すればよい。
【0127】
このように、極小かつ極薄のICチップ5以外でも、親水エリアと疎水性エリアを利用した液滴18による流体制御技術により、目的の位置に被搬送物を自在に配置することができる。
【符号の説明】
【0128】
1…非導電性基材、2…親水性エリア、3…疎水性エリア、4…流路、5…ICチップ、6…集積回路層、7…第1の電極層、8…第2の電極層、9…疎水性非導電性膜層、10…親水性導電性膜層、11…親水性樹脂膜層、12…導電性粒子を含む親水性樹脂膜層、14…空気層、15…ICチップ収納瓶、16…ICチップ保存溶液、17…ICチップ捕捉ノズル、18…液滴、19…分注ノズル、20…液体捕捉ピン、21…液滴溶液収納瓶、22…液滴溶液、23…液滴溶液バス、24…積層基板、25…金属板、26…金属配線、27…ヒータ、28…ランプ、29…第1のポンプ、30…第2のポンプ、31…液体捕捉ピンの先端、32…滴、33…搬送支持ローラ、35…第1の電極貫通路、36…第2の電極貫通路、37…第1の配管、38…第2の配管、39…第1のアクチュエータ、40…第2のアクチュエータ、41…片面電極ICチップ、42…第2の両面電極ICチップ、51…外付けアンテナアレイ、52…外付けアンテナ、53…アンテナスリット、54…ICタグ、56…第1の片面電極層、57…第2の片面電極層、58…外付けアンテナ主要部、59…第1の両面電極チップ、60…埋め込み電極路、61…親水性ポケット、62…保護シート、63…第1の外付けアンテナリール、64…第2の外付けアンテナリール、65…分注装置、66…ICチップ操作装置、67…圧着装置、68…ICタグ巻取りリール、69…押し付けローラ、70…反転用ローラ、71…ICタグアレイ、72…押付け機、73…圧着ヘッド、74…搬送ローラ、75…第1の切削装置、76…第2の切削装置、77…切削用支持台、78…スプロケット穴、79…キャリアシート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集積回路素子が形成された半導体基板と、
前記半導体基板を搭載する第1の表面エリアの周辺に、当該第1の表面エリアより臨界表面張力が小さい第2の表面エリアを配置した半導体搭載基板と
を有し、
前記第1の表面エリアの面積は、当該エリア内に搭載する前記半導体基板の面積よりも大きい
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第1の表面エリアは1つ又は複数のパターンを有し、当該パターンの臨界表面張力は前記第2の表面エリアの臨界張力よりも小さく、かつ、パターン幅が前記半導体基板の厚みよりも狭い
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1の表面エリアは導電性材料であり、前記半導体基板と電気的に接続される
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1の表面エリアの基材は、導電性材料層と当該導電性材料層の上層に形成される導電性の熱硬化樹脂層とで構成される
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1の表面エリアの基材は、導電性材料層と当該導電性材料層の上層に形成される非導電性の熱硬化樹脂層とで構成される
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1の表面エリアの基材は、導電性材料層と当該導電性材料層の上層に形成される導電性粒子を含有する非導電性樹脂層とで構成される
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1及び第2の表面エリアが形成された前記半導体搭載基板の基板面との対面位置に配置され、前記半導体搭載基板と共に前記半導体基板を両側から挟み込む第2の半導体基板搭載基板を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記半導体基板は、両面に電極パッドを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記半導体基板は、片面にのみ電極パッドを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項10】
半導体基板を捕捉する手段と、
前記半導体基板を搭載する第1の表面エリアの周辺に、当該第1の表面エリアより臨界表面張力が小さい前記第2の表面エリアを配置した半導体搭載基板の所定位置に、前記第1の表面エリアより大きい直径を有する液滴を付着させる手段と、
前記半導体搭載基板上に配置された液滴に前記半導体基板を付着させる手段と
を有することを特徴とする半導体装置製造装置。
【請求項11】
前記半導体基板と吸着した前記液滴を蒸発させる手段
を有することを特徴とする請求項10に記載の半導体装置製造装置。
【請求項12】
前記半導体基板を捕捉する前記手段は、前記半導体基板より小さい口径を有するノズルと、前記ノズルに連結された吸引手段とを有し、前記半導体基板を含む溶液中に注入されたノズルの先端に前記半導体基板を捕捉する
ことを特徴とする請求項10に記載の半導体装置製造装置。
【請求項13】
前記半導体搭載基板に液滴を付着させる前記手段は、溶液タンクと当該溶液タンクが貯蔵する液体を吐出する分注ノズルとで構成され、一定量の液体を前記半導体搭載基板上の所定位置に吐出する
ことを特徴とする請求項10に記載の半導体装置製造装置。
【請求項14】
前記半導体搭載基板に液滴を付着させる前記手段は、溶液タンクと当該溶液タンクが貯蔵する液体をテーパ加工された先端に保持する分注ピンとで構成され、前記分注ピンの先端に捕捉された液滴を前記半導体搭載基板上の所定位置に付着させる
ことを特徴とする請求項10に記載の半導体装置製造装置。
【請求項15】
前記半導体搭載基板に液滴を付着させる前記手段は、溶液タンクと当該溶液タンクが貯蔵する液体の液滴を噴射する吐出ノズルとで構成され、1つ又は複数の液滴を前記半導体搭載基板上の所定位置に着滴させる
ことを特徴とする請求項10に記載の半導体装置製造装置。
【請求項16】
前記半導体搭載基板に液滴を付着させる前記手段は、液体の貯蔵槽と当該貯蔵槽に前記半導体搭載基板の少なくとも一部を浸す機構とで構成される
ことを特徴とする請求項10に記載の半導体装置製造装置。
【請求項17】
前記液滴に前記半導体基板が付着された後、前記半導体搭載基板の基板面を転置する手段
を有することを特徴とする請求項10に記載の半導体装置製造装置。
【請求項18】
前記半導体搭載基板に液滴を付着させる前記手段、及び、液滴に前記半導体基板を付着させる前記手段は、切断後に前記半導体搭載基板となる複数の領域を有する基材を処理対象とする
ことを特徴とする請求項10に記載の半導体装置製造装置。
【請求項19】
半導体基板を捕捉する工程と、
前記半導体基板を搭載する第1の表面エリアの周辺に、当該第1の表面エリアより臨界表面張力が小さい前記第2の表面エリアを配置した半導体搭載基板の所定位置に、前記第1の表面エリアより大きい直径を有する液滴を付着させる工程と、
前記半導体搭載基板上に配置された液滴に前記半導体基板を付着させる工程と
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項20】
半導体基板より大きいサイズに生成された液滴を半導体搭載基板上に付着させる工程と、
前記液滴上に前記半導体基板を付着させる工程と
により製造された半導体装置。
【請求項21】
前記半導体基板が付着された液滴を乾燥させる工程と
ことを特徴とする請求項20に記載の半導体装置。
【請求項22】
前記半導体搭載基板は、前記半導体基板の搭載領域となる微小な親水性エリアと、当該親水性エリアの周囲を取り囲む疎水性エリアとを有する
ことを特徴とする請求項20に記載の半導体装置。
【請求項23】
前記半導体基板が所定の領域に搭載された後、金属板より大きいサイズに生成された液滴を前記半導体基板を含む前記半導体搭載基板上に付着させる工程と、
前記液滴上に前記金属板を付着させる工程と
ことを特徴とする請求項20に記載の半導体装置。
【請求項24】
集積回路素子が形成された半導体基板と、
前記半導体基板を搭載する第1の表面エリアの周辺に、当該第1の表面エリアより臨界表面張力が小さい前記第2の表面エリアを配置した半導体搭載基板と
を有することを特徴とするICタグ。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図10E】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21A】
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【図21B】
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【図22A】
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【図22B】
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【図22C】
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【図22D】
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【図23】
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【図24A】
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【図24B】
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【図24C】
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【図25A】
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【図25B】
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【図25C】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29A】
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【図29B】
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【図29C】
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【図30】
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【公開番号】特開2011−227814(P2011−227814A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98897(P2010−98897)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】