説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】両面配線のTABテープBGA型半導体装置の配線テープと放熱板との接着面に生ずるボイドの低減
【解決手段】中心部を開口した絶縁性基材101の表面に第1配線102A及び外部接続端子102Bを形成した配線テープ1の裏面に絶縁接着材2及び放熱板3を設ける。基材101の開口部内に半導体チップ4を設けチップの外部電極401と第1配線102Aをワイヤ5で接続して樹脂6でモールドする。配線テープ1の裏面には第2配線103とその周囲を除く領域に、銅メッキ層105で覆った接地層104を設け基材101表面の第1配線102A及び外部接続端子102Bとビア孔を介して接続する。第2配線103と接地層104間は2重のメッキ層105・107をはさんで絶縁体108を設ける。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体装置及びその製造方法に関し、特に、配線テープに放熱板を接着したテープBGA(Ball Grid Array )型の半導体装置に適用して有効な技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、BGA型の半導体装置の一つに、TAB(Tape Automated Bonding)テープのような薄い配線テープを用いたテープBGA(以下、T−BGAと称する)型の半導体装置がある。
【0003】前記T−BGA型の半導体装置は、図12(a)及び図12(b)に示すように、中心部が開口された絶縁性のテープ状基材101の第1主面(表側面)に第1配線102A及びその外部接続端子102Bが形成された配線テープ(TABテープ)1を設け、前記配線テープ1の第1主面(表側面)と対向する第2主面(裏側面)に、例えば、エポキシ系樹脂のような熱硬化性樹脂からなる絶縁体(接着材)2を介在させて放熱板3を接着し、前記放熱板3の前記配線テープ1の開口部1A内に半導体チップ4を接着し、前記半導体チップ4の外部電極401と前記第1配線102Aとがボンディングワイヤ5で接続されており、前記半導体チップ4、ボンディングワイヤ5、及びそれらの接続部をモールド樹脂6により封止した構成になっている。また、前記第1配線の外部接続端子102B上には、例えば、Pb−Sn系はんだ等からなるボール端子7が接続されている。
【0004】また、前記T−BGA型の半導体装置では、前記配線テープ(TABテープ)1に、例えば、前記テープ基材101の第1主面及び第2主面の両方に配線を形成した2メタル構造の配線テープを用いて、図13(a)及び図13(b)に示すように、前記テープ基材101の第1主面(表側面)に信号配線等の第1配線102A及びその外部接続端子102Bを設け、前記テープ基材101の第2主面(裏側面)に電源配線などの第2配線103を設けている。また、前記テープ基材101の第2主面に設けられた前記第2配線103の周囲の領域を除く領域には、図13(a)に示すように接地電位層(グランド面)104が設けられている。前記第2配線103及び接地電位層104上には銅めっき層(第1めっき層)105が設けられており、前記銅めっき層105は、前記テープ基材101の所定位置に設けられたビア孔により前記第1配線102A及びその外部接続端子102Bと接続されている。
【0005】また、前記第1配線102A及び外部接続端子102Bの接続部分以外の領域は、外部からの汚染物質や傷等から配線を保護するために、例えば、ソルダレジスト(SR)やフォトソルダレジスト(PSR)等の配線保護膜106が設けられている。前記第1配線102A及びその外部接続端子102Bの接続部には、前記第1配線102Aのワイヤボンディング性及び前記外部接続端子102Bのはんだ接続性をよくするために、例えば、ニッケル(Ni)めっき層及び金(Au)めっき層を積層させためっき層(第2めっき層)107が形成されている。
【0006】また、前記2メタル構造の配線テープ(TABテープ)では、前記接着剤を貼り付ける際、または前記接着剤を硬化させる際に、各構成材料に残留した酸素もしくは材料を透過した酸素により、接着界面、すなわち第2配線103、接地電位層104、及びそれらの表面に設けられた銅めっき層105の銅表面を酸化させ、酸化スケールの発生につながる事が容易に予測される。酸化スケールそのものは非常に脆弱な酸化物であり、酸化スケール内での剥離が容易に発生するので、装置の信頼性が低下する。そのため、前記第2配線103、接地電位層104、及び銅めっき層105の酸化を防止するために、図11(b)に示したようなめっき層107を設ける必要がある。
【0007】前記2メタル構造の配線テープ(TABテープ)では、ワイヤボンディング性及びはんだ接続性の向上のために、第1配線102A及び外部接続端子102Bの表面にニッケルめっき及び金めっきを施してめっき層107を形成するため、前記めっき層107を形成する際に、前記第2配線103及び接地電位層104の表面にもニッケルめっき及び金めっきを施してめっき層107を形成することで、製造工程を増やすことなく安価に、前記第2配線103、接地電位層104及び銅めっき層105の酸化を防ぐことができる。
【0008】ここで、前記第2配線103及び接地電位層104の表面の銅めっき層105にめっき層107を形成して、その表面を金めっき処理した場合、前記接着剤2との密着性が、銅の場合に比べ一般的に低くなるが、前記接着剤2として用いる材料を適宜選定する事により、信頼性の目安となるピール強度の値2kgf /cmを十分確保することができる。
【0009】前記T−BGA型の半導体装置は、装置の小型化にともない、使用する配線テープ1に形成する配線が微細化されるとともに隣り合う配線間の間隔も狭くなってきており、隣り合う配線間での電磁界結合、言い換えると配線間の相互インダクタンスによるノイズの発生が問題になる。このとき、前記配線間で生じるノイズにもっとも影響があるのは、前記配線の大部分を占める信号配線に印加される電圧との電位差が大きい、前記半導体チップ4の動作電圧を供給する電源配線である。そのため、前記テープ基材の前記信号配線(第1配線102A)が形成された第1主面の裏側に電源配線(第2配線103)を形成し、前記電源配線を信号配線から遠ざけることにより、前記信号配線と電源配線の間の相互インダクタンスによるノイズを低減させている。
【0010】また、前記配線テープ(TABテープ)1の第1主面上に設けられる信号配線間でも、隣り合う配線同士の間隔が狭くなると、共振現象が発生してクロックパルスなどの信号波形が乱れるという問題がある。そのため、図13(a)に示すように、前記配線テープ(TABテープ)の第2主面の、前記第2配線103及びその周囲を除く領域に接地電位層(グランド面)104を設ける。前記接地電位層(グランド面)104には、前記第1配線102Aに流れる電流により発生する磁束を打ち消すような方向に渦電流が流れるので、第1配線102Aの自己インダクタンスや配線間の相互インダクタンス、誘電性クロストークを見かけ上低減することができるので、例えば、前記第1配線(信号配線)102に高周波信号が印加される場合などに有効であり、電気信号の信頼性及び信号の伝送速度の高速化を図ることができる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記従来の技術では、2メタル構造の配線テープを用いて、前記配線テープ1の第2配線103及び接地電位層(グランド面)104上に絶縁体(接着材)2を介して放熱板3を接着するときに、シート状の接着材を用いるため、図13(b)に示すように、前記第2配線103と接地電位層104の間にボイド11ができて空気が残ってしまう。そのため、製造工程中における加熱処理や、製品として使用中に半導体チップ4から生じる熱により、前記ボイド11内に残った空気が膨張して、前記第2配線103の周辺の接着材2が剥離するという問題があった。
【0012】また、前記第2配線103及び接地電位層104の表面のめっき層107は、前記接着材2との接着性が必ずしもよくないので、前記第2配線103の周辺で接着材2が剥離してクラックが生じると、そのクラックが進行して最終的に配線テープ1と接着材2が剥離してしまうため、装置の信頼性が低下するという問題があった。
【0013】本発明の目的は、テープ基材の両面に配線が形成された配線テープに接着材を介して放熱板を接着したT−BGA型の半導体装置において、前記配線テープと接着材の接着面に生じるボイドを低減することが可能な技術を提供することにある。
【0014】本発明の他の目的は、テープ基材の両面に配線が形成された配線テープに接着材を介して放熱板を接着したT−BGA型の半導体装置において、前記配線テープと接着材の接着面での剥離を低減することが可能な技術を提供することにある。
【0015】本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面によって明らかになるであろう。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明において開示される発明の概要を説明すれば、以下のとおりである。
【0017】(1)中心部が開口された絶縁性のテープ状基材の第1 主面(表側面)に第1配線及びその外部接続端子が形成された配線テープを設け、前記配線テープの第1主面(表側面)と対向する第2主面(裏側面)に絶縁体を介在させて放熱板を設け、前記配線基板の開口部内に半導体チップを設け、前記半導体チップの外部電極と前記第1配線とをボンディングワイヤで接続し、前記半導体チップ、ボンディングワイヤ、及びそれらの接続部を樹脂により封止してなる半導体装置において、前記配線テープの前記第2主面に第2配線を設け、前記第2配線及び前記第2配線の周囲を除く領域に接地電位層(グランド面)を設け、前記テープ基材の所定位置に前記第2配線及び接地電位層と前記第1配線及びその外部接続端子を接続する導通ビアを設け、前記第2配線の周囲に、前記第2配線と前記接地電位層の間を絶縁する絶縁体が設けられている半導体装置である。
【0018】前記(1)の手段によれば、前記第1主面及び第2主面の両面に配線が形成された2メタル構造の配線テープ(TABテープ)を用いたT−BGA型の半導体装置において、前記配線テープの第2配線の周囲に絶縁体を設けて前記第2配線と接地電位層の間を絶縁することにより、前記配線テープの第2主面に絶縁体(接着材)を介して放熱板を接着したときに、前記第2配線と接地電位層の間にボイドができることを防げる。そのため、製造工程中における加熱処理や、使用中に半導体チップから発生する熱でボイドが膨張して前記第2配線と第1絶縁体が剥離することを防げる。また、前記第2配線と絶縁体(接着材)の剥離を低減できるため、配線テープと前記第1絶縁体の接着面での剥離を低減させることができ、装置の信頼性を向上することができる。
【0019】また、前記2メタル構造の配線テープ(TABテープ)では、第2配線103及び接地電位層104の銅表面の酸化を防ぐためにめっき処理を施す必要がある。前記2メタル構造の配線テープは、第1配線及び外部接続端子の表面にニッケルめっき及び金めっきを施してめっき層を形成するため、前記めっき層を形成する際に、前記第2配線及び接地電位層の表面にもニッケルめっき及び金めっきを施してめっき層を形成することで、製造工程を増やすことなく安価に、前記第2配線及び接地電位層の酸化を防ぐことができる。
【0020】ここで、前記第2配線及び接地電位層にめっき層を形成して、その表面を金めっき処理した場合、前記接着剤との密着性が、銅の場合に比べ一般的に低くなるが、前記接着剤として用いる材料を適宜選定する事により、信頼性を十分確保することができる。
【0021】(2)中心部が開口された絶縁性のテープ状基材の第1主面(表側面)上に第1配線及びその外部接続端子が形成された配線テープを形成する配線テープ形成工程と、前記配線テープの第1主面(表側面)と対向する第2主面(裏側面)に、前記テープ基材の開口部と平面的に重なる位置に開口部を有するフィルム状の絶縁体を配置する絶縁体配置工程と、前記絶縁体の前記配線テープが配置された面と対向する面に放熱板を配置して、前記配線テープと放熱板を接着する放熱板接着工程と、前記放熱板の、前記配線テープの開口部に半導体チップを搭載する半導体チップ搭載工程と、前記半導体チップの外部電極と前記配線テープの配線をボンディングワイヤにより接続する配線接続工程と、前記配線基板の開口部の半導体チップ、ボンディングワイヤ、及びそれらの接続部を封止する封止工程とを備える半導体装置の製造方法において、前記配線テープ形成工程は、前記テープ基材の第1主面及び第2主面のそれぞれに導電性薄膜を形成し、前記テープ基材の所定位置に前記第2主面側からビア孔を形成し、前記導電性薄膜上及びビア孔内部に第1めっき層を形成し、前記第2主面上の導電性薄膜をエッチングして、第2配線及び接地電位層(グランド面)を形成し、前記配線テープの中心部に開口部を形成し、前記第1主面上の導電性薄膜をエッチングして、第1配線及びその外部接続端子を形成し、前記第1主面上に、前記第1配線及びその外部接続端子が部分的に露出するように配線保護膜を形成し、前記第1配線及びその外部接続端子の露出面、前記第2配線及び接地電位層表面に第2めっき層を形成し、前記第2配線の周辺に液状の絶縁体を塗布して硬化させ、前記第2配線と接地電位層間を絶縁する。
【0022】前記(2)の手段によれば、前記第1主面及び第2主面の両面に配線が形成された2メタル構造の配線テープ(TABテープ)を形成し、前記2メタル構造の配線テープを用いてT−BGA型の半導体装置を製造する際に、前記配線テープの第1主面に第1配線、外部接続端子を形成し、前記テープ基材の第2主面に第2配線及び接地電位層(グランド面)を形成した後、前記配線テープの第2配線の周囲に液状の絶縁体を塗布して硬化させることにより、前記第2配線と接地電位層の間を前記絶縁体で埋めることができる。そのため、その後の工程で前記第2配線及び接地電位層上に絶縁体(接着材)を介して放熱板を接着したときに、前記第2配線と接地電位層の間にボイドができないので、製造工程中における加熱処理時のボイドの膨張による前記第2配線と絶縁体(接着材)の剥離を防ぐことができる。
【0023】また、前記第1配線及び外部接続端子に、部分的にめっき処理を行う際に、前記第2配線及び接地電位層(グランド面)にも同時にめっき処理を行うことで、前記第2配線及び接地電位層の酸化を防ぎ、前記接着材の剥離を防ぐことができる。また、同時にめっき処理をするので製造工程が増えず、製造コストが増大するのを抑えることができる。
【0024】以下、本発明について、図面を参照して実施の形態(実施例)とともに詳細に説明する。
【0025】なお、実施例を説明するための全図において、同一機能を有するものは、同一符号をつけ、その繰り返しの説明は省略する。
【0026】
【発明の実施の形態】(実施例)図1乃至図4は、本発明による一実施例の半導体装置の概略構成を示す模式図であり、図1(a)は半導体装置の平面図、図1(b)は図1(a)のA−A’線での断面図、図2(a)は配線テープの第1主面側から見た模式平面図、図2(b)は図2(a)の裏面図、図3は図2(b)の部分拡大図、図4(a)は図3のB−B’線での断面図、図4(b)は図3のC−C’線での断面図である。なお、図1(b)の断面図では、本実施例の半導体装置の構成を把握しやすくするために平行斜線(ハッチング)を省略して示している。
【0027】図1乃至図4において、1は配線テープ、1Aは開口部、101はテープ状基材、102Aは第1配線、102Bは第1配線の外部接続端子、103は第2配線、104は接地電位層(グランド面)、105は銅めっき層(第1めっき層)、106は配線保護膜、107はめっき層(第2めっき層)、108は絶縁体、2は絶縁体(接着材)、3は放熱板、4は半導体チップ、401は外部電極、5はボンディングワイヤ、6はモールド樹脂、7はボール端子、8は接着剤である。
【0028】本実施例の半導体装置は、図1及び図2に示すように、中心部が開口された絶縁性のテープ状基材101の第1 主面(表側面)に第1配線102A及びその外部接続端子102Bが形成された配線テープ1と、前記配線テープ1の第1主面(表側面)と対向する第2主面(裏側面)に絶縁体2を介在させて設けられる放熱板3と、前記配線テープ1の開口部1A内に設けられる半導体チップ4と、前記半導体チップ4の外部電極401と前記第1配線102Aとを接続するボンディングワイヤ5と、前記半導体チップ4、ボンディングワイヤ5、及びそれらの接続部がモールド樹脂6により封止されており、前記外部接続端子102B上にボール端子7が設けられたテープBGA(T−BGA)型の半導体装置である。
【0029】また、本実施例の半導体装置で用いる前記配線テープ(TABテープ)1は、前記配線テープの第1主面及び第2主面の両面に配線が形成された2メタル構造のTABテープであり、図3及び図4に示すように、前記配線テープ1の前記第2主面に第2配線103が設けられ、前記第2配線103及び前記第2配線103の周囲を除く領域に接地電位層 (グランド面)104が設けられている。また、前記第2配線103及び接地電位層104は、図4に示すように表面に銅めっき層(第1めっき層)105が設けられている。前記銅めっき層105は、前記テープ基材101の所定位置に設けられたビア孔を介して前記第1配線102A及びその外部接続端子102Bと接続される。
【0030】また、前記配線テープ1の第1主面上に形成された第1配線102A及び外部接続端子102Bの接続部以外の部分は、例えば、ソルダレジスト(SR)やフォトソルダレジスト(PSR)のような配線保護膜106により保護されている。
【0031】また、前記第1配線102A及びその外部接続端子102Bの接続部には、例えば、ニッケルめっき層および金めっき層を積層しためっき層(第2めっき層)107が設けられている。また、前記第2配線103及び接地電位層(グランド面)104上の銅めっき層105の表面にも前記めっき層107が形成されている。また、前記第2配線103の周囲には、前記第2配線103と前記接地電位層104の間を絶縁する絶縁体108が設けられている。
【0032】また、前記配線テープ1と放熱板3を接着する絶縁体(接着材)2は、例えば、熱硬化性のエポキシ系樹脂などが用いられる。
【0033】また、前記放熱板3は、前記半導体チップ4で発生する熱を効率良く放熱するとともに、前記配線テープ1の補強材としても機能させるため、例えば、銅(Cu)等の材料が用いられる。
【0034】本実施例のT−BGA型の半導体装置では、前記配線テープ1の第2配線103の周辺は、図3及び図4に示すように、前記第2配線103と前記接地電位層104の間を絶縁する絶縁体108が設けられている。そのため、前記配線テープ1の第2配線103及び接地電位層104上に前記絶縁体(接着材)2を介して前記放熱板3を接着するときに、前記第2配線103と接地電位層104の間にボイドが生じないので、例えば、使用中に半導体チップ4から発生する熱でボイドが膨張して前記第2配線103と絶縁体(接着材)2の接着面の剥離が生じることを防げる。また、前記第2配線103及び接地電位層(グランド面)104上のめっき層107と絶縁体(接着材)2の接着面の接着力が弱い場合でも、前記第2配線103部分での剥離を防げ、その剥離部分からのクラックの進行による配線テープ1と絶縁体2が剥離することを防げる。
【0035】図5乃至図10は、本実施例の半導体装置の製造方法を説明するための各製造工程における模式図である。なお、図5(b)、図6、図8(b)、及び図9(b)は、図3のB−B’線での断面に相当する断面図を示している。
【0036】以下、図5乃至図10に沿って、本実施例の半導体装置の製造方法について説明する。なお、本実施例で使用する配線テープ(TABテープ)1の製造方法は、例えば、文献「Norio Okabe, Yasuhiro Kameyama, Hiroki Tanaka, Katsutoshi Taga, "2 Metal Layer TBGA Tape for High Speed, High Pin Count LSI Packaging", HITACHI CABLE REVIEW, No.16, (August 1997), 49-54 」等に記載されたような、従来の2メタル構造の配線テープの製造方法とほぼ同様であるため、各工程の詳細な説明は省略する。
【0037】まず、本実施例の半導体装置で使用する2メタル構造の配線テープ(TABテープ)を製造するために、図5(a)及び図5(b)に示したような、例えば、ポリイミドのような絶縁性のテープ基材の両面に、銅箔等の導電性薄膜109A,109Bが形成された銅箔付きテープ9を準備する。前記銅箔付きテープは、例えば、圧延銅箔をテープ基材101の両面に接着剤で張り合わせたものや、例えば、スパッタリングなどで前記テープ基材101上に銅を蒸着して薄膜を形成することにより得られる。前記銅箔付きテープ9は細長いテープ状のものであって、図5(a)に示したような配線テープ形成領域1’が複数個連続して設けられている。
【0038】次に、図6(a)に示すように、前記銅箔付きテープ9の所定位置に、例えば、炭酸ガスレーザにより、一方の主面(第2主面)からもう一方の主面(第1主面)の導電性薄膜に達するビア孔10を形成した後、図6(b)に示すように、第2主面全面、及び前記ビア孔10の側面に第1めっき層として、銅(Cu)めっき層105を形成する。前記銅めっきは、例えば、電解めっき法、もしくは無電解めっき法と電解めっき法を組み合わせた方法で形成する。
【0039】次に、前記銅箔付きテープ9の第2主面側、言い換えると前記ビア孔10を開口した面をエッチングして、図6(c)に示すように、第2配線103及び前記第2配線103の周囲の領域を除く接地電位層(グランド面)104を形成する。なお、前記第2配線103及び接地電位層104は、例えば、図2(b)に示したようなパターンで形成される。
【0040】次に、前記配線基板形成領域1’の中央部に、例えば、炭酸ガスレーザ等で、図7(a)に示すように、開口部1Aを形成し、その後、前記導電性薄膜109Aをエッチングして、図7(a)及び図7(b)に示すように、第1配線102A及びその外部接続端子102Bを形成する。なお、図7(a)では一部省略しているが、各外部接続端子102Bは、第1配線102Aと直接、もしくは第2配線等を介して前記開口部1Aの周囲に引き回されている。
【0041】次に、図8(a)に示すように、前記第1配線102A及びその外部接続端子102Bを外部からの汚染物質や傷から保護するために、例えば、ソルダレジストやフォトソルダレジストのような配線保護膜106を形成する。
【0042】次に、電解めっき法、無電解めっき法、あるいは電気めっき法などを用いて、図8(b)に示すように、前記第1配線102Aのワイヤボンディング性や外部接続端子102Bのはんだ接続性をよくするためのめっき層(第2めっき層)107を形成する。このとき同時に、前記第2主面の第2配線103及び接地電位層104上の銅めっき層105の表面にも、酸化を防止するためにめっき層107を形成する。前記めっき層107は、例えば、ニッケル(Ni)めっき層及び金(Au)めっき層を積層して形成する。
【0043】次に、図9(a)及び図9(b)に示すように、前記第2配線103の周辺に、例えば、ソルダレジスト(SR)のような液状の絶縁体108を塗布して硬化させると、本実施例のT−BGA型の半導体装置で用いる2メタル構造の配線テープ(TABテープ)1が形成される。
【0044】次に、図10(a)及び図10(b)に示すように、前記配線テープ1の前記第2配線103及び接地電位層104上に、前記配線テープ1の開口部1Aと平面的に重なる位置に開口部を有するフィルム状の絶縁体(接着材)2を配置し、前記絶縁体2の前記配線テープ1が配置された面と対向する面に放熱板3を配置して、前記配線テープ1と放熱板3を接着する。このとき、前記絶縁体(接着材)2として、例えば、熱硬化性のエポキシ系樹脂などが用いられるため、前記配線テープ1と放熱板3を接着するために加熱処理をするが、前記配線テープ1の第2配線103と接地電位層(グランド面)104の間は絶縁体108で埋められているためボイドがなく、加熱時のボイドの膨張による前記第2配線103と絶縁体(接着材)2の剥離を防ぐことができる。またこのとき、前記絶縁体(接着材)2は、前記第2配線103及び接地電位層104表面の金めっきとの密着性をよくするために、主材料及び添加物の量を適宜調整して、所定の密着信頼性を得られるようにする。
【0045】次に、図11(a)及び図11(b)に示すように、前記放熱板3の、前記配線テープの開口部1A内に半導体チップ4を搭載し、前記半導体チップ4の外部電極401と前記配線テープ1の第1配線102Aをボンディングワイヤ5により接続する。
【0046】その後、前記配線テープ1の開口部1A内の半導体チップ4、ボンディングワイヤ5及びそれらの接続部をモールド樹脂6で封止した後、前記外部接続端子102B上にボール端子7を接続すると、図1乃至図4に示したような、本実施例のT−BGA型の半導体装置を得ることができる。またこのときも、前記ボール端子7を接続する際には、加熱して前記ボール端子7を部分的に融解させるが、前記第2配線103と接地電位層104の間にボイドがないため、前記第2配線103と絶縁体(接着材)2の剥離を防ぐことができる。
【0047】以上説明したように、本実施例の半導体装置では、前記配線テープ(TABテープ)1の、放熱板3が接着される面に形成される第2配線103の周囲に、液状の絶縁体105を塗布して硬化させ、前記第2配線103と前記第2配線103の周囲に設けられる接地電位層(グランド面)104の間を前記絶縁体105で埋めることにより、前記第2配線103及び接地電位層104上にシート状の絶縁体(接着材)2を接着したときに、前記第2配線103の周囲にボイドができないようにすることができる。そのため、製造工程中の加熱処理により、前記ボイド内に残った空気が膨張して前記第2配線103と絶縁体(接着材)2の接着面が剥離することを防げる。また、前記第2配線103と絶縁体(接着材)2の接着面での剥離が防げるため、前記配線テープ1と絶縁体2の接着面内でのクラックの発生を少なくすることができるので、前記配線テープ1と絶縁体2の剥離による半導体装置の不良を低減することができる。
【0048】また、前記第1配線102A及びその外部接続端子102B上に、めっき層を形成する際に、前記第2配線103及び接地電位層104の表面にも同様のめっき層107を形成することで、前記第2配線103及び接地電位層104の酸化を防げるので、前記第2配線103及び接地電位層104の酸化による前記接着材2との接着面での剥がれを防げ、半導体装置の不良を防ぐことができる。
【0049】以上、本発明を、前記実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることはもちろんである。
【0050】
【発明の効果】本発明において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0051】(1)テープ基材の両面に配線が形成された配線テープに接着材を介して放熱板を接着したT−BGA型の半導体装置において、前記配線テープと接着材の接着面にボイドが生じることを防ぐことができる。
【0052】(2)テープ基材の両面に配線が形成された配線テープに接着材を介して放熱板を接着したT−BGA型の半導体装置において、前記配線テープと接着材の接着面での剥離を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による一実施例の半導体装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】本実施例1の半導体装置で用いる配線テープの概略構成を示す模式図である。
【図3】図2(b)の部分拡大図である。
【図4】図3のB−B’線での模式断面図及びC−C’線での模式断面図である。
【図5】本実施例の半導体装置の製造方法を説明するための模式図である。
【図6】本実施例の半導体装置の製造方法を説明するための模式図である。
【図7】本実施例の半導体装置の製造方法を説明するための模式図である。
【図8】本実施例の半導体装置の製造方法を説明するための模式図である。
【図9】本実施例の半導体装置の製造方法を説明するための模式図である。
【図10】本実施例の半導体装置の製造方法を説明するための模式図である。
【図11】本実施例の半導体装置の製造方法を説明するための模式図である。
【図12】従来のT−BGA型の半導体装置の概略構成を示す模式図である。
【図13】従来のT−BGA型の半導体装置の概略構成を示す模式図である。
【符号の説明】
1 配線テープ(TABテープ)
1A 開口部
101 テープ状基材
102A 第1配線
102B 外部接続端子
103 第2配線
104 接地電位層
105 銅めっき層(第1めっき層)
106 配線保護膜
107 めっき層(第2めっき層)
108 絶縁体
109A,109B 銅箔
2 絶縁体(接着材)
3 放熱板
4 半導体チップ
401 外部電極
5 ボンディングワイヤ
6 モールド樹脂
7 ボール端子
8 接着剤
9 銅箔付きテープ
10 ビア孔
11 ボイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】中心部が開口された絶縁性のテープ状基材の第1主面(表側面)に第1配線及びその外部接続端子が形成された配線テープを設け、前記配線テープの第1主面(表側面)と対向する第2主面(裏側面)に絶縁体を介在させて放熱板を設け、前記配線基板の開口部内に半導体チップを設け、前記半導体チップの外部電極と前記第1配線とをボンディングワイヤで接続し、前記半導体チップ、ボンディングワイヤ、及びそれらの接続部を樹脂により封止してなる半導体装置において、前記配線テープの前記第2主面に第2配線を設け、前記第2配線及び前記第2配線の周囲を除く領域に接地電位層(グランド面)を設け、前記テープ基材の所定位置に前記第2配線及び接地電位層と前記第1配線及びその外部接続端子を接続する導通ビアを設け、前記第2配線の周囲に、前記第2配線と前記接地電位層の間を絶縁する絶縁体が設けられていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】前記請求項1に記載の半導体装置において、前記第2配線及び接地電位層の表面に金(Au)めっき層が設けられていることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】中心部が開口された絶縁性のテープ状基材の第1主面(表側面)上に第1配線及びその外部接続端子が形成された配線テープを形成する配線テープ形成工程と、前記配線テープの第1主面(表側面)と対向する第2主面(裏側面)に、前記テープ基材の開口部と平面的に重なる位置に開口部を有するフィルム状の絶縁体を配置する絶縁体配置工程と、前記絶縁体の前記配線テープが配置された面と対向する面に放熱板を配置して、前記配線テープと放熱板を接着する放熱板接着工程と、前記放熱板の、前記配線テープの開口部に半導体チップを搭載する半導体チップ搭載工程と、前記半導体チップの外部電極と前記配線テープの配線をボンディングワイヤにより接続する配線接続工程と、前記配線基板の開口部の半導体チップ、ボンディングワイヤ、及びそれらの接続部を封止する封止工程とを備える半導体装置の製造方法において、前記配線テープ形成工程は、前記テープ基材の第1主面及び第2主面のそれぞれに導電性薄膜を形成し、前記テープ基材の所定位置に前記第2主面側からビア孔を形成し、前記導電性薄膜上及びビア孔内部に第1めっき層を形成し、前記第2主面上の導電性薄膜をエッチングして、第2配線及び接地電位層(グランド面)を形成し、前記配線テープの中心部に開口部を形成し、前記第1主面上の導電性薄膜をエッチングして、第1配線及びその外部接続端子を形成し、前記第1主面上に、前記第1配線及びその外部接続端子が部分的に露出するように配線保護膜を形成し、前記第1配線及びその外部接続端子の露出面、前記第2配線及び接地電位層表面に第2めっき層を形成し、前記第2配線の周辺に液状の絶縁体を塗布して硬化させ、前記第2配線と接地電位層間を絶縁することを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2002−118217(P2002−118217A)
【公開日】平成14年4月19日(2002.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−311720(P2000−311720)
【出願日】平成12年10月5日(2000.10.5)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】