説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】磁性層のエッチング工程において、磁性層を正確にエッチングして所定の形状とすることができ、かつ、導電層や絶縁層がエッチングされることを防止可能な半導体装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】レジスト層をエッチングマスクとして、第1磁性層16をエッチングし、磁性層を所定の形状にパターニングする。エッチングにあたっては、燐酸、または燐酸含む化合物もしくは混合物を用いてエッチングを行う。燐酸成分を含むエッチング液によってエッチングを行うことで、例えばNi−Znフェライト合金など燐酸、または燐酸含む化合物もしくは混合物などで浸蝕される第1磁性層16は、レジスト層のパターンに倣ってエッチングされ、例えば開口16aなどが形成された所定の形状とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の上に磁性層や導電層を形成した半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体からなる基板の一面側に導電層を形成した半導体装置を用い、この導電層をアンテナ回路として利用し、各種信号を無線で送受信する半導体デバイスが提案されている。このような半導体デバイスによって非接触で通信を行う場合、通信可能な距離がアンテナ回路の開口面積に依存するため、例えば、極めて小さな表面積しか有しないICチップなどにアンテナ回路を形成しても、開口面積が大きく取れないためにその通信距離は限られていた。
【0003】
こうしたアンテナ回路を有する半導体デバイスの通信距離を向上させるために、半導体装置の導電層に隣接して、絶縁層を挟んで磁性層を形成し、この磁性層によってアンテナ回路を成す導電層の磁場漏洩を抑制することで、アンテナ回路のインダクタンス値を向上させた半導体デバイスが提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平9−55316号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示したような、導電層からなるアンテナ回路を、絶縁層を介して磁性層で挟んだ半導体デバイスを製造する際には、半導体からなる基板の一面側に、順に導電層、絶縁層、磁性層を形成する。この後、コンタクトホールなどを形成するために、磁性層を所定の形状にパターニングする。
【0005】
磁性層を所定の形状にパターニングするにあたっては、エッチング液によって化学的なエッチングを行う方法が知られている。従来、こうした磁性層は強磁性体のCoを含む合金などから形成されているため、磁性層をエッチングする際には、強酸を含むエッチング液用いられていた。しかしながら、こうした強酸を含むエッチング液を用いて磁性層のエッチング行うと、磁性層に重ねて形成されている、絶縁層を構成する樹脂や、導電層を構成するCuなども、強酸によって浸蝕される虞があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、磁性層のエッチング工程において、磁性層を正確にエッチングして所定の形状とすることができ、かつ、導電層や絶縁層がエッチングされることを防止可能な半導体装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る半導体装置の製造方法は、半導体からなる基板の一面側に、第1絶縁層を挟んで、順に第1導電層及び磁性層を形成する半導体装置の製造方法であって、
燐酸、又は燐酸を含む化合物もしくは混合物を用い、前記磁性層に対してエッチング処理を施し、該磁性層を所定の形状とする工程を備えたことを特徴とする。
本発明の請求項2に係る半導体装置の製造方法は、請求項1において、前記基板の一面側と前記第1導電層との間に、第2絶縁層を形成する工程を、更に備えたことを特徴とする。
本発明の請求項3に係る半導体装置の製造方法は、請求項1において、前記基板の一面側と前記第1導電層との間に、第2磁性層を形成する工程を、更に備えたことを特徴とする。
本発明の請求項4に係る半導体装置の製造方法は、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記第1磁性層に重ねて、順に第3絶縁層、及び前記第1導電層と電気的に接続される第2導電層を形成する工程を、更に備えたことを特徴とする。
本発明の請求項5に係る半導体装置の製造方法は、請求項1ないし4のいずれか1項において、前記第1導電層及び/又は前記第2導電層は、アンテナ回路として機能するように加工することを特徴とする。
本発明の請求項6に係る半導体装置の製造方法は、請求項1ないし5のいずれか1項において、少なくとも前記第1絶縁層及び/又は前記第3絶縁層は光硬化性樹脂または熱硬化樹脂を用いて形成されることを特徴とする。
本発明の請求項6に係る半導体装置は、半導体からなる基板の一面側に、第1絶縁層を挟んで、順に第1導電層及び第1磁性層を有する半導体装置であって、
前記第1磁性層は燐酸、または燐酸含む化合物もしくは混合物によってエッチング性を有する材料からなり、かつ、前記第1導電層は燐酸、または燐酸含む化合物もしくは混合物に対して耐エッチング性を有する材料からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の半導体装置によれば、第1磁性層を燐酸成分によってエッチング可能な材料で形成し、燐酸、又は燐酸を含む化合物もしくは混合物を用いてエッチング処理を施すことで、第1磁性層を所定の形状にできるとともに、第1磁性層のエッチング工程で第1導電層がエッチングされてしまうことがない。これにより、第1磁性層のエッチング工程において、第1磁性層を正確にエッチングして所定の形状とすることができ、かつ、導電層や絶縁層がエッチングされてしまうことを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係る半導体装置およびその製造方法について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の半導体装置一例を示す断面図である。半導体装置10は、半導体からなる基板11の一面側11aに、パッシベーション膜(無機絶縁膜)12、第2絶縁層13、第1導電層14、第1絶縁層15、第1磁性層16が順に重ねられている。
【0010】
例えばスパイラル状に形成されてアンテナ回路を成す第1導電層14は、導電性に優れた材料、例えばCuから構成される。第1絶縁層15及び第2絶縁層13は、樹脂、例えば、光硬化性樹脂、熱硬化性感光樹脂(ポリイミド、エポキシ、シリコーン樹脂等)によって構成されればよい。第1磁性層16は、燐酸、または燐酸含む化合物もしくは混合物によってエッチング可能な材料、例えばNi−Znフェライト合金によって構成されれば良い。
【0011】
半導体装置10を構成する各層の構成材料を上述したようなものにすることで、第1磁性層16をエッチングにより所定の形状にパターニング、例えばコンタクトホールを形成するために第1導電層14を露出させる開口16aを形成する際に、エッチング液として燐酸または燐酸含む化合物もしくは混合物を用いれば、第1磁性層16だけが選択的にエッチングされ、燐酸成分と反応しない第1導電層14や第1絶縁層15が浸蝕されてしまうことが防止される。これによって、第1磁性層16、第1導電層14、第1絶縁層15が所定の形状で正確に形成された半導体装置10を得ることができる。
【0012】
なお、上述した実施形態におけるパッシベーション膜12の位置を第2磁性層とし、更にこうした第2磁性層の下層にパッシベーション膜(無機絶縁膜)が形成された構造であっても良い。このような構成にすることで、第1導電層の周囲は第2磁性層と第1磁性層16とで取り囲まれた閉磁路が形成され、磁性層が無い場合や片側のみに形成した場合に比べ、インダクタンス値の増加とインダクタの小型化の両立が可能となる。この場合、第2磁性層は、第1磁性層と同様のものを使用することができる。
【0013】
図2は、上述したような半導体装置の製造方法の一例を段階的に示す断面図である。まず、図2(a)に示すように、一面側にパッシベーション膜12が形成された基板11に、光硬化性樹脂、または熱硬化性樹脂などから第2絶縁層13を形成し、この第2絶縁層13の上にCuなどからなる第1導電層14が形成される。第1導電層14は、例えばスパイラル形状やコイル形状など、アンテナ回路を成す形状に形成されれば良い。
【0014】
更に、第1導電層14を覆うように第1絶縁層15が形成される。第1絶縁層15は、例えば光硬化性樹脂、または熱硬化性樹脂から形成されれば良い。第1絶縁層15の一部には、後工程でコンタクトホールを形成するために、第1導電層14の一部を露出させる開口15aが設けられていれば良い。こうした第1絶縁層15のパターニングは、例えば、光硬化性樹脂や、熱硬化性樹脂を用いて行えばよい。
【0015】
次に、図2(b)に示すように、第1絶縁層15を覆うように第1磁性層16を形成する。第1磁性層16は、燐酸、または燐酸含む化合物もしくは混合物によってエッチング可能な材料、例えばNi−Znフェライト合金によって形成される。そして、図2(c)に示すように、第1磁性層16の上にレジスト層17を形成する。レジスト層17は、エッチングによって第1磁性層16を所定の形状にパターニングする際のエッチングマスクを成す。レジスト層17は、例えば、光硬化性樹脂や、熱硬化性樹脂を用いて行えばよい。
【0016】
そして、図2(d)に示すように、レジスト層17をエッチングマスクとして、第1磁性層16をエッチングし、磁性層を所定の形状にパターニングする。エッチングにあたっては、燐酸、または燐酸含む化合物もしくは混合物を用いてエッチングを行う。燐酸成分を含むエッチング液によってエッチングを行うことで、例えばNi−Znフェライト合金など燐酸、または燐酸含む化合物もしくは混合物などで浸蝕される第1磁性層16は、レジスト層17のパターンに倣ってエッチングされ、例えば開口16aなどが形成された所定の形状とされる。
【0017】
一方、燐酸、または燐酸含む化合物もしくは混合物に対して耐エッチング性を有する材料で形成された第1絶縁層15や第1導電層14は、第1磁性層16のエッチング時に開口16aなどから露出して燐酸成分を含むエッチング液に晒されても、エッチングされてしまうことがない。この後、レジスト層17を除去すれば、所定の形状にされた第1磁性層16、第1絶縁層15、第1導電層14を有する半導体装置10が得られる(図2(e)参照)。
【0018】
このように、第1磁性層16を燐酸成分によってエッチング可能な材料で形成するとともに、第1導電層14を燐酸成分に対して耐エッチング性を有する材料で形成し、燐酸、又は燐酸含む化合物もしくは混合物を用いてエッチング処理を施すことで、第1磁性層16を所定の形状にできるとともに、第1磁性層16のエッチング工程で第1導電層14がエッチングされてしまうことがない。これにより、半導体装置10を正確に形成することが可能となる。
【0019】
なお、半導体装置10は、図2(e)に示す状態から、第1磁性層16の上に更に絶縁層を介して別な導電層を形成し、第1磁性層16の開口16aをコンタクトホールとして導電層どうしを電気的に接続して、2層以上からなるアンテナ回路を形成するなどの構成としてもよい。
【0020】
基板11は、シリコンウェハ等の半導体ウェハであればよく、半導体ウェハをチップ寸法に切断(ダイシング)した半導体チップであってもよい。半導体基板11として半導体チップを用いる場合、まず、半導体ウェハの上に、各種半導体素子やIC、誘導素子等を複数形成した後、チップ寸法に切断することで複数の半導体チップを得ることができる。
【0021】
パッシベーション膜12は、例えばLP―CVD法などによって形成されればよい。パッシベーション膜12は、膜厚が例えば0.1〜1μm程度に形成されればよい。第1絶縁層15および第2絶縁層13は、例えばポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等から構成されれば良く、特に、感光性樹脂からなることが好ましい。これにより、露光、現像による半導体形成プロセスを利用して、簡易な工程で絶縁層を所定の形状に形成することが可能となる。これら第1絶縁層15、第2絶縁層13は例えば1〜10μm程度の厚みに形成されればよい。
【0022】
第1導電層14は、帯状の導電材を第2絶縁層13の一面に沿って、CuまたはCuを含む合金をスパイラル形状に巻回させた形状であればよく、厚みが例えば0.1〜10μm程度に形成されればよい。こうした第1導電層14は、メタル膜をスパッタリングなどによって全面に成膜した後、フォトリソグラフィ技術を利用したパターニングなどにより形成することができる。また、シード層をスパッタリングなどによって全面に成膜した後、フォトリソグラフィ技術によって、第1導電層14に相当する部分以外の領域にレジストを形成し、電解メッキによって形成すればよい。
【0023】
また、第1磁性層16の形成材料が絶縁性を確保可能な程度に電気抵抗が高い場合、第2絶縁層13および/または第1絶縁層15を形成せずに、第1磁性層16と第1導電層14とが接する構成であっても良い。
【0024】
第1導電層14をアンテナ回路とすることによって、半導体装置10を用いて非接触で通信などを行うことができる。この時、第1導電層14に隣接して第2絶縁層13を挟んで第1磁性層16を形成することによって、アンテナ回路の磁場漏洩を抑制することで、アンテナ回路のインダクタンス値を向上させ、通信距離を延ばすことができる。
【0025】
次に、図3、図4に本発明の半導体装置の製造方法の他の一例を示す。この実施形態では、導電層を上下2層として、これら上下の導電層を相互に接続することにより、コイル形状のアンテナ回路を構成した半導体装置を例示する。なお、前述した実施形態と同様の構成の重複する説明は略す。図3は半導体装置を上から見たときの平面図である。また、図4は、図3に示す半導体装置の製造方法を順次示したものである。なお、図4は、図3に示す幅W分だけを拡大して示し、図3における破線A断面を図4のA列に、破線B断面を図4のB列にそれぞれ示した。
【0026】
この半導体装置20は、互いに並列して一方向に細長く延びる多数の第1導電層24と第2導電層28のそれぞれの一端を、コンタクトホール29を介してずらして接続することにより、全体としてコイル形状の導電層を形成したものである。なお、図3の鎖線Fの範囲は磁性層を形成する範囲を示している。
【0027】
このような半導体装置20を形成するにあたっては、まず、一面側にパッシベーション膜22が形成された基板21を用意する(図4(a)参照)。パッシベーション膜22の上に第2絶縁層23を形成する(図4(b)参照)。そして、第2絶縁層23の上に所定の形状、例えば一方向に細長く延びる第1導電層24を形成する(図4(c)参照)。
【0028】
次に、第1導電層24を覆うように第1絶縁層25を形成する(図4(d)参照)。図4(d)のB列において、第1導電層24の上の第1絶縁層25の一部は、後述する第2導電層28との接続のための開口が形成される。そして第1導電層24に重ねて磁性層26を形成する(図4(e)参照)。こうした磁性層26のパターニングにあたっては、燐酸、又は燐酸含む化合物もしくは混合物によるエッチング液を用いてエッチング処理を施す。これにより、第1導電層24や第1絶縁層25がエッチングされることなく、磁性層26だけが所定の形状にエッチングされる。
【0029】
更に、磁性層26の上に第3絶縁層27を形成する(図4(f)参照)。第3絶縁層27は、第1絶縁層25や第2絶縁層23と同様に、光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂から形成されれば良い。そして、この第3絶縁層27の上に第2導電層28を所定の形状、例えば、第1導電層24の一端を、隣接する第1導電層24の他端に接続するように細長く延びる形状に形成する(図4(g)参照)。そして、コンタクトホール29を通り第1導電層24と第2導電層28とを電気的に接続して、2層の導電層からなるコイル状のアンテナ回路を形成すれば、複雑な工程を経ることなく、簡易な工程でインダクタンス特性に優れたアンテナ回路を有する半導体装置20を得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の半導体装置の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【図3】本発明の半導体装置の製造方法の他の一例を示す平面図である。
【図4】本発明の半導体装置の製造方法の他の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0031】
10…半導体装置、11,21…基板、13,23…第2絶縁層、14,24…第1導電層、15,25…第1絶縁層、16,26…磁性層、27…第3絶縁層、28…第2導電層。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体からなる基板の一面側に、第1絶縁層を挟んで、順に第1導電層及び第1磁性層を形成する半導体装置の製造方法であって、
燐酸、又は燐酸を含む化合物もしくは混合物を用い、前記磁性層に対してエッチング処理を施し、該磁性層を所定の形状とする工程を備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記基板の一面側と前記第1導電層との間に、第2絶縁層を形成する工程を、更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記基板の一面側と前記第1導電層との間に、第2磁性層を形成する工程を、更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1磁性層に重ねて、順に第3絶縁層、及び前記第1導電層と電気的に接続される第2導電層を形成する工程を、更に備えたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1導電層及び/又は前記第2導電層は、アンテナ回路として機能するように加工することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
少なくとも前記第1絶縁層及び/又は前記第3絶縁層は光硬化性樹脂または熱硬化樹脂を用いて形成されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
半導体からなる基板の一面側に、第1絶縁層を挟んで、順に第1導電層及び第1磁性層を有する半導体装置であって、
前記第1磁性層は燐酸、または燐酸含む化合物もしくは混合物によってエッチング性を有する材料からなり、かつ、前記第1導電層は燐酸、または燐酸含む化合物もしくは混合物に対して耐エッチング性を有する材料からなることを特徴とする半導体装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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