半導体装置のデータ作成方法、および電子線露光システム
【課題】露光データ作成の負担の増大を抑制し、少ない計算負荷で、電子線露光による形状が光露光で加工される形状に近似するような電子線用露光データを作成する。
【解決手段】本方法は、半導体装置の設計データから電子線露光に使用される電子線露光データを作成し、電子線露光データを基に電子線露光によって基板上に形成される電子線露光パターンの形状と半導体装置の設計データを基に光露光によって基板上に形成される光露光パターンの形状との相異部分を示す差分情報を抽出し、電子線露光パターンの形状と光露光パターンの形状との相異部分の寸法が所定の基準値内に収まったか否かを判定し、差分情報にしたがって、電子線露光データのパターンを形状変化させて形状変化露光データを取得し、電子線露光データを更新する更新ステップと、相異部分の寸法が所定の基準値内に収まっていないときに、差分抽出、判定、および更新を繰り返す。
【解決手段】本方法は、半導体装置の設計データから電子線露光に使用される電子線露光データを作成し、電子線露光データを基に電子線露光によって基板上に形成される電子線露光パターンの形状と半導体装置の設計データを基に光露光によって基板上に形成される光露光パターンの形状との相異部分を示す差分情報を抽出し、電子線露光パターンの形状と光露光パターンの形状との相異部分の寸法が所定の基準値内に収まったか否かを判定し、差分情報にしたがって、電子線露光データのパターンを形状変化させて形状変化露光データを取得し、電子線露光データを更新する更新ステップと、相異部分の寸法が所定の基準値内に収まっていないときに、差分抽出、判定、および更新を繰り返す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子線描画のためのデータ作成技術に関する。
【背景技術】
【0002】
リソグラフィ工程において、半導体デバイスを大量に生産する量産過程では光露光技術を使用するのが一般的である。しかし、近年の半導体デバイスの微細化と高機能化によって1つの半導体デバイスが有する素子数が増大し、半導体デバイスを製造するために必要なレチクルの作製難易度が上昇している。このレチクル作製のコストと作製期間の増加は、半導体デバイスビジネスを成功に導く上での大きな足枷となっている。そこで、量産時には生産性の高い光露光技術を使用し、エンジニアリングサンプル(ES)などの少量生産時には高価なレチクルを必要としない電子線露光技術を使用すれば、レチクル作製負荷を回避することができる。
【0003】
しかし、異なる露光技術を使用すると、物理現象の違いによりレジストパターンの出来上がり形状が一致しないため、リソグラフィ工程の後続の工程で条件やパラメータの変更が必要になり、さらに、半導体デバイスの特性に違いが現れるなどの問題がある。このため、結局少量品についてもレチクル作製が必要な光露光技術を用いて製造することが多い。
【特許文献1】特開2003−151885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この問題を解決するために、光露光で加工される形状に電子線露光による形状が一致するような電子線露光用の設計データライブラリを予め作成しておき、入力された設計データに対して電子線露光用設計データライブラリの中から対応する電子線用データを選択し置き換えてから電子線用露光データを作成することも考えられる。しかし、そのような手順を採用した場合、電子線露光用の設計データのパターン形状が複雑となり、露光データ作成の手間が増大することが懸念される。本発明の課題は、露光データ作成の負担の増大を抑制し、少ない計算負荷で、電子線露光による形状が光露光で加工される形状に近似するような電子線用露光データを作成する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための一態様は、半導体装置の設計データから電子線露光に使用される電子線露光データを作成する電子線露光データ作成ステップと、電子線露光データを基に電子線露光によって基板上に形成される電子線露光パターンの形状と半導体装置の設計データを基に光露光によって基板上に形成される光露光パターンの形状との相異部分を示す差分情報を抽出する差分抽出ステップと、電子線露光パターンの形状と光露光パターンの形状との相異部分の寸法が所定の基準値内に収まったか否かを判定する判定ステップと、差分情報にしたがって、電子線露光データのパターンを形状変化させて形状変化露光データを取得し、電子線露光データを更新する更新ステップと、相異部分の寸法が所定の基準値内に収まっていないときに、差分抽出ステップ、判定ステップ、および更新ステップを繰り返す制御ステップと、を有する半導体装置のデータ作成方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、露光データ作成の負担の増大を抑制し、少ない計算負荷で、電子線露光による形状が光露光で加工される形状に近似するような電子線用露光データを作成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態という)に係るデータ作成装置について説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本発明は実施形態の構成には限定されない。
【0008】
《処理の概要》
本データ作成装置は、半導体デバイスの基板上のパターンを加工するときに使用される電子線用露光データを作成する。ただし、本データ作成装置は、電子線露光によって加工されるパターンの形状が光露光で加工されるパターンの形状に近似するような電子線用露光データを作成する。
(第1の方法)
図1に、このような電子線露光データを作成する第1の方法の概要を示す。ここでは、電子線露光によって加工されるパターンの形状が光露光で加工されるパターンの形状に近似するように、設計データを加工する。そのため、本データ作成装置は、まず、半導体デバイスの設計データをコピーして電子線露光用設計データライブラリファイルを作成する(S1)。設計データは、セルライブラリデータや配線層の配線データやビアホールデータを含む。
【0009】
セルライブラリデータは、例えば、トランジスタ等の素子を構成する多角形のパターンの集合である。配線データも、多角形パターンで定義されることが多い。また、ビアホールデータは、例えば、矩形で定義されたパターンである。これらのセルライブラリデータ、配線データ、ビアホールデータには、それぞれ、階層名あるいは配線情報と呼ばれる識別情報を付与される。識別情報は、セル名とも呼ばれる。
【0010】
これらの階層名あるいは配線情報は、設計データを構成する1つのデータファイル内でユニークに定義される。したがって、階層名あるいは配線情報を参照して、パターンを配置することができる。また、階層名あるいは配線情報を参照して、新たな部品を定義できる。そのような部品を組み合わせて半導体デバイスのレイアウトパターンが構成される。
【0011】
本実施形態では、コピーの際、これらの階層名の頭に“E"を付加し元データと区別でき、かつ、元データとの対応をとることができるようにする。
【0012】
次に、本データ作成装置は、設計データ中の露光対象の層に対する2種の露光データ作成処理を行う。一方は設計データを入力し光露光用データを作成する処理である(S2)。この処理は、例えば、レチクル作製用の露光データ作成処理と同様の処理である。この処理によって、データ作成装置の光露光用露光データ格納部1に光露光用露光データが格納される。
【0013】
他方は、設計データの一部を電子線露光用設計データで置き換えて、電子線露光データを作成する処理である(S3)。この処理によって、データ作成装置の電子線露光データ格納部2に電子線露光データが格納される。
【0014】
S2、S3の処理で、本データ作成装置は、平坦化のためのダミーパターン発生が必要な露光層においてはダミーパターン発生を行う。さらに、本データ作成装置は、S2の光露光用データ作成処理では、光近接効果補正、ローカルフレア補正、エッチングの影響を考慮するためのマイクロローディング効果補正など、レチクル作製のための露光データ作成に必要なデータ処理を施す。
【0015】
また、本データ作成装置は、S3の電子線露光用データを作成する処理では、近接効果
補正、スティッチング補正、エッチングの影響を考慮するためのマイクロローディング効果補正などを施す。
【0016】
次に、本データ作成装置は、夫々に作成した露光データに対して、光露光および電子線露光による露光強度シミュレーションを用い、半導体基板上の形状を図形データ化して出力する(S4、S5)。
【0017】
S4の処理の結果、光露光によるウェーハ形状データ1Aが作成される。光露光によるウェーハ形状データ1Aは、光露光による形状を模擬したデータである。光露光では、光露光用データからレチクルが作成され、そのレチクル上のパターンを光によって半導体基板に転写したときに、半導体基板上に塗付されたレジストにパターンが形成される。この光露光によるウェーハ形状データ1Aを格納する格納部が本発明の光露光パターン記憶部に相当する。この格納部は、例えば、ハードディスク上に構成される。
【0018】
また、S5の処理の結果、電子線露光によるウェーハ形状データ2Aが作成される。この電子線露光によるウェーハ形状データ2Aを格納する格納部が本発明の電子線露光パターン記憶部に相当する。電子線露光によるウェーハ形状データ2Aは、電子線露光による形状を模擬したデータである。電子線露光では、電子線露光用データにしたがって電子線を半導体基板に照射したときに、半導体基板上に塗付されたレジストにパターンが形成される。この格納部も、例えば、ハードディスク上に構成される。
【0019】
ここで、光露光用データに対しては、光強度シミュレータを用いる。本データ作成装置は、部分コヒーレント結像理論に基づいた光学像の計算モデル式(Yeungのモデル)を瞳面上の焦点距離と複素振幅透過率分布でフーリエ積分し、2乗して半導体基板上の光学像を求める。さらに、本データ作成装置は、レジスト膜、下地基板の反射を考慮したレジスト内強度分布(Mackのモデル)により、半導体基板上の光強度分布を計算する。そして、本データ作成装置は、光強度分布の等高線を描くことで露光および現像されたレジスト形状を算出する。このような光強度シミュレータの処理そのものは、周知であるので、その詳細は、省略する。
【0020】
また、本データ作成装置は、電子線露光用データに対しては、電子線露光シミュレータを用い、シミュレーションによる吸収エネルギ分布を算出する。そして、本データ作成装置は、吸収エネルギ強度の等高線をパターン化した半導体基板上の形状データを出力する。ここでは、本データ作成装置は、入射電子の試料内における軌跡をモンテカルロ法により、電子の散乱角はScreened Rutherford 散乱公式で、エネルギ損失は Betheの阻止能の式にて計算する。また、本データ作成装置は、レジスト中の単位体積あたりの吸収エネルギ分布を位置の関数として求める。そして、本データ作成装置は、吸収エネルギ分布を現像液に対する溶解速度分布に変換して最終的に露光、現像されたレジスト形状を算出する。電子線露光シミュレータ自体は、周知であるのでその詳細は省略する。
【0021】
そして、本データ作成装置は、夫々の形状データ同士を比較し、差分パターンを抽出する(S6)。比較方法としては、光露光による形状データと電子線露光による形状データとを図形論理処理にてSUB演算すればよい。
【0022】
なお、上記では、S2の処理で、レチクル作製用の露光データ作成処理と同様の処理を実行した。しかし、S2の処理は、レチクル作製用の露光データ作成処理に限定されるわけではなく、光露光シミュレータに入力可能なインターフェースフォーマットに設計データを変換する処理であればよい。また、S3の処理として、電子線露光データを作成する処理を実行した。しかし、S3の処理は、電子線露光データ作成処理に限定されるわけではなく、電子線露光シミュレータに入力可能なインターフェースフォーマットに設計デー
タを変換する処理であればよい。
【0023】
次に、本データ作成装置は、差分が許容値を超えるか否かを判定する(S7)。すなわち、本データ作成装置は、差分と判定するか否かの許容値(マージンの値)を保持しており、差分が許容値を超える場合に、差分ありと判定する。許容値は、レジストパターンの形状差が許容されるプロセスばらつきに収まる範囲を示す値や、特性差に影響を与えない範囲を示す値を外部指定で与える。このような許容値としては、実際の半導体プロセスで得られる経験値、あるいは、実験値を設定できるようにすればよい。
【0024】
比較の結果、差分が認められない場合は(S7でYES)、本データ作成装置は、電子線露光用設計データライブラリファイルを電子線露光用設計データライブラリに登録し、電子線露光用設計データ内の階層名を抽出した電子線露光用階層名・配線情報管理テーブルを作成する(S9)。この場合には、差分データは使用されないことになる。電子線露光用階層名・配線情報管理テーブルは、階層名/配線情報、アドレス、およびデータ量で示される3つの要素を有している。階層名/配線情報は、階層または配線情報を識別する設計データ内でユニークな名称である。アドレスは、設計データを格納するファイル内のアドレスである。データ量は、それぞれの層または配線のパターンを定義する図形データのデータ量である。したがって、データ作成装置は、階層名が与えられると、電子線露光用階層名/配線情報管理テーブルにアクセスすることにより、その階層名に対応するパターンを定義する図形データの先頭番地と、データ量を取得でき、該当するパターンを読み出すことができる。
【0025】
上述のように、電子線露光用設計データライブラリは、設計データライブラリが例えば、テクノロジノードや、デバイスの性能特性毎に補正され、管理されているのであれば、同様に管理される。すなわち、テクノロジノードや、デバイスの性能特性毎に個別に電子線露光用設計データライブラリを用意すればよい。
【0026】
差分が認められる場合には(S7でNO)、本データ作成装置は、差分データに従って電子線露光用設計データを修正する(S8)。
【0027】
さらに、本データ作成装置は、電子線露光用設計データを修正したものに更新し、このデータにて再度電子線露光用データ作成を行う。そして、差分がなくなるまで、本データ作成装置は、S3、S5−S8の処理繰り返す。
【0028】
(第2の方法)
第1の方法では、光露光によるウェーハ形状データ1Aと、電子線露光によるウェーハ形状データ2Aとの差分データによって、電子線露光用設計データが上書きされる。すなわち、差分データによって、設計データが更新されることになる。その結果、電子線露光用データ作成工程(S3の処理)が再度実行されることになる。
【0029】
しかしながら、差分データによって更新された設計データのパターン形状は、本来の設計データよりも複雑なものとなる。このため、更新された設計データから作成される電子線露光用データ2は、データ量が多くなる傾向がある。また、電子線露光用データ作成工程(S3の処理)を実行するコンピュータの負荷が重くなりやすい。
【0030】
そこで、第2の方法では、光露光によるウェーハ形状データ1Aと、電子線露光によるウェーハ形状データ2Aとの差分データから、電子線露光用データ2そのものを修正する。この場合には、電子線露光用データ2のうちの、差分データに隣接する個所だけが修正対象となる。
【0031】
また、電子線露光用データそのものを修正する結果、電子線露光のための各種の補正、例えば、露光量補正処理を含む電子線のウェーハ露光に必要な各種補正処理を再度実行する必要がない。すなわち、パターンを複雑な形状に修正する前に各種の補正処理を実行するので、これら補正処理にかかる負荷が上記第1の方法に比べて軽減される。
【0032】
ただし、第2の方法によれば、電子線露光用データの露光量補正処理を再度実行しないため、修正の前後で露光量の分布の変化を極力低減にする必要が生じる。露光量の分布が変化すると、レジストに入射した電子線が基板で反射されて半径数十ミクロンの範囲に広がる後方散乱の影響が変化する。その結果、周辺のパターンの出来上がり寸法が変化してしまう。そのため、周辺のパターンも修正が必要になり、データ処理時間が増加するという問題が生じる。そこで、本データ作成装置では、露光量補正処理で設定された補正露光量を固定して、形状のみを変更する。もともと電子線露光と光露光で目標とする形状は同じなので、光露光の出来上がり形状に合わせるように電子線露光パターンの形状を変更しても、パターンの面積はそれ程増減しない。しかし、さらにその面積の増減ができるだけ小さくなるように形状を変更することで、周辺への副作用をより小さくすることができる。
【0033】
すなわち、第2の方法は、露光量の分布への影響を極力低減させた上で、電子線露光用データの露光量補正処理を再度実行することなく、電子線露光後のパターンの形状が、極力光露光に近づくように、電子線露光用データを部分的に修正する。これによって、コンピュータの負荷を低減するとともに、電子線露光用データに対する最初の補正結果を有効に維持した上で、光露光に近い形状で電子線露光を実現する。
【0034】
《第1実施形態》
以下、図面を参照して、第2の方法の実施形態を説明する。
【0035】
<ハードウェア構成>
図2は、本露光システムのシステム構成を例示する図である。図2のように、本露光システムは、LSI−CAD10で作成した電子装置のデータから、電子線露光データを作成するデータ作成装置11と、作成された電子線露光データにしたがって電子線露光を実行する電子線露光装置12とを含む。
【0036】
本データ作成装置は、パーソナルコンピュータ、サーバ等の通常のコンピュータ上でデータ作成プログラムを実行することにより実現される。このようなコンピュータは、いずれも、CPU、メモリ、入出力インターフェース、表示装置、ハードディスク、ネットワークとの通信インターフェース、着脱可能な可搬型記憶媒体の駆動装置等を有している。このようなコンピュータの構成要素および作用は広く知られているので、その説明は省略する。
【0037】
ただし、本データ作成装置が処理する半導体デバイスの設計データは、本データ作成装置と同一のコンピュータ上で管理され、記憶されていてもよい。また、本データ作成装置が他のコンピュータと連係してコンピュータシステムを構成してもよい。例えば、半導体デバイスの設計データを作成し、管理する他のコンピュータが存在してもよい。本データ作成装置は、例えば、ネットワークを介してそのような他のコンピュータに管理される半導体デバイスの設計データにアクセスできればよい。また、本データ作成装置は、電子線露光装置に組み込まれたものでもよい。例えば、本データ作成装置が、電子線露光装置を制御する制御コンピュータと一体のコンピュータであってもよい。
【0038】
<各種補正処理>
本データ作成装置は、光露光シミュレーションおよび電子線露光シミュレーションで、
レジストパターンの形状を求める。その場合に、光露光シミュレーションで使用するレチクルパターンに対して、現在一般的に実施されている各種補正を実施する。この補正は、具体的には、レチクル作成用の電子線露光データに対して実施する。これらは、平坦化のためのダミーパターン発生、光近接効果補正、ローカルフレア補正、エッチングの影響を考慮するためのマイクロローディング効果補正などである。なお、シミュレーションによらず、SEM画像から、光露光パターンを求める場合に、光露光に使用されるレチクル作成用の電子線露光データに対しても、同様に、上記補正が実行される。
【0039】
また、電子線露光シミュレーションで使用する電子線露光データに対して、現在一般的に実施されている各種補正を実施する。これらの補正は、上記平坦化のためのダミーパターン発生、近接効果補正、スティッチング補正、上記エッチングに対するマイクロローディング効果補正などである。なお、シミュレーションによらず、SEM画像から、電子線露光パターンを求める場合に、電子線露光に使用される電子線露光データに対しても、同様に、上記補正が実行される。
【0040】
以下、これらの補正の概要を説明する。なお、これらの補正は、テクノロジに応じたデザインルール、すなわち、テクノロジごとに規定される最小線幅、最小パターン間隔、パターン密度にしたがって実行される。したがって、補正後の設計データは、テクノロジごとに管理すればよい。
【0041】
(1)平坦化のためのダミーパターン発生
平坦化のためのダミーパターン発生とは、ゲート層やメタル層(配線層、メタル配線層ともいう)に対して、パターンの面積密度を平準化する処理をいう。すなわち、半導体基板面に対応するデータ領域を定められた大きさの小領域に分割し、入力したパターン図形の各小領域中でのパターン面積を求め、小領域における面積密度を算出する。そして、各小領域の中で、基準面積密度に達していない小領域に対しては、基準面積密度に達するように、素子動作上影響のない箇所に、予め定義された構成のダミーのパターンを付加する。
【0042】
(2)光近接効果補正(OPC)
光近接効果補正(OPC)とは、露光、現像の物理モデルに基づくシミュレーションによって光近接効果(OPE)を予測し、その予測値に基づきマスクパターン補正量を割り出し、レチクル作成用のデータ上でパターンの辺を移動し、あるいはパターン形状を変更する処理である。このようなデータ上の補正により、半導体基板上に形成されるパターン形状が設計形状からずれる現象を抑制する。このような現象は、例えば、露光する光の波長と同程度または波長以下の寸法のパターン形成によって発生する。
【0043】
光近接効果補正では、予め求めておいた補正ルール(OPCルール)に基づき設計パターンの補正を行うルールベースOPCと、リソグラフィープロセスにおける現象をモデル化したシミュレータにより設計パターンの補正を行うモデルベースOPCを対象層に応じて使い分ける。
【0044】
ルールベースOPCの手段としては、まず、種々の図形処理を組み合わせた補正ルールを実験などで作成しておく。具体的には、一対のラインパターンに対して、線幅又は隣接スペース寸法に基づいて線幅を狭めたり又は広げたりする変更量のルールである。このルールを基にライン補正を行う。また、ラインパターンの先端が細く転写(パターニング)されることを防ぐために、ラインパターンの先端に矩形図形を付加するハンマーヘッド補正を行う。また、方形状パターンのコーナー部分が後退した状態でパターニングされることを防ぐために、方形状パターンの凸型コーナー部に矩形を付加するセリフ補正を行う。またL字状パターンの凹型コーナーが太った状態でパターニングされることを防ぐために
、凹型コーナーに削り込みを施すインセット補正を行う。
【0045】
モデルベースOPCは、オリジナルの設計データを元に、マスクパターンと転写された半導体基板上のパターンとの差異をシミュレーションによって計算して、設計データ通りの形状が得られるように、パターンデータの辺を移動する。
【0046】
(3)ローカルフレア補正
ローカルフレア補正では、ショットの一定領域毎に設計パターンの開口率を計算し、1つのショット領域毎に、ダブルガウシアンを用いたPoint Spread Functionで転写パターンに対応するマスクパターンのフレア量を見積もる。そして、半導体基板に転写するショットのレイアウトをもとに、所定の寸法のパターンを得るためのマスク寸法を求め、その寸法になるようにパターンデータの辺を移動する。
【0047】
(4)マイクロローディング効果補正
マイクロローディング効果補正では、パターンの寸法に応じてエッチング速度、形状が変化する現象を、予め実験で求めておく。そして、パターン寸法と隣接パターン間距離の組み合わせからなる表に線幅変動量(X)を設定しておく。データ作成装置に入力されたパターン図形の各辺に対して、隣接パターン間の距離を求め、上記事前に実験的に設定された表より線幅変動量(X)を得る。そして、マイクロローディング効果補正では、線幅変動量(X)に対して、辺の位置をパターンの外側(隣接パターン側)方向に −X/2 移動する。ここで、−(マイナス符号)の意味は、マイクロローディング効果による線幅変動量(X)と逆方向に移動するという意味である。
【0048】
(5)近接効果補正
近接効果は、電子線の半導体基板での散乱に起因して、パターン密度、パターン寸法、パターン間隔に応じて露光強度分布が変動する現象をいう。近接効果補正では、電子線露光量をパターンごとに設定し、この現象によるレジストの吸収エネルギの変動を補正する。すなわち、予め実験により求めた露光強度分布(EID:Exposure Intensity Distribution)関数に基づいて、各露光パターン毎の露光量を計算する。そして、最終的には各露光パターンが同じ吸収エネルギを得るように、各露光パターンの露光量を変化させながら自己整合計算を行い、最終的に各パターンの露光量を得る。
【0049】
(6)スティッチング補正
スティッチング補正は、露光装置のステージの移動によってショットがつなぎ合わされるパターンに対し、つなぎ合わされる部分のパターン端を延長するか、または、つなぎ目を覆う位置に、露光量を半分程度下げた追加パターンを発生する。これによって、ショットとショットの間でステージ移動が発生しても、そのつなぎをスムーズなものとする。
【0050】
<処理フロー>
本実施形態の処理手順を図3の電子線露光用データ作成フローにしたがって例示する。
【0051】
本データ作成装置は、まず、半導体デバイスの露光対象層の設計データを入力して2種類の露光データ作成処理を行う。一方は光露光用データを作成する処理、すなわちレチクル作製用の露光データ作成処理であり(S2、光露光データ作成ステップ)、他方は電子線露光用データを作成する処理である(S3、電子線露光データ作成ステップに相当)。平坦化のためのダミーパターン発生が必要な露光層においては、設計データにダミーパターン発生を行う。その他、レチクル作製用の露光データ作成処理では、エッチングの影響を考慮するためのマイクロローディング効果補正、光近接効果補正、ローカルフレア補正など、レチクル作製のための露光データ作成に必要なデータ処理を施す。電子線露光用デ
ータ作成処理では、エッチングの影響を考慮するためのマイクロローディング効果補正、近接効果補正(露光量補正を含む)、スティッチング補正など、ウェーハ露光に必要なデータ処理を施す。本実施形態のデータ作成装置は、これらの露光データ作成処理を最初に1度だけ実施する。
【0052】
それぞれに作成した露光データに対して、露光シミュレーションを行い、レジストパターン形状を図形データ化して出力する(S4、光露光模擬ステップに相当)(S5、電子線露光模擬ステップに相当)。光露光用データに対しては、光強度シミュレータを用い、電子線露光用データに対しては電子線露光シミュレータを用いる。シミュレーションにより求めた露光強度分布の等高線をパターン化したウェーハ形状データを出力する。
【0053】
図4Aに、設計データ、光強度シミュレータおよび電子線露光シミュレータによって得られるパターンの例を示す。図4Aで、点線のパターン100は、設計データと同一寸法、同一形状のパターンを比較のために示したものである。また、実線のパターン101は、光強度シミュレータにより算出された半導体基板上のレジスト形状を示している。また、斜線でハッチングされたパターン102は、電子線露光シミュレータにより算出された半導体基板上のレジスト形状を示している。
【0054】
次に、夫々の形状データ同士を比較して差分を求める(S6、差分抽出ステップに相当)。光露光による形状データから電子線露光による形状データを図形論理処理にて減算した結果をプラス(+)差分パターン、電子線露光による形状データから光露光による形状データを減算した結果をマイナス(−)差分パターンとする
本データ作成装置は、求められた差分データを以下のプラス(+)差分パターンと、マイナス(−)差分パターンとに分類する。すなわち、電子線露光による形状パターンより外側にある光露光による形状パターンをプラス(+)差分パターンという。プラス(+)差分パターンは、光露光による形状データから電子線露光による形状データを図形論理処理にて減算するようにSUB演算すればよい。
【0055】
図4Cのパターン104は、光露光によるパターン101から電子線露光によるパターン102をSUB演算した形状である。図4Cは、プラス(+)差分パターンの例を示している。本データ作成装置は、プラス(+)差分パターンでは、パターンの輪郭のうち、電子線露光によるパターン102に接する隣接側を区別するフラグを立てて差分データを格納しておく。
【0056】
すなわち、本データ作成装置は、光露光によるパターン101から電子線露光によるパターン102を減算するSUB演算を実行する際、残存パターンの電子線露光によるパターン102に接する隣接側にフラグを設定する。ここで、電子線露光によるパターン102に接する隣接側とは、図4Cでいう設計データ100に隣接する側をいう。
【0057】
したがって、フラグは、プラス(+)差分パターンが形状変更対象のデータ、すなわち、修正前の電子線露光用設計データのパターンに隣接する側が識別できるように設定する。このフラグを隣接フラグという。
【0058】
また、光露光による形状パターンより外側にある電子線露光の形状パターン部分をマイナス(−)差分パターンという。マイナス(−)差分パターンは、電子線露光による形状データから光露光による形状データを図形論理処理にて減算するようにSUB演算すればよい。
【0059】
図4Bのパターン103は、電子線露光によるパターン102から光露光によるパターン101をSUB演算した形状である。図4Bは、マイナス(−)差分パターンの例を示し
ている。本データ作成装置は、マイナス(−)差分パターンでは、パターンの輪郭のうち、光露光による形状パターンとの隣接側を区別し、隣接しない側にフラグを立てて差分データを格納しておく。
【0060】
すなわち、本データ作成装置は、電子線露光によるパターン102から光露光によるパターン101を減算するSUB演算を実行する際、残存パターンの光露光によるパターン101に接する辺以外の辺を隣接しない側としてフラグを設定する。
【0061】
ここで、マイナス(−)差分パターンの輪郭で光露光による形状パターンに隣接しない側とは、図4Bでいう設計データ100に隣接する側をいう。したがって、フラグは、マイナス(−)差分パターンが形状変更対象のデータ、すなわち、修正前の電子線露光用データのパターンに隣接する側が識別できるように設定する。このフラグも隣接フラグと呼ぶ。
【0062】
図5は、このようにして作成された差分パターンの例である。差分パターンは、頂点列で規定される多角形データである。
【0063】
図6は、差分パターンを格納する差分パターン格納テーブルのデータ構造を示している。差分パターン格納テーブルは、差分パターン管理情報と、テーブル本体とを有する。差分パターン管理情報は、差分フラグおよび頂点数を有する。差分フラグは、プラス(+)差分パターンか、マイナス(−)差分パターンかを示す情報である。頂点数は、差分パターンを構成する多角形の頂点数である。また、テーブル本体は、頂点座標と隣接フラグとを組み合わせた要素情報(X、Y、A)を含む。
【0064】
本データ作成装置は、差分と判定するか否かの許容値(比較マージン値)を設け、マージンを超える部分のみを差分とする。S6の上記マージンによる処理が、抑制ステップに相当する。比較マージンの値は、レジストパターンの形状差が許容されるプロセスばらつきに収まる範囲を示す値や、特性差に影響を与えない範囲を示す値を外部指定で与える。比較の結果、差分が認められない場合は、最後に電子線露光シミュレーションへの入力に用いた電子線露光用データを最終的な電子線露光用データとして出力する。
【0065】
差分が認められる場合は、本データ作成装置は、差分データに従って電子線露光用データを修正する(S10)。本データ作成装置は、電子線露光用データを修正したものに更新し、電子線露光シミュレーションへの入力データとする(図3の「上書き」参照、更新ステップに相当)。これを差分がなくなるまで繰り返す。以上の制御(図6のS7の判定から、S8を経てS3に至る処理)が、制御ステップに相当する。
【0066】
図7から図11を参照して電子線露光用データの修正方法を例示する。図7は、電子線露光用データ修正処理(図3のS10)の詳細を示すフローチャートである。また、図8は、電子線露光用データ修正処理によるパターンの変化を例示する図である。
【0067】
この処理では、本データ作成装置は、差分データと差分修正テーブルを入力し、差分パターンを差分量で分類する(S101)。図8(a)に、差分データの例を示す。EBで示された曲線が、電子線露光によるパターンの例である。また、PHOTOで示された曲線が、光露光によるパターンの例である。ハッチングを付した部分が、電子線露光によるパターンと、光露光によるパターンとの間の差分データ部分である。これらの差分データは、図6に示した差分パターン格納テーブルに保持される。
【0068】
図9に、差分修正テーブルのデータ例を示す。図9のように、差分修正テーブルの各行は、差分量d(k)(k=1,2,…,n)と辺移動量s(k)(k=1,2,…,n)とを対にして格納している。差分量は、プラス(+)差分パターンに対してはパターンの幅であり、マイナス(−)差分パタ
ーンに対してはパターンの幅の符号を除いた値である。差分修正テーブルの第k行目は、差分量dがd(k)≦d<d(k+1) (k=1, ..., n)の範囲に対する辺移動量s(k)を保持する。ここで、d(k)≦d<d(k+1)は、d(n+1)=無限大の距離としたとき、差分量dがd(k)≦d<d(k+1) (k=1, ..., n)の範囲にあることを表す。各kに対して差分データから差分量がd(k)≦d<d(k+1)の範囲に含まれる部分を抽出し、差分パターンを分類する。図8(b)に、差分データを図9にしたがって、分類した例を示す。ここでは、分類後の差分データ部分をハッチングの種類で区別して示している。
【0069】
なお、差分量は、個々の差分パターン(図5、図6で例示される多角形)ごとに、判定してもよい。また、図5のような多角形をさらに細かな図形に分解して、それぞれの分解された部分ごとに、差分量を判定してもよい。細かな図形に分解することで、よりきめ細かなパターンの修正ができる。
【0070】
次に、本データ作成装置は、分類した各差分量の差分パターンに対して、隣接フラグが設定された辺に隣接する露光パターンの辺(一部)を抽出する(S102)。図8(c)に各差分量に応じて分類された差分パターンに、それぞれ隣接して抽出された辺の例を示す。ここでは、抽出された辺を分類した結果が、線の種類によって例示されている。
【0071】
さらに、本データ作成装置は、差分修正テーブルの対応する辺移動量に従って移動量を決定し(決定するステップに相当)、辺を移動する(S103)。図8(d)に、辺を移動した後のパターンの例を示す。
この場合、差分修正テーブルの差分量に対する辺の移動量は、差分量の半分以下にするのが望ましい。1回の辺の移動量を小さくし、元の形状から少しずつ変化させることで、元の形状(あるいは面積)からの最小の変化で電子線露光と光露光のレジストパターン形状の差を許容値未満にすることができる。
【0072】
図10A−10Dは、電子線描画データのパターンの移動辺に対する処理の概念を例示する図である。図10Aは、マイナス移動辺に対する処理の概念を例示する図である。図10Aで、矩形112は、例えば、電子線露光データを構成する1つの矩形の例である。
【0073】
本データ作成装置は、電子線露光用データ中の矩形112に含まれる辺のうち、マイナス(−)差分パターン中の隣接フラグで指定される辺に最も近い辺を探索し、修正対象の移動辺とする。図10Aの例では、矩形112の上辺が移動辺として探索されている。さらに、この矩形の上辺は、E01、E02およびE03の3つの部分に分類されている。この分類は、差分修正テーブルにしたがった分類である。E11からE13は、それぞれ修正分類テーブルにしたがって移動量A1、A2およびA3だけ、辺の3つの部分E01、E02およびE03を移動した結果である。マイナス移動辺では、パターンは、面積が減少する方向に移動する。
【0074】
図10Bは、同様に、プラス移動辺に対する処理の概念を例示する図である。この場合も、本データ作成装置は、電子線露光用データ中の矩形112に含まれる辺のうち、プラス(+)差分パターン中の隣接フラグで指定される辺に最も近い辺を探索し、修正対象の移動辺とする。図10Bの例では、矩形112の右側の辺が移動辺として探索されている。さらに、矩形112の右側の辺のうち、部分E04に移動量A4が指定されている。そして、矩形111の右側辺の部分E04が、移動量A4だけパターンの面積が増加する方向に移動され、新たな辺E14が形成されている。なお、プラス移動辺の移動に伴って、移動辺の両端の軌跡に相当する新たな辺E34が追加される。
【0075】
図10Cに、1回目の辺の移動結果を例示する。図10Aおよび図10Bに示した矩形112は、辺の移動に伴って複雑な形状のパターンに変化する。ただし、本実施形態のデ
ータ作成装置では、辺の移動量は、差分パターンの寸法(目標形状変化量に相当)の1/2以下の距離に設定される。したがって、1回の辺の移動によっては、電子線露光によるパターンを光露光によるパターンに十分に近づけることはできない可能性が高い。すなわち、1回の電子線露光用データ修正(図11のS10の処理)によっては、次のループにおけるS7の判定で、差分なしとはならない可能性が高い。そこで、本データ作成装置は、S5−S10の処理を複数回繰り返すことになる。
【0076】
図10Dに、2回目の辺の移動結果を例示する。図10Dで、実線は、2回目の辺の移動結果である。また、点線は、1回目の辺の移動結果であり、図10Cと同一形状である。
【0077】
このようにして、次のループにおけるS7の判定で、差分なしとなると、電子線露光用データの修正が完了する。このようにして修正されたパターンは、再度矩形に分割され、それぞれの矩形に露光量を指定するパラメータが割り当てられ、電子線露光用データの変更部分となる。
【0078】
以上述べたように、本実施形態のデータ作成装置によれば、光露光シミュレータによる形状予測データと、電子線露光シミュレータによる形状予測データとを求め、その差分データを作成する。そして、図9に示した差分修正テーブルにしたがって、差分データの寸法(差分量)を分類し、それぞれの分類ごとに辺の移動量を求める。このときに辺の移動量は、差分データの寸法の半分程度、または半分未満に設定される。その結果、1回の辺の移動によっては、必ずしも十分に、電子線露光によるパターンを光露光によるパターンに近づけることはできない可能性がある。しかしながら、本来必要と推定される移動量の半分以下に移動量を抑制した上で、図3に示した電子線露光用データの修正(S10)を繰り返し実行することによって、細かなステップで電子線露光によるパターンを光露光によるパターンに近づけることができる。その結果、電子線露光データのパターンの辺の移動に伴う、パターン面積の変動を抑制することができる。したがって、パターンの辺の移動に伴って改めて電子線露光用データを最初から作成することなく、辺の移動部分について、パターンを修正し、電子線露光用データに反映すればよい。その場合に、パターンの面積の変動が抑制されているので、電子線露光用データのパターンの露光量(または露光量を識別するパラメータ)を設定しなおす必要がない。すなわち、単純にパターンの辺だけを移動して電子線露光用データを修正できる。
【0079】
<変形例1>
上記第1実施形態では、設計データの全部分について、光露光によるウェーハ形状データ1Aと、電子線露光による形状データ2Aを比較し、差分データを抽出し、差分があった場合に、電子線露光データを修正した。しかし、このような処理に代えて、半導体デバイスの特性に影響及ぼす可能性が大きいと想定される部分に限定して、電子線露光用データを修正するようにしてもよい。
【0080】
例えば、ユーザによって外部指定された部分に含まれるパターンの形状を変更し、修正した電子線露光用データを作成すればよい。ユーザが外部から任意に指定する修正対象のパターンは、例えばトランジスタを形成するゲートパターンのような、半導体デバイスの特性に影響する箇所である。
【0081】
すなわち、本データ作成装置は、トランジスタを形成するゲートパターンのような半導体デバイスの特性に影響する箇所の指定を受け付ける。そして、本データ作成装置は、そのような指定箇所に含まれるパターンを他の部分と分離して抽出する。そして、本データ作成装置は、抽出した部分パターンに対して、上記と同様の手法によりパターン形状を修正したデータを作成する。そして、本データ作成装置は、指定箇所に対応するパターンの
部分を上記の修正したパターンに置き換える。その際、本データ作成装置は、そのパターン部分の補正露光量を変えないように置き換えることで、最終的な電子線露光用データを作成する。このようにして、本データ作成装置は、露光量補正処理を含む電子線のウェーハ露光に必要な各種補正処理を行って作成した電子線露光用データを部分的に修正する。
【0082】
図11に、修正対象を限定して電子線露光データを補正する処理フローを例示する。図11は、図3の処理と比較して、修正対象指定テーブル5が処理S4および処理S5において参照されている。修正対象指定テーブル5は、修正対象情報を保持する。修正対象情報には、S4−S10の処理を実行すべき露光データの部分が指定される。
【0083】
図12に、修正対象情報の例を示す。この例では、修正対象情報は、矩形領域を定義する情報である。矩形領域は、例えば、(x1,y1)(x2,y2)のように、矩形の左下点と右上点で定義される。矩形領域は、複数指定可能である。矩形領域の中には、閉ループで定義された図形が複数含まれていても良く、または、閉ループで定義された図形の一部を含んでいても良い。同一矩形領域内の図形群は1つのパターンとして見做され、図3のS4−S10の処理が実行される。
【0084】
図13に、修正対象指定テーブル5のデータ例を示す。修正対象指定テーブルは、領域ごとに、左下X座標、左下Y座標、右上X座標、右上Y座標によって、矩形状の領域を指定する。これらの座標は、例えば、チップの原点と同一の座標系で指定すればよい。
【0085】
本データ作成装置は、ユーザの設定した修正対象情報を基に、その修正対象個所の電子線露光用データを抽出する。この処理は、例えば、上記のような矩形領域と、電子線露光用データとの間で、AND演算を実行すればよい。そして、修正対象情報を基に、電子線露光用データから抽出された部分に限定し、S4−S10の処理を実行すればよい。その結果、差分データの作成、および差分データに基づく修正対象パターンを特定の個所に限定することができる。ここでは、修正対象情報は矩形領域を定義するようにしたが、多角形領域を定義するようにしても良い。
【0086】
特開2003−151885にあるように、シミュレーションを用いて露光データを補正することは一般的である。しかし、露光量補正処理の後で一部のパターンに対してのみ修正を加えるために、従来の方法にはない制約を設けている。すなわち、修正の前後で露光量の分布の変化を極力低減する必要がある。露光量の分布が変化すると、レジストに入射した電子線が基板で反射されて半径数十umの範囲に広がる後方散乱の影響が変化する。その結果、周辺のパターンの出来上がり寸法が変化してしまう。そのため、周辺のパターンも修正が必要になり、データ処理時間が増加するという問題が生じる。
【0087】
そこで、本データ作成装置では、露光量補正処理で設定された補正露光量をほぼ固定して、形状のみを変更する。もともと電子線露光と光露光で目標とする形状は同じなので、光露光の出来上がり形状に合わせるように電子線露光パターンの形状を変更しても、パターンの面積はそれ程増減しない。しかし、さらにその面積の増減ができるだけ小さくなるように形状を変更することで、周辺への副作用をより小さくすることができる。
【0088】
<変形例2>
上記実施形態では、レジストパターン形状を求めるために露光シミュレーションを用いたが、実際に描画したパターンを基に電子線露光用データを修正してもよい。例えば、半導体基板上のパターンのSEM(走査型電子顕微鏡)像から輪郭を抽出して、差分データを求めてもよい。
【0089】
《第2実施形態》
上記第1実施形態では、電子線露光用データの作成工程(図11のS3)に続く一連の工程の中で、電子線露光用データを修正した。しかし、このような処理に代えて、電子線露光用データの作成とは分離して、修正対象個所について、パターンの修正を実行してもよい。そして、得られた修正後の電子線露光用パターンの部分を通常の手順にしたがって、パターンの修正をすることなく作成した電子線露光用データ中の該当個所のパターンと置き換えることで、最終的な電子線露光用データを作成してもよい。すなわち、電子線露光用データ作成とは、異なるタイミングで(いわばオフラインで)、修正個所についてだけ、第1実施形態と同様の修正したパターンを作成しておき、置き換え処理を実行すればよい。
【0090】
図14に、第2実施形態に係る電子線露光用データ作成処理のフローを例示する。ここでは、本データ作成装置は、半導体デバイスの露光対象層の設計データからユーザが外部指定した修正対象指定部分のパターンを抽出する(S201)。ここで、修正対象のパターンを指定する方法として、第1実施形態で示した修正対象パターンを含む矩形領域を指定するようにしてもよい。その場合には、矩形領域と、設計データとの間で、AND演算を実行すればよい。また、この矩形領域を指定する以外に、設計データの階層の中から修正対象パターンを含む階層を指定してもよい。その場合には、設計データの階層(例えば、ゲートを指定する階層)だけを選択し、図形データを抽出すればよい。
【0091】
そして、本データ作成装置は、電子線で露光したときのレジストパターンの出来上がり形状が光露光のそれに近似するようにパターンを修正した電子線露光用修正データを作成する(S202)。この電子線露光用修正データの作成には、第1実施形態で示した図11の処理フローと同様の処理をそのまま実行すればよい。このように、一旦、修正対象個所についてだけ、修正した電子線露光用データを作成しておく。なお、電子線露光用データには、平坦化のためのダミーパターン発生が必要な露光層においては、設計データにダミーパターン発生を行い、その他、エッチングの影響を考慮するためのマイクロローディング効果補正、近接効果補正(露光量補正を含む)、スティッチング補正など、ウェーハ露光に必要なデータ処理を施す。
【0092】
一方、図14の処理では、本データ作成装置は、設計データを入力して通常の手順により、電子線露光用データを作成する(S301)。この電子線露光用データ作成では、図3あるいは図11の処理フローで行う電子線露光用データ作成と同じ処理(S3)を行う。さらに、平坦化のためのダミーパターン発生が必要な露光層においては、設計データにダミーパターン発生を行い、その他、エッチングの影響を考慮するためのマイクロローディング効果補正、近接効果補正(露光量補正を含む)、スティッチング補正など、ウェーハ露光に必要なデータ処理を施す。
【0093】
最後に、電子線露光用データの修正対象パターンを電子線露光用修正データの対応するパターンに置き換える(S302)。両者で補正露光量に違いはないので、周辺のパターンに対して副作用が生じる可能性は極めて低い。
【0094】
《コンピュータが読み取り可能な記録媒体》
コンピュータその他の機械、装置(以下、コンピュータ等)に上記いずれかの機能を実現させるプログラムをコンピュータ等が読み取り可能な記録媒体に記録することができる。そして、コンピュータ等に、この記録媒体のプログラムを読み込ませて実行させることにより、その機能を提供させることができる。
【0095】
ここで、コンピュータ等が読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラム等の情報を電気的、磁気的、光学的、機械的、または化学的作用によって蓄積し、コンピュータ等から読み取ることができる記録媒体をいう。このような記録媒体のうちコンピュータ等か
ら取り外し可能なものとしては、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R/W、DVD、DAT、8mmテープ、メモリカード等がある。
【0096】
また、コンピュータ等に固定された記録媒体としてハードディスクやROM(リードオンリーメモリ)等がある。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】電子線露光データを作成する第1の方法の概要を例示する図である。
【図2】露光システムのシステム構成を例示する図である。
【図3】第1実施形態に係る電子線露光用データ作成フローを例示する図である。
【図4A】設計データ、光強度シミュレータおよび電子線露光シミュレータによって得られるパターンの例である。
【図4B】電子線露光によるパターンから光露光によるパターンをSUB演算した形状の例である。
【図4C】光露光によるパターンから電子線露光によるパターンをSUB演算した形状の例である。
【図5】差分パターンの例である。
【図6】差分パターンを格納する差分パターン格納テーブルのデータ構造を例示する図である。
【図7】電子線露光用データ修正処理の詳細を例示するフローチャートである。
【図8】電子線露光用データ修正処理によるパターンの変化を例示する図である。
【図9】差分修正テーブルのデータ例である。
【図10A】マイナス移動辺に対する処理の概念を例示する図である。
【図10B】プラス移動辺に対する処理の概念を例示する図である。
【図10C】1回目の辺の移動結果を例示する図である。
【図10D】2回目の辺の移動結果を例示する図である。
【図11】修正対象を限定して電子線露光データを補正する処理フローを例示する図である。
【図12】修正対象情報の例である。
【図13】修正対象指定テーブルのデータ例である。
【図14】第2実施形態に係る電子線露光用データ作成処理のフローを例示する図である。
【符号の説明】
【0098】
1 光露光用データ
1A 光露光によるウェーハ形状データ
2、4電子線露光用データ
2A 電子線露光によるウェーハ形状データ
5 修正対象指定テーブル
10 LSI−CAD
11 データ作成装置
12 電子線露光装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子線描画のためのデータ作成技術に関する。
【背景技術】
【0002】
リソグラフィ工程において、半導体デバイスを大量に生産する量産過程では光露光技術を使用するのが一般的である。しかし、近年の半導体デバイスの微細化と高機能化によって1つの半導体デバイスが有する素子数が増大し、半導体デバイスを製造するために必要なレチクルの作製難易度が上昇している。このレチクル作製のコストと作製期間の増加は、半導体デバイスビジネスを成功に導く上での大きな足枷となっている。そこで、量産時には生産性の高い光露光技術を使用し、エンジニアリングサンプル(ES)などの少量生産時には高価なレチクルを必要としない電子線露光技術を使用すれば、レチクル作製負荷を回避することができる。
【0003】
しかし、異なる露光技術を使用すると、物理現象の違いによりレジストパターンの出来上がり形状が一致しないため、リソグラフィ工程の後続の工程で条件やパラメータの変更が必要になり、さらに、半導体デバイスの特性に違いが現れるなどの問題がある。このため、結局少量品についてもレチクル作製が必要な光露光技術を用いて製造することが多い。
【特許文献1】特開2003−151885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この問題を解決するために、光露光で加工される形状に電子線露光による形状が一致するような電子線露光用の設計データライブラリを予め作成しておき、入力された設計データに対して電子線露光用設計データライブラリの中から対応する電子線用データを選択し置き換えてから電子線用露光データを作成することも考えられる。しかし、そのような手順を採用した場合、電子線露光用の設計データのパターン形状が複雑となり、露光データ作成の手間が増大することが懸念される。本発明の課題は、露光データ作成の負担の増大を抑制し、少ない計算負荷で、電子線露光による形状が光露光で加工される形状に近似するような電子線用露光データを作成する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための一態様は、半導体装置の設計データから電子線露光に使用される電子線露光データを作成する電子線露光データ作成ステップと、電子線露光データを基に電子線露光によって基板上に形成される電子線露光パターンの形状と半導体装置の設計データを基に光露光によって基板上に形成される光露光パターンの形状との相異部分を示す差分情報を抽出する差分抽出ステップと、電子線露光パターンの形状と光露光パターンの形状との相異部分の寸法が所定の基準値内に収まったか否かを判定する判定ステップと、差分情報にしたがって、電子線露光データのパターンを形状変化させて形状変化露光データを取得し、電子線露光データを更新する更新ステップと、相異部分の寸法が所定の基準値内に収まっていないときに、差分抽出ステップ、判定ステップ、および更新ステップを繰り返す制御ステップと、を有する半導体装置のデータ作成方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、露光データ作成の負担の増大を抑制し、少ない計算負荷で、電子線露光による形状が光露光で加工される形状に近似するような電子線用露光データを作成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態という)に係るデータ作成装置について説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本発明は実施形態の構成には限定されない。
【0008】
《処理の概要》
本データ作成装置は、半導体デバイスの基板上のパターンを加工するときに使用される電子線用露光データを作成する。ただし、本データ作成装置は、電子線露光によって加工されるパターンの形状が光露光で加工されるパターンの形状に近似するような電子線用露光データを作成する。
(第1の方法)
図1に、このような電子線露光データを作成する第1の方法の概要を示す。ここでは、電子線露光によって加工されるパターンの形状が光露光で加工されるパターンの形状に近似するように、設計データを加工する。そのため、本データ作成装置は、まず、半導体デバイスの設計データをコピーして電子線露光用設計データライブラリファイルを作成する(S1)。設計データは、セルライブラリデータや配線層の配線データやビアホールデータを含む。
【0009】
セルライブラリデータは、例えば、トランジスタ等の素子を構成する多角形のパターンの集合である。配線データも、多角形パターンで定義されることが多い。また、ビアホールデータは、例えば、矩形で定義されたパターンである。これらのセルライブラリデータ、配線データ、ビアホールデータには、それぞれ、階層名あるいは配線情報と呼ばれる識別情報を付与される。識別情報は、セル名とも呼ばれる。
【0010】
これらの階層名あるいは配線情報は、設計データを構成する1つのデータファイル内でユニークに定義される。したがって、階層名あるいは配線情報を参照して、パターンを配置することができる。また、階層名あるいは配線情報を参照して、新たな部品を定義できる。そのような部品を組み合わせて半導体デバイスのレイアウトパターンが構成される。
【0011】
本実施形態では、コピーの際、これらの階層名の頭に“E"を付加し元データと区別でき、かつ、元データとの対応をとることができるようにする。
【0012】
次に、本データ作成装置は、設計データ中の露光対象の層に対する2種の露光データ作成処理を行う。一方は設計データを入力し光露光用データを作成する処理である(S2)。この処理は、例えば、レチクル作製用の露光データ作成処理と同様の処理である。この処理によって、データ作成装置の光露光用露光データ格納部1に光露光用露光データが格納される。
【0013】
他方は、設計データの一部を電子線露光用設計データで置き換えて、電子線露光データを作成する処理である(S3)。この処理によって、データ作成装置の電子線露光データ格納部2に電子線露光データが格納される。
【0014】
S2、S3の処理で、本データ作成装置は、平坦化のためのダミーパターン発生が必要な露光層においてはダミーパターン発生を行う。さらに、本データ作成装置は、S2の光露光用データ作成処理では、光近接効果補正、ローカルフレア補正、エッチングの影響を考慮するためのマイクロローディング効果補正など、レチクル作製のための露光データ作成に必要なデータ処理を施す。
【0015】
また、本データ作成装置は、S3の電子線露光用データを作成する処理では、近接効果
補正、スティッチング補正、エッチングの影響を考慮するためのマイクロローディング効果補正などを施す。
【0016】
次に、本データ作成装置は、夫々に作成した露光データに対して、光露光および電子線露光による露光強度シミュレーションを用い、半導体基板上の形状を図形データ化して出力する(S4、S5)。
【0017】
S4の処理の結果、光露光によるウェーハ形状データ1Aが作成される。光露光によるウェーハ形状データ1Aは、光露光による形状を模擬したデータである。光露光では、光露光用データからレチクルが作成され、そのレチクル上のパターンを光によって半導体基板に転写したときに、半導体基板上に塗付されたレジストにパターンが形成される。この光露光によるウェーハ形状データ1Aを格納する格納部が本発明の光露光パターン記憶部に相当する。この格納部は、例えば、ハードディスク上に構成される。
【0018】
また、S5の処理の結果、電子線露光によるウェーハ形状データ2Aが作成される。この電子線露光によるウェーハ形状データ2Aを格納する格納部が本発明の電子線露光パターン記憶部に相当する。電子線露光によるウェーハ形状データ2Aは、電子線露光による形状を模擬したデータである。電子線露光では、電子線露光用データにしたがって電子線を半導体基板に照射したときに、半導体基板上に塗付されたレジストにパターンが形成される。この格納部も、例えば、ハードディスク上に構成される。
【0019】
ここで、光露光用データに対しては、光強度シミュレータを用いる。本データ作成装置は、部分コヒーレント結像理論に基づいた光学像の計算モデル式(Yeungのモデル)を瞳面上の焦点距離と複素振幅透過率分布でフーリエ積分し、2乗して半導体基板上の光学像を求める。さらに、本データ作成装置は、レジスト膜、下地基板の反射を考慮したレジスト内強度分布(Mackのモデル)により、半導体基板上の光強度分布を計算する。そして、本データ作成装置は、光強度分布の等高線を描くことで露光および現像されたレジスト形状を算出する。このような光強度シミュレータの処理そのものは、周知であるので、その詳細は、省略する。
【0020】
また、本データ作成装置は、電子線露光用データに対しては、電子線露光シミュレータを用い、シミュレーションによる吸収エネルギ分布を算出する。そして、本データ作成装置は、吸収エネルギ強度の等高線をパターン化した半導体基板上の形状データを出力する。ここでは、本データ作成装置は、入射電子の試料内における軌跡をモンテカルロ法により、電子の散乱角はScreened Rutherford 散乱公式で、エネルギ損失は Betheの阻止能の式にて計算する。また、本データ作成装置は、レジスト中の単位体積あたりの吸収エネルギ分布を位置の関数として求める。そして、本データ作成装置は、吸収エネルギ分布を現像液に対する溶解速度分布に変換して最終的に露光、現像されたレジスト形状を算出する。電子線露光シミュレータ自体は、周知であるのでその詳細は省略する。
【0021】
そして、本データ作成装置は、夫々の形状データ同士を比較し、差分パターンを抽出する(S6)。比較方法としては、光露光による形状データと電子線露光による形状データとを図形論理処理にてSUB演算すればよい。
【0022】
なお、上記では、S2の処理で、レチクル作製用の露光データ作成処理と同様の処理を実行した。しかし、S2の処理は、レチクル作製用の露光データ作成処理に限定されるわけではなく、光露光シミュレータに入力可能なインターフェースフォーマットに設計データを変換する処理であればよい。また、S3の処理として、電子線露光データを作成する処理を実行した。しかし、S3の処理は、電子線露光データ作成処理に限定されるわけではなく、電子線露光シミュレータに入力可能なインターフェースフォーマットに設計デー
タを変換する処理であればよい。
【0023】
次に、本データ作成装置は、差分が許容値を超えるか否かを判定する(S7)。すなわち、本データ作成装置は、差分と判定するか否かの許容値(マージンの値)を保持しており、差分が許容値を超える場合に、差分ありと判定する。許容値は、レジストパターンの形状差が許容されるプロセスばらつきに収まる範囲を示す値や、特性差に影響を与えない範囲を示す値を外部指定で与える。このような許容値としては、実際の半導体プロセスで得られる経験値、あるいは、実験値を設定できるようにすればよい。
【0024】
比較の結果、差分が認められない場合は(S7でYES)、本データ作成装置は、電子線露光用設計データライブラリファイルを電子線露光用設計データライブラリに登録し、電子線露光用設計データ内の階層名を抽出した電子線露光用階層名・配線情報管理テーブルを作成する(S9)。この場合には、差分データは使用されないことになる。電子線露光用階層名・配線情報管理テーブルは、階層名/配線情報、アドレス、およびデータ量で示される3つの要素を有している。階層名/配線情報は、階層または配線情報を識別する設計データ内でユニークな名称である。アドレスは、設計データを格納するファイル内のアドレスである。データ量は、それぞれの層または配線のパターンを定義する図形データのデータ量である。したがって、データ作成装置は、階層名が与えられると、電子線露光用階層名/配線情報管理テーブルにアクセスすることにより、その階層名に対応するパターンを定義する図形データの先頭番地と、データ量を取得でき、該当するパターンを読み出すことができる。
【0025】
上述のように、電子線露光用設計データライブラリは、設計データライブラリが例えば、テクノロジノードや、デバイスの性能特性毎に補正され、管理されているのであれば、同様に管理される。すなわち、テクノロジノードや、デバイスの性能特性毎に個別に電子線露光用設計データライブラリを用意すればよい。
【0026】
差分が認められる場合には(S7でNO)、本データ作成装置は、差分データに従って電子線露光用設計データを修正する(S8)。
【0027】
さらに、本データ作成装置は、電子線露光用設計データを修正したものに更新し、このデータにて再度電子線露光用データ作成を行う。そして、差分がなくなるまで、本データ作成装置は、S3、S5−S8の処理繰り返す。
【0028】
(第2の方法)
第1の方法では、光露光によるウェーハ形状データ1Aと、電子線露光によるウェーハ形状データ2Aとの差分データによって、電子線露光用設計データが上書きされる。すなわち、差分データによって、設計データが更新されることになる。その結果、電子線露光用データ作成工程(S3の処理)が再度実行されることになる。
【0029】
しかしながら、差分データによって更新された設計データのパターン形状は、本来の設計データよりも複雑なものとなる。このため、更新された設計データから作成される電子線露光用データ2は、データ量が多くなる傾向がある。また、電子線露光用データ作成工程(S3の処理)を実行するコンピュータの負荷が重くなりやすい。
【0030】
そこで、第2の方法では、光露光によるウェーハ形状データ1Aと、電子線露光によるウェーハ形状データ2Aとの差分データから、電子線露光用データ2そのものを修正する。この場合には、電子線露光用データ2のうちの、差分データに隣接する個所だけが修正対象となる。
【0031】
また、電子線露光用データそのものを修正する結果、電子線露光のための各種の補正、例えば、露光量補正処理を含む電子線のウェーハ露光に必要な各種補正処理を再度実行する必要がない。すなわち、パターンを複雑な形状に修正する前に各種の補正処理を実行するので、これら補正処理にかかる負荷が上記第1の方法に比べて軽減される。
【0032】
ただし、第2の方法によれば、電子線露光用データの露光量補正処理を再度実行しないため、修正の前後で露光量の分布の変化を極力低減にする必要が生じる。露光量の分布が変化すると、レジストに入射した電子線が基板で反射されて半径数十ミクロンの範囲に広がる後方散乱の影響が変化する。その結果、周辺のパターンの出来上がり寸法が変化してしまう。そのため、周辺のパターンも修正が必要になり、データ処理時間が増加するという問題が生じる。そこで、本データ作成装置では、露光量補正処理で設定された補正露光量を固定して、形状のみを変更する。もともと電子線露光と光露光で目標とする形状は同じなので、光露光の出来上がり形状に合わせるように電子線露光パターンの形状を変更しても、パターンの面積はそれ程増減しない。しかし、さらにその面積の増減ができるだけ小さくなるように形状を変更することで、周辺への副作用をより小さくすることができる。
【0033】
すなわち、第2の方法は、露光量の分布への影響を極力低減させた上で、電子線露光用データの露光量補正処理を再度実行することなく、電子線露光後のパターンの形状が、極力光露光に近づくように、電子線露光用データを部分的に修正する。これによって、コンピュータの負荷を低減するとともに、電子線露光用データに対する最初の補正結果を有効に維持した上で、光露光に近い形状で電子線露光を実現する。
【0034】
《第1実施形態》
以下、図面を参照して、第2の方法の実施形態を説明する。
【0035】
<ハードウェア構成>
図2は、本露光システムのシステム構成を例示する図である。図2のように、本露光システムは、LSI−CAD10で作成した電子装置のデータから、電子線露光データを作成するデータ作成装置11と、作成された電子線露光データにしたがって電子線露光を実行する電子線露光装置12とを含む。
【0036】
本データ作成装置は、パーソナルコンピュータ、サーバ等の通常のコンピュータ上でデータ作成プログラムを実行することにより実現される。このようなコンピュータは、いずれも、CPU、メモリ、入出力インターフェース、表示装置、ハードディスク、ネットワークとの通信インターフェース、着脱可能な可搬型記憶媒体の駆動装置等を有している。このようなコンピュータの構成要素および作用は広く知られているので、その説明は省略する。
【0037】
ただし、本データ作成装置が処理する半導体デバイスの設計データは、本データ作成装置と同一のコンピュータ上で管理され、記憶されていてもよい。また、本データ作成装置が他のコンピュータと連係してコンピュータシステムを構成してもよい。例えば、半導体デバイスの設計データを作成し、管理する他のコンピュータが存在してもよい。本データ作成装置は、例えば、ネットワークを介してそのような他のコンピュータに管理される半導体デバイスの設計データにアクセスできればよい。また、本データ作成装置は、電子線露光装置に組み込まれたものでもよい。例えば、本データ作成装置が、電子線露光装置を制御する制御コンピュータと一体のコンピュータであってもよい。
【0038】
<各種補正処理>
本データ作成装置は、光露光シミュレーションおよび電子線露光シミュレーションで、
レジストパターンの形状を求める。その場合に、光露光シミュレーションで使用するレチクルパターンに対して、現在一般的に実施されている各種補正を実施する。この補正は、具体的には、レチクル作成用の電子線露光データに対して実施する。これらは、平坦化のためのダミーパターン発生、光近接効果補正、ローカルフレア補正、エッチングの影響を考慮するためのマイクロローディング効果補正などである。なお、シミュレーションによらず、SEM画像から、光露光パターンを求める場合に、光露光に使用されるレチクル作成用の電子線露光データに対しても、同様に、上記補正が実行される。
【0039】
また、電子線露光シミュレーションで使用する電子線露光データに対して、現在一般的に実施されている各種補正を実施する。これらの補正は、上記平坦化のためのダミーパターン発生、近接効果補正、スティッチング補正、上記エッチングに対するマイクロローディング効果補正などである。なお、シミュレーションによらず、SEM画像から、電子線露光パターンを求める場合に、電子線露光に使用される電子線露光データに対しても、同様に、上記補正が実行される。
【0040】
以下、これらの補正の概要を説明する。なお、これらの補正は、テクノロジに応じたデザインルール、すなわち、テクノロジごとに規定される最小線幅、最小パターン間隔、パターン密度にしたがって実行される。したがって、補正後の設計データは、テクノロジごとに管理すればよい。
【0041】
(1)平坦化のためのダミーパターン発生
平坦化のためのダミーパターン発生とは、ゲート層やメタル層(配線層、メタル配線層ともいう)に対して、パターンの面積密度を平準化する処理をいう。すなわち、半導体基板面に対応するデータ領域を定められた大きさの小領域に分割し、入力したパターン図形の各小領域中でのパターン面積を求め、小領域における面積密度を算出する。そして、各小領域の中で、基準面積密度に達していない小領域に対しては、基準面積密度に達するように、素子動作上影響のない箇所に、予め定義された構成のダミーのパターンを付加する。
【0042】
(2)光近接効果補正(OPC)
光近接効果補正(OPC)とは、露光、現像の物理モデルに基づくシミュレーションによって光近接効果(OPE)を予測し、その予測値に基づきマスクパターン補正量を割り出し、レチクル作成用のデータ上でパターンの辺を移動し、あるいはパターン形状を変更する処理である。このようなデータ上の補正により、半導体基板上に形成されるパターン形状が設計形状からずれる現象を抑制する。このような現象は、例えば、露光する光の波長と同程度または波長以下の寸法のパターン形成によって発生する。
【0043】
光近接効果補正では、予め求めておいた補正ルール(OPCルール)に基づき設計パターンの補正を行うルールベースOPCと、リソグラフィープロセスにおける現象をモデル化したシミュレータにより設計パターンの補正を行うモデルベースOPCを対象層に応じて使い分ける。
【0044】
ルールベースOPCの手段としては、まず、種々の図形処理を組み合わせた補正ルールを実験などで作成しておく。具体的には、一対のラインパターンに対して、線幅又は隣接スペース寸法に基づいて線幅を狭めたり又は広げたりする変更量のルールである。このルールを基にライン補正を行う。また、ラインパターンの先端が細く転写(パターニング)されることを防ぐために、ラインパターンの先端に矩形図形を付加するハンマーヘッド補正を行う。また、方形状パターンのコーナー部分が後退した状態でパターニングされることを防ぐために、方形状パターンの凸型コーナー部に矩形を付加するセリフ補正を行う。またL字状パターンの凹型コーナーが太った状態でパターニングされることを防ぐために
、凹型コーナーに削り込みを施すインセット補正を行う。
【0045】
モデルベースOPCは、オリジナルの設計データを元に、マスクパターンと転写された半導体基板上のパターンとの差異をシミュレーションによって計算して、設計データ通りの形状が得られるように、パターンデータの辺を移動する。
【0046】
(3)ローカルフレア補正
ローカルフレア補正では、ショットの一定領域毎に設計パターンの開口率を計算し、1つのショット領域毎に、ダブルガウシアンを用いたPoint Spread Functionで転写パターンに対応するマスクパターンのフレア量を見積もる。そして、半導体基板に転写するショットのレイアウトをもとに、所定の寸法のパターンを得るためのマスク寸法を求め、その寸法になるようにパターンデータの辺を移動する。
【0047】
(4)マイクロローディング効果補正
マイクロローディング効果補正では、パターンの寸法に応じてエッチング速度、形状が変化する現象を、予め実験で求めておく。そして、パターン寸法と隣接パターン間距離の組み合わせからなる表に線幅変動量(X)を設定しておく。データ作成装置に入力されたパターン図形の各辺に対して、隣接パターン間の距離を求め、上記事前に実験的に設定された表より線幅変動量(X)を得る。そして、マイクロローディング効果補正では、線幅変動量(X)に対して、辺の位置をパターンの外側(隣接パターン側)方向に −X/2 移動する。ここで、−(マイナス符号)の意味は、マイクロローディング効果による線幅変動量(X)と逆方向に移動するという意味である。
【0048】
(5)近接効果補正
近接効果は、電子線の半導体基板での散乱に起因して、パターン密度、パターン寸法、パターン間隔に応じて露光強度分布が変動する現象をいう。近接効果補正では、電子線露光量をパターンごとに設定し、この現象によるレジストの吸収エネルギの変動を補正する。すなわち、予め実験により求めた露光強度分布(EID:Exposure Intensity Distribution)関数に基づいて、各露光パターン毎の露光量を計算する。そして、最終的には各露光パターンが同じ吸収エネルギを得るように、各露光パターンの露光量を変化させながら自己整合計算を行い、最終的に各パターンの露光量を得る。
【0049】
(6)スティッチング補正
スティッチング補正は、露光装置のステージの移動によってショットがつなぎ合わされるパターンに対し、つなぎ合わされる部分のパターン端を延長するか、または、つなぎ目を覆う位置に、露光量を半分程度下げた追加パターンを発生する。これによって、ショットとショットの間でステージ移動が発生しても、そのつなぎをスムーズなものとする。
【0050】
<処理フロー>
本実施形態の処理手順を図3の電子線露光用データ作成フローにしたがって例示する。
【0051】
本データ作成装置は、まず、半導体デバイスの露光対象層の設計データを入力して2種類の露光データ作成処理を行う。一方は光露光用データを作成する処理、すなわちレチクル作製用の露光データ作成処理であり(S2、光露光データ作成ステップ)、他方は電子線露光用データを作成する処理である(S3、電子線露光データ作成ステップに相当)。平坦化のためのダミーパターン発生が必要な露光層においては、設計データにダミーパターン発生を行う。その他、レチクル作製用の露光データ作成処理では、エッチングの影響を考慮するためのマイクロローディング効果補正、光近接効果補正、ローカルフレア補正など、レチクル作製のための露光データ作成に必要なデータ処理を施す。電子線露光用デ
ータ作成処理では、エッチングの影響を考慮するためのマイクロローディング効果補正、近接効果補正(露光量補正を含む)、スティッチング補正など、ウェーハ露光に必要なデータ処理を施す。本実施形態のデータ作成装置は、これらの露光データ作成処理を最初に1度だけ実施する。
【0052】
それぞれに作成した露光データに対して、露光シミュレーションを行い、レジストパターン形状を図形データ化して出力する(S4、光露光模擬ステップに相当)(S5、電子線露光模擬ステップに相当)。光露光用データに対しては、光強度シミュレータを用い、電子線露光用データに対しては電子線露光シミュレータを用いる。シミュレーションにより求めた露光強度分布の等高線をパターン化したウェーハ形状データを出力する。
【0053】
図4Aに、設計データ、光強度シミュレータおよび電子線露光シミュレータによって得られるパターンの例を示す。図4Aで、点線のパターン100は、設計データと同一寸法、同一形状のパターンを比較のために示したものである。また、実線のパターン101は、光強度シミュレータにより算出された半導体基板上のレジスト形状を示している。また、斜線でハッチングされたパターン102は、電子線露光シミュレータにより算出された半導体基板上のレジスト形状を示している。
【0054】
次に、夫々の形状データ同士を比較して差分を求める(S6、差分抽出ステップに相当)。光露光による形状データから電子線露光による形状データを図形論理処理にて減算した結果をプラス(+)差分パターン、電子線露光による形状データから光露光による形状データを減算した結果をマイナス(−)差分パターンとする
本データ作成装置は、求められた差分データを以下のプラス(+)差分パターンと、マイナス(−)差分パターンとに分類する。すなわち、電子線露光による形状パターンより外側にある光露光による形状パターンをプラス(+)差分パターンという。プラス(+)差分パターンは、光露光による形状データから電子線露光による形状データを図形論理処理にて減算するようにSUB演算すればよい。
【0055】
図4Cのパターン104は、光露光によるパターン101から電子線露光によるパターン102をSUB演算した形状である。図4Cは、プラス(+)差分パターンの例を示している。本データ作成装置は、プラス(+)差分パターンでは、パターンの輪郭のうち、電子線露光によるパターン102に接する隣接側を区別するフラグを立てて差分データを格納しておく。
【0056】
すなわち、本データ作成装置は、光露光によるパターン101から電子線露光によるパターン102を減算するSUB演算を実行する際、残存パターンの電子線露光によるパターン102に接する隣接側にフラグを設定する。ここで、電子線露光によるパターン102に接する隣接側とは、図4Cでいう設計データ100に隣接する側をいう。
【0057】
したがって、フラグは、プラス(+)差分パターンが形状変更対象のデータ、すなわち、修正前の電子線露光用設計データのパターンに隣接する側が識別できるように設定する。このフラグを隣接フラグという。
【0058】
また、光露光による形状パターンより外側にある電子線露光の形状パターン部分をマイナス(−)差分パターンという。マイナス(−)差分パターンは、電子線露光による形状データから光露光による形状データを図形論理処理にて減算するようにSUB演算すればよい。
【0059】
図4Bのパターン103は、電子線露光によるパターン102から光露光によるパターン101をSUB演算した形状である。図4Bは、マイナス(−)差分パターンの例を示し
ている。本データ作成装置は、マイナス(−)差分パターンでは、パターンの輪郭のうち、光露光による形状パターンとの隣接側を区別し、隣接しない側にフラグを立てて差分データを格納しておく。
【0060】
すなわち、本データ作成装置は、電子線露光によるパターン102から光露光によるパターン101を減算するSUB演算を実行する際、残存パターンの光露光によるパターン101に接する辺以外の辺を隣接しない側としてフラグを設定する。
【0061】
ここで、マイナス(−)差分パターンの輪郭で光露光による形状パターンに隣接しない側とは、図4Bでいう設計データ100に隣接する側をいう。したがって、フラグは、マイナス(−)差分パターンが形状変更対象のデータ、すなわち、修正前の電子線露光用データのパターンに隣接する側が識別できるように設定する。このフラグも隣接フラグと呼ぶ。
【0062】
図5は、このようにして作成された差分パターンの例である。差分パターンは、頂点列で規定される多角形データである。
【0063】
図6は、差分パターンを格納する差分パターン格納テーブルのデータ構造を示している。差分パターン格納テーブルは、差分パターン管理情報と、テーブル本体とを有する。差分パターン管理情報は、差分フラグおよび頂点数を有する。差分フラグは、プラス(+)差分パターンか、マイナス(−)差分パターンかを示す情報である。頂点数は、差分パターンを構成する多角形の頂点数である。また、テーブル本体は、頂点座標と隣接フラグとを組み合わせた要素情報(X、Y、A)を含む。
【0064】
本データ作成装置は、差分と判定するか否かの許容値(比較マージン値)を設け、マージンを超える部分のみを差分とする。S6の上記マージンによる処理が、抑制ステップに相当する。比較マージンの値は、レジストパターンの形状差が許容されるプロセスばらつきに収まる範囲を示す値や、特性差に影響を与えない範囲を示す値を外部指定で与える。比較の結果、差分が認められない場合は、最後に電子線露光シミュレーションへの入力に用いた電子線露光用データを最終的な電子線露光用データとして出力する。
【0065】
差分が認められる場合は、本データ作成装置は、差分データに従って電子線露光用データを修正する(S10)。本データ作成装置は、電子線露光用データを修正したものに更新し、電子線露光シミュレーションへの入力データとする(図3の「上書き」参照、更新ステップに相当)。これを差分がなくなるまで繰り返す。以上の制御(図6のS7の判定から、S8を経てS3に至る処理)が、制御ステップに相当する。
【0066】
図7から図11を参照して電子線露光用データの修正方法を例示する。図7は、電子線露光用データ修正処理(図3のS10)の詳細を示すフローチャートである。また、図8は、電子線露光用データ修正処理によるパターンの変化を例示する図である。
【0067】
この処理では、本データ作成装置は、差分データと差分修正テーブルを入力し、差分パターンを差分量で分類する(S101)。図8(a)に、差分データの例を示す。EBで示された曲線が、電子線露光によるパターンの例である。また、PHOTOで示された曲線が、光露光によるパターンの例である。ハッチングを付した部分が、電子線露光によるパターンと、光露光によるパターンとの間の差分データ部分である。これらの差分データは、図6に示した差分パターン格納テーブルに保持される。
【0068】
図9に、差分修正テーブルのデータ例を示す。図9のように、差分修正テーブルの各行は、差分量d(k)(k=1,2,…,n)と辺移動量s(k)(k=1,2,…,n)とを対にして格納している。差分量は、プラス(+)差分パターンに対してはパターンの幅であり、マイナス(−)差分パタ
ーンに対してはパターンの幅の符号を除いた値である。差分修正テーブルの第k行目は、差分量dがd(k)≦d<d(k+1) (k=1, ..., n)の範囲に対する辺移動量s(k)を保持する。ここで、d(k)≦d<d(k+1)は、d(n+1)=無限大の距離としたとき、差分量dがd(k)≦d<d(k+1) (k=1, ..., n)の範囲にあることを表す。各kに対して差分データから差分量がd(k)≦d<d(k+1)の範囲に含まれる部分を抽出し、差分パターンを分類する。図8(b)に、差分データを図9にしたがって、分類した例を示す。ここでは、分類後の差分データ部分をハッチングの種類で区別して示している。
【0069】
なお、差分量は、個々の差分パターン(図5、図6で例示される多角形)ごとに、判定してもよい。また、図5のような多角形をさらに細かな図形に分解して、それぞれの分解された部分ごとに、差分量を判定してもよい。細かな図形に分解することで、よりきめ細かなパターンの修正ができる。
【0070】
次に、本データ作成装置は、分類した各差分量の差分パターンに対して、隣接フラグが設定された辺に隣接する露光パターンの辺(一部)を抽出する(S102)。図8(c)に各差分量に応じて分類された差分パターンに、それぞれ隣接して抽出された辺の例を示す。ここでは、抽出された辺を分類した結果が、線の種類によって例示されている。
【0071】
さらに、本データ作成装置は、差分修正テーブルの対応する辺移動量に従って移動量を決定し(決定するステップに相当)、辺を移動する(S103)。図8(d)に、辺を移動した後のパターンの例を示す。
この場合、差分修正テーブルの差分量に対する辺の移動量は、差分量の半分以下にするのが望ましい。1回の辺の移動量を小さくし、元の形状から少しずつ変化させることで、元の形状(あるいは面積)からの最小の変化で電子線露光と光露光のレジストパターン形状の差を許容値未満にすることができる。
【0072】
図10A−10Dは、電子線描画データのパターンの移動辺に対する処理の概念を例示する図である。図10Aは、マイナス移動辺に対する処理の概念を例示する図である。図10Aで、矩形112は、例えば、電子線露光データを構成する1つの矩形の例である。
【0073】
本データ作成装置は、電子線露光用データ中の矩形112に含まれる辺のうち、マイナス(−)差分パターン中の隣接フラグで指定される辺に最も近い辺を探索し、修正対象の移動辺とする。図10Aの例では、矩形112の上辺が移動辺として探索されている。さらに、この矩形の上辺は、E01、E02およびE03の3つの部分に分類されている。この分類は、差分修正テーブルにしたがった分類である。E11からE13は、それぞれ修正分類テーブルにしたがって移動量A1、A2およびA3だけ、辺の3つの部分E01、E02およびE03を移動した結果である。マイナス移動辺では、パターンは、面積が減少する方向に移動する。
【0074】
図10Bは、同様に、プラス移動辺に対する処理の概念を例示する図である。この場合も、本データ作成装置は、電子線露光用データ中の矩形112に含まれる辺のうち、プラス(+)差分パターン中の隣接フラグで指定される辺に最も近い辺を探索し、修正対象の移動辺とする。図10Bの例では、矩形112の右側の辺が移動辺として探索されている。さらに、矩形112の右側の辺のうち、部分E04に移動量A4が指定されている。そして、矩形111の右側辺の部分E04が、移動量A4だけパターンの面積が増加する方向に移動され、新たな辺E14が形成されている。なお、プラス移動辺の移動に伴って、移動辺の両端の軌跡に相当する新たな辺E34が追加される。
【0075】
図10Cに、1回目の辺の移動結果を例示する。図10Aおよび図10Bに示した矩形112は、辺の移動に伴って複雑な形状のパターンに変化する。ただし、本実施形態のデ
ータ作成装置では、辺の移動量は、差分パターンの寸法(目標形状変化量に相当)の1/2以下の距離に設定される。したがって、1回の辺の移動によっては、電子線露光によるパターンを光露光によるパターンに十分に近づけることはできない可能性が高い。すなわち、1回の電子線露光用データ修正(図11のS10の処理)によっては、次のループにおけるS7の判定で、差分なしとはならない可能性が高い。そこで、本データ作成装置は、S5−S10の処理を複数回繰り返すことになる。
【0076】
図10Dに、2回目の辺の移動結果を例示する。図10Dで、実線は、2回目の辺の移動結果である。また、点線は、1回目の辺の移動結果であり、図10Cと同一形状である。
【0077】
このようにして、次のループにおけるS7の判定で、差分なしとなると、電子線露光用データの修正が完了する。このようにして修正されたパターンは、再度矩形に分割され、それぞれの矩形に露光量を指定するパラメータが割り当てられ、電子線露光用データの変更部分となる。
【0078】
以上述べたように、本実施形態のデータ作成装置によれば、光露光シミュレータによる形状予測データと、電子線露光シミュレータによる形状予測データとを求め、その差分データを作成する。そして、図9に示した差分修正テーブルにしたがって、差分データの寸法(差分量)を分類し、それぞれの分類ごとに辺の移動量を求める。このときに辺の移動量は、差分データの寸法の半分程度、または半分未満に設定される。その結果、1回の辺の移動によっては、必ずしも十分に、電子線露光によるパターンを光露光によるパターンに近づけることはできない可能性がある。しかしながら、本来必要と推定される移動量の半分以下に移動量を抑制した上で、図3に示した電子線露光用データの修正(S10)を繰り返し実行することによって、細かなステップで電子線露光によるパターンを光露光によるパターンに近づけることができる。その結果、電子線露光データのパターンの辺の移動に伴う、パターン面積の変動を抑制することができる。したがって、パターンの辺の移動に伴って改めて電子線露光用データを最初から作成することなく、辺の移動部分について、パターンを修正し、電子線露光用データに反映すればよい。その場合に、パターンの面積の変動が抑制されているので、電子線露光用データのパターンの露光量(または露光量を識別するパラメータ)を設定しなおす必要がない。すなわち、単純にパターンの辺だけを移動して電子線露光用データを修正できる。
【0079】
<変形例1>
上記第1実施形態では、設計データの全部分について、光露光によるウェーハ形状データ1Aと、電子線露光による形状データ2Aを比較し、差分データを抽出し、差分があった場合に、電子線露光データを修正した。しかし、このような処理に代えて、半導体デバイスの特性に影響及ぼす可能性が大きいと想定される部分に限定して、電子線露光用データを修正するようにしてもよい。
【0080】
例えば、ユーザによって外部指定された部分に含まれるパターンの形状を変更し、修正した電子線露光用データを作成すればよい。ユーザが外部から任意に指定する修正対象のパターンは、例えばトランジスタを形成するゲートパターンのような、半導体デバイスの特性に影響する箇所である。
【0081】
すなわち、本データ作成装置は、トランジスタを形成するゲートパターンのような半導体デバイスの特性に影響する箇所の指定を受け付ける。そして、本データ作成装置は、そのような指定箇所に含まれるパターンを他の部分と分離して抽出する。そして、本データ作成装置は、抽出した部分パターンに対して、上記と同様の手法によりパターン形状を修正したデータを作成する。そして、本データ作成装置は、指定箇所に対応するパターンの
部分を上記の修正したパターンに置き換える。その際、本データ作成装置は、そのパターン部分の補正露光量を変えないように置き換えることで、最終的な電子線露光用データを作成する。このようにして、本データ作成装置は、露光量補正処理を含む電子線のウェーハ露光に必要な各種補正処理を行って作成した電子線露光用データを部分的に修正する。
【0082】
図11に、修正対象を限定して電子線露光データを補正する処理フローを例示する。図11は、図3の処理と比較して、修正対象指定テーブル5が処理S4および処理S5において参照されている。修正対象指定テーブル5は、修正対象情報を保持する。修正対象情報には、S4−S10の処理を実行すべき露光データの部分が指定される。
【0083】
図12に、修正対象情報の例を示す。この例では、修正対象情報は、矩形領域を定義する情報である。矩形領域は、例えば、(x1,y1)(x2,y2)のように、矩形の左下点と右上点で定義される。矩形領域は、複数指定可能である。矩形領域の中には、閉ループで定義された図形が複数含まれていても良く、または、閉ループで定義された図形の一部を含んでいても良い。同一矩形領域内の図形群は1つのパターンとして見做され、図3のS4−S10の処理が実行される。
【0084】
図13に、修正対象指定テーブル5のデータ例を示す。修正対象指定テーブルは、領域ごとに、左下X座標、左下Y座標、右上X座標、右上Y座標によって、矩形状の領域を指定する。これらの座標は、例えば、チップの原点と同一の座標系で指定すればよい。
【0085】
本データ作成装置は、ユーザの設定した修正対象情報を基に、その修正対象個所の電子線露光用データを抽出する。この処理は、例えば、上記のような矩形領域と、電子線露光用データとの間で、AND演算を実行すればよい。そして、修正対象情報を基に、電子線露光用データから抽出された部分に限定し、S4−S10の処理を実行すればよい。その結果、差分データの作成、および差分データに基づく修正対象パターンを特定の個所に限定することができる。ここでは、修正対象情報は矩形領域を定義するようにしたが、多角形領域を定義するようにしても良い。
【0086】
特開2003−151885にあるように、シミュレーションを用いて露光データを補正することは一般的である。しかし、露光量補正処理の後で一部のパターンに対してのみ修正を加えるために、従来の方法にはない制約を設けている。すなわち、修正の前後で露光量の分布の変化を極力低減する必要がある。露光量の分布が変化すると、レジストに入射した電子線が基板で反射されて半径数十umの範囲に広がる後方散乱の影響が変化する。その結果、周辺のパターンの出来上がり寸法が変化してしまう。そのため、周辺のパターンも修正が必要になり、データ処理時間が増加するという問題が生じる。
【0087】
そこで、本データ作成装置では、露光量補正処理で設定された補正露光量をほぼ固定して、形状のみを変更する。もともと電子線露光と光露光で目標とする形状は同じなので、光露光の出来上がり形状に合わせるように電子線露光パターンの形状を変更しても、パターンの面積はそれ程増減しない。しかし、さらにその面積の増減ができるだけ小さくなるように形状を変更することで、周辺への副作用をより小さくすることができる。
【0088】
<変形例2>
上記実施形態では、レジストパターン形状を求めるために露光シミュレーションを用いたが、実際に描画したパターンを基に電子線露光用データを修正してもよい。例えば、半導体基板上のパターンのSEM(走査型電子顕微鏡)像から輪郭を抽出して、差分データを求めてもよい。
【0089】
《第2実施形態》
上記第1実施形態では、電子線露光用データの作成工程(図11のS3)に続く一連の工程の中で、電子線露光用データを修正した。しかし、このような処理に代えて、電子線露光用データの作成とは分離して、修正対象個所について、パターンの修正を実行してもよい。そして、得られた修正後の電子線露光用パターンの部分を通常の手順にしたがって、パターンの修正をすることなく作成した電子線露光用データ中の該当個所のパターンと置き換えることで、最終的な電子線露光用データを作成してもよい。すなわち、電子線露光用データ作成とは、異なるタイミングで(いわばオフラインで)、修正個所についてだけ、第1実施形態と同様の修正したパターンを作成しておき、置き換え処理を実行すればよい。
【0090】
図14に、第2実施形態に係る電子線露光用データ作成処理のフローを例示する。ここでは、本データ作成装置は、半導体デバイスの露光対象層の設計データからユーザが外部指定した修正対象指定部分のパターンを抽出する(S201)。ここで、修正対象のパターンを指定する方法として、第1実施形態で示した修正対象パターンを含む矩形領域を指定するようにしてもよい。その場合には、矩形領域と、設計データとの間で、AND演算を実行すればよい。また、この矩形領域を指定する以外に、設計データの階層の中から修正対象パターンを含む階層を指定してもよい。その場合には、設計データの階層(例えば、ゲートを指定する階層)だけを選択し、図形データを抽出すればよい。
【0091】
そして、本データ作成装置は、電子線で露光したときのレジストパターンの出来上がり形状が光露光のそれに近似するようにパターンを修正した電子線露光用修正データを作成する(S202)。この電子線露光用修正データの作成には、第1実施形態で示した図11の処理フローと同様の処理をそのまま実行すればよい。このように、一旦、修正対象個所についてだけ、修正した電子線露光用データを作成しておく。なお、電子線露光用データには、平坦化のためのダミーパターン発生が必要な露光層においては、設計データにダミーパターン発生を行い、その他、エッチングの影響を考慮するためのマイクロローディング効果補正、近接効果補正(露光量補正を含む)、スティッチング補正など、ウェーハ露光に必要なデータ処理を施す。
【0092】
一方、図14の処理では、本データ作成装置は、設計データを入力して通常の手順により、電子線露光用データを作成する(S301)。この電子線露光用データ作成では、図3あるいは図11の処理フローで行う電子線露光用データ作成と同じ処理(S3)を行う。さらに、平坦化のためのダミーパターン発生が必要な露光層においては、設計データにダミーパターン発生を行い、その他、エッチングの影響を考慮するためのマイクロローディング効果補正、近接効果補正(露光量補正を含む)、スティッチング補正など、ウェーハ露光に必要なデータ処理を施す。
【0093】
最後に、電子線露光用データの修正対象パターンを電子線露光用修正データの対応するパターンに置き換える(S302)。両者で補正露光量に違いはないので、周辺のパターンに対して副作用が生じる可能性は極めて低い。
【0094】
《コンピュータが読み取り可能な記録媒体》
コンピュータその他の機械、装置(以下、コンピュータ等)に上記いずれかの機能を実現させるプログラムをコンピュータ等が読み取り可能な記録媒体に記録することができる。そして、コンピュータ等に、この記録媒体のプログラムを読み込ませて実行させることにより、その機能を提供させることができる。
【0095】
ここで、コンピュータ等が読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラム等の情報を電気的、磁気的、光学的、機械的、または化学的作用によって蓄積し、コンピュータ等から読み取ることができる記録媒体をいう。このような記録媒体のうちコンピュータ等か
ら取り外し可能なものとしては、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R/W、DVD、DAT、8mmテープ、メモリカード等がある。
【0096】
また、コンピュータ等に固定された記録媒体としてハードディスクやROM(リードオンリーメモリ)等がある。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】電子線露光データを作成する第1の方法の概要を例示する図である。
【図2】露光システムのシステム構成を例示する図である。
【図3】第1実施形態に係る電子線露光用データ作成フローを例示する図である。
【図4A】設計データ、光強度シミュレータおよび電子線露光シミュレータによって得られるパターンの例である。
【図4B】電子線露光によるパターンから光露光によるパターンをSUB演算した形状の例である。
【図4C】光露光によるパターンから電子線露光によるパターンをSUB演算した形状の例である。
【図5】差分パターンの例である。
【図6】差分パターンを格納する差分パターン格納テーブルのデータ構造を例示する図である。
【図7】電子線露光用データ修正処理の詳細を例示するフローチャートである。
【図8】電子線露光用データ修正処理によるパターンの変化を例示する図である。
【図9】差分修正テーブルのデータ例である。
【図10A】マイナス移動辺に対する処理の概念を例示する図である。
【図10B】プラス移動辺に対する処理の概念を例示する図である。
【図10C】1回目の辺の移動結果を例示する図である。
【図10D】2回目の辺の移動結果を例示する図である。
【図11】修正対象を限定して電子線露光データを補正する処理フローを例示する図である。
【図12】修正対象情報の例である。
【図13】修正対象指定テーブルのデータ例である。
【図14】第2実施形態に係る電子線露光用データ作成処理のフローを例示する図である。
【符号の説明】
【0098】
1 光露光用データ
1A 光露光によるウェーハ形状データ
2、4電子線露光用データ
2A 電子線露光によるウェーハ形状データ
5 修正対象指定テーブル
10 LSI−CAD
11 データ作成装置
12 電子線露光装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置の設計データから電子線露光に使用される電子線露光データを作成する電子線露光データ作成ステップと、
前記電子線露光データを基に電子線露光によって基板上に形成される電子線露光パターンの形状と前記半導体装置の設計データを基に光露光によって基板上に形成される光露光パターンの形状との相異部分を示す差分情報を抽出する差分抽出ステップと、
前記電子線露光パターンの形状と前記光露光パターンの形状との相異部分の寸法が所定の基準値内に収まったか否かを判定する判定ステップと、
前記差分情報にしたがって、前記電子線露光データのパターンを形状変化させて形状変化露光データを取得し、前記電子線露光データを更新する更新ステップと、
前記相異部分の寸法が所定の基準値内に収まっていないときに、前記差分抽出ステップ、判定ステップ、および更新ステップを繰り返す制御ステップと、を有する半導体装置のデータ作成方法。
【請求項2】
前記更新ステップは、
前記形状の相異部分の寸法を複数段階に分類するステップと、
前記それぞれの段階において、相異部分に該当する電子線露光データのパターンを形状変化させる形状変化量を決定するステップと、をさらに有する請求項1に記載の半導体装置のデータ作成方法。
【請求項3】
前記形状変化量は、前記更新ステップの1回の実行によって前記相異部分を解消するために必要な目標形状変化量より小さい値が指定される請求項2に記載の半導体装置のデータ作成方法。
【請求項4】
前記設計データから光露光の模擬に使用される光露光データを作成する光露光データ作成ステップと、
前記光露光データから前記光露光パターンを模擬する形状を生成する光露光模擬ステップと、をさらに有する請求項1から3のいずれかに記載の半導体装置のデータ作成方法。
【請求項5】
前記電子線露光データから前記電子線露光パターンを模擬する形状を生成する電子線露光模擬ステップをさらに有する請求項1から4のいずれかに記載の半導体装置のデータ作成方法。
【請求項6】
前記差分抽出ステップは、前記相異部分の寸法が所定の許容値より小さい場合に前記差分情報の抽出を抑制する抑制ステップを有する請求項1から5のいずれかに記載の半導体装置のデータ作成方法。
【請求項7】
前記設計データから光露光の模擬または光露光のマスク作成に使用される光露光データを作成する光露光データ作成ステップをさらに有し、
前記光露光データ作成ステップは、平坦化のためのダミーパターン発生、光近接効果補正、ローカルフレア補正、およびエッチングに対するマイクロローディング効果補正の少なくとも1つを含む補正処理を実行し、
電子線露光データ作成ステップは、平坦化のためのダミーパターン発生、近接効果補正、スティッチング補正、エッチングに対するマイクロローディング効果補正の少なくとも1つを含む補正処理を実行する請求項1から3のいずれかに記載の半導体装置のデータ作成方法。
【請求項8】
半導体装置の設計データから電子線露光に使用される電子線露光データを作成する電子線露光データ作成部と、
半導体装置の設計データを基に光露光によって基板上に形成される光露光パターンの形状を記憶する光露光パターン記憶部と、
前記電子線露光データを基に電子線露光によって前記基板上に形成される電子線露光パターンの形状を記憶する電子線露光パターン記憶部と、
前記光露光パターンの形状と前記電子線露光パターンの形状との相異部分を示す差分情報を抽出する差分抽出部と、
前記電子線露光パターンの形状と前記模擬光パターンの形状との相異部分の寸法が所定の基準値内に収まったか否かを判定する判定部と、
前記差分情報にしたがって、前記電子線露光データのパターンを形状変化させて形状変化露光データを取得し、前記電子線露光データを更新する更新部と、
前記相異部分の寸法が所定の基準値内に収まっていないときに、前記差分抽出部、判定部、および更新部を繰り返して起動する制御部と、を有するデータ作成装置と、
前記データ作成装置によって作成された電子線露光データにしたがって半導体基板上にパターンを生成する露光装置と、を備える電子線露光システム。
【請求項1】
半導体装置の設計データから電子線露光に使用される電子線露光データを作成する電子線露光データ作成ステップと、
前記電子線露光データを基に電子線露光によって基板上に形成される電子線露光パターンの形状と前記半導体装置の設計データを基に光露光によって基板上に形成される光露光パターンの形状との相異部分を示す差分情報を抽出する差分抽出ステップと、
前記電子線露光パターンの形状と前記光露光パターンの形状との相異部分の寸法が所定の基準値内に収まったか否かを判定する判定ステップと、
前記差分情報にしたがって、前記電子線露光データのパターンを形状変化させて形状変化露光データを取得し、前記電子線露光データを更新する更新ステップと、
前記相異部分の寸法が所定の基準値内に収まっていないときに、前記差分抽出ステップ、判定ステップ、および更新ステップを繰り返す制御ステップと、を有する半導体装置のデータ作成方法。
【請求項2】
前記更新ステップは、
前記形状の相異部分の寸法を複数段階に分類するステップと、
前記それぞれの段階において、相異部分に該当する電子線露光データのパターンを形状変化させる形状変化量を決定するステップと、をさらに有する請求項1に記載の半導体装置のデータ作成方法。
【請求項3】
前記形状変化量は、前記更新ステップの1回の実行によって前記相異部分を解消するために必要な目標形状変化量より小さい値が指定される請求項2に記載の半導体装置のデータ作成方法。
【請求項4】
前記設計データから光露光の模擬に使用される光露光データを作成する光露光データ作成ステップと、
前記光露光データから前記光露光パターンを模擬する形状を生成する光露光模擬ステップと、をさらに有する請求項1から3のいずれかに記載の半導体装置のデータ作成方法。
【請求項5】
前記電子線露光データから前記電子線露光パターンを模擬する形状を生成する電子線露光模擬ステップをさらに有する請求項1から4のいずれかに記載の半導体装置のデータ作成方法。
【請求項6】
前記差分抽出ステップは、前記相異部分の寸法が所定の許容値より小さい場合に前記差分情報の抽出を抑制する抑制ステップを有する請求項1から5のいずれかに記載の半導体装置のデータ作成方法。
【請求項7】
前記設計データから光露光の模擬または光露光のマスク作成に使用される光露光データを作成する光露光データ作成ステップをさらに有し、
前記光露光データ作成ステップは、平坦化のためのダミーパターン発生、光近接効果補正、ローカルフレア補正、およびエッチングに対するマイクロローディング効果補正の少なくとも1つを含む補正処理を実行し、
電子線露光データ作成ステップは、平坦化のためのダミーパターン発生、近接効果補正、スティッチング補正、エッチングに対するマイクロローディング効果補正の少なくとも1つを含む補正処理を実行する請求項1から3のいずれかに記載の半導体装置のデータ作成方法。
【請求項8】
半導体装置の設計データから電子線露光に使用される電子線露光データを作成する電子線露光データ作成部と、
半導体装置の設計データを基に光露光によって基板上に形成される光露光パターンの形状を記憶する光露光パターン記憶部と、
前記電子線露光データを基に電子線露光によって前記基板上に形成される電子線露光パターンの形状を記憶する電子線露光パターン記憶部と、
前記光露光パターンの形状と前記電子線露光パターンの形状との相異部分を示す差分情報を抽出する差分抽出部と、
前記電子線露光パターンの形状と前記模擬光パターンの形状との相異部分の寸法が所定の基準値内に収まったか否かを判定する判定部と、
前記差分情報にしたがって、前記電子線露光データのパターンを形状変化させて形状変化露光データを取得し、前記電子線露光データを更新する更新部と、
前記相異部分の寸法が所定の基準値内に収まっていないときに、前記差分抽出部、判定部、および更新部を繰り返して起動する制御部と、を有するデータ作成装置と、
前記データ作成装置によって作成された電子線露光データにしたがって半導体基板上にパターンを生成する露光装置と、を備える電子線露光システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−170743(P2009−170743A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−8709(P2008−8709)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(308014341)富士通マイクロエレクトロニクス株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(308014341)富士通マイクロエレクトロニクス株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】
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