説明

半導体装置の製造方法および半導体装置の製造装置

【課題】はんだバンプ表面の酸化膜を良好に除去しつつ、半導体素子の反り等を防止し、はんだバンプの接続性向上を可能にした半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、第1の半導体チップ2と第2の半導体チップ5との間の隙間をスペーサ突起4により保持しつつ、第2の半導体チップ5のはんだバンプ3と第1の半導体チップ2の金属電極1とを仮固定する。次いで、仮固定された積層体を、荷重を負荷しながらギ酸等のカルボン酸ガス雰囲気で加熱し、はんだバンプ3表面の酸化膜を還元・除去しつつはんだバンプ3の接合を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置の製造方法、および半導体装置の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体チップの多ピン化、ファインピッチ化、および信号速度の高速化に対応するために、配線・接続長が短い実装方式として、フリップチップ接続を適用した半導体装置が使用されている。半導体チップ間の接続や半導体チップとシリコンインターポーザとの接続等にフリップチップ接続を適用する場合、上下のチップ(半導体チップやシリコンインターポーザ)の少なくとも一方の電極パッド上にはんだバンプを形成し、上下両方のはんだバンプ、または一方のはんだバンプと他方の電極パッドとを対向するように位置合せして積層した後、はんだバンプを加熱・溶融して接続する(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかし、このような方法では、はんだバンプの表面に酸化膜が存在するため、はんだ接続部の信頼性が悪い。したがって、はんだバンプ表面の酸化膜を除去するために、フラックス剤をはんだバンプの表面に塗布する方法が行われている。この方法では、フラックス剤を塗布した後、はんだバンプと電極パッド等を位置合せして半導体チップを積層し、リフロー炉ではんだバンプを加熱・溶融させて接続し、しかる後フラックス剤を洗浄して除去している。
【0004】
しかし、はんだバンプの微小化や配設ピッチの微細化等に伴って、フラックス剤を完全に洗浄し除去することが困難になってきている。そのため、前記方法では、フラックス剤の残渣やフラックス洗浄剤の残渣が問題になっている。すなわち、フラックス剤等の残渣が、はんだ接続部の保護やチップ保護を目的とするアンダーフィル樹脂の充填の際に影響を与え、ボイドの発生やボイドに起因する剥離不良、接続不良(オープン不良)に繋がるという問題があった。
【0005】
そこで、還元性を有するカルボン酸ではんだバンプ表面の酸化膜を還元して除去しながら、はんだバンプを加熱・溶融して接続する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
しかしながら、この方法では、はんだバンプを溶融する際の加熱によって、上層に配置された半導体チップに中央部が浮き上がるような変形(反り)が発生し、はんだバンプが未接続になるという問題があった。
なお、特許文献1に記載されたフリップチップ接続構造では、はんだバンプの溶融時にチップが傾くことなく一定の高さで実装されるように、はんだバンプと干渉しない位置にスペーサが設けられているが、このような構造においても、上層の半導体チップの反りにより、はんだバンプの接続不良が発生するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平4−127649号公報
【特許文献2】特開2001−244283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、はんだバンプ表面の酸化膜を良好に除去しつつ、半導体素子の反り等を防止し、はんだバンプの接続性向上を可能にした半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の半導体装置の製造方法は、一方の主面に第1のバンプ電極を有する第1の半導体素子と、一方の主面に第2のバンプ電極とスペーサ突起とを有する第2の半導体素子とからなり、前記第1のバンプ電極と前記第2のバンプ電極の少なくとも一方がはんだバンプである1対の半導体素子を用意する工程と、前記第1の半導体素子と前記第2の半導体素子とを、前記第1のバンプ電極が設けられた主面と前記第2のバンプ電極が設けられた主面とが対向するように積層し、前記第1のバンプ電極と前記第2のバンプ電極とを位置合せして仮固定する仮固定工程と、前記バンプ電極同士を仮固定した前記第1の半導体素子と前記第2の半導体素子との積層体を、加熱炉内に配置し、前記スペーサ突起により前記第1の半導体素子と前記第2の半導体素子との間の隙間を保持しつつ、前記バンプ電極同士を圧接するように前記積層体に荷重を負荷する工程と、前記荷重の負荷を継続しながら前記加熱炉内にカルボン酸ガスを導入し、該カルボン酸ガスの雰囲気で、前記加熱炉内の温度を、前記第1のバンプ電極と前記第2のバンプ電極の少なくとも一方であるはんだバンプの融点以上の温度に加熱・保持して、前記第1のバンプ電極と前記第2のバンプ電極とを接合するバンプ電極接合工程とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、実施形態の半導体装置の製造方法は、一方の主面に下層バンプ電極を有する下層半導体素子と、両方の主面に第1の中間バンプ電極と第2の中間バンプ電極とをそれぞれ有し、前記第1の中間バンプ電極と前記第2の中間バンプ電極とが貫通ビアを介して接続された中間半導体素子の1個または2個以上と、一方の主面に上層バンプ電極を有する上層半導体素子とからなり、この順で積層された場合、対向する半導体素子のどちらかがスペーサ突起を有するように構成され、かつ対向するバンプ電極の少なくとも一方がはんだバンプとなるように構成された1組の半導体素子を用意する工程と、前記下層半導体素子、前記中間半導体素子および前記上層半導体素子を、対向する半導体素子間にどちらかの半導体素子に設けられた前記スペーサ突起が挟み込まれるように積層し、対向するバンプ電極同士を位置合せして仮固定する仮固定工程と、前記バンプ電極同士を仮固定した多層積層体を、加熱炉内に配置し、前記スペーサ突起により各半導体素子間の隙間を保持しつつ、対向するバンプ電極同士を圧接するように前記多層積層体に荷重を負荷する工程と、前記荷重の負荷を継続しながら、前記加熱炉内にカルボン酸ガスを導入し、該カルボン酸ガスの雰囲気で、前記加熱炉内の温度を前記はんだバンプの融点以上の温度に加熱・保持して、対向する前記バンプ電極同士を接合するバンプ電極接合工程とを備えることを特徴とする。
【0011】
前記仮固定工程において、前記スペーサ突起を、該スペーサ突起が設けられた半導体素子と対向する半導体素子の主面に接着することができる。また、前記積層体または前記多層積層体に負荷する前記荷重の大きさは、前記バンプ電極接合工程において、前記第1の半導体素子と前記第2の半導体素子のうちで上方に配置された半導体素子、あるいは上層半導体素子の反りを防止し、かつ各半導体素子間に前記スペーサ突起の高さ分の隙間が保持されるように調整することが好ましい。
【0012】
実施形態の半導体素子接続体の製造装置は、少なくとも一方の主面にバンプ電極を有する複数個の半導体素子を、対向する前記バンプ電極の少なくとも一方をはんだバンプとし、各半導体素子の対向するバンプ電極を位置合わせして仮固定し、かつ対向する半導体素子間にどちらかの半導体素子の主面に設けられたスペーサ突起が挟み込まれるように積層してなる積層体の、前記対向するバンプ電極同士を接合して、半導体素子接続体を製造する装置であり、前記積層体を収容する加熱炉と、前記積層体に荷重を負荷する荷重負荷機構と、前記加熱炉内を排気して減圧雰囲気にする排気機構と、前記加熱炉内にカルボン酸ガスを導入するカルボン酸ガス導入機構と、前記加熱炉内の温度を所定の温度に加熱・保持する加熱機構とを備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施形態による半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図2】第2の実施形態による半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図3】第2の実施形態による半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、実施形態を詳細に説明する。
【0015】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態による半導体装置の製造工程を示す断面図である。第1の実施形態による半導体装置の製造方法は、(1−1)1対の半導体素子を用意する準備工程と、(2−1)バンプ電極の仮固定工程と、(3−1)積層体に荷重を負荷する荷重負荷工程と、(4−1)バンプ電極の接合工程とを有する。以下、各工程について説明する。
【0016】
(1−1)準備工程
図1(a)に示すように、一方の主面(図では上面)に第1のバンプ電極である金属電極(例えば、Au電極)1を有する第1の半導体素子である半導体チップ2と、一方の主面(図では下面)に第2のバンプ電極であるはんだバンプ3を有し、かつ同じ主面のはんだバンプ3の形成領域を除く領域(以下、非形成領域と示す。)に、非導電性材料から成る複数個のスペーサ突起4を有する第2の半導体素子である半導体チップ5とを用意する。なお、第1の半導体チップ2と第2の半導体チップ5とを積層した積層体において、第1の半導体チップ2は下層に配置され、第2の半導体チップ5はその上に配置されるものとする。
【0017】
第1の半導体チップ2および第2の半導体チップ5は、例えば、シリコン(Si)チップ等であるが、少なくとも一方がシリコン(Si)インターポーザであってもよい。すなわち、第1の半導体素子と第2の半導体素子の組合せは、前記した半導体チップと半導体チップとの組合せの他に、Siインターポーザと半導体チップとの組合せ、半導体チップとSiインターポーザとの組合せ等があり、特に限定されるものではない。
【0018】
バンプ電極とは、2つの半導体素子を電気的および機械的に接続する接続部を形成する電極をいう。第1のバンプ電極および第2のバンプ電極は、第1の半導体チップ2および第2の半導体チップ5の一方の主面の所定の領域内に、例えばマトリクス状に配列されている。
第1の実施形態では、第1の半導体チップ2に設けられた第1のバンプ電極が平坦なパッド形状の金属電極1(例えばAu電極)であり、第2の半導体チップ5に設けられた第2のバンプ電極が突起形状のはんだバンプ3である例を記載したが、第1のバンプ電極と第2のバンプ電極の組合せは、はんだバンプ/はんだバンプ、または、はんだバンプ/Au電極の組合せでもよい。すなわち、第1のバンプ電極と第2のバンプ電極の少なくとも一方が、はんだバンプであればよい。
【0019】
はんだバンプ3の構成材料としては、例えば、Sn−Ag系はんだ合金、Sn−Cu系はんだ合金、Sn−Ag−Cu系はんだ合金、Sn−Bi系はんだ合金、Sn−In系はんだ合金等の鉛フリーはんだ合金、あるいはSn−Pb系はんだ合金が用いられる。すなわち、はんだバンプ3は、鉛を実質的に含まない鉛フリーはんだ、および鉛はんだのいずれから構成されたものでもよい。
【0020】
はんだバンプ3は、電極パッド(図示を省略。)上にバリアメタル層(図示を省略。)を介して形成される。例えば、メッキ法を用いて、あるいははんだ合金からなる微小ボールを用いて形成することができる。形成直後のはんだバンプ3の表面には酸化膜が存在していないが、時間を経るに従ってはんだバンプ3の表面が酸化され、酸化膜が形成される。
【0021】
スペーサ突起4は、第2の半導体チップ5の下面のはんだバンプ3の非形成領域に設けられており、後述する仮固定工程以降の工程で、半導体チップ間の隙間(ギャップ)を、設定された接続高さ(はんだバンプ3と金属電極1とからなるバンプ接続体の設定高さ)に保つ働きをする。すなわち、仮固定工程以降の工程で、スペーサ突起4によって、第1の半導体チップ2と第2の半導体チップ5との間の隙間が保持されるため、はんだバンプ3の潰れやそれに伴う接続不良(ショート等)の発生を抑制することができる。
【0022】
スペーサ突起4は、はんだの溶融温度では軟化しない材料で構成することが好ましい。例えば、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、BCB(ベンゾシクロブテン)樹脂、アクリル樹脂のような熱硬化性樹脂材料を使用し、リソグラフィ技術を適用し、あるいはディスペンサによる塗布技術を適用して、スペーサ突起4を形成することができる。
【0023】
また、スペーサ突起4は、感光性で熱硬化性を有する樹脂(例えば、感光剤を含有する熱硬化性樹脂/感光性接着性樹脂等)を用いて形成することができる。このような感光性で熱硬化性を有する樹脂により形成されたスペーサ突起4は、形成段階において紫外線等の照射により硬化しているため、半導体チップ間の隙間を保持するためのストッパとして機能させることができる。さらに、このような樹脂からなるスペーサ突起4は、仮固定工程以降の加熱時には熱硬化し、対向する半導体チップの主面と接着する結果、後述する荷重の負荷と相まって、はんだバンプ接合工程での第2の半導体チップ5の反りをよりいっそう抑制し、はんだバンプ3の接続不良等を防止することができるという利点がある。
【0024】
スペーサ突起4の数および配置位置は、同じ面に設けられているはんだバンプ3の数および配列パターンにより異なるが、例えば、はんだバンプ3の配列が、チップサイズを長辺方向に5等分して、両端部を除いた各領域にそれぞれ4個のはんだバンプを均等に配置した構造では、はんだバンプ3の数に対して1倍(同数)〜4倍の数のスペーサ突起4を、はんだバンプ3を取り囲むように配置することが好ましい。
【0025】
(2−1)バンプ電極の仮固定工程
図1(b)に示すように、金属電極1が設けられた面を上向きにして下層に配置された第1の半導体チップ2の上に、第2の半導体チップ5を、はんだバンプ3とスペーサ突起4が形成された面が下向きになるように積層して配置する。そして、第1の半導体チップ2の金属電極1と第2の半導体チップ5のはんだバンプ3とを、位置合せした後、スペーサ突起4により第1の半導体チップ2と第2の半導体チップ5との間の隙間を保持しつつ、はんだバンプ3と金属電極1とを仮固定する。
【0026】
仮固定では、次工程に投入する際に、上下の半導体チップが外れない程度の接続強度が得られればよい。はんだバンプ3と金属電極1との仮固定には、超音波フリップチップボンダによる室温下での超音波等の印加、パルスヒータ加熱型フリップチップボンダによるはんだの融点付近の温度の印加等の方法が適用される。
【0027】
なお、この仮固定は、はんだバンプ3の表面に酸化膜が存在している状態で実施されるため、はんだバンプ3と金属電極1との接触界面に酸化膜が噛み込まれた状態となる。しかし、仮固定の状態では、はんだバンプ3と金属電極1との界面の一部に隙間が存在しているため、後述する表面酸化膜の除去およびバンプ電極の接合では、このような界面の隙間を利用し、はんだバンプの表面に存在する酸化膜が、接触界面に噛み込まれた酸化膜を含めて全てカルボン酸ガスで還元され除去される。
【0028】
また、このような仮固定工程において、第2の半導体チップ5に設けられたスペーサ突起4は、第1の半導体チップ2と第2の半導体チップ5との間の隙間を保持するストッパとして機能するが、前記したように、スペーサ突起4を感光性で熱硬化性を有する樹脂等により形成した場合は、スペーサ突起4が対向する第1の半導体チップ2の上面に接着する。その結果、半導体チップ間の隙間がさらに安定的に保持される。
【0029】
(3−1)荷重負荷工程および(4−1)バンプ電極の接合工程
図1(c)に示すように、はんだバンプ3と金属電極1とが仮固定された第1の半導体チップ2と第2の半導体チップ5との積層体を、以下に示す製造装置に投入し、荷重を負荷しながらカルボン酸ガス雰囲気で加熱する。そして、はんだバンプ3表面の酸化膜を還元して除去するとともに、はんだバンプ3と金属電極1とを接合して、半導体装置(半導体素子接続体)を製造する。
【0030】
実施形態の製造装置は、前記積層体を収容する加熱炉6と、収容された前記積層体に荷重を負荷する荷重負荷機構7と、加熱炉6内を排気して減圧雰囲気とする排気機構8と、加熱炉6内にカルボン酸ガスを導入するカルボン酸ガス導入機構9と、加熱炉6内の温度を所定の温度に加熱・保持する加熱機構10とを備えている。
【0031】
ここで、荷重負荷機構7は、積層体の上層の半導体チップである第2の半導体チップ5の上面全体に、垂直方向に均一に荷重をかけることができる機構であれば、特に限定されない。例えば、所定の重さの錘を載せる方法や、プレス装置により垂直方向に加圧する方法がある。また、排気機構8としては、真空ポンプのような吸引減圧機構が挙げられる。さらに、加熱機構10は、加熱炉6内の温度を所定の温度に加熱し、その温度を所定の時間保持することができる機構であれば、特に限定されないが、昇温速度や加熱温度の調整が簡単であることから、電熱ヒータのような電気的加熱機構が好ましい。
【0032】
荷重負荷工程およびバンプ電極の接合工程は、このような製造装置を使用し、以下に示すようにして行う。
すなわち、第1の半導体チップ2と第2の半導体チップ5との積層体を、加熱炉6内の電熱ヒータ等の加熱機構10が内蔵された基盤(ヒータ盤)10a上に配置した後、荷重負荷機構7により、積層体の上層の第2の半導体チップ5の上面全体に均一に荷重を負荷する。荷重の負荷により、仮固定された第2の半導体チップ5のはんだバンプ3と第1の半導体チップ2の金属電極1とは圧接されるが、第2の半導体チップ5に設けられたスペーサ突起4により、第1の半導体チップ2と第2の半導体チップ5との間の隙間は、それ以上減少することなく保持される。そして、このようにスペーサ突起4により半導体チップ間の隙間が保持された状態で、はんだバンプ3の接合までの工程がなされる。
【0033】
なお、負荷される荷重の大きさは、第2の半導体チップ5の浮き上がり(反り)を防止し、かつ半導体チップ間にスペーサ突起4の高さ分の隙間が維持されるように調整することが好ましい。具体的には、第2の半導体チップ5の上面全体が、9.8kPa〜49.0kPaの圧力で加圧されるように荷重を負荷することが好ましい。
【0034】
次いで、前記積層体への荷重の負荷を続けながら、加熱炉6内の空気を真空ポンプ等の排気機構8により排気して、加熱炉6内を減圧状態とする。加熱炉6内に残留する酸素ははんだバンプ3を酸化させるため、加熱炉6内を1×10Pa以下、特に5Pa程度の減圧状態まで排気することが好ましい。
【0035】
次に、このような減圧状態の加熱炉6内に、カルボン酸ガス導入機構9を用いてカルボン酸ガスを導入し、充填させる。カルボン酸ガスは、はんだバンプ3の表面に存在する酸化膜を還元して除去するものである。酸化膜の還元剤として用いるカルボン酸は特に限定されるものではなく、例えば、ギ酸、酢酸、アクリル酸、プロピオン酸、シュウ酸、コハク酸、マロン酸のような、脂肪族の1価または2価の低級カルボン酸が挙げられる。それ自体のコストやガス化のためのコストが低く、また酸化膜の還元作用に優れることから、ギ酸を使用することが好ましい。
【0036】
加熱炉6内にギ酸等のカルボン酸ガスを導入した後、もくしはカルボン酸ガスの導入とほぼ同時に、電熱ヒータ等の加熱機構10に通電し、加熱炉6内の温度をはんだバンプ3の融点以上の温度に上昇させる。はんだバンプ3の表面酸化膜に対するギ酸の還元作用は、150℃以上の温度で発現するので、加熱炉6内をはんだバンプ3の融点以上に昇温する過程で、はんだバンプ3表面の酸化膜はギ酸により還元されて除去される。なお、「はんだバンプの融点以上の温度」とは、はんだバンプを構成するはんだの組成材料の融点以上の温度をいう。
【0037】
カルボン酸ガスの導入後の加熱炉6内の雰囲気圧は、大気圧より低い状態となるように設定することが好ましい。これによって、カルボン酸ガスで酸化膜を還元した際に発生するガスを、はんだバンプ3と金属電極1との仮固定部から周囲に放散させることができる。例えば、加熱炉6内の温度がはんだバンプ3の融点に達する前に、加熱炉6内を真空引きすることによって、はんだバンプ3と金属電極1との接触界面(仮固定部)の隙間に侵入したカルボン酸ガスや酸化膜の還元時に発生したガスを、前記接触界面から除去することができる。
【0038】
そして、加熱炉6内の温度をはんだバンプ3の融点以上の温度に上昇させ、はんだバンプ3が溶融するまでその温度を保持する、こうして、はんだバンプ3を溶融させて金属電極1と接合させる。その後、カルボン酸ガスの導入を停止するとともに、ヒータ盤10aへの通電を停止して、加熱炉6内の温度を低下させることで、はんだを再凝固させ、第1の半導体チップ2と第2の半導体チップ5との接続体(半導体素子接続体)を得る。
【0039】
こうして得られた半導体素子接続体は、通常のアセンブリ工程に送られる。アセンブリ工程は半導体装置の構造に応じて選択されるものであり、特に限定されるものではない。その一例を述べると、まず第1の半導体チップ2と第2の半導体チップ5との間の隙間に熱硬化性のアンダーフィル樹脂を充填し、これを硬化させる。さらに、半導体素子接続体を、例えば配線基板上に搭載した後、接続体と配線基板との間をワイヤーボンディング等で接続する。このような構造体を樹脂モールドした後、アウターリードボールを配置して半導体パッケージの外部接続端子を形成する。
【0040】
第1の実施形態においては、第1の半導体チップ2と第2の半導体チップ5との間にスペーサ突起4を介挿して積層した積層体を、荷重を負荷しながらカルボン酸ガス雰囲気で加熱し、はんだバンプ3表面の酸化膜を還元・除去しつつはんだバンプ3の接合を行うことで、はんだバンプ3の接続不良や溶融後のはんだバンプ3の抵抗の増加を抑制することができ、歩留まりを向上させることができる。
【0041】
次に、第2の実施形態である多層型半導体装置の製造方法について、図面を参照して説明する。第2の実施形態で製造する多層型半導体装置は、第1の実施形態における上層半導体素子である第2の半導体チップ5を、両主面にバンプ電極を有する半導体チップ(中間半導体チップ)とし、この半導体チップの上にさらに第3の半導体チップを積層し、対向するバンプ電極を電気的および機械的に接続した構造を有するものである。
【0042】
以下では、下層半導体チップ、中間半導体チップおよび上層半導体チップの3層を積層した3層型半導体装置について述べるが、半導体チップの積層数は4層以上であってもよい。その場合は、中間半導体チップの積層数を2以上とする。
【0043】
<第2の実施形態>
図2および図3は、第2の実施形態による多層型半導体装置の製造工程を示す断面図である。第2の実施形態による多層型半導体装置の製造方法は、(1−2)1組の半導体素子を用意する準備工程と、(2−2)バンプ電極の仮固定工程と、(3−2)多層積層体に荷重を負荷する荷重負荷工程と、(4−2)バンプ電極の接合工程とを有する。以下、各工程について説明する。なお、第2の実施形態において、第1の実施形態と同一部分については一部説明を省略する。
【0044】
(1−2)準備工程
図2(a)に示すように、下層半導体チップ11と中間半導体チップ12および上層半導体チップ13をそれぞれ用意する。
【0045】
下層半導体チップ11は、一方の主面(図では上面)に下層バンプ電極である下層金属電極(例えば、Au電極)14を有する。中間半導体チップ12は、一方の主面に第1の中間バンプ電極である中間はんだバンプ15を有し、もう一方の主面に第2の中間バンプ電極である中間金属電極(例えば、Au電極)16を有する。中間半導体チップ12において、中間はんだバンプ15と中間金属電極16とは、半導体基板12aを貫通する孔内に絶縁層(図示を省略。)を介して設けられた貫通導体17により電気的に接続されている。また、中間はんだバンプ15と同じ主面の中間はんだバンプ15の非形成領域には、非導電性材料から成る複数個の中間スペーサ突起18が設けられている。上層半導体チップ13は、一方の主面(図では下面)に上層バンプ電極である上層はんだバンプ19を有し、かつ同じ主面の上層はんだバンプ19の非形成領域に複数個の上層スペーサ突起20を有する。中間はんだバンプ15と上層はんだバンプ19を構成するはんだ材料、および中間スペーサ突起18と上層スペーサ突起20を構成する樹脂材料については、第1の実施形態と同様のものを使用することができるので、説明を省略する。
【0046】
(2−2)バンプ電極の仮固定工程
下層半導体チップ11、中間半導体チップ12および上層半導体チップ13を、この順で、各半導体チップの間にスペーサ突起(中間スペーサ突起18および上層スペーサ突起20)が挟み込まれるように積層し、かつ対向するはんだバンプと金属電極とを位置合せし仮固定して、3層積層体を形成する。
【0047】
3層積層体の形成では、まず図2(b)に示すように、下層半導体チップ11の上に中間半導体チップ12を、中間はんだバンプ15と中間スペーサ突起18が形成された面が下向きになるように積層し、下層半導体チップ11の下層金属電極14と中間半導体チップ12の中間はんだバンプ15とを位置合せした後、フリップチップボンダ等により仮固定する。このとき、中間半導体チップ12に設けられた中間スペーサ突起18により、下層半導体チップ11と中間半導体チップ12との間の隙間(ギャップ)の高さが保持される。
【0048】
次いで、こうして得られた2層積層体の中間半導体チップ12の上に、上層半導体チップ13を、上層はんだバンプ19と上層スペーサ突起20が形成された面が下向きになるようにして積層し、中間半導体チップ12の中間金属電極16と上層半導体チップ13の上層はんだバンプ19とを位置合せする。そして、上層半導体チップ13に設けられた上層スペーサ突起20により、中間半導体チップ12と上層半導体チップ13との間の隙間を保持しつつ、上層はんだバンプ19と中間金属電極16とをフリップチップボンダ等により仮固定し、図2(c)に示す3層積層体を得る。
【0049】
なお、半導体チップの積層数を4層以上とした多層型半導体装置を製造する場合には、中間半導体チップの数を2個以上とし、前記した中間半導体チップの積層および仮固定工程を繰り返した後、最後に上層の半導体チップを積層し仮固定する。また、このように下層から順に半導体チップを1個ずつ積層し仮固定するのではなく、2個またはそれ以上の半導体チップを積層し仮固定した積層体を、さらに積層し仮固定することで、4層以上の積層体を得ることもできる。
【0050】
(3−2)荷重負荷工程および(4−2)バンプ電極の接合工程
仮固定工程で得られた3層積層体を、図3に示すように、第1の実施形態で使用された装置と同様に構成された製造装置に投入し、荷重を負荷しながらカルボン酸ガス雰囲気で加熱する。そして、中間はんだバンプ15および上層はんだバンプ19の表面の酸化膜を還元して除去するとともに、仮固定された中間はんだバンプ15と下層金属電極14、ならびに上層はんだバンプ19と中間金属電極16とを接合して、半導体装置(半導体素子接続体)を製造する。
【0051】
3層積層体への荷重の負荷、加熱炉6内の排気、カルボン酸ガスの導入、加熱炉6内の加熱等は、第1の実施形態と同様に行う。
【0052】
第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、各半導体チップ間に高さ制御用のスペーサ突起を介挿して積層した積層体を、荷重を負荷しながらカルボン酸ガス雰囲気で加熱し、はんだバンプ表面の酸化膜を還元・除去しつつはんだバンプの接合を行うことで、はんだバンプの接続不良や溶融後のはんだバンプの抵抗の増加を抑制することができ、歩留まりを向上させることができる。
【0053】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、フリップチップ接続を適用した各種半導体装置の製造工程に適用することができる。そのような半導体装置の製造方法も、本発明に含まれるものである。また、本発明の実施形態は本発明の技術的思想の範囲内で拡張もしくは変更することができ、この拡張、変更した実施形態も本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0054】
2…第1の半導体チップ、3…はんだバンプ、4…スペーサ突起、5…第2の半導体チップ、6…加熱炉、7…荷重負荷機構、9…カルボン酸ガス導入機構、10…加熱機構、11…下層半導体チップ、12…中間半導体チップ、13…上層半導体チップ、15…中間はんだバンプ、17…貫通導体、18…中間スペーサ突起、19…上層はんだバンプ、20…上層スペーサ突起。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の主面に第1のバンプ電極を有する第1の半導体素子と、一方の主面に第2のバンプ電極とスペーサ突起とを有する第2の半導体素子とからなり、前記第1のバンプ電極と前記第2のバンプ電極の少なくとも一方がはんだバンプである1対の半導体素子を用意する工程と、
前記第1の半導体素子と前記第2の半導体素子とを、前記第1のバンプ電極が設けられた主面と前記第2のバンプ電極が設けられた主面とが対向するように積層し、前記第1のバンプ電極と前記第2のバンプ電極とを位置合せして仮固定する仮固定工程と、
前記バンプ電極同士を仮固定した前記第1の半導体素子と前記第2の半導体素子との積層体を、加熱炉内に配置し、前記スペーサ突起により前記第1の半導体素子と前記第2の半導体素子との間の隙間を保持しつつ、前記バンプ電極同士を圧接するように前記積層体に荷重を負荷する工程と、
前記荷重の負荷を継続しながら前記加熱炉内にカルボン酸ガスを導入し、該カルボン酸ガスの雰囲気で、前記加熱炉内の温度を、前記第1のバンプ電極と前記第2のバンプ電極の少なくとも一方であるはんだバンプの融点以上の温度に加熱・保持して、前記第1のバンプ電極と前記第2のバンプ電極とを接合するバンプ電極接合工程と
を備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
一方の主面に下層バンプ電極を有する下層半導体素子と、両方の主面に第1の中間バンプ電極と第2の中間バンプ電極とをそれぞれ有し、前記第1の中間バンプ電極と前記第2の中間バンプ電極とが貫通ビアを介して接続された中間半導体素子の1個または2個以上と、一方の主面に上層バンプ電極を有する上層半導体素子とからなり、この順で積層された場合、対向する半導体素子のどちらかがスペーサ突起を有するように構成され、かつ対向するバンプ電極の少なくとも一方がはんだバンプとなるように構成された1組の半導体素子を用意する工程と、
前記下層半導体素子、前記中間半導体素子および前記上層半導体素子を、対向する半導体素子間にどちらかの半導体素子に設けられた前記スペーサ突起が挟み込まれるように積層し、対向するバンプ電極同士を位置合せして仮固定する仮固定工程と、
前記バンプ電極同士を仮固定した多層積層体を、加熱炉内に配置し、前記スペーサ突起により各半導体素子間の隙間を保持しつつ、対向するバンプ電極同士を圧接するように前記多層積層体に荷重を負荷する工程と、
前記荷重の負荷を継続しながら、前記加熱炉内にカルボン酸ガスを導入し、該カルボン酸ガスの雰囲気で、前記加熱炉内の温度を前記はんだバンプの融点以上の温度に加熱・保持して、対向する前記バンプ電極同士を接合するバンプ電極接合工程と
を備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記仮固定工程において、前記スペーサ突起を、該スペーサ突起が設けられた半導体素子と対向する半導体素子の主面に接着することを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記積層体または前記多層積層体に負荷する前記荷重の大きさは、前記バンプ電極接合工程において、前記第1の半導体素子と前記第2の半導体素子のうちで上方に配置された半導体素子、あるいは上層半導体素子の反りを防止し、かつ各半導体素子間に前記スペーサ突起の高さ分の隙間が保持されるように調整することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
少なくとも一方の主面にバンプ電極を有する複数個の半導体素子を、対向する前記バンプ電極の少なくとも一方をはんだバンプとし、各半導体素子の対向するバンプ電極を位置合わせして仮固定し、かつ対向する半導体素子間にどちらかの半導体素子の主面に設けられたスペーサ突起が挟み込まれるように積層してなる積層体の、前記対向するバンプ電極同士を接合して、半導体装置を製造する装置であり、
前記積層体を収容する加熱炉と、
前記積層体に荷重を負荷する荷重負荷機構と、
前記加熱炉内を排気して減圧雰囲気にする排気機構と、
前記加熱炉内にカルボン酸ガスを導入するカルボン酸ガス導入機構と、
前記加熱炉内の温度を所定の温度に加熱・保持する加熱機構と
を備えることを特徴とする半導体装置の製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate