説明

半導体装置の製造装置、残留成分の分析装置及び分析方法

【課題】半導体製造装置のチャンバあるいは搬送経路などの分析対象部に残留する物質を検出できる半導体装置の製造装置、残留成分の分析装置及び分析方法を提供する。
【解決手段】半導体製造のための所定の処理工程のために内部に基板が保持され、あるいは、処理工程の前後において内部に基板が搬送または収容される半導体装置の製造装置を構成する部分であり、内部における残留成分の分析対象となる分析対象部(1)と、分析対象部の内部に存在する残留成分から発せられる電磁波を受信する受信部5と、受信部で受信されて得られた信号を分光する分光部6とを有し、上記のように分光することにより、分析対象部の内部における残留成分を分析する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置の製造装置、残留成分の分析装置及び分析方法に関し、特に残留成分を分析できる半導体装置の製造装置と、この残留成分の分析装置及び分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体デバイスの微細化により、半導体製造プロセスの高精度化が要求されている。
【0003】
しかし、エッチングや堆積などのプロセスを行うチャンバ、ウェハをプロセスチャンバに搬送する搬送経路、あるいはウェハを格納する容器などにおいて、ウェハなどが環境の影響を受けてしまい、プロセス量変動や膜腐食など不利益が生じる可能性がある。
【0004】
例えば、プロセスチャンバの内壁に付着した堆積物から放出されるガス成分あるいはチャンバ内に残留したガス成分のために、エッチング量などのプロセス量が変動する可能性がある。
また、例えば、搬送経路や格納する容器内に残留しているガス成分がウェハに付着することにより配線腐食などが生じる可能性がある。
【0005】
従って、プロセスチャンバ内の環境、およびプロセスチャンバに至る途中の搬送経路の環境の変動を抑えた、安定したプロセスの構築が求められる。
【0006】
現在の半導体製造装置においては、プロセスチャンバ内またはそのプロセスチャンバに至る途中の搬送経路に残留または存在する物質(ガスまたは元素)およびチャンバ壁に付着した物質のモニタリング方法は確立されていない。
【0007】
チャンバ内に存在する物質の分析には、四重極型質量分析装置(Q−mass)を用いる方法が知られているが、この方法は真空チャンバにしか適用できない。
【0008】
一方、プラズマチャンバ中にセンサを挿入することがない、すなわちチャンバ内に非接触で実施することができるモニタリング方法が開発されている。
【0009】
例えば、チャンバの壁面に設けられた窓を通して近紫外〜可視〜近赤外領域の光をモニタするOES(Optical Emission Spectrometer)が知られている。
上記の方法は、非接触であるためにチャンバ内に与える影響が小さいので好ましい。
【0010】
しかし、上記領域の光を発光するプラズマプロセスにおける終点検出(EPD:End Point Detection)用途に限られていた。
【0011】
以上のように、従来技術における半導体製造装置のチャンバ内あるいは搬送経路などに残留あるいは存在する物質の分析については多くの課題がある。
【0012】
特許文献1には、被検気体に所定周波数の基準波及び励起波を照射して、被検気体の成分分析を行う装置が開示されている。
【特許文献1】特開平5−209845号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
解決しようとする問題点は、半導体製造装置のチャンバあるいは搬送経路などに残留する物質を検出することが困難であることである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の半導体装置の製造装置は、内部における残留成分の分析対象となり、半導体製造のための所定の処理工程のために前記内部に基板が保持され、あるいは、処理工程の前後において前記内部に前記基板が搬送または収容される分析対象部と、前記分析対象部の前記内部に存在する残留成分から発せられる電磁波を受信する受信部と、前記受信部で受信されて得られた信号を分光する分光部とを有し、前記残留成分を分析する。
【0015】
上記の本発明の半導体装置の製造装置は、分析対象部と、受信部と、分光部を有する。
分析対象部は、半導体製造のための所定の処理工程のために内部に基板が保持され、あるいは、処理工程の前後において内部に基板が搬送または収容される半導体装置の製造装置を構成する部分であり、内部における残留成分の分析対象となる。
受信部は、分析対象部の内部に存在する残留成分から発せられる電磁波を受信する。
分光部は、受信部で受信されて得られた信号を分光する。
上記のように分光することにより、分析対象部の内部における残留成分を分析する。
【0016】
本発明の残留成分の分析装置は、分析対象部の内部に存在する残留成分から発せられる電磁波を受信する受信部と、前記受信部で受信されて得られた信号を分光する分光部とを有し、前記分析対象部の前記内部における残留成分を分析する。
【0017】
上記の本発明の残留成分の分析装置は、受信部と、分光部を有する。
受信部は、分析対象部の内部に存在する残留成分から発せられる電磁波を受信する。
分光部は、受信部で受信されて得られた信号を分光する。
上記のように分光することにより、分析対象部の内部における残留成分を分析する。
【0018】
本発明の残留成分の分析方法は、分析対象部の内部に存在する残留成分から発せられる電磁波を受信する工程と、前記電磁波を受信して得られた信号を分光し、前記残留成分を分析する工程とを有する。
【0019】
上記の本発明の残留成分の分析方法は、分析対象部の内部に存在する残留成分から発せられる電磁波を受信し、電磁波を受信して得られた信号を分光し、残留成分を分析する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の半導体装置の製造装置は、半導体製造装置のチャンバあるいは搬送経路などの分析対象部に残留する物質から発せられる電磁波を受信して分光することにより、分析対象部に残留する物質を検出することができる。
【0021】
本発明の残留成分の分析装置は、半導体製造装置のチャンバあるいは搬送経路などの分析対象に対して、残留する物質から発せられる電磁波を受信して分光することにより、残留する物質を検出することができる。
【0022】
本発明の残留成分の分析方法は、半導体製造装置のチャンバあるいは搬送経路などの分析対象に対して、残留する物質から発せられる電磁波を受信して分光することにより、残留する物質を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明に係る半導体装置の製造装置、残留成分の分析装置及び分析方法の実施の形態について、図面を参照して説明する。
尚、説明は以下の順序で行う。
1.第1実施形態(ドライエッチング装置)
2.第1実施例
3.第2実施形態(搬送経路)
4.第2実施例
5.第3実施形態(収容部)
6.第3実施例
【0024】
<第1実施形態>
[全体構成]
図1は、本実施形態に係る半導体装置の製造装置の模式構成図である。
本実施形態に係る製造装置はドライエッチング装置であり、基板(ウェハ)に対するエッチング処理のために内部に基板が保持されるチャンバが、残留成分の分析対象部である。
例えば、ドライエッチング処理を行うためのチャンバ1の壁部にモニタ用窓2が設けられている。
上記のモニタ用窓2を通して、チャンバ1の内部から発せられるミリ波〜サブミリ波領域の電磁波がチャンバ1の外部に設けられた分析装置ANにより検出され、分析される。
【0025】
例えば、チャンバ1の内部に残留するガス成分から発せられるミリ波〜サブミリ波領域の電磁波が検出され、チャンバ1の内部に残留するガス成分が分析される。
あるいは、チャンバ1の内部の堆積物から発せられるガス成分から発せられるミリ波〜サブミリ波領域の電磁波が検出され、チャンバ1の内部の堆積物が分析される。
【0026】
プロセスチャンバに残留するガス成分やチャンバ内部の堆積物から発せられるガス成分は、振動遷移、回転遷移、あるいは超微細構造遷移に起因して電磁波である輝線を放出する。
これらの遷移は一般的な電子遷移に比べて低エネルギーの遷移であり、ミリ波〜サブミリ波領域に存在している。
【0027】
チャンバ1は、例えば、CCP(Capacitive Coupled Plasma)ドライエッチング用のチャンバである。
あるいは、ICP(Inductive Coupled Plasma)ドライエッチング用のチャンバ、またはECR(Electron Cyclotron Resonance)ドライエッチング用のチャンバでもよい。
【0028】
モニタ用窓2を構成する窓材料としては、例えば、酸化シリコン、酸化アルミニウム、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルムなどが用いられる。
モニタ用窓2は、例えば直径5cmの大きさである。チャンバ1にOES(Optical Emission Spectrometer)用の窓が予め設けられている場合には、それを用いることもできる。
【0029】
分析装置ANは、ミラー3及びハーフミラー4などを含む光学系、ホーンアンテナあるいはパラボラアンテナなどの不図示のアンテナ、不図示の導波管、受信部5及び分光部6などを有する。
【0030】
ミラー3及びハーフミラー4などを含む光学系は、チャンバ1の内部から発せられるミリ波〜サブミリ波領域の電磁波を所定の方向に導く。
ホーンアンテナなどのアンテナは、上記電磁波を受信、集光する。
導波管は、アンテナで受信された電磁波を受信部5に伝送する。
【0031】
受信部5は、導波管から伝送された電磁波から中間周波数(IF:Intermediate Frequency)信号を生成し、必要に応じてアンプで増幅する。
分光部6は、IF信号を分光し、周波数空間でのパワー(強度)として出力する。
【0032】
ミリ波〜サブミリ波の電磁波を受信する受信部としては、例えば、超伝導SIS(半導体−絶縁体−半導体)ミキサ受信部を用いることができる。
この領域の電磁波に対して感度が高く、好ましい。超伝導SISミキサは、図示しない機械式冷凍機によって4Kに冷却されて用いられる。
あるいは、受信部5として、ボロメータ型受信機または量子型受信機を用いることもできる。
分光計6は、音響光学型分光計(AOS)またはデジタル分光計を用いることができる。
【0033】
上記のミリ波〜サブミリ波の電磁波の受信及び分光についてさらに説明する。
ミリ波〜サブミリ波の強度の絶対値TBは、いわゆるchopper−wheel法によって求められたアンテナ温度Taとアンテナ集効率ηから下記式(1)のように表される。
【0034】
TB=Ta/η (1)
【0035】
ここで、アンテナ温度Taは、システム雑音温度Tsys、On点(モニタ時の状態)におけるパワー:Won、Off点(メンテナンス後などの清浄な状態(バックグラウンド))におけるパワー:Woffを用いて、下記式(2)のように表される。
【0036】
Ta=(Won−Woff)Tsys/Woff (2)
【0037】
例えば、CFなどのCF系ガスを用いる酸化シリコンあるいは窒化シリコンなどのシリコン絶縁膜のエッチング時においては、CFあるいはCOの輝線をモニタリングする。
CFの輝線は、例えば、J=3/2−1/2:124GHz、J=5/2−3/2:207GHz、J=7/2−5/2:290GHzなどをモニタすることができる。
COの輝線は、J=1−0:115GHz、J=2−1:231GHz、J=3−2:346GHzなどをモニタすることができる。
ミリ波またはサブミリ波帯にある輝線強度を検出できる粒子であれば、この限りではない。
本実施形態では、従来の通常のOESと異なり、プラズマが発光していない状態、すなわち、エッチング開始前のプロセスチャンバ状態のモニタリングが可能である。
【0038】
エッチング前にチャンバ内(チャンバ壁)にCFが堆積しているとそこからFが再放出され、シリコン絶縁膜のエッチレートの上昇などプロセス特性の変動を及ぼす。
【0039】
[残留成分の影響]
図2は、CF輝線(J=3/2−1/2:124GHz)の強度IとエッチレートERとの関係を示すグラフである。
図2に示すように、強度Iの増加とともに、エッチレートERが変動する。
エッチレートERの変動が許容範囲以内となるCF輝線強度Iのしきい値(判定値Th)を求め、判定値Th以下の領域Aと判定値Thを超えた領域Bとに区分する。
【0040】
[残留成分の分析とクリーニング処理]
次に、本実施形態に係る残留成分の分析とそれに伴って行われるクリーニング処理について図3のフローチャートを用いて説明する。
上記のように、チャンバに残留する成分によってエッチレートに変動が生じるため、残留する成分をモニタし、その影響を抑えることがプロセスの安定化のために重要となる。
本実施形態においては、本実施形態に係るエッチング装置のチャンバでエッチング処理を行う際に、図3に示すフローチャートに従って、モニタした残留成分の結果に応じてチャンバのクリーニング処理を行う。
【0041】
エッチング処理の前に、残留成分の分析処理が開始(ST11)されると、チャンバ内ミリ波発光強度として、CF輝線(J=3/2−1/2:124GHz)の強度Iを測定する(ST12)。
次に、得られた強度Iを判定値Thと比較する(ST13)。
得られた値が判定値Th以下であれば、残留成分の分析処理は終了(ST15)し、そのままエッチングに移行する。
【0042】
一方、判定値Thを超えた場合には、チャンバにドライクリーニング処理を行う(ST14)。例えば、圧力100mTorr、RF電力2000W、O流量300sccm、時間120sの条件とする。
ドライクリーニング処理(ST14)の後は、再びチャンバ内ミリ波発光強度の測定を行う。強度Iが判定値Th以下になるまで、上記のステップを繰り返す。
【0043】
本実施形態のエッチング装置の分析装置ANにおいて、モニタリングする信号の数(周波数帯)に応じて受信部及び分光部を増設できる。
例えば、本実施形態の分析装置では、光学系としてハーフミラー4が設けられており、電磁波が2つに分けられている。
また、受信部5及び分光部6は、ハーフミラー4で分けられた電磁波それぞれに対して設けられている。
通常、1つの受信部では1つの周波数の電磁波しか受信できないので、複数の周波数の電磁波を受信する場合には、その数に電磁波を分けてそれぞれ受信する構成とする。
複数の周波数で受信、分光することで、より精密に、チャンバ1の内部に残留するガス成分、または、チャンバ1の内部の堆積物を分析できる。
【0044】
本実施形態において、エッチング装置を構成する分析装置ANは、ミリ波〜サブミリ波領域に存在する輝線及び連続波をモニタリングする。
【0045】
モニタ用窓2を介して、上記の物質粒子が発する輝線をそのまま受信検出するため、チャンバ内に影響を与えることなく、外部から非接触でモニタ可能である。
既存のOESの発光用窓を利用できるため、大きな改造をすることなくモニタリング装置を取り付けられる。
上記のようにして、例えば、モニタ結果をFDC(Fault Detection and Classification)により管理することなどにより、プロセスの安定化やプロセス異常管理を行うことが可能となる。
【0046】
上記のように、本実施形態においてはこれまでの半導体プロセスにおいて考慮していなかった低エネルギー粒子の発光であるミリ波〜サブミリ波の輝線強度をモニタリングする。
これを利用することにより、プロセスチャンバ内の環境変動の影響を抑え、プロセス安定性を大きく向上させることができる。
【0047】
本実施形態の半導体装置の製造装置は、半導体製造装置のチャンバなどの分析対象部に残留する物質から発せられる電磁波を受信して分光することにより、分析対象部に残留する物質を検出することができる。
【0048】
本実施形態の残留成分の分析装置は、受信部と、分光部を有する。受信部は、分析対象部の内部に存在する残留成分から発せられる電磁波を受信する。
分光部は、受信部で受信されて得られた信号を分光する。
上記のように分光することにより、分析対象部の内部における残留成分を分析する。
【0049】
本発明の残留成分の分析装置は、半導体製造装置のチャンバなどの分析対象に対して、残留する物質から発せられる電磁波を受信して分光することにより、残留する物質を検出することができる。
【0050】
また、本実施形態の残留成分の分析方法は、分析対象部の内部に存在する残留成分から発せられる電磁波を受信し、電磁波を受信して得られた信号を分光し、残留成分を分析する。
【0051】
本発明の残留成分の分析方法は、半導体製造装置のチャンバなどの分析対象に対して、残留する物質から発せられる電磁波を受信して分光することにより、残留する物質を検出することができる。
【0052】
<第1実施例>
図4は、本実施例において、横軸に測定日時をとり、縦軸にCF輝線強度Iをとったグラフである。
同一のエッチング装置においてエッチング処理を繰り返し行っていると、チャンバの残留成分が多くなり、CF輝線強度Iが増大して判定値Thを超えたBの領域になってしまうことがある。
上記のようにCF輝線強度Iが判定値Thを超えた場合には、チャンバのドライクリーンニング処理を行うことで、CF輝線強度Iを判定値Th以下であるAの領域に戻すことができる。
【0053】
このようにエッチング開始前にチャンバ内(チャンバ壁)に存在しているCFが発する輝線をチャンバ内に影響を与えることなく、外部から非接触でモニタし、その値を用いてエッチング開始可否判断を行う。
ここでエッチング開始不可な場合にはチャンバ清浄化を図ることで、CFが少なく安定なチャンバ雰囲気を維持し、プロセス特性の変動を抑えることが可能となる。
【0054】
ここでは、エッチング開始直前のチャンバ内CFのモニタリング例を示したが、アイドリング中やマルチステップ(複数ステップ)エッチング時のステップ間のチャンバ内雰囲気のモニタリングに使用することも可能である。
【0055】
<第2実施形態>
[全体構成]
図5は、本実施形態に係る半導体装置の製造装置の模式構成図である。
分析対象部が、基板に対するエッチング処理の前後において基板が搬送される搬送経路(ロードロック室)となる部分である。
分析対象部においては、第1実施形態と同様に残留成分の分析が行われ、必要に応じてクリーニング処理が行われる。
【0056】
本実施形態に係る半導体装置の製造装置は、基板(ウェハ)に対するエッチング処理を行うチャンバ1、ロードポート9、大気搬送室8およびロードロック室7を備えている。
チャンバ1でエッチング処理を行う基板は、ロードポート9上の図示しないフープ(FOUP)またはスミフ(SMIF)などの収容部から大気搬送室8およびロードロック室7を経由してチャンバ1に入り、所定のエッチング処理が施される。
エッチング処理の終了後、逆にロードロック室7から大気搬送室8を通って、ロードポート9上の図示しない収容部に戻される。
【0057】
上記の搬送経路のうち、ロードロック室7は、チャンバ1と大気搬送室8とを繋ぐ部分であり、ドライエッチング装置のようにチャンバ1が真空に保たれている場合には、ロードロック室7を真空にしてチャンバ1と基板の受け渡しを行う。
一方、大気搬送室8と基板の受け渡しを行う場合には、ロードロック室7に窒素を導入することで大気圧に復圧した後に行う。
【0058】
本実施形態においては、ロードロック室7にモニタ用窓2が設けられている。
上記のモニタ用窓2を通して、ロードロック室7の内部から発せられるミリ波〜サブミリ波領域の電磁波がロードロック室7の外部に設けられた分析装置ANにより検出され、分析される。
【0059】
例えば、ロードロック室7の内部に残留するガス成分から発せられるミリ波〜サブミリ波領域の電磁波が検出され、ロードロック室7の内部に残留するガス成分が分析される。
あるいは、ロードロック室7の内部の堆積物から発せられるガス成分から発せられるミリ波〜サブミリ波領域の電磁波が検出され、ロードロック室7の内部の堆積物が分析される。
【0060】
分析装置ANの構成は、第1実施形態と同様である。
モニタリングは、ロードロック室7内の真空度に依らず可能である。
例えば、チャンバ1がAlエッチング処理用のチャンバであり、そこでAlエッチングされた基板がロードロック室7を搬送される場合には、AlClの輝線あるいはAlFの輝線をモニタリングする。
AlClの輝線は、例えば、J=2−1:29GHz、J=3−2:44GHz、J=6−5:87GHzなどである。
AlFの輝線は、例えば、J=1−0:33GHz、J=3−2:99GHz、J=4−3:132GHzなどである。
ミリ波またはサブミリ波帯にある輝線強度を検出できる粒子であれば、この限りではない。
【0061】
[残留成分の影響]
基板の搬送経路にAlClが過剰に蓄積していると、そこから再放出されるClが基板に付着し、金属配線の腐食によるデバイス歩留まりの低下を及ぼすことがある。
【0062】
図6は、AlCl輝線(J=2−1:29GHz)の強度と歩留まりの関係を示すグラフである。
図6に示すように、ロードロック室から発せられるAlClの輝線の強度Iの増加とともに、歩留まりYが変動する。
歩留まりYの変動が許容範囲以内となるAlCl輝線強度Iのしきい値(判定値Th)を求め、判定値Th以下の領域Aと判定値Thを超えた領域Bとに区分する。
【0063】
[残留成分の分析とクリーニング処理]
次に、本実施形態に係る残留成分の分析とそれに伴って行われるクリーニング処理について図7のフローチャートを用いて説明する。
上記のように、ロードロック室に残留する成分によって歩留まりに変動が生じるため、残留する成分をモニタし、その影響を抑えることが高い歩留まりを維持するために重要となる。
本実施形態においては、ロードロック室経由で基板をチャンバに搬送する際、あるいは基板をロードポート9に戻す際に、図7に示すフローチャートに従って、モニタした残留成分の結果に応じてロードロック室7のパージ処理を行う。
【0064】
エッチング処理の前に、残留成分の分析処理が開始(ST21)されると、搬送経路(ロードロック室)内ミリ波発光強度として、AlCl輝線(J=2−1:29GHz)の強度Iを測定する(ST22)。
次に、得られた強度Iを判定値Thと比較する(ST23)。
得られた値が判定値Th以下であれば、残留成分の分析処理は終了(ST25)し、そのまま基板の搬送を行う。
【0065】
一方、判定値Thを超えた場合には、搬送経路(ロードロック室7)のパージ処理を行う(ST24)。例えば、O流量1000sccm、時間600sの条件とする。
パージ処理(ST24)の後は、再び搬送経路(ロードロック室7)内ミリ波発光強度の測定を行う。強度Iが判定値Th以下になるまで、上記のステップを繰り返す。
【0066】
上記のように、本実施形態においてはこれまでの半導体プロセスにおいて考慮していなかった低エネルギー粒子の発光であるミリ波〜サブミリ波の輝線強度をモニタリングする。
これを利用することにより、搬送経路内の環境の変動の影響を抑え、高い歩留まりを維持することができる。
【0067】
本実施形態の半導体装置の製造装置は、半導体製造装置の搬送経路などの分析対象部に残留する物質から発せられる電磁波を受信して分光することにより、分析対象部に残留する物質を検出することができる。
【0068】
<第2実施例>
図8は、本実施例において、横軸に測定日時をとり、縦軸にAlCl輝線強度Iをとったグラフである。
同一のロードロック室を経由してエッチング装置に基板を搬送する工程を繰り返し行っていると、搬送経路であるロードロック室の残留成分が多くなり、AlCl輝線強度Iが増大して判定値Thを超えたBの領域になってしまうことがある。
上記のようにAlCl輝線強度Iが判定値Thを超えた場合には、ロードロック室のパージ処理を行うことで、AlCl輝線強度Iを判定値Th以下であるAの領域に戻すことができる。
【0069】
このように基板の搬送開始前に搬送経路(ロードロック室)に存在しているAlClが発する輝線をロードロック室内に影響を与えることなく、外部から非接触でモニタし、その値を用いて搬送開始可否判断を行う。
ここで搬送開始不可な場合には搬送経路(ロードロック室)の清浄化を図ることで、AlClが少ない安定な搬送経路雰囲気を維持し、金属配線の腐食や歩留まり低下を抑えることが可能となった。
【0070】
<第3実施形態>
[全体構成]
図9は、本実施形態に係る基板の収容部の模式構成図である。
分析対象部が、基板に対する成膜あるいはエッチング処理の前後において基板が収容される収容部である。
分析対象部においては、第1実施形態と同様に残留成分の分析が行われ、必要に応じてクリーニング処理が行われる。
【0071】
本実施形態に係る基板(ウェハ)の収容部10は、フープ(FOUP)またはスミフ(SMIF)などと称せられる収容部である。
基板は、通常上記の収容部に収容されて短期あるいは長期の保管あるいは保存がなされる。
このため、基板は収容部内の環境の影響を受ける。本実施形態は、収容部の内部のモニタリングを行う実施形態である。
【0072】
本実施形態においては、例えば収容部10がポリカーボネートなどのミリ波〜サブミリ波の領域の電磁波を透過する材料からなる。
収容部10の壁を通して、収容部10の内部から発せられるミリ波〜サブミリ波領域の電磁波が収容部10の外部に設けられた分析装置ANにより検出され、分析される。
【0073】
例えば、収容部10の内部に残留するガス成分から発せられるミリ波〜サブミリ波領域の電磁波が検出され、収容部10の内部に残留するガス成分が分析される。
あるいは、収容部10の内部の堆積物から発せられるガス成分から発せられるミリ波〜サブミリ波領域の電磁波が検出され、収容部10の内部の堆積物が分析される。
【0074】
分析装置ANの構成は、第1実施形態と同様である。
例えば、シリコンがエッチングされた基板が収容されている場合には、SiClの輝線をモニタリングする。
SiClの輝線は、例えば、J=7/2−5/2:53GHz、J=9/2−7/2:69GHz、J=11/2−9/2:84GHzなどである。
ミリ波またはサブミリ波帯にある輝線強度を検出できる粒子であれば、この限りではない。
【0075】
[残留成分の影響]
収容部内にSiClが過剰に蓄積していると、そこから再放出されるClが基板に付着し、金属配線の腐食によるデバイス歩留まりの低下を及ぼすことがある。
【0076】
図10は、SiCl輝線(J=7/2−5/2:53GHz)の強度と歩留まりの関係を示すグラフである。
図10に示すように、収容部から発せられるSiClの輝線の強度Iの増加とともに、歩留まりYが変動する。
歩留まりYの変動が許容範囲以内となるSiCl輝線強度Iのしきい値(判定値Th)を求め、判定値Th以下の領域Aと判定値Thを超えた領域Bとに区分する。
【0077】
[残留成分の分析と交換及び洗浄処理]
次に、本実施形態に係る残留成分の分析とそれに伴って行われる交換及び洗浄処理について図11のフローチャートを用いて説明する。
上記のように、収容部に残留する成分によって歩留まりに変動が生じるため、残留する成分をモニタすることが歩留まり安定化のために重要となる。
本実施形態においては、収容部を用いる際に、図11に示すフローチャートに従って、モニタした残留成分の結果に応じて収容部の交換及び洗浄処理を行う。
【0078】
収容部に対して、定期的に下記のような処理を行う。
収容部への基板の収容前に、残留成分の分析処理が開始(ST31)されると、収容部内ミリ波発光強度として、SiCl輝線(J=7/2−5/2:53GHz)の強度Iを測定する(ST32)。
次に、得られた強度Iを判定値Thと比較する(ST33)。
得られた値が判定値Th以下であれば、残留成分の分析処理は終了(ST35)し、そのまま基板の搬送を行う。
【0079】
一方、判定値Thを超えた場合には、新たな収容部に交換を行い、元の収容部は洗浄する。次に、交換した新たな収容部のSiCl輝線の強度測定を行い、その値が判定値であるかどうか判定する。これを判定値以下になるまで繰り返す。
【0080】
上記のように、本実施形態においてはこれまでの半導体プロセスにおいて考慮していなかった低エネルギー粒子の発光であるミリ波〜サブミリ波の輝線強度をモニタリングする。
これを利用することにより、基板の収容部内の環境の変動の影響を抑え、高い歩留まりを維持することができる。
【0081】
本実施形態の半導体装置の製造装置は、基板の収容部などの分析対象部に残留する物質から発せられる電磁波を受信して分光することにより、分析対象部に残留する物質を検出することができる。
【0082】
<第3実施例>
図12は、本実施例において、横軸に測定日時をとり、縦軸にSiCl輝線強度Iをとったグラフである。
同一の収容部を長期に使用していると、収容部内の残留成分が多くなり、SiCl輝線強度Iが増大して判定値Thを超えたBの領域になってしまうことがある。
上記のようにSiCl輝線強度Iが判定値Thを超えた場合には、収容部の交換及び洗浄処理を行うことで、SiCl輝線強度Iを判定値Th以下であるAの領域に戻すことができる。
【0083】
このように基板の収容前に収容部に存在しているSiClが発する輝線を収容部内に影響を与えることなく、外部から非接触でモニタし、その値を用いて収容開始可否判断を行う。
ここで収容開始不可な場合には収容部の交換及び洗浄処理を行うことで、安定な収容部雰囲気を維持し、金属配線の腐食や歩留まり低下を抑えることが可能となった。
従来、収容部は主に使用時間により定期的に洗浄していたが、収容部内雰囲気を把握できることで、無駄な洗浄を減らすことができた。
【0084】
本発明のミリ波またはサブミリ波のモニタリングを行うことで、従来のモニタリング手法では困難であったプロセスチャンバまたはプロセスチャンバに至るウェハ搬送経路の環境管理が可能となる。
環境変動に起因するプロセス変動を抑え、安定したプロセスが実現可能となる。
その結果、歩留まりや生産性の向上が期待される。
【0085】
以上、本発明を3つの実施形態に基づいて説明したが、これらの実施例は本発明の好ましい様態を示すものであり、本発明の技術的範囲が前記実施例に限定されるものではない。
例えば、半導体装置の製造装置としては、第1実施形態に示したドライエッチング装置に限定されない。
例えば、リソグラフィ装置、CVD(Chemical Vapor Deposition)装置、PVD(Physical Vapor Deposition)装置、めっき装置、CMP(Chemical Mechanical Polish)装置、イオン注入装置、あるいは洗浄装置などにも適用可能である。
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】図1は本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造装置の模式構成図である。
【図2】図2は本発明の第1実施形態に係るCF輝線の強度IとエッチレートERとの関係を示すグラフである。
【図3】図3は本発明の第1実施形態に係る残留成分の分析とそれに伴って行われるクリーニング処理について説明するフローチャートである。
【図4】図4は第1実施例において、横軸に測定日時をとり、縦軸にCF輝線強度Iをとったグラフである。
【図5】図5は本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造装置の模式構成図である。
【図6】図6は本発明の第2実施形態に係るAlCl輝線の強度Iと歩留まりYとの関係を示すグラフである。
【図7】図7は本発明の第2実施形態に係る残留成分の分析とそれに伴って行われるクリーニング処理について説明するフローチャートである。
【図8】図8は第2実施例において、横軸に測定日時をとり、縦軸にAlCl輝線強度Iをとったグラフである。
【図9】図9は本発明の第3実施形態に係る基板の収容部の模式構成図である。
【図10】図10は本発明の第3実施形態に係るSiCl輝線の強度Iと歩留まりYとの関係を示すグラフである。
【図11】図11は本発明の第3実施形態に係る残留成分の分析とそれに伴って行われる収容部の交換及び洗浄処理について説明するフローチャートである。
【図12】図12は第3実施例において、横軸に測定日時をとり、縦軸にSiCl輝線強度Iをとったグラフである。
【符号の説明】
【0087】
1…チャンバ、2…モニタ用窓、3…ミラー、4…ハーフミラー、5…受信部、6…分光部、7…ロードロック室、8…大気搬送室、9…ロードポート、10…収容部、AN…分析装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部における残留成分の分析対象となり、半導体製造のための所定の処理工程のために前記内部に基板が保持され、あるいは、処理工程の前後において前記内部に前記基板が搬送または収容される分析対象部と、
前記分析対象部の前記内部に存在する残留成分から発せられる電磁波を受信する受信部と、
前記受信部で受信されて得られた信号を分光する分光部と
を有し、前記残留成分を分析する
半導体装置の製造装置。
【請求項2】
前記電磁波がミリ波からサブミリ波の領域の電磁波である
請求項1に記載の半導体装置の製造装置。
【請求項3】
前記分析対象部が前記基板に対する成膜あるいはエッチング処理のために内部に前記基板が保持されるチャンバである
請求項1に記載の半導体装置の製造装置。
【請求項4】
前記分析対象部が前記基板に対する成膜あるいはエッチング処理の前後において前記基板が搬送される搬送経路となる部分である
請求項1に記載の半導体装置の製造装置。
【請求項5】
前記分析対象部が前記基板に対する成膜あるいはエッチング処理の前後において前記基板が収容される収容部である
請求項1に記載の半導体装置の製造装置。
【請求項6】
前記受信部として、超伝導半導体絶縁体半導体ミキサ受信部、ボロメータ型受信部、または量子型受信部を有する
請求項1に記載の半導体装置の製造装置。
【請求項7】
前記分光部として、音響光学型分光部を有する
請求項1に記載の半導体装置の製造装置。
【請求項8】
前記分析対象部の前記内部に残留するガス成分の分析を行う
請求項1〜7のいずれかに記載の半導体装置の製造装置。
【請求項9】
前記分析対象部の前記内部の堆積物から発せられるガス成分の分析を行う
請求項1〜7のいずれかに記載の半導体装置の製造装置。
【請求項10】
分析対象部の内部に存在する残留成分から発せられる電磁波を受信する受信部と、
前記受信部で受信されて得られた信号を分光する分光部と
を有し、
前記分析対象部の前記内部における残留成分を分析する
残留成分の分析装置。
【請求項11】
分析対象部の内部に存在する残留成分から発せられる電磁波を受信する工程と、
前記電磁波を受信して得られた信号を分光し、前記残留成分を分析する工程と
を有する残留成分の分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−139385(P2010−139385A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−316130(P2008−316130)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】