説明

半導体装置及びその製造方法

【目的】 ベ−ス表面近傍の不純物濃度を低下させて、ホットキャリアの発生を無くし、ベ−ス抵抗を減少させて高速化を促進した半導体装置及びその製造方法を提供する。
【構成】 バイポ−ラトランジスタのベ−ス領域11表面にシリサイド膜31を形成して、ベ−ス抵抗を下げる。この半導体装置の製造工程において、ベ−ス領域11上に、エミッタ領域12形成工程前に、Tiなどの金属薄膜を堆積させ、加熱処理して金属薄膜を少なくとも部分的にシリサイド化して、前記シリサイド膜31を形成する。そして、この膜のボロン吸出し効果によってベ−ス領域11の表面不純物濃度を減少させる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、バイポ−ラトランジスタを有する半導体装置に係り、とくに、ベ−スコンタクト領域にシリサイド膜を形成することを特徴とするバイポ−ラトランジスタを有する半導体装置の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、バイポ−ラトランジスタを有する半導体装置の微細化、高速化が著しく進んでいるが、それと共に、ベ−ス、エミッタの各拡散領域のシャロ−化も進んでいる。これら拡散領域がシャロ−化されると、ベ−ス幅が削減でき、その寄生容量も減少させることができる。その結果、バイポ−ラトランジスタの高速化がさらに進む。
【0003】図13および図14を参照して従来のバイポ−ラトランジスタを説明する。図13は、高速化に対応したバイポ−ラトランジスタの断面図、図14は、このバイポ−ラトランジスタのベ−ス/エミッタ領域の不純物プロファイルを示す特性図である。このバイポ−ラトランジスタが形成されるウェ−ハ10は、n埋込み拡散領域3を形成したp型シリコン半導体基板2とこの半導体基板2の上に成長したn型エピタキシャル層1とから構成されている。n型エピタキシャル層1には、素子分離領域5とnコレクタ領域4とが形成されている。ウェ−ハ10の表面は、例えば、シリコン熱酸化膜のような厚い絶縁膜6で被覆されている。
【0004】素子分離領域5に囲まれた素子領域には、p型ベ−ス領域11が形成されており、この素子領域の中にはnエミッタ領域12が形成されている。さらに、ウェ−ハ10の表面には、エミッタ、ベ−ス、コレクタに接続するそれぞれのエミッタ電極7、ベ−ス電極8、コレクタ電極9が形成されている。絶縁膜6や素子領域を被覆するように半導体基板上に、例えば、CVDによるSiO2 などからなる絶縁膜22を形成する。この絶縁膜22に設けた複数のコンタクト孔を通じて半導体基板内のエミッタ、ベ−ス、コレクタ等の各領域は、前述の各電極に接続されている。この半導体基板内の各領域の内、エミッタ領域12は、その表面を被覆する多結晶シリコン膜41からの不純物の拡散により形成される。予めn型不純物を多結晶シリコン膜にド−プしておき、加熱によりド−プした不純物をベ−ス領域11内に拡散させて、エミッタ12を形成する。拡散に用いる不純物は、通常Asを用いる。これは、拡散係数が小さいので、シャロ−化したn型エミッタ領域12が形成される。Pを不純物に用いると拡散係数が大きいので、シャロ−化には適さない。
【0005】ここで、このバイポ−ラトランジスタのエミッタ領域12、ベ−ス領域11およびn型エピタキシャル層1の不純物濃度を調べると、その不純物プロファイルは、図14の通りである。ウェ−ハ表面からの固相拡散を用いてトランジスタを形成する場合には、不純物濃度分布は、表面近傍が最も高濃度になる。また、イオン注入法を利用した場合でも、シャロ−化を狙うためにイオン注入直後の不純物濃度分布のピ−クを表面近傍もしくはイオン注入の緩衝絶縁膜中に設計するため、注入後のアニ−ル処理で結果的に表面近傍が最も高濃度になり、どちらにしても図のようなプロファイルになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】このように、従来の半導体基板の表面近傍が最も高濃度である不純物濃度分布を有するバイポ−ラトランジスタでは、半導体基板表面領域のベ−ス/エミッタ接合が高不純物濃度領域に形成されるためその耐圧(BVEBO )が小さくならざるを得なかった。このため、使用する回路に制約があり、さらに、BVEBO 以下の電圧が印加されている場合にもベ−ス/エミッタ接合での空乏層にかかる高電界によるホットキャリアの発生や接合表面の保護絶縁膜へのホットキャリアのトラップによるバイポ−ラトランジスタの電流増幅率の劣化或いはベ−ス内部抵抗の増大という信頼性低下の問題が生じている。
【0007】本発明の目的は、ベ−ス表面近傍の不純物濃度を低下させることにより、前記表面近傍のベ−ス/エミッタ接合における高い耐圧(BVEBO )を確保し、さらに、この接合における空乏層にかかる電界を緩和し、ホットキャリアの発生を低減して信頼性を向上させ、加えてベ−ス抵抗を減少させることによって高速化を促進することが可能な半導体装置及びその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、半導体装置において、バイポ−ラトランジスタのベ−ス表面にシリサイド膜を設けてベ−ス抵抗を下げることを特徴とし、さらに、このベ−ス領域に、エミッタ領域形成工程前にシリサイド膜を形成し、そのボロン吸いだし効果によりベ−ス領域の表面不純物濃度を下げ、その後エミッタ領域を形成する事を特徴としている。すなわち、本発明の半導体装置は、半導体基板と、前記半導体基板の表面領域に形成されたベ−ス領域と、前記ベ−ス領域上に形成されたシリサイド膜又は少なくとも前記ベ−ス領域に接する部分はシリサイド化された金属薄膜と、前記半導体基板の表面領域に形成され、前記ベ−ス領域と接するエミッタ領域とを備え、前記シリサイド膜又は金属薄膜と前記エミッタ領域とは互いに絶縁されていることを特徴としている。前記シリサイド膜又は金属薄膜は、前記エミッタ領域上に形成されたコンタクト孔を有する絶縁膜によって被覆され、このコンタクト孔内には、サイドウォ−ル絶縁膜が設けられている。前記半導体基板には、ベ−ス電極が形成されており、このベ−ス電極は、前記シリサイド膜又は金属薄膜を介して前記ベ−ス領域に接続している。前記シリサイド膜又は金属薄膜は、チタンシリサイド(TiSi2 )からなることができる。
【0009】本発明の半導体装置の製造方法は、半導体基板の表面領域にベ−ス領域を形成する工程と、前記ベ−ス領域上に金属薄膜を形成する工程と、前記金属薄膜を加熱して少なくともベ−ス領域に接する部分をシリサイド化する工程と、前記少なくともベ−ス領域に接する部分をシリサイド化した金属薄膜を少なくとも部分的に取除き、前記ベ−ス領域を部分的に露出する工程と、前記ベ−ス領域の露出している表面領域の所定領域に、前記ベ−ス領域と接するエミッタ領域を形成する工程を備えていることを第1の特徴としている。また、半導体基板の表面領域にベ−ス領域を形成する工程と、前記ベ−ス領域上に金属薄膜を形成する工程と、前記金属薄膜を加熱して少なくともベ−ス領域に接する部分をシリサイド化する工程と、前記半導体基板上に絶縁膜を形成して前記少なくともベ−ス領域に接する部分をシリサイド化した金属薄膜を被覆する工程と、前記絶縁膜と前記少なくともベ−ス領域に接する部分をシリサイド化した金属薄膜とを選択的にエッチング除去して、この絶縁膜にコンタクト孔を形成する工程と、前記コンタクト孔内にサイドウォ−ル絶縁膜を形成する工程と、前記半導体基板外部から前記コンタクト孔を通して前記半導体基板内に不純物を拡散してエミッタ領域を形成する工程とを備えていることを第2の特徴としている。
【0010】さらに、半導体基板の表面領域にベ−ス領域を形成する工程と、前記ベ−ス領域上に金属薄膜を形成する工程と、前記金属薄膜を加熱して少なくともベ−ス領域に接する部分をシリサイド化する工程と、前記少なくともベ−ス領域に接する部分をシリサイド化した金属薄膜を選択的にエッチング除去して前記ベ−ス領域を部分的に露出する工程と、前記半導体基板上に絶縁膜を形成して前記シリサイド膜を被覆する工程と、前記絶縁膜の前記少なくともベ−ス領域に接する部分をシリサイド化した金属薄膜がエッチング除去されている部分を選択的にエッチング除去して、この絶縁膜にコンタクト孔を形成する工程と、前記半導体基板外部から前記コンタクト孔を通して前記半導体基板内に不純物を拡散してエミッタ領域を形成する工程とを備えていることを第3の特徴としており、半導体基板の表面領域にベ−ス領域を形成する工程と、前記ベ−ス領域上に金属薄膜を形成する工程と、前記金属薄膜を加熱して少なくともベ−ス領域に接する部分をシリサイド化する工程と、前記少なくともベ−ス領域に接する部分をシリサイド化した金属薄膜をエッチング除去して前記ベ−ス領域を露出させる工程と、前記半導体基板上に絶縁膜を形成する工程と、前記絶縁膜を選択的にエッチング除去して、この絶縁膜にコンタクト孔を形成する工程と、前記半導体基板外部から前記コンタクト孔を通して前記半導体基板内に不純物を拡散してエミッタ領域を形成する工程とを備えていることを第4の特徴としている。
【0011】
【作用】ベ−ス領域の表面不純物濃度が低下することによって、BVEBO が向上し、さらに、ベ−ス抵抗が減少する。また、半導体基板の所要領域に形成したシリサイド膜のシリサイド形成時におけるボロンの吸い出し効果によってベ−ス領域の表面不純物濃度を有効に表面不純物濃度を下げる。
【0012】
【実施例】以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。まず、図1乃至図7を参照して本発明の第1の実施例を説明する。図1はこの実施例に係るバイポ−ラトランジスタを有する半導体装置の断面図である。このバイポ−ラトランジスタが形成される半導体基板(ウェ−ハ)10は、n埋込み拡散領域3を形成したp型シリコン半導体基板2とこの半導体基板2の上に成長したn型エピタキシャル層1とから構成されている。n型エピタキシャル層1には、素子分離領域5とnコレクタ領域4とが形成されている。ウェ−ハ10の表面は、例えば、シリコン熱酸化膜のような厚い絶縁膜6で被覆されている。素子分離領域に囲まれた素子領域には、表面からの深さが0.2〜0.3μm程度のp型ベ−ス領域11が形成されており、この領域の中にnエミッタ領域12が形成されている。ベ−ス領域11表面には、コンタクト開孔部51およびエミッタ領域12が形成されている部分を除いて、シリサイド(TiSi2 )膜31が形成されている。
【0013】このシリサイド膜31及び厚い絶縁膜6を被覆して絶縁膜22を堆積させる。この絶縁膜22は、たとえば、SiO2 膜からなり、CVD(Chemical VapourDeposition)により形成される。絶縁膜22上には、絶縁膜24が積層されており、例えば、CVDにより形成したSi3 4 から構成されている。さらに、ウェ−ハ10の表面には、エミッタ、ベ−ス、コレクタに接続するそれぞれのエミッタ電極7、ベ−ス電極8、コレクタ電極9が形成されている。これら電極は、アルミニウム或いは銅などを含むアルミニウム合金などからなる。
【0014】この絶縁膜22、24に設けた複数のコンタクト孔51を通じてウェ−ハ10内のエミッタ12、ベ−ス11、コレクタ4等の各領域は、前述の各電極に接続されている。このウェ−ハ10内の各領域の内、エミッタ領域12は、その表面を被覆する多結晶シリコン膜41からの不純物の拡散により形成される。予めn型不純物を多結晶シリコン膜にド−プしておき、加熱によりド−プした不純物をベ−ス領域内に拡散させて、エミッタ12を形成する。拡散に用いる不純物は、通常Asを用いる。これは、拡散係数が小さいのでシャロ−化したn型エミッタ領域が形成される。Pを不純物に用いると拡散係数が大きいので、シャロ−化には適さない。以上の通りであるので、エミッタ領域12とエミッタ電極7とは直接接触せずに、多結晶シリコン膜41が介在されている。コレクタ領域4とコレクタ電極9との間にも多結晶シリコン膜41が形成されている。ベ−ス電極8とベ−ス領域11とは、直接に接触しているが、前記シリサイド膜31を延在させて、両者の間にシリサイド膜を介在させるようにしてこの間の接触抵抗を下げることもできる。
【0015】また、この実施例ではエミッタ領域12上のコンタクト孔内のシリサイド膜31に近い部分にサイドウォ−ル231を形成している。この例では、絶縁膜22の部分にこのサイドウォ−ルを設けている。このサイドウォ−ルは、コレクタ領域4上のコンタクト孔51内の絶縁膜22の部分にも形成されている(図6)。このエミッタ領域12上のコンタクト孔51内に形成されているサイドウォ−ル231によって、前記シリサイド膜31とエミッタ領域12とは接触せずに絶縁が保たれている。サイドウォ−ル231は、実施例では、SiO2 からなるが、例えば、Si3 4 のような窒化物を用いることもできる。サイドウォ−ル231は、例えば、0.1〜0.3μm程度に薄くできるので、その厚さに応じてコンタクト孔径を小さくすることができ、半導体装置の微細化に役立てることができる。
【0016】前記素子分離領域4は、トレンチ構造になっており、周囲は、SiO2 膜からなり、その中に多結晶シリコンが充填されている。このような構造でなくても、例えば、トレンチ内部がすべてSiO2 で充填されていてもよく、さらに、トレンチの代わりに、高濃度のp領域を用いてもよい。この様に、ベ−ス領域の表面にシリサイド膜を形成したので、ベ−ス抵抗が減少し、デバイスの高速化が進む。また、図7に示すように、シリサイドを形成する際のボロンの吸い出し効果によってベ−ス領域の表面の不純物濃度が減少するので、ベ−ス/エミッタ接合の耐圧が上がり、高電界によるホットキャリアの発生や接合表面の保護絶縁膜へのホットキャリアのトラップによるトランジスタの電流増幅率の劣化を防止する。図7は、シリサイド膜形成によって生じたウェ−ハ内のベ−ス領域のボロンの濃度の減少を示す特性図である。縦軸は、不純物濃度(/cm3 )、横軸は、ウェ−ハ(基板)の表面からの深さを示している。
【0017】次ぎに、この実施例の半導体装置の製造方法を説明する。p型シリコン半導体基板2にn型不純物を高濃度にド−プしてn埋込み領域3を形成し、さらに薄いn型エピタキシャル層1をその上に形成してトランジスタ等を集積するウェ−ハ10とする。このウェ−ハ10の表面を加熱してシリコン熱酸化膜からなる薄い絶縁膜21と厚い絶縁膜6を形成する。そして薄い絶縁膜21を介してn型エピタキシャル層1にボロンをイオン注入し、アニ−ルによりボロンを拡散して、例えば、半導体基板表面からの深さ約0.2〜0.3μmのp型ベ−ス領域11を形成する(図2(a))。さらに、n型不純物を絶縁膜21を介してイオン注入し、かつ拡散してn埋込み領域3に繋がるnコレクタ領域4を形成する。コレクタ領域4やベ−ス領域11などが形成される素子領域を囲むように素子分離領域5が形成されるが、これは、まず、n型エピタキシャル層1に、例えば、RIEなどの異方性エッチングにより、p型シリコン半導体基板2にまで達する幅の狭い深い溝(トレンチ)を形成する。
【0018】トレンチの内壁を酸化した後、トレンチ底部にチャネルカット用のボロンを打込み、その後多結晶シリコンをn型エピタキシャル層1上に厚く堆積する。ついで、エッチバックによって、トレンチ内のみ多結晶シリコンを残し、最終的に表面を酸化して平坦な素子分離領域5を形成する。したがって、多結晶シリコンは酸化シリコンに包まれてトレンチ内に充填されている。トレンチ内に酸化膜に換えて窒化膜を形成することもできる。
【0019】次に、ベ−ス領域11の表面の絶縁膜21を除去してこの表面を露出する。コレクタ領域4上の絶縁膜は、そのままにしておく。そして露出した表面に、例えば、チタンのような金属薄膜30をスパッタリングにより堆積する(図2b)。スパッタリング条件は、真空状態を10-4Pa程度にし、タ−ゲットをチタン、スパッタリングガスをAr(20〜80sccm、圧力0.2〜0.5Pa)、1〜8A(アンペア)のスパッタリングパワ−で実行する。この金属薄膜30はRTA又は電気炉により窒素雰囲気中で500〜650℃程度、とくに、約600℃の温度で15〜60秒程度熱処理をする。この熱処理によって金属薄膜30は、チタンシリサイド(TiSi2 )膜31に変化する(図3(a))。このとき、チタンとシリコンが反応してこのチタンシリサイド膜31が形成される際にシリコンウェ−ハ10中のボロンがシリサイド膜31の中に吸い出され、シリサイド膜31とシリコンウェ−ハ10の界面近傍のシリコンウェ−ハ10中のボロン濃度が低下する。
【0020】その時のベ−ス領域11の不純物分布を図3に示す。図7(a)がシリサイド形成前のボロンのウェ−ハ10表面からの深さ方向の分布を示し、図7(b)はシリサイド形成後のボロンの前記分布を示す。図の様に、ボロンのウェ−ハ10表面の濃度は、大きく下がる。したがって、エミッタ形成後に形成されるベ−ス/エミッタ接合で生じる空乏層は十分拡がり、空乏層にかかる電界が緩和されて耐圧が向上する。つぎに、シリサイド膜31の上に絶縁膜22を形成する(図3(b))。この絶縁膜はSiO2 からなり、例えば、CVD(Chemical VapourDeposition)法により形成される。積層されたシリサイド膜31と絶縁膜22はエミッタ領域となる部分を従来から知られているフォトリソグラフィ技術により選択的に除去し、n型エピタキシャル層1のベ−ス領域11を部分的に露出させる。除去された部分は、コンタクト孔となり、この側壁には絶縁膜からなるサイドウォ−ル231を形成する。図4は、その工程の断面図を示すものである。
【0021】コンタクト孔を含めて絶縁膜22の上にSiO2 またはSi3 4 膜23を、例えば、CVD法などで形成し(図4(a))、そのあと、例えば、CF4 +H2 などを用いたRIEで、異方性エッチングを行ってこの膜を選択的に除去してコンタクト孔の内壁にサイドウォ−ル絶縁膜231を形成する(図4(b))。ベ−ス領域11の所定部分にコンタクト孔を形成する際に、薄い絶縁膜21と絶縁膜22とにコンタクト孔を形成してこれらに覆われているコレクタ領域4を露出するので(図3(b))、サイドウォ−ル絶縁膜231は、このコレクタ領域4上のコンタクト孔にも形成される。サイドウォ−ル絶縁膜231の膜厚は、例えば、0.3μmである。
【0022】ついで、絶縁膜22およびコンタクト孔を、Asなどのn型不純物を高濃度にド−プした多結晶シリコン膜で被覆し、この多結晶シリコン膜を選択的にエッチング除去してコンタクト孔内およびその周辺のみに多結晶シリコン膜41を形成する。そして、多結晶シリコン膜41を熱処理することによって、多結晶シリコン膜41中の不純物をベ−ス領域内に拡散し、例えば、半導体基板表面からの深さ0.1μm程度のエミッタ領域12を形成する(図5)。このあと、絶縁膜22および多結晶シリコン膜41を覆うように、例えば、Si3 4 からなる絶縁膜24をCVD法などで形成する。この絶縁膜24およびその下の絶縁膜22を選択的にエッチングしてそれぞれコレクタ領域4、ベ−ス領域11およびエミッタ領域12の上にコンタクト孔51を形成する(図6)。そして、絶縁膜24とコンタクト孔51内に銅などを含むアルミニウム合金の膜を堆積させ、選択的にエッチング除去してコンタクト孔51内およびその周辺にエミッタ電極7、ベ−ス電極8、コレクタ電極9を形成する(図1)。この実施例では、ベ−ス領域11上のシリサイド膜31は、取除かれて、ベ−ス電極8とベ−ス領域11とは、直接接触している。エミッタ領域の形成は、イオン注入で行っても良いし、固相拡散等を利用しても良い。
【0023】この実施例では、ベ−ス領域11上のシリサイド膜31は、金属薄膜(Ti)30から完全にシリサイド化されているが、本発明の目的、すなわち、ベ−ス抵抗の低下およびボロン濃度の減少が達成されるなら、本発明においては、必ずしも完全にシリサイド化される必要はない。図12に示すように、ベ−ス領域11上のシリサイド膜31は、ベ−ス領域11と接する領域がシリサイド化していてもその表面部分は、チタンなど金属薄膜のままでも良い。
【0024】つぎに、図8を参照して第2の実施例を説明する。図は、半導体装置のエミッタ領域形成時の工程断面図である。この実施例は、露出したベ−ス領域11の表面に金属薄膜を堆積し、これを熱処理によってシリサイド化してベ−ス領域11の表面領域のボロン濃度を低下させるまでは、第1の実施例と同じであるが、サイドウォ−ル絶縁膜は、特に形成しない。チタンシリサイド膜31を形成してから、絶縁膜22を形成する前にエミッタ領域が形成される部分のベ−ス領域11上のシリサイド膜31を選択的にエッチング除去して開孔する。そして、この上に、例えば、SiO2 のような絶縁膜22をCVD法などで形成する。
【0025】ついで、絶縁膜22を選択的にエッチングして、ベ−ス領域11内のエミッタ領域形成部分とコレクタ領域4上の絶縁膜22にコンタクト孔を形成する。ついで、絶縁膜22およびコンタクト孔を、Asなどのn型不純物を高濃度にド−プした多結晶シリコン膜で被覆し、この多結晶シリコン膜を選択的にエッチング除去してコンタクト孔内およびその周辺のみに多結晶シリコン膜41を形成する。そして、多結晶シリコン膜41を熱処理することによって、多結晶シリコン膜41中の不純物をベ−ス領域内に拡散し、エミッタ領域12を形成する。このあと絶縁膜22および多結晶シリコン膜41を覆うように、例えば、Si3 4 からなる絶縁膜をCVD法などで形成する。この上の絶縁膜およびその下の絶縁膜22を選択的にエッチングしてそれぞれコレクタ領域4、ベ−ス領域11およびエミッタ領域12の上にコンタクト孔を形成する。そして、図1に示す半導体装置と同様に、上の絶縁膜とコンタクト孔内に銅などを含むアルミニウム合金の膜を堆積し、選択的にエッチング除去してコンタクト孔内およびその周辺にエミッタ電極、ベ−ス電極、コレクタ電極を形成する。
【0026】この実施例では、エミッタ領域12上の絶縁膜22のコンタクト孔にサイドウォ−ル絶縁膜は、形成していないので、シリサイド膜31端部とコンタクト孔との間の距離Lは、比較的長くしないとシリサイド膜31とエミッタ領域12間の絶縁は、十分でなくなる。実際に、Lは、1.0〜0.6μm程度もあるので、前の実施例が、サイドウォ−ル絶縁膜231の厚さ約0.3μm程度で良いのに対して、かなり大きく取らなければ成らない。したがって、この実施例は、半導体装置の微細化には不利である。
【0027】ついで、図9を参照して第3の実施例を説明する。図は、半導体装置のエミッタ領域形成時の工程断面図である。この実施例は、露出したベ−ス領域11の表面に金属薄膜を堆積し、これを熱処理によりシリサイド化してベ−ス領域11の表面領域のボロン濃度を低下させるまでは、第1の実施例と同じであるが、サイドウォ−ル絶縁膜は特に形成せず、しかもシリサイド膜を全部取除いてしまうことに特徴がある。まず、絶縁膜を形成する前にベ−ス領域11表面に形成されているシリサイド膜31をエッチング除去する(図3(a)参照)。そして、この上に、例えば、SiO2 のような絶縁膜22をCVD法などで形成する。ついで絶縁膜22を選択的にエッチングしてし、ベ−ス領域11内のエミッタ領域形成部分とコレクタ領域4上の絶縁膜22にコンタクト孔を形成する。
【0028】ついで、絶縁膜22およびコンタクト孔を、Asなどのn型不純物を高濃度にド−プした多結晶シリコン膜で被覆し、この多結晶シリコン膜を選択的にエッチング除去してコンタクト孔内およびその周辺のみに多結晶シリコン膜41を形成する。そして、多結晶シリコン膜41を熱処理することによって、多結晶シリコン膜41中の不純物をベ−ス領域内に拡散し、エミッタ領域12を形成する。このあと、絶縁膜22および多結晶シリコン膜41を覆うように、例えば、Si34 からなる絶縁膜をCVD法などで形成する。この上の絶縁膜およびその下の絶縁膜22を選択的にエッチングしてそれぞれコレクタ領域4、ベ−ス領域11およびエミッタ領域12の上にコンタクト孔を形成する。
【0029】そして、図1に示す半導体装置と同様に、上の絶縁膜とコンタクト孔内に銅などを含むアルミニウム合金の膜を堆積し、選択的にエッチング除去してコンタクト孔内およびその周辺にエミッタ電極、ベ−ス電極、コレクタ電極を形成する。この実施例では、ベ−ス領域表面近傍のボロン濃度を低下させるので、前記表面近傍のベ−ス/エミッタ接合における耐圧を十分維持し、この接合における空乏層にかかる電界を緩和してホットキャリアの発生を防止することができる。しかし、シリサイド膜を途中で除去するので、ベ−ス抵抗が下らず高速化の点では有利ではない。
【0030】ついで、図10、図11を参照して、シリサイド膜31が形成されているベ−ス領域11にエミッタ領域11を形成する他の方法を説明する。図10は、シリサイド膜31とCVDSiO2 絶縁膜22のエッチング速度の差によりコンタクト孔51内のシリサイド膜31部分をオ−バ−エッチングして絶縁膜22部分より後退させる(図10(a))。そこに、CVDSiO2 などのサイドウォ−ル絶縁膜231を堆積させる(図10(b))。この様にすると、サイドウォ−ル絶縁膜の厚さは、前記実施例の約0.3μmより薄くでき、シリサイド膜31が後退した部分にのみサイドウォ−ル絶縁膜を形成することすら可能であるので、微細化に役立っている。図11は、酸素原子のイオン注入により、シリサイド膜31のコンタクト孔51周辺部分を絶縁化するものである。通常の方法で、絶縁膜22とシリサイド膜31をエッチングしてコンタクト孔51を形成する(図11(a))。
【0031】つぎに、コンタクト孔51の周辺部分のシリサイド膜31に絶縁膜を介してイオン注入を行い、その部分を酸化してその部分のみをサイドウォ−ル絶縁膜231とする(図11(b))。とくに、サイドウォ−ル絶縁膜を付け加える必要はないので、さらに微細化が進み、半導体装置の高集積化が可能になる。本発明は、ECLのようなバイポ−ラLSIなどの半導体装置に適用される。また、前述の実施例では、不純物をド−プした多結晶シリコンからの拡散によってエミッタ領域を形成しているが、本発明では、この方法に限らず、その他の固相拡散法やイオン注入法など既存の方法を用いることができる。
【0032】
【発明の効果】以上の様に、本発明は、ベ−ス領域表面近傍の不純物濃度が従来より少なくなっているので、ベ−ス/エミッタ接合での空乏層が伸びて接合にかかる電界が緩和されるために耐圧が向上し、ホットキャリアの発生も抑えられる。また、ベ−ス抵抗が減少するので、半導体装置の高速化が促進される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例の半導体装置の断面図。
【図2】第1の実施例の半導体装置の製造工程断面図。
【図3】第1の実施例の半導体装置の製造工程断面図。
【図4】第1の実施例の半導体装置の製造工程断面図。
【図5】第1の実施例の半導体装置の製造工程断面図。
【図6】第1の実施例の半導体装置の製造工程断面図。
【図7】図1に示すウェ−ハ内の不純物濃度分布図。
【図8】第2の実施例の半導体装置の断面図。
【図9】第3の実施例の半導体装置の断面図。
【図10】本発明の半導体装置の製造工程断面図。
【図11】本発明の半導体装置の製造工程断面図。
【図12】本発明のベ−ス領域上のシリサイド膜の断面図。
【図13】従来の半導体装置の断面図。
【図14】図13に示すウェ−ハ内の不純物濃度分布図。
【符号の説明】
1 n型エピタキシャル成長層
10 ウェ−ハ
11 ベ−ス領域
12 エミッタ領域
2 p型シリコン半導体基板
21 薄い絶縁膜
22、23、24 絶縁膜
231 サイドウォ−ル絶縁膜
3 n埋込み領域
30 金属薄膜
31 シリサイド膜
4 コレクタ領域
41 多結晶シリコン膜
5 素子分離領域
51 コンタクト孔
6 厚い絶縁膜
7 エミッタ電極
8 ベ−ス電極
9 コレクタ電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】 半導体基板と、前記半導体基板の表面領域に形成されたベ−ス領域と、前記ベ−ス領域上に形成されたシリサイド膜又は少なくとも前記ベ−ス領域に接する部分はシリサイド化された金属薄膜と、前記半導体基板の表面領域に形成され、前記ベ−ス領域と接するエミッタ領域とを備え、前記シリサイド膜又は前記金属薄膜と前記エミッタ領域とは互いに絶縁されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】 前記シリサイド膜又は前記金属薄膜は、前記エミッタ領域上に形成されたコンタクト孔を有する絶縁膜によって被覆され、このコンタクト孔内には、サイドウォ−ル絶縁膜が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】 前記半導体基板には、ベ−ス電極が形成されており、このベ−ス電極は、前記シリサイド膜又は前記金属薄膜を介して前記ベ−ス領域に接続していることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】 前記シリサイド膜は、チタンシリサイドからなることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】 半導体基板の表面領域にベ−ス領域を形成する工程と、前記ベ−ス領域上に金属薄膜を形成する工程と、前記金属薄膜を加熱して少なくともベ−ス領域に接する部分をシリサイド化する工程と、前記少なくともベ−ス領域に接する部分をシリサイド化した金属薄膜を少なくとも部分的に取除き、前記ベ−ス領域を部分的に露出する工程と、前記ベ−ス領域の露出している表面領域の所定領域に、前記ベ−ス領域と接するエミッタ領域を形成する工程とを備えていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】 半導体基板の表面領域にベ−ス領域を形成する工程と、前記ベ−ス領域上に金属薄膜を形成する工程と、前記金属薄膜を加熱して少なくともベ−ス領域に接する部分をシリサイド化する工程と、前記半導体基板上に絶縁膜を形成して前記少なくともベ−ス領域に接する部分をシリサイド化した金属薄膜を被覆する工程と、前記絶縁膜と前記少なくともベ−ス領域に接する部分をシリサイド化した金属薄膜とを選択的にエッチング除去して、この絶縁膜にコンタクト孔を形成する工程と、前記コンタクト孔内にサイドウォ−ル絶縁膜を形成する工程と、前記半導体基板外部から前記コンタクト孔を通して前記半導体基板内に不純物を拡散してエミッタ領域を形成する工程とを備えていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】 半導体基板の表面領域にベ−ス領域を形成する工程と、前記ベ−ス領域上に金属薄膜を形成する工程と、前記金属薄膜を加熱して少なくともベ−ス領域に接する部分をシリサイド化する工程と、前記少なくともベ−ス領域に接する部分をシリサイド化した金属薄膜を選択的にエッチング除去して前記ベ−ス領域を部分的に露出する工程と、前記半導体基板上に絶縁膜を形成して前記少なくともベ−ス領域に接する部分をシリサイド化した金属薄膜を被覆する工程と、前記絶縁膜の前記少なくともベ−ス領域に接する部分をシリサイド化した金属薄膜がエッチング除去されている部分を選択的にエッチング除去して、この絶縁膜にコンタクト孔を形成する工程と、前記半導体基板外部から前記コンタクト孔を通して前記半導体基板内に不純物を拡散してエミッタ領域を形成する工程とを備えていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】 半導体基板の表面領域にベ−ス領域を形成する工程と、前記ベ−ス領域上に金属薄膜を形成する工程と、前記金属薄膜を加熱して少なくともベ−ス領域に接する部分をシリサイド化する工程と、前記少なくともベ−ス領域に接する部分をシリサイド化した金属薄膜をエッチング除去して前記ベ−ス領域を露出させる工程と、前記半導体基板上に絶縁膜を形成する工程と、前記絶縁膜を選択的にエッチング除去して、この絶縁膜にコンタクト孔を形成する工程と、前記半導体基板外部から前記コンタクト孔を通して前記半導体基板内に不純物を拡散してエミッタ領域を形成する工程とを備えていることを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図10】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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