説明

半導体装置用テープキャリアの製造方法

【課題】 半導体装置用テープキャリアにおけるバンプ高さの全数検査を、実用的な作業能率を以て行うことを可能とするバンプ高さ計測工程を含んだ半導体装置用テープキャリアの製造方法を提供する。
【解決手段】 この半導体装置用テープキャリアの製造方法は、絶縁性フィルム基材3の表面上に、少なくとも配線パターン1を形成する工程と、バンプ2を形成する工程とを含んだ半導体装置用テープキャリア5の製造方法であって、バンプ2の形成後、半導体装置用テープキャリア5の表面上におけるバンプ2を含んだ所定の計測対象領域4に参照光11aを照射し、その参照光11aを計測対象領域4におけるバンプ2を含んだ半導体装置用テープキャリア5の表面上で反射させて得られる反射光11bを検出し、その反射光11bの位相がバンプ2のバンプ高さhに対応して変化することによって生じる位相変位量に基づいて、バンプ2のバンプ高さhを計測する工程を、さらに含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置用テープキャリアにおける、例えば半導体装置の接続用パッド等に対して接合されるバンプのバンプ高さを測定する工程を含んだ半導体装置用テープキャリアの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば液晶表示パネルの駆動用回路系に用いられるBOF(Bump On Film)と呼ばれるような半導体装置用テープキャリアでは、絶縁性フィルム基材の表面上に、配線パターン本体と、それに連なるインナーリードとが形成されており、さらにそのインナーリード上の所定位置に、液晶駆動用ICチップの接続用パッドのような接続端子との接合のためのバンプが、例えば銅めっきによって突起状に形成されている。
【0003】
液晶駆動用ICチップのような半導体チップに設けられている接続端子は、一般に、同一の高さで水平に配列形成されている。従って、半導体装置用テープキャリア側に形成されるバンプの高さが不均一であると、局所的に半導体チップの接続端子に対して接合不良が発生する場合がある。このため、半導体装置用テープキャリアに形成されるバンプの高さ(バンプ高さとも呼ぶ)を測定し、所定の許容範囲を逸脱した誤差が生じている場合には、それをバンプを形成不良と判定するようにして、製品としての半導体装置用テープキャリアの品質・信頼性を維持することが、強く要請されている。
【0004】
半導体装置用テープキャリアのバンプの高さを測定する方法としては、図8に模式的に示したようなものがある。すなわち、落射光を測定対象領域に照射しつつ、その領域内のインナーリード101の上面の2か所にそれぞれ測定装置または光学顕微鏡等(図示省略)のフォーカスを合わせて、そのときの2点の高さ(ha、hc)を各々測定し、その平均値((ha+hc)/2)を取ってインナーリード上面の高さの値とする。
続いて、バンプ102の中央部にフォーカスを合わせて、そのバンプ102の高さ(hb)を測定する。そして、そのインナーリード101とバンプ102との高低差をバンプ高
さとして算出し、その値が所定の許容範囲内にあるか否かに基づいて、そのバンプ102のバンプ高さが正常であるか否かを判定するようにしている。なお、このような測定方法は、光学顕微鏡などによる凹凸の測定方法と基本的には同様の測定原理に基づいたものである。
あるいは、その他にも、光学的検査装置を用いて、レーザ光を測定対象のバンプに照射し、三角測量法によりバンプ高さを検出する、という方法および検査装置が提案されている(特許文献1、2)。
もしくは、X線をバンプに照射して、そのときのX線の透過量に基づいてバンプ高さを測定する、という方法が提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−74845号公報
【特許文献2】特開平11−304432号公報
【特許文献3】特開2001−358161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2にて提案された方法および装置では、実際には、バンプの全数検査を行うためには余りにも長い時間(日時)が掛かり過ぎるという、製造ライン
における致命的な問題がある。
また、個々のバンプの一つ一つに対してそのバンプ高さの計測作業を個別に行っているので、一個のバンプの測定ポイントから次のバンプの測定ポイントへの移動時間や位置合わせのための時間などに長い時間を要することとなって、測定と測定との間での時間的な損失が大きくなり、またその移動〜位置合わせに要する作業が煩雑なものとなるという問題もある。そしてまた、このことがさらに、全バンプ検査に要する時間の長期化を助長する要因にもなっている。
【0007】
すなわち、BOFでは近年、配線およびバンプの高密度化が進み、一つのBOF当りに約1000個ものバンプが設けられている場合も多くなってきている。しかも、BOFのような半導体装置用テープキャリアでは、例えば出荷1ロット当り約2500個ものBOFの個片が検査対象となるので、1ロット当り合計で2500000個ものバンプを検査しなければならないことになる。そのように膨大な個数のバンプ全部を個別に検査するためには、膨大な時間(日時)が必要となる。具体的には、上記のようなBOFの場合、約1000個のバンプの全数検査には、最短でも十数時間を要する。従って、1ロット分のバンプの全数検査には、最も少なく見積っても、約3年以上もの年月を要することとなってしまう。これでは全く非現実的である。
あるいは、10台の計測装置を並行して稼働させて1ロットの全数検査をしたとしても、3か月以上もの月日が掛かってしまう。
半導体装置用テープキャリアでは一般に、リードタイムやめっきの寿命(錫(Sn)めっきで約1〜3か月、金(Au)めっきで約3〜6か月と言われており、酸化などに因る劣化やウィスカ現象などの表面異常が発生する虞がある)などからすると、品質検査のために上記のような極めて長い月日が掛かるということは、その品質検査を行っている期間中にその検査対象である半導体装置用テープキャリア自体の品質が劣化してしまうこととなり、全く現実的ではないと言わざるを得ない。
【0008】
従来の半導体装置用テープキャリアにおけるバンプ高さの測定(検査)工程では、上記のような問題があるため、いわゆる抜き取り検査によって、例えば1個のBOF当り10個のような少数のバンプについてのバンプ高さを測定することを、1ロット当り10個程度のBOFについて実施することで、そのときの1ロットの製品全体の出荷保証とせざるを得ないこととなっていた。
ところが、そのような抜き取り検査では不良や異常は発見されなくても、実際にはそのとき抜き取り検査の対象となった個片以外のものに多数の不良が存在している場合もあり得る。また逆に、1ロット内に1個だけでも不良が発見されると、そのときの1ロットの全ての個片に対して不良発生の疑いが生じることになるが、それ以上に細かく個々のBOFごとについての良/不良を判定することはできないので、バンプ高さの不良が本当は発生している製品を、チェックできずに見逃して、市場へ流出させてしまう虞があるという問題があった。また逆に、偶々抜き取り検査の対象となった製品が不良品であったというだけで、他の多数の良品を不良発生の疑いのあるものとして、実質的に無駄に廃棄したり再生工程に回したりしなければならなくなるという問題があった。
【0009】
また、特許文献3にて提案された方法では、X線の透過を利用してバンプ高さを測定するようにしているが、実際にはX線は一般に金属を透過し難いという問題がある。また、例えば金(Au)めっきを表面に施してなる配線パターンやバンプを備えた半導体装置用テープキャリアの場合、X線は金(Au)めっき膜には特に透過し難いので、正確なバンプ高さの測定がさらに困難なものとなるという問題がある。また、より正確な測定を実現するためには、ある程度強いX線を用いざるを得ないので、そのときの作業環境や作業者の人体に対してさらなる悪影響が懸念されるという問題がある。
また、X線検査装置という特殊な装置系を用いることに起因して、その導入が煩雑かつ高コストになる傾向があり、また銅(Cu)やアルミニウム(Al)のような金属膜を透
過可能な程度以上の強さのX線という、基本的に人体に悪影響を及ぼす虞のある電磁波を取り扱うことに起因して、その取り扱いや設定に制約や厳密な注意を要するという問題や、その取り扱いが煩雑なものとなる傾向にあるという問題がある。
【0010】
このように、従来の技術では、X線透過方式の測定装置のような特殊な電磁波等を用いた装置に依ることなしに、半導体装置用テープキャリアにおけるバンプ高さの全数検査(全数計測)を、実用的な作業能率を以て行うことは、実際上不可能であるという問題があった。
本発明は、このような問題に鑑みて成されたもので、その目的は、X線透過装置のような極めて特殊でその導入や運営が煩雑かつ高コストになるような装置やそれを用いた方法に依ることなしに、半導体装置用テープキャリアにおけるバンプ高さの全数検査を、実用的な作業能率を以て行うことを可能とするバンプ高さ計測工程を含んだ半導体装置用テープキャリアの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の半導体装置用テープキャリアの製造方法は、第1に、絶縁性フィルム基材の表面上に、少なくとも配線パターンを形成する工程と、バンプを形成する工程とを含んだ半導体装置用テープキャリアの製造方法であって、前記バンプの形成後、前記半導体装置用テープキャリアの表面上における前記バンプを含んだ所定の計測対象領域に参照光を照射し、当該参照光を前記計測対象領域における前記バンプを含んだ前記半導体装置用テープキャリアの表面上で反射させて得られる反射光を検出し、当該反射光の位相が前記バンプのバンプ高さに対応して変化することによって生じる位相変位量に基づいて、前記バンプのバンプ高さを計測する工程を、さらに含むことを特徴としている。
また、第2に、絶縁性フィルム基材の表面上に、少なくとも配線パターンを形成する工程と、バンプを形成する工程とを含んだ半導体装置用テープキャリアの製造方法であって、前記バンプの形成後、前記半導体装置用テープキャリアの表面上における前記バンプを含んだ所定の計測対象領域に参照光を照射し、当該参照光を前記計測対象領域における前記バンプを含んだ前記半導体装置用テープキャリアの表面上で反射させて得られる反射光を検出し、当該反射光の到達時間が前記バンプのバンプ高さに対応して変化することによって生じる時間的変位量に基づいて、前記バンプのバンプ高さを計測する工程を、さらに含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、計測対象領域内に含まれる複数のバンプのような複数の凹凸形状の高さを、例えば一度の光照射のみで、従来よりも飛躍的に高い作業能率を以て、短時間で計測することが可能となる。その結果、従来技術では実質的に不可能であった、半導体装置用テープキャリアにおけるバンプ高さのような凹凸形状の全数検査を、実用的な極めて高い作業能率を以て行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る半導体装置用テープキャリアの製造方法におけるバンプ高さの計測工程で計測対象領域となるバンプが配列形成されている部分を、抽出・拡大して示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る半導体装置用テープキャリアの製造方法におけるバンプ高さの計測工程にて、参照光を参照光照射部からバンプに対して照射する状態を模式的に示す図(図2(a))、およびそのバンプの表面で反射された反射光が反射光検出部で検出される状態を模式的に示す図(図2(b))である。
【図3】本発明の実施の形態に係る半導体装置用テープキャリアの製造方法におけるバンプ高さの計測動作を模式的に示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る半導体装置用テープキャリアの製造方法に好適に用いられる高低差計測装置における、特に光学系装置の部分の構成およびその動作理論を、模式的に示す図である。
【図5】図4に示した高低差計測装置によって計測されたバンプ高さのデータの一例を模式的に示す図である。
【図6】本発明の実施の形態および実施例に係る半導体装置用テープキャリアの製造方法における、バンプ高さの計測工程での計測対象となるバンプおよび配線パターンの概観を示す図である。
【図7】図6に示したバンプのX−X’断面図(図7(a))、およびY−Y’断面図(図7(b))である。
【図8】従来技術に係る半導体装置用テープキャリアのバンプの高さを測定する方法の一例を、模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係る半導体装置用テープキャリアの製造方法について、図面を参照して説明する。
【0015】
本発明の実施の形態に係る半導体装置用テープキャリアの製造方法は、図6、図7に示したような、少なくとも配線パターン1およびバンプ2を絶縁性フィルム基材3の表面上に形成する工程を含んだ半導体装置用テープキャリアの製造方法であって、図1および図2に示したように、バンプ2を配列形成した後、この半導体装置用テープキャリア5の表面上における、バンプ2を含んだ所定の計測対象領域4に参照光11aを照射し、その参照光11aを計測対象領域4におけるバンプ2を含んだ半導体装置用テープキャリア5の表面上で反射させて得られる反射光11bを検出し、その反射光11bの位相がバンプ2のバンプ高さhに対応して変位することによって生じる、その反射光11bの位相の参照光11aの位相に対する位相変位量に基づいて、図3に模式的に示したような、そのときの計測対象であるバンプ2のバンプ高さhの数値情報14を計測する工程を含んでいる。
本発明の実施の形態に係る半導体装置用テープキャリアの製造方法における最も特徴的な点は、複数のバンプ2を形成した後に、そのバンプ2の配列形成された領域を含む二次元的な広がりを持つ計測対象領域4内のバンプ2の全てのバンプ高さhを、一度の参照光11aの照射およびその反射光11bの検出により、一括して能率よく計測する、という点である。
【0016】
さらに詳細には、図1、図2、図3、図4に示したように、まず、複数のバンプ2を配線パターン1に連なるインナーリード部上の所定位置に配列形成した後、その複数配列形成された複数のバンプ2を含む計測対象領域4に、例えばコヒーレントで直進性の高いレーザ光を面的に(二次元的に)出射するように設定された参照光照射部10から、参照光11aを照射する(図2(a))。
【0017】
すると、その参照光11aは、半導体装置用テープキャリア5の表面上の配線パターン1の表面やバンプ2の表面で反射されて、例えば受光素子を面的に(マトリックス状に)配列形成してなる反射光検出部12へと至り、反射光11bとして検出される(図2(b))。
【0018】
その反射光検出部12で検出される反射光11bは、計測対象物である半導体装置用テープキャリア5の表面上の配線パターン1の表面での反射の場合と、それよりも高い位置にあるバンプ2の表面での反射の場合とでは、参照光照射部10から半導体装置用テープキャリア5の表面を経て反射光検出部12へと至る光路に差が生じるので、その光路差に対応して、参照光照射部10から出射された時点での参照光11aの位相に対する反射光検出部12で検出された時点での反射光11bの位相差が、異なったものとなる。その位相差が計測対象物の高さに対応して異なった値となることを利用して、つまり参照光11
aの反射位置の高さの違いに対応して生じる反射光11bの位相差に基づいて、そのときの計測対象物の高さを計測することができる。
【0019】
ここで、参照光照射部10から出射された時点での参照光11aの位相と反射光検出部12で検出された時点での反射光11bの位相との位相差の、より具体的な測定方法としては、例えば図4に模式的に示したようなものとすることができる。
すなわち、参照光照射部10から出射される、所定の定常的な波長および強度を有するコヒーレントで直進性の良好なレーザ光のような光源光を、例えば分光器(図示省略)によって、参照光11aと位相基準光13とに分光して出射する。参照光11aは、半導体装置用テープキャリア5の表面に照射し、位相基準光13は、直接に反射光検出部12に照射する。このようにすることにより、参照光11aの位相と反射光11bの位相との位相差に対応して、反射光検出部12にて検出される光には、干渉作用が生じ、それによって反射光検出部12で検出される光には見掛けの光強度に変化が生じる(いわゆる干渉作用による明暗が生じる)ので、その見掛けの光強度に基づいて、そのときの反射光11bの反射した位置の高さを算出することが可能となる。つまり、この計測方法の具体的一態様においては、計測対象物の高さという物理量を、光強度の大小(明暗)→位相差の大小→高さの大小、のような対応関係を以て、間接計測することができるということである。このように光強度の違いを検出し、それに対応してバンプ高さhを計測する、という態様によれば、位相差自体を検出するための、やや特殊なセンサ等を用いることなしに、一般的なCCD(Charge Coupled Device)方式の撮像素子等を反射光検出部12として簡易
に用いて、本発明の実施の形態に係る計測を行うことが可能となる、ということである。
【0020】
このようにして計測されたバンプ高さhの数値情報14は、例えば図5に模式的に示したようなものとなる。この図5に示した一例は、反射光検出部12として、CDD撮像素子のような撮像画素がマトリックス状に配列形成された光検出装置を用いて、その各画素ごとに、個々のバンプ2のバンプ高さhを、それぞれ計測するように設定されている場合を想定している。そして、バンプ高さhの許容下限値がTh-L、許容上限値がTh-Hと設
定されていて、それら両者の間の数値領域が、正常なバンプ高さhであるものと判定される場合を想定している。
【0021】
この図5の一例では、画素P1で検出された反射光11bに対応するバンプ2の高さh
の数値情報(データ;以下同様)51は、許容下限値Th-Lと許容上限値Th-Hとの間に
ある値なので、その画素P1に対応するバンプ2の高さhは正常であるものと判定される

また、画素P2で検出された反射光11bに対応するバンプ2の高さhの数値情報52
は、許容下限値Th-L未満の値であるから、この場合には高さが不足しているものとして、つまりバンプ高さhが低過ぎる不良として判定される。
また、画素P3で検出された反射光11bに対応するバンプ2の高さhの数値情報53
は許容上限値Th-Hを超えた値であるから、この場合には高さが超過しているものとして
、つまりバンプ高さhが高過ぎる不良として判定される。
【0022】
このような判定を、計測対象領域4内の全てのバンプ2について、例えば汎用コンピュータ等を用いたデータ処理・管理技術によって、自動的に行うようにすることができる。ここで、上記のような判定に関する手順やデータ処理については、上述のような本発明の実施の形態に係る半導体装置用テープキャリアの製造方法によるものでなければならないことは勿論であるが、その判定後のデータ処理・管理技術自体については、一般的な汎用コンピュータ等およびそれに対応した各種データ処理用ソフトウェア等を用いて行うことも可能である。
【0023】
ここで、上記のような計測方法以外にも、図示は省略するが、位相差自体を検出するセ
ンサ等を反射光検出部12として用いて、その参照光11aの位相と反射光11bの位相との位相差自体を検出し、それに基づいて、バンプ高さhの計測値を算出するようにしてもよい。なお、この場合には、上記の位相基準光13は用いる必要がなくなる。
【0024】
あるいは、図示は省略するが、上記のような参照光11aと反射光11bとの位相差の代りに、反射光11bの反射光検出部12への到達時間、つまり参照光照射部10から出射された参照光11aが半導体装置用テープキャリア5の表面で反射され反射光11bとなって反射光検出部12で検出されるまでの、一連の光路を進むに要した時間に基づいて、バンプ高さhの計測値を算出することも可能である。すなわち、本発明の実施の形態に係る半導体装置用テープキャリアの製造方法は、上記以外にも、バンプ2の形成後、半導体装置用テープキャリア5の表面上におけるバンプ2を含んだ所定の計測対象領域4に、参照光11aを例えば単発パルス状に照射し、その参照光11aを計測対象領域4におけるバンプ2を含んだ半導体装置用テープキャリア5の表面上で反射させて得られる反射光11bを検出して、その参照光11aが出射されてから反射光11bとして反射光検出部12に到達するまでの到達時間がバンプ2のバンプ高さhに対応して変化することによって生じる時間的変位量に基づいて、そのときの計測対象物であるバンプ2のバンプ高さhを計測するようにしてもよい。
【0025】
本発明の実施の形態に係る半導体装置用テープキャリアの製造方法におけるバンプ高さhを計測するために好適に用いられる高低差計測装置としては、図4に示したような参照光照射部10と反射光検出部12とを光学的装置系として備えると共に、図示しない高低差算出部を備えて、上記に説明したような方法によって半導体装置用テープキャリア5の表面上のバンプ高さhつまり配線パターン1とバンプ2との高さの高低差を計測することが可能な高低差計測装置を好適に用いることが可能である。
【0026】
すなわち、本発明の実施の形態に係る半導体装置用テープキャリアの製造方法におけるバンプ高さhを計測するために好適に用いられる高低差計測装置の一態様としては、半導体装置用テープキャリア5の表面上に形成された配線パターン1やバンプ2などのような各種の凹凸形状を有する計測対象物の表面上における、その凹凸形状を含んだ所定の計測対象領域4に参照光11aを照射する参照光照射部10と、参照光11aを計測対象領域4におけるバンプ2等のような凹凸形状を含んだ計測対象物の表面上で反射させて得られる反射光11bを検出する反射光検出部12と、反射光11bの位相がバンプ2のような凹凸形状の高低差に対応して変化することによって生じる、参照光11aの有する当初の位相に対する反射光11bの位相変位量に基づいて、そのときの計測対象物であるバンプ2のバンプ高さhのような凹凸形状の高低差の値を算出する高低差算出部(図示省略)とを備えたものである。
【0027】
あるいは、そのような参照光11aと反射光11bとの位相差に基づいてバンプ高さhのような凹凸形状の高低差を計測(算出)する代りに、反射光検出部10から例えば単発パルス状に出射された参照光11aが半導体装置用テープキャリア5の表面のような計測対象物の表面上で反射されて反射光11bとなって例えばパルス応答的に反射光検出部12へと到達するまでの到達時間に基づいて、そのときの計測対象物であるバンプ2のバンプ高さhのような凹凸形状の高低差の値を算出する高低差算出部(図示省略)とを備えたものとしてもよい。
【0028】
ここで、上記のような高低差計測装置によれば、計測対象領域4の範囲の大きさを調整することによって計測精度や計測速度(検査速度)を、その計測可能な高さや精度の数値領域内で適宜に調節することや変更することが可能なので、計測対象物としては、必ずしも半導体装置用テープキャリアの表面上に形成された配線パターン1やバンプ2のみには限定されない。その他にも、同様の半導体装置用テープキャリアに形成された構造物とし
ては、例えばビア穴(図示省略)の深さ(つまりビア底と絶縁性フィルム基材3の表面との高低差)や、ソルダレジスト膜(図示省略)に設けられた窓部付近における、そのソルダレジスト膜の厚さ(つまりソルダレジストの最表面とその下の絶縁性フィルム基材3の表面との高低差)などについても、上記同様の装置構成および計測方法によって、正確かつ迅速に計測することが可能である。
【0029】
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る半導体装置用テープキャリアの製造方法によれば、計測対象物の凹凸形状物として例えば複数のバンプ2が形成された後に、そのバンプ2の配列形成された領域を含む二次元的な広がりを持つ計測対象領域4内のバンプ2の全てのバンプ高さhを、一度の参照光11aの照射およびその反射光11bの検出によって、一括して計測することができるようにしたので、従来は実質的に極めて困難ないしは不可能であった、半導体装置用テープキャリアにおけるバンプ高さhの全数検査を、実用的な作業能率を以て迅速に行うことが可能となる。
【0030】
また、一度に所定の二次元的な広がりを有する計測対象領域4内の全てのバンプ2のバンプ高さhを一括して計測することができるので、従来のようなバンプ2を一個ずつ計測(検査)していた場合と比較して、一つの計測ポイントから他の一つの計測ポイントへの移行に要する時間や手間を完全に削減することが可能となる。また、上記のように計測対象領域4の厳密に位置合わせが不要となる。そして、それらが相まって、バンプ2の全数検査の(総合計の計測時間の)飛躍的な迅速化が達成されることとなる。
【0031】
また、例えば一個のBOF上に形成された全てのバンプ2を一度の光照射だけでは計測できない場合には、複数の計測対象領域4に分けて、その個々の計測対象領域4についてそれぞれ1回ずつの光照射を行って計測することとなる。このような場合でも、複数の計測対象領域4のうちの隣り合うもの同士が大幅に重ならない限りは、それらの境界線を厳密に位置合わせしなくとも済む、というメリットもある。すなわち、少しだけ重なり合う部分が生じても、計測(検査)の精度に悪影響等は全くなく、むしろ計測の確実性が増すというメリットが得られる。但し、余りにも重なり合う部分が多過ぎると、その分、重複して無駄に計測することとなり、それに因る時間的な損失が大きくなる虞がある。よって、実質的に左様な時間的損失が生じないような範囲内で、適度に重複を許容しつつ、数回に分けて計測することが望ましい。
【0032】
なお、上記の参照光11aとしては、可視光、紫外光、赤外光、レーザ光、またはそれら以外の電磁波などを用いることが可能である。あるいは、バンプ2や配線パターン1の表面で反射可能な(換言すれば、それらを透過しない程度の弱めの)X線なども用いることが可能である。この場合、使用されるX線はエネルギ密度が低くて弱いものでよいので、作業環境や人体に与える悪影響の虞なしにX線を用いることが可能となるのである。
特に、計測対象物が感光性の材質のもので、計測(検査)時点では感光させないようにしなければならない場合などには、それに対応して、例えば赤外線やその他の電磁波を参照光11aとして用いることが望ましい。
【0033】
また、計測対象物自体やその配列が、一度に計測可能な計測対象領域4よりも大きい場合には、複数回に分けて計測することが望ましい。あるいは、参照光照射部10や反射光検出部12を予め大きめの寸法に作製しておき、一度に計測可能な計測対象領域4を予め大きくしておくことで、より大きな計測対象物にも一度の計測で対応できるようにしてもよいことは勿論である。また、基本的に、一度の計測で計測可能な計測対象領域4が大きければ大きいほど、それに正比例して、全数検査のスループットは向上するのであるから、この観点からも、できるだけ少ない回数、より望ましくは一度の計測で、より大きな計測対象領域4を計測できるように、計測可能な計測対象領域4の面積(外形寸法)は大きめに設定しておくことが、より望ましい。
【0034】
また、図示は省略するが、参照光照射部10として面的(二次元的)にレーザ光のような参照光11aを出射するものの代りに、レーザ光を一次元的に(いわゆるライン状に)出射するものを用いると共に、反射光検出部12として一次元的に光センサ素子を配列形成してなるもの(いわゆるラインセンサ)を用い、その参照光照射部10から出射される参照光11aを計測対象領域4に対してスキャンさせながら照射しつつその反射光11bを反射光検出部12で検出するような構成とすることなども可能である。このようにすることにより、二次元的に参照光11aを出射する場合よりも、走査を行わなければならなくなる分、計測時間は若干長くなるが、参照光照射部10や反射光検出部12の構造を、より簡易なものとすることができるというメリットがある。また、半導体装置用テープキャリア5の表面のような計測対象物の表面に対して、ほぼ垂直に、参照光11aを照射することおよび反射光11bを検出することができるので、バンプ2のような凹凸形状の計測対象物における立体的に影になる部分などを誤って計測するといった誤差(あるいは不確からしさ)の発生をさらに確実に回避することが可能となる。
【実施例】
【0035】
上記の実施の形態で説明したような半導体装置用テープキャリアの製造方法を試験的に実施し、その全数検査の作業能率を飛躍的に高度化することが可能であることを確認した。
【0036】
液晶駆動用ICチップのような半導体チップ(図示省略)の接続端子に対して接合されるように設定されたバンプ2を想定して、長さ約20mmの範囲内に、配線パターン1としてインナーリード状のものを500本ずつ、2列に向かい合わせた状態となるように、合計1000本、配列形成した。そしてそれら各配線パターン1の所定位置ごとに、バンプ2を1個ずつ形成して、合計1000個のバンプ2が絶縁性フィルム基材3の表面上の約20mmの長さの所定範囲内に配列形成された半導体装置用テープキャリア5を作製した。
そして、その半導体装置用テープキャリア5の表面上のバンプ2を計測対象物として、そのバンプ高さhを、上記の実施の形態で説明した高低差計測装置を用い、上記の実施の形態で説明した計測方法によって計測した。
【0037】
ここで、従来の、バンプを一個ずつ計測(検査)する方法および装置の場合には、一個の計測ポイントから他の(次の)計測ポイントへの移行(移動)やその各ポイントに対する厳密な位置合わせなどに要する時間も含めると、上記のような仕様の合計1000個のバンプ2を全数検査(計測終了)するのに要する時間は、約13時間であった。すなわち、理論的には、最低限でも、バンプ2の1個当りについて、バンプ高さhの計測自体に要する時間が9秒、移動および位置合わせに要する時間が6秒と見積もられる。それが1個のBOF当りに1000個あるのだから、合計では、(9+6)×1000=15000秒、つまり約4時間超の時間を要することとなる。蓋し実際には、さらに、位置合わせの際に落射光/透過光の切り替えを行わなければならないので、その分の時間的損失が加わる。また、計測対象であるリードやバンプに形状的な凹凸の異常や配列の異常等が発生していると、それが要因となって、位置合わせに要する時間はさらに長くなる。このように、光源の切り替えやバンプの凹凸異常・配列異常等の発生に起因して、位置合わせの時間的損失がさらに大きくなるので、個々のバンプ2の計測に要する時間はもっと長く掛かる傾向が強い。このため、1個のBOF当りの全数検査に要する時間は、約12〜13時間程度になる。
そして、そのように1個当りの全数検査が約12時間以上も掛かるBOFの個片が、1ロット当りに2500個あるのだから、1ロットのバンプ2の全数検査を完了するのに要する時間は、12×2500=30000時間、つまり約3年半もの長年月を要することになってしまう。これは、明らかに非現実的な所要時間であると言わざるを得ない。ある
いは、検査装置を5台併置して、それらを並行して稼働させて検査を行ったとしても、約7〜8か月を要することとなる。
【0038】
しかし、それとは対照的に、本発明の実施例に係る半導体装置用テープキャリアの製造方法によれば、極めて短時間での全数検査(全数計測)が可能となった。
すなわち、この実施例では、上記の約20mmの長さに亘って配列形成されているバンプ2の列を、約7mmずつ、若干の重複部分を許して合計3つの計測対象領域4に分けて計測(検査)した。その計測プロセスに含まれている各ステップに要する時間は、1回の光照射での計測に要する時間を6秒、移動に要する時間を4秒と設定した。これらを3つの計測対象領域4のそれぞれに対して1回ずつ、合計3回行った。これらを単純に合計すると、1個のBOF当りの計測に要する時間は(6+4)×3=30秒となる。この値を用いた単純計算によれば、1ロット当り2500個のBOFの全数検査を完了するのに要する時間は、30×2500=75000秒、つまり約21時間ということになる。
但し、実際には、計測時に種々の外乱が入る場合や、計測対象のバンプ2に形状的な凹凸異常や配列の異常等が発生している場合もあり、それらの影響を受けて、1回の光照射による計測に要する時間や移動に要する時間は、上記の単純計算の値よりも長くなる。実際に、この実施例で行った実験では、1個のBOF当りの計測に要した時間は、約1分18秒であった。そして、1ロット当り2500個のBOFの全数検査を完了するのに要した時間は、約50時間であった。
このような実験結果から、本発明の実施例に係る半導体装置用テープキャリアの製造方法によれば、従来技術の場合の3年半と比較して、約50時間のような飛躍的に短時間での、極めて迅速な全数検査が可能となることが確認できた。
【0039】
あるいは、本発明の実施例で用いた高低差計測装置を複数、例えば5台併置して、それらを並行して稼働させて検査(計測)を行うようにすれば、上記の21時間をさらにその5分の1の約4時間程度に短縮せしめることができるというように、さらなる短時間での全数検査を実現することも可能である。
【0040】
このような本発明の実施例に係る半導体装置用テープキャリアの製造方法によれば、計測対象物の凹凸形状として例えば複数のバンプ2が配列形成された後に、そのバンプ2の配列形成された領域を含む二次元的な広がりを持つ計測対象領域4内の、バンプ2の全てのバンプ高さhを、一度の参照光11aの照射およびその反射光11bの検出によって、一括して計測するようにしたので、従来は例えば3年以上のような、凡そ非現実的な長年月を要するために実際上は極めて困難ないしは不可能であった、半導体装置用テープキャリアにおけるバンプ高さhの全数検査を、それよりも飛躍的に短時間に、例えば20時間程度で1ロットの全数検査を完了するというような、極めて高能率で実用的なスループットを以て、迅速に行うことが可能となる。
また、そのように全数検査を可能とすることによって、従来の抜き取り検査では不可能であった、過剰な製品廃棄(抜き取り検査によって各個片の製品としての品質保証をする場合には、たとえ1個だけでもバンプ高さhの不良が発見されたならば、そのロットにおける他の全ての個片(製品)を廃棄しなければならなくなる)を、根本的に完全に回避することが可能となり、また逆に、不良品のいわゆる見逃し流出(抜き取り検査の対象となった製品については偶々不良品ではなかったが、検査の対象とはならなかった個片(製品)のうちに不良品が存在する場合などもある)についても、根本的に完全に回避することが可能となる。
【0041】
なお、上記の実施の形態および実施例では、図示および詳述は省略したが、半導体装置用テープキャリア5の表面上にバンプ2を形成する実生産ライン内に、上記のような高低差計測装置を設置し、製造中の半導体装置用テープキャリア5におけるバンプ2のバンプ高さhのスペック管理やフィードバック制御等を行うようにすることなども可能である。
また、例えば、深さの許容上限値(許容最小値;Th-L)0.2mm、許容下限値(許
容最大値;Th-H)0.5mmのようなスペックの、ビア穴(図示省略)の深さなどにつ
いても、全数計測(全数検査)の対象とすることが可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 配線パターン
2 バンプ
3 絶縁性フィルム基材
4 計測対象領域
5 半導体装置用テープキャリア
10 参照光照射部
11a 参照光
11b 反射光
12 反射光検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性フィルム基材の表面上に、少なくとも配線パターンを形成する工程と、バンプを形成する工程とを含んだ半導体装置用テープキャリアの製造方法であって、
前記バンプの形成後、前記半導体装置用テープキャリアの表面上における前記バンプを含んだ所定の計測対象領域に参照光を照射し、当該参照光を前記計測対象領域における前記バンプを含んだ前記半導体装置用テープキャリアの表面上で反射させて得られる反射光を検出し、当該反射光の位相が前記バンプのバンプ高さに対応して変化することによって生じる位相変位量に基づいて、前記バンプのバンプ高さを計測する工程を、さらに含む
ことを特徴とする半導体装置用テープキャリアの製造方法。
【請求項2】
絶縁性フィルム基材の表面上に、少なくとも配線パターンを形成する工程と、バンプを形成する工程とを含んだ半導体装置用テープキャリアの製造方法であって、
前記バンプの形成後、前記半導体装置用テープキャリアの表面上における前記バンプを含んだ所定の計測対象領域に参照光を照射し、当該参照光を前記計測対象領域における前記バンプを含んだ前記半導体装置用テープキャリアの表面上で反射させて得られる反射光を検出し、当該反射光の到達時間が前記バンプのバンプ高さに対応して変化することによって生じる時間的変位量に基づいて、前記バンプのバンプ高さを計測する工程を、さらに含む
ことを特徴とする半導体装置用テープキャリアの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の半導体装置用テープキャリアの製造方法において、
前記光を、一度に二次元状の計測対象領域に照射して、当該計測対象領域内に含まれる複数のバンプの高さを前記一度の照射で計測する
ことを特徴とする半導体装置用テープキャリアの製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のうちいずれか1つの項に記載の半導体装置用テープキャリアの製造方法において、
前記光が、可視光、紫外光、赤外光、レーザ光、またはそれら以外の電磁波である
ことを特徴とする半導体装置用テープキャリアの製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のうちいずれか1つの項に記載の半導体装置用テープキャリアの製造方法において、
前記計測対象物が、配線パターンとそれに連なるバンプおよび/またはビア穴を有する、半導体装置用テープキャリアまたはプリント配線板であり、前記配線パターンおよび/または前記バンプおよび/または前記ビア穴の高さまたは深さである
ことを特徴とする半導体装置用テープキャリアの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate