説明

半導体装置用パッケージ

【課題】アイレットにリードを挿通して樹脂で封止した半導体装置用パッケージにおいて、アイレットと樹脂、及びリードと樹脂との密着性を向上させる。
【解決手段】アイレット10は、金属板をプレス加工することによりキャップ状に形成され、その内面には有機被膜11a、11bが形成されている。アイレット10に形成された貫通孔15に、リード12が挿通され、樹脂溶着されることによって樹脂部14が形成され、貫通孔15が封止されている。有機被膜11a,11bは、主鎖部の一方の端に金属に対する結合性を持つ第一官能基、他端に樹脂に対する結合性を持つ第二官能基を有する有機分子が、アイレット10の表面上に自己組織化して配列することによって形成された膜である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザー素子等を搭載する半導体装置用パッケージに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体レーザー素子等を搭載する半導体装置用パッケージとして、例えば特許文献1に開示されているように、金属板をプレス加工することによりキャップ状に形成したアイレットにリードを挿通してステム形状とした製品が知られている。
【0003】
図5は、この特許文献1に開示された半導体装置用パッケージの斜視図である。
当図に示す半導体装置用パッケージにおいて、リード112は、アイレット110に形成した挿通孔115に挿入され、樹脂溶着によってアイレット110に封着されている。樹脂部114は、リード112をアイレット110に電気的に絶縁した状態で固定し封着している樹脂である。アースリード113は、アイレット110に抵抗溶接されている。半導体レーザー素子116を支持する素子付け部117は、アイレット110の上面を切り起こした切片状に形成され、素子付け部117の側面に半導体レーザー素子116が接合されている。
【0004】
樹脂部114として、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、またはポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリフタルアミド樹脂、液晶ポリエステル樹脂などの熱可塑性樹脂、あるいはシリカ粉末が混入されたシリコーン樹脂が用いられる。
【0005】
ここで、アイレット110と樹脂部114との間で熱膨張係数に差があり、温度変化による膨張・収縮により、アイレット110と樹脂部114の接合部で剥離が生じ得る。
そこで、上記の半導体装置用パッケージにおいては、アイレット110から樹脂部114が引き抜けるのを防止するために、アイレット110には係止溝が形成されている。
【0006】
図6(a)は、上記アイレット110の断面図、図6(b)は、アイレット110の下面図、図6(c)は図6(a)における○部分の拡大図である。図7は、上記半導体装置用パッケージの断面図である。
【0007】
図6に示すように、アイレット110の内側面118には、係止溝111aが多数本形成され、アイレット110の内底面119には、係止溝111bが多数本形成されている。
【0008】
このような係止溝を形成することによって、リード112及びアースリード113とアイレット110とを封着する樹脂部114が、この係止溝111a、111bに入り込んで、樹脂部114とアイレット110とが係合しているので、樹脂部114がアイレット110から脱落するのを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3714862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のように、アイレットに係止溝を形成することは、封止樹脂が脱落するのを防止する効果は奏するが、アイレットと樹脂との界面には僅かながら間隙が生じ易く、その間隙に外部雰囲気からの水分やガスが内部に侵入する。
【0011】
水分やガスが内部に侵入すると、半導体装置用パッケージが実装時や実装後に受ける発熱や加熱によって、間隙に侵入した水分が膨張し間隙が拡大したり、水蒸気爆発が発生してパッケージが破壊する可能性もある。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するもので、アイレットにリードを挿通して樹脂で封止した半導体装置用パッケージにおいて、アイレットと樹脂、及びリードと樹脂との密着性を向上させることによって、その信頼性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明の半導体装置用パッケージは、金属リードと、金属リードを挿通する挿通孔が形成されたアイレットとを備え、金属リードが挿通されたアイレットが樹脂によって封着されてなり、アイレットと樹脂とを、主鎖部の一端に金属に対する結合性を持つ官能基を有し、他端に樹脂に対する結合性を持つ官能基を有する機能性有機分子からなる第1有機被膜を介して接合することとした。
【0014】
上記半導体装置用パッケージにおいて、さらに、金属リードと樹脂とを、主鎖部の一端に金属に対する結合性を持つ官能基を有し、他端に樹脂に対する結合性を持つ官能基を有する機能性有機分子からなる第2有機被膜を介して接合してもよい。
【0015】
上記第1有機被膜、並びに第2有機被膜を構成する機能性有機分子において、主鎖部は、メチレン鎖、フルオロメチレン鎖、シロキサン鎖、グリコール鎖又はそれらの誘導体から選択される一種以上を含むことが好ましく、金属に対する結合性を有する官能基は、チオール及びこれを含むチオール化合物、スルフィド化合物、含窒素複素環化合物、又はそれらの誘導体から選択される一種以上を含むことが好ましく、樹脂に対する結合性を有する官能基は、水酸基を有する化合物、カルボン酸を有する化合物、酸無水物を有する化合物、第一級アミンを有する化合物、第二級アミンを有する化合物、第三級アミンを有する化合物、第四級アンモニウム塩を有する化合物、アミド基を有する化合物、イミド基を有する化合物、ヒドラジド基を有する化合物、イミン基を有する化合物、アミジン基を有する化合物、イミダゾールを有する化合物、トリアゾールを有する化合物、テトラゾールを有する化合物、チオール基を有する化合物、スルフィド基を有する化合物、ジスルフィド基を有する化合物、ジアザビシクロアルケンを有する化合物、有機フォスフィン化合物、有機フォスフィン化合物三フッ化ホウ素アミン錯体、ビニル基、有機ハイドロジェンシラン又はそれらの誘導体から選択される一種類以上を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
上記本発明の半導体装置用パッケージによれば、アイレットと樹脂とが第1有機被膜を介して接合されているので、アイレットと樹脂との界面は化学結合によって強く接合される。
【0017】
従って、この界面は密着性が良好であって間隙発生が抑えられ、外部雰囲気からの水分やガスが内部に侵入するのを防止するので、半導体装置用パッケージの信頼性を向上することができる。
【0018】
また、上記本発明の半導体装置用パッケージにおいて、リードと樹脂とを第2有機被膜を介して接合すれば、このリードと樹脂との界面においても間隙発生が抑えられ、水分やガスが内部に侵入するのを防止するので、信頼性をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施の形態1にかかる半導体装置用パッケージに使用するアイレットの断面図及び下面図である。
【図2】実施の形態1にかかる半導体装置用パッケージの断面図である。
【図3】実施の形態1にかかる有機被膜の構造モデルである。
【図4】実施の形態2にかかる半導体装置用パッケージを示す断面図である。
【図5】従来例にかかる半導体装置用パッケージの斜視図である。
【図6】従来例にかかる半導体装置用パッケージに使用するアイレットの断面図及び下面図である。
【図7】従来例にかかる半導体装置用パッケージの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1にかかる半導体装置用パッケージに使用するアイレットの断面図及び下面図である。
【0021】
図1に示すように、アイレット10は、金属板をプレス加工することによりキャップ状に形成され、その内面には第1有機被膜としての有機被膜11(有機被膜11a,11b)が形成されている。金属板の材料としては、鉄−ニッケル合金で、その表面にニッケルめっきを施したものを挙げることができる。
【0022】
有機被膜11aは、アイレット10の内側面18に形成された有機被膜11、有機被膜11bはアイレット10の内底面19に形成された有機被膜11である。
図2は、実施の形態1にかかる半導体装置用パッケージの断面図である。
【0023】
なお、この半導体装置用パッケージの外観は、上記図5に示したものと同様である。
図2に示すように、アイレット10に形成された貫通孔15に、リード12が挿通され、アイレット10の内側が樹脂で溶着されることによって樹脂部14が形成され、貫通孔15が封止されている。
【0024】
樹脂部14は、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、またはポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリフタルアミド樹脂、液晶ポリエステル樹脂などの熱可塑性樹脂、あるいはシリカ粉末が混入されたシリコーン樹脂を用いることができる。
【0025】
この樹脂部14によってリード12はアイレット10に固定されている。またアースリード13はアイレット10に抵抗溶接され、ステム形状となっている。リード12を構成する材料は、例えば、銅又は銅合金である。
【0026】
アイレット10の上面は、切片状に切り起こされて素子付け部17が形成されている。 このような半導体パッケージにおいて、素子付け部17の側面に、半導体レーザー素子16がマウントされる。
【0027】
図3は、有機分子30が配列された有機被膜11の構造モデル図である。
図3に示されるように、アイレット10と樹脂部14とは有機被膜11を介して接合されている。
【0028】
有機被膜11は、主鎖部32の一方の端に金属に対する結合性を持つ第一官能基31、他端に樹脂に対する結合性を持つ第二官能基33を有する有機分子30が、アイレット10の表面上に自己組織化して配列することによって形成された膜である。
【0029】
すなわち、有機分子30は、第一官能基31、主鎖部32、第二官能基33が同順に結合されてなり、主鎖部32は、グリコール鎖、メチレン鎖、フルオロメチレン鎖、シロキサン鎖等から構成される。なお、主鎖部32には適宜側鎖が結合されていてもよい。
【0030】
第一官能基31は、金属との結合性を呈する化学構造体で構成された機能部である。
第二官能基33は、樹脂との結合作用を呈する化学構造体で構成された機能部である。
有機被膜11を構成する各有機分子30の第一官能基31は、アイレット10の内面に存在する金属と結合し、各有機分子30の第二官能基33は、樹脂部14の樹脂と結合している。
【0031】
(半導体パッケージの製造方法)
まず、アイレット10の内面に有機被膜11を形成する。
この工程では、有機分子30を所定の溶媒に分散させて、分散液を作製する。溶媒としては、有機溶媒,水またはその混合物が用いられる。溶媒に水を用いる際には、機能性有機分子の分散性を得るため、必要に応じてアニオン系、カチオン系またはノニオン系の界面活性剤を添加してもよい。さらに機能性有機分子を安定化させるため、ホウ酸系やリン酸系のpH緩衝剤、酸化防止剤等を添加しても良い。
【0032】
そして、分散液中に、アイレット10を浸漬させる。分散液中では、有機分子30は、比較的高いギブス自由エネルギーを有し、単分子毎に互いに反発するように相互作用することによって、ランダムな運動(所謂ブラウン運動)をしている。
【0033】
この分散液中に、アイレット10を浸漬すると、分散液中の有機分子30は、より安定な状態に移行しようとして、その第一官能基31が、アイレット10の表面に存在する金属と結合し、図3に示すように各有機分子30が、アイレット10の表面上に自己組織化して配列される。各有機分子30は、アイレット10の表面に第一官能基31が配向して結合するので、主鎖部32の他方末端に配された第二官能基33は反対側に向けて配向される。これにより、分子配向性に係る化学特性(相互親和性)が整えられ、いわゆる自己組織化構造体としての単分子膜(有機被膜11)が形成される。当該有機被膜11の膜厚は、有機分子30の大きさに依存し、ここでは数nmオーダーに調整される。
【0034】
アイレット10を分散液から引き上げれば、アイレット10の内面に有機被膜11が形成されたアイレット10が得られる。
なお、アイレット10の内面上に有機被膜11を形成する方法として、上記のような浸漬法に限らず、例えば、分散液を噴き付け等の方法でアイレット10の内面に付着させる方法を用いてもよい。
【0035】
このように有機被膜11を形成したアイレット10に、アースリード13を接合し、アイレット10の貫通孔15に、リード12を挿通し、樹脂溶着して樹脂部14を形成する。
【0036】
樹脂部14を形成する焼成温度は、概ね150〜300℃程度とすることができ、熱硬化性の樹脂を用いれば、アイレット10及びリード12にめっきを施した後に、リード112をアイレット110に封着することが可能である。
【0037】
以上のようにして、半導体パッケージが作製できる。
(本実施形態にかかる半導体パッケージによる効果)
本実施形態の半導体パッケージによれば、有機被膜11はアイレット10の内面上に緻密に密着して形成され、樹脂部14を形成する樹脂は、有機被膜11を構成する有機分子30の第二官能基33と結合する。
【0038】
従って、上記のように有機被膜11を構成する各有機分子30を介して、アイレット10と樹脂部14とが化学的結合力で接合されるため、アイレット10と樹脂部14との界面で間隙が発生することがない。
【0039】
よって、外部雰囲気からの水分やガスが、半導体パッケージの内部に侵入するのを防止するので、半導体装置用パッケージの信頼性を向上することができる。
また、有機被膜11は緻密であり、アイレット10の金属材料を保護することができるので、酸素ガスや水分付着によるアイレット10の腐食を防止する機能も有する。
【0040】
(リード12表面への有機被膜形成について)
本実施形態の半導体パッケージにおいて、上記のようにアイレット10の内面に第1有機被膜(有機被膜11)を形成するのに加えて、リード12の表面にも有機被膜11と同じ有機被膜を、第2有機被膜として形成してもよい。
【0041】
この場合、リード12の表面と樹脂部14との界面も第2有機被膜によって接合されるので、リード12の表面と樹脂部14との密着性も向上する。
従って、外部雰囲気からの水分やガスが、半導体パッケージの内部に侵入するのを防止する効果が向上し、さらに信頼性のある半導体装置用パッケージを実現することができる。
【0042】
以下、第1有機被膜及び第2有機被膜を形成する有機分子30が取り得る化学的構造について、さらにその詳細を説明する。
(第一官能基31について)
第一官能基31には、金属材料に対する親和性、金属結合性(配位結合を含む)、金属結合性を有することが要求される。この特性を有するものであれば、第一官能基31は、一種以上を含む化合物、化学構造体若しくは誘導体のいずれであってもよい。
【0043】
例えばチオール及びこれを含むチオール化合物、スルフィド化合物(ジスルフィド化合物等)、含窒素複素環化合物(アゾール化合物、アジン化合物等)、またはこれらの一種以上を含む化合物、化学構造体若しくは誘導体のいずれかであれば、金属原子に対して水素結合性又は配位結合性を有するので好適である。
【0044】
第一官能基31がチオール基(R−SH、ただし、Rはアルカンやアルケン等の任意の官能基)を有する場合、金(Au)や銀(Ag)など1価以上の陽イオンになりうる金属原子に配位し、Au−S−R又はAg−S−R等の共有結合により、有機分子30がアイレット10に被着される。同様に、第一官能基31がジスルフィド基(R1−S−S−R2)の場合、Au(−S−R1)(−S−R2)又はAg(−S−R1)(−S−R2)等の共有結合がなされ、強固な結合構造が形成される。
【0045】
第一官能基31が、アゾール化合物、アジン化合物を含む場合は、当該化合物をなす分子中の窒素原子の非共有電子対が2価以上の陽イオンになりうる金属に配位結合できる。例えば、イミダゾール化合物、トリアゾール化合物、トリアジン化合物等は、主にCu、Fe,Ni等の金属と配位結合を形成しやすいため好適である。
【0046】
上記化合物の種類によっては、共有結合や配位結合または水素結合等が同時に形成され得るが、このような複数種類の結合がなされることで、より強固な結合構造を期待できる。
(主鎖部32について)
主鎖部32は、一般的なメチレン系有機分子及びその類型種(メチレン鎖、フルオロメチレン鎖、シロキサン鎖、グリコール鎖、窒素を含有する含窒素複素環系有機分子及びその類型種(ピロール、イミダソール、トリアゾール、テトラゾール、チアジアゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアジンのうち一種以上を含む化合物、化学構造体若しくは誘導体)、アリール骨格(フェニル、ビフェニル、ターフェニル、クオターフェニル、キンキフェニル、セキシフェニル)、アセン骨格(ナフタレン、アントラセン、ナフタセン、ペンタセン)、ピレン骨格、フェナントレン骨格、フルオレン骨格、またはそれらの誘導体を含む芳香族化合物を用いることができる。
【0047】
主鎖部32を構成する鎖状の炭素数は4〜40程度が好適である。この鎖状炭素数が小さ過ぎると主鎖部32が短すぎ、第一官能基31がアイレット10に被着する際に複数の上記有機分子30間において、主鎖部32の有する疎水性によって当該分子同士の疎水的親和作用が弱くなり、第二官能基33の外方への配向性が失われ易くなる。
【0048】
メチレン鎖は、分子間で互いに会合し、超分子的に炭化水素鎖の緻密な炭素鎖を形成できるので好適である。また、メチレン鎖を用いれば、比較的迅速に有機被膜を形成できることが発明者らの検討により明らかにされている。
【0049】
主鎖部32にフルオロメチレン鎖を用いた場合、疎水性がメチレン鎖よりも強いため、有機被膜形成後にはアイレット10と当該被膜との間への水分の浸入が強く抑制される。その結果、有機被膜とアイレット10との良好な結合が保たれ、熱履歴によって有機被膜の剥離が生じにくくなるので好適である。
【0050】
主鎖部32にシロキサン鎖を用いた場合、耐熱性および耐候性に優れる有機被膜を形成できる。このため、例えば半導体素子等の実装工程において、有機被膜が比較的高温環境下に曝された場合にも、当該被膜自体の変質・損傷の防止効果が奏される。
【0051】
主鎖部32にグリコール鎖を用いた場合、水等の極性溶媒に簡単に溶解させることができるので、有機被膜を形成する上で利点を有する。
従って、主鎖部32に、グリコール鎖を用いること、あるいは、メチレン鎖、フルオロメチレン鎖、シロキサン鎖の一種以上とグリコール鎖とで構成された構造を用いることも好ましい。
【0052】
主鎖部32が含窒素複素環化合物の場合、化合物自身の耐熱性が高く、第一官能基31と金属との結合の熱安定性を向上させる事ができるので好適である。
含窒素複素環化合物として、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアジアゾール等の五員環化合物を用いれば、有機被膜を形成した後に熱履歴を加えた場合、金属内部から表面拡散しようとする金属と窒素原子中の非共有電子対が表面で錯体を形成する事により拡散金属の最表面への露出をブロックする事が発明者らの検討により明らかにされている。
【0053】
また、含窒素複素環化合物として、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアジン等の六員環化合物を用いた場合、化学構造上、第一官能基31を2つ結合させる事が可能である為、第一官能基の結合力を五員環化合物の2倍相当にすることが可能となり、有機被膜自身の結合安定性を更に強くできる。その結果、有機被膜とアイレット10との良好な結合が保たれ、熱履歴によって有機被膜の剥離が生じにくくなるので好適である。更に、有機被膜11において隣接する有機分子30の主鎖部32同士の間に、強力な相互結合作用(水素結合やロンドン分散力によるスタッキング効果)が発揮され、これによって有機被膜11体を強化することが可能となる。すなわち、高温環境下における有機被膜11の飛散がこの相互結合作用によって防止されるので、有機被膜11の耐熱性を飛躍的に向上させることができる。
【0054】
主鎖部32がアリール骨格の場合、芳香族環の数が増えるほど主鎖部32同士の間に、強力な相互結合作用(ロンドン分散力によるπ-πスタッキング効果)が発揮され、さらに機能性分子自身の融点が高くなる為、有機被膜の熱安定性が著しく向上する。
【0055】
また、主鎖部32がアセン骨格の場合、芳香環の数が増えるほどアリール骨格より強固な主鎖部32同士の間の相互結合作用が発揮される。それにより有機被膜11における腐食性ガスや水分の透過性を減少させることができる。
【0056】
(第二官能基33について)
第二官能基33は、樹脂に対する結合性を有する化学構造体であればよい。
例えば、水酸基を有する化合物、カルボン酸を有する化合物、酸無水物を有する化合物、第一級アミンを有する化合物、第二級アミンを有する化合物、第三級アミンを有する化合物、第四級アンモニウム塩を有する化合物、アミド基を有する化合物、イミド基を有する化合物、ヒドラジド基を有する化合物、イミン基を有する化合物、アミジン基を有する化合物、イミダゾールを有する化合物、トリアゾールを有する化合物、テトラゾールを有する化合物、チオール基を有する化合物、スルフィド基を有する化合物、ジスルフィド基を有する化合物、ジアザビシクロアルケンを有する化合物、有機フォスフィン化合物、有機フォスフィン化合物三フッ化ホウ素アミン錯体、ビニル基、有機ハイドロジェンシラン、若しくはこれらの誘導体の内、一種類以上を含む化学構造体を用いることができる。
【0057】
第二官能基33が酸無水物である無水フタル酸の場合には、エポキシ樹脂の硬化剤として作用し、エポキシ樹脂中のエポキシ基に対して開環重合により結合する。
また、第二官能基33がビニル基の場合にはシリコーン樹脂の硬化剤として作用し、シリコーン樹脂のハイドロジェンシランに対して付加重合により結合する。
【0058】
[実施の形態2]
図4は、実施の形態2にかかる半導体装置用パッケージを示す断面図である。
本実施形態にかかる半導体装置用パッケージでは、アイレット20が厚みのある円板形状であって、これを貫通する貫通孔25が形成されている。そして、この貫通孔25の孔側面に第1有機被膜として有機被膜21が形成されている。この有機被膜21は、実施の形態1で説明した有機被膜と同様のものである。
【0059】
貫通孔25には、リード22が挿通され、アイレット20は樹脂部24によって封着されている。また、アイレット20にはアースリード23が抵抗溶接されている。
半導体レーザー素子26を支持する素子付け部27は、アイレット20の上面に形成され、素子付け部27の側面に半導体レーザー素子26が接合するようになっている。
【0060】
このような構成の半導体装置用パッケージにおいても、アイレット20と樹脂部24とは、貫通孔25の内面に形成された有機被膜21を介して接合されているので、アイレット20と樹脂部24との密着性が向上される。
【0061】
従って、アイレット20と樹脂部24との界面に間隙が発生することがなく、信頼性のある半導体装置用パッケージとすることができる。
また、本実施形態においても、アイレット20の貫通孔25の内面に第1有機被膜(有機被膜21)を形成するのに加えて、リード22の表面にも有機被膜21と同じ有機被膜を、第2有機被膜として形成してもよい。
【0062】
これによって、リード12の表面と樹脂部14との界面が第2有機被膜によって接合されるので、リード12の表面と樹脂部14との密着性も向上する。従って、外部雰囲気からの水分やガスが、半導体パッケージの内部に侵入するのを防止する効果が向上し、より信頼性のある半導体装置用パッケージを実現することができる。
【0063】
以上、実施の形態1,2にかかる半導体装置用パッケージについて説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明によれば、耐熱性及び樹脂の剥離強度といった所定の規格を満足出来る信頼性の高い半導体装置用パッケージを実現することができ、光半導体装置用のパッケージとして適している。
【符号の説明】
【0065】
10 アイレット
11 有機被膜
12 リード
13 アースリード
14 樹脂部
15 貫通孔
16 半導体レーザー素子
17 素子付け部
18 内側面
19 内底面
20 アイレット
21 有機被膜
22 リード
23 アースリード
24 樹脂部
25 貫通孔
26 半導体レーザー素子
27 素子付け部
30 有機分子
31 第一官能基
32 主鎖部
33 第二官能基

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属リードと、前記金属リードを挿通する挿通孔が形成されたアイレットとを備え、前記金属リードが挿通されたアイレットが樹脂によって封着されてなる半導体装置用パッケージであって、
前記アイレットと前記樹脂とが、
主鎖部の一端に金属に対する結合性を持つ官能基を有し、他端に樹脂に対する結合性を持つ官能基を有する機能性有機分子からなる第1有機被膜を介して接合されている半導体装置用パッケージ。
【請求項2】
前記第1有機被膜を構成する機能性有機分子において、
前記主鎖部は、
メチレン鎖、フルオロメチレン鎖、シロキサン鎖、グリコール鎖又はそれらの誘導体から選択される一種以上を含み、
前記金属に対する結合性を有する官能基は、
チオール及びこれを含むチオール化合物、スルフィド化合物、含窒素複素環化合物又はそれらの誘導体から選択される一種以上を含み、
前記樹脂に対する結合性を有する官能基は、
水酸基を有する化合物、カルボン酸を有する化合物、酸無水物を有する化合物、第一級アミンを有する化合物、第二級アミンを有する化合物、第三級アミンを有する化合物、第四級アンモニウム塩を有する化合物、アミド基を有する化合物、イミド基を有する化合物、ヒドラジド基を有する化合物、イミン基を有する化合物、アミジン基を有する化合物、イミダゾールを有する化合物、トリアゾールを有する化合物、テトラゾールを有する化合物、チオール基を有する化合物、スルフィド基を有する化合物、ジスルフィド基を有する化合物、ジアザビシクロアルケンを有する化合物、有機フォスフィン化合物、有機フォスフィン化合物三フッ化ホウ素アミン錯体、ビニル基、有機ハイドロジェンシラン、又はそれらの誘導体から選択される一種類以上を含むことを特徴とする請求項1記載の半導体装置用パッケージ。
【請求項3】
前記金属リードと前記樹脂とが、
主鎖部の一端に金属に対する結合性を持つ官能基を有し、他端に前記樹脂に対する結合性を持つ官能基を有する機能性有機分子からなる第2有機被膜を介して接合されている請求項1又は2記載の半導体装置用パッケージ。
【請求項4】
前記第2有機被膜を構成する機能性有機分子において、
前記主鎖部は、
メチレン鎖、フルオロメチレン鎖、シロキサン鎖、グリコール鎖又はそれらの誘導体から選択される一種以上を含み、
前記金属に対する結合性を有する官能基は、
チオール及びこれを含むチオール化合物、スルフィド化合物、含窒素複素環化合物又はそれらの誘導体から選択される一種以上を含み、
前記樹脂に対する結合性を有する官能基は、
水酸基を有する化合物、カルボン酸を有する化合物、酸無水物を有する化合物、第一級アミンを有する化合物、第二級アミンを有する化合物、第三級アミンを有する化合物、第四級アンモニウム塩を有する化合物、アミド基を有する化合物、イミド基を有する化合物、ヒドラジド基を有する化合物、イミン基を有する化合物、アミジン基を有する化合物、イミダゾールを有する化合物、トリアゾールを有する化合物、テトラゾールを有する化合物、チオール基を有する化合物、スルフィド基を有する化合物、ジスルフィド基を有する化合物、ジアザビシクロアルケンを有する化合物、有機フォスフィン化合物、有機フォスフィン化合物三フッ化ホウ素アミン錯体、ビニル基、有機ハイドロジェンシラン、又はそれらの誘導体から選択される一種類以上を含むことを特徴とする請求項1記載の半導体装置用パッケージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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