説明

半導体装置用ボンディングワイヤ

【課題】 本発明は、パワーIC用途の太径や、低コストを優先する半導体等に、材料費が安価で、ボール接合性、ウェッジ接合性、ループ制御、チップ損傷等に優れた、半導体素子用銅ボンディングワイヤを提供することを目的とする。
【解決手段】 銅を主成分とする芯材と、該芯材の上に芯材と異なる組成の導電性金属及び銅を主成分とする外皮層を有するボンディングワイヤであって、前記外皮層の厚さが0.01μm未満であること、及び、前記外皮層内においてワイヤ径方向に導電性金属の濃度勾配を有する領域の厚さが0.01μm未満であることを、特徴とする半導体装置用ボンディングワイヤである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子上の電極と回路配線基板(リードフレーム、基板、テープ)の配線とを接続するために利用される半導体装置用ボンディングワイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、半導体素子上の電極と外部端子との間を接合するボンディングワイヤとして、線径20〜50μm程度の細線(ボンディングワイヤ)が主として使用されている。ボンディングワイヤの接合には超音波併用熱圧着方式が一般的であり、汎用ボンディング装置、ワイヤをその内部に通して接続に用いるキャピラリ冶具等が用いられる。ワイヤ先端をアーク入熱で加熱溶融し、表面張力によりボールを形成させた後に、150〜300℃の範囲内で加熱した半導体素子の電極上に、このボール部を圧着接合せしめ、その後で、直接ワイヤを外部リード側に超音波圧着により接合させる。
【0003】
近年、半導体実装の構造・材料・接続技術等は急速に多様化しており、例えば、実装構造では、現行のリードフレームを使用したQFP(Quad Flat Packaging)に加え、基板、ポリイミドテープ等を使用するBGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Scale Packaging)等の新しい形態が実用化され、ループ性、接合性、量産使用性等をより向上したボンディングワイヤが求められている。そうしたワイヤの接続技術でも、現在主流のボール/ウェッジ接合の他に、狭ピッチ化に適したウェッジ/ウェッジ接合では、2ヶ所の部位で直接ワイヤを接合するため、細線の接合性の向上が求められる。
【0004】
ボンディングワイヤの接合相手となる材質も多様化しており、シリコン基板上の配線、電極材料では、従来のAl合金に加えて、より微細配線に好適なCuが実用化されている。また、リードフレーム上には、Agメッキ、Pdメッキ等が施されており、また、樹脂基板、テープ等の上には、Cu配線が施され、その上に金等の貴金属元素及びその合金の膜が施されている場合が多い。こうした種々の接合相手に応じて、ワイヤの接合性、接合部信頼性を向上することが求められる。
【0005】
ボンディングワイヤの素材は、これまで高純度4N系(純度>99.99mass%)の金が主に用いられている。しかし、金は高価であるため、材料費が安価である他種金属のボンディングワイヤが所望されている。
【0006】
ワイヤボンディング技術からの要求では、ボール形成時に真球性の良好なボールを形成し、そのボール部と電極との接合部で十分な接合強度を得ることが重要である。また、接合温度の低温化、ワイヤの細線化等に対応するためにも、回路配線基板上の配線部にワイヤをウェッジ接続した部位での接合強度、引張り強度等も必要である。
【0007】
高粘性の熱硬化エポキシ樹脂が高速注入される樹脂封止工程では、ワイヤが変形して隣接ワイヤと接触することが問題となり、しかも、狭ピッチ化、長ワイヤ化、細線化も進む中で、樹脂封止時のワイヤ変形を少しでも抑えることが求められている。ワイヤ強度の増加により、こうした変形をある程度コントロールすることはできるものの、ループ制御が困難となったり、接合時の強度が低下する等の問題が解決されなくては実用化は難しい。
【0008】
こうした要求を満足するワイヤ特性として、ボンディング工程におけるループ制御が容易であり、しかも電極部、リード部への接合性も向上しており、ボンディング以降の樹脂封止工程における過剰なワイヤ変形を抑制すること等の、総合的な特性を満足することが望まれている。
【0009】
材料費が安価で、電気伝導性に優れ、ボール接合、ウェッジ接合等も高めるために、銅を素材とするボンディングワイヤが開発され、特許文献1等が開示されている。しかし、銅のボンディングワイヤでは、ワイヤ表面の酸化により接合強度が低下することや、樹脂封止されたときのワイヤ表面の腐食等が起こり易いことが問題となる。これが銅のボンディングワイヤの実用化が進まない原因ともなっている。
【0010】
そこで、銅ボンディングワイヤの表面酸化を防ぐ方法として、特許文献2には、金、銀、白金、パラジウム、ニッケル、コバルト、クロム、チタン等の貴金属や耐食性金属で銅を被覆したワイヤが提案されている。また、ボール形成性、メッキ液の劣化防止等の点から、特許文献3には、銅を主成分とする芯材、該芯材上に形成された銅以外の金属からなる異種金属層、及び該異種金属層の上に形成され、銅よりも高融点の耐酸化性金属からなる被覆層の構造をしたワイヤが提案されている。
【0011】
【特許文献1】特開昭61−99645号公報
【特許文献2】特開昭62−97360号公報
【特許文献3】特開2004−64033号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
銅ボンディングワイヤの実用上の問題として、ワイヤ表面が酸化し易いこと、接合強度が低下すること等が起こり易いことが挙げられる。そこで、銅ボンディングワイヤの表面酸化を防ぐ手段として、ワイヤ表面に貴金属や耐酸化性の金属を被覆することが可能である。
【0013】
半導体実装の高密度化、小型化、薄型化等のニーズを考慮して、本発明者らが評価したところ、銅ボンディングワイヤの表面を銅と異なる金属で覆った構造の従来の複層銅ワイヤ(以下、従来複層銅ワイヤと記す)では、後述するような実用上の問題が多く残されていることが判明した。
【0014】
従来複層銅ワイヤの先端にボールを形成した場合、真球からずれた扁平ボールが形成されたり、ボール内部に溶融されないワイヤが残ることが問題となる。こうした正常でないボール部を電極上に接合すると、接合強度の低下、チップ損傷等の問題を起こす原因となる。
【0015】
従来複層銅ワイヤで複雑なループ制御等を実施すると、被覆層と銅との界面で剥離すること等で、ループ形状が不安定になったり、狭ピッチ接続では隣接ワイヤが電気的ショートを起こすことが懸念される。
【0016】
今後銅ワイヤの実用化を推進するには、パワーIC用途で金ワイヤではあまり用いられない50μm径以上の太線、一方で、銅の高導電性を活用する20μm径以下の細線に十分適応し、特性では、太線の接合性向上、狭ピッチの小ボール接合、低温接合、積層チップ接続の逆ボンディング等、より厳しい要求への適応が必要となる。
【0017】
そこで、本発明では、上述するような従来技術の問題を解決して、ボール部の形成性、接合性を改善し、ループ制御性も良好であり、ウェッジ接続の接合強度を高め、工業生産性にも確保し、金ワイヤよりも安価な銅を主体とするボンディングワイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
(1) 銅を主成分とする芯材と、該芯材の上に芯材と成分又は組成の一方又は両方の異なる導電性金属と銅を含有する外皮層を有するボンディングワイヤであって、前記外皮層の厚さが0.001〜0.02μmであることを特徴とする半導体装置用ボンディングワイヤ。
(2) 前記外皮層内において、ワイヤ径方向に銅以外の導電性金属の濃度勾配を有する領域の厚さが0.001〜0.02μmである前記(1)に記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。
(3) 前記外皮層内において、銅以外の導電性金属濃度が20mol%以上である領域の厚さが0.001〜0.008μmである前記(1)又は(2)に記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。
(4) 前記外皮層内において、銅以外の導電性金属濃度が40mol%以上である領域の厚さが0.001〜0.006μmである前記(1)又は(2)に記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。
(5) 前記外皮層の表面側において、ワイヤ径方向の銅以外の導電性金属濃度が一定の領域の厚さが0.007μm以下である前記(1)〜(4)のいずれかに記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。
(6) 銅を主成分とする芯材と、該芯材の上に芯材と成分又は組成の一方又は両方の異なる導電性金属と銅を含有する外皮層を有するボンディングワイヤであって、前記外皮層内では銅以外の導電性金属の最高濃度が40mol%未満であり、ワイヤ径方向に銅以外の導電性金属の濃度勾配を有しており、外皮層の厚さが0.001〜0.02μmの範囲であることを特徴とする半導体装置用ボンディングワイヤ。
(7) 銅を主成分とする芯材と、該芯材の上に芯材と成分又は組成の一方又は両方の異なる導電性金属と銅を含有する外皮層を有するボンディングワイヤであって、最表面の銅濃度が50〜95mol%の範囲で、前記外皮層内にワイヤ径方向に銅の濃度勾配を有しており、外皮層の厚さが0.001〜0.02μmの範囲であることを特徴とする半導体装置用ボンディングワイヤ。
(8) 前記外前記外皮層の表面で導電性金属又は銅が濃度偏重を有することを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれかに記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。
(9) 前記外皮層の結晶粒界に銅が濃化していることを特徴とする前記(1)〜(4)、(6)、(7)のいずれかに記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。
(10) 前記外皮層又は前記外皮層を構成する導電性金属が、金、パラジウム、白金、銀又はニッケルから選ばれる1種以上を主成分とする前記(1)〜(7)のいずれかに記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。
(11) ワイヤ全体に占める銅以外の導電性金属濃度が総計で0.002〜0.3mol%の範囲である前記(1)〜(10)のいずれかに記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。
(12) 前記銅を主成分とする芯材が、Ba、Ca、Sr、Be、Al又は希土類元素から選ばれる1種以上の添加元素を含有し、ワイヤ全体に占める該添加元素濃度が総計で0.0001〜0.03質量%の範囲である前記(1)、(6)又は(7)のいずれかに記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。
(13) 前記銅を主成分とする芯材が、Ag、Pt、Pd、Sn又はZnの1種以上の添加元素を含有し、ワイヤ全体に占める該添加元素濃度が総計で0.01〜0.3mol%の範囲である前記(1)〜(6)又は(7)のいずれかに記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。
本発明において、導電性金属には銅は含まれない。
【発明の効果】
【0019】
本発明の半導体装置用ボンディングワイヤにより、材料費が安価で、ボール接合性、ワイヤ接合性等に優れ、ループ形成性も良好である、狭ピッチ用細線化、パワー系IC用途の太径化にも適応する銅系ボンディングワイヤを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
ボンディングワイヤについて、銅を主成分とする芯材と、導電性金属を含有する被覆層で構成されたものを検討した結果、ワイヤの表面近傍に導電性金属を含有することにより、ウェッジ接合性の向上、酸化防止等が期待できる反面、ボールの不安定形成、ボール接合時のチップ損傷、ループ形状のばらつき等の不具合が発生する場合があることが判明した。そこで、従来の汎用的なニーズに加え、太線の接続、狭ピッチの小ボール接合、低温接合、積層チップ接続の逆ボンディング等の新たな実装ニーズ、製造マージン拡大等、量産適応性の更なる向上等に対応できる銅ワイヤの開発に取り組むことで、導電性金属層、濃度勾配の領域等の厚さ、濃度分布等の制御が有効であることを見出した。
【0021】
即ち、本発明の第一は、銅を主成分とする芯材と、該芯材の上に芯材と成分又は組成の一方又は両方の異なる導電性金属と銅を含有する外皮層を有し、前記外皮層の厚さが0.001〜0.02μmである半導体装置用ボンディングワイヤである。
【0022】
外皮層の厚さが0.02μm以下である理由は、外皮層厚さが0.02μm超では、ボール先端に溶け残りや、扁平ボール等の不良発生により、ボールの真球性が急激に低下するためである。この原因は、アーク放電時の、外皮層と芯部との溶解挙動の違いに起因するものと考えられる。ボール形状は外皮層の厚さと密接に関連しており、0.02μmをほぼ境に変化し、0.02μm以下であれば、両立が困難とされていたボール形成性と接合性の両方を満足できることを明らかした。さらに、ボール径が小さくなっても真球性を安定確保するには、外皮層の厚さが0.015μm以下であることが好ましい。さらに、より好ましくは、0.01μm以下であれば、ボール部の硬化を抑えて、ボール部直下のチップ損傷を低減する高い効果が得られる。また、厚さの下限について、0.001μm以上であれば先述したボール形成の改善効果が得られるためである。
【0023】
導電性金属とは、銅以外の金属であり、銅の酸化防止に効果がある金属であることが望ましい。導電性金属として、金、パラジウム、白金、銀、ニッケルの少なくとも1種の金属であることが好ましい。中でも、金、パラジウム、白金、銀は、導電性も十分であり、半導体デバイスの高速化にも対応できるため好ましい。また、金は、封止樹脂との密着性、電極への接合性等に実績が多く、品質管理も容易である等の利点がある。銀は、比較的安価であり、表面酸化は少なく、フレームの表面に多用されるAgメッキとの良好な接合性も得られる等の利点があるためである。パラジウム、白金は、ボール形状を安定化させる効果がある。
【0024】
外皮層は、銅と導電性金属を含有する合金から構成され、さらに、外皮層内部に導電性金属が濃度勾配を有する薄い領域が含まれていることが有効である。即ち、上記構成に加えて、外皮層内において、ワイヤ径方向に導電性金属の濃度勾配を有する領域の厚さが0.001〜0.02μmであるボンディングワイヤであることが好ましい。外皮層の内部に導電性金属の濃度勾配を有することで、導電性金属は、外皮層全体に均一濃度である場合より、芯材と外皮層の密着性の向上と、ワイヤのウェッジ接合性の改善を同時に向上できる。密着性の効用について、ワイヤの曲折、湾曲、直線等を複雑に組み合わせるループ制御でも安定したループ形状を得ることができ、それに伴うキャピラリの内壁の汚れ、磨耗等に起因するキャピラリの交換寿命を改善させる効果がある。導電性金属の濃度勾配を有する領域の厚さが0.02μm以下であれば、ウェッジ接合部の強度を高めつつ、1mm以下の短スパンでもループ形状を安定化でき、キャピラリの交換寿命をより長くでき、量産性改善できる。一方、0.02μm超であれば、短スパン、高段差接続等のループ高さのばらつきや、キャピラリ詰まり等の不良率が増加することが懸念される。
【0025】
外皮層内の濃度勾配は、深さ方向への濃度変化の程度が1μm当り10mol%以上であることが望ましい。この変化率以上であると、前述した濃度勾配を持つ外皮層としての改善効果が期待できること、定量分析の精度上も再現良い結果が得られる等の理由による。厚さ0.02μm以下の薄い外皮層では、この濃度勾配の値は低いような印象を与えるが、この緩やかな濃度勾配はアーク放電によりワイヤ表面から徐々に溶融生成するボール形状の安定化、複雑なループ制御によるワイヤの曲がり角度の制御等には、効果が確認されている。濃度勾配値が高くなるとさらに効果が高まる場合があり、好ましくは、0.1μm当り10mol%以上であれば、外皮層と芯材の異なる特性を損なうことなく、相互に利用する高い効果が期待できる。さらに好ましくは、0.01μm当り10mol%以上であれば、外皮層の厚さが0.005μm以下で薄い場合でも、ワイヤの強度上昇と接合強度の向上を同時に満足する高い効果が得られる。
【0026】
導電性金属の濃度勾配の領域は、必ずしも外皮層全体でなく、部分的であっても構わない。また、複数の導電性金属を有する場合には、少なくとも1種以上の導電性金属が濃度勾配を有すれば接合性、ループ制御等の特性向上が得られ、含まれる導電性金属により濃度勾配の挙動が異なることで、単独の導電性金属の場合よりさらに特性を向上できる場合もある。例えば、1種の導電性金属は濃度勾配が顕著であり、別の導電性金属は主に最表面に存在し、濃度勾配が少ないことで、接合性と酸化防止等、相反する性能を高めることも可能となる。
【0027】
濃度勾配は、表面から深さ方向に向けて濃度が低下する傾向であれば、外皮層と芯材との密着性の向上等に有利である。この濃度勾配の形成法について、導電性金属元素と銅元素との拡散により形成された領域であることが望ましい。これは、拡散で形成された層であれば、局所的な剥離、クラック等の不良発生の可能性が低いこと、連続的な濃度変化の形成等が容易であること等の利点が多いためである。
【0028】
銅の濃度勾配について、芯材側から最表面側の方向に銅濃度が減少する変化が好適である。これは表面での銅濃度を抑えつつ、芯材と外皮層の界面での銅濃度を高めることで、ワイヤ表面の酸化の抑制と、芯材と外皮層の密着性の向上を両立できる。ウェッジ接合性、ループ制御性等も向上できる。また、銅の濃度勾配に加えて、導電性金属も、銅とは逆の濃度勾配を持つことが望ましい。これは、ワイヤの機械的強度、弾性率等を向上することができるためである。
【0029】
生産性及び品質安定性等の面から、外皮層内の濃度勾配は連続的に変化していることが好適である。即ち、濃度勾配の傾きの程度は、外皮層内で必ずしも一定である必要はなく、連続的に変化していて構わない。例えば、外皮層と芯材との界面又は最表面近傍等での濃度変化の傾きが外皮層の内部と異なっていたり、指数関数的に濃度変化している場合でも良好な特性が得られる。
【0030】
外皮層の表面にC元素を主体とする薄膜を形成することも、銅又は導電性金属の酸化膜が厚く形成されることを防ぐには有効である。このCの薄膜の形成には、銅の防錆剤の塗布も有効であり、例えば、ベンゾトリアゾール等を薄く塗布すると接合性を維持しつつ酸化を抑制できる。
【0031】
外皮層の表面にCu酸化物が薄く形成されていることで、封止樹脂との密着性を向上することができる。Cu酸化物の厚さは0.002μm未満であることが好ましい。これは、0.002μm以上では、低温等の厳しい条件でのワイヤのウェッジ接合強度が低下する原因となるためである。
【0032】
外皮層と芯材との境界は、外皮層を構成する導電性金属の検出濃度が10mol%以上の部位とする。この根拠は、本発明の外皮層の構造から特性の改善効果が期待できる領域であること、導電性金属の濃度が連続的に変化する場合が多く、それを評価する分析精度等を、総合的に判断して、導電性金属の濃度が10mol%以上の部位を外皮層とした。好ましくは、15mol%以上の領域であれば、測定精度の向上により定量分析が簡便なため、品質保証なども比較的容易であり、量産適応性も高い。
【0033】
銅を主成分とする芯材と、該芯材の上に芯材と異なる組成の導電性金属を主成分とする外皮層を有し、前記外皮層内において導電性金属濃度が20mol%以上である領域の厚さが0.001〜0.008μmであるボンディングワイヤであれば、従来の銅ワイヤよりワイヤ引張強度の上昇と、ウェッジ接合性の向上を両立する高い効果が得られる。ここで、導電性金属濃度が20mol%以上の領域の厚さが0.001μm未満であれば引張強度を高める効果が得られず、0.008μmを超えると扁平等ボール形状の不良が増加するためである。こうしたことから、導電性金属の濃度分布で判断することは、ボンディング性能の向上にも役立つことに加え、しかも分析で直接的な情報が得られ易く、品質保証等も比較的容易であることも長所となる。
【0034】
さらに好ましくは、銅を主成分とする芯材と、該芯材の上に芯材と異なる組成の導電性金属を主成分とする外皮層を有し、前記外皮層内において導電性金属濃度が40mol%以上である領域の厚さが0.0001〜0.006μmであるボンディングワイヤであれば、プル試験でのネック破断強度の上昇、また表面酸化の抑制等に有効である。ボール形成時の熱影響によりネック部は通常強度が低下する。それに対し、40mol%以上の比較的高濃度の導電性金属の層は、熱影響の過程で導電性金属をワイヤの内部に拡散させる供給源として作用することで、ネック部の強度を上昇させると考えられる。また、ワイヤ表面の酸化抑制のメリットとして、従来の銅ワイヤでは出荷時に必要とされていた不活性ガス、脱酸剤等を使用した封入等の規準を緩和することができたり、大気中に放置されている間の経時変化を抑制することで、ワイヤの工業生産性が高まり、使用期限の延長等も図ることができる。濃度、厚さの根拠として、濃度40mol%以上の領域であれば、上述した拡散供給の作用が期待でき、また外部からの酸素の侵入を低減する効果も高いこと、また、その厚さが0.001μm未満であればこれらの改善効果が小さく、0.006μmを超えると扁平等ボール形状の不良が増加するためである。
【0035】
前記外皮層の表面側において、ワイヤ径方向の導電性金属濃度が一定の領域の厚さが0.007μm以下であるボンディングワイヤであれば、ウェッジ接合の密着強度を増加させる高い効果が得られる。一定濃度の領域について、平均値が60mol%以上で、0.001μm以上の範囲で濃度差が5%以下に抑えられていることが望ましい。この厚さの根拠について、厚さが0.007μmを超えると、ボール形成時の異形が発生し易くなるためである。作用効果について、接合時の熱印加、超音波振動による局所加熱等において、導電性金属濃度が一定の領域が拡散を助長することで、接合相手である電極膜との密着性が増加していると考えられる。ウェッジ接合性の効果は、接合相手の素材と外皮層の導電性金属との組合せにより変化し、電極がAg又はAuで導電性金属がAuの場合、電極がPdで導電性金属がPdの場合に最も高い改善効果が得られ、電極がCuで導電性金属がAu、Ag、Pdの場合でも効果が確認された。
【0036】
本発明の第二は、銅を主成分とする芯材と、該芯材の上に芯材と異なる導電性金属と銅を主成分とする外皮層を有するボンディングワイヤであって、前記外皮層内では導電性金属の最高濃度が40mol%未満であり、ワイヤ径方向に導電性金属の濃度勾配を有しており、外皮層の厚さが0.001〜0.02μmの範囲であるボンディングワイヤであれば、ウェッジ接合性の向上に加えて、低ループ、短スパン、逆方向接続等の厳しいループ制御でも安定したループ形成が可能となり、また、チップ間を接続するときのスタッドバンプ上のワイヤ接続で良好な接合性を得ること等の高い効果が得られる。この場合の外皮層は、導電性金属の最高濃度を抑えた低濃度で、Cu濃度の方が高いことが特徴である。外皮層は、ループ制御時のワイヤ断面での加工歪みを均一分散させる効果が高まること、また、バンプ上のワイヤ接続のCu/Cu同種接合に対して、外皮層が拡散の障害とならないこと等が考えられる。外皮層を用いることで高い作用効果が得られる用途の一例では、従来の銅ワイヤでは生産が困難である、最高高さ100μm以下の低ループ化、ワイヤ長0.8mm以下の短スパン、積層チップ接続に必要となる逆方向接続(基板側にボール接続、チップ上の電極側にウェッジ接続する構造で、通常の接続と逆方向)等への適用である。濃度、厚さの根拠として、濃度勾配の領域で常に導電性金属の最高濃度は40mol%未満で、その低濃度外皮層の厚さが0.001μm以上であれば、上述の作用効果が十分得られるためであり、0.02μmを超えると、ボール形成が不安定になったり、バンプ上のワイヤ接続で接合強度が低下する等の問題が生じるためである。
【0037】
本発明の第三は、銅を主成分とする芯材と、該芯材の上に芯材と異なる導電性金属と銅を主成分とする外皮層を有するボンディングワイヤであって、最表面の銅濃度が50〜95mol%の範囲で、前記外皮層内にワイヤ径方向に銅の濃度勾配を有しており、外皮層の厚さが0.001〜0.02μmの範囲であるボンディングワイヤであれば、ウェッジ接合性の向上に加えて、ボールを超音波圧着するときの異方変形を抑制してボール接合の真円性を向上させる等の高い効果が得られる。これは、外皮層中の銅濃度を高めることで、ワイヤ先端にアーク放電を集中させたり、外皮層と芯部で溶融をほぼ並行して進めることで未溶融部を抑えることができ、凝固組織も均一化させられているためと考えられる。濃度、厚さの根拠として、最表面の銅濃度が50mol%以上であればアーク放電、溶融挙動が安定化しており、95mol%を超えると導電性金属によるウェッジ接合性の改善効果がほとんど得られないためである。また、銅の濃度勾配を有する領域の厚さが0.001μmであれば、前述した作用効果が高められ、また0.02μmを超えると200℃未満の低温でのウェッジ接合性が低下するためである。
【0038】
前述した外皮層に関して、ワイヤ全体に占める導電性金属濃度が総計で0.002〜0.3mol%の範囲であるボンディングワイヤであれば、ウェッジ接合性の向上に加えて、ボール部の硬化を抑制してチップ損傷を低減する高い効果が得られる。銅ワイヤ先端のボール部は硬度が高く、変形時の加工硬化も高いこと等から、ボール接合直下のチップに損傷を与えることが実用上の課題となる。ワイヤ全体に占める導電性金属濃度を低く抑えることで、導電性金属がボール中に固溶しても、硬化の度合いを抑制して、チップ損傷を起こさせないようにすることが可能となる。また、導電性金属濃度を低く抑えることは材料コストの低減にも有利である。導電性金属が濃度勾配を有する外皮層とし、その層厚を薄くすることで、ウェッジ接合性等の特性を向上させつつ、ワイヤ全体に占める導電性金属濃度の低減を図ることが可能となる。一方、単純に外皮層を導電性金属だけで構成し、その層厚を薄くするだけでは、ワイヤ全体に占める導電性金属濃度を低く抑えることは困難である。外皮層の濃度、厚さの根拠として、導電性金属濃度が10mol%未満の領域はウェッジ接合性等への影響が小さいこと、該濃度が10mol%以上である領域の厚さが0.01μm以上であれば、上述の作用効果が十分得られること、ワイヤ全体に占める導電性金属濃度が総計で0.002 mol%未満に抑えた外皮層を工業的に安定形成するのは困難であり、0.3mol%を越えると、電極がAl薄膜、low−k誘電膜/Cu配線等の場合に、ボール直下のチップやlow−k膜への損傷が増加すること等が挙げられる。
【0039】
これまで述べた外皮層の表面における元素分布について、導電性金属又は銅が濃度偏重を有するボンディングワイヤであれば、ウェッジ接合性の向上に加えて、小ボールの形成において真球性の良好なボールを形成することに有利となる。例えば、汎用金ワイヤでも量産では課題が多く、ましてや銅ワイヤでは実現が困難とされる50μm以下の狭ピッチ化、ワイヤ径の2.3倍以下の圧着ボール径での小ボール接合等にも対応可能となる。濃度偏重の構造は、微視的に導電性金属又は銅の濃度が高い領域が島状に分布したり、不定形な高濃度領域が存在することでも構わない。濃度偏重の度合いは10mol%以上の濃度差あることが望ましく、その大きさは0.002〜1μm範囲で表面又は深さ方向に濃度分布を有することが望ましい。こうした濃度偏重によるボールの安定化について、外皮層が厚い場合に効果が高いことから、先述した種々の本発明に係わる比較的外皮層の薄い構造を有する何れのボンディングワイヤであっても、十分な作用効果が得られることを確認した。ボール安定化の機構は明らかでないが、複層ワイヤで起こることが懸念される、アーク放電の電子放出が外皮層の広範囲に広がってしまう現象に対し、導電性金属と銅が濃度偏重していることでアーク放電がよりワイヤ先端の一定領域に集中するためと予想される。
【0040】
外皮層を構成する元素の分布について、結晶粒界に銅が濃化しているボンディングワイヤであれば、総合的な使用性能は維持しつつ、工業生産性が高い製品を比較的容易に提供することができる。銅の濃化について、結晶粒界の0.01μm程度の領域で、平均濃度よりも5mol%以上濃化することが望ましい。後述する外皮層の形成法であるメッキ法、蒸着法等では、結晶粒界に銅が濃化する現象が起こり易く、それを回避するには製造条件の制御が複雑となること、一方でウェッジ接合性、ループ制御、ボール形成等では、結晶粒界の影響はほとんど少ないことを確認したことから、結晶粒界に銅が濃化している構造とすることで生産性、歩留まり等を向上させ、比較的安価なワイヤを提供することができる。
【0041】
外皮層の濃度分析について、ワイヤの表面からスパッタ等により深さ方向に掘り下げて行きながら分析する手法、あるいはワイヤ断面でのライン分析又は点分析等が有効である。前者は、外皮層が薄い場合に有効であるが、厚くなると測定時間がかかり過ぎる。後者の断面での分析は、外皮層が厚い場合に有効であり、また、断面全体での濃度分布や、数ヶ所での再現性の確認等が比較的容易であることが利点であるが、外皮層が薄い場合には精度が低下する。ワイヤを斜め研磨して、拡散層の厚さを拡大させて測定することも可能である。断面では、ライン分析が比較的簡便であるが、分析の精度を向上したいときには、ライン分析の分析間隔を狭くするとか、界面近傍の観察したい領域に絞っての点分析を行うことも有効である。これらの濃度分析に用いる解析装置では、EPMA、EDX、オージェ分光分析法、透過型電子顕微鏡(TEM)等を利用することができる。また、平均的な組成の調査等には、表面部から段階的に酸等に溶解していき、その溶液中に含まれる濃度から溶解部位の組成を求めること等も可能である。
【0042】
外皮層の中に濃度勾配に加えて、銅と導電性金属を主体とする金属間化合物相が含まれることも有効である。即ち、銅を主体とする芯材と導電性金属の外皮層で構成され、外皮層の内部には、銅の濃度勾配を有した部位と、銅と導電性金属を有する金属間化合物とが1層以上含まれており、外皮層の表面における銅濃度が0.1mol%以上であるボンディングワイヤでは優れた特性が得られる。金属間化合物相が外皮層内に含まれることで、ワイヤの強度、弾性率等の機械的特性が増加し、ループの直線性の向上、封止時のワイヤ流れの抑制等に有効である。
【0043】
芯材の構成成分の中で最も含有濃度の高い元素を主成分とすれば、本発明に関する芯材の主成分は銅である。芯材の材料は、銅又は銅合金であり、銅合金中の成分、組成によっても特性は改善する。
【0044】
前記銅を主成分とする芯材が、Ba、Ca、Sr、Be、Al又は希土類元素から選ばれる1種以上の添加元素を含有し、ワイヤ全体に占める該添加元素濃度が総計で0.0001〜0.03質量%の範囲であることにより、ワイヤの引張強度、弾性率を増加させ、樹脂流れを低減させる高い効果が得られる。細線化、狭ピッチ化での実用性に有利となる。外皮層を構成する導電性金属が金、パラジウム、白金、銀又はニッケルの場合に、ボール溶融により芯材中の該添加元素は導電性金属と相乗作用することで、ボール変形時の真円性をさらに向上させる効果がある。こうした添加効果について、外皮層が形成されていない従来の銅ワイヤに添加された場合と比較して、外皮層と該添加元素が併用された場合の方が、効果が促進されることが見出された。該添加元素の濃度が0.0001質量%未満であれば上述の改善効果が小さく、0.03質量%を超えると、ボールの先端に引け巣が発生したりしてボール形状が不安定になり、外皮層を薄くしてもボールの形状、接合強度等を改善することは困難であるためである。
【0045】
前記銅を主成分とする芯材が、Au、Ag、Pt、Pd、Sn又はZnの1種以上の添加元素を含有し、ワイヤ全体に占める該添加元素濃度が総計で0.001〜1質量%の範囲であることで、BGA基板上等のウェッジ接合において、破断めくれの低減等により接合形状を安定化できる。また、樹脂流れの低減にも有効である。これは、前述した外皮層と芯材の構造を持つワイヤの芯材部に適用することで、ウェッジ接合性の向上とボール形成性の安定等を満足することができ、従来の単層の銅ワイヤへの添加よりもより総合特性の向上が図られる。該添加元素の濃度が0.001質量%未満であれば上述の改善効果が小さく、0.3mol%を超えると、ボールの硬化によりチップ損傷が発生したり、外皮層を薄くしてもボールの形状、接合強度等を改善することは困難であるためである。
【0046】
本発明のワイヤを製造するに当り、芯材と外皮層の形成する工程と、銅元素の外皮層内の濃度勾配及び最表面への露出する熱処理工程が必要となる。
【0047】
外皮層を銅の芯材の表面に形成する方法には、メッキ法、蒸着法、溶融法等がある。メッキ法では、電解メッキ、無電解メッキ法のどちらでも製造可能である。ストライクメッキ、フラッシュメッキと呼ばれる電解メッキでは、メッキ速度が速く、下地との密着性も良好である。無電解メッキに使用する溶液は、置換型と還元型に分類され、膜が薄い場合には置換型メッキのみでも十分であるが、厚い膜を形成する場合には置換型メッキの後に還元型メッキを段階的に施すことが有効である。無電解法は装置等が簡便であり、容易であるが、電解法よりも時間を要する。
【0048】
蒸着法では、スパッタ法、イオンプレーティング法、真空蒸着等の物理吸着と、プラズマCVD等の化学吸着を利用することができる。いずれも乾式であり、膜形成後の洗浄が不要であり、洗浄時の表面汚染等の心配がない。
【0049】
メッキ又は蒸着を施す段階について、狙いの線径で導電性金属の膜を形成する手法と、太径の芯材に膜形成してから、狙いの線径まで複数回伸線する手法とのどちらも有効である。前者の最終径での膜形成では、製造、品質管理等が簡便であり、後者の膜形成と伸線の組み合わせでは、膜と芯材との密着性を向上するのに有利である。それぞれの形成法の具体例として、狙いの線径の銅線に、電解メッキ溶液の中にワイヤを連続的に掃引しながら膜形成する手法、あるいは、電解又は無電解のメッキ浴中に太い銅線を浸漬して膜を形成した後に、ワイヤを伸線して最終径に到達する手法等が可能である。
【0050】
上記手法により形成された外皮層と芯材を用い、外皮層中に銅の濃度勾配及び最表面に銅を露出させる工程として、加熱による拡散熱処理が有効である。これは、外皮層と芯材の界面で、銅と導電性金属との相互拡散を助長するための熱処理である。ワイヤを連続的に掃引しながら熱処理を行う方法が、生産性、品質安定性に優れている。しかし、単純にワイヤを加熱しただけでは、外皮層の表面及び内部での銅の分布を制御できる訳ではない。通常のワイヤ製造で用いられる加工歪取り焼鈍をそのまま適用しても、外皮層と芯材との密着性の低下によりループ制御が不安定になったり、キャピラリ内部にワイヤ削れ屑が堆積して詰まりが発生したり、また、表面に露出した銅が酸化して接合強度が低下する等の問題を完全に解決することは困難である。そこで、熱処理の温度、速度、時間等の制御が重要である。
【0051】
好ましい熱処理法として、ワイヤを連続的に掃引しながら熱処理を行い、しかも、一般的な熱処理である炉内温度を一定とするのでなく、炉内で温度傾斜をつけることで、本発明の特徴とする外皮層及び芯材を有するワイヤを量産することが容易となる。具体的な事例では、局所的に温度傾斜を導入する方法、温度を炉内で変化させる方法等がある。ワイヤの表面酸化を抑制する場合には、N2やAr等の不活性ガスを炉内に流しながら加熱することも有効である。
【0052】
温度傾斜の方式では、炉入口近傍での正の温度傾斜(ワイヤの掃引方向に対し温度が上昇)、安定温度領域、炉出口近傍での負の温度傾斜(ワイヤの掃引方向に対し温度が下降)等、複数の領域で温度に傾斜をつけることが効果的である。これにより、炉入口近傍で外皮層と芯材との剥離等を生じることなく密着性を向上させ、安定温度領域で銅と導電性金属との拡散を促進して所望する濃度勾配を形成し、さらに炉出口近傍で表面での銅の過剰な酸化を抑えることにより、得られたワイヤの接合性、ループ制御性等を改善することができる。こうした効果を得るには、出入口での温度勾配を10℃/cm以上設けることが望ましい。
【0053】
温度を変化させる方法では、炉内を複数の領域に分割して、各領域で異なる温度制御を行うことで温度の分布を作ることも有効である。例えば、3ヶ所以上に炉内を分割して、独立に温度制御を行い、炉の両端を中央部よりも低温とすることで、温度傾斜の場合と同様の改善効果が得られる。また、ワイヤの表面酸化を抑制するため、炉の両端又は出口側を銅の酸化速度の遅い低温にすることで、ウェッジ接合部の接合強度の上昇が得られる。
【0054】
こうした温度傾斜又は温度分布のある熱処理は、生産性の点では最終線径で施すことが望ましいが、一方で、熱処理の後に伸線を施すことで、表面の酸化膜を除去して低温での接合性を向上したり、さらに伸線と歪み取り焼鈍を併用することで、キャピラリ内部でのワイヤ削れを低減する効果等も得られる。
【0055】
また、溶融法では、外皮層又は芯材のいずれかを溶融させて鋳込む手法であり、1〜50mm程度の太径で外皮層と芯材を接続した後に伸線することで生産性に優れていること、メッキ、蒸着法に比べて外皮層の合金成分設計が容易であり、強度、接合性等の特性改善も容易である等の利点がある。具体的な工程では、予め作製した芯線の周囲に、溶融した導電性金属を鋳込んで外皮層を形成する方法と、予め作製した導電性金属の中空円柱を用い、その中央部に溶融した銅又は銅合金を鋳込むことで芯線を形成する方法に分けられる。好ましくは、後者の中空円柱の内部に銅の芯材を鋳込む方が、外皮層中に銅の濃度勾配等を安定形成することが容易である。ここで、予め作製した外皮層中に銅を少量含有させておけば、外皮層の表面での銅濃度の制御が容易となる。また、溶融法では、外皮層にCuを拡散させるための熱処理作業を省略することも可能であるが、外皮層内のCuの分布を調整するために熱処理を施すことで更なる特性改善も見込める。
【0056】
さらに、こうした溶融金属を利用する場合、芯線と外皮層の少なくとも一方を連続鋳造で製造することも可能である。この連続鋳造法により、上記の鋳込む方法と比して、工程が簡略化され、しかも線径を細くして生産性を向上させることも可能となる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例について説明する。
【0058】
ボンディングワイヤの原材料として、芯材に用いる銅は純度が約99.99質量%以上の高純度の素材を用い、外皮層のAu、Pt、Pd、Ag、Niの素材には純度99.9質量%以上の原料を用意した。
【0059】
ある線径まで細くした銅ワイヤを芯材とし、そのワイヤ表面に異なる金属の層を形成するには、電解メッキ法、無電解メッキ法、蒸着法、溶融法等を行い、濃度勾配を形成するためにも、熱処理を施した。最終の線径で外皮層を形成する場合と、ある線径で外皮層を形成してからさらに伸線加工により最終線径まで細くする方法を利用した。電解メッキ液、無電解メッキ液は、半導体用途で市販されているメッキ液を使用し、蒸着はスパッタ法を用いた。直径が約50〜200μmのワイヤを予め準備し、そのワイヤ表面に蒸着、メッキ等により被覆し、最終径の15〜75μmまで伸線して、最後に加工歪みを取り除き伸び値が4%程度になるように熱処理を施した。必要に応じて、線径30〜100μmまでダイス伸線した後に、拡散熱処理を施してから、さらに伸線加工を施した。
【0060】
溶融法を利用する場合には、予め作製した芯線の周囲に、溶融した金属を鋳込む方法と、予め作製した中空円柱の中央部に溶融した銅又は銅合金を鋳込む方法を採用した。その後、鍛造、ロール圧延、ダイス伸線等の加工と、熱処理を行い、ワイヤを製造した。
【0061】
本発明例のワイヤの熱処理について、ワイヤを連続的に掃引しながら加熱した。局所的に温度傾斜を導入する方式、温度を炉内で変化させる方式等を利用した。この温度差は30〜200℃の範囲とし、温度分布、ワイヤ掃引速度等を適正化して、引張伸びが4%前後になるように調整した。熱処理の雰囲気では、大気の他に、酸化を抑制する目的でN2、Ar等の不活性ガスも利用した。比較例の熱処理工程について、伸線後のCuワイヤに熱処理を施してからメッキ層を形成した場合と、熱処理を伸線後と、メッキ層の形成後で2回施した場合で、試料を準備した。
【0062】
ワイヤの引張強度、伸びは、長さ10cmのワイヤ5本の引張試験を実施し、その平均値により求めた。
【0063】
ワイヤ表面の膜厚測定にはAESによる深さ分析を用い、結晶粒界の濃化等の元素分布の観察にはAES、EPMA等による面分析、線分析を行った。ワイヤ中の導電性金属濃度は、ICP分析、ICP質量分析等により測定した。表面の濃度偏重について、ランダムな位置の4箇所の濃度分析を行い、銅濃度が10%以上異なる場合には濃度偏重かあると判断して○印、それ以下の場合には偏重なしで示した。結晶粒界の近傍で銅濃度が5%以上高い場合には○印、それ以下の場合には濃化なしで示した。
【0064】
ボンディングワイヤの接続には、市販の自動ワイヤボンダーを使用して、ボール/ウェッジ接合を行った。アーク放電によりワイヤ先端にボールを作製し、それをシリコン基板上の電極膜に接合し、ワイヤ他端をリード端子上にウェッジ接合した。ボール溶融時の酸化を抑制するために、ワイヤ先端にN2ガスを吹き付けながら、放電させた。
【0065】
接合相手としては、シリコン基板上の電極膜の材料である、厚さ1μmのAl合金膜(Al−1%Si−0.5%Cu膜、Al−0.5%Cu膜)を使用した。一方、ウェッジ接合の相手には、表面にAgメッキ(厚さ:1〜4μm)したリードフレーム、又はAuメッキ/Niメッキ/Cuの電極構造の樹脂基板を使用した。
【0066】
ボンディング工程でのループ形状安定性について、ワイヤ長が2mmの汎用スパンと0.5mmの短スパンの2種類で、台形ループを作製し、それぞれ500本のワイヤを投影機により観察し、ワイヤの直線性、ループ高さのバラツキ等を判定した。ワイヤ長が短い0.5mmで台形ループの形成は、チップ端への接触を回避するため、より厳しいループ制御が必要となる。ワイヤ長2mmで、直線性、ループ高さ等の不良が5本以上ある場合は、問題有りと判断して×印で表し、ワイヤ長0.5mmで不良が2〜4本で、且つ、ワイヤ長0.5mmで不良が5本以上の場合には、改善が必要と判断して△印で表し、ワイヤ長2mmで不良が1本以下、且つ、ワイヤ長0.5mmで不良が2〜4本の場合には、ループ形状は比較的良好であるため○印で示し、ワイヤ長0.5mmで不良が1本以下の場合にはループ形状は安定であると判断し◎印で表した。不良原因の一つに、芯線と外周部の界面の密着性が十分でないこと、断面での特性バラツキ等が想定される。
【0067】
キャピラリ寿命の評価では、ワイヤを5万本接続した後、キャピラリ先端の汚れ、磨耗等の変化で判定した。表面が清浄であれば○印、不着物等が少しある場合には通常の操業には問題ないため△印、不着物の量や大きさが顕著である場合には×印で表記した。
【0068】
樹脂封止時のワイヤ流れ(樹脂流れ)の測定は、ワイヤ長4mmのボンディング試料を作製し、市販のエポキシ樹脂で封止した後に、軟X線非破壊検査装置を用いて、ワイヤ流れが最大の部分の流れ量を20本測定し、その平均値をワイヤのスパン長さで除算した値(百分率)を封止時のワイヤ変形率とした。このワイヤ変形率が5%以上であれば不良と判断して×印、3%以上5%未満であれば改善が必要であるため△印、2%以上3%未満であれば実用上は問題ないと判断して○印、2%未満であればワイヤ変形の低減が良好であるため◎印で表した。
【0069】
ワイヤ径に対するボール径の比率が小さくなると安定形成が難しいことから、初期ボール形状の評価では、ボール径/ワイヤ径の比率が、1.9〜2.2の範囲の通常サイズと、1.6〜1.7の範囲である小径ボールの2種類で評価した。接合前のボールを20本観察して、形状が真球であるか、寸法精度が良好であるか等を判定した。異常形状のボール発生が2本以上であれば不良であるため×印、異形が2本以下だが、ワイヤに対するボール位置の芯ずれが顕著である個数が5個以上である場合には△印、芯ずれが2〜4個であれば実用上の大きな問題はないと判断して○印、芯ずれが1個未満で寸法精度も良好である場合は、ボール形成は良好であるため◎印で表記した。
【0070】
スタッドバンプ上への接合性評価では、まずはスタッドバンプを形成し、その上部に同一のワイヤを連続的にウェッジ接続する過程を、1000本実施した。途中でのボンダ装置の停止、バンプ上のワイヤが倒れる等の形状不良が、1本以下であれば良好と判断し○印で示し、1〜5本の範囲では実用上は問題ないレベルと判断して△印で示し、5本を超えるとバンプ上の接合に改善が必要と判断し、×印で示した。
【0071】
逆ボンディング性の評価では、基板側にボール接合し、チップ側のスタッドバンプ上にワイヤをウェッジ接合して、そのループ形状の安定性を評価した。1000本の接続を行い、屈曲、カール曲がり等のワイヤ変形不良が5本以上であれば×印、2〜4本であれば△印、1本以下であれば○印で示した。
【0072】
圧着ボール部の接合形状の判定では、接合されたボールを500本観察して、形状の真円性、寸法精度等を評価した。初期ボール径/ワイヤ径の比率が1.6〜1.7の範囲である小径ボールを用い、ボール圧着径はワイヤ径の2〜3倍の範囲になる条件を選定した。真円からずれた異方性や花弁状等の不良ボール形状が5本以上であれば不良と判定し×印、不良ボール形状が2〜4本であれば、必要に応じて改善が望ましいから△印、不良ボール形状が1本以下であれば良好であるため○印で表記した。
【0073】
ボール接合部直下のシリコン基板への損傷を評価するために、ボール接合部及び電極膜は王水により除去した後、シリコン基板上のクラック、微小ピット穴などを光顕やSEM等により観察した。500個の接合部を観察し、5μm以上のクラックが3個以上認められる場合はチップ損傷が問題となると判断して△印で表し、クラックが1〜3個発生しているか、又は1μm程度のピット穴が2個以上認められる場合は、チップ損傷が懸念されるものの実用上は問題はないことから、○印で表し、クラックは発生しておらずピット穴も1個以下の場合は、非常に良好であることから◎印で表示した。
【0074】
リード側にワイヤを接合するウェッジ接合性の判定では、低温になるほど接合が困難になることから、ステージ温度を220℃、180℃の低温で、それぞれ1000本のボンディングを行い、連続作業性、ワイヤの変形形状等を調査した。220℃で、接合部での完全剥離が2本以上生じた場合は×印、220℃での完全剥離が2本未満、且つ、ワイヤ破断近くの部分的な剥離が生じている場合には改善が必要であるため△印、220℃では不良はなく、しかも180℃での完全剥離が1本以下である場合には○印、180℃での完全剥離がなく、部分剥離も3本未満である場合には◎印で表示した。
【0075】
ボール接合直上のネック部のプル強度評価では、ワイヤ長が3mmの試料20本で、ボール接合部の近傍にフックを掛けてプル試験を行った。その平均値が、ワイヤの破断強度に対して、7割以上であればプル強度が高いと判断して◎印、5〜7割の範囲であれば通常問題ないと判断して○印、5割未満であればダメージが懸念されるため△印で表記した。
【0076】
ウェッジ接合の形状評価では、フレームのインナーリード上のAgメッキ層にウェッジ接合を行い、破断めくれや、接合形状がばらつく等の異形で判定した。1000本のボンディング部を観察して、異形が5本以上であれば×印、3〜5本であれば△印、1〜2本であれば○印、1本未満であれば良好と判断して◎印で示した。
【0077】
【表1−1】

【0078】
【表1−2】

【0079】
【表1−3】

【0080】
【表1−4】

【0081】
【表2−1】

【0082】
【表2−2】

【0083】
表1、2には、本発明に係わる銅ボンディングワイヤの評価結果と比較例を示す。
【0084】
第1請求項に係わるボンディングワイヤは実施例1〜41であり、第2請求項に係わるボンディングワイヤは実施例3〜41、第3請求項に係わるボンディングワイヤの一例は実施例3〜25、第4請求項に係わるボンディングワイヤは実施例4、6〜17、19、20、22、23、25、第5請求項に係わるボンディングワイヤは実施例3、12、14、17、20、23、第6請求項に係わるボンディングワイヤは実施例26〜32、34、第7請求項に係わるボンディングワイヤは実施例29〜37、第8請求項に係わるボンディングワイヤは実施例1〜6、8〜11、13、15、16、18、19、21、22、24、25、26〜41、第9請求項に係わるボンディングワイヤは実施例2〜4、6〜9、11〜14、16、17、20〜25、27〜31、33〜39、41、第11請求項に係わるボンディングワイヤは実施例2〜16、18〜41、第12請求項に係わるボンディングワイヤは実施例3、5、8、9、12、16、22、24、29、34、37、第13請求項に係わるボンディングワイヤは実施例3、6、15、17、20、23、31、34、37に相当する。
【0085】
それぞれの請求項の代表例について、評価結果の一部を説明する。
【0086】
実施例1〜41のボンディングワイヤは、本発明に係わる、外皮層又は表皮層の厚さが0.001〜0.02μmの範囲であることにより、ボール部の形成性、ウェッジ接合性の両方を同時に満足することが確認された。一方、外皮層を持たない従来の銅ワイヤに関する比較例1では、ウェッジ接合性が非常に悪い問題が確認された。また、比較例3〜12では外皮層の厚さが0.02μm超であり、ウェッジ接合性は良好であり、通常径のボールでも形状は良好であるが、小径ボールでは形状不良が発生しているため、用途が限定されることが懸念される。
【0087】
実施例3〜41のボンディングワイヤは、本発明に係わる、外皮層内での導電性金属の濃度勾配を有する領域の厚さが0.001〜0.02μmの範囲であることにより、短スパン等のループ制御性が向上し、また、キャピラリ寿命も改善され良好であった。一方、比較例1、2では外皮層厚が0.001μm未満であり、ループ制御性、キャピラリ寿命ともに十分でなく、比較例3〜19では外皮層の厚さが0.02μm超であり、ボール形状不良が発生していた。
【0088】
実施例3〜25のボンディングワイヤは、本発明に係わる、外皮層内で導電性金属濃度が20mol%以上である領域の厚さが0.001〜0.008μmであることにより、ウェッジ接合性、低温ウェッジ接合性、ワイヤ引張強度等で良好な特性が確認された。
【0089】
実施例4、6〜17、19、20、22、23、25のボンディングワイヤは、本発明に係わる、外皮層内で導電性金属濃度が40mol%以上である領域の厚さが0.001〜0.006μmであることにより、ボール接合部の近傍でのプル強度が向上していることが確認された。
【0090】
実施例3、12、14、17、20、23のボンディングワイヤは、本発明に係わる、導電性金属濃度が一定の領域の厚さが0.007μm以下であることにより、低温ウェッジ接合性が一層改善されていることが確認された。
【0091】
実施例26〜32、34のボンディングワイヤは、本発明に係わる、外皮層は導電性金属の最高濃度が40mol%以下であり、外皮層厚さが0.001〜0.02μmであることにより、逆ボンディング性と、スタッドバンプ上のワイヤ接合性ともに優れた特性であることが確認された。
【0092】
実施例29〜37のボンディングワイヤは、本発明に係わる、最表面の銅濃度が50〜95mol%の範囲で、外皮層内に濃度勾配を有し、外皮層厚さが0.001〜0.02μmであることにより、小ボールの圧着形状が改善されていることが確認された。
【0093】
実施例1〜6、8〜11、13、15、16、18、19、21、22、24、25、26〜41のボンディングワイヤは、本発明に係わる、外皮層の表面で導電性金属と銅が濃度偏重を有することにより、小径ボール形状の安定性が一層向上されていることが確認された。
【0094】
実施例2〜4、6〜9、11〜14、16、17、20〜25、27〜31、33〜39、41のボンディングワイヤは、本発明に係わる、外皮層の結晶粒界に銅の濃化が確認され、ボール径、ループ形状等の使用性能が安定し、ワイヤ製造工程の総合歩留まりも平均して5%程度改善していた。
【0095】
実施例2〜16、18〜41のボンディングワイヤは、本発明に係わる、ワイヤ全体に占める導電性金属濃度が総計で0.002〜0.3mol%であることにより、チップ損傷が大幅に軽減されていることが確認された。
【0096】
実施例3、5、8、9、12、16、22、24、29、34、37のボンディングワイヤは、本発明に係わる、銅を主成分とする芯材がBa、Ca、Sr、Be、Al又は希土類元素から選ばれる1種以上の添加元素を含有し、ワイヤ全体に占める該添加元素濃度が総計で0.0001〜0.03質量%であることにより、樹脂封止時のワイヤ流れが軽減していることが確認された。
【0097】
実施例3、6、15、17、20、23、31、34、37のボンディングワイヤは、本発明に係わる、銅を主成分とする芯材がAg、Pt、Pd、Sn又はZnの1種以上の添加元素を含有し、ワイヤ全体に占める該添加元素濃度が総計で0.01〜0.3mol%であることにより、ウェッジ接合の異形が軽減していることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅を主成分とする芯材と、該芯材の上に芯材と成分又は組成の一方又は両方の異なる導電性金属と銅を含有する外皮層を有するボンディングワイヤであって、前記外皮層の厚さが0.001〜0.02μmであることを特徴とする半導体装置用ボンディングワイヤ。
【請求項2】
前記外皮層内において、ワイヤ径方向に銅以外の導電性金属の濃度勾配を有する領域の厚さが0.001〜0.02μmである請求項1に記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。
【請求項3】
前記外皮層内において、銅以外の導電性金属濃度が20mol%以上である領域の厚さが0.001〜0.008μmである請求項1又は2に記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。
【請求項4】
前記外皮層内において、銅以外の導電性金属濃度が40mol%以上である領域の厚さが0.001〜0.006μmである請求項1又は2に記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。
【請求項5】
前記外皮層の表面側において、ワイヤ径方向の銅以外の導電性金属濃度が一定の領域の厚さが0.007μm以下である請求項1〜4のいずれかに記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。
【請求項6】
銅を主成分とする芯材と、該芯材の上に芯材と成分又は組成の一方又は両方の異なる導電性金属と銅を含有する外皮層を有するボンディングワイヤであって、前記外皮層内では銅以外の導電性金属の最高濃度が40mol%未満であり、ワイヤ径方向に銅以外の導電性金属の濃度勾配を有しており、外皮層の厚さが0.001〜0.02μmの範囲であることを特徴とする半導体装置用ボンディングワイヤ。
【請求項7】
銅を主成分とする芯材と、該芯材の上に芯材と成分又は組成の一方又は両方の異なる導電性金属と銅を含有する外皮層を有するボンディングワイヤであって、最表面の銅濃度が50〜95mol%の範囲で、前記外皮層内にワイヤ径方向に銅の濃度勾配を有しており、外皮層の厚さが0.001〜0.02μmの範囲であることを特徴とする半導体装置用ボンディングワイヤ。
【請求項8】
前記外皮層の表面で導電性金属又は銅が濃度偏重を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。
【請求項9】
前記外皮層の結晶粒界に銅が濃化していることを特徴とする請求項1〜4、6、7のいずれかに記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。
【請求項10】
前記外皮層を構成する導電性金属が、金、パラジウム、白金、銀又はニッケルから選ばれる1種以上を主成分とする請求項1〜7のいずれかに記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。
【請求項11】
ワイヤ全体に占める銅以外の導電性金属濃度が総計で0.002〜0.3mol%の範囲である請求項1〜10のいずれかに記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。
【請求項12】
前記銅を主成分とする芯材が、Ba、Ca、Sr、Be、Al又は希土類元素から選ばれる1種以上の添加元素を含有し、ワイヤ全体に占める該添加元素濃度が総計で0.0001〜0.03質量%の範囲である請求項1、6又は7のいずれかに記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。
【請求項13】
前記銅を主成分とする芯材が、Ag、Pt、Pd、Sn又はZnの1種以上の添加元素を含有し、ワイヤ全体に占める該添加元素濃度が総計で0.01〜0.3mol%の範囲である請求項1、6又は7のいずれかに記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。