説明

半導体装置用ボンディングワイヤ

【課題】 本発明は、ボール部の形成性、接合性を改善し、ループ制御性も良好であり、ウェッジ接続の接合強度を高め、工業生産性にも確保し、金ワイヤよりも安価な銅を主体とするボンディングワイヤを提供することを目的とする。
【解決手段】 銅を主成分とする芯材と、該芯材の上に芯材と異なる組成の導電性金属の表皮層を有するボンディングワイヤであって、前記表皮層の主成分が、金、パラジウム、白金、ロジウム、銀又はニッケルから選ばれる1種以上であり、前記表皮層内にワイヤ径方向に主成分金属の少なくとも1種と銅の濃度勾配を有する領域が存在し、前記表皮層の表面側に、金、パラジウム、白金、ロジウム、銀又はニッケルの2種以上を0.1mol%以上の均一濃度で含有する合金の最表領域が存在することを特徴とする半導体装置用ボンディングワイヤである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子上の電極と回路配線基板(リードフレーム、基板、テープ)の配線とを接続するために利用される半導体装置用ボンディングワイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、半導体素子上の電極と外部端子との間を接合するボンディングワイヤとして、線径20〜50μm程度の細線(ボンディングワイヤ)が主として使用されている。ボンディングワイヤの接合には超音波併用熱圧着方式が一般的であり、汎用ボンディング装置、ワイヤをその内部に通して接続に用いるキャピラリ冶具等が用いられる。ワイヤ先端をアーク入熱で加熱溶融し、表面張力によりボールを形成させた後に、150〜300℃の範囲内で加熱した半導体素子の電極上にこのボール部を圧着接合せしめ、その後で、直接ワイヤを外部リード側に超音波圧着により接合させる。
【0003】
近年、半導体実装の構造・材料・接続技術等は急速に多様化しており、例えば、実装構造では、現行のリードフレームを使用したQFP(Quad Flat Packaging)に加え、基板、ポリイミドテープ等を使用するBGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Scale Packaging)等の新しい形態が実用化され、ループ性、接合性、量産使用性等をより向上したボンディングワイヤが求められている。そうしたワイヤの接続技術でも、現在主流のボール/ウェッジ接合の他に、狭ピッチ化に適したウェッジ/ウェッジ接合では、2ヶ所の部位で直接ワイヤを接合するため、細線の接合性の向上が求められる。
【0004】
ボンディングワイヤの接合相手となる材質も多様化しており、シリコン基板上の配線、電極材料では、従来のAl合金に加えて、より微細配線に好適なCuが実用化されている。また、リードフレーム上にはAgメッキ、Pdメッキ等が施されており、また、樹脂基板、テープ等の上には、Cu配線が施され、その上に金等の貴金属元素及びその合金の膜が施されている場合が多い。こうした種々の接合相手に応じて、ワイヤの接合性、接合部信頼性を向上することが求められる。
【0005】
ボンディングワイヤの素材は、これまで高純度4N系(純度>99.99mass%)の金が主に用いられている。しかし、金は高価であるため、材料費が安価である他種金属のボンディングワイヤが所望されている。
【0006】
ワイヤボンディング技術からの要求では、ボール形成時に真球性の良好なボールを形成し、そのボール部と電極との接合部で十分な接合強度を得ることが重要である。また、接合温度の低温化、ワイヤの細線化等に対応するためにも、回路配線基板上の配線部にワイヤをウェッジ接続した部位での接合強度、引張り強度等も必要である。
【0007】
高粘性の熱硬化エポキシ樹脂が高速注入される樹脂封止工程では、ワイヤが変形して隣接ワイヤと接触することが問題となり、しかも、狭ピッチ化、長ワイヤ化、細線化も進む中で、樹脂封止時のワイヤ変形を少しでも抑えることが求められている。ワイヤ強度の増加により、こうした変形をある程度コントロールすることはできるものの、ループ制御が困難となったり、接合時の強度が低下する等の問題が解決されなくては実用化は難しい。
【0008】
こうした要求を満足するワイヤ特性として、ボンディング工程におけるループ制御が容易であり、しかも、電極部、リード部への接合性も向上しており、ボンディング以降の樹脂封止工程における過剰なワイヤ変形を抑制すること等の、総合的な特性を満足することが望まれている。
【0009】
材料費が安価で、電気伝導性に優れ、ボール接合、ウェッジ接合等も高めるために、銅を素材とするボンディングワイヤが開発され、特許文献1等が開示されている。しかし、銅のボンディングワイヤでは、ワイヤ表面の酸化により接合強度が低下することや、樹脂封止されたときのワイヤ表面の腐食等が起こり易いことが問題となる。これが銅のボンディングワイヤの実用化が進まない原因ともなっている。
【0010】
そこで、銅ボンディングワイヤの表面酸化を防ぐ方法として、特許文献2には、金、銀、白金、パラジウム、ニッケル、コバルト、クロム、チタン等の貴金属や耐食性金属で銅を被覆したワイヤが提案されている。また、ボール形成性、メッキ液の劣化防止等の点から、特許文献3には、銅を主成分とする芯材、該芯材上に形成された銅以外の金属からなる異種金属層、及び該異種金属層の上に形成され、銅よりも高融点の耐酸化性金属からなる被覆層の構造をしたワイヤが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭56−21254号公報
【特許文献2】特開昭62−97360号公報
【特許文献3】特開2004−64033号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
銅ボンディングワイヤの実用上の問題として、ワイヤ表面が酸化し易いこと、接合強度が低下すること等が起こり易いことが挙げられる。また、高純度銅ボンディングワイヤでは、ワイヤ強度が不十分なことから樹脂封止時のワイヤ変形が大きいこと、ネック部のプル強度が低いこと、低ループ化が困難であること、等の問題により、応用できる半導体製品が少ないことも問題である。そこで、銅ボンディングワイヤの表面酸化を防ぐ手段として、ワイヤ表面に貴金属や耐酸化性の金属を被覆することが可能である。
【0013】
半導体実装の高密度化、小型化、薄型化等のニーズを考慮して、本発明者らが評価したところ、銅ボンディングワイヤの表面を銅と異なる金属で覆った構造の従来の複層銅ワイヤ(以下、従来複層銅ワイヤと記す)では、後述するような実用上の問題が多く残されていることが判明した。
【0014】
従来複層銅ワイヤの先端にボールを形成した場合、真球からずれた扁平ボールが形成されたり、ボール内部に溶融されないワイヤが残ることが問題となる。こうした正常でないボール部を電極上に接合すると、接合強度の低下、チップ損傷等の問題を起こす原因となる。また、低ループ化等の厳しいループ制御に伴い、ネック部に損傷が発生し易く、プル強度が低下する場合もある。
【0015】
従来複層銅ワイヤで複雑なループ制御等を実施すると、被覆層と銅との界面で剥離すること等で、ループ形状が不安定になったり、狭ピッチ接続では隣接ワイヤが電気的ショートを起こすことが懸念される。
【0016】
従来複層銅ワイヤを回路基板等の電極にウェッジ接続する際に、被覆層と芯材との界面の剥離や、ワイヤと電極の接合部から被覆層が排出されて銅が直接接合すること等により、接合強度が不安定となったり、低下すること等が懸念される。
【0017】
前述した従来複層銅ワイヤの問題の改善する因子として、被覆層の厚さを制御することが考えられる。しかし、被覆層を厚くすると、ウェッジ接続等の改善は期待されるが、メッキや蒸着等で厚い被覆層を形成することで、生産性の低下、材料費の上昇等の工業生産面で問題が生じる。また、被覆層を厚くすると、溶融されたボール部内で銅以外の元素の濃度が上昇することで、ボール部が硬化してしまい、ボール接合時にチップ損傷を与えることが問題となる。
【0018】
その反対に、従来複層銅ワイヤの被覆層を薄くするだけでは、被覆層と芯材との界面での剥離が発生したり、酸化防止やウェッジ接続の改善等が難しくなる問題が生じる。
【0019】
本発明では、上述するような従来技術の問題を解決して、ボール部の形成性、接合性を改善し、ループ制御性も良好であり、ウェッジ接続の接合強度を高め、工業生産性にも確保し、金ワイヤよりも安価な銅を主体とするボンディングワイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するための本発明は、下記の構成を要旨とする。
(1) 銅を主成分とする芯材と、該芯材の上に芯材と異なる組成の導電性金属の表皮層を有するボンディングワイヤであって、前記表皮層の主成分が、金、パラジウム、白金、ロジウム、銀又はニッケルから選ばれる2種以上であり、前記表皮層内にワイヤ径方向に主成分金属又は銅の一方又は双方の濃度勾配を有する部位が存在することを特徴とする半導体装置用ボンディングワイヤ。
(2) 銅を主成分とする芯材と、該芯材の上に芯材と異なる組成の導電性金属の表皮層を有するボンディングワイヤであって、前記表皮層の主成分が、金、パラジウム、白金、ロジウム、銀又はニッケルから選ばれる2種以上であり、前記表皮層内にワイヤ径方向に主成分金属又は銅の一方又は双方の濃度勾配を有する部位が存在すると共に、表皮層の主成分の少なくとも1種がワイヤ径方向に増加と減少の両方を有することを特徴とする半導体装置用ボンディングワイヤ。
(3)前記表皮層の表面側に、さらに金、パラジウム、白金、ロジウム、銀又はニッケルの単一金属領域を有する(1)又は(2)に記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。
(4)前記表皮層の内部に、金、パラジウム、白金、ロジウム、銀又はニッケルの単一金属領域を有する(1)又は(2)に記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。
(5)銅を主成分とする芯材と、該芯材の上に芯材と異なる組成の導電性金属の表皮層を有するボンディングワイヤであって、前記表皮層の表面側に、銅の単一又は30mol%以上銅を含有する合金からなる最表領域を有し、前記表皮層の主成分が、金、パラジウム、白金、ロジウム、銀又はニッケルから選ばれる1種以上であり、前記表皮層内にワイヤ径方向に主成分金属の少なくとも1種と銅がワイヤ径方向に増加と減少の両方の濃度勾配を有する領域が存在することを特徴とする半導体装置用ボンディングワイヤ。
(6)銅を主成分とする芯材と、該芯材の上に芯材と異なる組成の導電性金属の表皮層を有するボンディングワイヤであって、前記表皮層の主成分が、金、パラジウム、白金、ロジウム、銀又はニッケルから選ばれる1種以上であり、前記表皮層内にワイヤ径方向に主成分金属の少なくとも1種と銅の濃度勾配を有する領域が存在し、前記表皮層の表面側に、金、パラジウム、白金、ロジウム、銀又はニッケルの2種以上を0.1mol%以上の均一濃度で含有する合金の最表領域が存在することを特徴とする半導体装置用ボンディングワイヤ。
(7) 前記表皮層内に、金属間化合物を含有する(1)〜(6)のいずれかに記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。
(8) 前記銅を主成分とする芯材が、Ca、Sr、Be、Al又は希土類元素から選ばれる1種以上を総計で1〜300質量ppm含有する(1)〜(7)のいずれかに記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。
(9) 前記銅を主成分とする芯材が、銀、スズ又は金の1種以上を総計で0.1〜10質量%含有する(1)〜(8)のいずれかに記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。
【発明の効果】
【0021】
本発明の半導体装置用ボンディングワイヤにより、材料費が安価で、ボール接合性、ワイヤ接合性等に優れ、ループ形成性も良好である、狭ピッチ用細線化、パワー系IC用途の太径化にも適応する銅系ボンディングワイヤを提供することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明のボンディングワイヤは、銅を主成分とする芯材と、芯材と異なる組成の導電性金属の表皮層で構成されている。但し、銅の芯材と表皮層との単純な2層構造では、ボール形成、接合性、ループ制御等が十分でなく、単層の銅ワイヤよりも特性劣化が生じる場合がある。そこで、単層の銅ワイヤよりも特性を総合的に改善するため、本発明の該表皮層では、銅及び該導電性金属の一方又は双方の濃度勾配域を有する。
【0023】
さらに、銅の濃度勾配だけでは、ボンディングワイヤ工程の生産性が現行主流の金ボンディングワイヤよりも低下する場合がある。そこで、金ボンディングワイヤと同等以上に生産性を向上させる表皮層の構成として、銅以外に2種類以上の導電性金属の主成分が濃度勾配を有する表皮層、その主成分の単一金属領域が表面又は内部に形成された表皮層、主成分の一定濃度の合金域を最表領域に有する表皮層等を特徴とすることが有効であることを見出した。さらに、芯材に特定の元素を有する銅合金にする手法も有効である。
【0024】
表皮層と芯材との境界は、表皮層を構成する導電性金属の検出濃度が5mol%以上の領域とする。この根拠は、本発明の表皮層の構造から特性の改善効果が期待できる領域であること、特性発現に導電性金属の濃度が連続的に変化する場合が多く、それを評価するための通常の定量分析の精度等を、総合的に判断して、導電性金属の濃度が5mol%以上の領域とした。好ましくは、10mol%以上の領域であれば、定量分析の精度が上がり、測定がより簡便となる。
【0025】
濃度勾配を構成元素で分類すると、芯部を構成する銅元素の有無により2種類に区別される。即ち、芯部を構成する銅元素と導電性金属元素とからなる濃度勾配(以下、A型濃度勾配と称す)と、芯部を構成する銅元素を含まないで導電性金属元素だけからなる濃度勾配(以下、B型濃度勾配と称す)に分けられる。
【0026】
濃度勾配の定義は、深さ方向への濃度変化の程度が1μm当り5mol%以上であることが望ましい。この変化を超えると、前述した濃度勾配を持つ表皮層としての改善効果が期待できること、定量分析の精度上も再現良い結果が得られる等の理由による。但し、ワイヤ中の元素濃度が局所的に上下している場合、不均一に分布している場合等とは区別する。好ましくは、1μm当り10mol%以上であれば製造が容易である。さらに好ましくは、1μm当り20mol%以上であれば、表皮層と芯材の異なる特性を損なうことなく、相互に利用する高い効果が期待できる。
【0027】
生産性及び品質安定性等の面から、表皮層内の濃度勾配は連続的に変化していることが好適である。即ち、濃度勾配の傾きの程度は、表皮層内で必ずしも一定である必要はなく、連続的に変化していて構わない。例えば、被覆層と芯材との界面又は最表面近傍等での濃度変化の傾きが被覆層の内部と異なっていたり、指数関数的に濃度変化している場合でも良好な特性が得られる。
【0028】
濃度勾配域は、原子の拡散により形成された領域であることが望ましい。これは拡散で形成された層であれば、局所的な剥離、クラック等の不良の可能性が低いこと、連続的な濃度変化の形成等が容易であること等の利点が多いためである。
【0029】
表皮層を合金の組成、濃度分布等で適正化する技術を具体的に説明する。
【0030】
銅を主成分とする芯材と、該芯材の上に芯材と異なる組成の導電性金属の表皮層で構成され、該表皮層は、金、パラジウム、白金、ロジウム、銀、ニッケルの2種以上の金属を含有し、さらに該表皮層の内部に主成分金属又は銅の一方又は双方の濃度勾配を有する部位が存在するボンディングワイヤが望ましい。
【0031】
これは、表皮層に銅以外の2種以上の導電性金属元素を有し、且つ、芯部の銅元素を含むA型濃度勾配と、芯部の銅元素を含まないで導電性金属元素だけからなるB型濃度勾配を有することにより、表皮層の元素分布がほぼ均質である合金化よりも、電気抵抗の増加等を抑えつつ、ボール形成性、ワイヤ強度、ループ制御、接合強度等を改善することができる。濃度勾配の効果について、表皮層と芯部の境界近傍のA型濃度勾配は、ワイヤの曲折部からなるループ形成の安定性を向上し、表皮層の内部に形成されるB型濃度勾配は、ボール形成性、ワイヤ強度の向上等に有効である。
【0032】
表皮層の主要元素が金、パラジウム、白金、ロジウム、銀、ニッケルの1種だけの場合に、従来の表皮層無しの銅ワイヤよりはループ形状、樹脂流れ制御などは改善しているものの、現行の金ワイヤと比較すると、適正なボンディング条件が異なったり、量産レベルでボール形状、ループ形状、接合強度等を総合的に向上することが困難である。表皮層が、金、パラジウム、白金、ロジウム、銀、ニッケルの2種以上の金属で構成することで、要求特性を総合的に改善し、汎用の金ボンディングワイヤと同等の特性を有することを見出した。さらに、表皮層/芯材の界面近傍に、拡散等により銅元素の濃度勾配を有することで、ループ形成時の強制的な曲げによっても、表皮層の剥離を抑え、安定したループ形状を得ることができる。
【0033】
表皮層を構成する元素の組み合わせについて、金−パラジウム、金−白金、金−ロジウム、金−銀、金−ニッケルの系ではウェッジ接合性の改善が顕著であり、パラジウム−白金、パラジウム−ニッケル、パラジウム−ロジウム等ではボール形状の真球性が非常に良好であることを確認した。これら機能向上するための表皮層の平均合金比率について、金−パラジウム、金−白金、金−ロジウム、金−銀、金−ニッケル系では、金の構成比を50〜90%とすることで、ウェッジ接合性を従来の銅ワイヤよりも改善する高い効果が得られる。また、パラジウム−白金、パラジウム−ニッケル系では、パラジウムの構成比を40〜90%とすることで、アーク放電が安定化して、ボール形状の真球性や寸法バラツキ等を向上する効果が高められる。ループ形状の制御等を考慮して、上記例示した元素の組合せでも可能である。
【0034】
表皮層が3種以上の元素により構成されることで、上記の特性改善をより高めることも可能であり、金−パラジウム−白金、金−パラジウム−銀、金−白金−ニッケル等を例示できる。
【0035】
濃度勾配域の厚さの総計は、表皮層の厚さの10%〜100%であることが望ましく、これは、10%以上の厚さであれば、平均的な合金化の場合に比べて機能向上する効果が得られるためである。また、好ましくは20%〜80%であれば、電気特性を改善する効果を高めることができる。濃度勾配の程度は、深さ方向への濃度変化が1μm当り2mol%以上であれば、ボンディング工程の生産性を高める効果を確保することができる。
【0036】
また、表皮層は、金、パラジウム、白金、ロジウム、銀、ニッケルの2種以上の主要金属(以下、表皮主要金属と称す)を含有し、表皮層内にワイヤ径方向に主成分金属又は銅の一方又は双方の濃度勾配を有する部位が存在すると共に、少なくとも1種以上の表皮主要金属の濃度勾配が、深さ方向に増加と減少の両方が存在することが望ましい。ここで、表面から深さ方向に濃度が減少する場合を負の濃度勾配、濃度が増加する場合を正の濃度勾配とする。比較として、表皮層と芯材との境界のみに濃度勾配が存在するような、表皮主要金属が負の濃度勾配のみを有している場合には、ループ形状、ウェッジ接合性等をさらに安定化させることが困難である。そこで、同一元素の正と負の濃度勾配が同時に存在することで、表皮層と芯材との密着性が改善され、ループ高さのばらつき低減等のループ形状の安定化、さらにウェッジ接合での変形形状の安定化、接合部のめくれ不良の低減等を改善できる。これは、不均一な外力や衝撃等がワイヤに加わっても、正と負の濃度勾配が相互に干渉して、変形の安定化を促進するためと考えられる。
【0037】
同一元素の正負の濃度勾配の一例として、表皮層の主成分が金、パラジウムで、表面側に金が多い場合に、パラジウム元素の濃度勾配を比較すると、表皮層内の金とパラジウムで構成されるB型濃度勾配の部位には、パラジウムは正の濃度勾配が存在し、表皮層と芯部の境界近傍にパラジウムと芯部の銅で構成されるA型濃度勾配の部位には、パラジウムは負の濃度勾配を存在させたボンディングワイヤを作製できる。
【0038】
表皮層が合金だけから構成される場合には、高周波IC用途では電気抵抗の増加等が懸念される。そこで、単一金属領域を形成すると、電気特性等を改善できることを見出した。ここでの単一金属領域とは、主要な元素は1種類であり、それ以外の金属系元素の濃度の総計が0.01mol%未満である。単一金属領域と合金層の両者共に、極表面でのC、S、Na等の表面汚染、O、N、H等の元素等は考慮しない。単一金属領域の部位について、最表面と表皮層内部とに区別され、それぞれについて後述する。
【0039】
銅を主成分とする芯材と、該芯材の上に形成された表皮層で構成され、該表皮層は金、パラジウム、白金、ロジウム、銀、ニッケルの2種以上の表皮主要金属を含有し、さらに該表皮層の内部に表皮主要金属と銅の濃度勾配を有する部位が存在し、最外表面に表皮主要金属の1種からなる単一金属領域を有するボンディングワイヤであることが望ましい。これは、ワイヤの最表面に、金、パラジウム、白金、ロジウム、銀、ニッケルの1種からなる単一金属領域を有することで、電気特性を向上し、さらにボール部の均一組織を促進することで、圧着ボール形状が安定化する効果が得られるためである。
【0040】
銅を主成分とする芯材と、該芯材の上に形成された表皮層で構成され、該表皮層は金、パラジウム、白金、ロジウム、銀、ニッケルの2種以上の表皮主要金属を含有し、さらに該表皮層の内部に表皮主要金属の1種からなる単一金属領域と、表皮主要金属と銅の濃度勾配を有する部位を有するボンディングワイヤであることが望ましい。これは、単一金属領域を表皮層内部に形成させることで、電気特性の向上に加えて、ボール近傍のネック部における熱影響組織を制御することにより、プル強度の増加や、低ループ化にも対応可能となること等が利点である。ここで、ネック部が熱影響を受けるとき、内部の単一金属領域が拡散の供給源として作用し、単一金属領域の両側に拡散層を形成してプル強度を増加させ、また、再結晶の抑制による低ループ化が可能になると考えられる。
【0041】
最表面を表皮主要金属の合金とすることで、表面の合金部が高剛性に寄与して、長スパン化でのワイヤ垂れの防止、直線性の改善、ワイヤ表面の削れの低減等に有効である。また、単一金属領域を、最表面と表皮層内部の両方に形成させることで、電気特性、ウェッジ接合性、プル強度の増加等が可能である。
【0042】
単一金属領域を含むワイヤについて、前述したパラジウム−金の系を例に、表皮層の内部構成を具体的に説明する。ワイヤ表面からワイヤ中心方向に、金の単一金属領域/(パラジウムと金の濃度勾配層)/(金、パラジウム、銅の濃度勾配層)/(パラジウム、銅の濃度勾配層)で代表される3元素が混在する濃度勾配層を有する第1構成、(パラジウムと金の合金)/金/(金と銅の濃度勾配領域)/芯材のように中間に単一の金属領域を有する第2構成、金の単一金属領域/(パラジウムと金の濃度勾配層)/パラジウム単一金属領域/(パラジウムと銅の濃度勾配層)で代表される中間に単一金属領域を有する第3構成、等が挙げられる。
【0043】
第1、3構成では、最表面に金等の単一金属領域が接合界面の拡散を助長することで、ウェッジ接合部の接合強度が高く、低温接続における生産性の向上等に有利である。加えて、第1構成では、3元系等より多数の濃度勾配層を有効に利用することで、ワイヤ強度の増加、又は樹脂流れの低減も期待される。第2構成では、表面の合金部により、長スパン化でのワイヤ垂れの防止、直線性の改善等に有利である。第3構成では、パラジウム、金共に単一の金属領域を有することで、濃度勾配領域を薄くすれば、電気特性の改善効果がより高められる。
【0044】
濃度勾配に着目すると、更なる特性改善として、第1、3構成共に、表皮主要金属であるパラジウムは、正と負の濃度勾配を有していることから、前述したように、これがループ形状の安定化を促進している。また、第2、3構成では、表皮主要金属の正と負の濃度勾配の中間に、単一金属領域を有する構造となる。このような、正の濃度勾配/単一金属領域/負の濃度勾配の3層構造とすることで、ループ形成の折曲げやウェッジ接合の過剰塑性変形等の不均一外力に対する、ワイヤ変形の安定化にはより有効である。
【0045】
例示の組み合わせで、パラジウムと金を入れ替えた構造でも機能を向上できる。表皮層の単一金属の純度は、金、パラジウム、白金、ロジウム、銀、ニッケルの1種が99.9mol%以上である場合であり、その他の不純物が0.1mol%未満に抑えられていることが望ましい。
【0046】
銅を主成分とする芯材と、該芯材の上に芯材と異なる組成の導電性金属の表皮層と、さらに最表領域を有するボンディングワイヤであって、前記表皮層の主成分が、金、パラジウム、白金、ロジウム、銀又はニッケルから選ばれる1種以上であり、前記表皮層内にワイヤ径方向に主成分金属の少なくとも1種と銅の濃度勾配を有する部位が存在し、前記最表領域が、金、パラジウム、白金、ロジウム、銀又はニッケルの2種以上を0.1mol%以上の均一濃度で含有する合金が存在するボンディングワイヤであることが望ましい。ここで、主成分金属の2種以上を0.1mol%以上の均一濃度で含有する合金が表面に存在することで、表面の剛性を高め、樹脂封止時のワイヤ流れを抑制する効果が一層高まること、また、表面の濃度勾配を制御する必要がないため、製造上の管理が容易となること等が利点である。ここで、合金の濃度が0.1mol%未満では、特性改善の効果が少ない。
【0047】
金、パラジウム、白金、ロジウム、銀、ニッケル、銅の2種以上の元素の表面における濃度が0.1mol%以上である理由として、高強度化による樹脂封止時のワイヤ流れの抑制等に有利であることに基づく。
【0048】
表皮層の内部構成について、ワイヤ表面からワイヤ中心方向への変化を、白金/金の系で例示すると、(白金と金の濃度勾配領域)/金/(金と銅の濃度勾配領域)/芯材のように中間に単一の金属領域を有する第4構成、(白金と金の濃度勾配領域)/(白金、金、銅の3元素を含む濃度勾配領域)/(金、銅の濃度勾配領域)から成る第5構成等が挙げられる。第4構成では、前述の第2構成で表面が濃度勾配領域となっている場合に相当し、表面改質によるボール接合、ループ制御時のワイヤ表面の傷の低減等の改善効果も得られる。第5構成では、3元素を含む濃度勾配を有効活用することで強度の大幅改善も達成可能となる。これら例示の組み合わせで、白金と金を入れ替えた構造でも機能を向上できる。上記例で、金元素の濃度分布をみると、正と負の濃度勾配を有しており、特性の安定化を促進し、これら濃度勾配の長さ、変化量等を制御することで、ループ特性、ウェッジ接合性等を向上することも可能である。
【0049】
該表皮層の構成が、金、パラジウム、白金、ロジウム、銀、ニッケルの1種以上の表皮主要金属を含有し、さらに最外表面に、芯材を構成する銅とは分離され、メッキなどにより表面に形成させた銅元素からなる単一金属領域又は銅元素を30mol%以上含有する合金層を有し、該表皮層の内部に表皮主要金属及び銅の濃度勾配を有し、表皮主要金属の濃度勾配が深さ方向に増加と減少の両方が存在するボンディングワイヤも有効である。以下、最表面近傍の銅元素を”銅out”で表記し、芯材を構成する銅元素を”銅in”で区別して表記する。
【0050】
表皮層の具体的な構造について、銅/金の成分系で例示して説明する。最外表面に銅outの単一金属領域が露出する場合、表面から深さ方向への表皮層の構成は、銅outの単一金属領域/(銅outと金の濃度勾配層1)/金の単一金属領域/(銅inと金の濃度勾配層2)で示される。銅元素に着目すると、外側の(銅outと金の濃度勾配層1)と、内部の(銅inと金の濃度勾配層2)とは、金単一層を介して分離されていることが特長で、銅元素の深さ方向の濃度勾配を比較すると、(銅outと金の濃度勾配層1)では銅は負の濃度勾配、(銅inと金の濃度勾配層2)では銅は正の濃度勾配で相反する。また、金元素も正と負の濃度勾配が混在する。こうした銅と金との2元素でそれぞれ正と負の濃度勾配で合計4種の濃度勾配が同時に含まれることにより、ウェッジ接合性の改善、ワイヤの強度、曲げ剛性の改善等により高い効果が得られる。この4種の濃度勾配を有することで、前述した、金元素と芯材の銅元素とだけで構成される単純な構造の表皮層よりも優れた長所を発現することも可能となる。また、金の単一金属領域が消失する場合でも同様の改善効果が得られる。
【0051】
その他、(銅outと金の濃度勾配層1)/金の単一金属領域/(銅inと金の濃度勾配層2)で例示される、銅outと、パラジウム、白金、ニッケルの1種以上の元素との濃度勾配層を持つ合金層が最外表面に露出する場合でも、金メッキとの接合性の改善等を付与することができる。これらのワイヤ構造の製造法の一例として、まずは銅out/金/銅in芯材の初期構造を作り、その後の拡散熱処理等により、銅元素の正と負の濃度勾配を形成することが可能である。
【0052】
前述した表皮層の構造について、2種の元素からなる構造について説明したが、さらに元素数が増えて、より多数の濃度勾配層を有する構造であれば、新型実装における複雑なループ形状、微細接続等への適用性をさらに高めることもできる。
【0053】
第三の手法は、芯材の銅合金の組成を適正化する技術であり、具体的には、銅を主成分とし、しかも、銀、スズ、金の一種以上を総計で0.1〜30質量%含有する芯材と、該芯材の上に形成された表皮層で構成され、該表皮層は金、パラジウム、白金の少なくとも1種以上の金属を主成分とし、しかも該表皮層の内部に銅の濃度勾配を有するボンディングワイヤであることが望ましい。芯材に銀、スズ、金を含有する銅合金とすることで、単一の銅だけの場合と比較して、ボール部の異形等を抑制することができ、接合されたボール部の真円性の向上、接合強度の増加等を達成することができる。ここで、添加量が0.1質量%以上であれば、上記のボール接合性の改善を量産レベルで安定して実現することができ、30質量%超であれば、ボール部の硬化により接合直下のチップに損傷を与えることが問題となるためである。
【0054】
表皮層の厚さは、0.05μm以上であることが望ましい。これは、0.05μm以上であれば、ワイヤ全体に均一に形成でき、表面の凹凸も少なく、表皮層の剥離等の問題もないため、酸化抑制、接合性等の十分な効果が得られる等の理由による。また、線径の70%以下であれば、工業的な量産性も高く、品質管理等も十分対応できる。厚さの下限について、好ましくは0.1μm以上であれば、高温に曝されたときの酸化抑制の効果が高まり、より好ましくは0.2μm以上であれば、比較的簡便に分析できるため品質保証等が容易となる等の利点が多い。一方の上限では、好ましくは線径の50%以内であれば内部に濃度変化層を均一に形成することが容易であり、より好ましくは線径の30%以内であれば電気抵抗の増加を低く抑えられる等の利点がある。
【0055】
表皮層の濃度分析について、ワイヤの表面からスパッタ等により深さ方向に掘り下げていきながら分析する手法、あるいはワイヤ断面でのライン分析又は点分析等が有効である。前者は、表皮層が薄い場合に有効であるが、厚くなると測定時間がかかり過ぎる。後者の断面での分析は、表皮層が厚い場合に有効であり、また、断面全体での濃度分布や、数カ所での再現性の確認等が比較的容易であることが利点であるが、表皮層が薄い場合には精度が低下する。ワイヤを斜め研磨して、拡散層の厚さを拡大させて測定することも可能である。断面ではライン分析が比較的簡便であるが、分析の精度を向上したいときには、ライン分析の分析間隔を狭くするとか、界面近傍の観察したい領域に絞っての点分析を行うことも有効である。これらの濃度分析に用いる解析装置では、EPMA、EDX、オージェ分光分析法、透過型電子顕微鏡(TEM)等を利用することができる。また、平均的な組成の調査等には、表面部から段階的に酸等に溶解していき、その溶液中に含まれる濃度から溶解部位の組成を求めること等も可能である。
【0056】
表皮層の中に濃度勾配に加えて、銅と導電性金属を主体とする金属間化合物相が含まれることも有効である。即ち、銅を主体とする芯材と導電性金属の表皮層で構成され、表皮層の内部には、銅の濃度勾配を有した部位と、銅と導電性金属を有する金属間化合物とが1層以上含まれるボンディングワイヤでは優れた特性が得られる。金属間化合物相が表皮層内に含まれることで、ワイヤの強度、弾性率等の機械的特性が増加し、ループの直線性の向上、封止時のワイヤ流れの抑制等に有効である。金属間化合物相は、銅と導電性金属が主体であり、それらの総計濃度が80mol%以上であることが望ましいが、芯材、表皮層に含有される合金化元素を一部含有しても構わない。例えば、導電性金属が金、パラジウム、白金等の場合に形成される金属間化合物相は、CuAu3、CuAu、Cu3Au、Cu3Pd、CuPd、Cu3Pt、CuPt、CuPt3、CuPt7等が候補であり、これらの金属間化合物相が、表皮層又は表皮層/芯材の界面に形成されることで、特性改善に有効である。これらの金属間化合物相の厚さは、0.001μmから表皮層の厚さの半分までが好ましい。
【0057】
表皮層を形成する表皮主要金属が、金、パラジウム、白金、銀、銅の場合に、さらに、Ca、Sr、Be、Al、希土類元素の少なくとも1種以上を総計で1〜300質量ppm含有することで、表皮層の強度、組織、塑性変形抵抗を調整することができるため、ウェッジ接合時にワイヤと電極材(Ag、Au、Pd等)との変形を制御する効果を促進できる。前述した表皮主要金属が濃度勾配を有している場合に、これらの元素の添加効果は高い効果を得ることが判明した。さらに、Ca、Sr、Be、Al、希土類元素が濃度勾配を有することで、より一層高い効果を得ることができる。
【0058】
銅を主成分とする芯材が、Ca、Sr、Be、Al、希土類元素の少なくとも1種以上を総計で1〜300質量ppm含有することで、ワイヤの組織、塑性変形抵抗を調整することにより、ウェッジ接合時にワイヤと電極材(Ag、Au、Pd等)との変形を制御する効果を促進できる。しかも、前述した表皮主要金属が濃度勾配を有している場合に、これらの元素の添加効果は高い効果を得ることが判明した。ここで、含有量が1質量ppm以上で上記効果が現れ、300質量ppm未満であれば、ボール形成時の酸化等への悪影響を抑えられる。さらに、Ca、Sr、Be、Al、希土類元素が濃度勾配を有することで、より一層高い効果を得ることができる。
【0059】
銅を主成分とする芯材が、銀、スズ又は金の1種以上を総計で0.1〜10質量%含有することで、ワイヤを高強度化し、樹脂封止時のワイヤ変形を軽減できる。しかも、前述した表皮主要金属が濃度勾配を有している場合に、これらの元素の添加効果は高い効果を得ることが判明した。ここで、含有量が0.1質量%以上で上記効果が現れ、10質量%超となるとワイヤの電気抵抗が上昇することが問題となるためである。さらに、Ca、Sr、Be、Al、希土類元素が濃度勾配を有することで、より一層高い効果を得ることができる。
【0060】
本発明のワイヤを製造するにあたり、芯材と表皮層の形成する工程と、銅元素の表皮層内の濃度勾配及び最表面への露出する熱処理工程が必要となる。
【0061】
表皮層を銅の芯材の表面に形成する方法には、メッキ法、蒸着法、溶融法等がある。メッキ法では、電解メッキ、無電解メッキ法のどちらでも製造可能である。ストライクメッキ、フラッシュメッキと呼ばれる電解メッキでは、メッキ速度が速く、下地との密着性も良好である。無電解メッキに使用する溶液は、置換型と還元型に分類され、膜が薄い場合には置換型メッキのみでも十分であるが、厚い膜を形成する場合には置換型メッキの後に還元型メッキを段階的に施すことが有効である。無電解法は装置等が簡便であり、容易であるが、電解法よりも時間を要する。
【0062】
蒸着法では、スパッタ法、イオンプレーティング法、真空蒸着等の物理吸着と、プラズマCVD等の化学吸着を利用することができる。いずれも乾式であり、膜形成後の洗浄が不要であり、洗浄時の表面汚染等の心配がない。
【0063】
メッキ又は蒸着を施す段階について、狙いの線径で導電性金属の膜を形成する手法と、太径の芯材に膜形成してから、狙いの線径まで複数回伸線する手法とのどちらも有効である。前者の最終径での膜形成では、製造、品質管理等が簡便であり、後者の膜形成と伸線の組み合わせでは、膜と芯材との密着性を向上するのに有利である。それぞれの形成法の具体例として、狙いの線径の銅線に、電解メッキ溶液の中にワイヤを連続的に掃引しながら膜形成する手法、あるいは、電解又は無電解のメッキ浴中に太い銅線を浸漬して膜を形成した後に、ワイヤを伸線して最終径に到達する手法等が可能である。
【0064】
表皮層が2種以上の表皮主要金属からなる複数の層を形成する場合に、複数の異なる表皮主要金属の層をメッキ法、蒸着法、溶融法等により段階的に形成することになる。その際に、異なる表皮主要金属を全て形成してから熱処理する方法、1層の表皮主要金属の形成と熱処理とを交互に施す方法等が有効である。
【0065】
上記手法により形成された表皮層と芯材を用い、表皮層中に主成分金属又は銅の一方又は双方の濃度勾配を形成する工程として、加熱による拡散熱処理が有効である。これは、表皮層と芯材の界面で、銅と導電性金属との相互拡散を助長するための熱処理である。ワイヤを連続的に掃引しながら熱処理を行う方法が、生産性、品質安定性に優れている。しかし、単純にワイヤを加熱しただけでは、表皮層の表面及び内部での銅の分布を制御できる訳ではない。通常のワイヤ製造で用いられる加工歪取り焼鈍をそのまま適用しても、表皮層と芯材との密着性の低下によりループ制御が不安定になったり、キャピラリ内部にワイヤ削れ屑が堆積して詰まりが発生したり、また、表面に露出した銅が酸化して接合強度が低下する等の問題を完全に解決することは困難である。そこで、熱処理の温度、速度、時間等の制御が重要である。
【0066】
好ましい熱処理法として、ワイヤを連続的に掃引しながら熱処理を行い、しかも、一般的な熱処理である炉内温度を一定とするのでなく、炉内で温度傾斜をつけることで、本発明の特徴とする表皮層及び芯材を有するワイヤを量産することが容易となる。具体的な事例では、局所的に温度傾斜を導入する方法、温度を炉内で変化させる方法等がある。ワイヤの表面酸化を抑制する場合には、N2やAr等の不活性ガスを炉内に流しながら加熱することも有効である。
【0067】
温度傾斜の方式では、炉入口近傍での正の温度傾斜(ワイヤの掃引方向に対し温度が上昇)、安定温度領域 炉出口近傍での負の温度傾斜(ワイヤの掃引方向に対し温度が下降)等、複数の領域で温度に傾斜をつけることが効果的である。これにより、炉入口近傍で表皮層と芯材との剥離等を生じることなく密着性を向上させ、安定温度領域で銅と導電性金属との拡散を促進して所望する濃度勾配を形成し、さらに炉出口近傍で表面での銅の過剰な酸化を抑えることにより、得られたワイヤの接合性、ループ制御性等を改善することができる。こうした効果を得るには、出入口での温度勾配を1℃/mm以上設けることが望ましい。
【0068】
温度を変化させる方法では、炉内を複数の領域に分割して、各領域で異なる温度制御を行うことで温度の分布を作ることも有効である。例えば、3ヶ所以上に炉内を分割して、独立して温度制御を行い、炉の両端を中央部よりも低温とすることで、温度傾斜の場合と同様の改善効果が得られる。また、ワイヤの表面酸化を抑制するため、炉の両端又は出口側を銅の酸化速度の遅い低温にすることで、ウェッジ接合部の接合強度の上昇が得られる。
【0069】
こうした温度傾斜又は温度分布のある熱処理は、生産性の点では最終線径で施すことが望ましいが、一方で、熱処理の後に伸線を施すことで表面の酸化膜を除去して低温での接合性を向上したり、さらに、伸線と歪み取り焼鈍を併用することで、キャピラリ内部でのワイヤ削れを低減する効果等も得られる。
【0070】
また、溶融法では、表皮層又は芯材のいずれかを溶融させて鋳込む手法であり、1〜50mm程度の太径で表皮層と芯材を接続した後に伸線することで生産性に優れていること、メッキ、蒸着法に比べて表皮層の合金成分設計が容易であり、強度、接合性等の特性改善も容易である等の利点がある。具体的な工程では、予め作製した芯線の周囲に、溶融した導電性金属を鋳込んで表皮層を形成する方法と、予め作製した導電性金属の中空円柱を用い、その中央部に溶融した銅又は銅合金を鋳込むことで芯線を形成する方法に分けられる。好ましくは、後者の中空円柱の内部に銅の芯材を鋳込む方が、表皮層中に銅の濃度勾配等を安定形成することが容易である。ここで、予め作製した表皮層中に銅を少量含有させておけば、表皮層の表面での銅濃度の制御が容易となる。また、溶融法では、表皮層にCuを拡散させるための熱処理作業を省略することも可能であるが、表皮層内のCuの分布を調整するために熱処理を施すことで更なる特性改善も見込める。
【0071】
さらに、こうした溶融金属を利用する場合、芯線と表皮層の少なくとも一方を連続鋳造で製造することも可能である。この連続鋳造法により、上記の鋳込む方法と比して、工程が簡略化され、しかも線径を細くして生産性を向上させることも可能となる。
【0072】
金、パラジウム、白金、ロジウム、銀又はニッケルの表皮主要金属の単一金属領域を、表皮層の表面または内部に形成する方法として、異なる表皮主要金属からなる2層の単一金属領域を芯材の表面に形成し、前述した濃度勾配を形成させる拡散熱処理を利用して、表面または内部に単一金属領域が残るよう熱処理条件を適正化することが有効である。
【0073】
また、表皮層の表面に単一金属領域を形成する別の手法として、拡散熱処理を施したあとに、単一金属領域を上述したメッキ法、蒸着法等により新たに形成することも可能である。この単一金属領域の下地との密着性を向上するため、単一金属領域の形成後にさらに熱処理を適宜行うことも有効である。
【0074】
銅の単一又は30mol%以上銅を含有する合金からなる最表領域を形成する一手法として、芯材の表面に金、パラジウム、白金、ロジウム、銀又はニッケルから選ばれる1種以上からなる層を形成し、その表面にさらに銅層を形成し、それから、異なる表皮主要金属からなる2層の単一金属領域を芯材の表面に形成し、拡散熱処理を適正な条件で行うことが有効である。ここでの金、パラジウム、白金、ロジウム、銀又はニッケルの層および銅層の形成工程については、前述したメッキ法、蒸着法、溶融法等を利用する。
【実施例】
【0075】
以下、実施例について説明する。
【0076】
ボンディングワイヤの原材料として、芯材に用いる銅は純度が約99.99質量%以上の高純度の素材を用い、外周部のAu、Pt、Pd、Cu、Ag、Ni、Rhの素材には純度99.9質量%以上の原料を用意した。
【0077】
ある線径まで細くした銅ワイヤを芯材とし、そのワイヤ表面に異なる金属の層を形成するには電解メッキ法、無電解メッキ法、蒸着法、溶融法等を行い、濃度勾配を形成するためにも熱処理を施した。最終の線径で表皮層を形成する場合と、ある線径で表皮層を形成してから、さらに伸線加工により最終線径まで細くする方法を利用した。電解メッキ液、無電解メッキ液は、半導体用途で市販されているメッキ液を使用し、蒸着はスパッタ法を用いた。直径が約50〜200μmのワイヤを予め準備し、そのワイヤ表面に蒸着、メッキ等により被覆し、最終径の15〜25μmまで伸線して、最後に加工歪みを取り除き、伸び値が4%程度になるように熱処理を施した。必要に応じて、線径30〜100μmまでダイス伸線した後に、拡散熱処理を施してから、さらに伸線加工を施した。
【0078】
溶融法を利用する場合には、予め作製した芯線の周囲に、溶融した金属を鋳込む方法と、予め作製した中空円柱の中央部に溶融した銅又は銅合金を鋳込む方法を採用した。芯線の直径は約3〜8mm、外周部の直径は約5〜10mmで行った。その後、鍛造、ロール圧延、ダイス伸線等の加工と、熱処理は行い、ワイヤを製造した。また、複数の層を形成するために、溶融法で形成した中間製品の表面に、電解メッキ法、無電解メッキ法、蒸着法等により別の層を形成する複合的な用法も行った。
【0079】
本発明例のワイヤの熱処理について、ワイヤを連続的に掃引しながら加熱した。局所的に温度傾斜を導入する方式、温度を炉内で変化させる方式等を利用した。この温度差は30〜200℃の範囲とし、温度分布、ワイヤ掃引速度等を適正化して、引張伸びが4%前後になるように調整した。熱処理の雰囲気では、大気の他に、酸化を抑制する目的でN2、Ar等の不活性ガスも利用した。比較例の熱処理工程について、伸線後のCuワイヤに熱処理を施してからメッキ層を形成した場合(比較例2、4、7、8)と、熱処理を伸線後と、メッキ層の形成後で2回施した場合(比較例3、6)で、試料を準備した。
【0080】
ワイヤの引張強度及び弾性率は、長さ10cmのワイヤ5本の引張試験を実施し、その平均値により求めた。
【0081】
ボンディングワイヤの接続には、市販の自動ワイヤボンダーを使用して、ボール/ウェッジ接合を行った。アーク放電によりワイヤ先端にボール(初期ボール径:35〜50μm)を作製し、それをシリコン基板上の電極膜に接合し、ワイヤ他端をリード端子上にウェッジ接合した。ボール溶融時の酸化を抑制するために、ワイヤ先端にN2ガスを吹き付けながら、放電させた。
【0082】
接合相手としては、シリコン基板上の電極膜の材料である、厚さ1μmのAl合金膜(Al−1%Si−0.5%Cu膜、Al−0.5%Cu膜)を使用した。一方、ウェッジ接合の相手には、表面にAgメッキ(厚さ:1〜4μm)したリードフレーム、又はAuメッキ/Niメッキ/Cuの電極構造の樹脂基板を使用した。
【0083】
ボンディング工程でのループ形状安定性について、ワイヤ長が3mmと5mmの2種類のボンディング試料を作製し、それぞれ500本のワイヤを投影機により観察し、ワイヤの直線性、ループ高さのバラツキ等を判定した。ワイヤ長が長い5mmでの条件は、より厳しい評価となる。ワイヤ長3mmで、直線性、ループ高さ等の不良が5本以上ある場合は、問題有りと判断して×印で表し、ワイヤ長3mmで不良が2〜4本で、且つ、ワイヤ長5mmで不良が5本以上の場合には、改善が必要と判断して△印で表し、ワイヤ長3mmで不良が1本以下、且つ、ワイヤ長5mmで不良が2〜4本の場合には、ループ形状は比較的良好であるため○印で示し、ワイヤ長5mmで不良が1本以下の場合にはループ形状は安定であると判断し◎印で表した。不良原因の一つに、芯線と外周部の界面の密着性が十分でないこと、断面での特性バラツキ等が想定される。
【0084】
樹脂封止時のワイヤ流れ(樹脂流れ)の測定は、ワイヤ長5mmのボンディング試料を作製し、市販のエポキシ樹脂で封止した後に、軟X線非破壊検査装置を用いて、ワイヤ流れが最大の部分の流れ量を20本測定し、その平均値をワイヤのスパン長さで除算した値(百分率)を封止時のワイヤ変形率とした。このワイヤ変形率が6%以上であれば不良と判断して×印、4%以上6%未満であれば改善が必要であるため△印、2.5%以上4%未満であれば実用上は問題ないと判断して○印、2.5%未満であればワイヤ変形の低減が良好であるため◎印で表した。
【0085】
初期ボール形状の観察では、接合前のボールを20本観察して、形状が真球であるか、寸法精度が良好であるか等を判定した。異常形状のボール発生が2本以上であれば不良であるため×印、異形が2本以下だが、ワイヤに対するボール位置の芯ずれが顕著である個数が5個以上である場合には△印、芯ずれが2〜4個であれば実用上の大きな問題はないと判断して○印、芯ずれが1個未満で寸法精度も良好である場合は、ボール形成は良好であるため◎印で表記した。
【0086】
圧着ボール部の接合形状の判定では、接合されたボールを500本観察して、形状の真円性、寸法精度等を評価した。ボール圧着径は、ワイヤ径の2〜3倍の範囲になる条件を選定した。真円からのずれが大きい異方性や楕円状等の不良ボール形状が5本以上であれば不良と判定し×印、不良ボール形状が2〜4本、又は花弁状等のボール圧着部の外周部が8本以上であれば改善が必要であるため△印、不良ボール形状が1本未満、且つ、花弁状変形が3〜7本であれば実用上は問題ないレベルと判定し○印、花弁状変形が2本以下であれば良好であるため◎印で表記した。
【0087】
ネック部の強度評価は、ループの下部に掛けたフックを上方移動させて破断強度を読み取るプル試験法で、20本の破断荷重(プル強度)を測定した。測定部位に合わせてフック位置を変えることができ、ネック部の強度を評価するには、ボール接合部の近傍でプル試験(ネックプル強度)を行い、ウェッジ接合部の強度評価では、ウェッジ接合部からワイヤスパンの1/4程度の近くでプル強度を測定した。ネックプル強度が、ワイヤ強度の60%以上であれば良好であるため◎印、40%未満であれば改善が必要であるため△印、その中間であれば○印で表記した。
【0088】
リード側にワイヤを接合するウェッジ接合性の判定では、低温になるほど接合が困難になることから、ステージ温度を220℃、180℃の低温で、それぞれ1000本のボンディングを行い、連続作業性、ワイヤの変形形状等を調査した。220℃で、接合部での完全剥離が2本以上生じた場合は×印、220℃での完全剥離が2本未満、且つ、ワイヤ破断近くの部分的な剥離が生じている場合には改善が必要であるため△印、220℃では不良はなく、しかも180℃での完全剥離が1本以下である場合には○印、180℃での完全剥離がなく、部分剥離も3本未満である場合には◎印で表示した。
【0089】
ウェッジ接合部のプル強度測定では、接合界面の密着性を判定するために、ワイヤ長が3mmの試料でウェッジ接合部の近傍でプル試験を行い、20本の平均値を求めた。
【0090】
表1〜4、6には、本発明に係わる銅ボンディングワイヤの評価結果を示し、表5には比較例を示している。
【0091】
【表1】

【0092】
【表2】

【0093】
【表3】

【0094】
【表4】

【0095】
【表5】

【0096】
【表6】

【0097】
第1請求項に係わるボンディングワイヤは実施例1〜55であり、第2請求項に係わるボンディングワイヤは実施例1〜51であり、第3請求項に係わるボンディングワイヤは実施例1〜40、第4請求項に係わるボンディングワイヤは実施例1〜29、41〜46、第5請求項に係わるボンディングワイヤは実施例56〜69、第6請求項に係わるボンディングワイヤは実施例52〜55、第7請求項に係わるボンディングワイヤは実施例3、7、10、32、43、50、59、61、第8請求項に係わるボンディングワイヤは実施例74〜78、第9請求項に係わるボンディングワイヤは実施例70〜75に相当する。表5の比較例1〜8には、本発明の請求項に該当しないボンディングワイヤの結果を示す。
【0098】
それぞれの請求項の代表例について、評価結果の一部を説明する。
【0099】
実施例1〜55のボンディングワイヤは、本発明に係わる、表皮層の内部に金、パラジウム、白金、ロジウム、銀又はニッケルから選ばれる2種以上の主成分金属を含み、前記表皮層内にワイヤ径方向に主成分金属又は銅の一方又は双方の濃度勾配を有することにより、ボール部の形成性、ワイヤ強度も十分高いことが確認された。これらの特性は、比較例1〜8の銅以外の元素の膜を単に表面に形成したCuワイヤでは十分でなく、ワイヤ径方向に濃度勾配を有する実施例1〜55では改善されていることが明確になった。
【0100】
実施例1〜51のボンディングワイヤは、本発明に係わる、表皮層内に金、パラジウム、白金、ロジウム、銀、ニッケルの少なくとも1種以上が深さ方向に増加と減少の両方の濃度勾配を有することにより、ループ制御性、ウェッジ接合性が良好であることを確認した。
【0101】
実施例1〜40のボンディングワイヤは、本発明に係わる、表皮層中に金、パラジウム、白金、ロジウム、銀又はニッケルの単一金属領域を有することにより、ウェッジ接合性、圧着形状が良好であることを確認した。
【0102】
実施例1〜29、41〜46のボンディングワイヤは、本発明に係わる、表皮層の内部に、金、パラジウム、白金、ロジウム、銀又はニッケルの単一金属領域を有することにより、プル強度が高く、ネック損傷が低減しており、低ループ化に十分対応できることを確認した。
【0103】
実施例56〜69のボンディングワイヤは、本発明に係わる、銅の単一又は30mol%以上銅を含有する合金からなる最表領域と、表皮層の内部に、金、パラジウム、白金、ロジウム、銀又はニッケルの少なくとも1種と銅がワイヤ径方向に増加と減少の両方の濃度勾配を有する部位が存在することにより、ボール形成性が良好で、プル強度も高く、ウェッジ接合性も向上していることを確認した。
【0104】
実施例52〜55のボンディングワイヤは、本発明に係わる、表皮層の内部に、金、パラジウム、白金、ロジウム、銀又はニッケルの主成分金属の少なくとも1種と銅の濃度勾配と、主成分金属の2種以上を0.1mol%以上で均一濃度で含有する合金層を有することにより、プル強度が高く、ネック損傷の低減、プル強度の増加等により低ループ化に対応できることを確認した。
【0105】
実施例3、7、10、32、43、50、59、61のボンディングワイヤは、表皮層中に金属間化合物を形成することが確認されており、ワイヤが高強度化され、使用時の直線性、樹脂流れ抑制等が向上していた。
【0106】
実施例74〜78のボンディングワイヤは、本発明に係わる、芯部にCa、Sr、Be、Al又は希土類元素を所定量含有することにより、ウェッジ接合性が向上しており、また、実施例70〜75のボンディングワイヤは、芯部に銀、スズ又は金を所定量含有することにより、樹脂流れが改善していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅を主成分とする芯材と、該芯材の上に芯材と異なる組成の導電性金属の表皮層を有するボンディングワイヤであって、前記表皮層の主成分が、金、パラジウム、白金、ロジウム、銀又はニッケルから選ばれる2種以上であり、前記表皮層内にワイヤ径方向に主成分金属又は銅の一方又は双方の濃度勾配を有する部位が存在することを特徴とする半導体装置用ボンディングワイヤ。
【請求項2】
銅を主成分とする芯材と、該芯材の上に芯材と異なる組成の導電性金属の表皮層を有するボンディングワイヤであって、前記表皮層の主成分が、金、パラジウム、白金、ロジウム、銀又はニッケルから選ばれる2種以上であり、前記表皮層内にワイヤ径方向に主成分金属又は銅の一方又は双方の濃度勾配を有する部位が存在すると共に、表皮層の主成分の少なくとも1種がワイヤ径方向に増加と減少の両方を有することを特徴とする半導体装置用ボンディングワイヤ。
【請求項3】
前記表皮層の表面側に、さらに金、パラジウム、白金、ロジウム、銀又はニッケルの単一金属領域を有する請求項1又は2に記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。
【請求項4】
前記表皮層の内部に、金、パラジウム、白金、ロジウム、銀又はニッケルの単一金属領域を有する請求項1又は2に記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。
【請求項5】
銅を主成分とする芯材と、該芯材の上に芯材と異なる組成の導電性金属の表皮層を有するボンディングワイヤであって、前記表皮層の表面側に、銅の単一又は30mol%以上銅を含有する合金からなる最表領域を有し、前記表皮層の主成分が、金、パラジウム、白金、ロジウム、銀又はニッケルから選ばれる1種以上であり、前記表皮層内にワイヤ径方向に主成分金属の少なくとも1種と銅がワイヤ径方向に増加と減少の両方の濃度勾配を有する領域が存在することを特徴とする半導体装置用ボンディングワイヤ。
【請求項6】
銅を主成分とする芯材と、該芯材の上に芯材と異なる組成の導電性金属の表皮層を有するボンディングワイヤであって、前記表皮層の主成分が、金、パラジウム、白金、ロジウム、銀又はニッケルから選ばれる1種以上であり、前記表皮層内にワイヤ径方向に主成分金属の少なくとも1種と銅の濃度勾配を有する領域が存在し、前記表皮層の表面側に、金、パラジウム、白金、ロジウム、銀又はニッケルの2種以上を0.1mol%以上の均一濃度で含有する合金の最表領域が存在することを特徴とする半導体装置用ボンディングワイヤ。
【請求項7】
前記表皮層内に、金属間化合物を含有する請求項1〜6のいずれかに記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。
【請求項8】
前記銅を主成分とする芯材が、Ca、Sr、Be、Al又は希土類元素から選ばれる1種以上を総計で1〜300質量ppm含有する請求項1〜7のいずれかに記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。
【請求項9】
前記銅を主成分とする芯材が、銀、スズ又は金の1種以上を総計で0.1〜10質量%含有する請求項1〜8のいずれかに記載の半導体装置用ボンディングワイヤ。

【公開番号】特開2010−272884(P2010−272884A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174551(P2010−174551)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【分割の表示】特願2005−638(P2005−638)の分割
【原出願日】平成17年1月5日(2005.1.5)
【出願人】(306032316)新日鉄マテリアルズ株式会社 (196)
【Fターム(参考)】