説明

半導体装置

【課題】 製品としての半導体集積回路の仕様や特性などを無線ICタグで管理することが可能な半導体集積回路およびこれをパッケージに実装してなる半導体装置を安価に提供することができるようにする。
【解決手段】 所定の機能を有する本来の半導体集積回路(110)が形成される半導体チップ(100)上に無線ICタグ形成領域を設け、同一チップ上に無線ICタグ(120)を形成するとともに、当該半導体チップ上もしくは当該半導体チップが実装されるパッケージ(240)にアンテナとなる導電性パターン(150,221)を形成するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路に適用して有効な技術に関し、特に一般に無線ICタグと呼ばれる無線通信機能を有する電子荷札用半導体集積回路を本来の機能を有する回路と同一チップ上に形成してなる半導体集積回路さらにはこれをパッケージに実装してなる半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、識別コードなど所定のデータを記憶したROM(リード・オンリ・メモリ)と、外部の読取装置との間で無線による送受信を行なう送受信回路と、外部からの要求等に応じて上記ROMからデータを読み出して送受信回路により外部へデータを出力させる制御や所定の演算処理などを行なったりする論理回路と、これらの回路に電源電圧を供給する電源回路などを内蔵した無線通信機能を有する電子荷札用半導体集積回路(以下、無線ICタグと称する)が知られている(特許文献1)。
【0003】
かかる無線ICタグは、ユーザに出荷される製品の包装としての容器や箱に組み込んで製造年月日や製品の種類、仕様、特性などの情報を内蔵ROMに記憶させて出荷して製品の情報管理に、また流通課程では内蔵ROMに流通経路などの情報を追加書き込みして製品の流通を管理するのに利用したり、店舗では内蔵ROMに商品コード等を記憶させて商品にタグとして付着しておいて、在庫管理やレジを通過する際に所定の読取装置でROM内のコードを読み取ることで従来のバーコードによる精算システムに代わるものとして利用されるようになって来ている。
【特許文献1】特開平07−200749号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、無線ICタグそれ自身は独立した製品として製造されていた。そのため、例えば半導体集積回路のように多数の製品がまとめて容器や箱に収納されて出荷され1つ1つが別個の容器や箱に収納されることのない製品にあっては、1つ1つの製品を無線ICタグでそれぞれ管理することが困難であった。そこで、製品としての半導体集積回路チップのパッケージ内に無線ICタグチップを実装して製品管理に利用する技術が考えられる。
【0005】
しかしながら、そのようにすると、製造コストが増加したり、パッケージ内のどちらか一方のチップに故障が発生すると不良品となるので、歩留まりが低下したりするという課題がある。
【0006】
この発明の目的は、製品としての半導体集積回路の仕様や特性などを無線ICタグで管理することが可能な半導体装置を提供することにある。
【0007】
この発明の他の目的は、無線ICタグを搭載しパッケージに実装してなる半導体装置を安価に提供することができるようにすることにある。
【0008】
この発明のさらに他の目的は、無線ICタグを搭載しパッケージに実装してなる半導体装置の歩留まりを向上させることができる技術を提供することにある。
【0009】
この発明のさらに他の目的は、無線ICタグを本来の半導体集積回路と同一のチップ上に形成した場合に、無線ICタグ部と本来の半導体集積回路部との間のリーク電流を防止して低消費電力化を図るとともに微弱な電波によるリード・ライトが可能な半導体集積回路およびこれをパッケージに実装してなる半導体装置を提供することにある。
【0010】
この発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴については、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願において開示される発明のうち代表的なものの概要を説明すれば、下記のとおりである。
すなわち、所定の機能を有する本来の半導体集積回路が形成される半導体チップ上に無線ICタグ形成領域を設け、同一チップ上に無線ICタグを形成するとともに、当該半導体チップ上もしくは当該半導体チップが実装されるパッケージにアンテナとなる導電性パターンを形成するようにしたものである。
【0012】
上記した手段によれば、半導体集積回路の仕様や特性などの情報をそれ自身に持たせることができるため管理が容易になるとともに、本来の半導体集積回路が形成される半導体チップ上に無線ICタグを形成するため、別個のチップに形成する場合に比べて製造コストを下げることができる。また、パッケージには1つのチップが実装されるだけであるため、別個のチップに形成し実装する場合に比べて歩留まりも向上させることができる。
【0013】
また、望ましくは、無線ICタグ部と本来の半導体集積回路部とで電源ラインを分離するとともに、両者の間にはこれらを電気的に分離する絶縁分離領域を設けるようにする。これにより、同一のチップ上に形成した場合に、無線ICタグ部と本来の半導体集積回路部との間でリーク電流が流れるのを防止することができ、リークがある場合に比べて、本来の半導体集積回路では低消費電力化を図れるとともに無線ICタグでは微弱な電波によるリード・ライトが可能になる。
【0014】
さらに、本願の他の発明は、本来の半導体集積回路が形成された半導体チップと無線ICタグが形成された半導体チップとをひとつのパッケージ内に実装するとともに、いずれかの半導体チップ上もしくはこれらの半導体チップが実装されるパッケージにアンテナとなる導電性パターンを形成するようにしたものである。これによって、内部の半導体集積回路の仕様や特性などの情報を半導体装置それ自身に持たせることができるため管理が容易になる。
【0015】
また、望ましくは、前記無線ICタグには、電気的に書き込み可能な不揮発性メモリ回路を設け、該メモリ回路は読み出し専用の領域と、1度だけ書き込みが可能な領域と、複数回書き込みが可能な領域(書き替え可能領域)とに分けるようにする。これにより、当該半導体集積回路に関する書き替え不要なデータが誤って上書きされて消失したり、不正に改ざんされたりするおそれがなくデータの信頼性が向上する一方、ユーザが必要に応じて更新のための書き込みを行ないたいデータも格納することができ、使い勝手が向上するようになる。
【発明の効果】
【0016】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば下記のとおりである。
すなわち、本発明に従うと、半導体集積回路の仕様や特性などの情報を、それをパッケージに実装した半導体装置自身に持たせることができるため管理が容易になるとともに、製造コストを下げ、歩留まりも向上させることができる。また、リーク電流が流れるのを防止して、低消費電力化を図れるとともに微弱な電波によるリード・ライトが可能になるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明を適用した半導体集積回路の第1の実施例を示す。図1において、符号100で示されているのは単結晶シリコンのような1個の半導体チップ、101は該チップの周縁部に沿って並んで形成されたボンディングパッドである。
【0018】
図1に示されているように、本実施例においては、半導体チップ100上に本来の半導体集積回路部(本体IC)110の他に無線ICタグ部120が設けられ、半導体集積回路部110と無線ICタグ部120との間には両者を電気的に分離する絶縁分離領域130が設けられている。ボンディングパッド101のうち101a,101bは、無線ICタグ部120用のパッドであり、後述のアンテナに接続される。絶縁分離領域130は半導体チップの表面を選択酸化して形成される絶縁体あるいは半導体チップの表面に溝を掘って絶縁材料を充填してなる絶縁構造で構成することができる。
【0019】
特に制限されるものでないが、無線ICタグ部120は、図2に示すように、外部の読取装置との間で無線による送受信を行なう送受信回路121と、製造元コードや製造番号など所定のデータを記憶するメモリ回路122と、外部からの要求等に応じて上記メモリ回路122へデータを書き込んだりデータを読み出して送受信回路121により外部へデータを出力させる制御や所定の演算処理などを行なったりするコントロール回路123と、上記各回路121〜123に供給する電源電圧を生成する電源回路124などから構成されている。
【0020】
上記送受信回路121にはアンテナ150が接続され、アンテナを介して受信した交流信号に含まれる受信情報を抽出(復調)する機能や送信情報を搬送波に乗せた交流信号を形成(変調)してアンテナを駆動して送信する機能を有するように構成される。上記電源回路124は、コイルの誘導現象を利用して電力の供給を受け、受信側コイルに生じた交流信号をダイオードブリッジ回路などで整流して内部直流電源電圧を生成するように構成される。誘導現象を利用して電力の供給を受ける方式は、非接触型ICカードなどでも利用されている公知の技術であるので、詳しい説明は省略する。無線ICタグ部120はマイクロ波で送受信するものであっても良い。
【0021】
上記メモリ回路122は、製造工程や流通過程で後からデータを書き込むことができるようにするため、読み出し専用のROM(リード・オンリ・メモリ)と電気的に書き込み可能なEPROMや電気的に書き込み消去可能なEEPROMのような不揮発性メモリにより構成される。表1には、上記メモリ回路122が例えば256バイトのような記憶容量を有するように形成された場合のデータフォーマットと各領域の機能、格納すべきデータの例が示されている。
【0022】
【表1】

【0023】
表1に示されているように、この実施例では、メモリ回路122は読み出しのみ可能な領域と、1回だけ書き込み可能な領域と、何度も書き込み可能な領域とに分けられている。
【0024】
このうち、読み出しのみ可能な領域には、製造番号や製造年月日、ウェハ特性などメーカ側の情報が格納される。これらの情報は製品に固有のものであり書き替える必要がないので、この領域は、マスクROMやヒューズROMなど再書き込み不能なメモリにより構成したり、EPROMにより構成しチップ状態でのみ書込みができパッケージに実装された後に外部端子から書込みができないような構成にすることができる。
【0025】
1回だけ書き込み可能な領域には、流通来歴や素子の特性、配線特性など変更不要であってICに固有の情報が格納される。この領域は、1回だけ書き込みが行なえればよいので、EPROMにより構成することができる。流通来歴を書き込めるようにするためには、パッケージに実装された後に外部端子から書込みができるような構成にするのがよい。
【0026】
何度も書き込み可能な領域は、ユーザが自由に任意の情報を格納することができるように開放されている記憶領域として提供される。この領域は、何度も書き込みが行なえるようにするため、フラッシュメモリやEEPROMにより構成され、かつパッケージに実装された後に外部端子から書込みができるような構成にされる。
【0027】
上記のように、3つの領域をそれぞれ異なるハードウェアのメモリにより構成する代わりに、全体を電気的に書き込み消去可能な不揮発性メモリにより構成し、アドレスを用いてコントロール回路123によってソフト的に各領域の機能を管理するように構成しても良い。具体的には、例えばアドレスの上位2ビットが"00"の領域は読み出し専用、上位2ビットが"01"の領域は1回だけ書き込み可能、上位2ビットが"10"および"11"の領域は何度も書き込み可能な領域と定義して管理することが考えられる。この場合、上位2ビットはフラグとみなすことができる。
【0028】
図3は、本発明を適用した半導体集積回路の第2の実施例を示す。
この実施例の半導体集積回路は、無線ICタグ部120に、アンテナ接続用の一対のパッド101a,101bの他に、製造ライン等でパッケージに封入される前にプローブを当てて内部のROMにデータを格納するためのパッドP1,P2を設けたものである。このパッドP1,P2は、ボンディングワイヤによってパッケージ側のリード端子に接続されることがないようになっている。
【0029】
図3のうち(A)は、アンテナ接続用のパッド101a,101bに電源用のプローブを当てて電源電圧を直接印加してICタグ内の論理回路とメモリ回路を活性化させることができるように電源回路が構成されている場合、あるいはアンテナを介して電源を与える場合で、後述のようにパッケージではなく当該半導体チップの上にアンテナとなる導電パターン150が形成されていてパッドP1,P2にプローブを当ててデータを格納する場合、に適用することができる実施例である。
【0030】
図3(B)は、ウェハ状態でパッドP1,P2にプローブを当ててデータを格納する場合に、本来の半導体集積回路部110の電源電圧端子から無線ICタグ部120へも電源電圧を供給できるようにした例であり、後述のようにチップのパッケージにアンテナとなる導電パターンが形成される場合に適用すると有効な実施例である。この実施例においては、無線ICタグ部120のアンテナ接続用のパッド101a,101bと本来の半導体集積回路部110の給電用パッド101c,101dとの間を接続する電源ラインL1,L2とその途中に設けられたスイッチ素子SW1,SW2と、該スイッチの状態を制御するレジスタREGが設けられている。レジスタREGは、チップに電源電圧が印加されると自動的にスイッチ素子SW1,SW2をオン状態にするように設定が行なわれ、内部の制御回路の動作でオフ状態に変更できるように構成すると良い。
【0031】
図4には、上記半導体チップ100をパッケージに実装した第1の実施例の半導体装置が示されている。このうち(A)は平面説明図、(B)は断面説明図である。図4において、図1と同一もしくは相当する部位には同一の符号を付して重複した説明は省略する。
【0032】
図4(A)に示されているように、この実施例においては、半導体チップ100が載置された絶縁基板210の表面にチップ100を囲むように、アンテナコイルとなる導電パターン221と電源ラインとなるリング状の導電パターン222,223が設けられている。これらの導電パターン221〜223のうち、アンテナコイルとなる導電パターン221は一部が切断されて2つの端部には、一端が無線ICタグ用のパッド101a,101bに結合されたボンディングワイヤ231,232の他端が結合されている。
【0033】
また、電源ライン用の導電パターン222,223には、それぞれ半導体チップ100のボンディングパッド101のうち半導体集積回路部110の電源パッドと電気的に接続するボンディングワイヤ233,234の一端が結合されている。なお、図4(A)において、半導体チップ100の周囲に放射状に設けられているのはリード端子であり、各リード端子201には半導体チップ100のボンディングパッド101のうち信号入出力用のパッドと電気的に接続するボンディングワイヤ235の一端が結合されている。240は、パッケージを構成する樹脂もしくはレジンである。
【0034】
この実施例において、電源ライン用の導電パターン222,223は、必須のものではなく省略することが可能である。また、この実施例においては、半導体チップ100を絶縁基板210の表面に載置しているが、絶縁基板210の内側をくり抜いて窓を有する枠状に形成して、半導体チップ100をリードフレームのダイ部分に載置して上記窓から臨むようにしても良い。
【0035】
図5は、本発明を適用した半導体装置の第2の実施例を示す。
この実施例は、図4の実施例における電源ラインとなるリング状の導電パターン222,223を設けずに、代わりにアンテナコイルとなる導電パターン221を渦巻状に形成し、内端と外端に無線ICタグ用のパッド101a,101bに結合されたボンディングワイヤ231,232の他端を結合したものである。この実施例によれば、チップやパッケージの大きさが同じであれば、図4の実施例に比べてアンテナコイルのインダクタンスを大きくして微弱な信号で外部装置と通信を行なうことができる。導電パターン221の巻き数はパターンの加工精度とチップおよびパッケージサイズとの関係によって決定されるが、許される範囲でできるだけ巻き数を多くするのが望ましい。
【0036】
また、この実施例では、アンテナコイルとなる導電パターン221を、リード端子が形成されるリードフレームによって構成することができる。すなわち、組み立て時には図示しないリードフレーム本体と一体の4隅のリード201a〜201dによってアンテナコイルとなる導電パターン221を保持し、チップ100を樹脂もしくはレジンでモールドした後に、リード201a〜201dを他のリードと同様にリードフレーム本体から切り離すことで、電位的にフローティングなアンテナコイルとすることができる。
【0037】
さらに、第1の実施例では、リード端子201がリードピンとして構成されているのに対し、第2の実施例では、リード端子201の外側の端部がパッケージ240の下面に露出するように折り曲げられ、半田ボール250によってリード端子201をプリント基板上に実装させるように構成されている。リード端子の形状は第1の実施例と第2の実施例で逆にしてもよい。第1の実施例と第2の実施例では、リード端子の形状は図示されているものに限定されるものでなく、これら以外の形状であっても良い。
【0038】
図6(A)、(B)は上記実施例の変形例を示す。この変形例は、本来の半導体集積回路部110が形成された半導体チップ100上に2つの無線ICタグ部120a,120bを設けて同一のデータを格納しておくようにしたものである。これにより、データを読み出したときに2つのデータのうち一方が失われていても残りを有効なデータとすることで、歩留まりを向上させることができるとともに、読み出した2つのデータを比較し両者が一致したときにのみ有効なデータであると判定することでデータの信頼性を向上させることができる。
【0039】
この変形例は、1つの半導体チップ100上に2つの無線ICタグ部120a,120bが設けられていても、デバイス全体が小さいのでアンテナを介してのデータの格納、読み出しは前記実施例と全く同じでよく、2つの無線ICタグ部120a,120bに対して別々に行なう必要はなく1回の動作で行なうことができる。
【0040】
図6(A)の変形例と(B)の変形例との差異は、(A)の変形例では2つの無線ICタグ部120a,120bが互いに離れた位置に設けられているとともにアンテナとなる導電パターン221が2つの無線ICタグ部120a,120bに対して別々に設けられているのに対し、(B)の変形例では2つの無線ICタグ部120a,120bが隣接して配置されるとともにアンテナとなる導電パターン221が共通に設けられている点である。
【0041】
半導体集積回路は欠陥が局所的に発生することが多いので、図6(A)の変形例の方は歩留まり向上を優先したい場合に適用すると有効であり、(B)の変形例の方は信頼性向上を優先したい場合に適用すると有効である。また、(B)の変形例は同一の面積であれば(A)よりもアンテナコイルの巻き線数を多くすることができるので、より微弱な電波でデータのリード・ライトが行なえるという利点がある。
【0042】
図7は、本発明を適用した半導体装置の第3の実施例を示す。図7(A)は横から見た状態、(B)は下から見た状態である。この実施例は、パッケージ240の下面にアンテナコイルとなる渦巻状の導電パターン221を設けたものである。さらに、渦巻状の導電パターン221の両端にそれぞれ無線ICタグ用のパッド101a,101bにボンディングワイヤ231a,231bで接続されたリード端子201a,201bを接続するための配線パターン261a,261bがパッケージ240の下面にされ、半田ボール250a,250bによってリード端子と配線パターンとが接続されるようになっている。
【0043】
図8は、本発明を適用した半導体装置の第4の実施例を示す。この実施例は、BGA(Ball Grid Array)型のパッケージに適用したものである。図8(A)は横から見た状態(図8CのA−A’線に沿った断面)、図8(B)はBGA基板241を上から見た状態、図8(C)はBGA基板241を下から見た状態である。パッケージとなるBGA基板241には表裏に導電体からなる配線パターン221,261〜263を形成した絶縁基板が用いられ、上面の中央にICタグを搭載した半導体チップ100が半田ボール252を用いたボンディングで実装されているとともに、下面の中央にアンテナコイルとなるツイン渦巻状の導電パターン221がプリント配線技術で形成されている。
【0044】
また、BGA基板241の底面の周縁部には、特に制限されるものでないが、外部端子となる半田ボール250が2列に配置されているとともに、BGA基板241のツイン渦巻状の導電パターン221の両端に対応する位置には貫通孔に導電材料を充填してなるビア(via)と呼ばれる構造271および半田ボール251および配線パターン261によって、無線ICタグのアンテナ接続用パッド(101a,101b)とアンテナコイルとしての導電パターン221の端部に接続されている。さらに、半導体チップ100の本来の半導体集積回路の入出力端子および電源端子としてのパッドは、各パッドに対応して設けられた半田ボール252とBGA基板241を構成する多層基板の内部に形成された配線パターン262およびビア272によってBGA基板241の底面に配置された外部端子としての半田ボール250に接続されている。
【0045】
図9は、本発明を適用した半導体集積回路の第3の実施例を示す。このうち図9(A)の半導体集積回路は、回路が形成された半導体チップ100の上方に層間絶縁膜を介して多層配線技術で形成したアンテナコイルとなる渦巻状の導電パターン150を設けたものである。渦巻状の導電パターン150の両端は、層間絶縁膜に形成されたスルーホール161〜163とリード配線152によって無線ICタグ120のアンテナ接続用パッドに接続されるようになっている。
【0046】
図9(B)は、回路形成領域の上方にアンテナコイルとなる導電パターン150を設ける代わりに、パッドの外側つまり半導体チップ110の周縁部にアンテナコイルとなる導電パターン150を設けるようにしたものである。この場合、複数の配線層を利用して基板と垂直の方向にリングを重ねたような複数巻き線のコイルとして形成することができる。
【0047】
図9(A)のように回路形成領域の上方にアンテナコイルとなる導電パターン150を設ける場合には、配線層の数を増やさずに渦巻状の導電パターン150を形成しようとすると本来の配線を避けるように配線層を変えながら全体を設計しなければならない。そのため、パターン設計が面倒となるが、図9(B)のように回路形成領域の外側にアンテナコイルとなる導電パターン150を設ける場合には、他の配線との干渉を考慮しなくても良いため、パターン設計が容易になるという利点がある。
【0048】
図10は、本発明を適用したパッケージ実装状態の半導体装置の他の実施例を示す。この実施例は、本来の半導体集積回路110が形成された半導体チップ100Aとは別個に無線ICタグ用半導体集積回路120が形成された半導体チップ100Bを、共通の絶縁基板210に載せて1つのパッケージに実装するようにしたものである。
【0049】
特に制限されるものでないが、この実施例では、無線ICタグ用半導体チップ100Bのパッド101a,101bが接続されるアンテナコイルとなるリング状の導電パターン150は絶縁基板210に形成されている。アンテナコイルとなる導電パターン221は、図5に示されているように絶縁基板210上にて渦巻状に形成したり、図8に示されているようにパッケージ240の下面に形成したり、図9(A)に示されているように半導体チップ100に形成したものを用いるようにしてもよい。
【0050】
図11は、本発明を適用したパッケージ実装状態の半導体装置のさらに他の実施例を示す。この実施例は、本来の半導体集積回路110が形成された半導体チップ100Aとは別個に無線通信用半導体集積回路120’が形成された半導体チップ100Bを、共通の絶縁基板210に載せて1つのパッケージに実装するようにしたものである。ここで、無線通信用半導体集積回路120’とは、例えば図2に示されているような構成を有する無線ICタグ部120のうちメモリ122を除いたような構成を有するものを指す。アンテナコイルとなる導電パターン221は、図10の実施例と同様である。
【0051】
この実施例では、識別コードやICの仕様、製造履歴等のデータは、半導体チップ100A上に形成されているメモリ112を使用して記憶される。また、半導体チップ100A上のメモリ112に、無線通信用半導体集積回路120’によってデータをリード・ライトできるようにするため、無線通信用半導体集積回路120’にはアンテナ(221)に接続されるパッド101a,101bとは別個に、本来の半導体集積回路110との間でデータの入出力を行なうためのパッド101c,101dが設けられ、本来の半導体集積回路110側の対応するパッドとボンディングワイヤで接続される。
【0052】
この場合、一方のパッドは同期用のクロックの送信、他方のパッドはデータの送受信のために使用される。パッドの数を少なくするためにはシリアル通信が有効であり、その場合、シリアルインタフェース回路を本来の半導体集積回路110と無線通信用半導体集積回路120’のそれぞれに設けるようにすると良い。パッドの数を増やしてもかまわない場合には、無線通信用半導体集積回路120’と半導体チップ100A上のメモリ112との間でパラレルにデータを送受信するように構成することができる。
【0053】
その場合、半導体集積回路110は、無線ICタグを設けない場合とほぼ同一の構成とすることも可能である。また、本来の半導体集積回路110がシングルチップマイコンやシステムLSIのようにもともとシリアルインタフェース回路を有するLSIの場合には、既存のシリアルインタフェース回路を使用して無線通信用半導体集積回路120’との間でデータの送受信を行なうように構成することができる。
【0054】
なお、この実施例では、無線通信用半導体集積回路120’によって半導体チップ100A上のメモリ112にデータをリード・ライトする際には、アンテナを介して無線通信用半導体集積回路120’に交流信号を与える一方、本来の半導体集積回路110に対しても外部端子(リード端子、パッド等)から電源電圧を供給して回路全体もしくは部分的にメモリ回路112を活性化してやる必要がある。
【0055】
メモリ回路112は、本来の半導体集積回路110がもともと備えるものを利用する仕方のほか、本来の半導体集積回路110とはまったく分離されたメモリ回路112を半導体チップ100Aに形成して用いるようにしても良い。その場合、そのメモリ回路112の電源電圧は、無線通信用半導体集積回路120’から与えるように構成することができる。従って、かかる電源電圧を無線通信用半導体集積回路120’からメモリ回路112へ供給するためのパッドをそれぞれのチップに設けると良い。
【0056】
以上本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば前記実施例では、アンテナコイルとなる導電パターン221を半導体チップが搭載される絶縁基板210の上面またはパッケージ240の下面あるいは半導体チップ上に形成したものを説明したが、これらに限定されるものでなく、絶縁基板210の下面もしくは内部またはパッケージ240の上面もしくは内部に設けたり、ボンディングワイヤによって形成したりすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上の説明では主として本発明者によってなされた発明をその背景となった利用分野である半導体集積回路をパッケージに実装した半導体装置に適用したものを説明したが、本発明はそれに限定されず、半導体集積回路を搭載したプリント配線基板やICカード、モジュールなどにも利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明を適用した半導体集積回路の第1の実施例を示す平面構成図である。
【図2】無線ICタグ部の構成例を示すブロック図である。
【図3】本発明を適用した半導体集積回路の第2の実施例を示す平面構成図である。
【図4】図4(A)は上記実施例の半導体集積回路をパッケージに実装した半導体装置の第1の実施例を示す平面説明図、図4(B)はその断面説明図である。
【図5】図5(A)は上記実施例の半導体集積回路をパッケージに実装した半導体装置の第2の実施例を示す平面説明図、図5(B)はその断面説明図である。
【図6】図6(A)、(B)は上記実施例の変形例を示す平面説明図である。
【図7】図7(A)は上記実施例の半導体集積回路をパッケージに実装した半導体装置の第3の実施例を示す断面説明図、図7(B)はその底面図である。
【図8】図8(A)は上記実施例の半導体集積回路をパッケージに実装した半導体装置の第4の実施例を示す断面説明図、図8(B)はBGA基板の平面図、図8(C)はBGA基板の底面図である。
【図9】図9(A)は本発明を適用した半導体集積回路の第3の実施例を示す平面構成図、図9(B)はその変形例を示す平面説明図である。
【図10】本発明を適用したパッケージ実装状態の半導体装置の他の実施例を示す平面説明図である。
【図11】本発明を適用したパッケージ実装状態の半導体装置のさらに他の実施例を示す平面説明図である。
【符号の説明】
【0059】
100 半導体チップ
101 ボンディングパッド
101a,101b アンテナ接続用パッド
110 本来の半導体集積回路部
120 無線ICタグ部
130 絶縁分離領域
150 アンテナコイルとしての配線パターン
161〜163 スルーホール
201 リード端子
210 絶縁基板
221 アンテナコイルとしての配線パターン
231,232 ボンディングワイヤ
240 パッケージ
250 半田ボール
261,262 配線パターン
271,272 ビア(via)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の機能を有する本来の半導体集積回路と、該半導体集積回路と電気的に分離され該半導体集積回路に関するデータを記憶し非接触で外部装置との間でデータの送受信を行なう無線タグ回路と、が一つの半導体チップ上に形成され、当該半導体チップが実装されたパッケージにアンテナとなる導電性パターンが形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記半導体チップは、前記アンテナとなる導電性パターンが形成されている絶縁基板上に搭載され、該絶縁基板およびリード端子とともにパッケージに封入されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記アンテナとなる導電性パターンは前記絶縁基板の前記半導体チップが搭載されている面に形成され、該導電性パターンの端部と前記半導体チップ上の前記無線タグ回路に接続されたパッドとの間がボンディングワイヤによって接続されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体チップはリード端子とともにパッケージに封入され、前記導電性パターンは前記パッケージの表面に形成され、前記無線タグ回路のアンテナと接続されるべきパッドに電気的に接続されたリード端子の他方の端部が前記導電性パターンに接続されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体チップは配線層が形成されたパッケージ基板の表面に実装され、前記アンテナとなる導電性パターンは前記パッケージ基板の裏面に形成され、前記導電性パターンの端部と前記無線タグ回路のアンテナと接続されるべきパッドとの間が前記パッケージに形成された配線層によって接続されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
所定の機能を有する本来の半導体集積回路と、該半導体集積回路と電気的に分離され前記半導体集積回路に関するデータを記憶し非接触で外部装置との間でデータの送受信を行なう無線タグ回路と、が一つの半導体チップ上に形成され、当該半導体チップにアンテナとなる導電性パターンが形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
前記半導体チップには、前記無線タグ回路のアンテナと接続されるべきパッドとは別に、前記無線タグ回路と外部装置との間で接触方式によりデータの送受信を行なうためのパッドが設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項8】
前記半導体チップの表面の前記本来の半導体集積回路と前記無線タグ回路との間に絶縁領域が形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項9】
前記半導体チップには同一構成の2以上の無線タグ回路と2以上のアンテナ用導電パターンとが形成され、前記2以上の無線タグ回路の各パッドには別個のアンテナ用導電パターンが接続されていることを特徴とする請求項6に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記半導体チップには同一構成の2以上の無線タグ回路と1つのアンテナ用導電パターンとが形成され、前記2以上の無線タグ回路の各パッドは前記1つのアンテナ用導電パターンに共通に接続されていることを特徴とする請求項6に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記無線ICタグ回路には、電気的に書き込み可能な不揮発性メモリ回路が形成され、該メモリ回路は読み出し専用の領域と、1度だけ書き込みが可能な領域と、複数回書き込みが可能な領域とに分けられていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項12】
所定の機能を有する本来の半導体集積回路が形成された第1の半導体チップと、前記半導体集積回路に関するデータを記憶し非接触で外部装置との間でデータの送受信を行なう無線ICタグ回路が形成された第2の半導体チップとを有し、前記第1の半導体チップと第2の半導体チップが実装されたパッケージにアンテナとなる導電性パターンが形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項13】
所定の機能を有する本来の半導体集積回路および該半導体集積回路に関するデータを記憶可能なメモリ回路が形成された第1の半導体チップと、非接触で外部装置との間でデータの送受信を行なう無線タグ回路が形成された第2の半導体チップとを有し、前記第1の半導体チップと第2の半導体チップが実装されたパッケージにアンテナとなる導電性パターンが形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項14】
前記半導体チップは、前記アンテナとなる導電性パターンが形成されている絶縁基板上に搭載され、該絶縁基板およびリード端子とともにパッケージに封入されていることを特徴とする請求項12または13に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−221211(P2006−221211A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−31200(P2005−31200)
【出願日】平成17年2月8日(2005.2.8)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】