説明

半導体装置

【課題】駆動条件に応じて駆動領域を変更することができ、従来に比べて損失の低減を図ることのできる半導体装置を提供する。
【解決手段】3つのゲート電極パッド3a,3b,3cは、3つの駆動領域2a,2b,2cに夫々対応して設けられ、3つの駆動領域2a,2b,2cには、互いに電気的に分離されたゲート電極4a,4b,4cが配置されている。そして、駆動条件に応じてゲート信号によって、駆動する駆動領域2a,2b,2cの数を変更可能とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に係り、特に電力用半導体装置として好適な絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)あるいはMOS型電界効果トランジスタ(MOSFET)等の半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電力用半導体装置として、例えば、IGBT、MOSFET等の半導体装置が使用されている。
【0003】
このような半導体装置では、ゲート電極に所定のゲート信号を印加することにより、ソース、ドレイン間に、ゲート信号に応じた主電流が流れるよう、オン・オフ制御が行われる。
【0004】
図9は、従来の半導体装置の構成を示すものである。同図に示すように、半導体装置11の内部には、駆動領域12が設けられており、この駆動領域12に対応して、図示しないゲート電極が設けられている。そして、このゲート電極を外部に引き出し、外部の配線と接続するためのゲート電極パッド3が、半導体装置11の表面部分に設けられている。このゲート電極パッド3を介して、ゲート電極にゲート信号を印加することにより、このゲート電極に対応した駆動領域12に主電流が流れ、主電流のオン・オフ制御が行われるよう構成されている。
【0005】
このような半導体装置11では、電流容量の増大等のために、駆動領域12の面積を大きくすることが行われている。しかしながら、駆動領域12の面積を大きくすると、例えば、主電流の電流値が小さく、かつ、スイッチング周波数が高いような場合、スイッチング損失が大きくなり、全体としての損失が大きくなる等、駆動条件、例えば、スイッチング周波数の高低や電流値の大小等によって、損失が大きくなる場合があるという課題があった。なお、複数の半導体素子が並列接続されたモジュール構造の半導体装置の場合では、これらの並列接続された複数個の半導体素子を全て同じゲート信号により駆動していた。
【0006】
また、半導体装置の製造工程において、複数に分割されたゲート電極を形成しておき、耐圧値が規定値を満足しないゲート電極に接続されたゲートパッドを絶縁し、残りのゲート電極のみによって駆動するようにして、歩留まりの向上を図る技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
しかしながら、このような半導体装置においても、完成品の半導体装置が実際に駆動される際の駆動領域の面積は一定であり、駆動条件によって損失が大きくなる場合があるという課題については、上記した場合と同様である。
【特許文献1】特開平6−291324号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の如く、従来の半導体装置においては、駆動条件、例えば、スイッチング周波数の高低や電流値の大小等によって、損失が大きくなる場合があるという課題があった。
本発明は、かかる従来の事情に対処してなされたもので、駆動条件に応じて駆動領域を変更することができ、従来に比べて損失の低減を図ることのできる半導体装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、ゲート信号に基づいて主電流のオン・オフを行う半導体装置であって、複数に分割されて設けられた駆動領域と、前記駆動領域毎に設けられ、夫々が対応する駆動領域を駆動する複数のゲート電極と、前記複数のゲート電極に夫々対応して設けられた複数のゲート電極パッドとを具備し、駆動条件に応じて、駆動する前記駆動領域の数を変更可能に構成されたことを特徴とする半導体装置が提供される。
【0010】
また、本発明の一態様によれば、ゲート信号に基づいて主電流のオン・オフを行う半導体装置であって、複数に分割されて設けられた駆動領域と、前記駆動領域毎に設けられ、夫々が対応する駆動領域を駆動する複数のゲート電極と、前記複数のゲート電極に対応して設けられた複数のゲート電極パッドと、駆動条件に応じて、駆動する前記駆動領域の数を変更する制御手段とを具備したことを特徴とする半導体装置が提供される。
【0011】
また、本発明の一態様によれば、ゲート信号に基づいて主電流のオン・オフを行う複数の並列接続された半導体素子を具備し、駆動条件に応じて、駆動する前記半導体素子の数を変更可能に構成されたことを特徴とする半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、駆動条件に応じて駆動領域を変更することができ、従来に比べて損失の低減を図ることのできる半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の詳細を、図面を参照して実施形態について説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る半導体装置1の構成を示すものである。この半導体装置1は、IGBT、MOSFET等から構成され、ゲート信号によって、ソース、ドレイン間に流れる主電流のオン・オフ制御を行うものである。同図に示すように、この実施形態の半導体装置1には、3つのゲート電極パッド3a,3b,3cが、夫々電気的に分離されて配置されている。なお、図1において2は、半導体装置1の駆動領域の全体部分を示している。
【0015】
上記3つのゲート電極パッド3a,3b,3cは、図2に点線示すように、3つの駆動領域2a,2b,2cに夫々対応して設けられている。また、これらの3つの駆動領域2a,2b,2cには、これらの駆動領域2a,2b,2cに対応して、互いに電気的に分離されたゲート電極4a,4b,4cが配置されている。
【0016】
そして、ゲート電極パッド3a,3b,3cに夫々外部から配線を接続し、これらのゲート電極パッド3a,3b,3cを介してゲート電極4a,4b,4cに個別にゲート信号を印加することにより、3つの駆動領域2a,2b,2cを夫々個別に駆動することができるよう構成されている。すなわち、例えば、ゲート電極パッド3aのみにゲート信号を供給することによって、1つの駆動領域2aのみを駆動することができ、この駆動領域2aによって、ソース、ドレイン間に主電流を流すことができるようになっている。この場合、駆動面積は、全体の駆動領域2(図1参照)の略1/3となる。
【0017】
また、駆動面積を大きくする場合は、3つのゲート電極パッド3a,3b,3cに夫々ゲート信号を供給することによって、3つの駆動領域2a,2b,2cを全て同時に駆動することができる。
【0018】
さらに、上記の中間の駆動面積によって駆動する場合は、2つのゲート電極パッド、例えばゲート電極パッド3a,3b等にゲート信号を供給することによって、2つの駆動領域2a,2bを同時に駆動することができる。
【0019】
そして、上記構成の半導体装置1では、駆動条件に応じてゲート信号によって駆動領域2a,2b,2cの数を変更する。
【0020】
例えば、スイッチング周波数が高い場合は、駆動領域の数を減少させて駆動面積を少なくし、スイッチング周波数が低い場合は、駆動領域の数を増やして駆動面積を多くする。また、例えば、主電流の電流値が少ない場合は、駆動領域の数を減少させて駆動面積を少なくし、主電流の電流値が多い場合は、駆動領域の数を増やして駆動面積を多くする。
【0021】
また、上記のスイッチング周波数、電流の他、電圧値の相違によって駆動領域の数を変更しても良く、その他の要素によって駆動領域数を変更しても良い。また、これらの要素の幾つかによって、駆動領域数を変更しても良い。
【0022】
これによって、スイッチング損失と導通損失とをバランスさせて、全体としての損失を減少させることができる。
【0023】
図3は、本実施形態における半導体装置1における損失と、図9に示した構造の従来の半導体装置11における損失を比較して示すものである。なお、同図において縦軸は損失、横軸はスイッチング周波数又は電流を示しており、実線Bが従来例の場合、点線Aが本実施形態の場合を示している。
【0024】
同図に示すように、本実施形態においては、スイッチング周波数、電流値等によって、駆動領域2a,2b,2cの数を変更し、駆動面積を変化させることによって、従来に比べて損失を減少させることができる。
【0025】
なお、ゲート電極パッド3a,3b,3cの配置位置は、図1に示した位置に限られるものではなく、例えば、図4に示すように、ゲート電極パッド3a,3b,3cを隣接するように配置しても良い。但し、基本的には、駆動領域2a,2b,2c上に、その領域を制御するゲート電極パッド3a,3b,3cを設けた方が、寄生のインダクタンスを小さくすることができる。
【0026】
上記した駆動領域2a,2b,2c毎の駆動制御は、例えば、図5に示すように、制御手段としての制御回路5から、ゲート電極パッド3a,3b,3cに、個別にゲート信号を供給することにより行うことができる。
【0027】
すなわちこの場合、制御回路5は、例えば、駆動面積を少なくする場合は、ゲート電極パッド3aのみにゲート信号を供給して駆動領域2aを駆動する。また、例えば、駆動面積を多くする場合は、全てのゲート電極パッド3a,3b,3cにゲート信号を供給して、全ての駆動領域2a,2b,2cを駆動する。これによって、スイッチング周波数や電流値に応じて駆動する駆動領域2a,2b,2cの数を変更し、駆動面積を変化させて、駆動面積が一定の場合に比べて損失を小さくすることができる。
【0028】
また、駆動領域2a,2b,2c毎の駆動制御は、例えば、図6に示すように、制御回路5からのゲート信号を、所定の電気回路、例えば、抵抗6a,6b,6cを介してゲート電極パッド3a,3b,3cに供給する構成としても、行うことができる。
【0029】
すなわち、この場合、例えば、抵抗4aの抵抗値を最も小さくし、抵抗4cの抵抗値を最も大きくし、抵抗4bの抵抗値をこれらの中間とする。このような外付けの電気回路を設けることにより、時定数の相違から、各ゲート電極パッド3a,3b,3cには、図7に示すようなゲート電圧(ゲート信号)が印加される。この結果、スイッチング周波数が高い時は、駆動面積が小さくなり、スイッチング周波数が低い時は駆動面積が大きくなるので、駆動面積が一定の場合に比べて損失を小さくすることができる。
【0030】
なお、上記のような電気回路としては、抵抗を用いたものに限られず、例えば、インダクタやキャパシタを用いても同様な効果を得ることができる。また、より複雑な回路を用いて、同様の電圧を印加することも可能である。
【0031】
図8は、本発明の他の実施形態の構成を示すものである。同図に示す実施形態の半導体装置80は、1つの基板上81上に複数個(本実施形態では4つ)の並列接続された半導体素子82a,82b,82c,82dが搭載され、モジュール構造とされている。各半導体素子82a,82b,82c,82dは、IGBT、MOSFET等から構成され、ゲート信号によって、ソース、ドレイン間に流れる主電流のオン・オフ制御を行う。夫々の半導体素子82a,82b,82c,82dには、ゲート電極パッド83a,83b,83c,83dが設けられており、これらのゲート電極パッド83a,83b,83c,83dには、制御回路84から、個別にゲート信号が供給され、個別にオン・オフ制御されるように構成されている。
【0032】
上記実施形態の半導体装置80では、4つの並列接続された半導体素子82a,82b,82c,82dによって、主電流のオン・オフを制御するものであり、そのスイッチング周波数や電流値等の条件によって、使用する半導体素子82a,82b,82c,82dの数を変更可能となっている。
【0033】
前述した実施形態と同様に、一般的には、スイッチング周波数が高いほど、また電流値が小さいほど、使用する半導体素子の数を少なくし、駆動面積を小さくする。これによって、駆動面積が一定の場合に比べて損失を小さくすることができる。
【0034】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、各種の変形が可能であることは勿論である。例えば、上述した実施形態では、半導体装置1を3つの駆動領域2a,2b,2cに分割した場合について説明したが、その分割数は3つに限られるものではなく、複数に分割したものであれば、何分割しても良い。また、上述した実施形態では、半導体装置80を、4つの半導体素子82a,82b,82c,82dによって構成した場合について説明したが、半導体素子数は4つに限られるものではなく、複数であれば幾つでも良い。また、GTO、トランジスタ、サイリスタにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態に係る半導体装置の構成を示す図。
【図2】図1の実施形態の駆動領域を説明するための図。
【図3】図1の実施形態における損失を、従来の半導体装置の損失と比較して示したグラフ。
【図4】図1の実施形態の変形例の構成を示す図。
【図5】制御回路を具備した実施形態の構成を示す図。
【図6】制御回路を具備した実施形態の構成を示す図。
【図7】図6の実施形態におけるゲート電圧の相違を説明するためのグラフ。
【図8】本発明の他の実施形態の構成を示す図。
【図9】従来の半導体装置の構成を示す図。
【符号の説明】
【0036】
1…半導体装置(MOSFET,IGBTなど)、2a,2b,2c…駆動領域、3a,3b,3c…ゲート電極パッド、4a,4b,4c…ゲート電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート信号に基づいて主電流のオン・オフを行う半導体装置であって、
複数に分割されて設けられた駆動領域と、
前記駆動領域毎に設けられ、夫々が対応する駆動領域を駆動する複数のゲート電極と、
前記複数のゲート電極に夫々対応して設けられた複数のゲート電極パッドとを具備し、
駆動条件に応じて、駆動する前記駆動領域の数を変更可能に構成されたことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
ゲート信号に基づいて主電流のオン・オフを行う半導体装置であって、
複数に分割されて設けられた駆動領域と、
前記駆動領域毎に設けられ、夫々が対応する駆動領域を駆動する複数のゲート電極と、
前記複数のゲート電極に対応して設けられた複数のゲート電極パッドと、
駆動条件に応じて、駆動する前記駆動領域の数を変更する制御手段と
を具備したことを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
前記制御手段が、スイッチング周波数が高い時は、前記駆動領域の数を少なくし、スイッチング周波数が低い時は、前記駆動領域の数を多くすることを特徴とする請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記制御手段が、前記主電流の電流値が大きい時は、前記駆動領域の数を多くし、前記主電流の電流値が小さい時は、前記駆動領域の数を少なくすることを特徴とする請求項2記載の半導体装置。
【請求項5】
ゲート信号に基づいて主電流のオン・オフを行う複数の並列接続された半導体素子を具備し、
駆動条件に応じて、駆動する前記半導体素子の数を変更可能に構成されたことを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−278772(P2006−278772A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−96250(P2005−96250)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】