説明

半導体装置

【課題】ワイヤボンド工程における半導体チップサイズの縮小に対する弊害を防止して、半導体チップサイズの縮小を実現する。
【解決手段】半導体装置は、ダイパッド17上に搭載され、周縁部に複数の電極パッド22を有する半導体チップ13と、外部端子21に電気的に接続する複数のインナリード18と、複数の電極パッド22と、複数のインナリード18とを接続する複数のワイヤ15とを備える。半導体チップ13のチップ辺における少なくとも一辺において、複数のワイヤ15が、複数の電極パッド22の各々にワイヤボンドされて形成された圧着ボール26は、半導体チップ13の一辺から中心に向かう向きに伸びるように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップの電極パッドとパッケージのインナリードとがワイヤボンドで接続される構造を有する半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
まず、従来の半導体装置の構造について図5及び図6を参照しながら説明する。
【0003】
図5は、従来の半導体装置の構造を示す斜視図であり、図6は、従来の半導体装置の構造を示す断面正面図である。
【0004】
図5及び図6に示すように、従来の半導体装置111は、主要部品として、セラミックパッケージ112、半導体チップ113、ガラス114、ワイヤ115、及び封止樹脂116を備えている。具体的には、セラミックパッケージ112の中央部には、半導体チップ113がAgペースト124を介して搭載されるダイパッド117が設けられている。また、ダイパッド117の外側には、矩形状のインナリード118が設けられており、該インナリード118は、パッケージ112内のビア119及びキャスタレーション120を経由して、外部端子121に接続されている。半導体チップ113は、ここでは例えばイメージセンサであり、中央の画素面まで光を透過すると共に画素面を保護するガラス114がその上部に接着材123を介して貼り付けられている。半導体チップ113の周縁部には、信号の入出力用の電極パッド122が複数設けられている。ワイヤボンドによって圧着ボール126を介して複数の電極パッド122に接合されたワイヤ115は、セラミックパッケージ112に設けられたインナリード118に接続されている。また、半導体チップ113とワイヤ115とを保護するために、セラミックパッケージ112の隙間の部分には封止樹脂116が充填されている。
【0005】
次に、上記構造を有する従来の半導体装置の製造方法について、上記図5及び図6に加えて図7、図8を参照しながら説明する。図7、図8は、従来の半導体装置を製造する方法におけるワイヤボンド工程を説明するための図であって、図7はワイヤボンド時の正面図であり、図8は、ワイヤボンド後の平面図である。
【0006】
まず、セラミックパッケージ112と半導体チップ113を用意する。具体的には、半導体チップ113は、中央部に接着材123を介して貼り付けられたガラス114を備えていると共に、周縁部に複数の電極パッド122を備えており、ウェーハ状態からダイシングにより個々にカットされているものである。
【0007】
次に、ダイボンドでは、セラミックパッケージ112のダイパッド117にAgペースト124を塗布した後に、該Agペースト124の上に半導体チップ113を押し付けることにより、セラミックパッケージ112に半導体チップ113を接着する。次に、ワイヤボンドでは、電極パッド122とインナリード118とをワイヤ115により接続する。
【0008】
ここで、ワイヤボンドでは、最初にキャピラリ125から出たワイヤ115の一端に放電により作ったボールを電極パッド122に押し付けながら超音波振動を加えて圧着ボール126とするファーストボンド接合を行う。ファーストボンド接合を行った後は、ループ形成を行って、インナリード118にワイヤ115を押し付けながら超音波振動を加えてセカンドボンド接合を行う。その後、ワイヤ115を引きちぎり、再度キャピラリ125から出たワイヤ115の一端に放電によりボールを作って次の接続を行う。ワイヤボンド後は、ガラス114が貼り付けられた半導体チップ113とセラミックパッケージ112の側面外壁との空間に液状の封止樹脂116を流し込み、一定時間、加熱することにより、封止樹脂116を硬化させて、半導体装置111として完成する。
【特許文献1】特開昭58−103145号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記従来の半導体装置の製造方法では、半導体チップ113にはガラス114が貼り付けられているために、ガラス114と電極パッド122との寸法関係は、ワイヤボンド工程において、キャピラリ125とガラス114とが干渉しないように、ガラス114と半導体チップ113に設けた電極パッド122との距離を一定以上にする必要があった。このように、電極パッド122の位置が半導体チップ113のサイズを決定する要因となって、半導体チップサイズの縮小を図ることができないという問題があった。
【0010】
前記に鑑み、本発明の目的は、ワイヤボンド工程における半導体チップサイズの縮小に対する弊害を防止して、半導体チップサイズの縮小を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の半導体装置は、ダイパッド上に搭載され、周縁部に複数の電極パッドを有する半導体チップと、外部端子に電気的に接続する複数のインナリードと、複数の電極パッドの各々と、該各々と対応する複数のインナリードの各々とを接続する複数のワイヤとを備え、半導体チップのチップ辺における少なくとも一辺において、複数のワイヤの各々が、該各々と対応する複数の電極パッドの各々にワイヤボンドされて形成されたボールの各々は、半導体チップの一辺から中心に向かう向きに伸びるように形成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、電極パッドが従来に比べて半導体チップの中心側に位置するように設けられているため、半導体チップの端から電極パッドの位置までの距離が一定であるとすると、電極パッドが従来に比べて半導体チップの中心側に近付いた分だけ、半導体チップの端を半導体チップの中心側にできる結果、半導体チップサイズを縮小できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係る半導体装置の構造について図1を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る半導体装置の構造を示す断面正面図である。なお、本発明の一実施形態に係る半導体装置の斜視図の構造は、上記図5に示した従来の半導体装置の斜視図の構造と同様であるため、ここでは同様の説明を繰り返さないが、後述するように、半導体チップのサイズが異なっている。
【0015】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る半導体装置11は、主要部品として、セラミックパッケージ12、半導体チップ13、ガラス14、ワイヤ15、及び封止樹脂16を備えている。具体的には、セラミックパッケージ12の中央部には、半導体チップ13がAgペースト24を介して搭載されるダイパッド17が設けられている。また、ダイパッド17の外側には、矩形状のインナリード18が設けられており、該インナリード18は、パッケージ12内のビア19及びキャスタレーション20を経由して、外部端子21に接続されている。半導体チップ13は、ここでは例えばイメージセンサであり、中央の画素面まで光を透過すると共に画素面を保護するガラス14がその上部に接着材23を介して貼り付けられている。半導体チップ13の周縁部には、信号の入出力用の電極パッド22が複数設けられている。ワイヤボンドによって圧着ボール26を介して複数の電極パッド22に接合されたワイヤ15は、セラミックパッケージ12に設けられたインナリード18に接続されている。また、半導体チップ13とワイヤ15とを保護するために、セラミックパッケージ12の隙間の部分には封止樹脂16が充填されている。
【0016】
ここで、本実施形態における複数の電極パッド22の各々の半導体チップ13の中心に対する位置は、上記従来における複数の電極パッド122の各々の半導体チップ113の中心に対する位置と比較すると、半導体チップ13の中心側に寄っている。言い換えると、半導体チップ13における電極パッド22とガラス14までの距離Lは、従来における対応する距離と比較して短くなっている。このため、半導体チップ13の端は、電極パッド22が中心側に寄っている分だけ内側に設けられており、その結果、半導体チップ13のサイズは、従来の半導体チップ113のサイズよりも小さくなっている。
【0017】
次に、上記構造を有する本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法について、図2〜図4を参照しながら説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る半導体装置を製造する方法におけるワイヤボンド工程で用いるキャピラリを説明するための図であって、(a)はその正面図及び断面図を示しており、(b)は従来のキャピラリの正面図及び断面図を示している。図3及び図4は、本発明の一実施形態に係る半導体装置を製造する方法におけるワイヤボンド工程を説明するための図であって、図3はワイヤボンド時の正面図であり、図4は、ワイヤボンド後の平面図である。
【0018】
まず、セラミックパッケージ12と半導体チップ13を用意する。具体的には、半導体チップ13は、中央部に接着材23を介して貼り付けられたガラス14を備えていると共に、周縁部に複数の電極パッド22を備えており、ウェーハ状態からダイシングにより個々にカットされているものである。
【0019】
次に、ダイボンドでは、セラミックパッケージ12のダイパッド17にAgペースト24を塗布した後に、該Agペースト24の上に半導体チップ13を押し付けることにより、セラミックパッケージ12に半導体チップ13を接着する。次に、ワイヤボンドでは、電極パッド22とインナリード18とをワイヤ15により接続する。
【0020】
ここで、ワイヤボンドにおいて使用するキャピラリ25は、図2(a)に示すように、方向により特異性を生じさせるために、位相によって厚さが異なっている。つまり、図2(b)に示した従来で用いたキャピラリ125が中心軸に関して回転対称の形状を有しているのに対し、本実施形態における図2(a)に示したキャピラリは、位相により厚さが異なる形状を有している。そして、本実施形態では、キャピラリ25における厚さの薄い側の端部1aがガラス14側に向くように、キャピラリ25を用いてワイヤボンドを行う。このように、キャピラリ25における厚さの薄い側の端部1aがガラス14側に向いており、ガラス14側のキャピラリ25の厚さが薄い分(図2(b)に示す従来のキャピラリ125の対応する端部1bに対する本実施形態のキャピラリ25の薄い側の端部1aとの差分)、電極パッド22を半導体チップ13の中心側に近付けることが可能となる。
【0021】
すなわち、ワイヤボンドでは、最初にキャピラリ25から出たワイヤ15の一端に放電により作ったボールを電極パッド22に押し付けながら超音波振動を加えて圧着ボール26とするファーストボンド接合を行う。このとき、キャピラリ25の位相により厚さが異なる影響で、超音波振動の中心は、キャピラリ25の中心ではなく一定量変位した位置である。このため、ワイヤボンド位置として狙うのは、電極パッド22の中心ではなく、中心から外側にずれた位置であるから、この圧着ボール26の形状も、外側から中心に伸びた形状となる。つまり、従来の圧着ボール126の形状が同心円状であったのに対し、本実施形態の圧着ボール26は同一辺については外側から中心に向かって伸びる形状である。図4に示すように、ワイヤボンド位置がAで示す線上にあるのに対して、圧着ボール26の中心は、外側から中心に伸びているためにBで示す線上となる。このBは電極パッド22の中心に一致させるのが望ましい。また、AとBとの距離Cが、圧着ボール26を偏芯させることにより、電極パッド22を半導体チップ13の中央側に寄せることができる量であり、ワイヤボンド位置の狙いをずらす量でもある。このワイヤボンド位置と圧着ボール26の中心との距離Cは、キャピラリ25の形状とボールサイズの影響を受けて変化するが、圧着ボール26の直径の1割以上とすることができる。
【0022】
次に、ファーストボンド接合を行った後は、ループ形成を行って、インナリード18にワイヤ15を押し付けながら超音波振動を加えてセカンドボンド接合を行う。このときも、超音波振動の中心は、キャピラリ25の中心ではなく一定量変位した位置となるが、セカンドボンド接合は、ボールではなく線状のワイヤ15を押し付ける動作であり、超音波振動の中心が変位しても、インナリード18とキャピラリ25との間に存在するのは厚さをもったワイヤ15のみであるため、その存在位相にかかわらず接合に必要な超音波振動を加えることができるので、問題が生じることはない。
【0023】
次に、セカンドボンド接合を行った後は、ワイヤ15を引きちぎり、再度キャピラリ25から出たワイヤ15の一端に放電によりボールを作って次の接続を行う。その後、ガラス14が貼り付けられた半導体チップ13とセラミックパッケージ12の側面外壁との空間に液状の封止樹脂16を流し込み、一定時間、加熱することで封止樹脂16を硬化させて、半導体装置11として完成させる。
【0024】
なお、以上において、パッケージ12がセラミック型である場合について説明したが、本発明はその実施例に限定されるものではなく、リードフレーム型であっても、有機基板型であっても同様に実施可能である。
【0025】
また、圧着ボール26の伸びる方向は一方向であるため、電極パッド22を半導体チップ13の一辺のみに設けることが望ましいが、他の辺にも設ける構造であってもよい。
【0026】
また、方向により特異性を生じさせるために、キャピラリ25の形状を変更する必要があるが、結果的に圧着ボール26の形状が半導体チップ13の同一辺については外側から中心の向きに伸びるように形成できれば、キャピラリ25の形状は種々変更可能である。
【0027】
また、ワイヤボンドにおけるボールの接合を意図的に偏芯させて行う先行技術は存在しないが、偏芯させることが不都合であるからそれを防止する技術が上記特許文献1に開示されている。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の半導体装置は、半導体チップの電極パッドを半導体チップの中心側に近付けることができる構造であるため、半導体チップの小型化にとって有用である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係る半導体装置の構造を示す断面正面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る半導体装置を製造する方法におけるワイヤボンド工程で用いるキャピラリを説明するための図であって、(a)はその正面図及び断面図を示しており、(b)は従来のキャピラリの正面図及び断面図を示している。
【図3】本発明の一実施形態に係る半導体装置を製造する方法におけるワイヤボンド工程を説明するための図であって、ワイヤボンド時の正面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る半導体装置を製造する方法におけるワイヤボンド工程を説明するための図であって、ワイヤボンド後の平面図である。
【図5】従来の半導体装置の構造を示す斜視図である。
【図6】従来の半導体装置の断面正面図である。
【図7】従来の半導体装置を製造する方法におけるワイヤボンド工程を説明するための図であって、ワイヤボンド時の正面図である。
【図8】従来の半導体装置を製造する方法におけるワイヤボンド工程を説明するための図であって、ワイヤボンド後の平面図である。
【符号の説明】
【0030】
11 半導体装置
12 セラミックパッケージ
13 半導体チップ
14 ガラス
15 ワイヤ
16 封止樹脂
17 ダイパッド
18 インナリード
19 ビア
20 キャスタレーション
21 外部端子
22 電極パッド
23 接着材
24 Agペースト
25 キャピラリ
26 圧着ボール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイパッド上に搭載され、周縁部に複数の電極パッドを有する半導体チップと、
外部端子に電気的に接続する複数のインナリードと、
前記複数の電極パッドの各々と、該各々と対応する前記複数のインナリードの各々とを接続する複数のワイヤとを備え、
前記半導体チップのチップ辺における少なくとも一辺において、前記複数のワイヤの各々が、該各々と対応する前記複数の電極パッドの各々にワイヤボンドされて形成されたボールの各々は、前記半導体チップの前記一辺から中心に向かう向きに伸びるように形成されている、半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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