説明

半導体装置

【課題】半導体集積回路への電源供給がなくても、負荷駆動システムにおける負荷開放状態が検出できる半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置10は、負荷装置4をスイッチング制御するためのパワー半導体素子1、および負荷装置4の異常を検出する半導体集積回路2を備え、さらにパワー半導体素子1の出力端子電圧を抵抗分圧するプルダウン用の分圧回路20、分圧回路20を構成するプルダウン用抵抗14,15から電源供給を受けて負荷装置4の開放検出を行うMOSFET16、および半導体集積回路2から出力される異常信号によってオン、あるいはオフ動作するMOSFET17が内蔵されている。また、負荷装置4の開放状態の検出結果を外部に出力する状態出力端子18を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷をスイッチング制御するためのパワー半導体素子、および負荷の異常を検出する集積回路を有する半導体装置に関し、とくにこれらのパワー半導体素子および集積回路を同一チップ上に集積化したものに関する。
【背景技術】
【0002】
高ESD(Electro Static Discharge)耐量およびEMC(Electro Magnetic Compatibility)を含む高ノイズ耐量が要求される自動車用電装機器および各種産業機器、モータコントロール、OA(オフィスオートメーション)機器、モバイル(携帯)機器、または家庭電化機器等の技術分野においては、パワー半導体素子に集積回路を追加して組み込んだ統合型のインテリジェントスイッチデバイスが用いられている。この集積回路は、負荷側の異常状態によってパワー半導体素子に過電流が流れたとき、あるいはパワー半導体素子が過熱状態になったとき、パワー半導体素子に流す電流を制御することによりパワー半導体素子の破壊を未然に防止するものである。
【0003】
こうしたパワー半導体素子と集積回路をワンチップ上で構成した半導体装置としては、スイッチング素子としてMOSFETを用いたDC/DCコンバータや3相インバータなどの電力変換装置に好適な電流検知装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この電流検知装置は、電流検出の対象となるMOSFETのソース−ドレイン間に第1の抵抗体と第2の抵抗体の直列回路を接続し、MOSFETのオン電圧を第1の抵抗体と第2の抵抗体からなる電圧分圧回路により分圧されて検知回路に取り込み、電流に換算してMOSFETに通流する電流を検知するようにしたものであって、第1の抵抗体と第2の抵抗体からなる電圧分圧回路の電圧分圧比が温度により変化し、温度が上昇すると電圧分圧比が大きくなるようにしている。
【0004】
また、この種の製品の中には、パワー半導体素子の入力ラインを集積回路の電源として、単体のパワー半導体素子と同一の3端子構成で実現している製品が存在する(例えば、特許文献2参照。)。ここでは、従前の機械式リレーと同様に外付けされるスイッチ手段のオンオフ操作に応じて負荷の動作を切り換え、かつ、スイッチ手段のリークに起因する負荷の誤動作を回避する目的で、外付けされるスイッチ手段がオン操作されて電源電圧が供給されることで駆動可能にされる半導体回路部品であって、制御端子付きの負荷制御用半導体スイッチ素子と、この負荷制御用半導体スイッチ素子の制御端子に制御信号を供給して当該負荷制御用半導体スイッチ素子を駆動させる制御信号供給回路と、前記スイッチ手段がオン操作されたときにのみ前記制御信号供給回路に電源電圧が供給されて前記制御信号が出力されるようにする駆動制御回路とを備えた半導体回路部品が実現されていた。
【0005】
図2は、従来の負荷駆動システムの構成を示すブロック図である。この負荷駆動システムは、パワー半導体素子1および異常検出用の半導体集積回路2を3端子の半導体回路基板3内に組み込んだ半導体装置によって、リレー回路等の負荷装置4をスイッチング駆動するものである。パワー半導体素子1は半導体回路基板3のドレイン端子31、ソース端子32、およびゲート端子33とそれぞれ接続され、ドレイン端子31とソース端子32の間には外付け抵抗51,52からなる直列回路が接続されている。また、半導体集積回路2は、ゲート端子33からのゲート電流によって電源供給され、パワー半導体素子1の過電流状態や過熱状態を検出する機能を備えている。なお、負荷装置4を駆動する主電源6は13V程度である。
【0006】
この負荷駆動システムでは、負荷装置4を構成するリレー回路等での断線、あるいは負荷装置4と半導体回路基板3とを接続しているコネクタの外れといった負荷開放状態を検知する負荷開放検出機能は、外付け抵抗51,52による分割電圧を入力とする論理回路7によって実現される。
【特許文献1】特開2006−136086号公報(段落番号[0032]〜[0038]および図1)
【特許文献2】特開2002−246886号公報(段落番号[0036]〜[0046]および図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した3端子構成の製品においては、パワー半導体素子1の入力ラインに半導体集積回路2を動作させるための電圧が印加されていなければ、内部の半導体集積回路2は動作できない。すなわち、従来から搭載されている過電流、過熱状態の検出動作については、入力ラインに電圧が印加されていて、パワー半導体素子1がオン動作状態であれば、半導体集積回路2の動作上では問題ない。しかしながら、負荷駆動システムでの異常状態には前述の過電流、過熱状態以外にも、パワー半導体素子によって駆動される負荷装置が開放状態になったときの異常を検出することが求められている。
【0008】
この負荷開放状態を検出するためには、パワー半導体素子1がオフ状態、すなわちパワー半導体素子1の入力ラインに電圧が印加されていない状態で検出できるようにする必要があり、パワー半導体素子1と半導体集積回路2をそれぞれ3端子構成で実現した製品では、半導体集積回路2に電源が供給されない状態となって、負荷開放状態の検出が不可能であった。
【0009】
そのため、従来の負荷駆動システムにおいては、この負荷開放状態の検出にはパワー半導体素子1の出力電圧(このパワー半導体素子がMOSFETである場合は、ドレイン電圧である。)を検出して、抵抗、コンデンサ、論理回路素子等の部品を付加して負荷開放状態の検出を実施していたために、パワー半導体素子と異常検出機能を備えた半導体集積回路から構成される負荷駆動システムの小型化が困難であった。
【0010】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、半導体集積回路への電源供給がなくても負荷駆動システムにおける負荷開放状態が検出できる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では、上記問題を解決するために、負荷の電流をスイッチング制御するためのパワー半導体素子と、前記パワー半導体素子の出力端子電圧を分圧する分圧回路と、前記分圧回路からの電圧を受けて前記負荷の開放検出を行う検出回路と、外部から所定電圧が供給され、前記検出回路での検出結果に応じて前記所定電圧とは異なる電圧信号を外部に出力する状態出力端子と、を備える半導体装置が提供される。
【0012】
この半導体装置では、パワー半導体素子は、負荷の電流をスイッチング制御する。分圧回路は、パワー半導体素子の出力端子電圧を分圧する。検出回路は、分圧回路からの電圧を受けて負荷の開放検出を行う。状態出力端子は、外部から所定電圧が供給され、検出回路での検出結果に応じて所定電圧とは異なる電圧信号を外部に出力する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来、外付け部品により構成されていた負荷開放検出回路を半導体素子と一体に形成することが可能であり、上述したパワー半導体素子および負荷の過電流、過熱、開放などの異常を検出する検出回路にて構成される負荷駆動システムの小型化に貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。図1は、実施の形態に係る半導体装置を含む負荷駆動システムの構成を示すブロック図である。
図1において、10は半導体装置、1は負荷装置4に流れる電流をスイッチング制御するためのパワー半導体素子、2は負荷装置4の異常を検出する半導体集積回路(以下、単に集積回路という。)である。集積回路2では、パワー半導体素子1の過電流、過熱などを検出することで、負荷装置4の異常を検出する。この集積回路2は負荷装置4の異常を検出すると、異常信号を出力すると共に、パワー半導体素子1のゲート電圧を操作して、パワー半導体素子1の保護動作を行う。なお、過電流や過熱などの検出にかかる回路ブロックは図示を省略している。
【0015】
20は、パワー半導体素子1の出力端子電圧を分圧する分圧回路である。分圧回路20は、例えば図1に示すように、抵抗14,15からなる抵抗分圧回路で構成することができる。分圧回路20の抵抗14,15による分圧に限らず、コンデンサによる分圧回路やツェナーダイオードを用いた分圧回路などを適用することもできる。ただし、後述するようにパワー半導体素子1や集積回路2などと同一の半導体基板上に形成する場合には、抵抗による分圧回路とするのが好適である。
【0016】
11は入力端子、12は出力端子、13は接地端子である。16は検出回路としてのMOSFET(第1のMOSFET)であり、パワー半導体素子1の出力端子電圧を分圧回路20で分圧した電圧がMOSFET16のゲート電極に入力されている。
【0017】
MOSFET(第2のMOSFET)17は集積回路2が出力する異常信号を状態出力端子18に伝達するための伝達回路であり、集積回路2から出力する異常信号がそのゲート電極に入力されている。
【0018】
これらのMOSFET16,17はそのドレイン電極が状態出力端子18に対して共通に接続されている。MOSFET16は、分圧回路20の抵抗14,15によって分圧された電圧を受けてオンあるいはオフ動作して、その検出結果を状態出力端子18に出力している。また、MOSFET17は集積回路2から出力される異常信号によってオンあるいはオフ動作して、その異常信号を状態出力端子18に伝達している。
【0019】
ここで、半導体装置10は、パワー半導体素子1、集積回路2、分圧回路20およびMOSFET16,17が同一のパッケージ内に格納されたものであって、その外部接続される端子として状態出力端子18とともに、入力端子11、出力端子12および接地端子13を備えている。
【0020】
そして、半導体装置10は、パワー半導体素子1、集積回路2、分圧回路20およびMOSFET16,17の一部あるいは全部を個別の部品で構成し、回路基板やリードフレームなどにマウントして同一のパッケージ内に格納すればよい。
【0021】
あるいは、半導体装置10は、パワー半導体素子1、集積回路2、分圧回路20およびMOSFET16,17の一部あるいは全部を同一の半導体基板上に形成してワンチップとし、これをパッケージしてもよい。
【0022】
パワー半導体素子1のゲート電極は、半導体装置10の入力端子11と接続され、過電流や過熱検出回路を構成している集積回路2は、この入力端子11から電源が供給されている。また、パワー半導体素子1のドレイン電極は出力端子12を介してリレー回路等からなる負荷装置4と接続され、さらにソース電極は接地端子13を介して接地されている。なお、負荷装置4を駆動する主電源6は13V程度である。
【0023】
また、分圧回路20を構成する抵抗14,15の直列回路は、パワー半導体素子1のドレイン電極とソース電極との間に接続され、抵抗14,15の接続点がMOSFET16のゲート電極に接続され、そこから取り出される電圧に基づいてMOSFET16がオンオフされている。
【0024】
つぎに、上記構成の負荷駆動システムの動作を説明する。負荷装置4が正常のとき、パワー半導体素子1がオフすると、出力端子12の電圧は上昇し、抵抗14,15の接続点から取り出される電圧も上昇して、MOSFET16はオンとなる。MOSFET16のドレイン電極は状態出力端子18に接続されているため、MOSFET16がオンとなって、負荷が正常であるときの状態検出信号が状態出力端子18に出力される。
【0025】
負荷装置4(出力端子12)が開放状態にあるとき、パワー半導体素子1がオフしても出力端子12の電圧が上昇せず、抵抗14,15の接続点から取り出される電圧も上昇しない。したがって、このときMOSFET16はオフのままであり、負荷装置4が開放された旨の状態検出信号を状態出力端子18から出力することができる。
【0026】
半導体装置10の外部に設けられている制御装置(図示せず)は、パワー半導体素子1へのゲート信号の論理値と、状態出力端子18に出力される信号の論理値との組み合わせによって負荷装置4(出力端子12)が開放状態にあるか否かを判断する。
【0027】
ここで、図1に示すように、状態出力端子18は外付け抵抗8を介してプルアップ電源9に接続されている。これによって、半導体装置10の内部に電源回路を設けることなく、負荷装置4(出力端子12)の開放を検出することができる。
【0028】
MOSFET17は、MOSFET16と並列に接続された別の状態出力用のトランジスタであって、集積回路2が過電流状態や過熱状態を検出したとき、スイッチ素子1の保護動作を行うと共に、上述した状態出力端子18へ通常状態と異なった状態検出信号(異常信号)を伝達するようにしている。
【0029】
すなわち、集積回路2が過電流状態や過熱状態を検出したとき、集積回路2は論理ハイ(High)の信号(異常信号)をMOSFET17のゲート電極に出力する。これにより、MOSFET17がオンとなったときの状態検出信号(異常信号)が状態出力端子18に出力される。
【0030】
半導体装置10の外部に設けられている制御装置(図示せず)は、パワー半導体素子1へのゲート信号の論理値と、状態出力端子18に出力される信号の論理値との組み合わせによって過電流状態や過熱状態にあるか否かを判断する。
【0031】
<実施例1>
抵抗14,15は、パワー半導体素子1がオフのときに、主電源6の電源電圧を分圧して、抵抗14,15の接続点から例えば2〜5V程度の電圧が出力されるように、その分圧比を設定する。負荷開放状態となると、抵抗14,15で分圧された電圧が状態出力用のMOSFET16の閾値電圧以下になり、当該MOSFET16はオフになる。したがって、状態出力端子18からは外付け抵抗8によりプルアップ電源9の電位までプルアップされたハイレベルの負荷開放信号が出力される。なお、プルアップ電源9は、半導体装置10の外部に設けられている制御装置へ論理信号を伝達するのに必要な電圧を設定すればよい。例えば5V程度である。
【0032】
<実施例2>
パワー半導体素子1がオンのとき、過電流や過熱などの異常がなければ、状態出力端子18からは外付け抵抗8によりプルアップ電源9の電位までプルアップされたハイレベルの状態検出信号が出力されている。
【0033】
集積回路2が過電流状態や過熱状態を検出したとき、集積回路2は論理ハイの信号(異常信号)をMOSFET17のゲート電極に出力してMOSFET17がオンとなる。すると、状態出力端子18からはローレベルの状態検出信号(異常信号)が出力される。
【0034】
半導体装置10の外部に設けられている制御装置(図示せず)は、パワー半導体素子1へのゲート信号の論理値と、状態出力端子18に出力される信号の論理値との組み合わせによって過電流状態や過熱状態にあるか否かを判断する。
【0035】
なお、MOSFET16,17は、それぞれ状態出力端子18と接続されたオープンコレクタ構造のパイポーラトランジスタに置き換えて実施することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施の形態に係る半導体装置を含む負荷駆動システムの構成を示すブロック図である。
【図2】従来の負荷駆動システムの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0037】
1 パワー半導体素子
2 集積回路(半導体集積回路)
4 負荷装置
6 主電源
8 外付け抵抗
9 プルアップ電源
10 半導体装置
11 入力端子
12 出力端子
13 接地端子
14,15 抵抗
16 MOSFET(第1のトランジスタ)
17 MOSFET(第2のトランジスタ)
18 状態出力端子
20 分圧回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷の電流をスイッチング制御するためのパワー半導体素子と、
前記パワー半導体素子の出力端子電圧を分圧する分圧回路と、
前記分圧回路からの電圧を受けて前記負荷の開放検出を行う検出回路と、
外部から所定電圧が供給され、前記検出回路での検出結果に応じて前記所定電圧とは異なる電圧信号を外部に出力する状態出力端子と、
を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記状態出力端子は、外部抵抗を介して外部の電源にプルアップされることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記パワー半導体素子、前記分圧回路、および前記検出回路が同一パッケージ内に格納され、該パッケージの外部端子として前記状態出力端子を備えることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項4】
前記パワー半導体素子、前記分圧回路、および前記検出回路が同一半導体基板上に形成されていることを特徴とする請求項3記載の半導体装置。
【請求項5】
前記検出回路は、前記分圧回路で分圧された電圧に基づいてオン、あるいはオフ動作する第1のトランジスタによって構成されていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項6】
前記パワー半導体素子の異常を検出する集積回路と、
前記集積回路から出力される異常信号を前記状態出力端子に伝達する伝達回路を備えたことを特徴とする請求項1、請求項2または請求項5のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項7】
前記伝達回路は、前記集積回路から出力される異常信号に基づいてオン、あるいはオフ動作する第2のトランジスタによって構成されていることを特徴とする請求項6記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1のトランジスタと、前記第2のトランジスタとが前記状態出力端子に対し共通に接続されていることを特徴とする請求項7記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第1,第2のトランジスタは、前記状態出力端子と接続されたオープンドレイン構造のMOSFETであることを特徴とする請求項5ないし請求項8のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第1,第2のトランジスタは、前記状態出力端子と接続されたオープンコレクタ構造のパイポーラトランジスタであることを特徴とする請求項5ないし請求項8のいずれかに記載の半導体装置

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate