説明

半導体装置

【課題】半導体装置の耐圧を向上させる。
【解決手段】半導体装置は、ドレイン層の表面から内部にかけて、ドレイン層に選択的に設けられたドリフト領域と、ドリフト領域の表面から内部にかけて、ドリフト領域に選択的に設けられたベース領域と、ベース領域の表面から内部にかけて、ベース領域に選択的に設けられた、ソース領域と、ドレイン層の主面に対して略平行な方向に、ソース領域の一部から、ソース領域の一部に隣接するベース領域を貫通して、ドリフト領域の一部にまで到達するトレンチ状のゲート電極と、ベース領域の不純物濃度よりも高い濃度の不純物が含まれ、ドリフト領域の表面に選択的に設けられたコンタクト領域と、ドレイン層に接続されたドレイン電極と、ソース領域およびコンタクト領域に接続されたソース電極と、を備え、コンタクト領域は、ドレイン層側からドリフト領域に向かって延在し、ドレイン層と接触していない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パワー半導体素子においては、高耐圧、オン抵抗の低減化が要求されている。これらの要求に応えるために、近年、プレーナ型のMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)から、縦型のMOSFETに移行している。縦型のMOSFETでは、半導体基板の主面に対し、略垂直な方向にチャネル領域が形成されるので、チャネル密度が増加し、オン抵抗の低減化を図ることができる。
【0003】
また、さらなる高耐圧、オン抵抗の低減化のために、チャネル領域を半導体基板の主面だけではなく半導体基板の垂直方向に形成する3次元型の半導体装置も考えられる。3次元型の半導体装置では、半導体基板の主面に対して、略垂直な方向に、ソース領域、ベース領域、ドレイン領域のそれぞれを延設し、さらに、トレンチ型のゲート電極を設ける。このような構造の半導体装置であれば、チャネル領域が半導体基板の主面と略平行な方向に形成されると共に、チャネル領域が半導体基板の主面に対し、略垂直な方向にも形成される。このため、チャネル密度が大幅に向上する。その結果、3次元型の半導体装置においては、高耐圧が維持され、オン抵抗が低減する。
【0004】
しかし、3次元型の半導体装置においては、半導体装置のオン状態とオフ状態の切り替え時には、ソース電極と、ドレイン電極と、の間の電位差が急激に上昇し、一時的に過電圧の状態となる。このため、ベース領域、ゲート電極の下端部付近でアバランシェ降伏が発生する可能性がある。
【0005】
アバランシェ降伏で発生したキャリアは、ベース領域を通りソース電極側に排出されるものの、3次元型の半導体装置では、ベース領域が深く形成されているため、キャリアがベース領域に滞留し易い。このため、ベース領域の電位が上昇し、寄生バイポーラトランジスタによるバイポーラアクションが生じる可能性がある。バイポーラアクションが連鎖すると、所謂ラッチアップによって素子破壊が起きる。このため、3次元型の半導体装置においては、さらなる耐圧の向上が望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−274398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の実施形態は、耐圧がより向上する半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の半導体装置は、第1導電形のドレイン層の表面から内部にかけて、前記ドレイン層に選択的に設けられた第1導電形のドリフト領域と、前記ドリフト領域の表面から内部にかけて、前記ドリフト領域に選択的に設けられた第2導電形のベース領域と、を備える。また、実施形態の半導体装置は、前記ベース領域の表面から内部にかけて、前記ベース領域に選択的に設けられた、第1導電形のソース領域と、前記ドレイン層の主面に対して略平行な方向に、前記ソース領域の一部から、前記ソース領域の前記一部に隣接するベース領域を貫通して、前記ドリフト領域の一部にまで到達するトレンチ状のゲート電極と、を備える。また、実施形態の半導体装置は、前記ベース領域の不純物濃度よりも高い濃度の不純物が含まれ、前記ドリフト領域の表面に選択的に設けられた第2導電形のコンタクト領域と、前記ドレイン層に接続されたドレイン電極と、前記ソース領域および前記コンタクト領域に接続されたソース電極と、を備える。実施形態の半導体装置の前記コンタクト領域は、前記ドレイン層側から前記ドリフト領域に向かって延在し、前記ドレイン層と接触していない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施の形態に係る半導体装置の要部斜視模式図である。
【図2】第1の実施の形態に係る半導体装置の要部模式図であり、(a)は、半導体装置の要部斜視模式図であり、(b)は、(a)のX−Yの位置における要部断面模式図である。
【図3】第1の実施の形態に係る半導体装置の要部平面模式図である。
【図4】第1の実施の形態に係る半導体装置の製造過程を説明する要部斜視模式図であり、(a)は、半導体基板の表面にマスクを形成する工程の要部斜視模式図、(b)は、半導体基板にエッチング処理をする工程の要部斜視模式図である。
【図5】第1の実施の形態に係る半導体装置の製造過程を説明する要部斜視模式図であり、(a)は、エピタキシャル層を形成する工程の要部斜視模式図、(b)は、マスクを形成する工程の要部斜視模式図である。
【図6】第1の実施の形態に係る半導体装置の製造過程を説明する要部斜視模式図であり、(a)は、半導体基板にエッチング処理をする工程の要部斜視模式図、(b)は、ゲート電極を形成する工程の要部斜視模式図である。
【図7】第1の実施の形態に係る半導体装置の製造過程を説明する要部斜視模式図であり、(a)は、半導体基板にイオン注入をする工程の要部斜視模式図、(b)は、マスクを形成する工程の要部斜視模式図である。
【図8】第1の実施の形態に係る半導体装置の製造過程を説明する要部斜視模式図であり、(a)は、半導体基板にエッチング処理をする工程の要部斜視模式図、(b)は、絶縁層を形成する工程の要部斜視模式図である。
【図9】比較例に係る半導体装置の要部模式図であり、(a)は、半導体装置の要部斜視模式図であり、(b)は、(a)のX−Yの位置における要部断面模式図である。
【図10】コンタクト領域の下面と、絶縁層の下面との段差と、素子耐圧の関係を説明する図である。
【図11】第2の実施の形態に係る半導体装置の要部模式図であり、(a)は、半導体装置の要部斜視模式図であり、(b)は、(a)のX−Yの位置における要部断面模式図である。
【図12】第2の実施の形態に係る半導体装置の要部平面模式図である。
【図13】第2の実施の形態に係る半導体装置の変形例の要部平面模式図である。
【図14】第3の実施の形態に係る半導体装置の要部模式図であり、(a)は、半導体装置の要部斜視模式図であり、(b)は、(a)のX−Yの位置における要部断面模式図である。
【図15】第4の実施の形態に係る半導体装置の要部模式図であり、(a)は、半導体装置の要部斜視模式図であり、(b)は、(a)のX−Yの位置における要部断面模式図である。
【図16】第5の実施の形態に係る半導体装置の要部模式図であり、(a)は、半導体装置の要部斜視模式図であり、(b)は、(a)のX−Yの位置における要部断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本実施の形態について説明する。
図1は、第1の実施の形態に係る半導体装置の要部斜視模式図である。図1には、第1の実施の形態に係る半導体装置の全体像が示されている。
図2は、第1の実施の形態に係る半導体装置の要部模式図であり、(a)は、半導体装置の要部斜視模式図であり、(b)は、(a)のX−Yの位置における要部断面模式図である。図1および図2(a)には、図1(b)に示されたドレイン電極40、ソース電極41が表示されていない。
図3は、第1の実施の形態に係る半導体装置の要部平面模式図である。図1の領域90と、図3の領域90とで、囲まれた部分が図2に表示されている。
【0011】
半導体装置1は、3次元型のMOSFETである。図1、図2に示すように、半導体装置1は、n形のドレイン層10を備え、ドレイン層10の上に、絶縁層50が設けられている。絶縁層50の表面からドレイン層10の内部にかけては、ドリフト領域11が選択的に設けられている。ドレイン層10中に含まれるn形不純物濃度は、ドリフト領域11中に含まれるn形不純物濃度よりも高い。ドリフト領域11の表面から内部にかけては、p形のベース領域12が選択的に設けられている。ベース領域12の表面から内部にかけては、n形のソース領域13が選択的に設けられている。
【0012】
ベース領域12、ベース領域12に隣接するソース領域13の一部、およびベース領域12を挟み、ソース領域13の前記一部とは反対側に設けられたドリフト領域11の一部の表面から内部にかけては、ゲート絶縁膜20を介してゲート電極21が選択的に設けられている。ゲート電極21は、トレンチ状であり、ドレイン層10の主面に対して略平行な方向に、ソース領域13の一部から、ソース領域13の前記一部に隣接するベース領域12を貫通して、ドリフト領域11の一部にまで到達している。ゲート絶縁膜20の下端は、ベース領域12の下端と、ソース領域13の下端と、の間に位置している。ドリフト領域11の表面には、ドレイン層10の側から、ドリフト領域11に向かって、p形のコンタクト領域30が選択的に設けられている。コンタクト領域30は、ベース領域12に隣接している。コンタクト領域30の不純物濃度は、ベース領域12の不純物濃度よりも高い。コンタクト領域30は、例えば、半導体装置1内で発生するキャリア(例えば、正孔)をソース電極41に排出することが可能なキャリア抜き領域である。
【0013】
ドレイン層10には、ドレイン電極40が接続されている。ソース領域13、ベース領域12およびコンタクト領域30には、ビア電極45を介して、ソース電極41が接続されている。ソース電極41と、ドリフト領域11、ベース領域12、およびソース領域13と、の間には、層間絶縁膜46が介在している。層間絶縁膜46の下側のドレイン層10の表面には、絶縁層50が設けられている。絶縁層50は、コンタクト領域30に隣接している。コンタクト領域30の下面と、絶縁層50の下面と、のあいだには、距離Lの段差が設けられている。コンタクト領域30と、ドレイン層10と、の間には、ドリフト領域11および絶縁層50が介設されている。
【0014】
半導体装置1においては、p形のコンタクト領域30がn形のドリフト領域11を介してn形のドレイン層10に接近している。従って、ソース電極41と、ドレイン電極40と、の間に、コンタクト領域30をp側、ドレイン層10をn側とするpnダイオード25が形成されている。pnダイオード25は、絶縁層50の近傍に形成されている。
【0015】
図3に示すように、半導体装置1の平面においては、コンタクト領域30がドリフト領域11に挟まれている。ドリフト領域11およびコンタクト領域30は、ベース領域12に隣接している。ベース領域12は、ドリフト領域11およびコンタクト領域30と反対側において、ソース領域13に隣接している。ベース領域12、ベース領域12に隣接するソース領域13の一部、およびベース領域12に隣接するドリフト領域11の一部には、ゲート電極21が設けられている。ゲート電極21と、ドリフト領域11、ベース領域12、およびソース領域13と、の間には、ゲート絶縁膜20が設けられている。コンタクト領域30は、ドリフト領域11まで延在したゲート電極21の間に位置している。ソース領域13は、ベース領域12によって挟まれ、ソース領域13およびベース領域12は、ドリフト領域11によって挟まれている。
【0016】
半導体装置1の平面における、ドリフト領域11、ベース領域12、およびゲート電極21の配置は、ソース領域13を中心として、線対称になっている。ドリフト領域11およびコンタクト領域30のベース領域12とは反対側には、絶縁層50が隣接している。半導体装置1においては、例えば、図3に示すユニットが、図1に示すごとく、ドレイン層10の主面に対し平行な方向に周期的に配列している。
【0017】
ドレイン層10、ドリフト領域11、ベース領域12、ソース領域13、およびコンタクト領域30の主成分は、例えば、ケイ素(Si)等の半導体である。ゲート電極21の材質は、例えば、ポリシリコン(poly−Si)である。ゲート絶縁膜20、層間絶縁膜46および絶縁層50の材質は、例えば、酸化ケイ素(SiO)等である。ドレイン電極40およびソース電極41の材質は、例えば、銅(Cu)、アルミニウム(Al)等である。
【0018】
半導体装置1の製造過程について説明する。
図4は、第1の実施の形態に係る半導体装置の製造過程を説明する要部斜視模式図であり、(a)は、半導体基板の表面にマスクを形成する工程の要部斜視模式図、(b)は、半導体基板にエッチング処理をする工程の要部斜視模式図である。
【0019】
先ず、図4(a)に示すように、半導体基板(半導体ウェーハ)であるドレイン層10を準備する。ドレイン層10の不純物濃度は、例えば、1×1018cm−3以上である。
続いて、ドレイン層10の表面に、選択的にマスク91を形成する。マスク91の材質は、例えば、酸化シリコン(SiO)である。
【0020】
次に、図4(b)に示すように、マスク91から開口されたドレイン層10に選択的なエッチング処理を施す。これにより、ドレイン層10の表面から内部にかけてトレンチ10tが形成される。
【0021】
図5は、第1の実施の形態に係る半導体装置の製造過程を説明する要部斜視模式図であり、(a)は、エピタキシャル層を形成する工程の要部斜視模式図、(b)は、マスクを形成する工程の要部斜視模式図である。
【0022】
図5(a)に示すように、トレンチ10tの内部に、エピタキシャル成長法によって、n形のドリフト領域11を形成する。ドリフト領域11の不純物濃度は、例えば、1×1012cm−3〜1×1013cm−3である。これにより、ドレイン層10の表面から内部にかけてドリフト領域11が形成される。
【0023】
ドリフト領域11の成長については途中で中断し、ドリフト領域11内に残ったトレンチ10t内に、エピタキシャル成長法によって、p形のベース領域12を形成する。これにより、ドリフト領域11の表面から内部にかけてベース領域12が形成される。
【0024】
さらに、ベース領域12の成長を途中で中断し、ベース領域12内に残ったトレンチ10t内に、エピタキシャル成長法によって、n形のソース領域13を形成する。これにより、ベース領域12の表面から内部にかけてソース領域13が選択的に形成される。
【0025】
その後、ドリフト領域11、ベース領域12、およびソース領域13の表面について、CMP(Chemical Mechanical Polishing)研磨を施す。これにより、ドリフト領域11、ベース領域12、およびソース領域13の表面が平坦になる。マスク91については、CMP研磨で除去する。
【0026】
次に、図5(b)に示すように、ドレイン層10、ドリフト領域11、ベース領域12、およびソース領域13の表面に、選択的にマスク92を形成する。マスク92の材質は、例えば、酸化シリコン(SiO)である。
【0027】
図6は、第1の実施の形態に係る半導体装置の製造過程を説明する要部斜視模式図であり、(a)は、半導体基板にエッチング処理をする工程の要部斜視模式図、(b)は、ゲート電極を形成する工程の要部斜視模式図である。
【0028】
次に、図6(a)に示すように、マスク92から開口されたドリフト領域11、ベース領域12、およびソース領域13のそれぞれの一部に選択的なエッチング処理を施す。これにより、ドリフト領域11、ベース領域12、およびソース領域13のそれぞれの一部に、トレンチ20tが形成される。続いて、トレンチ20t内を高温下で、酸化性雰囲気に晒す。
【0029】
これにより、図6(b)に示すように、トレンチ20tの側面および底面にゲート絶縁膜20が形成される。続いて、トレンチ20t内に、ゲート絶縁膜20を介して、CVD(Chemical Vapor Deposition)によってゲート電極21を形成する。これにより、ベース領域12、ベース領域12に隣接するソース領域13の一部、およびベース領域12を挟み、ソース領域13の前記一部とは反対側のドリフト領域11の一部の表面から内部にかけて、トレンチ状のゲート電極21が選択的に形成される。ゲート電極21の材質は、例えば、ポリシリコン(poly−Si)である。ゲート電極21を形成した後、マスク92を除去する。
【0030】
図7は、第1の実施の形態に係る半導体装置の製造過程を説明する要部斜視模式図であり、(a)は、半導体基板にイオン注入をする工程の要部斜視模式図、(b)は、マスクを形成する工程の要部斜視模式図である。
【0031】
次に、図7(a)に示すように、ドレイン層10、ドリフト領域11、ベース領域12、ソース領域13およびゲート電極21の表面に、選択的にマスク93を形成する。マスク93の材質は、酸化シリコン(SiO)である。続いて、マスク93から開口された部分のドリフト領域11に、p形不純物(例えば、ボロン(B))をイオン注入する。これにより、ドリフト領域11の表面において、ドレイン層10の側から、ベース領域12に向かって、ベース領域12の不純物濃度よりも高いp形のコンタクト領域30が選択的に設けられている。
【0032】
次に、図7(b)に示すように、ドリフト領域11、ベース領域12、ソース領域13およびゲート電極21の表面に、選択的にマスク94を形成する。マスク94の材質は、例えば、酸化シリコン(SiO)である。
【0033】
図8は、第1の実施の形態に係る半導体装置の製造過程を説明する要部斜視模式図であり、(a)は、半導体基板にエッチング処理をする工程の要部斜視模式図、(b)は、絶縁層を形成する工程の要部斜視模式図である。
【0034】
次に、図8(a)に示すように、マスク94から開口された部分にエッチング処理を施し、ドレイン層10の表面のエッチバックを行う。続いて、このエッチバックした部分に、CVD等により、絶縁層50を形成する。この状態を、図8(b)に示す。
【0035】
この後、図1、2に示すように、ドレイン層10に、ドレイン電極40を接続する。ソース領域13、ベース領域12およびコンタクト領域30には、ビア電極45を介して、ソース電極41を接続する。ソース電極41と、ドリフト領域11、ベース領域12、およびソース領域13と、の間には、層間絶縁膜46を介設する。このような製造過程により、半導体装置1が形成される。
【0036】
次に、半導体装置1の作用効果について説明する。
半導体装置1の作用効果を説明する前に、比較例に係る半導体装置100の作用を説明する。
図9は、比較例に係る半導体装置の要部模式図であり、(a)は、半導体装置の要部斜視模式図であり、(b)は、(a)のX−Yの位置における要部断面模式図である。図9(a)には、図2(b)に示されたドレイン電極40、ソース電極41が表示されていない。
【0037】
比較例に係る半導体装置100の構成は、半導体装置1の構成と略同じである。但し、半導体装置100では、半導体装置1のコンタクト領域30に対応するp形のコンタクト領域300がドリフト領域11の表面に設けられていない。半導体装置100では、コンタクト領域300がベース領域12の表面に設けられている。コンタクト領域300は、ソース領域13に隣接している。コンタクト領域300は、ビア電極45を介して、ソース電極41に接続されている。
【0038】
比較例に係る半導体装置100のソース電極41にグランド電位(または、負電位)を印加し、ドレイン電極40に正電位を印加する。さらに、半導体装置100のゲート電極21を閾値電位以上にして、半導体装置100をオン状態にする。
【0039】
半導体装置100がオン状態にあるとき、ソース電極41と、ドレイン電極40と、の間に電流が流れる。半導体装置100においては、ドレイン層10の主面に対して、略垂直な方向に、ソース領域13、ベース領域12、ドリフト領域11がそれぞれ延設され、トレンチ型のゲート電極21が設けられている。従って、チャネル領域がドレイン層10の主面と略平行な方向に形成されると共に、チャネル領域がドレイン層10の主面に対し、略垂直な方向にも形成される。このため、半導体装置100においては、チャネル密度が大幅に向上する。オン状態では、ソース電極41と、ドレイン電極40と、の間が通電するので、ソース電極41と、ドレイン電極40と、の間の電位差がオフ状態に比べ小さくなる。
【0040】
一方、半導体装置100がオン状態からオフ状態に切り替わると、ソース電極41と、ドレイン電極40と、の間の電位差が急激に上昇し、一時的に、本来のオフ状態における電位差を超えて、ソース電極41と、ドレイン電極40と、の間が過電圧の状態となる。
【0041】
このとき、ゲート電極21の下端部付近、あるいは、ベース領域12とドリフト領域11との接合界面においてアバランシェ降伏が発生し、ゲート電極21の下端部付近、あるいは、ベース領域12とドリフト領域11との接合界面において、電子−正孔対が発生する場合がある。そして、発生した正孔は、ベース領域12に向かって移動する。ベース領域12に流入した正孔は、ベース領域12の表面に設けられたコンタクト領域300を通じて、ソース電極41側に排出される。
【0042】
但し、ベース領域12の不純物濃度は、トランジスタの閾値電圧(Vt)を決定するために、コンタクト領域300よりも低く構成されている。従って、ベース領域12の抵抗は、コンタクト領域300の抵抗よりも高くなっている。さらに、3次元型のMOSFETである半導体装置100では、ベース領域12は、ドリフト領域11の表面から内部にかけて深く掘り下げられている。
【0043】
従って、半導体装置100においては、通常のパワーMOSFETに比べ、ベース領域12内に正孔が溜まり易い環境にある。このため、正孔がベース領域12内に流入すると、ベース領域12の電位上昇が生じ、ソース領域13(n型)/ベース領域12(p形)/ドリフト領域11(n型)で構成される寄生バイポーラトランジスタが動作する場合がある。
【0044】
半導体装置100内の寄生バイポーラトランジスタが継続すると、ソース領域13/ベース領域12/ドリフト領域11において局部的な温度上昇が起き、ゲート電極21の下端部付近、あるいは、ベース領域12とドリフト領域11との接合界面において、益々、正孔が発生し易くなる。このため、ソース領域13/ベース領域12/ドリフト領域11において、電流集中が起き易くなる。その結果、半導体装置100では、目的のアバランシェ電流より低い電流値で素子破壊が起きる場合がある。
【0045】
これに対し、第1の実施の形態に係る半導体装置1では、ドリフト領域11の表面において、絶縁層50の側から、ベース領域12に向かって、p形のコンタクト領域30が設けられている。コンタクト領域30は、ドレイン層10の表面に設けられた絶縁層50に隣接している。
【0046】
半導体装置1においては、p形のコンタクト領域30がn形のドリフト領域11を介してn形のドレイン層10に接近しているので、ソース電極41と、ドレイン電極40と、の間に、コンタクト領域30をp側、ドレイン層10をn側とするpnダイオード25が形成されている。
【0047】
半導体装置1においては、ゲート電極21の下端部付近、あるいは、ベース領域12とドリフト領域11との接合界面においてアバランシェ降伏が発生する前に、pnダイオード25付近において正孔を発生し易くしている。
【0048】
例えば、半導体装置1におけるコンタクト領域30の下面と絶縁層50の下面との段差Lと、素子耐圧との関係を、図10に示す。
図10には、横軸に上述した距離Lが示され、縦軸に、半導体装置1の素子耐圧(V)が示されている。
【0049】
ラインAは、ソース領域13/ベース領域12/ドリフト領域11における、距離Lと素子耐圧との関係である。ラインAにおいては、距離Lによって素子耐圧が変化しない。すなわち、ソース領域13/ベース領域12/ドリフト領域11における素子耐圧は、距離Lに依存しない。
【0050】
ラインBにおいては、距離Lが短くなるほど、素子耐圧が低下している。この理由は、距離Lが短くなるほど、pnダイオード25によるツェナー降伏が増すからである。その結果、半導体装置1においては、距離Lが短くなるほど、pnダイオード25付近において、正孔が発生し易くなる。半導体装置1においては、距離Lは、図10の領域95内に調整されている。
【0051】
半導体装置1においては、距離Lを調整することにより、ゲート電極21の下端部付近、あるいは、ベース領域12と、ドリフト領域11との接合界面においてアバランシェ降伏が発生する前に、pnダイオード25付近においてアバランシェ降伏を発生し易くしている。すなわち、距離Lを調整することにより、アバランシェ降伏による正孔が発生する場所を、ゲート電極21の下端部付近、あるいは、ベース領域12とドリフト領域11との接合界面から、pnダイオード25付近に移行させている。
【0052】
換言すれば、距離Lを調整することにより、半導体装置1内で発生するアバランシェ電流を、pnダイオード25付近のアバランシェ電流によって決定付けている。pnダイオード25付近において発生した正孔は、pnダイオード25近傍に設けられたコンタクト領域30を通じて、速やかにソース電極41側に排出される。半導体装置1においては、pnダイオード25がベース領域12外に設けられているために、pnダイオード25付近において発生した正孔がベース領域12内に流入し難い構成になっている。
【0053】
これにより、半導体装置1においては、半導体装置100に比べて、アバランシェ降伏によって発生した正孔がベース領域12内に流入し難くなる。従って、半導体装置1においては、寄生バイポーラトランジスタによるバイポーラアクションが抑制される。その結果、半導体装置1の素子耐圧は、半導体装置100の素子耐圧に比べて向上する。
【0054】
続いて、他の実施の形態について説明する。以下の説明では、半導体装置1と同一の部材には同一の符号を付し、詳細な説明については適宜省略する。
【0055】
(第2の実施の形態)
図11は、第2の実施の形態に係る半導体装置の要部模式図であり、(a)は、半導体装置の要部斜視模式図であり、(b)は、(a)のX−Yの位置における要部断面模式図である。図11(a)には、図11(b)に示されたドレイン電極40、ソース電極41が表示されていない。
図12は、第2の実施の形態に係る半導体装置の要部平面模式図である。図12の領域90で囲まれた部分が図11に表示されている。
【0056】
図11に示すように、半導体装置2においては、ドリフト領域11の表面において、ドレイン層10の側からドリフト領域11に向かって、p形のコンタクト領域31が選択的に設けられている。絶縁層50の側から延在するコンタクト領域31は、ドリフト領域11の表面の途中で途切れている。コンタクト領域31の不純物濃度は、ベース領域12の不純物濃度よりも高い。コンタクト領域31は、例えば、半導体装置2内で発生するキャリア(例えば、正孔)をソース電極41に排出するキャリア抜き領域である。
【0057】
ドレイン層10には、ドレイン電極40が接続されている。ソース領域13、ベース領域12およびコンタクト領域31には、ビア電極45を介して、ソース電極41が接続されている。層間絶縁膜46の下側のドレイン層10の表面には、絶縁層50が設けられている。絶縁層50は、コンタクト領域31に隣接している。コンタクト領域31の下面と、絶縁層50の下面と、のあいだには、距離Lの段差が設けられている。コンタクト領域31と、ドレイン層10と、の間には、ドリフト領域11および絶縁層50が介設されている。
【0058】
半導体装置2においては、p形のコンタクト領域31をn形のドリフト領域11を介してn形のドレイン層10に接近させている。従って、ソース電極41と、ドレイン電極40と、の間に、コンタクト領域31をp側、ドレイン層10をn側とするpnダイオード26が形成されている。pnダイオード26は、絶縁層50の近傍に形成されている。
【0059】
図12に示すように、半導体装置2の平面においては、コンタクト領域31がドリフト領域11に隣接している。ドリフト領域11は、ベース領域12に隣接している。ベース領域12のドリフト領域11と反対側には、ソース領域13が隣接している。ソース領域13から、ベース領域12を介してドリフト領域11までは、ゲート電極21が設けられている。ゲート電極21と、ドリフト領域11、ベース領域12、およびソース領域13と、の間には、ゲート絶縁膜20が設けられている。
【0060】
半導体装置2の平面における、ドリフト領域11、ベース領域12、およびゲート電極21の配置は、ソース領域13を中心として、線対称になっている。ドリフト領域11とは、反対側のコンタクト領域31には、絶縁層50が接している。半導体装置2においては、例えば、図12に示すユニットがドレイン層10の主面に対し平行な方向に周期的に配列している。
【0061】
第2の実施の形態に係る半導体装置2では、ドリフト領域11の表面において、絶縁層50の側から、ベース領域12に向かって、p形のコンタクト領域31が設けられている。コンタクト領域31は、ドレイン層10の表面に設けられた絶縁層50に隣接している。半導体装置2においては、p形のコンタクト領域31がn形のドリフト領域11を介してn形のドレイン層10に接近しているので、ソース電極41と、ドレイン電極40と、の間に、コンタクト領域31をp側、ドレイン層10をn側とするpnダイオード26が形成されている。
【0062】
半導体装置2においては、半導体装置1と同様に、距離Lを調整することにより、ゲート電極21の下端部付近、あるいは、ベース領域12と、ドリフト領域11との接合界面においてアバランシェ降伏が発生する前に、pnダイオード26付近においてアバランシェ降伏を発生し易くしている。すなわち、距離Lを調整することにより、アバランシェ降伏による正孔が発生する場所を、ゲート電極21の下端部付近、あるいは、ベース領域12とドリフト領域11との接合界面から、pnダイオード26付近に移行させている。
【0063】
換言すれば、距離Lを調整することにより、半導体装置2内で発生するアバランシェ電流を、pnダイオード26付近のアバランシェ電流によって決定付けている。pnダイオード26付近において発生した正孔は、pnダイオード26近傍に設けられたコンタクト領域31を通じて、速やかにソース電極41側に排出される。
【0064】
これにより、半導体装置2においては、半導体装置100に比べて、アバランシェ降伏によって発生した正孔がベース領域12内に流入し難くなる。従って、半導体装置2においては、寄生バイポーラトランジスタによるバイポーラアクションが抑制される。その結果、半導体装置2の素子耐圧は、比較例に係る半導体装置100の素子耐圧に比べて向上する。
【0065】
(第2の実施の形態の変形例)
第2の実施の形態の変形例は、半導体装置2の平面におけるゲート電極21の配置を変えた実施形態である。
図13は、第2の実施の形態に係る半導体装置の変形例の要部平面模式図である。
【0066】
図13(a)に示すように、半導体装置3の平面においては、コンタクト領域31がドリフト領域11に隣接している。ドリフト領域11は、ベース領域12に隣接している。ベース領域12のドリフト領域11と反対側には、ソース領域13が隣接している。ソース領域13は、ベース領域12によって挟まれ、ソース領域13およびベース領域12は、ドリフト領域11によって挟まれている。ソース領域13の一部から、ベース領域12を介してドリフト領域11の一部には、ゲート電極21が設けられている。ゲート電極21と、ドリフト領域11、ベース領域12、およびソース領域13と、の間には、ゲート絶縁膜20が設けられている。
【0067】
半導体装置3の平面においては、ベース領域12が延在する方向におけるゲート電極21の周期が近接するベース領域12において互いに一致していない。例えば、近接するベース領域12の中、一方のベース領域12に設けられたゲート電極21は、他方のベース領域12に設けられたゲート電極21間に位置している。
【0068】
図13(b)に示すように、半導体装置4の平面においては、コンタクト領域31がドリフト領域11に隣接している。ドリフト領域11は、ベース領域12に隣接している。ベース領域12のドリフト領域11と反対側には、ソース領域13が隣接している。ソース領域13は、ベース領域12によって挟まれ、ソース領域13およびベース領域12は、ドリフト領域11によって挟まれている。ソース領域13の一部から、ベース領域12を介してドリフト領域11の一部には、ゲート電極21が設けられている。ゲート電極21と、ドリフト領域11、ベース領域12、およびソース領域13と、の間には、ゲート絶縁膜20が設けられている。
【0069】
半導体装置4の平面においては、ゲート電極21がソース領域13、ソース領域13を跨って、ソース領域13の両側に配置されたベース領域12の一部、およびベース領域12に隣接するドリフト領域11の一部に配置されている。
【0070】
半導体装置3、4においては、例えば、図13(a)、(b)に示すユニットがドレイン層10の主面に対し平行な方向に周期的に配列している。このような実施の形態も、第2の実施の形態に含まれる。
【0071】
(第3の実施の形態)
図14は、第3の実施の形態に係る半導体装置の要部模式図であり、(a)は、半導体装置の要部斜視模式図であり、(b)は、(a)のX−Yの位置における要部断面模式図である。
【0072】
半導体装置5においては、ドリフト領域がドレイン層10を介して複数に分離している。例えば、ドリフト領域は、ドレイン層10を介して、第1のドリフト領域11Aと第2のドリフト領域11Bとに分割されている。第1のドリフト領域11Aの表面から内部にかけて、ベース領域12が選択的に設けられている。ドリフト領域11Aにドレイン層10を介して隣接する第2のドリフト領域11Bの表面には、キャリア抜き領域であるp形のコンタクト領域32が選択的に設けられている。コンタクト領域32は、ドレイン層10の側からドリフト領域11Aに向かって延在している。ドリフト領域11Aの深さと、ドリフト領域11Bの深さは、同じ深さであってもよく、段差があってもよい。ドレイン層10の上には、絶縁層50A、50Bが設けられている。
【0073】
ドリフト領域11Aの表面から内部にかけては、ベース領域12が選択的に設けられている。ベース領域12の表面から内部にかけては、ソース領域13が選択的に設けられている。ベース領域12、ベース領域12に隣接するソース領域13の一部、およびベース領域12を挟み、ソース領域13の前記一部とは反対側のドリフト領域11Aの一部の表面から内部にかけては、ゲート絶縁膜20を介してゲート電極21が選択的に設けられている。
【0074】
半導体装置5においては、コンタクト領域32がドリフト領域11Bの表面に選択的に設けられている。コンタクト領域32の不純物濃度は、ベース領域12の不純物濃度よりも高い。
【0075】
ドレイン層10には、ドレイン電極40が接続されている。ソース領域13、ベース領域12およびコンタクト領域32には、ビア電極45を介して、ソース電極41が接続されている。ソース電極41と、ドリフト領域11A、11B、ベース領域12、およびソース領域13と、の間には、層間絶縁膜46が介在している。層間絶縁膜46の下側のドレイン層10の表面には、絶縁層50A、50Bが設けられている。絶縁層50A、50Bは、コンタクト領域32に隣接している。コンタクト領域32の下面と、絶縁層50A、50Bの下面と、のあいだには、距離Lの段差が設けられている。
【0076】
半導体装置5においては、p形のコンタクト領域32がn形のドリフト領域11Bを介してn形のドレイン層10に接近している。従って、ソース電極41と、ドレイン電極40と、の間に、コンタクト領域32をp側、ドレイン層10をn側とするpnダイオード27A、27Bが形成されている。pnダイオード27Aは、絶縁層50Aの近傍に形成されている。pnダイオード27Bは、絶縁層50Bの近傍に形成されている。
【0077】
半導体装置5においては、半導体装置1と同様に、距離Lを調整することにより、ゲート電極21の下端部付近、あるいは、ベース領域12と、ドリフト領域11Aとの接合界面においてアバランシェ降伏が発生する前に、pnダイオード27A、27B付近においてアバランシェ降伏を発生し易くしている。すなわち、距離Lを調整することにより、アバランシェ降伏による正孔が発生する場所を、ゲート電極21の下端部付近、あるいは、ベース領域12とドリフト領域11Aとの接合界面から、pnダイオード27A、27B付近に移行させている。
【0078】
換言すれば、距離Lを調整することにより、半導体装置5内で発生するアバランシェ電流を、pnダイオード27A、27B付近のアバランシェ電流によって決定付けている。pnダイオード27A、27B付近において発生した正孔は、pnダイオード27A、27B近傍に設けられたコンタクト領域32を通じて、速やかにソース電極41側に排出される。
【0079】
これにより、半導体装置5においては、半導体装置100に比べて、アバランシェ降伏によって発生した正孔がベース領域12内に流入し難くなる。従って、半導体装置5においては、寄生バイポーラトランジスタによるバイポーラアクションが抑制される。その結果、半導体装置5の素子耐圧は、比較例に係る半導体装置100の素子耐圧に比べて向上する。
【0080】
半導体装置5においては、pnダイオード27A、27Bを半導体装置1〜4に比べ、さらにベース領域12から遠ざけているために、pnダイオード27A、27B付近において発生した正孔がベース領域12内に流入し難い構成になっている。従って、半導体装置5においては、バイポーラアクションがさらに抑制されて、半導体装置1〜4よりも素子耐圧がさらに向上する。
【0081】
(第4の実施の形態)
図15は、第4の実施の形態に係る半導体装置の要部模式図であり、(a)は、半導体装置の要部斜視模式図であり、(b)は、(a)のX−Yの位置における要部断面模式図である。
【0082】
半導体装置6においては、ドレイン層10の表面からドレイン層10の内部にかけて、ドリフト領域11が選択的に設けられている。ドリフト領域11の表面から内部にかけては、ベース領域12が選択的に設けられている。ベース領域12の表面から内部にかけては、ソース領域13が選択的に設けられている。ベース領域12、ベース領域12に隣接するソース領域13の一部、およびベース領域12を挟み、ソース領域13の前記一部とは反対側のドリフト領域11の一部の表面から内部にかけては、ゲート絶縁膜20を介してゲート電極21が選択的に設けられている。
【0083】
半導体装置6においては、キャリア抜き領域であるp形のコンタクト領域33がドリフト領域11の表面に選択的に設けられている。コンタクト領域33は、ドレイン層10の側からドリフト領域11に向かって延在している。コンタクト領域33の不純物濃度は、ベース領域12の不純物濃度よりも高い。
【0084】
ドレイン層10には、ドレイン電極40が接続されている。ソース領域13、ベース領域12およびコンタクト領域33には、ビア電極45を介して、ソース電極41が接続されている。ソース電極41と、ドリフト領域11、ベース領域12、およびソース領域13と、の間には、層間絶縁膜46が介在している。
【0085】
半導体装置6においては、p形のコンタクト領域33がn形のドリフト領域11を介してn形のドレイン層10に、距離Lを隔てて接近している。コンタクト領域33と、ドレイン層10と、の間には、ドリフト領域11が介設されている。従って、ソース電極41と、ドレイン電極40と、の間に、コンタクト領域33をp側、ドレイン層10をn側とするpnダイオード28が形成されている。
【0086】
半導体装置6においては、半導体装置1と同様に、距離Lを調整することにより、ゲート電極21の下端部付近、あるいは、ベース領域12と、ドリフト領域11との接合界面においてアバランシェ降伏が発生する前に、pnダイオード28付近においてアバランシェ降伏を発生し易くしている。すなわち、距離Lを調整することにより、アバランシェ降伏による正孔が発生する場所を、ゲート電極21の下端部付近、あるいは、ベース領域12とドリフト領域11との接合界面から、pnダイオード28付近に移行させている。
【0087】
換言すれば、距離Lを調整することにより、半導体装置6内で発生するアバランシェ電流を、pnダイオード28付近のアバランシェ電流によって決定付けている。pnダイオード28付近において発生した正孔は、pnダイオード28近傍に設けられたコンタクト領域33を通じて、速やかにソース電極41側に排出される。
【0088】
これにより、半導体装置6においては、半導体装置100に比べて、アバランシェ降伏によって発生した正孔がベース領域12内に流入し難くなる。従って、半導体装置6においては、寄生バイポーラトランジスタによるバイポーラアクションが抑制される。その結果、半導体装置6の素子耐圧は、比較例に係る半導体装置100の素子耐圧に比べて向上する。
【0089】
(第5の実施の形態)
図16は、第5の実施の形態に係る半導体装置の要部模式図であり、(a)は、半導体装置の要部斜視模式図であり、(b)は、(a)のX−Yの位置における要部断面模式図である。
【0090】
半導体装置7においては、ドレイン層10の表面からドレイン層10の内部にかけて、ドリフト領域11が選択的に設けられている。ドリフト領域11の表面から内部にかけては、ベース領域12が選択的に設けられている。ベース領域12の表面から内部にかけては、ソース領域13が選択的に設けられている。ベース領域12、ベース領域12に隣接するソース領域13の一部、およびベース領域12を挟み、ソース領域13の前記一部とは反対側のドリフト領域11の一部の表面から内部にかけては、ゲート絶縁膜20を介してゲート電極21が選択的に設けられている。
【0091】
半導体装置7においては、キャリア抜き領域であるp形のコンタクト領域34がドリフト領域11の表面に選択的に設けられている。コンタクト領域34は、絶縁層50と対向し、絶縁層50に対し略平行に延在している。さらに、コンタクト領域34は、絶縁層50に隣接せず、絶縁層50から離れて配置されている。コンタクト領域34の不純物濃度は、ベース領域12の不純物濃度よりも高い。
【0092】
ドレイン層10には、ドレイン電極40が接続されている。ソース領域13、ベース領域12およびコンタクト領域33には、ビア電極45を介して、ソース電極41が接続されている。ソース電極41と、ドリフト領域11、ベース領域12、およびソース領域13と、の間には、層間絶縁膜46が介在している。
【0093】
形のコンタクト領域34の底面の端部34eと、絶縁層50の底面の端部50eとの距離Lを隔てて離れている。コンタクト領域34と、ドレイン層10と、の間には、ドリフト領域11が介設されている。従って、ソース電極41と、ドレイン電極40と、の間に、コンタクト領域34をp側、ドレイン層10をn側とするpnダイオード29が形成されている。
【0094】
半導体装置7においては、半導体装置1と同様に、距離Lを調整することにより、ゲート電極21の下端部付近、あるいは、ベース領域12と、ドリフト領域11との接合界面においてアバランシェ降伏が発生する前に、pnダイオード29付近においてアバランシェ降伏を発生し易くしている。すなわち、距離Lを調整することにより、アバランシェ降伏による正孔が発生する場所を、ゲート電極21の下端部付近、あるいは、ベース領域12とドリフト領域11との接合界面から、pnダイオード29付近に移行させている。
【0095】
換言すれば、距離Lを調整することにより、半導体装置7内で発生するアバランシェ電流を、pnダイオード29付近のアバランシェ電流によって決定付けている。pnダイオード29付近において発生した正孔は、pnダイオード29近傍に設けられたコンタクト領域34を通じて、速やかにソース電極41側に排出される。
【0096】
これにより、半導体装置7においては、半導体装置100に比べて、アバランシェ降伏によって発生した正孔がベース領域12内に流入し難くなる。従って、半導体装置7においては、寄生バイポーラトランジスタによるバイポーラアクションが抑制される。その結果、半導体装置7の素子耐圧は、比較例に係る半導体装置100の素子耐圧に比べて向上する。
【0097】
以上、具体例を参照しつつ本実施の形態について説明した。
第1〜第5の実施の形態に係る半導体装置1〜7は、n形のドレイン層10の表面から内部にかけて、ドレイン層10に選択的に設けられたn形のドリフト領域11、11A、11Bと、ドリフト領域11、11Aの表面から内部にかけて、ドリフト領域11、11Aに選択的に設けられたp形のベース領域12と、ベース領域12の表面から内部にかけて、ベース領域12に選択的に設けられた、n形のソース領域13と、を備える。そして、キャリア抜き領域であるコンタクト領域30〜34は、ドレイン層10の側からドリフト領域11、11Bに向かって延在している。コンタクト領域30〜34は、ドレイン層10と接触していない。
【0098】
しかし、本実施の形態はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本実施の形態の特徴を備えている限り、本実施の形態の範囲に包含される。さらに、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することもできる。それぞれの実施の形態ついては、それぞれが独立した実施の形態ではなく、それぞれの実施の形態を適宜複合することができる。本実施の形態では、n形を第1導電形、p形を第2導電形と、表示してもよい。また、n形を第2導電形、p形を第1導電形とする形態も本実施の形態に含まれる。
【符号の説明】
【0099】
1、2、3、4、5、6、7、100 半導体装置
10 ドレイン層
10t トレンチ
11、11A、11B ドリフト領域
12 ベース領域
13 ソース領域
20 ゲート絶縁膜
20t トレンチ
21 ゲート電極
25、26、27A、27B、28、29 pnダイオード
30、31、32、33、34、300 コンタクト領域
40 ドレイン電極
41 ソース電極
45 ビア電極
46 層間絶縁膜
50、50A、50B 絶縁層
90、95 領域
91、92、93、94 マスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電形のドレイン層の表面から内部にかけて、前記ドレイン層に選択的に設けられた第1導電形のドリフト領域と、
前記ドリフト領域の表面から内部にかけて、前記ドリフト領域に選択的に設けられた第2導電形のベース領域と、
前記ベース領域の表面から内部にかけて、前記ベース領域に選択的に設けられた、第1導電形のソース領域と、
前記ドレイン層の主面に対して略平行な方向に、前記ソース領域の一部から、前記ソース領域の前記一部に隣接するベース領域を貫通して、前記ドリフト領域の一部にまで到達するトレンチ状のゲート電極と、
前記ベース領域の不純物濃度よりも高い濃度の不純物が含まれ、前記ドリフト領域の表面に選択的に設けられた第2導電形のコンタクト領域と、
前記ドレイン層に接続されたドレイン電極と、
前記ソース領域および前記コンタクト領域に接続されたソース電極と、
を備え、
前記コンタクト領域は、前記ドレイン層側から前記ドリフト領域に向かって延在し、前記ドレイン層と接触していないことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記コンタクト領域と、前記ドレイン層と、の間に、前記ドリフト領域が介設されていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記ドレイン層の上に、絶縁層がさらに設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記コンタクト領域の下面と、前記絶縁層の下面と、のあいだには、段差があることを特徴とする請求項3記載の半導体装置。
【請求項5】
前記ドリフト領域は、前記ドレイン層を介して第1のドリフト領域と第2のドリフト領域とに分割され、
前記第1のドリフト領域の表面から内部にかけて、前記ベース領域が選択的に設けられ、
前記第1のドリフト領域に前記ドレイン層を介して隣接する第2のドリフト領域の表面に、前記コンタクト領域が選択的に設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−59931(P2012−59931A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201874(P2010−201874)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)