説明

半導体集積回路、半導体集積回路の内部状態退避回復方法

【課題】内部状態を保持しつつ、リーク電流をより削減する半導体集積回路、半導体集積回路の内部状態退避回復方法を提供する。
【解決手段】半導体集積回路は、第3回路部(122)と第4回路部(124)とを備える第1回路部(120)と、第1回路部(120)に供給する第1電源(MPW)の投入切断を制御する第2回路部(110)とを具備する。第3回路部(122)は、第1電源(MPW)の切断により保持する情報が消去されるフリップフロップ群(140)に内部状態を格納する。第4回路部(124)は、第1電源(MPW)が切断される前の情報を退避し、第1電源(MPW)が再投入されたときに回復するリテンションフリップフロップ群(150)に内部状態を格納する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路、半導体集積回路の内部状態の退避および回復方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スタンバイやレジューム機能等の低消費電力モードを備えた半導体集積回路が注目されている。通常、半導体集積回路は、電源供給が停止されるとその内部状態は不揮発性メモリを除いて消去される。電源供給を再開した時、回路の電源供給を停止する直前の状態から回路の動作を再開させるためには、フリップフロップに格納されている内部状態を保存しなくてはならない。
【0003】
例えば、特開2007−157027号公報には、半導体集積回路の内部状態をバックアップメモリにスキャンパスを利用して退避・回復させる技術が開示されている。内部状態をバックアップメモリに退避させて電源供給を停止し、電源供給再開後にバックアップメモリから内部状態を読み込んでフリップフロップに格納し、内部状態を回復する。
【0004】
また、内部状態の保持は、リテンションフリップフロップによっても可能である。リテンションフリップフロップは、種々の実現方法があるが、例えば、主要部と保持部とを備える構成により実現することができる。高速動作が要求される主要部は、閾値電圧の低いトランジスタによるフリップフロップを備える。保持部は、閾値電圧の高いトランジスタによるフリップフロップを備える。主要部のフリップフロップは、閾値電圧が低いため、高速に動作するがリーク電流が大きい。保持部のフリップフロップは、動作は遅いがリーク電流が小さい。この保持部のフリップフロップは、主要部のフリップフロップ近傍に配置される。そのため、リテンションフリップフロップは、配線が複雑に入り込みやすい。
【0005】
電源供給を停止する直前に、保持部のフリップフロップは主要部のフリップフロップから出力されるデータを取り込んで保持する。電源供給が遮断されている間、保持部のフリップフロップ以外は動作を停止し、保持部のフリップフロップが小さいリーク電流で内部状態を保持する。電源供給が再開されると、保持部のフリップフロップから主要部のフリップフロップにデータが戻される。これによって、半導体集積回路の内部状態は迅速に復元され、電源遮断前の状態から引き続いて動作可能となる。
【0006】
また、リテンションフリップフロップに関して、例えば、特表2007−535031号公報に開示されている技術が知られる。これによると、リテンションフリップフロップは、入力及び出力ノードと、マスタラッチ及びスレーブラッチの2つのラッチとを含む。その各ラッチは、入力及び出力ノードと直列に接続された回路要素を含む。そして、ラッチの内の第1のラッチは、電力がラッチの内の第2のラッチから切り離される電力管理モードの時にフリップフロップの状態を保持するように構成される。
【0007】
このように、リテンションフリップフロップを用いると、動作再開の時間は短縮されるが、上述のように、主要部と保持部とにそれぞれフリップフロップを備えるため、回路面積が大きくなる。また、保持部のフリップフロップにデータを保持するときにバックアップ用の電源が供給される。そのため、リテンションフリップフロップは、保持部のフリップフロップにデータを保持するときに少ないながらもリーク電流が流れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2007−535031号公報
【特許文献2】特開2007−157027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、内部状態を保持しつつ、リーク電流をより削減する半導体集積回路、半導体集積回路の内部状態退避回復方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下に、[発明を実施するための形態]で使用される番号・符号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号・符号は、[特許請求の範囲]の記載と[発明を実施するための形態]との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号・符号を、[特許請求の範囲]に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0011】
本発明の観点では、半導体集積回路は、第3回路部(122)と第4回路部(124)とを備える第1回路部(120)と、第1回路部(120)に供給する第1電源(MPW)の投入切断を制御する第2回路部(110)とを具備する。第3回路部(122)は、第1電源(MPW)の切断により保持する情報が消去されるフリップフロップ群(140)に内部状態を格納する。第4回路部(124)は、第1電源(MPW)が切断される前の情報を退避し、第1電源(MPW)が再投入されたときに回復するリテンションフリップフロップ群(150)に内部状態を格納する。
【0012】
本発明の他の観点では、半導体集積回路の内部状態退避回復方法は、第1回路部(120)と、第1回路部(120)に供給する第1電源(MPW)の投入切断を制御する第2回路部(110)とを備える半導体集積回路の内部状態退避回復方法であり、内部状態の退避を指示するステップと、情報を保持部に退避させるステップと、供給を停止するステップと、内部状態を消去するステップと、供給を再開するステップと、回復するステップと、動作を再開するステップとを具備する。リテンションフリップフロップ群のそれぞれは、第1電源(MPW)が供給され、閾値電圧の低いトランジスタにより高速に動作する主要部と、第1電源(MPW)の供給が停止しても設定された情報を保持する保持部とを備える。内部状態の退避を指示するステップでは、待機状態になるときに、第2回路部(110)が第1回路部(120)に内部状態の退避を指示する。情報を保持部に退避させるステップでは、退避の指示に基づいて、第1回路部(120)内のリテンションフリップフロップ群(150)のそれぞれが、主要部に格納される情報を保持部に退避させる。供給を停止するステップでは、第2回路部(110)が第1電源(MPW)の供給を停止する。内部状態を消去するステップでは、第1回路部(120)内の第1電源(MPW)の停止により情報が消去されるフリップフロップ群(140)に格納される内部状態と、第1回路部(120)内のリテンションフリップフロップ群(150)の主要部に格納される内部状態とが消去される。供給を再開するステップでは、通常動作状態に回復する要求を受けて第2回路部(110)が第1電源(MPW)の供給を再開する。回復するステップでは、リテンションフリップフロップ群(150)の保持部に保持される情報が主要部に回復される。動作を再開するステップでは、待機状態になる直前の状態から動作が再開される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、内部状態を保持しつつ、リーク電流をより削減する半導体集積回路、半導体集積回路の内部状態退避回復方法を提供することができる。また、本発明によれば、回路面積を小さくすることができ、配線性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る半導体集積回路内部の電源供給経路を説明するための図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る半導体集積回路の内部回路構成を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る半導体集積回路の内部情報保持回復動作を示すタイミング図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る半導体集積回路の他の回路へのバックアップ用電源供給を説明する図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る半導体集積回路における不定状態の伝搬防止を説明する図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るリテンションフリップフロップの回路例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を参照して、本発明を実施するための形態を説明する。
【0016】
図1は、リーク電流を削減するための半導体集積回路内部の電源供給経路を示す図である。図1(a)に示されるように、半導体集積回路100は、待機状態のときに電源の供給が停止される電源供給制限回路部120と、常時電源が供給されて電源供給制限回路部120への電源供給を制御する共通制御回路部110とを備える。半導体集積回路100は、待機状態になると、動作再開を監視する共通制御部110を除き、動作を停止している電源供給制限回路部120の電源供給を遮断し、リーク電流を削減する。
【0017】
このとき、電源供給制限回路部120に含まれるフリップフロップに上記に説明されたリテンションフリップフロップを用いると、リテンションフリップフロップの保持部にバックアップ用電源BPWを供給しなければならない。したがって、図1(b)に示されるように、共通制御回路部110には電源POWが常時供給され、電源供給制限回路部120には共通制御回路部110によって制御されるメイン電源MPWとバックアップ用電源BPWとが供給される。バックアップ用電源BPWは、リテンションフリップフロップ(RFF)に供給され、リテンションフリップフロップはメイン電源MPWの供給が停止している間、電源供給制限回路部120の内部状態を保持する。共通制御回路部110には常時電源POWが供給されるため、内部状態を保持するフリップフロップは、通常のフリップフロップ(NFF)、すなわち、電源POWが遮断されると保持データが消去されるフリップフロップである。
【0018】
このように、リテンションフリップフロップを使用し、電源供給制御回路部120が待機状態になったときに供給制御回路部110はメイン電源MPWを遮断し、電源供給制限回路部120のリーク電流を削減することができる。本発明では、この電源供給制限回路部120のリーク電流をさらに削減する。すなわち、電源供給制限回路部120内に組み込まれている試験回路、デバッグ回路等、通常の動作に関与しない回路のフリップフロップとして、リテンションフリップフロップではなく通常のフリップフロップが使用される。図1(c)に示されるように、電源供給制限回路部120内のフリップフロップは、通常の動作に関与するものと、関与しないものとに分類される。通常の動作に関与するフリップフロップにはリテンションフリップフロップ(RFF)が用いられ、ここでは、その集合をRFF回路部124とする。通常の動作に関与しないフリップフロップには通常のフリップフロップ(NFF)が用いられ、ここでは、その集合をNFF回路部122とする。ここでは、NFF回路部122、RFF回路部124の2つの回路部として記載するが、回路数が限定されることはない。
【0019】
図2を参照して、さらに詳細な構成が説明される。半導体集積回路100は、共通制御回路部110として、バックアップ制御回路112、電源制御回路114を備え、電源供給制限回路部120としてRFF回路部124、NFF回路部122、論理回路126を備える。電源供給制限回路部120は、CPU(Central Processing Unit)を含む情報処理装置を具現化する回路であることが好ましく、処理する情報がないときには動作を停止して待機状態になる。
【0020】
電源供給制限回路部120が待機状態になるとき、CPUはインストラクションを実行してスタンバイ指示信号SBを出力する。バックアップ制御回路112は、電源供給制限回路部120が待機状態になるときに、リテンションフリップフロップ150内の主要部に保持される内部状態を保持部に格納するように指示する。保持部に格納が終わると、バックアップ制御回路112は、電源制御回路114へメイン電源MPWの遮断を指示する。また、バックアップ制御回路112は、起動要求信号RQによって電源供給制限回路部120の動作再開の要求を検知し、電源制御信号PCによって電源制御回路114へメイン電源MPWの投入を指示する。メイン電源MPWが再投入されてリテンションフリップフロップ150の保持部に保持されている内部状態を主要部に回復する時間を経過した後、バックアップ制御回路112は、リテンション制御信号NRTを解除し、電源供給制限回路部120は通常動作を再開する。
【0021】
RFF回路部124は、リテンションフリップフロップ150に内部状態を保持する。したがって、RFF回路部124には、電源制御回路114によって制御されるメイン電源MPWと、バックアップ用電源BPWとが供給される。
【0022】
NFF回路部122は、回路試験やデバック時に使用される回路を含み、電源供給制限回路部120の通常動作に寄与する回路ではない。しかしながら、NFF回路部122は、回路試験やデバッグ動作時に遅延時間等の条件から、通常動作に使用されるRFF回路部124の近傍に配置されるため、電源供給制限回路部120内にRFF回路部124と混在する。NFF回路部122は、高速に動作する通常のフリップフロップ140に内部状態を保持する。したがって、NFF回路部122には、メイン電源MPWが供給され、メイン電源MPWの供給が停止されるとNFF回路部122のリーク電流はゼロになる。
【0023】
このように、バックアップ用電源BPWを供給するリテンションフリップフロップの数が少なくなり、待機状態における消費電力が低減される。また、通常のフリップフロップ140は、リテンションフリップフロップ150に比べ、保持部を有しないため、回路面積が小さい。したがって、リテンションフリップフロップ150の数を少なくすることによって、電源供給制限回路部120の面積を削減することができる。さらに、通常のフリップフロップ140は、バックアップ用電源BPWの配線が不要であり、配線性が良好になる。特に遅延時間が問題になる試験回路やデバッグ回路は、通常動作に使用されるリテンションフリップフロップ150の近傍に配置されるため、配線が少なくなる効果は大きい。
【0024】
次に、半導体集積回路100の待機状態へ移行する保持動作と待機状態から動作を再開する回復動作について説明する。図3は、保持動作、回復動作およびその前後の各信号を示すタイミング図である。通常動作時、スタンバイ指示信号SB(図3(a))、起動要求信号RQ(図3(b))は、インアクティブ(L)であり、リテンション制御信号(図3(c))は、インアクティブ(H)である。メイン電源MPWは、供給されている(図3(d))。
【0025】
電源供給制限回路部120は、実行すべき処理がなくなり待機状態に移行するとき、命令を実行してスタンバイ指示信号SBをアクティブ(H)にする(図3(a))。これにより保持動作が開始される。バックアップ制御回路112は、電源供給制限回路部120が待機状態に移行することを検知すると、電源供給制限回路部120の内部状態をリテンションフリップフロップ150内の保持部に格納するように、リテンション制御信号NRTをアクティブ(L)にして指示する(図3(c))。その後、バックアップ制御回路112は、電源制御回路114に対して電源制御信号PCによりメイン電源MPWの遮断を指示する。電源制御回路114は、メイン電源MPWの供給を停止する(図3(d))。したがって、電源供給制限回路部120は、バックアップ用電源BPWだけが供給されてリーク電流の少ない待機状態になる。
【0026】
回復動作は、外部からの操作やタイマ起動等により起動要求信号RQがアクティブ(H)になることから開始される(図3(b))。バックアップ制御回路112は、起動要求信号RQによって動作再開の要求を検知すると、電源制御回路114に対して電源制御信号PCによりメイン電源MPWの投入を指示する(図3(d))。リテンションフリップフロップ150の保持部に保持されている内部状態を主要部に回復する時間を経過した後、バックアップ制御回路112は、リテンション制御信号NRTを解除する(図3(d))。リテンション制御信号NRTがインアクティブ(H)になって、電源供給制限回路部120は、通常動作を再開する。
【0027】
論理回路126によって生成されるリセット信号NRSTがNFF回路部122の各フリップフロップ140に供給される。リセット信号NRSTは、電源供給制限回路部120に与えられるリセット信号RSTBと、リテンション制御信号NRTとの論理和である。すなわち、リセット信号RSTB、リテンション制御信号NRT共にアクティブロウであり、少なくともどちらかの信号がアクティブ(L)であれば、リセット信号NRSTはアクティブ(L)になる。したがって、通常動作再開直前までリテンション制御信号NRTがアクティブ(L)であるため、動作再開時、各フリップフロップが初期状態にリセットされて動作が開始される。
【0028】
このように、電源供給制限回路部120に供給されるメイン電源MPWが遮断されてリーク電流が削減される。このとき、NFF回路部122では、含まれる全てのフリップフロップ140の電源供給が停止されるため、含まれる組み合わせ回路162、バッファ回路146に供給される電源も遮断されても問題はない。しかし、RFF回路部124では、含まれるリテンションフリップフロップ150に接続されるリテンション制御信号NRTは、メイン電源MPWの供給が停止されても不定になることが許されない。すなわち、電源供給制限回路部120が待機状態である期間にリテンション制御信号がリテンション解除を示すと動作不良を起こすことになる。
【0029】
したがって、図4に示されるように、RFF回路部124内の組み合わせ回路のうち、リテンション制御信号NRTを中継するバッファ回路158には、バックアップ用電源BPWが供給される必要がある。リテンション制御信号NRTがアクティブ状態にあれば、その他の信号が不定となってもリテンションフリップフロップ150は影響を受けない。例えば、リテンションフリップフロップ150に供給されるクロック信号CLKを中継するバッファ156、入力データを生成する組み合わせ回路172にはメイン電源MPWが供給され、待機状態になって電源供給が停止されても、リテンションフリップフロップ150の保持部に保持される内部状態は変わらない。
【0030】
また、上述では、NFF回路部122内の内部状態がメイン電源MPWの再投入時に不定となることに対して、動作再開時にNFF回路部122をリセットすることによって対策するように説明したが、図5に示されるように、マスク回路128(論理積回路、バリアゲート)を挿入してもよい。図5(a)に示されるように、電源供給制限回路部120のNFF回路部122は、通常のフリップフロップ142と組み合わせ回路164を備え、RFF回路部124は、リテンションフリップフロップ152、154と、組み合わせ回路174とを備えるとする。組み合わせ回路174は、通常のフリップフロップ142の出力、リテンションフリップフロップ152の出力を取り込み、論理演算結果をリテンションフリップフロップ154に出力する。この場合、通常のフリップフロップ142の出力が不定であると、組み合わせ回路174の出力も不定となり、リテンションフリップフロップ154は、正常な結果を取り込むことができない。したがって、図5(b)に示されるように、通常のフリップフロップ142とRFF回路部124とを接続する部分にマスク回路128を挿入し、通常のフリップフロップ142の影響を遮断するとよい。マスク回路128は、リテンション制御信号NRTがインアクティブ(“1”)の場合に固定値“0”を出力し、フリップフロップ142の出力がマスクされる。NFF回路122に含まれるフリップフロップのうち出力が組み合わせ回路174に接続されるフリップフロップの出力をマスクすることによって、RFF回路124はNFF回路122の影響を受けないようにすることができる。
【0031】
ここでは、説明を簡単にするために、マスク回路を制御する信号としてリテンション制御信号NRTを用いたが、他の信号であってもよい。また、このように、RFF回路部124がNFF回路部122の影響を受けないように信号を遮断すると、通常動作時にNFF回路部122の電源供給を遮断しておくことも可能である。
【0032】
以上述べたように、本発明では、電源供給制限回路部120に含まれるフリップフロップは、内部状態を示すデータを保持すべき保持対象フリップフロップと、保持しない保持非対象フリップフロップとに分類される。保持対象フリップフロップとは、通常の動作(本来の機能動作)において動作する回路に含まれるフリップフロップであり、リテンションフリップフロップ(RFF)がマッピングされる。保持非対象フリップフロップとは、デバッグ回路やテスト回路等のように動作せずとも通常の機能に影響しない回路に含まれるフリップフロップであり、通常のフリップフロップ(NFF)がマッピングされる。
【0033】
保持非対象フリップフロップ(NFF)は、電源再投入後の保持データが不定となり、誤動作の原因となるため、保持非対象フリップフロップからの不定データの伝搬を抑制する回路が追加される。この不定データの伝搬を抑制する回路は、保持非対象フリップフロップ(NFF)から、保持対象フリップフロップ(RFF)を含むRFF回路部124への経路に不定状態を遮断するマスク回路を設ける方法、電源供給後に保持非対象フリップフロップ(NFF)のみリセットをかける回路を設ける方法による回路とする。
【0034】
マスク回路は、RFF回路部124に影響を与える経路にのみ挿入されることが好ましい。また、電源供給時のNFF回路部122のリーク電流削減のために、通常動作時にもNFF回路部122の電源を遮断しておいてもよい。この場合、RFF回路部124とNFF回路部122の電源構造を分離し、RFF回路部124とNFF回路部122との間の全経路にバリアゲートを挿入することが好ましい。
【0035】
リテンションフリップフロップを用いる回路と通常のフリップフロップを用いる回路とを機能的に分類すると、本来機能を実現するための回路はリテンションフリップフロップを備え、試験回路、デバッグ回路は通常のフリップフロップを備えることになる。回路を階層的に設計する場合、本来機能を実現するための回路と、試験回路およびデバッグ回路とは回路設計時の設計階層が異なる。したがって、設計階層によって分けた回路毎に使用するフリップフロップを通常のフリップフロップ、リテンションフリップフロップとすると本発明の回路分割ができることになる。
【0036】
このように、リテンションフリップフロップにマッピングされるフリップフロップを通常機能を実現するフリップフロップに限定することができ、試験回路やデバッグ回路を除くことができるため、リテンションフリップフロップの数を削減することができる。したがって、回路面積を小さくすることができ、リーク電流を削減することができる。さらに、配線性を改善することができる。なお、リテンションフリップフロップは、ここでは、図6に示されるように、バックアップ用電源を必要とするタイプの回路として説明したが、磁性体や強誘電体を利用したバックアップ用電源を必要としないタイプの回路であっても同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0037】
100 半導体集積回路
110 共通制御回路部
112 バックアップ制御回路
114 電源制御回路
120 電源供給
122 NFF回路部
124 RFF回路部
126、128 ゲート回路(論理回路)
140、142 通常のフリップフロップ
146 バッファ回路
150、152、154 リテンションフリップフロップ
156、158 バッファ回路
162、164、172、174 組み合わせ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1回路部と、
前記第1回路部に供給する第1電源の投入切断を制御する第2回路部と
を具備し、
前記第1回路部は、
前記第1電源の切断により保持する情報が消去されるフリップフロップ群に内部状態を格納する第3回路部と、
前記第1電源が切断される前の情報を退避し、前記第1電源が再投入されたときに回復するリテンションフリップフロップ群に内部状態を格納する第4回路部と
を備える
半導体集積回路。
【請求項2】
前記リテンションフリップフロップ群のそれぞれは、
前記第1電源が供給され、閾値電圧の低いトランジスタにより高速に動作する主要部と、
前記第1電源の供給が停止しても設定された情報を保持する保持部と
を備え、
前記第1電源の供給が停止される直前に前記主要部に保持される情報を前記保持部に退避して保持し、前記第1電源の供給が再開された直後に前記保持部に保持される情報を前記主要部に回復する
請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項3】
前記リテンションフリップフロップ群のそれぞれは、
前記第1電源が供給され、閾値電圧の低いトランジスタにより高速に動作する主要部と、
第2電源が供給され、閾値電圧の高いトランジスタによりリーク電流が少なく、前記第1電源が切断されるときに、前記主要部の情報を退避して保持する保持部と
を有し、
前記第1電源が再投入されたときに、前記保持部に保持される情報を前記主要部に回復して高速に動作する
請求項1または請求項2に記載の半導体集積回路。
【請求項4】
前記第3回路部は、前記第1電源が再投入されたときにリセットされる
請求項1から請求項3のいずれかに記載の半導体集積回路。
【請求項5】
前記第3回路部から前記第4回路部に至る信号経路のそれぞれに信号伝搬を防止するマスク回路を備え、
前記第1電源が再投入された後に前記第3回路部に設定される情報が前記第4回路部に伝搬されないようにマスクする
請求項1から請求項4のいずれかに記載の半導体集積回路。
【請求項6】
第1回路部と、前記第1回路部に供給する第1電源の投入切断を制御する第2回路部とを備える半導体集積回路の内部状態退避回復方法であって、
待機状態になるときに、前記第2回路部が前記第1回路部に内部状態の退避を指示するステップと、
前記退避の指示に基づいて、前記第1回路部内のリテンションフリップフロップ群のそれぞれが、主要部に格納される情報を保持部に退避させるステップと、前記リテンションフリップフロップ群のそれぞれは、前記第1電源が供給され、閾値電圧の低いトランジスタにより高速に動作する主要部と、前記第1電源の供給が停止しても設定された情報を保持する保持部とを備え、
前記第2回路部が前記第1電源の供給を停止するステップと、
前記第1回路部内の前記第1電源の停止により情報が消去されるフリップフロップ群に格納される内部状態と、前記第1回路部内の前記リテンションフリップフロップ群の主要部に格納される内部状態とを消去するステップと、
通常動作状態に回復する要求を受けて前記第2回路部が前記第1電源の供給を再開するステップと、
前記リテンションフリップフロップ群の前記保持部に保持される情報を前記主要部に回復するステップと、
前記待機状態になる直前の状態から動作を再開するステップと
を具備する半導体集積回路の内部状態退避回復方法。
【請求項7】
前記第1回路部内の前記第1電源の停止により情報が消去されるフリップフロップ群を前記第1電源が再投入されたときにリセットするステップをさらに備える
請求項6に記載の半導体集積回路の内部状態退避回復方法。
【請求項8】
前記第1電源が再投入された後に、前記第1回路部内の前記第1電源の停止により情報が消去されるフリップフロップ群に設定される情報が前記リテンションフリップフロップ群に伝搬されないようにマスクするステップをさらに備える
請求項6または請求項7に記載の半導体集積回路の内部状態退避回復方法。
【請求項9】
第1回路部と、
前記第1回路部に供給する第1電源の投入切断を制御する第2回路部と
を具備し、
前記第1回路部は、
前記第1電源の切断により保持する情報が消去されるフリップフロップ群に内部状態を格納する第3回路部と、
前記第1電源が切断される前の情報を退避し、前記第1電源が再投入されたときに回復するリテンションフリップフロップ群に内部状態を格納する第4回路部と
を備える半導体集積回路の設計方法であって、
前記第3回路部を設計する設計層に含まれるフリップフロップ全てを前記第1電源の切断により保持する情報が消去されるフリップフロップとするステップと、
前記第4回路部を設計する設計層に含まれるフリップフロップ全てを前記リテンションフリップフロップとするステップと
を具備する半導体集積回路の設計方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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