説明

半導体集積回路とこれを使用した多出力電源装置

【課題】入力電源として低圧または高圧を使用することができ、高圧の入力電源を使用する場合、設定を変更することで低消費電力化することができる多出力電源装置用の半導体集積回路を提供する。
【解決手段】第1の電源回路(10A)は、入力端子(P1)と第1の出力端子(Vo1)の間に介装されたスイッチング手段(11,12,13,14)に、第1の出力電圧に応じた帰還電圧(Vf1)が目標値に近づくようにスイッチング信号を供給する第1の制御回路(17)を有しており、かつ第1の電源回路は、第1の電圧にかかわらず帰還電圧を規定の電位に設定する外部設定端子(P3)を有している。第1の出力を入力電源とした第2の電源回路(20)を有する多出力電源装置を構成し、第1の出力電圧相当の高圧の入力電源を使用する場合には、第1の入出力を短絡し、外部設定端子を接地することにより、第1の電源回路を停止し、第2の電源回路が動作できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の出力電圧を生成する多出力電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯機器のような電子機器はバッテリを電力源とし、このバッテリ電圧を機器内の各種電子回路への所望の電源電圧に変換するため、複数の電源回路からなる多出力電源装置が搭載される。
【0003】
多出力電源装置の入力電圧となるバッテリ電圧は、例えばバッテリが1セルのリチウムイオン電池の場合、2.5〜4Vである。一方、要望される電源電圧は多種多様であり、例えばデジタルスチルカメラの場合、レンズ駆動用の5Vや、CCDバイアス用の12Vや−6Vといった電圧がある。
【0004】
図4に示した従来の多出力電源装置は、上記のような電源仕様に基づいて設計された回路構成図である。
図4において、1は入力電圧Viを供給する入力電源で、1セルのリチウムイオン電池の場合、Vi=2.5〜4Vである。10は第1の電源回路としての昇圧コンバータで、入力電源1に並列に直列接続されたインダクタ11と主スイッチ12と、主スイッチ12とインダクタ11との接続点に接続されたダイオード13と、ダイオード13の出力に接続されて第1の出力電圧Vo1(例えば5V)を出力する出力コンデンサ14と、第1の出力電圧Vo1を分圧して帰還電圧Vf1を発生する抵抗15と抵抗16と、主スイッチ12をオンオフする第1の制御回路17とから構成されている。
【0005】
第1の制御回路17は、コントロール端子17aと帰還端子17bとパルス出力端子17cを有し、コントロール端子17aへ印加される第1のコントロール信号Vc1がHレベルであれば動作を開始し、帰還端子17aに入力される帰還電圧Vf1が所定の基準電圧Vrになるように、オンオフ時間比を調整されたパルス信号Vg1をパルス出力端子17cから出力する。
【0006】
20は第2の電源回路としての昇圧コンバータで、第1の電源回路10の出力コンデンサ14に並列に直列接続されたインダクタ21と主スイッチ22と、主スイッチ22とインダクタ21との接続点に接続されたダイオード23と、ダイオード23の出力に接続されて第2の出力電圧Vo2(例えば12V)を出力する出力コンデンサ24と、第2の出力電圧Vo2を分圧して帰還電圧Vf2を発生する抵抗25と抵抗26と、主スイッチ22をオンオフする第2の制御回路27とから構成される。
【0007】
第2の制御回路27は、コントロール端子27aと帰還端子27bとパルス出力端子27cを有し、コントロール端子27aへのHレベルの信号の印加によって動作を開始し、帰還端子27bに入力される帰還電圧Vf2が所定の基準電圧Vrになるように、オンオフ時間比を調整されたパルス信号Vg2をパルス出力端子27cから出力する。
【0008】
28はAND回路であり、後述するパワーオン信号Vonと第2のコントロール信号Vc2の論理積である第2の信号V2をコントロール端子27aへ出力する。
30はパワーオン信号発生回路で、第1の出力電圧Vo1が所定値(例えば目標電圧の90%)以上であればHレベルの信号を出力する比較回路31と、比較回路31の出力と第1のコントロール信号Vc1との論理積であるパワーオン信号Vonを出力するAND回路32とで構成されている。
【0009】
第1の電源回路10の動作を説明する。
第1のコントロール信号Vc1がHレベルになると第1の制御回路17は動作を開始し、パルス出力端子17bから出力するパルス信号Vg1によって主スイッチ12がオンすると、入力電圧Viが印加されたインダクタ11は励磁されて電流が流れる。
【0010】
次に主スイッチ12がオフすると、減少する電流がインダクタ11とダイオード13を介して出力コンデンサ14に流れる。このオンオフ動作の繰り返しによって入力電源1から電力が供給され、出力コンデンサ14から第1の出力電圧Vo1が出力される。
【0011】
第1の出力電圧Vo1は、主スイッチ12のオンオフ時間比によって制御され、第1の制御回路17は帰還電圧Vf1が所定の基準電圧Vrになるようにパルス信号Vg1のオンオフ時間比を調整する。このことによって、第1の出力電圧Vo1は目標値に安定化される。
【0012】
次に、第1の出力電圧Vo1が所定値以上であると、パワーオン信号発生回路30の比較回路31はHレベルを出力する。この比較回路31の出力と第2のコントロール信号Vc2と、既にHレベルである第1のコントロール信号Vc1との論理積を出力しているAND回路32の出力のパワーオン信号Vonは、第2のコントロール信号Vc2がHレベルになるとHレベルを出力する。
【0013】
第2の電源回路20では第2の制御回路27が、コントロール端子27aにHレベルのパワーオン信号Vonを入力されると動作を開始し、パルス出力端子27cからのパルス信号Vg2によって主スイッチ22をオンオフ動作するようになる。以後の第2の電源回路20の動作は第1の電源回路10と同様であり、主スイッチ21のオンオフ動作によって第1の出力電圧Vo1を第2の出力電圧Vo2に昇圧変換し、これを目標値に安定化する。
【0014】
多出力電源装置では、起動時の突入電流を分散化する目的や、電源電圧を供給される各電子回路側(以後、負荷側と称する)からの要望で各電源電圧の起動を前後する場合が多い。図4の多出力電源装置においては、第1のコントロール信号Vc1によって第1の出力電圧Vo1を立ち上げ、第2のコントロール信号Vc2によって第2の出力電圧Vo2を立ち上げることを基本仕様としている。
【0015】
しかし、第2の電源回路20の入力を第1の出力電圧Vo1とする構成上、第1の電源回路10が動作し、かつ第1の出力電圧Vo1が充分立ち上がっている状態でないと、第2の電源回路20を動作させられない。このため第2の電源回路20の第2の制御回路27のコントロール端子27aへ入力される第2の信号V2は、パワーオン信号Vonと第2のコントロール信号Vc2との論理積となっているのである。
【0016】
さて、入力電源として上記のような1セルのリチウムイオン電池ではなく、例えばDC4.5〜5.5V出力のACアダプタや、2セルのリチウムイオン電池を入力として5Vを出力する降圧電源装置を使用するような電子機器もある。このような電子機器に上記の多出力電源装置を兼用したい場合、入力仕様の異なる第1の電源回路10は対応できない。
【0017】
図4の多出力電源装置をこのような入力仕様に対応させるには、例えば下記の特許文献1のような方法がある。
特許文献1は多出力電源装置ではないが、異なる入力電圧に対応するために、入力電圧によって電源装置を介するか、入力電圧を直接に出力するかの切換手段を設けたものである。図示による説明は省略するが、特許文献1の方法を図4の多出力電源装置に適用すると、新たに設けた切換手段によって、ACアダプタなどの外部電源装置の出力を入力された場合、第1の電源回路10は停止され、代わりに外部電源装置の出力が第1の出力電圧Vo1となる。
【特許文献1】特開平5−184136号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上記のような従来の多出力電源装置では、入力仕様の異なるACアダプタや他の電源装置を入力電源として使用するような場合に対応できない。特許文献1の方法を参考にして、ACアダプタなどの外部電源装置の出力を第1の出力電圧とする構成の場合には、以下の問題点がある。
【0019】
第1の電源回路10が動作できる状態であると、第1の制御回路17の帰還端子17bへの帰還電圧によっては主スイッチ12のオンオフ動作を行い、無駄な電力を消費してしまう。第1の電源回路10を停止するには第1のコントロール信号Vc1をLレベルにすればよいが、その場合、パワーオン信号VonがLレベルとなって第2の電源回路20が動作できなくなってしまう。
【0020】
換言すると、所定の電池を入力電源とする場合に、第1の電源回路10が動作し、第1の出力電圧Vo1が安定供給されることを動作条件とする第2の電源回路20は、外部電源装置の出力を第1の出力電圧Vo1とする構成の場合、低消費電力化のためなどで第1の電源回路10を停止すると動作することができない。
【0021】
本発明は、所定の電池を入力電源とする場合の第1の電源回路10として使用することができ、また外部電源装置の出力を第1の出力電圧Vo1とする構成の場合であっても低消費電力化することができる半導体集積回路を提供することを目的とする。また、この半導体集積回路を使用した多出力電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の請求項1記載の半導体集積回路は、入力端子に印加される入力電源電圧を第1の出力電圧に変換して第1の出力端子から出力する第1の電源回路と、前記第1の電源回路の第1の出力端子から出力された第1の出力電圧を第2の出力電圧に変換して第2の出力端子から出力する第2の電源回路を有する多出力電源装置に使用される半導体集積回路であって、前記第1の電源回路は、入力端子と第1の出力端子の間に介装されたスイッチング手段に、前記第1の出力端子の出力電圧に応じた帰還電圧が目標値に近づくようにスイッチング信号を供給する第1の制御回路を有しており、かつ前記第1の電源回路は、第1の出力端子の電圧にかかわらず前記帰還電圧を規定の電位に設定する外部設定端子を有していることを特徴とする。
【0023】
本発明の請求項2記載の多出力電源装置は、請求項1記載の半導体集積回路を使用した多出力電源装置であって、入力端子に印加される入力電源電圧を第1の出力電圧に変換して第1の出力端子から出力する第1の電源回路と、前記第1の電源回路の第1の出力端子から出力された第1の出力電圧を第2の出力電圧に変換して第2の出力端子から出力する第2の電源回路を有し、前記第2の電源回路は前記第1の電源回路から発生するパワーオン信号を検出して動作可能とし、前記第1の電源回路は、前記外部設定端子が規定の所定の下限電位に設定されることによって前記スイッチング信号の供給をオフするように前記第1の制御回路を構成するとともに、前記第1の出力電圧が所定の出力電圧値以上である検出信号と、帰還電圧が規定の電位以下である検出信号との論理積を検出して前記パワーオン信号を生成するパワーオン信号発生回路を設けたことを特徴とする。
【0024】
本発明の請求項3記載の多出力電源装置は、請求項2において、前記パワーオン信号発生回路は、前記帰還電圧の電圧が所定の出力電圧値以上であることを検出する第1の比較回路と、前記帰還電圧の電圧が規定の電位以下であることを検出する第2の比較回路と、前記第1の比較回路の出力側の検出信号と前記第2の比較回路の出力側の検出信号との論理積を検出して前記パワーオン信号を生成するAND回路とを有していることを特徴とする。
【0025】
本発明の請求項4記載の多出力電源装置は、請求項2において、前記第2の電源回路は、第1の出力端子と第2の出力端子の間に介装された第2のスイッチング手段に、前記第2の出力端子の出力電圧に応じた帰還電圧が目標値に近づくようにスイッチング信号を供給する第2の制御回路を有しており、かつ前記第2の電源回路は、外部から前記第2の電源回路の動作/停止を指示する第2のコントロール信号との論理演算結果に基づいて前記パワーオン信号発生回路から第2の制御回路への前記ワーオン信号の供給を制御するよう構成したことを特徴とする。
【0026】
本発明の請求項5記載の多出力電源装置は、請求項2において、前記パワーオン信号発生回路は、前記第1の出力電圧もしくは前記第1の出力電圧を分圧した電圧と、前記所定の基準電圧を分圧した電圧とを比較して前記第1の出力電圧が前記所定の出力電圧値以上か否かを判定する第1の比較回路を設けたことを特徴とする。
【0027】
本発明の請求項6記載の多出力電源装置は、請求項2において、前記パワーオン信号発生回路は、前記帰還端子の電圧と前記所定の下限値とを比較する第2の比較回路を有し、前記第2の比較回路は、前記入力電圧印加時もしくは前記第1のコントロール信号入力時の起動時における所定期間、前記帰還端子の電圧が前記所定の下限値以上であるように出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明の半導体集積回路によると、通常の電池入力と同じ構成でありながら、ACアダプタや他の電源装置を入力電源とする場合に、ACアダプタ等の出力を第1の出力電圧とし、第1の電源回路を停止しながら、第2の電源回路が動作できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の各実施の形態を図1〜図3に基づいて説明する。
(第1の実施形態)
図1は本発明の半導体集積回路を使用した多出力電源装置を示す。
【0030】
この多出力電源装置は、第1の電源回路10Aと第2の電源回路20とで構成されている。第1の電源回路10Aの第1の出力電圧Vo1は、例えば5Vである。この第1の出力電圧Vo1を入力電源とした第2の電源回路20の第2の出力電圧Vo2は、例えば12Vである。
【0031】
この図1では、入力電源として例えば1セルのリチウムイオン電池1が装着され、入力電圧Viが2.5〜4Vの場合を示している。この第1の電源回路10Aは半導体集積回路で構成されており、リチウムイオン電池1が接続される第1の外部接続端子P1,第1の出力電圧Vo1が発生する第2の外部接続端子P2,使用する入力電源の種類を設定する第3の外部接続端子P3,第1の電源回路10Aの動作開始を指示する第1のコントロール信号Vc1が入力される第4の外部接続端子P4,第2の電源回路20へのパワーオン信号Vonが出力される第5の外部接続端子P5を有している。
【0032】
なお、入力電源としてACアダプタのような外部電源装置が装着され、入力電圧Viが4.5〜5.5Vである電子機器の多出力電源装置を、同じ第1の電源回路10Aと第2の電源回路20を使って構成する場合には、図2に示すように、第1の電源回路10Aの入出力を外部接続50によって短絡すると共に、第3の外部接続端子P3を接地して使用することにより、第1の電源回路10Aを停止しながら、第2の電源回路20が動作できる。
【0033】
図1を詳しく説明する。
1は入力電圧Viを供給するリチウムイオン電池であり、1セルのリチウムイオン電池の場合、Vi=2.5〜4Vである。10Aは第1の電源回路で、具体的には昇圧コンバータであり、入力電源1に並列に直列接続されたインダクタ11と主スイッチ12と、主スイッチ12とインダクタ11との接続点に接続されたダイオード13と、ダイオード13の出力に接続されて第1の出力電圧Vo1(例えば5V)を出力する出力コンデンサ14と、第1の出力電圧Vo1を分圧して帰還電圧Vf1を発生する抵抗15と抵抗16と、主スイッチ12をオンオフする第1の制御回路17とから構成される。第1の制御回路17はコントロール端子17aと帰還端子17bとパルス出力端子17cを有し、コントロール端子17aへのHレベルの信号の印加によって動作を開始し、帰還端子17aに入力される帰還電圧Vf1が所定の基準電圧Vrになるように、オンオフ時間比を調整されたパルス信号Vg1をパルス出力端子17cから出力する。
【0034】
3はパワーオン信号発生回路であり、第1の出力電圧Vo1が所定の出力電圧値(例えば目標電圧の90%)以上であればHレベルの信号を出力する比較回路31と、第1の電源回路10の帰還電圧Vf1が所定の下限値(例えば0.2V)以上であればHレベルの信号を出力する比較回路33と、比較回路33の出力と第1のコントロール信号Vc1との論理積である第1の信号V1を出力するAND回路34と、比較回路33の出力を反転するインバータ35と、インバータ35の出力と第1のコントロール信号Vc1との論理和を出力するOR回路36と、比較回路31の出力とOR回路36の出力との論理積であるパワーオン信号を出力するAND回路37を備える。ここでは、前記第1の出力電圧が所定の出力電圧値以上であることの検出信号がVs1、帰還電圧Vf1が規定の電位(0.2V)以下である検出信号がVs2である。AND回路34の出力する第1の信号V1は第1の制御回路17のコントロール端子17aに入力される。
【0035】
20は第2の電源回路で、具体的には昇圧コンバータであり、第1の電源回路10Aの出力が接続される第6の外部接続端子P6,第2の出力電圧Vo2が発生する第7の外部接続端子P7,第1の電源回路10Aからパワーオン信号Vonが入力される第8の外部接続端子P8,第2の電源回路20の動作開始を指示する第2のコントロール信号Vc2が入力される第9の外部接続端子P9を有している。
【0036】
更に具体的には、第2の電源回路20は、第1の電源回路10Aの出力コンデンサ14に並列に直列接続されたインダクタ21と主スイッチ22と、主スイッチ22とインダクタ21との接続点に接続されたダイオード23と、ダイオード23の出力に接続されて第2の出力電圧Vo2(例えば12V)を出力する出力コンデンサ24と、第2の出力電圧Vo2を分圧して帰還電圧Vf2を発生する抵抗25と抵抗26と、主スイッチ22をオンオフする第2の制御回路27とから構成される。第2の制御回路27はコントロール端子27aと帰還端子27bとパルス出力端子27cを有し、コントロール端子27aへのHレベルの信号の印加によって動作を開始し、帰還端子27bに入力される帰還電圧Vf2が所定の基準電圧Vrになるように、オンオフ時間比を調整されたパルス信号Vg2をパルス出力端子27cから出力する。28はAND回路であり、パワーオン信号Vonと第2のコントロール信号Vc2の論理積をコントロール端子27aへ出力する。
【0037】
図1の多出力電源装置における第1の電源回路10Aの動作を説明する。
まず、入力電圧Vi(2.5〜4V)が既に印加されている状態では、第1の出力電圧Vo1にも電圧が発生し、抵抗15と抵抗16による分圧電圧も所定の下限値以上ある。
【0038】
従って比較回路33の出力はHレベルとなっている。ここで、第1のコントロール信号Vc1がHレベルになると、AND回路34の出力である第1の信号V1はHレベルとなって第1の制御回路17は動作を開始し、パルス出力端子17cからパルス信号Vg1を出力する。パルス信号Vg1によって主スイッチ12がオンすると、入力電圧Viが印加されたインダクタ11は励磁され、増加する電流が流れる。次に主スイッチ12がオフすると、インダクタ11のエネルギーを放出するように、減少する電流がダイオード13を介して出力コンデンサ14に流れる。このオンオフ動作の繰り返しによって入力電源1から出力コンデンサ14へ電力が供給され、第1の出力電圧Vo1が出力される。第1の出力電圧Vo1は主スイッチ12のオンオフ時間比によって制御される。ダイオード13の順方向電圧降下などを無視した理想条件下において、主スイッチ12の1スイッチング周期に占めるオン時間の割合(デューティ比と称する。)をδ1とすると、第1の出力電圧Vo1は次式で表される。
【0039】
Vo1 = Vi/(1−δ1) (1)
第1の制御回路17は帰還電圧Vf1が所定の基準電圧Vrになるようにパルス信号Vg1のデューティ比を調整することによって、第1の出力電圧Vo1は目標値に安定化される。抵抗15と抵抗16の各抵抗値をR15,R16とすると、安定化された第1の出力電圧Vo1は次式で表される。
【0040】
Vo1 = Vr・(1+R15/R16) (2)
次に、第1の出力電圧Vo1が所定電圧値を越えるとパワーオン信号発生回路3の比較回路31はHレベルを出力する。一方、既にHレベルである第1のコントロール信号Vc1を入力されているOR回路36もHレベルを出力している。このOR回路36の出力と比較回路31の出力との論理積であるAND回路37の出力であるパワーオン信号VonはHレベルである。従って、第2のコントロール信号Vc2がHレベルになると、第2のコントロール信号Vc2とパワーオン信号Vonとの論理積である第2の信号V2もHレベルとなる。第2の電源回路20では第2の制御回路27が、コントロール端子27aにHレベルの第2の信号V2を入力されると動作を開始し、パルス出力端子27cからのパルス信号Vg2によって主スイッチ22をオンオフ動作するようになる。以後の第2の電源回路20の動作は第1の電源回路10Aと同様であり、主スイッチ22のオンオフ動作によって第1の出力電圧Vo1を第2の出力電圧Vo2に昇圧変換し、これを目標値に安定化する。
【0041】
さて、入力電源として上記のような1セルのリチウムイオン電池1ではなく、例えばDC4.5〜5.5V出力のACアダプタや、2セルのリチウムイオン電池を入力として5Vを出力する降圧電源装置を使用するような電子機器もある。このような電子機器に本発明の多出力電源装置が兼用できることを、図2を用いて説明する。
【0042】
図2の構成が図1の構成と異なる点は、入力電源としてバッテリではなくACアダプタのような外部電源装置2が装着され、さらに第1の出力電圧Vo1としても供給されるように出力コンデンサ14にも接続されている点と、第1の出力電圧Vo1を検出して帰還する抵抗15と抵抗16は省かれ、第1の制御回路17の帰還端子17b及び比較回路33の入力が接地されている点である。
【0043】
図2の多出力電源装置の動作を、パワーオン信号発生回路3を中心に説明する。
比較回路33の入力が接地されているため、比較回路33の出力はLレベルである。このためAND回路34の出力もLレベルとなり、第1の制御回路17はコントロール端子17aにLレベルを入力されて動作を停止する。一方、インバータ35はHレベルを出力するので、意味を成さなくなった第1のコントロール信号Vc1にかかわらず、OR回路36はHレベルを出力する。また、外部電源装置2からの電力供給によって第1の出力電圧Vo1には充分な電圧が発生し、比較回路31の出力もHレベルになっている。この比較回路31の出力とOR回路36の出力との論理積であるAND回路37の出力であるパワーオン信号VonはHレベルである。従って第2のコントロール信号Vc2がHレベルになると、第2のコントロール信号Vc2とパワーオン信号Vonとの論理積である第2の信号V2もHレベルとなる。第2の電源回路20では第2の制御回路27が、コントロール端子27aにHレベルの第2の信号V2を入力されると動作を開始する。
【0044】
このように、入力電源としてリチウムイオン電池1を用いて第1の電源回路10Aを動作させる場合には、抵抗15,16を用いて第1の出力電圧Vo1の分圧電圧を帰還端子17bに印加し、入力電源としてACアダプタのような外部電源装置2が用いて、外部電源装置2の出力電圧が第1の出力電圧Vo1として直接に印加される場合には、帰還端子17bを接地する構成とすることにより、第1の電源回路10Aを停止しながらも第2の電源回路20を動作可能とすることができる。
【0045】
なお、説明の便宜上、第1の制御回路17とパワーオン信号設定回路3は別ブロックとしたが、少なくともこの両者を同一半導体集積回路で形成することにより、図1と図2の構成の差は、入力電源の接続方法を除けば帰還端子17bの処理のみとなる。
【0046】
また、第1の外部接続端子P1と第2の外部接続端子P2の間に介装されたスイッチング手段を構成するインダクタ11,主スイッチ12,ダイオード13,出力コンデンサ14の内で、例えばインダクタ11は、半導体回路装置の外部に設けられている。
【0047】
なお、上記第1の電源回路10Aと第2の電源回路20はともに昇圧コンバータの構成を用いて説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。本発明は第1の電源回路の帰還端子を接地することで第1の電源回路を停止状態とするので、起動時に第1の出力電圧がゼロ電圧となるような場合、例えば降圧コンバータのような場合には、比較回路33に起動時不感時間を設け、この不感時間内では帰還端子の電圧が所定の下限値以上であるように、即ち比較回路33がHレベルを出力するように設定しておくとよい。このことにより、昇圧コンバータ以外の電圧変換回路を用いることができる。
【0048】
(第2の実施形態)
図3(a)(b)は本発明の第2の実施形態に係る多出力電源装置の一部の回路構成図である。
【0049】
第1の実施形態では、比較回路31への入力は、帰還電圧Vf1を生成する抵抗15と抵抗16とは別に設けたが、この場合、第1の出力電圧Vo1に別途検出抵抗を設ける必要がある。なぜなら入力電源として外部電源装置が装着する場合には、帰還端子17bを接地するためである。
【0050】
そこで、図3(a)に示す本第2の実施形態においては、パワーオン信号設定回路3と第1の制御回路17を制御部18にまとめ、比較回路33への入力と帰還端子17bを兼用して帰還端子18aとし、比較回路31への入力を端子18bとした。他の構成は図1及び図2と同様なので省略した。ここでは、帰還端子18aが第1の実施形態の第3の外部接続端子P3に相当している。
【0051】
図3(a)は入力電源として例えば1セルのリチウムイオン電池1が装着され、入力電圧Viが2.5〜4Vである電子機器の多出力電源装置の場合の接続の場合の、制御部18の一部及びその周辺の回路構成を示す。180は基準電圧源であり、基準電圧Vrを生成する。181〜183は抵抗であり、基準電圧Vrを分圧する。抵抗181と抵抗182の接続点は、例えば基準電圧Vrの90%に設定され、抵抗182と抵抗183の接続点は、所定の下限値(例えば0.2V)に設定される。170は第1の制御回路17に含まれる誤差増幅器であり、帰還端子18aの帰還電圧Vf1と基準電圧Vrを比較して、その誤差電圧を増幅した誤差信号Veを出力する。図示していないが、第1の制御回路17はこの誤差信号Veに応じてパルス信号Vg1のデューティ比を調整する。
【0052】
比較回路31は、帰還電圧Vf1と基準電圧Vrの90%の電圧を比較し、Vf1>0.9Vrの場合にHレベルを出力する。
比較回路33は、帰還電圧Vf1と電圧値0.2Vを比較し、Vf1>0.2Vの場合にHレベルを出力する。
【0053】
図3(b)は入力電源としてACアダプタなどの外部電源装置が装着され、入力電圧Viが4.5〜5.5Vである電子機器の多出力電源装置の場合である。少なくとも制御部18を含む半導体集積回路が所定電圧入力時と兼用できるように、制御部18の構成は図3(a)と等しい。図3(b)の構成が図3(a)の構成と異なるのは、帰還端子18aが接地されている点だけである。帰還端子18aが接地されると、比較器33の非反転入力端子が接地されて0.2Vより低くなり、比較器33がLレベルを出力する。これにより、第1の制御回路17が動作を停止するとともに、パワーオン信号VonはHレベルとなる。第2の信号V2は第2のコントロール信号Vc2と等しくなり、第2の電源回路20が動作可能となる。
【0054】
この構成によると、バッテリ装着の低入力時には、帰還端子18aへの印加電圧と比較回路31への入力端子18bへの印加電圧が、抵抗15と抵抗16の接続点電圧に共通化できる。また、外部電源装置の装着時には帰還端子18aを接地し、端子18bには抵抗15と抵抗16の接続点電圧を印加すればよい。即ち、第1の出力電圧Vo1を所定の出力電圧値と比較するために別途検出抵抗を設ける必要は無い。
【0055】
なお、第1,第2の実施形態の説明の中で触れなかったが、第1の制御回路17や第2の制御回路27は、入力電圧Viまたは第1の出力電圧Vo1からの電力供給で動作しているものとする。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、各種の電子機器に直流電圧を供給する多出力電源装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の半導体集積回路を使用して構成する場合の多出力電源装置の構成図
【図2】入力電源として図1の場合よりも高圧のACアダプタを使用して構成した場合の多出力電源装置の構成図
【図3】本発明の第2の実施形態に係る多出力電源装置の一部の構成図と入力電源として高圧のACアダプタを使用して構成した場合の多出力電源装置の一部の構成図
【図4】従来の多出力電源装置の構成図
【符号の説明】
【0058】
1 入力電源
2 外部電源装置
3 パワーオン信号発生回路
10A 第1の電源回路
11 インダクタ
12 主スイッチ
13 ダイオード
14 出力コンデンサ
15 抵抗
16 抵抗
17 制御回路
17a コントロール端子
17b 帰還端子
17c パルス出力端子
20 第2の電源回路
21 インダクタ
22 主スイッチ
23 ダイオード
24 出力コンデンサ
25 抵抗
26 抵抗
27 制御回路
27a コントロール端子
27b 帰還端子
27c パルス出力端子
31 比較回路
33 比較回路
34 AND回路
35 インバータ
36 OR回路
37 AND回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子に印加される入力電源電圧を第1の出力電圧に変換して第1の出力端子から出力する第1の電源回路と、
前記第1の電源回路の第1の出力端子から出力された第1の出力電圧を第2の出力電圧に変換して第2の出力端子から出力する第2の電源回路を有する多出力電源装置に使用される半導体集積回路であって、
前記第1の電源回路は、入力端子と第1の出力端子の間に介装されたスイッチング手段に、前記第1の出力端子の出力電圧に応じた帰還電圧が目標値に近づくようにスイッチング信号を供給する第1の制御回路を有しており、かつ前記第1の電源回路は、第1の出力端子の電圧にかかわらず前記帰還電圧を規定の電位に設定する外部設定端子を有している
半導体集積回路。
【請求項2】
請求項1記載の半導体集積回路を使用した多出力電源装置であって、
入力端子に印加される入力電源電圧を第1の出力電圧に変換して第1の出力端子から出力する第1の電源回路と、前記第1の電源回路の第1の出力端子から出力された第1の出力電圧を第2の出力電圧に変換して第2の出力端子から出力する第2の電源回路を有し、前記第2の電源回路は前記第1の電源回路から発生するパワーオン信号を検出して動作可能とし、
前記第1の電源回路は、前記外部設定端子が規定の所定の下限電位に設定されることによって前記スイッチング信号の供給をオフするように前記第1の制御回路を構成するとともに、
前記第1の出力電圧が所定の出力電圧値以上である検出信号と、帰還電圧が規定の電位以下である検出信号との論理積を検出して前記パワーオン信号を生成するパワーオン信号発生回路を設けた
多出力電源装置。
【請求項3】
前記パワーオン信号発生回路は、
前記帰還電圧の電圧が所定の出力電圧値以上であることを検出する第1の比較回路と、
前記帰還電圧の電圧が規定の電位以下であることを検出する第2の比較回路と、
前記第1の比較回路の出力側の検出信号と前記第2の比較回路の出力側の検出信号との論理積を検出して前記パワーオン信号を生成するAND回路と
を有していることを特徴とする
請求項2記載の多出力電源装置。
【請求項4】
前記第2の電源回路は、第1の出力端子と第2の出力端子の間に介装された第2のスイッチング手段に、前記第2の出力端子の出力電圧に応じた帰還電圧が目標値に近づくようにスイッチング信号を供給する第2の制御回路を有しており、かつ前記第2の電源回路は、外部から前記第2の電源回路の動作/停止を指示する第2のコントロール信号との論理演算結果に基づいて前記パワーオン信号発生回路から第2の制御回路への前記ワーオン信号の供給を制御するよう構成した
請求項2記載の多出力電源装置。
【請求項5】
前記パワーオン信号発生回路は、前記第1の出力電圧もしくは前記第1の出力電圧を分圧した電圧と、前記所定の基準電圧を分圧した電圧とを比較して前記第1の出力電圧が前記所定の出力電圧値以上か否かを判定する第1の比較回路を設けた
請求項2記載の多出力電源装置。
【請求項6】
前記パワーオン信号発生回路は、前記帰還端子の電圧と前記所定の下限値とを比較する第2の比較回路を有し、前記第2の比較回路は、前記入力電圧印加時もしくは前記第1のコントロール信号入力時の起動時における所定期間、前記帰還端子の電圧が前記所定の下限値以上であるように出力することを特徴とする
請求項2記載の多出力電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−86173(P2008−86173A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−266151(P2006−266151)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】